説明

水中化学物質回収用濾過器、並びに、該濾過器を用いた水中化学物質の回収方法及び回収装置

【課題】各種の環境水や排水等の水から水中浮遊物質に吸着した化学物質および溶存化学物質を一括して迅速、簡便かつ高い回収率で回収することを可能にする濾過器の提供。
【解決手段】一方の最外層1aから他方の最外層1cへ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした2層以上の珪藻土充填層1を有し、かつ、該2層以上の珪藻土充填層1の他方の最外層1cに珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填するか(他方の最外層1cを珪藻土と化学物質吸着能を有する担体を充填した充填層2にするか)、或いは、該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層1cに隣接させて、化学物質吸着能を有する担体の充填層2’を設けてなる水中化学物質回収用濾過器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中化学物質を迅速、簡便かつ高い回収率で回収し得る水中化学物質回収用濾過器、並びに、該濾過器を使用した水中化学物質の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川水、海水、湖沼水等の日常生活に身近な水の安全性の評価が問われ、各方面でその測定・分析が行われている。そして、これら水中に含まれる有害物質であるダイオキシン類およびコプラナーPCBは、一般に環境中で希釈され、濃度が極めて低いことから、分析値の定量下限を確保するため、多量な試料水を採取する必要がある。
【0003】
特に、ダイオキシン類の場合は、非常に低濃度(0.01〜1pgTEQ(毒性当量)/リットル)であるため、有効な測定を行うためには、数十リットルにもおよぶ多量の試料水が必要となる。例えば、厚生省「水道原水及び浄水中のダイオキシン類調査マニュアル」(非特許文献1)には、水道原水では約200リットル、水道浄水では約2000リットルもの試料を抽出する必要があると記載されている。
【0004】
ところで、ダイオキシン類やコプラナーPCB等の汚染化学物質は、水中において、水中の浮遊物質に吸着して存在するか或いは水に溶存した状態で存在する。従って、水中のダイオキシン類等の汚染化学物質を分析するためには、水中の浮遊物質を回収して浮遊物質に吸着した汚染化学物質を分析し、また、水に溶存した汚染化学物質を抽出して分析することが必要になる。
【0005】
例えば、水中浮遊物質の回収について、「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定法」(JIS K 0312:平成17年6月20日改正)(非特許文献2)では、水中浮遊物質の捕捉、回収を、孔径0.5μm程度のガラス繊維濾紙で行う方法が記載されており、特に、水中浮遊物質を含む試料の濾過に関しては、孔径が0.5μmより大きなプレフィルターを使用しても良いとなっている。
【0006】
このような公的基準に従い、例えば、アドバンテック東洋(株)が開発した「水中ダイオキシン類サンプリング装置 FS−90−KF型」では、ステンレス繊維濾紙(1μm)とガラス繊維濾紙2枚(孔径1.0μmおよび0.5μm)の3層構造が用いられている。しかし、本発明者等の検討では、かかる装置では、試料によっては、すぐに目詰まりを起こし、濾紙の交換を頻繁に行う必要があり、濾過効率、作業性等の点で満足できるものではなかった。
【0007】
一方、「濾過技術の基礎と濾過プロセスの設計」情報機構(非特許文献3)によれば、河川水等の濾過に用いられている急速濾過には、1)単層濾過(砂濾過)、2)複層濾過があると記載され、複層濾過の2層濾過では砂とアンスラサイトが、また3層濾過では砂、アンスラサイト、ガーネットが多く用いられ、複層濾過では粒子径の大きい濾剤を上層に、小さい濾剤を下層に利用することにより、河川水は大きい懸濁物から小さい懸濁物へと理想的な形で濾過されること、さらに、このような濾過を深層濾過といい、濾層内部が有効に利用されるため水中浮遊物質の捕捉量が大きく、濾過時間が長くなり、効率の良い濾過が可能である、と記載されている。
【0008】
特開2003−247919号公報(特許文献1)には、水中の汚染化学物質が吸着する懸濁物質(浮遊物質)の濾過手段として、上記の複層濾過を適用した水中汚染化学物質の採取装置が提案されており、当該文献によれば、かかる採取装置を使用することで、大量の環境水又は排水から微量の汚染物質を長時間捕集して、高濃度倍率で回収できると謳われている。しかし、当該装置では、汚染化学物質を高濃度倍率で回収するには、懸濁物質(浮遊物質)を含む被処理水の濾過手段への通水速度(流速)を低く設定することが必要であり、処理効率が低く、迅速処理を行えないという問題がある。
【0009】
一方、水に溶存した汚染化学物質の抽出方法については、例えば、先述の「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定法」(非特許文献2)では、1)固相抽出法、2)液−液抽出法および3)大容量捕集装置による試料採取等の方法が記載されている。しかし、1)の固相抽出法の場合、ODSディスク型固相(φ90mm)では、吸着破過を起こす通水量が予測できない試料については5リットルごとにディスクを交換することが記載されており、作業が煩雑であるとともに、ディスクが高価なため、コストがかさむという問題がある。また、流速は0.1リットル/分であるため、200リットル以上の試料については24時間(1日)以上の操作を行う必要があり、作業時間が長大化するという問題がある。また、2)液−液抽出法の場合、試料1リットルに対し、ジクロロメタン100mlで3回抽出することが記載されており、200リットル以上の試料を処理する場合、24時間(1日)以上の操作を行う必要があり、作業時間が長大化するという問題がある。また、3)大容量捕集装置による試料の採取では、ポリウレタンフォーム(PUFP)が使用されるが、ポリウレタンフォーム(PUFP)は使用前にソックスレー抽出による化学物質を含まない状態にする操作が必要であり、また、抽出時にも3回のソックスレー抽出が必要であり、作業が煩雑であるという問題がある。
【非特許文献1】厚生省「水道原水及び浄水中のダイオキシン類調査マニュアル」
【非特許文献2】「工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定法」(JISK0312:平成17年6月20日改正)
【非特許文献3】「濾過技術の基礎と濾過プロセスの設計」情報機構
【特許文献1】特開2003−247919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、各種の環境水や排水等の水から水中浮遊物質に吸着した化学物質および溶存化学物質を一括して迅速、簡便かつ高い回収率で回収することを可能にする濾過器、並びに、該濾過器を使用した水中化学物質の回収方法及び回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした2層以上の珪藻土充填層を形成し、さらにかかる2層以上の珪藻土充填層他方の最外層に珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填するか、或いは、当該2層以上の珪藻土充填層の後段側(通水方向の後段側)に化学物質吸着能を有する担体の充填層をさらに積層した多層構造物においては、通水速度を速めても、目詰まりを起さずに、高い回収率で水中浮遊物質を回収できると同時に水中に溶存する化学物質をも高い回収率で回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした2層以上の珪藻土充填層を有し、かつ、該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填するか、或いは、該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に隣接させて、化学物質吸着能を有する担体の充填層を設けてなる水中化学物質回収用濾過器、
(2)化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能な担体である、上記(1)記載の水中化学物質回収用濾過器、
(3)化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能で、かつ、化学物質をソックスレーまたは高速溶媒抽出装置による処理で脱着可能な担体である、上記(1)記載の水中化学物質回収用濾過器、
(4)化学物質吸着能を有する担体が炭素質粒状吸着剤である、上記(1)記載の水中化学物質回収用濾過器、
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の濾過器を使用し、該濾過器の2層以上の珪藻土充填層における一方の最外層から、他方の最外層か、或いは、該他方の最外層に隣接配置させた化学物質吸着能を有する担体の充填層へと通水する工程を少なくとも有する、水中化学物質の回収方法、及び
(6)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の濾過器と、該濾過器の2層以上の珪藻土充填層の一方の最外層側から、他方の最外層か、或いは、該他方の最外層に隣接配置させた化学物質吸着能を有する担体の充填層へと被処理水を連続通水させるポンプとを有してなる水中化学物質の回収装置、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水中化学物質回収用濾過器によれば、高流速で通水しても、目詰まりせずに、各種環境水や排水等における水中浮遊物質に吸着した化学物質および溶存化学物質を一括して、迅速、簡便かつ高い回収率で回収することができる。
【0014】
また、化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能な担体であることにより、水中化学物質の回収作業前に濾過器を化学物質を含まない状態にする必要がある場合、濾過助剤(珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体)を450℃以上の温度で加熱するだけで、化学物質を含まない状態にすることができ、回収作業(操作)前の前処理が極めて簡単であるという利点がある。
【0015】
また、化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能で、かつ、化学物質をソックスレーまたは高速溶媒抽出装置による処理で脱着可能な担体であることにより、上記の回収作業(操作)前の前処理が極めて簡単であるという利点を有するとともに、水中化学物質の回収後は、濾過助剤(珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体)についてソックスレー抽出または高速溶媒抽出装置による処理を施すことで、回収した化学物質を抽出(脱離)できるので、回収した化学物質の測定・分析を簡単に行うことができる。
【0016】
また、本発明の濾過器に被処理水を連続通水させるポンプを設けた本発明の水中化学物質の回収装置によれば、多量の試料水(被処理水)を連続的に採取しながら濾過器に通水させて、水中化学物質を高い回収率で回収することができるので、所望の採取場所にて簡便かつ短時間に多量の試料水から分析に必要な水中化学物質を効率良く、かつ、迅速に採取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、望ましい実施の形態とともに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0018】
本発明の水中化学物質回収用濾過器は、(A)一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした2層以上の珪藻土充填層を設けるとともに、(B)該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填するか、或いは、(C)該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に隣接させて、化学物質吸着能を有する担体の充填層を設けたことが主たる特徴である。
【0019】
図1(a)は上記(A)及び(B)の構成を具備する第1態様の具体例、図1(b)は、上記(A)及び(C)を具備する第2態様の具体例を示している。すなわち、図1(a)及び図1(b)は2層以上の珪藻土充填層1が上層1a、中層1b、下層1cの3層で構成され、図1(a)では最小平均粒子径の珪藻土を充填した珪藻土充填層(下層1c)において珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填し(すなわち、下層1cが珪藻土と化学物質吸着能を有する担体の混合物の充填層2に形成されており)、図1(b)は、最小平均粒子径の珪藻土を充填した最外層(下層1c)の外側面に接するように化学物質吸着能を有する担体の充填層2’を設けた構成である。
【0020】
なお、後述するように、珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体は、濾過器の外装容器である筒状体内に充填されるが、図1(a)中の珪藻土充填層3は、化学物質吸着能を有する担体の筒状体(外装容器)外部への漏れ防止のために充填した珪藻土充填層であり、かかる珪藻土充填層3は必ずしも必要ではないが、かかる珪藻土充填層3を設ける場合は、通常、最小平均粒子径の珪藻土を充填した最外層(下層1c)と同じ珪藻土(最小平均粒子径の珪藻土)が使用される。
【0021】
[珪藻土充填層]
本発明の濾過器において、2層以上の珪藻土充填層は主として水中浮遊物質(以下、「SS」ともいう。)を捕集する手段であり、使用する「珪藻土」とは、所謂、「珪藻土粉末製品」と呼ばれるものである。該珪藻土粉末製品には、一般に、(1)採掘した天然の原鉱を粉砕、乾燥、分級した製品(乾燥品:未焼成品)、(2)乾燥品を焼成し、解砕、分級した焼成品、(3)乾燥品に融剤を加えて焼成し、解砕、分級した融剤焼成品の3つのタイプがあるが、本発明では、いずれのタイプの珪藻土粉末製品も使用できるが、迅速及び高回収率という観点から、焼成品若しくは融剤焼成品が好ましく、融剤焼成品が特に好ましい。珪藻土粉末製品は上市されており、市販品を使用することができる。また、本発明で使用する珪藻土は平均粒子径が1〜1000μmの範囲内であるのが好ましい。
【0022】
2層以上の珪藻土充填層において、珪藻土は、一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填される珪藻土の平均粒子径が順次小さくなるように、各層に充填すればよい。
【0023】
本発明において、2層以上の珪藻土充填層は、2層(上層、下層)若しくは3層(上層、中層、下層)が好ましい。
【0024】
2層若しくは3層である場合、濾過器の通水性の点から、最小平均粒子径の珪藻土が充填される他方の最外層(下層)では、平均粒子径が1μm以上、好ましくは10μm以上の珪藻土を充填することが重要である。また、SSを高濃度(具体的にはSS濃度が10mg/L以上)で含む試料についても良好な通水性を確保するためには、最大平均粒子径の珪藻土が充填される一方の最外層(上層)には、平均粒子径が10μm以上、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上の珪藻土を充填するのが好ましい。また、中層を用いる場合(3層構成とする場合)は、中層に平均粒子径が10μm以上(好ましくは平均粒子径60μm以上)、上層に平均粒子径が80μm以上の珪藻土を用いるのが好ましい。なお、上層に充填する珪藻土の平均粒子径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、とりわけ好ましくは200μm以下である。
【0025】
上層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、ジーエルサイエンス社製のCelite560(平均粒子径:95.7μm)が挙げられ、中層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、昭和化学工業社製のラヂオライト♯3000(平均粒子径:74.9μm)が挙げられる。
【0026】
下層に充填する平均粒子径が最小の珪藻土は、高いSS回収率(95%以上)を達成するために重要であり、中層に充填する珪藻土よりも平均粒子径が小さい珪藻土であれば使用できるが、好ましくは平均粒子径が60μm未満、特に好ましくは50μm以下である。下層に充填する珪藻土の具体例としては、例えば、ジーエルサイエンス社製のCelite545(平均粒子径:46.5μm)が挙げられる。
【0027】
2層または3層である場合の、上層、中層、下層における珪藻土の充填量比は、特に限定はされないが、より大きな流速および高い回収率を得るために、上層/中層/下層=5〜9/4〜0/1(重量比)であるのが好ましい。より好ましくは、上層/中層/下層=5.5〜8.5/3.5〜0.5/1(重量比)である。
【0028】
なお、珪藻土充填層を4層以上にする場合、通常、上記3層(上層、中層、下層)を基本層として、その他の層をさらに追加するのが好ましく、例えば、非常に細かいSSを含む試料については、他方の最外層(下層)のさらに外側に該最外層に充填する珪藻土の平均粒子径それよりも平均粒子径がさらに小さい珪藻土の充填層を設ける態様がある。かかる珪藻土の具体例としては、例えば、Hyflo Super−Cel(和光純薬工業、Cat No.534−02315、平均粒子径:30.1μm)等が挙げられる。このような珪藻土充填層を設ける場合、珪藻土の充填量は他方の最外層(下層)の珪藻土の充填量の0.5〜8重量倍程度が好ましい。
【0029】
また、濾過器全体における珪藻土の充填量(2層以上の珪藻土充填層に使用する珪藻土の総充填量)は、特に限定はされないが、水中浮遊物質の回収後、浮遊物質に吸着した化学物質をソックスレー抽出または高速溶媒抽出装置による抽出を行う際に1回の抽出操作で終了させることが可能な量が好ましい。例えば、一般的なソックスレー抽出装置としては150〜2000mL容量のものが市販されており(例えば、イワキガラス社製)、2000mLを使用する場合は濾過器全体における珪藻土の充填量が150g程度までであるなら抽出可能である。すなわち、濾過器全体における珪藻土の充填量は約150g以下が好ましい。ただし、少なすぎると、水中浮遊物質の回収効率が低下するので、濾過器全体における珪藻土の充填量が15g程度以上が好ましい。約15g以上であれば、濾過器を構成する外装容器内に平均粒子径が順次小さい(大きい)2層以上の珪藻土充填層を支障なく形成することができる。
【0030】
ここで、「ソックスレー」とは、最下部に溶媒を入れたフラスコ、中間に固体の試料を入れたろ紙あるいは焼結ガラスでできた容器、最上部に冷却管をそれぞれ設けた構成の装置をさす。フラスコを加熱すると溶媒は蒸発し、最上部の冷却管で凝結する。この溶媒は滴下する際に固体試料に滴り落ち、目的成分を少量溶かしこんだ後、フラスコへと戻る。通常の場合、目的成分は溶媒より沸点が高いため、このサイクルを繰り返すことで、フラスコ内には徐々に目的成分が濃縮されていくことになる。還流する溶媒は目的成分を含まないので飽和することはなく、比較的少量の溶媒で効率よく抽出を行うことができる。
【0031】
また、「高速溶媒抽出装置」とは、液体の溶媒を高温・高圧で用いることにより、常圧で抽出するソックスレー抽出と比較すると短時間かつ少量の溶媒で抽出可能な装置である。抽出処理にかかる全ての操作は自動的に行われるため、ソックスレーより簡易な抽出法である。かかる装置の具体例としては、例えば、ASE−100、ASE−200、ASE−300(いずれも日本ダイオネクス社製、ASE:Accelerated Solvent Extractor)等が挙げられる。また、高速加熱流下抽出タイプのものとして、SE−100型(ダイアインスツルメンツ社製)等が挙げられる。
【0032】
[化学物質吸着能を有する担体の充填層]
本発明でいう「化学物質吸着能を有する担体」としては、水中に溶存する化学物質に対して吸着性を有する固体状物質(吸着剤)(ただし、珪藻土は除く。)であれば、特に制限なく使用でき、例えば、炭素質粒状吸着剤、疎水性合成ポリマー剤、シリカゲルに疎水性を付与するために適当なアルキル鎖を付加した素材等が挙げられる。
【0033】
これらの中でも、濾過器の前処理(化学物質を含まない状態にする作業)を考慮した場合、化学物質吸着能を有する担体は450℃で加熱処理可能なものが好ましく、さらに、回収した化学物質の測定・分析のしやすさを考慮した場合、450℃で加熱処理可能で、かつ、吸着した化学物質をソックスレーまたは高速溶媒抽出装置による処理で脱着可能な担体が好ましい。このような好ましい担体としては、炭素質粒状吸着剤が挙げられる。
【0034】
なお、炭素質粒状吸着剤は、450℃で加熱処理可能で、かつ、吸着した化学物質をソックスレーまたは高速溶媒抽出装置による処理で脱着可能である点で好ましいだけでなく、ダイオキシン類などの疎水性有機化合物の吸着性に優れる点でも好ましいものである。
【0035】
炭素質粒状吸着剤の形態は、粒状であれば特に限定されず、多角体状や無定形状などであってもよいが、通常、球状や楕円体状(特に球状)である。また、炭素質粒状吸着剤は、単独の粒子で粒状形態を形成したものでも、複数の粒子を組み合わせた成形体であってもよい。
【0036】
炭素質粒状吸着剤の平均粒子径は、例えば、1〜100μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜40μm(特に10〜30μm)程度である。また、最大粒径は、例えば、100μm以下、好ましくは30〜100μm程度である。複数の粒子を組み合わせた成形体の平均径は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm程度である。
【0037】
また、炭素質粒状吸着剤のBET比表面積は、例えば、1〜800m/g、好ましくは1〜700m/g、さらに好ましくは1〜600m/g(特に1〜500m/g)であり、例えば、10〜300m/g程度であってもよい。BET比表面積がこの範囲にあると、炭素質粒子が適度な吸着力を有するため、塩素又は臭素含有化合物を吸着した後、容易に塩素又は臭素含有化合物を脱離又は脱着できるので、回収効率が高い。
【0038】
また、炭素質粒状吸着剤において、ESCA分析におけるO/C値(炭素原子に対する酸素原子のモル比)は、例えば、0.05以下(例えば、0.001〜0.05)、好ましくは0.001〜0.045、さらに好ましくは0.005〜0.04(特に0.01〜0.04)程度である。O/C値がこの範囲にあると、炭素質粒子が適度な吸着力を有するため、塩素又は臭素含有化合物を有効に回収できる。
【0039】
吸着物が容易に脱離するという観点からは、O/C値は、例えば、0.05以下(例えば、0.001〜0.05)、好ましくは0.001〜0.04、さらに好ましくは0.003〜0.03(特に0.005〜0.025)程度であってもよい。
【0040】
炭素質粒状吸着剤は、多孔質の炭素質粒子であってもよい。多孔質粒子の平均孔径は、例えば、0.5〜10nm、好ましくは0.7〜5nm、さらに好ましくは0.8〜3nm(特に1〜2nm)程度である。吸着物が容易に脱離するという観点からは、平均孔径は、例えば、0.5〜5nm、好ましくは0.6〜3nm、さらに好ましくは0.7〜2nm(特に0.5〜1.5nm)程度であってもよい。
【0041】
BET法における空孔率は、例えば、0.0001〜0.5ml/g、好ましくは0.0005〜0.4ml/g、さらに好ましくは0.001〜0.3ml/g(特に0.01〜0.3ml/g)程度である。吸着物が容易に脱離するという観点からは、空孔率は、例えば、0.001〜0.3ml/g、好ましくは0.002〜0.2ml/g、さらに好ましくは0.003〜0.3ml/g(特に0.005〜0.05ml/g)程度であってもよい。
【0042】
炭素質粒状吸着剤はグラファイトカーボン粒子や多孔質グラファイトカーボン粒子で構成されていてもよく、平均粒子径が3〜50μm程度で、比表面積が1〜700m/g程度で、かつO/C値が0.001〜0.045程度のグラファイトカーボン粒子や、平均孔径が0.5〜10nm程度で、かつ、BET法における空孔率が0.0001〜0.5ml/g程度である多孔質グラファイトカーボン粒子が特に好ましい。
【0043】
グラファイト状カーボン粒子は、6員環炭素が平面上に連なった層が積層した層状構造を有するグラファイト状カーボンで構成され、粒子の表面において、各層がエッジ面となっている。
【0044】
炭素質粒状吸着剤は、原料となる炭素質成分(炭素前駆体)を、酸化性雰囲気で架橋重合させることにより酸素を導入して安定化処理した後、賦活処理して製造できる。以下、これについて説明する。
【0045】
(炭素前駆体)
炭素前駆体としては、光学的異方性組織分率(異方性組織視野分率)が50%以上(例えば、50〜100%)である炭素質成分を用いる。炭素質成分の異方性組織分率は、より高い方が好ましく、60%以上(例えば、60〜100%)、好ましくは70%以上(例えば、70〜99.99%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、90〜99.9%)である。光学的異方性の高い炭素質成分を原料として用いると、グラファイトカーボンなどの特定の比表面積を有する炭素質粒子を形成するために有利である。
【0046】
炭素前駆体は、具体的には、ポリアクリロニトリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリノジック系樹脂、(再生)セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などの樹脂成分であってもよいが、石油又は石炭系コークス、石油又は石炭系ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛などの鉱物由来の炭素材料であるのが好ましい。これらの炭素質成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの前駆体の中でも、光学的異方性組織を有するピッチ(異方位ピッチ)やメソカーボンマイクロビーズが好ましい。異方性ピッチとしては、石油系又は石炭系重質油を熱処理して得られる軟化点200℃以上を有するピッチや、縮合多環水素化合物(例えば、ナフタレン、アントラセン、フエナントレン、アセナフテン、アセナフテレン、ビレン等)の誘導体を触媒(HF、BFなど)を用いて調製した軟化点200℃以上を有するピッチなどが挙げられる。
【0047】
炭素前駆体の形状は、特に限定されないが、粒状吸着剤の生産性の点から、球状などの粒状が好ましい。粒状炭素前駆体の平均粒子径は、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜70μm、さらに好ましくは5〜50μm(特に10〜40μm)程度である。炭素前駆体の粒径が大きすぎると、酸素による架橋結合が不均一となり、高い比表面積の吸着剤を効率よく調製するのが困難となる。一方、粒径が小さすぎると、安定化処理や賦活処理のハンドリングが難しくなるとともに、カラムなどで抽出する場合に圧力損失が大きくなる。また、粒径が小さすぎると、製造が困難になり、経済性が低下する。
【0048】
炭素前駆体は、予め複数の粒状炭素前駆体を組み合わせて成形体としてもよい。成形体の平均径は、例えば、0.1〜15mm、好ましくは0.3〜10mm、さらに好ましくは0.5〜6mm程度である。なお、成形体は、酸素による架橋重合後に粉砕することにより、大きさを調製することもできる。
【0049】
成形体は、高い強度は必要とされず、各処理工程で形状が保持できればよいため、水を添加するだけで調製してもよい。さらに、多糖類(澱粉、セルロース、メチルセルロースなど)や合成樹脂(ポリエチレン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂など)などのバインダー成分を、炭素前駆体に対して、例えば、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度添加して成形体を調製してもよい。成形体の調製方法としては、例えば、溶媒(水やエチルアルコールなど)を用いてバインダー成分を溶解した溶液中に浸漬する方法などが挙げられる。浸漬した成形体を溶液中から取り出した後、酸素による安定化処理、賦活処理、必要に応じて炭化処理などを行えば、成形体の形状保持はより安定化し、製造時のハンドリングが容易となる。成形体の形状は、特に限定されず、球状や楕円体状、板状(チップ状)などの形状であってもよい。また、成形方法としては、慣用の方法を用いることができ、例えば、ノズルからの押出法、プレス法、又はこれらの方法を組み合わせた方法などを用いることができる。
【0050】
前記炭素前駆体の中でも、メソカーボンマイクロビーズは球状であるため、粉砕工程や、球状化処理又は成形工程が不要であり好適である。
【0051】
(安定化処理工程)
酸素の導入による安定化処理工程(不融化工程)では、酸化性雰囲気で加熱して酸素架橋重合させる。酸化性雰囲気における酸化性気体としては、酸素やオゾンなどの酸化性物質を含有していればよく、酸化性物質は不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウムガスなど)で希釈して用いてもよい。酸化性気体中の酸化性物質の含有量は、1〜100容量%、好ましくは5〜80容量%、さらに好ましくは10〜50容量%程度である。酸化性気体としては、通常、酸素を含有する気体、例えば、空気を用いる。空気は、さらに、酸素、オゾン、窒素酸化物、水蒸気などと組み合わせて用いてもよい。
【0052】
酸素架橋重合による酸素の導入量は、例えば、安定化処理終了後に、酸素の割合が、炭素前駆体中5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜30重量%程度となる量である。
【0053】
この工程における加熱温度は、例えば、100〜450℃、好ましくは150〜400℃、さらに好ましくは200〜400℃程度である。加熱時間は、昇温速度に応じても変わるが、例えば、1〜5℃/分程度で徐々に昇温した場合には、例えば、1〜100時間、好ましくは2〜50時間程度である。
【0054】
(賦活処理工程)
賦活処理工程では、安定化処理された炭素前駆体が賦活処理され、賦活処理の方法としては、慣用の方法、例えば、ガス賦活法や化学的賦活法などを採用できる。
【0055】
ガス賦活法では.例えば、前記炭素前駆体を、水蒸気、酸素、二酸化炭素又はこれらの混合物(通常、水蒸気)などのガス状賦活剤を用いて加熱処理してもよい。賦活温度や賦活時間は、目的とする吸着剤の物性(比表面積やO/C値など)に応じて適宜選択できるが、賦活温度は、例えば、700〜950℃、好ましくは750〜900℃、さらに好ましくは800〜900℃程度である。賦活時間は、例えば、1〜100分、好ましくは3〜60分、さらに好ましくは5〜40分程度である。特に、吸着物が脱離しやいものにするという観点からは、賦活時間を長めにするのが好ましく、例えば、5〜100分、好ましくは10〜80分、さらに好ましくは20〜60分程度であってもよい。
【0056】
化学的概括法では、例えば、前記炭素前駆体を、強アルカリ、塩化亜鉛.リン酸などの賦活剤を用いて加熱処理してもよい。賦活温度は、例えば、400〜950℃(例えば、600〜900℃)、好ましくは500〜950℃、さらに好ましくは600〜900℃程度であり、賦活時間は、例えば、1〜100分、好ましくは3〜60分程度である。本発明では、簡便性などの点から、ガス賦活法を好ましく用いることができる。
【0057】
(炭化工程)
本発明では、賦活処理した炭素質成分を、さらに不活性雰囲気で熱処理してもよい。特に、吸着物の容易な脱離が要求される用途に使用する場合に有効である。不活性雰囲気としては、例えば、窒素やヘリウムガスなどの不活性ガス下や真空下などが挙げられる。熱処理工程においても、加熱温度、圧力、熱処理時間は、目的とする吸着剤の物性に応じて適宜コントロールすればよく、例えば、加熱温度は、好ましくは700〜1800℃、さらに好ましくは900〜1500℃、とりわけ好ましくは1000〜1400℃程度である。加熱保持時間は、例えば、10分〜10時間、好ましくは20分〜5時間、さらに好ましくは30分〜3時間程度である。
【0058】
本発明において、濾過器全体における化学物質吸着能を有する担体の充填量は、特に限定はされないが、2層以上の珪藻土充填層における他方の最外層に充填する珪藻土の充填量に対する重量比(珪藻土:化学物質吸着能を有する担体)が1:3〜15であるのが好ましく、1:8〜12であるのが特に好ましい。かかる好ましい範囲にすることで、効率よく化学物質を吸着でき、また、既販のソックスレー抽出装置を用いて一回もしくは数回の抽出操作で化学物質を回収できる。
【0059】
[濾過器]
本発明において、濾過器は、例えば、ステンレス製、ガラス製、樹脂製(ポリスチレン、ポリプロピレン)等からなる、例えば、円筒状等の筒状体(外装容器)の内部に、2層以上の珪藻土充填層及び化学物質吸着能を有する担体の充填層を形成することで作製される。
【0060】
筒状体はその軸線方向の両端開口が底板で閉鎖され、一方の底板に被処理水の流入口が形成され、他方の底板に被処理水の排出口が形成される。2枚の底板は少なくとも一方が着脱自在になっており、筒状体の一端の開口から珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体を充填していく。
【0061】
他方の底板に形成された被処理水の排出口を塞ぐように濾紙を装着し、該濾紙の上に、珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体を充填していく。なお、通常、濾紙は濾紙と略同一面積の金網に重ねてOリング等で固定した状態で使用する。これは、珪藻土および化学物質吸着能を有する担体の漏れを防ぐためである。
【0062】
濾紙としては、定性濾紙やガラス繊維濾紙等が使用できるが、化学物質を含まない状態にする必要がある試験では、450℃で4時間以上加熱できるガラス繊維濾紙の使用が適している。特に、好ましいものとして、アドバンテック東洋(株)製のGA−100が挙げられる。また、金網は目開きが0.5〜2.0mm程度が好ましい。
【0063】
まず、通水方向の後段側(被処理水の排出口側)に配置させる、化学物質吸着能を有する担体の充填層用の化学物質吸着能を有する担体を充填するか、最小平均粒子径の珪藻土充填層を形成するための最小平均粒子径の珪藻土を充填する。珪藻土を充填する場合は、充填する珪藻土のうち一部または全量に対して化学物質吸着能を有する担体を予め混合してから充填するか、珪藻土の充填作業の途中か最終段階で化学物質吸着能を有する担体を充填する。次いで、平均粒子径が小さい珪藻土から順次充填して、2層以上の珪藻土充填層を形成する。珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体の充填は乾式充填で行うのが好ましく、乾式充填することで、湿式充填で充填した場合に比べて、濾過器の通水性がより一層向上し、また、通水の際の編流が生じにくく、SSの濾過(回収)がより安定に行われる。最大平均粒子径の珪藻土充填層を形成した後は、充填した担体や珪藻土などが落下して漏れたり、担体や珪藻土の層が崩れるのを防止するために、例えば、グラスウールを珪藻土充填層の上に敷き、さらにその上に金網(目開きは0.5〜2.0mm程度)を載せた後、被処理水の流入口が形成された一方の底板で円筒状部材を閉じる。
【0064】
なお、本発明の水中化学物質回収用濾過器は、特にダイオキシン類の定量・分析に好適な濾過器となるよう構成しており、濾過助剤(珪藻土及び化学物質吸着能を有する担体)、ガラス繊維濾紙、グラスウール等は予め450℃以上で加熱(通常、4時間以上)して、ダイオキシンフリーにし、ダイオキシン類等の化学物質に汚染されないように、安全キャビネット内で、円筒体への充填(組み付け)作業を行う。
【0065】
本発明の水中化学物質の回収方法は、試料水(被処理水)を濾過器の流入口へ導いて、濾過器内を2層以上の珪藻土充填層のうちの一方の最外層(上層)から他方の最外層(下層)か或いは該他方の最外層(下層)に隣接配置させた化学物質吸着能を有する担体の充填層へと通水させ、濾過器の排出口から水を排出することで実施される。
【0066】
ポンプに真空系のものを用いるときは、濾過器を吸引ビンに接続し、吸引ビンとポンプをチューブにて接続する。一方、ポンプに圧送系のものを用いるときは排出口とポンプとの間を完全に水で満たしておく。これらを接続したのち、ポンプを駆動して連続通水させる装置(すなわち、本発明の水中化学物質回収装置)を構成する。当該装置にて水中化学物質の回収を行うことで、多量の試料水(被処理水)を連続的に採取しながら濾過器に通水させて、水中化学物質を高い回収率で回収することができるので、所望の採取場所にて簡便かつ短時間に多量の試料水から分析に必要な汚染物質を採集することができる。
【0067】
本発明の水中化学物質回収用濾過器は、水中の各種化学物質を回収するために用いることができる。珪藻土充填層で捕集された水中浮遊物質及び化学物質吸着能を有する担体に吸着された化学物質は溶媒を用いて脱離させることにより回収できる。特に、化学物質吸着能を有する担体に炭素質粒状吸着剤(グラファイトカーボン粒子、多孔質グラファイトカーボン粒子)を使用することで、適度に酸素原子を含むため、塩素や臭素原子などの極性基を有する疎水性有機化合物を効率よく吸着し、かつ溶媒を用いて容易に脱離することができる。
【0068】
水中化学物質(疎水性有機化合物等)を脱離するために用いる溶媒としては、目的とする水中化学物質(疎水性有機化合物等)の種類に応じて適宜選択できる。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジタロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素や、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピランなどの環状エーテルなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち.炭化水素類、特に、芳香族環を含む化合物を回収する場合には、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素が好ましい。溶媒を用いて脱離する方法も特に限定されないが、比較的簡易かつ高価な装置を必要としないという点からソックスレー抽出法などを好ましく用いることができる。
【0069】
本発明の水中化学物質回収用濾過器は、水中に含まれる微量の疎水性有機化合物であっても効率よく回収できる。特に各種環境の水において微量成分の検出や測定が要求されている有害物質、例えば、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、ミクロシステンなどの回収に適している。これらの有害物質の中でも、近年、環境中で分解されにくく生物蓄積しやすい化合物として注目されているPOPs(Persistent Organic Po11utants、残留性有機汚染物質)、特に、例えば、塩素又は臭素などのハロゲン原子で置換された芳香族環骨格を有する化合物、例えば、ダイオキシン類や塩素系農薬の回収に適している。
【0070】
ダイオキシン類としては、例えば、ポリ塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン類(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)などが挙げられる。
【0071】
PCDDsとしては、例えば、三塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称TrCDD)[例えば、2,3,7−TrCDDなど]、四塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称TeCDD)[例えば、2,3,7,8−TeCDDなど]、五塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称PeCDD)[例えば、1,2,3,7,8−PeCDDなど]、六塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称HxCDD)[例えば、1,2,3,4,7,8−HxCDD、1,2,3,6,7,8−HxCDD、1,2,3,7,8,9−HxCDDなど]、七塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称HpCDD)[例えば、1,2,3,4,6,7,8−HpCDDなど]、八塩化ジベンゾ・パラ・ダイオキシン(略称OCDD)などが挙げられる。
【0072】
PCDFsとしては、例えば、四塩化ジベンゾフラン(略称TeCDF)[例えば、2,3,7,8−TeCDFなど]、五塩化ジベンゾフラン(略称PeCDF)[例えば、1,2,3,7,8−PeCDF、2,3,4,7,8−PeCDFなど]、六塩化ジベンゾフラン(略称HxCDF)[例えば、1,2,3,4,7,8−HxCDF、1,2,3,6,7,8−HxCDF、1,2,3,7,8,9−HxCDF、2,3,4,6,7,8−HxCDFなど]、七塩化ジベンゾフラン(略称HpCDF)[例えば、1,2,3,4,6,7,8−HpCDF、1,2,3,4,7,8,9−HpCDFなど]、八塩化ジベンゾフラン(略称OCDF)などが挙げられる。
【0073】
PCBsとしては、例えば、2個のベンゼン環が同一平面状にあって扁平な構造を有する化合物であって、コプラナーPCB(Co−PCBs)とも称される。このようなCo−PCBsとしては、例えば、ノンオルトCo−PCBs(例えば、3,4,4′,5−TeCB、3,3′,4,4′−TeCB、3,3′,4,4′,5−PeCB、3,3,4,4′,5,5′−HxCBなど)、モノオルトCo−PCBs(例えば、2′,3,4,4′,5−PeCB、2,3′,4,4′,5-PeCB、2,3,4,4′,5−PeCB、2,3,3′,4,4′−PeCB、2,3′,4,4′,5,5′−HxCB、2,3,3′,4,4′,5−HxCB、2,3,3′,4,4′,5′−HxCB、2,3,3′,4,4′,5,5′−HpCBなど)、ジオルトCo−PCBs(例えば、2,2′,3,4,4′,5,5′−HpCB、2,2′,3,3′,4,4′,5−HpCBなど)などが挙げられる。
【0074】
なお、PCBsの中でも、2個のベンゼン環が同一の平面状構造を形成していない化合物は、Co−PCBsに比較して毒性も低く、ダイオキシン類として分類されるCo−PCBsとは区別される。このような非コプラナーPCBsとしては、例えば、塩化ビフェニル(略称MoCB)[例えば、4−MoCBなど]、二塩化ビフェニル(略称DiCB)[例えば、4,4′−DiCBなど]、三塩化ビフェニル(略称TrCB)[例えば、2,4,4′−TrCBなど]、四塩化ビフェニル(略称TeCB)〔例えば、2,3,4,4′−TeCBなど]、五塩化ビフェニル(略称PeCB)[例えば、2,3,3′,4,4′−PeCBなど]、六塩化ビフェニル(略称HxCB)[例えば、2,2′,3,4,5,5′−HxCBなど〕、七塩化ビフェニル(略称HpCB)[例えば、2′,3,3′,5,5′,6−HpCBなど]、八塩化ビフェニル(略称OCB)例えば、2,2′,3,3′,4,4′,5,5′−OCBなど]、九塩化ビフェニル2[(略称NCB)[例えば、2,2’,3,3′,4,5,5′,6,6′−NCBなど〕、十塩化ビフェニル(略称DeCB)などが挙げられる。これらの非コプラナーPCBsは、前記構造を有するため、Co−PCBsに比べて、グラファイト状炭素粒子に対する吸着性も低い。
【0075】
有機塩素系農薬としては、例えば、アルドリン、ディルドリン、クロルデン、エンドリン、六塩化ベンゼン(BHC)、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、ジタロロジフェニルジクロロエタン(DDD)などが挙げられる。
【0076】
これらの中でも、極性基として塩素原子を有し、かつ、2個の芳香族環で構成された平面構造を有するダイオキシン類、例えば、PCDDs、PCDFs,Co−PCBsの回収に適している。
【0077】
本発明の水中化学物質回収用濾過器では、例えば、SS濃度が10mg/L以上、さらには40mg/L以上である被処理水(試料水)10〜100Lを、0.5L/min以上、好ましくは1.0L/min以上、より好ましくは2L/min以上の通水速度で通水して、水中化学物質を90%以上回収することができる。
【0078】
本明細書でいう、珪藻土(濾過助剤)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法に基づき測定した。例えば、「Celite」はX100 Microtrac Particle Size Analyzer(日機装取り扱い)により、「ラヂオライト」はPro−7000S(セイヒン企業社製)により測定した。
【0079】
また、安定化処理後の炭素質成分における酸素の割合、炭素質粒状吸着剤(グラファイト状炭素粒子)の比表面積、平均細孔径、空孔率(細孔容積)、酸素含有量(O/C値)等の測定方法は以下の通りである。
【0080】
[炭素質成分における酸素の割合]
安定化処理後の炭素質成分における酸素の割合を、標準物質として、アンチピリン(1,5−ジメチル−2−フェニル−1,2−ジヒドロピラゾール−3−オン)及びベンゾイックアシッド(安息香酸)を用いて、CHNコーダーMT−5測定装置(ヤナコ社製)によって測定した。
【0081】
[比表面積、平均細孔径、細孔容積]
グラファイト状炭素粒子の比表面積、平均細孔径、細孔容積(空孔率)は、ガス吸着量測定装置(ユアサアイオニクス(株)製「AUTOSORB−6」)を用いて、BET法によって測定した。
【0082】
[ESCA分析におけるO/C値]
安定化処理後の炭素前駆体におけるO/C値(炭素原子に対する酸素原子のモル比)は、X線光電子分光分析装置(PHI社製「PHlI5700 ESCA System」)を用いて測定した。
【0083】
[平均粒子径]
乾式レーザー回折式粒子径分布法で測定した。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例と比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
【0085】
先ず、濾過助剤(珪藻土)による通水性改善効果を測るため以下の予備試験を行った。
【0086】
予備試験1(水道水を用いた濾過助剤の選出)
3種のブフナー形のガラス濾過器(PYREX(登録商標)、25G3(濾過面積:64cm)、26G3(濾過面積:95cm)、151G3(濾過面積:133cm))に、表1に示した5種の濾過助剤(珪藻土)を0〜120gの範囲で充填した濾過器に、水道水を通水し、濾過助剤(珪藻土)の種類、充填量および濾過面積を変えたときに得られる流速を測定した。なお、充填時には濾過面積と同じ面積に切り抜いた濾紙(ADVANTEC社製、Filter Paper 101)の上に、蒸留水でスラリー状とした濾過助剤を真空ポンプ(日立社製、PX51N型)で引きながら添加後、上面を押さえ均一にし、助剤上部にも助剤下部と同様の濾紙を敷いた(湿式充填)。その結果、用いた3種の濾過面積において、一般的な大きさのソックスレーに供せる最大量である60g充填下で目標とする流速2L/minを維持できた濾過助剤(珪藻土)はCelite560とラヂオライト#3000であった(図2(A)〜(C))。よって、濾過助剤(珪藻土)には、Celite560とラヂオライト#3000を選出した。
【0087】
【表1】

【0088】
予備試験2(模擬試料水1Lを用いた濾過助剤の組合せと充填量の検討)
上記の予備試験1の結果を踏まえ、Celite560とラヂオライト#3000およびこれら両者よりも平均粒子径が小さいCelite545(平均粒子径:46.5μm)を予備試験1と同様の方法(湿式充填)により、粒子径の大きいものから上層に置いてガラス濾過器(PYREX(登録商標)、25G3)に充填し、各濾過助剤の組合せと充填量についての最適化の検討を行った。試料水は、都市域沿岸の海洋表層底質6.94gを水道水5Lに縣濁後、10分攪拌、20分超音波、10分攪拌し、SS濃度が478mg/Lの模擬試料水を調製した。
【0089】
水中浮遊物質の測定は、下水試験方法第12節浮遊物質(SS)に従い、回収率は、処理後濾液中浮遊物質濃度を処理前濾液中浮遊物質濃度で除することにより算出した。測定結果として、濾過助剤無添加(濾紙のみ)の場合、濾紙上で水中浮遊物質が堆積し、流速は0.099L/minと非常に遅かったが、濾過助剤を添加することにより流速は徐々に改善され、特にCelite560を5g添加することにより流速が3倍以上向上した(表2)。また、水中浮遊物質の回収率については、濾過助剤を添加することによりいずれも95%を上回った。
【0090】
【表2】

【0091】
上記予備試験2の結果から、下層にCelite560を充填し、中層にラヂオライト#3000を充填し、上層にCelite545を充填した構成、すなわち、上層、中層、下層の順に平均粒子径が大きい珪藻土を充填した濾過器を使用することで、十分に高い通水性(流速)を示し、かつ、95%を超えるSS回収率を達成できることがわかった。次に模擬実試料を用いて、濾過器の好ましい構成について検討した。
【0092】
予備試験3
処理目標を「80L(SS濃度40mg/L)の模擬実試料を60g以下のろ過助剤(ろ過面積64cm)を用いて2〜3時間以内に処理し、SS回収率95%以上を得る」ことに設定した。一方、先の予備試験2の結果においてCelite560の添加により流速の顕著な改善が見られたことから、Celite560に着目し、種々検討を行なったところ、Celite560/ラヂオライト#3000/Celite545=7g/2g/1gの充填割合で比較的良好な結果が得られた(データ省略)。このことから、ここでは、本充填条件におけるSS回収率を確認することとした。なお、実験は、操作の簡易化のために、1/5スケール(試料の量16L、濾過助剤量12g以下、濾過面積11.6cm)で行なった。さらに、将来の商品化も視野に入れ、本実験以降は以下に記すような乾式での助剤充填に切り替えた。
【0093】
濾過器に隙間ができないように同じ寸法に切り抜いたガラス繊維濾紙(GA−100)をガラス濾過器に敷いたのち、Celite545を1g、ラヂオライト#3000を2g、Celite560を7gとり、吸引(差圧:−20KPa、調圧器で調整)しながら順に添加した。濾過助剤添加時には、各層とも吸引(差圧:−20KPa)しながら、濾過助剤表面をスパーテルとバイブレーターで平坦にし、最後にグラスウール0.5gを濾過助剤上に広げた(乾式充填)。通水実験については、予備試験2に従ったが、SS濃度は約40mg/Lとした。その結果、同様の条件で行った2回の実験の再現性が見られ(図3)、湿式充填時に確認された偏流も見られなかった。回収率についてもほぼ95%を達成した(表3)。
【0094】
【表3】

【0095】
予備試験4
表4に示す実験条件でフルスケールでの実験を行った。
用いた試料およびその他の実験条件は予備試験3に従った。測定結果として、図4(A)〜(C)に示されるように、流速については線速度(LV)、空間速度(SV)ともに、1/5スケールにおける結果とほぼ一致した。回収率については97%であり、1/5スケールにおける結果よりも若干良好であった。
【0096】
【表4】

【0097】
予備試験5
中層(ラヂオライト♯3000)の濾過助剤量の増減可否について検討した。
予備試験3では上層/中層/下層の比率を7g/2g/1gとしたが、ここでは表5に示す割合で上層と中層の割合を変え、SS回収率と濾過速度を確認した。その結果、表6に示すように中層なしの条件(条件C)(上層/中層/下層=9/0/1)におけるSS回収率の低下、あるいは中層の比率増加(条件B)(上層/中層/下層=5/4/1)における濾過速度の低下は見られず、この範囲であれば試料性状に合わせて上層と中層の比率を変更しても問題ないことを確認した。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
実施例1
(1)実験用試料
ブランク(試料No.1)測定では、蒸留水(和光純薬工業、高速液体クロマトグラフ用、Cat No. 042−16973)30LをGCカラム化固相で濾過した。SS及びダイオキシン添加試料(試料No.2、3)については、蒸留水にSS試料を40mg/Lになるように添加し、また、13C−DXN(TEF含有29種Mixture)を5pg/L(8塩素のOCDD/Fのみ10pg/L)となるように添加した。
【0101】
(2)グラファイトカーボン(GC)の調製
異方性組織分率98%以上、平均粒子径30μmのメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)粉末を、空気雰囲気下で、2℃/分の平均速度で常温から350℃まで昇温し、さらに350℃で20時間、酸素に架橋重合処理を行なった。ついで、小型管状炉内で窒素雰囲気下、10℃/分の平均速度で常温から850℃まで昇温し、850℃に到達した時点で水蒸気を吹き込みながら、10分間保持して賦活処理することにより、グラファイトカーボン(GC)粒子を調製した。グラファイトカーボン(GC)粒子は、平均粒子径:20μm、比表面積:10〜100(83.4)m/g、平均細孔径:1.840nm、細孔容積:0.047mL/gであった。
【0102】
(3)GCカラム(濾過器)の作製
アクリル容器(濾過面積:64cm)に表7に示した3種の濾過助剤(珪藻土)と(2)で調製したGC(比表面積:10〜100(83.4)m/g)を以下の割合で充填した。まず、最下層にCelite545−AWを5g充填後、Celite545−AWを5gとGC5gとを予め十分混合後、充填し、さらにラジオライト#3000を7.5g、Celite560を27.5gの順に充填した。なお充填時には、金網(φ90mm、目開き:1.14mm)の上に濾過面積と同じ面積に切り抜いたガラス繊維濾紙(ADVANTEC、GA−100)を2個のO−リング(φ90mm)で挟み込んだ状態でおき、その上に上記助剤を充填した。さらに助剤上部にはグラスウール2.5gを敷き、金網(φ90mm、目開き:1.14mm)を載せて固定した。なお予め、濾過助剤、ガラス繊維濾紙、グラスウールは、450℃、4時間の加熱処理によりDXNフリーとし、DXN・化学物質等に汚染されないように安全キャビネット内で充填した。
【0103】
【表7】

【0104】
(4)実験
GCカラム(濾過器)とマグネットポンプ(IWAKI、MD−20RZ−N)をホースでつなぎ、それらを呼び水(蒸留水)で満たした。マグネットポンプはインバーター(IWAKI、FE−105)で出力をダイアル(0〜1000)で変更可能とした。添加回収実験では、濾過速度1.0L/min以上(実測値:1.1L/min)として検討した。比較として公定法(液−液抽出法、JIS K0312(2005)に準拠)による検討も同時に行った(表8)。
【0105】
GCカラム(濾過器)に試料を通水後、カラム内容物を取り出し一日風乾後、円筒濾紙(Toyo Roshi、Cat No.84(28×100mm))に詰め込み、ソックスレー抽出器(SANSYO)にかけた。マントルヒーター(GLサイエンス、MS EAM−6−5)の温度を約50℃、冷却水の温度を10℃と設定し、抽出溶媒(トルエン約200mL)が10回/Hrで流れるようにマントルヒーターの温度を微調整しながら16時間抽出を行った。
【0106】
ソックスレー抽出液をロータリーエバポレーター(ヤマト科学社製、RE440)で濃縮・ヘキサン転溶後、JIS K0312(2005)に準拠し、多層シリカゲルカラム(和光純薬工業社製、Cat No.016−17833)、アルミナカラム(ICN/関東化学社製、Cat No.04569)により精製し、精製液をロータリーエバポレーターで濃縮後、GC−MSによる測定を行った。
【0107】
【表8】

【0108】
(5)実験結果
1.GCカラム(濾過器)からのブランク抽出
試料1のGCカラムをGC−MSにより測定した結果、極微量(0.011pg−TEQ/L)のダイオキシン類が検出された。
2.公定法とGCカラム抽出法の比較
公定法とGCカラム抽出法の測定結果はそれぞれ15.9pg−TEQ/Lと14.6pg−TEQ/Lとなり、公定法の数値を100%としたときのGCカラムの回収率は91.8%であった。以上の結果から、本GCカラム抽出法が流速1.1L/minにおいて目標回収率90%を達成できることを確認した(表9)。
【0109】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の濾過器における濾過助剤の配置構成(積層構成)の模式図であり、図1(a)は第1の態様の模式図、図1(b)は第2の態様の模式図である。
【図2】予備試験1(通水試験)での濾過面積毎の試験結果(濾過助剤添加量と流速との関係)を示す図である。
【図3】予備試験2の濾過器における濾過速度と処理液量との関係を示す図である。
【図4】予備試験3の濾過器における濾過速度と処理液量との関係(図(A))、線速度と処理液量との関係(図(B))、及び空間速度と処理液量との関係(図(C))を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1 2層以上の珪藻土充填層
1a 一方の最外層(上層)
1b 中層
1c 他方の最外層(下層)
2 珪藻土と化学物質吸着能を有する担体との混合物の充填層
2’ 化学物質吸着能を有する担体の充填層
3 珪藻土充填層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の最外層から他方の最外層へ向かうにつれて各層に充填する珪藻土の平均粒子径を順次小さくした2層以上の珪藻土充填層を有し、かつ、該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に珪藻土とともに化学物質吸着能を有する担体を充填するか、或いは、該2層以上の珪藻土充填層の他方の最外層に隣接させて、化学物質吸着能を有する担体の充填層を設けてなる水中化学物質回収用濾過器。
【請求項2】
化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能な担体である、請求項1記載の水中化学物質回収用濾過器。
【請求項3】
化学物質吸着能を有する担体が450℃で加熱処理可能で、かつ、化学物質をソックスレーまたは高速溶媒抽出装置による処理で脱着可能な担体である、請求項1記載の水中化学物質回収用濾過器。
【請求項4】
化学物質吸着能を有する担体が炭素質粒状吸着剤である、請求項1記載の水中化学物質回収用濾過器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の濾過器を使用し、該濾過器の2層以上の珪藻土充填層における一方の最外層から、他方の最外層か、或いは、該他方の最外層に隣接配置させた化学物質吸着能を有する担体の充填層へと通水する工程を少なくとも有する、水中化学物質の回収方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の濾過器と、該濾過器の2層以上の珪藻土充填層の一方の最外層側から、他方の最外層か、或いは、該他方の最外層に隣接配置させた化学物質吸着能を有する担体の充填層へと被処理水を連続通水させるポンプとを有してなる水中化学物質の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−330889(P2007−330889A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165368(P2006−165368)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】