説明

水中油型乳化化粧料

【課題】グリセリンを10〜25質量%と高配合した系で保湿効果に優れると共に、みずみずしい良好な感触を有し、べたつきがなく、しかも良好な乳化性および乳化安定性を有する水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】(a)グリセリン 10〜25質量%と、(b)「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」と、「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」と、「ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.)」から構成される界面活性剤と、(c)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上とを配合し、(b)のモル濃度の合計が、(c)のモル濃度を1としたときに0.2〜0.8であるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化化粧料に関し、さらに詳しくは、グリセリンを多配合してもべたつかず、さっぱりとした感触を有する水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりグリセリンは、高い保湿効果、肌荒れ改善効果といった肌改善効果を有する化粧品成分として知られている。しかし肌改善効果を得るためにグリセリンを高配合しようとした場合、高い肌改善効果が得られる反面、みずみずしさや、有効成分が肌に浸透していく感じの浸透感に欠け、べたつきを生じるという欠点を有するようになる。
そこで近年、グリセリン配合によるべたつきを低減させ、さっぱりさせるために、特許文献1では、脂肪酸グリセリンエステルを組み合わせて用いることで、グリセリン由来のべたつきを抑えている。しかしながらこの技術ではべたつきの低減効果を十分満足しえるまでには至っていない。
また特許文献2では、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末0.1〜20質量%と、グリセリン3〜25質量%とを含有する肌荒れ防止用の油中水型乳化化粧料が開示されている。しかしながらこの技術では油中水型であることから、水中油型乳化タイプ特有のみずみずしさが足りなかった。
このように、従来技術では、グリセリンによる高い肌改善効果を確実に得るためにグリセリンを10質量%程度以上という高配合する系においては、べたつきの低減効果やみずみずしさの付与効果を十分満足し得るまでには至っていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開平11−246329号公報
【特許文献2】特開2002−356416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上述べたような従来の問題点を解決するためになされたものであって、グリセリンを高配合した時に使用感触が悪く、べたつきを生じたり、重く、コッテリしたクリームになったりするのを解決して、グリセリンを高配合してもべたつきがなく、みずみずしい感触の水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ソルビタン系界面活性剤を用いることで使用感触を良くし、みずみずしい使用感を得ると共に、この界面活性剤を含む特定の活性剤3種と高級アルコールを適正配合比率で配合することにより、安定で、グリセリン高配合にもかかわらず、さっぱりとべたつかない基剤を提供することができることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
(a)グリセリン 10〜25質量%と、
(b)「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」と、「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」と、「ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.)」から構成される界面活性剤と、
(c)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上と、
を含有し、(b)のモル濃度の合計が、(c)のモル濃度を1としたときに0.2〜0.8であることを特徴とする水中油型乳化化粧料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グリセリンを10〜25質量%と高配合しているため、保湿効果に優れると共に、みずみずしい良好な感触を有し、べたつきがなく、しかも良好な乳化性および乳化安定性を有する水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
本発明に用いられる(a)グリセリンは、従来技術の欄でも述べたように、高い保湿効果、肌荒れ改善効果といった肌改善効果を有するものである。本発明においては、このグリセリンを10〜25質量%、好ましくは10〜20質量%配合する。
【0009】
本発明で用いられる(b)成分である、「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」と、「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」と、「ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.)」から構成される界面活性剤は、3成分をいずれも含むことが必要であり、「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」と、「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」は、それぞれ一種または二種以上を用いることが出来る。
【0010】
(b)成分のうち「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」は、脂肪酸部分が炭素数14〜18の単結合脂肪酸を由来とするものであることが好ましく、特にポリオキシエチレン(POE)(20)モノステアリン酸ソルビタン(ポリソルベート60)、POE(20)モノパルミチン酸ソルビタン(ポリソルベート40)、POE(20)モノオレイン酸ソルビタン(ポリソルベート80)、POE(20)モノイソステアリン酸ソルビタンが好ましく、その中でも特にポリソルベート60が好ましい。本発明においては、これらの中から一種または二種以上が選ばれて用いられる。「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」を配合することにより、みずみずしくさっぱりとした感触が付与される。
【0011】
(b)成分のうち「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」としては、例えばステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、グリセリンモノステアリルエーテル(バチルアルコール)が挙げられ、好ましくはステアリン酸グリセリルが挙げられる。本発明においては、これらの中から一種または二種以上が選ばれて用いられる。
【0012】
(b)成分のうち「ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.)」は、ステアリン酸に酸化エチレンを付加重合させて、ポリエチレングリコール単位が100のポリエチレングリコールエステルとしたものである。
【0013】
(b)成分である3成分の各配合量は、特に限定されないが、それぞれが0.1質量%以上であることが好ましい。また(b)成分である3成分の合計配合量は、0.5〜6質量%が好ましく、より好ましくは1.4〜4質量%である。
【0014】
さらに、(b)成分の合計配合量は、後述する(c)成分のモル濃度を1としたときに、(b)成分の合計モル濃度が0.2〜0.8であることが必要であり、好ましくは、合計モル濃度が0.4〜0.65である。(b)成分の合計モル濃度が0.2未満では、長期安定性において高級アルコールが析出しやすくなるため安定性に欠け、また(b)成分の合計モル濃度が0.8を超えると、高温での分離や粘度の不安定化につながり安定性に欠ける。
【0015】
本発明に用いられる高級アルコール(c)は、炭素数14〜22の非分枝高級アルコールが好ましく、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどが挙げられ、その中でもセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが1種以上含まれていることが好ましい。
【0016】
本発明において、高級アルコール(c)の配合量は、0.1〜7.0質量%が好ましく、より好ましくは、0.2〜6.0質量%である。
【0017】
さらに本発明の化粧料には、化粧料の安定化あるいは適用部位に有効な成分として、有機酸またはその塩を添加することが可能である。このような有機酸としては、クエン酸類、アミノ酸類、アスコルビン酸およびその誘導体、サリチル酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体、グリコール酸およびその誘導体、ピロリドンカルボン酸、乳酸ナトリウム、エラグ酸、グリチルリチン酸、エデト酸等が挙げられ、これらの塩も有効である。有機酸類の配合量は、0.1〜3.0質量%が好ましい。
【0018】
本発明の水中油型乳化化粧料実施の形態は、特に限定されるものではなく、乳液、クリーム、美容液、ファンデーション、化粧下地、口紅、ヘアスタイリング剤、ヘアケア剤等の各形態に応じた状態で利用することが可能である。
【0019】
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記必須成分の他に、効果を妨げない範囲で、必要に応じ、粉末、油分、上記以外の活性剤、保湿剤、薬剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、酸化防止剤、防腐剤、香料等を配合することができる。
【実施例】
【0020】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0021】
実施例1〜11、比較例1〜11
下記表1、表2に示す処方で常法により水中油型乳化化粧料を調製した。
続いて、これらの水中油型乳化化粧料の特性評価を行った。その結果を表1、表2に併せて示す。評価項目は、塗布中のみずみずしさ、べたつきのなさ、乳化性、乳化安定性であり、評価方法を下記に示す。
【0022】
(塗布中のみずみずしさ)
専門パネル20名により、塗布時のみずみずしさを評価した。
○(良好):みずみずしいと評価したパネルが15名以上
△(やや不良):みずみずしいと評価したパネルが8名以上14名以下
×(不良):みずみずしいと評価したパネルが7名以下
【0023】
(べたつきのなさ)
専門パネル20名により、塗布後のべたつきのなさを評価した。
○(良好):べたつきがないと評価したパネルが15名以上
△(やや不良):べたつきがないと評価したパネルが8名以上14名以下
×(不良):べたつきがないと評価したパネルが7名以下
【0024】
(乳化性)
試料調製後、直後の乳化粒子の様子を評価した。
○(良好):粒子が微細であり、均一である。
△(やや不良):粒子径が均一でなく、20%以下の割合で合一・凝集が見られる。
×(不良):粒子が不定形、または合一・凝集している。
【0025】
(乳化安定性)
試料を50℃にて1ヶ月保管し、その安定性を評価した。
○(良好):外観の変化がなく、初期と比較して粘度または硬度の低下・上昇は25%未満である。
△(やや不良):気液界面での若干の油浮きや、25%以上50%未満の粘度または硬度の低下・上昇が見られる。
×(不良):分離や、50%以上の粘度または硬度の低下・上昇が見られる。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
実施例12(乳液)
配合成分 配合量(質量%)
(1) POE(20)ステアリン酸ソルビタン 0.8
(2) ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.) 0.1
(3) ステアリン酸グリセリル 0.5
(4) ベヘニルアルコール 0.5
(5) ステアリルアルコール 0.5
(6) グリセリン 10
(7) ヒアルロン酸ナトリウム 0.005
(8) ブチレングリコール 5
(9) キレート剤 0.05
(10)メチルパラベン 0.3
(11)スクワラン 5
(12)トリエチルヘキサノイン 5
(13)クエン酸 0.02
(14)クエン酸ナトリウム 0.08
(15)アルコール 2
(16)水 残余
【0029】
(製造方法)
水相および油相を70℃に加熱し、その後ホモミキサーによって乳化し、冷却した。
【0030】
実施例13(クリーム)
配合成分 配合量(質量%)
(1) POE(20)イソステアリン酸ソルビタン 2.5
(2) ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.) 0.5
(3) ステアリン酸グリセリル 1.2
(4) ベヘニルアルコール 1.5
(5) ステアリルアルコール 1.5
(6) グリセリン 15
(7) ジプロピレングリコール 8
(8) キレート剤 0.01
(9) フェノキシエタノール 0.5
(10)ミネラルオイル 4
(11)エチルヘキサン酸セチル 4
(12)テトラオクタン酸ペンタエリスチル 4
(13)ジメチコン 3
(14)クエン酸 0.01
(15)クエン酸ナトリウム 0.09
(16)ベントナイト 0.3
(17)水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリセリン 10〜25質量%と、
(b)「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」と、「グリセリンモノ脂肪酸エステルまたはグリセリンモノ脂肪酸エーテル」と、「ステアリン酸ポリエチレングリコール(100E.O.)」から構成される界面活性剤と、
(c)炭素数14〜22の高級アルコールより選ばれる1種または2種以上と、
を含有し、(b)のモル濃度の合計が、(c)のモル濃度を1としたときに0.2〜0.8であることを特徴とする水中油型乳化化粧料。

【公開番号】特開2009−209102(P2009−209102A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54603(P2008−54603)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】