説明

水中油型乳化毛髪化粧料

【課題】ワックスを多量に配合しても低粘度であり、毛髪に塗布しやすく、整髪力に優れる毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】 下記の成分(1)〜(5)を含有し、かつ、乳化粒子径が1μm未満である、水中油型乳化毛髪化粧料により、上記の課題が解決されることを見出した。
(1)下記一般式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体を、化粧料の5〜15質量%。
−[(AO)(EO)]−R (I)
(2)下記式(II)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物を、化粧料の0.5〜3質量%。
O−(EO)H (II)
[式中、R3はフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を、EOはオキシエチレン基を示し、pは5〜100の数を示す。]
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタンを、化粧料の0.1〜1質量%。
(4)ワックスを、化粧料の5〜30質量%。
(5)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料、さらに具体的には水中油型の乳化毛髪化粧料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
毛髪化粧料の分野において、特許文献1には、融点が60〜100℃のろうを0.1〜40質量%含み、当該ろうを500nm未満のマイクロディスパージョンとした毛髪化粧料が開示されている。また、特許文献2には、アルキレンオキシド誘導体、被膜形成性高分子、及び、固形油分を含有する整髪料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−230616号公報
【特許文献2】特開2004−292343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ワックスを多量に配合しても低粘度であり、毛髪に塗布しやすく、整髪力に優れる毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて検討を行ったところ、驚くべきことに、下記の成分(1)〜(5)を含有し、かつ、乳化粒子径が1μm未満である、水中油型乳化毛髪化粧料(以下、本発明の毛髪化粧料ともいう)は、下記(4)の通り、ワックスが5〜30質量%配合されているにもかかわらず、低粘度であり、毛髪に塗布しやすく、優れた整髪力が認められ、かつ、独特の微粘着感覚を伴うことを見出した。この微粘着感覚は、いわば、脱着自在の糊付き付箋紙に伴う感覚に似た感覚であり、毛髪化粧料としては斬新なものであり、消費者への独特な訴求効果が期待される。
【0006】
(1)下記一般式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体を、化粧料の5〜15質量%。
−[(AO)(EO)]−R (I)
[式中、AOは炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m及びnはそれぞれ炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基、当該オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。当該炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。当該炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R及びRは同一若しくは異なっていてもよい炭素原子数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合は0.15以下である。]
【0007】
(2)下記式(II)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物を、化粧料の0.5〜3質量%。
O−(EO)H (II)
[式中、R3はフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を、EOはオキシエチレン基を示し、pは5〜100の数を示す。]
【0008】
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタンを、化粧料の0.1〜1質量%。
(4)ワックスを、化粧料の5〜30質量%。
(5)水
【0009】
本発明の毛髪化粧料は、さらに、極性油及び被膜性高分子を含有することが好適である。
【0010】
また、本発明の毛髪化粧料は、油相に、当該油相質量の30〜70質量%の水を添加して乳化を行い、当該乳化物に残りの水を添加して製造することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、通常であれば、化粧品全体が固化あるいは高粘度になる程度の量のワックスが配合されているにもかかわらず、低粘度であり、毛髪に塗布しやすく、優れた整髪力が認められ、かつ、独特の微粘着感覚を伴う、水中油型乳化毛髪化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の毛髪化粧料の本質成分>
本発明の毛髪化粧料に配合される、上記(1)〜(5)の成分について説明する。
【0013】
(1)アルキレンオキシド誘導体(I)
上記の式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体(アルキレンオキシド誘導体(I))において、AOは炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0014】
式(I)において、mは炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦20である。nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは2≦n≦20である。炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基又はオキシエチレン基が0であるとしっとり感が落ち、70を越えると、本発明に適用した場合に毛髪のべたつき感を伴う傾向が認められ、毛髪におけるすべすべ感が十分に得られない。
【0015】
また、炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%であることが好ましい。オキシエチレン基の割合が20質量%未満であると、本発明に適用した場合の毛髪のしっとり感に劣る傾向にあり、80質量%より大きいと、同じく毛髪のすべすべ感に劣る傾向にある。
【0016】
式(I)ではEOと表現されているエチレンオキシド、及び、炭素原子数3〜4のアルキレンオキシドを付加する順序は特に限定されない。またオキシエチレン基と炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基は、ブロック状に付加していても、ランダム状に付加していてもよい。ここにブロック状とは、2段ブロックのみならず、3段ブロックも含まれる。好適には、ランダム状の付加物が挙げられる。
【0017】
及びRはそれぞれ同種のものを用いても、炭素原子数1〜4の炭化水素基と水素原子とが混在しても、異種の炭素原子数1〜4の炭化水素基が混在しても良い。
【0018】
ただし、R及びRの炭化水素基のうち、炭化水素基と水素原子の存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合(Y/X)として、0.15以下、好ましくは0.06以下である。当該Y/Xが0.15を越えると、本発明に適用した場合に毛髪のべたつき感が伴う傾向が認められる。
【0019】
具体的なアルキレンオキシド誘導体(I)としては、例えば、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(9モル)ポリオキシプロピレン(2モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(14モル)ポリオキシプロピレン(7モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(6モル)ポリオキシプロピレン(14モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(15モル)ポリオキシプロピレン(5モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(25モル)ポリオキシプロピレン(25モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(9モル)ポリオキシブチレン(2モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(14モル)ポリオキシブチレン(7モル)ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジエチルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジプロピルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジブチルエーテル等が挙げられる。
【0020】
アルキレンオキシド誘導体(I)は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物に、エチレンオキシドおよび炭素原子数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得ることができる。市販品としては、アクアインプール1704(日本油脂株式会社製)が挙げられる。
【0021】
アルキレンオキシド誘導体(I)の配合量は、化粧料の5〜15質量%、好ましくは10〜15質量%である。当該配合量が化粧料の5質量%未満では配合による効果が発揮されず、15質量%を超えて配合すると、セット保持力や仕上がりの軽さに劣る傾向にある。
【0022】
(2)ポリオキシエチレン付加化合物(II)
上記の式(II)で示されるポリオキシエチレン付加化合物(ポリオキシエチレン付加化合物(II))において、Rがとり得るフィトステロール残基の母化合物であるフィトステロールは、植物由来のステロールであり(F.D.Gunstone及びB.G.Herslof、A Lipid Glossary、ジ・オイリー・プレス、エアー、1992)、特に、限定はされない。すなわち、Rがとり得るフィトステロール残基としては、シトステロール残基、カンペステロール残基、スチグマステロール残基、ブラッシカステロール(brassicasterol)残基、アベナステロール(avenasterol)残基、エルゴステロール残基等が挙げられる。また、本発明の毛髪化粧料中に配合されるポリオキシエチレン付加化合物(II)は、上述したように、Rが異なるフィトステロール残基である2種以上の化合物の混合物であることも可能である。
【0023】
同じく、Rがとり得るフィトスタノール残基の母化合物であるフィトスタノールは、フィトステロールの水素化又は飽和対応物質であり、特に限定されない。すなわち、Rがとり得るフィトスタノール残基としては、例えば、シトスタノール、カンペスタノール、スチグマスタノール、ブラッシカスタノール(brassicastanol)、アベナスタノール(avenastanol)、エルゴスタノール等が挙げられる。また、本発明の毛髪化粧料中に配合されるポリオキシエチレン付加化合物(II)は、上述したように、Rが異なるフィトスタノール残基である2種以上の化合物の混合物であることも可能である。
【0024】
さらに、ポリオキシエチレン付加化合物(II)は、Rが1種又は2種以上のフィトステロール残基を有する化合物と、同じく1種又は2種以上のフィトスタノール残基を有する化合物の混合物として、本発明の毛髪化粧料に配合することも可能である。
【0025】
次に、式(II)においてEOと表現されているエチレンオキシドの結合数を示すpは、5〜100であり、好適には10〜50である。ポリオキシエチレン付加化合物(II)の市販品としては、ニッコール(NIKKOL)BPS−30、同BPS−5、同BPS−10、同BPS−30(いずれも日本サーファクタント工業株式会社製)が挙げられる。
【0026】
ポリオキシエチレン付加化合物(II)の本発明の毛髪化粧料における配合量は、化粧料に対して0.5〜3質量%であり、好ましくは1〜2質量%である。当該配合量が化粧料の0.5質量%未満では、乳化粒子を微細にできない。
【0027】
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタン
セスキイソステアリン酸ソルビタンは、イソステアリン酸とソルビタンのモノおよびジエステルの混合物であり、イソステアリン酸とソルビトールに対してエステル化反応を行い、当該反応物を精製および濾過することにより得ることができる。市販品としては、例えば、エステモール182V(日清製油株式会社製)が挙げられる。
【0028】
本発明の毛髪化粧料におけるセスキイソステアリン酸ソルビタンの配合量は、化粧料に対して0.1〜1質量%の範囲である。当該配合量が化粧料の0.1質量%未満では、乳化粒子を微細にすることが困難になり、1質量%を超えると乳化粒子の安定性に欠ける。
【0029】
(4)ワックス
ワックスは、化粧料等の外用組成物において常用されているものを用いることができる。具体的には、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、ビーズワックス、マイクロクリスタリンワックス、コメヌカロウ等が挙げられる。粘着性を付与するにあたりキャンデリラロウが好適である。
【0030】
本発明の毛髪化粧料におけるワックスの配合量は、化粧料に対して5〜30質量%、好適には10〜25質量%、さらに好適には15〜25質量%の範囲である。当該配合量が化粧料の5質量%未満では、整髪力に欠け、30質量%を超えると化粧料全体の粘度が過度に高くなり、なめらかな塗布が達成しない。
【0031】
(5)水
水は、イオン交換水、精製水、水道水、自然水等を必要に応じて選択可能であり、限定されるものではない。水の配合量は、他の配合成分の残量として配合することができるが、後述するように、本発明の毛髪化粧料の製造工程において、二回以上に分割して系に対して添加を行い、所望の乳化系を構成することが好適である。すなわち、一回目の水性溶液における水の添加分のみではなく、2回目以降の水相成分における水の添加分を加味した水の添加量であることが好適である。一回目の水の添加量は、水性溶液(水又は水に水溶性成分を溶解した溶液)として、油相成分に対して30〜70質量%である。当該製造工程の詳細に関しては後述する。
【0032】
<本発明の毛髪化粧料の任意配合成分>
(1)極性油
本発明の毛髪化粧料には、極性油を配合することにより、いっそう粘着性を増すことができる。極性油としては、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトールなどの多価アルコールのエステルが使用性の観点から好ましく、例えば、テトラオレイン酸ジグリセロール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。好適な極性油としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチルを挙げることができる。極性油を、本発明の毛髪化粧料に配合する場合、配合量の上限はワックスに対して20〜80質量%であり、下限は特に限定されないが、極性油を配合する実質的な効果を考慮するとワックスに対して50〜80質量%である。当該配合量が上限のワックスに対して80質量%を超えると整髪力に劣る傾向が認められる。
【0033】
(2)被膜性高分子
本発明の毛髪化粧料は、被膜性高分子を配合することにより、いっそう粘着性を増すことができる。被膜性高分子は、好適には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群のモノマーの1種若しくは2種以上を重合させてなるアクリル酸系ポリマー(以下、アクリル酸系ポリマーともいう)が選択される。当該アクリル酸系ポリマーは、好適には、上記のアクリル酸系モノマー(アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー)同士を、公知の知見に基づいて重合反応することにより製造することができる。選択される重合反応としては、例えば、ラジカル重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、グラフト重合等により得られる。本発明の毛髪化粧料において好適に配合されるアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンは、機械的乳化法、上記の乳化重合法等により得ることができる。乳化重合法では、粒径のコントロールが容易で、粒度分布のシャープなものが得られるので好ましい。また、アクリル酸系ポリマーのガラス転移温度は20℃以下であることが好適である。このようなアクリル酸系ポリマーの水性エマルジョンの市販品としては、例えば、COVACRYL MS11(LCW社製)、ヨドゾール2H602(日本エヌエヌシー製造)が挙げられる。
【0034】
本発明の毛髪化粧料における被膜形成剤の配合量は、化粧料に対してポリマーの質量として1〜20質量%、好適には2〜10質量%である。
【0035】
(3)分岐高級脂肪酸又は分岐高級アルコール
本発明の毛髪化粧料は、微細な乳化粒子を特徴としており、粒子の融着を防ぐことが重要である。そのため、乳化粒子の分散性を向上させるため、分岐高級脂肪酸や分岐高級アルコールなどを配合することが好適である。それらの例としてイソステアリン酸やイソステアリルアルコールが挙げられるが、イソステアリン酸を配合した場合の乳化粒子の分散性が優れており、より好適である。当該分岐高級脂肪酸及び/又は分岐高級アルコールの配合量は、化粧料に対して0.5〜10質量%が好適であり、さらに好適には1〜5質量%である。
【0036】
(4)一般的な配合成分
上記の選択的配合成分(1)〜(3)の他に、必要に応じて化粧料等の外用組成物において用いられている成分を、本発明の効果を極端に損なわない量的又は質的な範囲内で配合することができる。具体的には、水可溶性成分、保湿剤、油剤、界面活性剤、増粘剤、各種粉体、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、消泡剤、薬剤、香料等が挙げられる。
【0037】
水可溶性成分としては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のモノアルコール類;プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール;ソルビトール、マルチトール、ショ糖等の糖類;アロエベラ、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム等の電解質類を挙げることができる。
【0038】
保湿剤としては、例えば、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン等が挙げられる。
【0039】
油剤としては、例えば、上記のワックス、極性油、分岐高級脂肪酸と分岐高級アルコールを除いた、動物油、植物油、合成油が挙げられ、さらに具体的には、固形油、半固形油、液状油、揮発性油等の性状は問わず、炭化水素油、油脂類、エステル油、脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、フッ素系油、油性ゲル化剤等が挙げられる。
【0040】
増粘剤としては、グアーガム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
粉体としては、板状、紡錘状、針状、球状等の形状、多孔質又は無孔質等の粒子構造、粒子径等により、特に限定されず、無機粉体、有機粉体、光輝性粉体、積層フィルム末、色素系粉体、複合粉体等の各種粉体を用いることができる。さらに、これらの粉体には、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであってもよい。
【0042】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸等のα−ヒドロキシ酸及びその塩、エデト酸塩等を、酸化防止剤としては、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸等を、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0043】
<本発明の毛髪化粧料の製造方法>
本発明の毛髪化粧料は、好適には、油相に、当該油相質量の30〜70質量%の水を添加して乳化を行い、当該乳化物に残りの水を添加して製造され得ることは、上述した通りである。ここでいう「水」には、水そのものの場合もあり、必要に応じて他の水性成分が溶解した水性溶液として用いることも可能である。典型的には、70〜80℃程度の加温系において油相成分に対して、当該油相質量の30〜70質量%の水を添加してホモミキサーを用い、4000〜9000rpm程度の条件にて乳化する。最後に、残りの水を、水単独又は水相成分として、当該乳化系に加えて、同様にホモミキサー等により撹拌することにより、乳化粒子径が1μm未満の乳化粒子を安定した状態で作出することができる。
【0044】
このようにして製造される本発明の毛髪化粧料は、整髪に適した水中油型の毛髪用化粧料として用いることができる。製品形態は、液剤、エアゾール式スプレー剤、ポンプ式ヘアスプレー剤、フォーム状エアゾル、ヘアミスト、セットローション、ヘアスタイリングジェル、ヘアリキッド、ヘアワックス等、自由に選択することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により、本発明を具体的に開示するが、当該開示は、本発明の範囲を限定して解釈することを目的とするものではない。配合量は、特に断らない限り質量%である。
【0046】
<試験方法>
本発明の毛髪化粧料の特徴を評価するための試験方法を、以下に開示する。
【0047】
(1)乳化粒子径の測定
乳化粒子径の測定は、顕微鏡により実施した。測定装置は、BX51(OLYMPUS製)を使用した。試料を大量の水に希釈して顕微鏡にて観察し、10個程度の乳化粒子の平均粒径を目視で見積もった。
【0048】
(2)試験品の粘度
試験品の粘度の測定は、単一型回転粘度型ビスメトロン(芝浦システム株式会社製)を用いた。試料を30℃に保ち、ローターNo.2もしくはNo.4を使用し、12rpmで測定を行なった。
【0049】
(3)試験品の粘着性
試験品の粘着性の測定は、試料を毛髪に塗布し、2時間後における再整髪の可否を指標として評価した。なお、毛髪における、試験品の製造直後における整髪性は、いずれの実施例又は比較例においても同様である。
◎:再整髪は非常にしやすい
○:再整髪しやすい
○△:再整髪はややしやすい
△:再整髪はできるが、整髪力は乏しい
×:再整髪できない
【0050】
(4)試験品の乳化安定性
試験品の乳化安定性は、25℃の温度条件下に1週間保存した後、以下の基準により目視判定した。
○:分離や外観変化等の異常が全く認められない。
△:若干の分離が認められる。
×:分離とクリーミングが認められる。
【0051】
<試験品の調製と評価>
(1)表1に、本発明の毛髪化粧料に関する基本的な態様に関する試験品(実施例1〜3、比較例1〜3)についての処方内容と、当該試験品の乳化粒子径、粘着性、及び、2号ローターと4号ローターを用いた粘度の検討を行った結果を示す。また、比較例に関しては、より具体的な状況を示すために「備考」の欄を設けた。なお、POEはポリオキシエチレンを示し、POPはポリオキシプロピレンを示す。各試験品の製造方法についても、下記開示した。
【0052】
【表1】

【0053】
<製造方法>
実施例1〜3については、油相成分を80℃にて融解させて混合し、80℃に加温した中途添加イオン交換水(1)を添加して8000rpmで1分間乳化処理を行った。撹拌を続けながら乳化処理物に、80℃に加温して溶解させた水相成分を添加して、再び、8000rpmで1分間の撹拌を行った。これにより、これらの実施例に関する試験品の調製を行った。
【0054】
比較例1については、上記のイオン交換水の中途添加を行わず、80℃で融解させて混合した油相成分に、同じく80℃で溶解させた水相成分を徐々に添加して、8000rpmで2分間の乳化処理を行うことにより、当該比較例の試験品を得た。
【0055】
<結果>
表1に示すように、イオン交換水の中途添加を行わなかった比較例1は、同じ構成の実施例3と比較して、乳化粒子が融着して生成したと思われる塊状物質が観察された。また、粘度も非常に高くなっており、なめらかな使用感触を得られず、粘着性も劣っていた。よって、実施例1〜3において行った製造方法が、所望する乳化粒子径の本発明の毛髪化粧料を調製する上で、極めて好ましいことが明らかになった。
【0056】
(2)表2において、上記の基本的な処方に、さらに極性油と被膜性高分子を配合した実施例についての処方と試験結果を開示する。なお、被膜性高分子は、ポリアルキルアクリレートポリマー水分散物(ヨドゾール2H602:日本エヌエヌシー製造)を用いた。なお、このポリマー分散物は、下記処方例においても同様に用いた。
【0057】
【表2】

【0058】
表2の結果より、系に、極性油及び被膜性高分子の双方又は一方、好ましくは双方、を配合することにより、粘着性を向上させることが可能であることが明らかになった。
【0059】
以下に、本発明の毛髪化粧料における、他の処方例を挙げる。
配合成分 配合量(質量%)
(油相)
キャンデリラロウ 15.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチリル 10.0
POE(20)フィトステロール 1.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
イソステアリン酸 3.0
POE(17)・POP(4)ジメチルエーテル 10.0
(水相)
EDTA3Na−2HO 0.05
エタノール 5.0
キサンタンガム 0.05
ポリアルキルアクリレート水分散物(ポリマー分40質量%) 10.0
イオン交換水 残余
【0060】
<製造方法>
上記の油相成分を80℃にて溶解混合し、ここにイオン交換水の一部(25質量%)を加え、8000rpm、1分間の乳化処理により乳化を行う。当該乳化物を撹拌しながら、さらに80℃で溶解させた水相成分を徐々に添加し、これを容器に充填し放冷して、所望の乳化粒子径が1μmよりも小さい本発明の毛髪化粧料を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)〜(5)を含有し、かつ、乳化粒子径が1μm未満である、水中油型乳化毛髪化粧料。
(1)下記一般式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体を、化粧料の5〜15質量%。
−[(AO)(EO)]−R (I)
[式中、AOは炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、m及びnはそれぞれ炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基、当該オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。当該炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。当該炭素原子数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R及びRは同一若しくは異なっていてもよい炭素原子数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合は0.15以下である。]
(2)下記式(II)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物を、化粧料の0.5〜3質量%。
O−(EO)H (II)
[式中、R3はフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を、EOはオキシエチレン基を示し、pは5〜100の数を示す。]
(3)セスキイソステアリン酸ソルビタンを、化粧料の0.1〜1質量%。
(4)ワックスを、化粧料の5〜30質量%。
(5)水
【請求項2】
アルキレンオキシド誘導体(I)は、Rがメトキシ基、Rがメチル基、AOがイソプロピレンオキシド基であり、mが4、nが17、のPOE(17)POP(4)ジメチルエーテルである、請求項1に記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項3】
ポリオキシエチレン付加化合物(I)におけるフィトステロール残基又はフィトスタノール残基Rが、シトステロール残基、カンペステロール残基、スチグマステロール残基、ブラッシカステロール(brassicasterol)残基、アベナステロール(avenasterol)残基、エルゴステロール残基、シトスタノール残基、カンペスタノール残基、スチグマスタノール残基、ブラッシカスタノール(brassicastanol)残基、アベナスタノール(avenastanol)残基、及び、エルゴスタノール残基、からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項4】
さらに極性油及び被膜性高分子を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項5】
極性油が、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、又は、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチルである、請求項4に記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項6】
被膜性高分子が、アクリル酸系被膜剤である、請求項4又は5に記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項7】
さらに、分岐高級アルコール及び/又は分岐高級脂肪酸を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項8】
分岐高級脂肪酸は、イソステアリン酸である、請求項7に記載の水中油型乳化毛髪化粧料。
【請求項9】
油相に、当該油相質量の30〜70質量%の水を添加して乳化を行い、当該乳化物に残りの水を添加して製造される、請求項1〜8のいずれかに記載の水中油型乳化毛髪化粧料。

【公開番号】特開2010−280632(P2010−280632A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136568(P2009−136568)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】