説明

水中油型乳化物の製造方法

【課題】貯蔵安定性を維持したまま、水中油型乳化物の高賦香化を図り、香料の配合増に伴う粘度上昇を防止し、かつ香り違いの製品を簡便な方法で効率良く製造できる水中油型乳化物の製造方法を提供する。
【解決手段】工程(1):陽イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で混合して油相を調製する工程と、工程(2):前記工程(1)で得られた油相を前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で水に分散し乳化物を得る工程と、工程(3):前記工程(2)で得られた乳化物を前記陽イオン性界面活性剤の融点未満の温度に冷却する工程と、工程(4):前記工程(3)で冷却した乳化物と非水溶性香料とを剪断速度1,000sec−1以上、循環回数2以上で混合する工程とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤等の繊維製品処理剤、ヘアリンス、化粧品、食品等の各種製品においては、例えば消費者の嗜好性、原料臭のマスキング等の種々の目的で、香りを付与することが行われている。各種製品に香りを付与する方法としては、香料を配合する方法が一般的である。
【0003】
近年、繊維製品処理剤の一つである衣料用柔軟剤においては、香りを重視した製品開発が進められ、その香りの種類も増えている。加えて、防臭機能の訴求や残香性を高めるために、製品への香料の配合量を増加する傾向にある。
これに伴い、製品開発を行う上で、香料を安定に配合でき、製品の香りの経時変化(臭気劣化)を抑制することがこれまで以上に重要である。加えて、香りの種類の増加に伴い、香り違いの製品を簡便な方法で、かつ、効率良く製造できることも求められる。
【0004】
こうした問題に対し、従来、下記工程(ア)〜(エ)と同時、又は各工程間、もしくは工程(エ)の後のいずれか1箇所以上に、0.3〜5質量%(最終組成物に対する量)の香料を単独で直接に添加する方法が提案されている(特許文献1参照)。
工程(ア):陽イオン性界面活性剤をそのゲル−液晶転移温度t1(℃)以上に加熱する工程
工程(イ):t1〜100℃の水と、工程(ア)で得られた加熱された陽イオン性界面活性剤とを混合する工程
工程(ウ):工程(イ)で得られた混合物をt1(℃)未満の温度に冷却する工程
工程(エ):特定のシリコーンエマルジョンと、工程(ウ)で得られた混合物とを混合する工程
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−163176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、香り違いの製品を製造する場合、特許文献1に記載の発明のように、工程(ア)〜(ウ)間で香料を添加する方法では、香料の種類の切替えに作業時間を要し、製造性が悪いという問題があった。
加えて、従来の技術では、多量の香料を配合すると、繊維製品処理剤等の水中油型乳化物の粘度が増加する傾向にある。また、繊維製品処理剤等の香りを強くする(高賦香化)ことを目的とし単に香料の配合量を増やしても、香料の配合量に見合った賦香が達成できないという問題があった。さらに、香料を増量すると、水中油型乳化物の貯蔵安定性が低下する傾向にあり、この傾向は、水への溶解度が低い香料ほど顕著である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性を維持したまま、水中油型乳化物の高賦香化を図り、香料の配合増に伴う粘度上昇を防止し、かつ香り違いの製品を簡便な方法で効率良く製造できる水中油型乳化物の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水中油型乳化物の製造方法は、工程(1):陽イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で混合して油相を調製する工程と、工程(2):前記工程(1)で得られた油相を前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で水に分散し乳化物を得る工程と、工程(3):前記工程(2)で得られた乳化物を前記陽イオン性界面活性剤の融点未満の温度に冷却する工程と、工程(4):前記工程(3)で冷却した乳化物と非水溶性香料とを剪断速度1,000sec−1以上、下記(i)又は下記(ii)で規定する循環回数2以上で混合する工程とを有することを特徴とする。
(i)工程(4)をバッチ式混合装置で行う場合、下記(1)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d×θ÷V ・・・(1)
[式(1)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容物の体積(m)]
(ii)工程(4)を連続式混合装置で行う場合、下記(2)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d÷F ・・・(2)
[式(2)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m/min)]
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型乳化物の製造方法によれば、貯蔵安定性を維持したまま、水中油型乳化物の高賦香化が図れ、香料の配合増に伴う粘度上昇を防止し、かつ香り違いの製品を簡便な方法で効率良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の水中油型乳化物の製造方法に用いるバッチ式混合装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の水中油型乳化物の製造方法に用いる連続式混合装置の一例を示す模式図である。
【図3】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【図4】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(水中油型乳化物)
本発明の水中油型乳化物は、陽イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有する油相と非水溶性香料とが、水に乳化分散されたものであり、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤等の繊維製品処理剤、ヘアリンス、化粧品等、又はこれらを構成する成分として用いられるものである。
本発明の水中油型乳化物の粘度は、用途に応じて決定することができ、例えば、その粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましい。当該粘度が100mPa・s以下であると、ハンドリングが良好となり、繊維製品処理剤等を製造する際の混合性が良好になる。粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
【0012】
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(水中油型エマルション組成物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0013】
<油相>
≪陽イオン性界面活性剤≫
陽イオン性界面活性剤としては、下記一般式(I)に示す4級アンモニウム塩、下記一般式(II)に示すアミンの中和物、又は下記一般式(III)に示すイミダゾリンの中和物、イミダゾリニウム塩、アミノ酸系陽イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でも式(I)で表される4級アンモニウム塩が好ましい。これらの陽イオン性界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
[式(I)中、R〜Rのうちの1〜3つの基は、置換又は無置換の炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、残りの3〜1つの基は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、−(CH−CH(Y)−O)−H(式中、Yは水素原子又はCHであり、nは2〜10の整数である。)又はベンジル基であり;Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。]
【0016】
〜Rにおいて、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基は、無置換であってもよく、その炭素鎖中に−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−等の2価の置換基が介在していてもよく、その水素原子が−OH等の1価の置換基で置換されていてもよい。該アルキル基又はアルケニル基は、炭素数が14〜20であることが好ましい。
〜Rのうち、前記アルキル基又はアルケニル基であるものが2又は3つである場合、該2又は3つの基はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
〜R中、1又は2つが前記アルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、1つが前記アルキル基又はアルケニル基であることがより好ましい。
【0017】
〜Rの残りの基は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、−(CH−CH(Y)−O)−H、ベンジル基のいずれであってもよい。これらのなかでも、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましく、メチル基又はヒドロキシエチル基が特に好ましい。
〜Rのうち、これらの基であるものが2又は3つである場合、該2又は3つの基はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
Xにおけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも塩素原子が好ましい。
モノアルキル硫酸基としては、アルキル基の炭素数が1〜2のものが好ましく、モノメチル硫酸基が特に好ましい。
【0019】
前記式(I)で表される4級アンモニウム塩の具体例としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、牛脂トリメチルアンモニウムクロリド、ヤシ油トリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N,N−ジオクタデシル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−ステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート等が挙げられ、中でも、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、N−ステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートが好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0020】
【化2】

【0021】
[式(II)中、R〜Rのうちの1又は2つの基は、置換又は無置換の炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、残りの基は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は−(CH−CH(Y)−O)−H(式中、Yは水素原子又はCHであり、nは2〜10の整数である。)である。]
【0022】
〜Rにおいて、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基は、無置換であってもよく、その炭素鎖中に−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−等の2価の置換基が介在していてもよく、その水素原子が−OH等の1価の置換基で置換されていてもよい。
〜Rのうち、前記アルキル基又はアルケニル基であるものが2つである場合、該2つの基はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
〜R中、2つが、前記アルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。
【0023】
〜Rの残りの基は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、−(CH−CH(Y)−O)−Hのいずれであってもよい。
〜Rのうち、前記残りの基が2つである場合、該2つの基はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
【化3】

【0025】
[式(III)中、Rは、置換もしくは無置換の炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは、置換もしくは無置換の炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(CH−CH(Y)−O)−H(式中、Yは水素原子又はCHであり、nは2〜10の整数である。)である。]
【0026】
において、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基は、無置換であってもよく、その炭素鎖中に−O−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−等の2価の置換基が介在していてもよく、その水素原子が−OH等の1価の置換基で置換されていてもよい。
において、置換もしくは無置換の炭素数10〜26のアルキル基もしくはアルケニル基は、前記Rと同様のものが挙げられる。
【0027】
前記式(II)のアミン又は前記式(III)のイミダゾリンの中和は、通常の酸を用いることができる。前記酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アクリル酸等の有機酸等が挙げられる。
前記アミンの中和物としては、例えば、ジステアリルメチルアミン塩酸塩、ジオレイルメチルアミン塩酸塩、ジステアリルメチルアミン硫酸塩、N−(3−オクタデカノイルアミノプロピル)−N−(2−オクタデカノイルオキシエチル)−N−メチルアミン塩酸塩等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
前記イミダゾリン塩の具体例としては、1−オクタデカノイルアミノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン塩酸塩、1−オクタデセノイルアミノエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリン塩酸塩等が挙げられる。前記イミダゾリニウム塩としては、メチル−1−牛脂アミドエチル−2−牛脂アルキルイミダゾリニウムメチルサルフェート、メチル−1−ヘキサデカノイルアミドエチル−2−ペンタデシルイミダゾリニウムクロライド、エチル−1−オクタデセノイルアミドエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウムエチルサルフェート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
これらの陽イオン性界面活性剤のうちでも、非水溶性香料に低温で揮発する成分が含まれる場合は融点の低いもの、具体的には35〜50℃のものを選択することが好ましい。
陽イオン性界面活性剤の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0029】
≪非イオン性界面活性剤≫
非イオン性界面活性剤としては、高級アルコール、高級アミン、油脂又は高級脂肪酸から誘導される非イオン性界面活性剤等を用いることができる。一般的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。中でも下記一般式(IV)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル及び一般式(V)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。非水溶性香料に低温で揮発する成分が含まれる場合は融点の低いもの、具体的には0〜45℃程度のものを選択することが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
[式(IV)中、R10は、炭素数10〜20の炭化水素基であり、R11は、水素基又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R12は、炭素数2〜3のアルキル基である。sは、アルキレンオキサイドR12Oの平均付加モル数を表す10〜100の値である。]
【0032】
[式(V)中、R10、R12は、式(IV)におけるR10、R12とそれぞれ同じである。t及びuはアルキレンオキサイドR12Oの平均付加モル数を表し、t+uは10〜100の値である。]
【0033】
10は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、好ましくは分岐鎖を有する炭化水素基である。R10の炭素数は、10〜20であり、好ましくは12〜18である。
11は、水素もしくは炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは水素である。
12は、炭素数2〜3のアルキル基であり、好ましくは炭素数2のアルキル基である。
s及びt+uは、10〜100であり、好ましくは15〜80である。
【0034】
このような非イオン性界面活性剤の具体例としては、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット、POE(40)ひまし油、POE(50)ひまし油、POE(40)硬化ひまし油、POE(60)硬化ひまし油、POE(100)硬化ひまし油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25EO)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO)、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(20)イソデシルエーテル、POE(60)イソヘキサデシルエーテル、POE(40)イソトリデシルエーテル、POE(40)イソトリデシルエーテル、POE(45)トリデシルエーテル、POE(60)トリデシルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(25)オクチルドデシルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(7.5)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ヤシ油脂肪酸アミン、POE(10)オレイルアミン、POE(15)ステアリルアミン、POE(15)ステアリン酸アミド等が挙げられ、中でも、POE(45)トリデシルエーテル、POE(60)トリデシルエーテル、POE(45)イソトリデシルエーテル、POE(60)イソトリデシルエーテル、POE(15)ヤシ油脂肪酸アミンが好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
非イオン性界面活性剤の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。0.01質量%未満では、水中油型乳化物の貯蔵安定性が損なわれるおそれがあり、10質量%超では、製造コストが高くなることがある。
【0035】
<非水溶性香料>
本発明の非水溶性香料は、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)及び「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に開示されている香料成分を1種単独で又は2種以上を混合して香料とし、常温(25℃)における水への溶解度が30質量%以下のものをいう。
溶解度は、水と香料とをそれぞれ10g量り取り、50mL分液ロートにて混合し、2層に分離するまで25℃で静置後、香料相と水相を取り分け、香料相の質量を測定して、基の香料成分質量から減少した量が水に溶解したと見なして下記(3)式より算出する。
【0036】
溶解度=香料相の質量減少量÷香料と混合する前の水の質量×100(%)・・・(3)
【0037】
非水溶性香料の溶解度は、30質量%以下であれば特に限定されないが、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。溶解度が30質量%を超えると、香気が十分に得られないおそれがある。加えて、非水溶性香料の溶解度が低いほど、水中油型乳化物の乳化状態が不安定になる傾向にあり、本発明の効果が顕著である。さらに、溶解度が低いほど、水中油型乳化物を衣料用柔軟剤として用いた場合に残香性に優れるものとなる。
【0038】
非水溶性香料の種類は、水中油型乳化物の用途に応じて決定でき、例えば衣料用柔軟剤として用いる場合、嗜好性にもよるが、シトラール等を含むシトラス系やゲラニオール等を含むフローラル系やヒノキチオールやヒバ油等を含むウッディ系や酢酸アミルや酪酸アミル等を含むフルーツ系が好ましい。中でも、フローラル系又はフルーツ系が好ましく、フローラル系又はフルーツ系香料を全体の1〜100質量%含有する非水溶性香料が好ましい。
非水溶性香料の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.3〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。0.1質量%未満では、賦香が不十分となるおそれがあり、30質量%超では、貯蔵安定性が損なわれるおそれがある。
【0039】
<その他の成分>
本発明の水中油型乳化物には、本発明の効果を損なわない範囲で、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、非水溶性香料に加え、油剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤等の任意成分を配合することができる。
【0040】
油剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン、有機溶剤、流動パラフィン等が挙げられる。中でも、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0041】
シリコーンは、25℃における動粘度が100〜100,000mm/secであるものが好ましく、1,000〜50,000mm/secであるものがより好ましく、3,000〜20,000mm/secであるものがさらに好ましい。動粘度がこのような範囲にあると、安定な水中油型乳化物を得ることができ、さらに、衣料用柔軟剤としたときに衣類に良好なしわ防止性やすべり性を付与することが可能となる。なお、本明細書において、動粘度は、JIS K2283に従って、ウベローデ粘度計を用いて測定することができる。
本発明において用いられるポリエーテル変性シリコーンは、下記一般式(i)で示されるものが挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
式(i)中、Z、Zは、それぞれ独立に−R13、−O−R13、−OH、−O−A−R13、−O−A−Hである。R13は、互いに同一でも異なっていてもよく、いずれも飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐の炭素数1〜4の炭化水素基であり、Aはポリオキシアルキレン基である。−Zは、−R14−O−A−R15又は−O−A−R15であり、R14は、炭素数1〜4の飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐の炭化水素基であり、R15は水素原子、炭素数1〜4の飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐の炭化水素基から選択されるものである。pは0〜50、qは1〜1000、rは10〜10000である。ただし、A中のポリオキシエチレン鎖部分の質量割合は、分子全体の質量を基準として10質量%以上60%質量未満である。
上記式(i)において、Z、Zは、それぞれ独立に−R13又は−OHであることが好ましく、−R13であることがより好ましい。R13は、炭素数1〜4の飽和炭化水素基が好ましく、メチル基が特に好ましい。R14は、炭素数1〜4の飽和炭化水素基が好ましく、プロピレン基が好ましい。R14は、R15が炭化水素基である場合には、炭素数1〜4の短鎖飽和炭化水素基が好ましい。特に好ましいR15は、水素原子又はメチル基である。また、上記式(i)において、Aはポリオキシアルキレン基を表すが、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位又はオキシブチレン単位等が、ブロック状あるいはランダムに配列したものであってもよい。ただし、A中のポリオキシエチレン鎖部分の質量割合は、分子全体の質量を基準として10質量%以上60質量%未満であり、好ましくは20〜35質量%である。また、A中のポリオキシエチレン鎖部分の質量割合は、50〜100質量%であるのが好ましい。さらに、上記式(i)において、p、q及びrは、いずれも各繰返し単位の数の平均値を表し、pは0〜50、好ましくは0〜3であり、qは1〜1000、好ましくは1〜50であり、rは10〜10000、好ましくは20〜500である。なお、上記式(i)で表されるポリエーテル変性シリコーンは、各繰返し単位がブロック状に配列しているブロックコポリマーの構造を有するものであってもよく、各繰返し単位がランダムに配列している構造を有するものであってもよい。
【0044】
ポリエーテル変性シリコーンとして商業的に入手可能な例として、東レ・ダウコーニング株式会社製のSH3772M、SH3775M、SH3748、SH3749、SF8410、SH8700、CF1188HV、BY22−008、SF8421、SILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7602、SILWET L−7604、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2164、SILWET FZ−2171、ABN SILWET FZ−F1−009−01、ABN SILWET FZ−F1−009−02、ABN SILWET FZ−F1−009−03、ABN SILWET FZ−F1−009−05、ABN SILWET FZ−F1−009−09、ABN SILWET FZ−F1−009−11、ABN SILWET FZ−F1−009−13、ABN SILWET FZ−F1−009−54、ABN SILWET FZ−2222、信越化学工業株式会社製のKF352A、KF6008、KF615A、KF6016、KF6017、X−20−8010N、GE東芝シリコーン株式会社製のTSF4450、TSF4452等が挙げられる。
これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0045】
ジメチルシリコーンは、ポリシロキサンの側鎖及び末端がすべてメチル基であり、25℃における動粘度が上記範囲内にあるものが好適なものとして挙げられる。
ジメチルシリコーンとしては市販品を使用することができ、例えば、SH200C−1,000CS、SH200C−3,000CS、SH200C−5,000CS、SH200C−30,000CS、SH200C−60,000CS、SH200C−100,000CS、SH200C−1,000,000CS(いずれも東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
【0046】
アミノ変性シリコーンは、側鎖及び/又は末端に有機アミノ基が導入されたものであり、25℃における動粘度が上記範囲内にあるものが好適なものとして挙げられる。
アミノ変性シリコーンとしては、例えば、BY16−849、BY16−853、BY16−872、BY16−892、BY16−879B(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)、TSF4706(GE東芝シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
本発明に用いられるシリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。
【0047】
水中油型乳化物中のシリコーンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。シリコーンの含有割合が0.1質量%以上であると、衣料用柔軟仕上げ剤として使用した際、しわ防止効果やすべり性付与効果が向上する。50質量%以下であると、水中油型乳化物の粘度が適度に抑えられ、使用時における水への分散性が向上し、ハンドリング性も良好となる。
【0048】
(製造方法)
本発明の水中油型乳化物の製造方法は、下記工程(1)〜(4)を有するものである。
【0049】
<工程(1)>
工程(1)は、陽イオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤と、必要に応じて油剤とを陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度、即ち陽イオン性界面活性が溶融する温度で混合して油相を調製する工程である。
油相の調製は、陽イオン性界面活性剤を溶融した状態で、非イオン性界面活性剤と混合できればよく、例えば、ジャケット付きニーダーや、インラインミキサー等を用いることができる。
【0050】
本工程における温度条件は、陽イオン性界面活性剤の融点以上であれば特に限定されないが、好ましくは陽イオン性界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とされる。また、本工程における温度条件の上限は、陽イオン性界面活性剤の種類や非イオン性界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下とされる。100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油型乳化物の粘度が上昇したり、香気の劣化を生じるおそれがある。
【0051】
陽イオン性界面活性剤の融点は、例えば、陽イオン性界面活性剤10mgをアルミニウム製の密閉セル(液体用、株式会社リガク製)に封入し、示差走査熱量計(THERMOFLEX TAS200、株式会社リガク製)を用い、2℃/minの昇温速度で0℃から80℃まで測定した際の吸熱ピークの最大値を示す温度として求めることができる。なお、2種以上の陽イオン性界面活性剤を配合する場合、陽イオン性界面活性剤の融点は、用いる陽イオン性界面活性剤を混合し、この混合物の吸熱ピークの最大値として求めることができる。
【0052】
油相中の陽イオン性界面活性剤の配合量は、水中油型乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、45〜95質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましく、65〜95質量%がさらに好ましい。45質量%以上であれば、衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果を十分に発揮でき、95質量%以下であれば、油相の粘度が著しく上昇するのを抑え、工程(2)で得られる乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0053】
油相中の非イオン性界面活性剤の配合量は、水中油型乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。1質量%以上であれば、油剤の乳化に効果的に作用し、30質量%以下であれば、工程(2)で得られる乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0054】
油相に油剤を配合する場合、油相中の油剤の配合量は、水中油型乳化物の用途等を勘案して決定でき、例えば、40質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。水中油型乳化物を衣料用柔軟剤として用いた場合、この衣料用柔軟剤は、油剤を配合しなくても、しわ防止効果やすべり性付与効果を発揮する。さらに、油相中の油剤の配合量が1質量%以上であれば、しわ防止効果やすべり性付与効果がより向上し、40質量%以下であれば油相のハンドリング性も良好であり、油剤由来の不快なべた付きを抑制できる。
【0055】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた油相を工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で水に分散し乳化物を得る工程である。本工程において、分散媒となる水には、必要に応じて防腐剤、抗菌剤、pH調整剤等を予め分散しておくことができる。また、油相に加え、別途用意した油剤を添加してもよい。
【0056】
本工程は、例えば、混合装置として一般的な高剪断型の混合装置であるホモミキサーを用い、任意の温度とした水に油相を投入し、工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら混合することにより乳化物を得る方法が挙げられる。
また、混合装置としてパドル翼、プロペラ羽根等を備えた低剪断型の混合装置を用い、水を工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら撹拌し、油相を滴下し混合することにより乳化物を得る方法が挙げられる。
【0057】
本工程における混合装置は、例えば、ホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、クレアミックス等のバッチ式混合装置、マイルダー、ラインミキサー等の連続式混合装置等の高剪断型の混合装置、プロペラ羽根、パドル翼、アンカー翼、ディスクタービン翼、傾斜タービン翼、ファンタービン翼等を備えたバッチ式の低剪断型の混合装置が挙げられる。
【0058】
本工程における混合装置の運転条件は、特に限定されないが、例えば、乳化物中の油相の粒子の平均粒径が、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下となるように剪断速度等を調節する。なお、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)を用い、25℃、相対屈折率1.08にて、体積基準のメディアン径(d50)により測定される値である。
【0059】
本工程において、油相と水との混合比は特に限定されないが、油相/水(質量比)が、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4とされる。0.01以上であれば、得られる水中油型乳化物に所望する機能を付与でき、0.5以下であれば、得られる水中油型乳化物の貯蔵安定性が向上する。
【0060】
なお、工程(2)においては、配合する水の一部を第一水相、残部を第二水相に分割し、任意の温度とした第一水相に、工程(1)で調製した油相を投入し、乳化した後に第二水相を投入することができる。香料以外の油剤を多量に配合する場合には、水を一括で添加するよりも、水を分割して添加する方が、粒子状態の良好な水中油型乳化物が得られる。水の分割割合は特に限定されないが、例えば、第一水相の量は、好ましくは第一水相/油相(質量比)=0.5〜1.5、より好ましくは第一水相/油相(質量比)=0.7〜1.2とされる。0.5以上であれば、得られる乳化物の流動性が適度なものとなり、1.5以下であれば、油剤の乳化状態がより良好となる。
【0061】
本工程における温度条件は、工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点以上であれば特に限定されないが、好ましくは該陽イオン性界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とされる。また、本工程における温度条件の上限は、陽イオン性界面活性剤の種類や非イオン性界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、例えば、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下とされる。100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油型乳化物の粘度が上昇したり、香気の劣化を生じるおそれがある。
【0062】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で得られた乳化物を工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点未満の温度に冷却する工程である。本工程で冷却された乳化物の温度は、工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点未満であれば特に限定されないが、好ましくは該融点の5℃以下、より好ましくは該融点の10℃以下である。また、本工程で冷却された乳化物の温度の下限は、特に限定されないが、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上とされる。
【0063】
乳化物の冷却は、乳化物を工程(1)で配合した陽イオン性界面活性剤の融点未満に冷却できるものであれば特に限定されず、例えば、工程(2)で用いた混合装置を水冷又は空冷する方法が挙げられる。
【0064】
<工程(4)>
工程(4)は、工程(3)で冷却した乳化物と非水溶性香料とを特定の剪断速度及び循環回数で混合し、乳化物に非水溶性香料を分散・乳化し、水中油型乳化物を得る工程である。
【0065】
本工程における混合装置は、工程(2)における混合装置と同様である。
本工程に用いる混合装置の例について、以下に図面を用いて説明する。図1は、混合装置の一例を示すバッチ式混合装置1の模式図である。バッチ式混合装置1は、撹拌槽10と、撹拌槽10の内面12を掻き取る略U字状のスクレーパー翼32に攪拌槽10の中心方向に突出する突出翼32が設けられた壁面掻取翼30と、攪拌槽10の略中心に上下方向に延びる攪拌軸22と、該攪拌軸22から内面12に向かって突設された攪拌翼20とで概略構成されている。
このバッチ式混合装置1においては、攪拌槽10内に混合の対象とする原料を供給し、撹拌翼20及び壁面掻取翼30を回転させることで、供給された原料は、内面12と攪拌翼20との間で生じる剪断力を受けながら混合される。
このようなバッチ式混合装置としては、アジホモミキサー(株式会社エヌ・ピー・ラボ製)、ロボミクスホモミキサー(プライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
【0066】
また、本工程には、図2に示すような連続式混合装置100を用いることができる。連続式混合装置100は、略円筒状のハウジング110と、攪拌翼122を供えるローター120と、ローター120をその回転軸回りに離間して覆うステーター130とで概略構成されている。
この連続式混合装置100においては、ローター120を回転させながら吸入口112からハウジング110内に乳化物と非水溶性香料とを混合した流体を供給することで、供給された流体は攪拌翼122とステーター130の内面132との間で生じる剪断力を受けながら混合され、水中油型乳化物となる。そして、水中油型乳化物は、排出口114から装置外へ排出される。
このような連続式混合装置としては、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、ラインホモミキサー(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
【0067】
本工程における剪断速度は、1,000sec−1以上であり、好ましくは5,000sec−1以上、より好ましくは25,000sec−1以上である。剪断速度が1,000sec−1未満であると、非水溶性香料の分散が不十分となり、得られる水中油型乳化物の貯蔵安定性と香気品質が損なわれるおそれがある。また、剪断速度が速いほど、非水溶性香料の粒径は小さくかつ均一になるが、剪断速度の上限は、例えば、10,000,000sec−1以下とされる。剪断速度を10,000,000sec−1超としても、非水溶性香料の分散性向上の効果が飽和すると共に、剪断速度を10,000,000sec−1超とするためには混合装置の高度な調整が必要とされ、作業が煩雑である。
【0068】
剪断速度とは、混合装置の攪拌翼の先端速度をv(m/s)、該先端と混合装置の内面とのクリアランスをD(m)とした場合にv/D(sec−1)で算出される値である。
例えば、図1に示すバッチ式混合装置1における剪断速度は、攪拌翼20の先端24の先端速度と、先端24と攪拌槽10の内面12とのクリアランス(図1中のD1)とから算出できる。
また、図2に示す連続式混合装置100における剪断速度は、攪拌翼120の先端124の速度と、先端124とステーター130の内面132とのクリアランス(図2中のD2)とから算出できる。
なお、当該剪断速度は、混合装置の攪拌翼の回転速度又は攪拌翼と内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0069】
本工程における循環回数は、2以上であり、好ましくは4以上である。循環回数を2未満とすると、水中油型乳化物中の非水溶性香料の分散が不十分となり貯蔵安定性に劣るためである。また、循環回数が多いほど非水溶性香料の粒径を小さくかつ均一にできるが、循環回数の上限は、例えば、1,000,000以下とされる。循環回数を1,000,000超としても、非水溶性香料の分散性向上の効果が飽和すると共に、攪拌装置に過度の負荷を与えることとなる。
【0070】
循環回数とは、工程(4)において、内容物が撹拌羽根により受ける剪断回数を示すものである。循環回数は、乳化物と非水溶性香料とをバッチ式混合装置で混合する場合、下記(i)で規定されるものである。
【0071】
(i)工程(4)をバッチ式混合装置で行う場合、下記(1)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d×θ÷V ・・・(1)
[式(1)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容液の体積(m)]
【0072】
上記(i)において吐出流量係数Nqdは、攪拌翼の形式により定まる定数であり、吐出流量Qdに基づいて、下記(ア)式により算出することができる。
【0073】
Nqd=Qd/NR ・・・(ア)
[式(ア)中、Qd:吐出流量(m/min)、N:攪拌翼の回転数(rpm)、R:攪拌槽の内径(m)]
【0074】
Qdは、「粒子が翼端から吐出され、翼からの吐出流の流れに運ばれて再び翼端に吸い込まれる」あるいは「翼からの吐出流から、翼からの吐出流によって誘起される流れに移り、翼に戻らずに循環を繰り返した後、翼からの吐出流の流れに戻り翼に吸い込まれる流れ」であると定義できる。
ここで、Qdは、攪拌翼の剪断速度に応じ、公知の方法により測定できる(参考文献1:佐藤忠正,谷山巌,「攪拌槽における吐出循環流量」,社団法人化学工学会,化学工学,第29巻,第3号,1965年、参考文献2:創業70周年記念事業特別委員会編,「乳化・分散の理論と実際」,特殊機化工業株式会社,1997年4月17日)。
例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、ディスプロ翼、ディスパー翼等、剪断速度5,500sec−1未満の攪拌翼のQdは、図3に示す測定装置200を用いて測定することができる。
図3に示すように測定装置200は、攪拌槽202と、攪拌槽202内に設けられた攪拌翼230と、鏡240とを備えるものである。鏡240は、攪拌槽202の下方に、攪拌槽202の底面214に対し角度αの傾斜で設けられたものである。攪拌槽202は、略円筒形の水槽210と、水槽210の内周面に、開口部212から底面214に掛けて等間隔で設けられた2枚の邪魔板220とを備え、水槽210は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽210内部を鏡240で視認できる材質のものである。攪拌翼230は、攪拌軸232と接続され、攪拌軸232は、図示されない動力と接続されている。
【0075】
測定装置200は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.25〜0.5、C/R=0.1〜0.8、W/R=0.1、θ=45°
(dは攪拌翼の直径(m)、Cは攪拌翼の取付高さ(m)、Wは邪魔板の幅(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、αは攪拌槽の底面に対するミラーの角度(°)である。
【0076】
次に剪断速度が5,500sec−1未満の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽202内に粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼230で攪拌した際、粒子262が測定時間Tの間に攪拌翼230を通過する回数mqを、矢印F方向で鏡240を介して目視でカウントする。そして、カウントした回数mqから、下記(イ)式により求めることができる(参考文献1のp.153〜158参照)。測定に用いられる粒子262は、球形型のポリプロピレン製粒子(球形3mm、比重1.1g/cm)であり、10個とする。内容液体は25℃、測定時間Tは10〜15分である。
【0077】
Qd=mqV/T ・・・(イ)
式(イ)中、mqは通過回数、Vは内容液260の体積(m)、Tは測定時間(min)を表す。
【0078】
また、例えば、T.K.ホモミクサーMARK II型(プライミクス株式会社製)、ウルトラタラックス(IKA社製)、シャーフロー、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)等、剪断速度5,500sec−1以上の攪拌翼のQdは、図4に示す測定装置300を用いて測定することができる。
図4に示すように測定装置300は、攪拌槽301と、攪拌槽301内に設けられた攪拌部304とを備えるものであり、攪拌部304は、タービン翼である攪拌翼302と、邪魔板の役目をするステーター303とで構成されている。攪拌翼302は、攪拌軸307と接続され、攪拌軸307は、図示されない動力と接続されている。攪拌槽301は、水槽305と、攪拌部304の上方に設けられた転流板306とで構成され、水槽305は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽305内部を視認できる材質とされている。
測定装置300は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.2〜0.3、z/Z=0.5〜0.7、l/L=0.5〜0.7
(dは攪拌翼の直径(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、z/Zは攪拌翼の取付位置(m/m)、l/Lは転流板の取付位置(m/m)である。
【0079】
次に剪断速度が5,500sec−1以上の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽301内に、粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼302で攪拌する。この際、内容液260は、水面が転流板306の上方となるようにする。攪拌した際、粒子262がステーター303内に入ってから一循環して、再度、ステーター303内に戻るまでを循環1回とする。この循環1回の時間を1000回測定し、1000回分の測定値により循環時間分布を作成する。分布は、横軸を時間t[sec]とし、縦軸をg(t)=[ある時間帯の回数/全回数]とし、プロットして作成する。この循環時間分布を基に、下記(ウ)式により、Qdを求めることができる(参考文献2のp.13〜15参照)。
【0080】
Qd=V/T ・・・(ウ)
式(ウ)中、Vは内容液260の体積(m)、Tは混合時間(min)を表す。
なお、Tは、下記(エ)式により、求めることができる。
【0081】
=T+T ・・・(エ)
式(エ)中、Tは、g(t)分布のトップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=0〜tまでの混合時間の平均を表す。Tは、g(t)分布トップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=t〜∞までの時間の平均を表す。t=0〜t区間におけるg(t)、t=t〜∞におけるg(t)は、g(t)軸のプロットを基に、近似式として求めることができる。
【0082】
剪断速度が5,500sec−1未満である攪拌翼、剪断速度が5,500sec−1以上である攪拌翼共に、そのNqdは、回転数、つまり攪拌レイノルズ数により異なる。Nqdに対する攪拌レイノルズ数の関係は、攪拌レイノルズ数が大きくなると、Nqdも大きな値をとる。攪拌レイノルズ数が大きい乱流領域では、Nqdが一定値となるので、攪拌レイノルズ数を大きくしたときのNqdの値が10%以内であるときを確認し、その値を攪拌翼のNqdとして用いる。
【0083】
例えば、バッチ式混合装置1において、攪拌翼20の直径dは、攪拌翼20の先端24が描く円形の直径(図1中のd1)であり、液体の体積Vは攪拌槽10内に投入する乳化物体積と非水溶性香料の体積の合計である。
【0084】
また、循環回数は、乳化物と非水溶性香料とをT.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等の連続式混合装置で混合する場合、下記(ii)で規定されるものである。
【0085】
(ii)下記(2)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d÷F ・・・(2)
[式(2)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m/min)]
上記(ii)において、Nqdは、(i)の場合と同様である。
【0086】
例えば、連続式混合装置100において、攪拌翼122の直径dは、攪拌翼122の先端124が描く円の直径(図2中のd2)であり、混合装置へ供給される流体の流量Fは、吸入口112から供給される乳化物及び非水溶性香料の混合液の流量である。
【0087】
本工程における温度条件は、特に限定されないが、例えば35℃未満が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。35℃未満であれば、非水溶性香料の熱劣化をより良好に防止できる。
【0088】
本工程により得られる水中油型乳化物は、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び非水溶性香料が、それぞれ独立に又は混合物の粒子として存在する。この粒子の平均粒径は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下とされる。このような微細な粒径の粒子とすることで、水中油型乳化物の貯蔵安定性の向上が図れる。
【0089】
本発明によれば、工程(1)〜(3)で繊維製品処理剤等に用いられる水中油型乳化物のベースとなる乳化物を製造し、工程(4)で乳化物に任意の香料を配合できる。かかる製造方法によれば、工程(4)では、工程(1)〜(3)で製造した乳化物を小分けにし、小分けにした乳化物毎に最終製品に応じた香料を配合できるため、香り違いの製品を効率よく製造できる。
【0090】
加えて、本発明によれば、工程(3)で乳化物を陽イオン性界面活性剤の融点未満に冷却した後、非水溶性香料を添加するため、非水溶性香料に与える熱量が少ない。この結果、非水溶性香料が熱劣化することなく、所望する香りで水中油型乳化物を高賦香化できる。
さらに、工程(4)では、特定の剪断速度かつ特定の循環回数で、乳化物に非水溶性香料を混合するため、非水溶性香料を多量に配合しても、著しい粘度上昇を伴うことなく、貯蔵安定性に優れた水中油型乳化物を製造できる。
【0091】
本発明の水中油型乳化物は、単独あるいは他の成分と配合することにより、衣料用柔軟剤等の繊維製品処理剤、ヘアリンス、化粧品等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた成分の配合量は、特に指定しない限り純分換算値である。
【0093】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<陽イオン性界面活性剤>
A−1:N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート(商品名:アーカードTES−85E、融点:42℃、ライオンアクゾ株式会社製)
A−2:N,N−ジオレオイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(商品名:アーカードDEO、融点:41℃、ライオンアクゾ株式会社製)
A−3:N,N−ジステアロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(商品名:アーカードDES、融点:46℃、ライオンアクゾ株式会社製)
【0094】
<非イオン性界面活性剤>
B−1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数60、商品名:TA600−75、ライオンケミカル株式会社製)
B−2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、EOの平均付加モル数45、商品名:TA450−75、ライオンケミカル株式会社製)
B−3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数12、EOの平均付加モル数30、商品名:EMALEX−730、日本エマルジョン株式会社製)
【0095】
<香料組成物:非水溶性香料の組成物>
C−1:表1に記載の香料組成物
C−2:表2に記載の香料組成物
C−3:表3に記載の香料組成物
各香料組成物について、前述の(3)式で算出される水への溶解度を表中に記載した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
<その他>
油剤:ポリエーテル変性シリコーン(商品名:ポリエーテル変性シリコーンCF1188HV)、東レ・ダウコーニング株式会社製
着色剤:Oil Red(商品名:SudanIV)、東京化成工業株式会社製
防腐剤:ケーソンCG/IPC、ローム・アンド・ハース社製
粘度調整剤:塩化カルシウム(試薬特級)、株式会社トクヤマ製
pH調整剤:塩酸、株式会社森化学工業所製
【0100】
(評価方法)
<香料分散状態>
香料分散状態は、予めOil Redが香料組成物に溶解された着色香料を用い、以下に示す方法で目視評価、a値評価により評価した。Oil Redは、水中油型乳化物に対し0.0003質量%となるように配合した。
≪目視評価≫
各例で得られた水中油型乳化物を顕微鏡(最高級システム研究顕微鏡AX70、オリンパス光学工業株式会社製)で観察し、下記基準に従って評価した。
○:着色香料の油滴が認められなく、均一な粒子状態であった
×:着色香料の油滴が認められた
【0101】
≪a値評価≫
各例で得られた水中油型乳化物のうち、前述の「≪目視評価≫」の評価が「○」であったものにつき、以下の試験を行った。
各例の水中油型乳化物45gを遠沈管に採取し、10,000rpm、10minの条件で遠心分離した。その後、下層17gをセルに採取し、色差計(Spectrophotometer SE2000、日本電色工業株式会社製)を用いてa値を2回測定し、その平均値を算出した。このa値が高いほど、水中油型乳化物中の香料組成物の分散状態が良好であると言える。
【0102】
<香気評価>
各例で得られた水中油型乳化物について、以下の方法で官能試験を行った。調製直後の水中油型乳化物をガラス瓶に採取し、10名のパネルが瓶口の香気を下記基準に従い評価し、その平均値を香気評価の結果とした。香料組成物C−2の配合量が1質量%の例は比較例7を標準品とし、香料組成物C−2の配合量が2質量%の例は比較例8を標準品とし、香料組成物C−2の配合量が3質量%の例は比較例11を標準品とし、香料組成物C−2の配合量が5質量%の例は比較例13を標準品として評価した。また、香料組成物C−1の配合量が3質量%の例は、比較例10を標準品とし、香料成分C−3の配合量が3質量%の例は、比較例12を標準品として評価した。なお、下記基準中「フレッシュ」とは、香料本来の香り(香気の変調・劣化がない)ことを表現するものである。
5点:標準品よりも香り立ちがフレッシュである
4点:標準品よりもやや香り立ちがフレッシュである
3点:標準品と同等の香りのフレッシュさである
2点:標準品よりも香り立ちのフレッシュさがやや劣る
1点:標準品よりも香り立ちのフレッシュさが劣る
【0103】
<粘度測定>
200mLのビーカーに各例の水中油型乳化物200mLを入れ、25℃の恒温水槽で1時間調温した。その後、粘度計(BL型回転式粘度計、株式会社東京計器製)を用い、以下の測定条件で測定した。
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(水中油型乳化物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0104】
<平均粒径の測定>
各例で得られた水中油型乳化物をフロー用セルに入れ、ここへ蒸留水を加えて吸光度が適正濃度範囲となるように調製したものを試料とした。この試料について、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)を用い、25℃、相対屈折率1.08にて、体積基準のメディアン径(d50)を測定した。
【0105】
<粗雑粒度の測定>
各例で得られた水中油型乳化物について、「<平均粒径の測定>」で同時に得られた粒度分布において、10,000nm超の粒子が、全粒子に占める割合(個数)を粗雑粒度率として求めた。
【0106】
(混合装置)
実施例に用いた混合装置は以下の通りである。
混合装置1:バッチ式混合装置のT.Kロボミックス(撹拌部「T.K.ホモミクサーMARK II型」、攪拌槽;2000mLベッセル、攪拌翼径;28mmφ、攪拌翼とステーターとのクリアランス;0.5mm、プライミクス株式会社製)
混合装置2:バッチ式混合装置のT.Kロボミックス(撹拌部「T.K.ホモミクサーMARKII型」、攪拌槽;1000mLベッセル、攪拌翼径;28mmφ、攪拌翼とステーターとのクリアランス;0.5mm、プライミクス株式会社製)
混合装置3:連続式混合装置のT.Kロボミックス(撹拌部「T.K.パイプラインホモミクサーM型」、攪拌翼径;28mmφ、攪拌翼とステーターとのクリアランス;0.5mm、プライミクス株式会社製)
【0107】
(実施例1〜8、19〜22)
表4〜8の組成に従い、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンを55℃に加熱しながら混合して油相とした。精製水と抗菌剤を均一に混合後、55℃に加熱して水相(第一水相)とした。この第一水相を混合装置1に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、油相をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、混合した。その後、15質量%塩化カルシウム水溶液を添加して乳化物を得た。得られた乳化物を30℃に冷却後、混合装置2に仕込み、攪拌翼を表中の回転数とし、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、10〜75秒間混合して水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。なお、着色香料は、表中の組成に従い、香料組成物と着色剤とを混合したものである(以降において同じ)。また、混合装置1及び混合装置2の吐出流量係数は、文献(創業70周年記念事業特別委員会編、「乳化・分散の理論と実際」、特殊機化工業株式会社、1997年4月17日、p.23)に記載の値を用いた。
【0108】
(実施例9〜14)
表5〜6の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、予め30℃にした着色香料と共に混合装置3に処理流量15L/minで供給しながら、攪拌翼10,000rpm回転下にて混合して水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。混合装置3の吐出流量係数は、測定装置300を用いて測定した吐出流量Qdに基づく算出値である。
【0109】
(実施例15〜16)
表6〜7の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、表に示す攪拌時間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0110】
(実施例17)
表7の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を5℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、予め5℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、15秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0111】
(実施例18)
表7の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を40℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、予め50℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、15秒間混合して、水中油型乳化物)を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0112】
(実施例23)
表8の組成に従い、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を55℃に加熱しながら混合して油相とした。精製水と抗菌剤とを混合し、その後55℃に加熱して水相とした。水相を混合装置1に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、油相をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、混合した。その後、15質量%塩化カルシウム水溶液を添加して乳化物を得た。得られた乳化物を30℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、15秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0113】
(実施例24)
表8の組成に従い、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンを55℃に加熱しながら混合して油相とした。精製水と抗菌剤とを混合して水相とした。この水相の一部を第一水相とし、混合装置1に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、油相をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、混合した。その後、さらに水相の残部(第二水相)を投入し、混合した。その後、15質量%塩化カルシウム水溶液を添加して乳化物を得た。得られた乳化物を30℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、15秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0114】
(実施例25)
表8の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、ディスプロ翼(攪拌翼径;55mm、攪拌翼と筒型容器とのクリアランス;3.5mm)6,500rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。ディスプロ翼の吐出流量係数は、測定装置200を用いて測定したQd(吐出流量)に基づく算出値である。
【0115】
(実施例26)
表9の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、ディスパー翼(攪拌翼径;55mm、攪拌翼とベッセルとのクリアランス;3.5mm)6,500rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。ディスパー翼の吐出流量係数は、測定装置200を用いて測定したQd(吐出流量)に基づく算出値である。
【0116】
(比較例1)
表9の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、混合装置2に仕込み、攪拌翼300rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、150秒間混合し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0117】
(比較例2)
表9の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、予め30℃にした着色香料を混合装置3に処理流量15L/minで供給しながら、攪拌翼3,500rpm回転下にて混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0118】
(比較例3)
表9の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、4枚傾斜(45°)パドル翼(攪拌翼径;30mm、攪拌翼とベッセルとのクリアランス;15mm)300rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。パドル翼の吐出流量係数は、測定装置200を用いて測定したQd(吐出流量)に基づく算出値である。
【0119】
(比較例4)
表9の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、ディスクタービン翼(攪拌翼径;30mm、攪拌翼とベッセルとのクリアランス;15mm)300rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。ディスクタービン翼の吐出流量係数は、測定装置200を用いて測定したQd(吐出流量)に基づく算出値である。
【0120】
(比較例5)
表10の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、ディスパー翼(攪拌翼径;55mm、攪拌翼とベッセルとのクリアランス;3.5mm)1,000rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0121】
(比較例6)
表10の組成に従い、実施例1と同様の方法で調製した乳化物を30℃に冷却した後、筒型容器(300mLベッセル)に仕込み、ディスプロ翼(攪拌翼径;55mm、攪拌翼とベッセルとのクリアランス;3.5mm)1,000rpm回転下にて、予め30℃にした着色香料をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、30秒間混合して、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0122】
(比較例9)
表10の組成に従い、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン、着色香料を55℃に加熱しながら混合して油相とした。精製水と抗菌剤とを混合後、5℃に冷却して水相とした。この水相を混合装置1に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、油相をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、150秒間混合し、15質量%塩化カルシウム水溶液を添加し、30℃に冷却して水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0123】
(比較例7、8、10〜13)
表10〜11の組成に従い、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン、着色香料を55℃に加熱しながら混合して油相とした。精製水と抗菌剤を混合後、55℃に加熱して水相とした。水相を混合装置1に仕込み、攪拌翼10,000rpm回転下にて、油相をノズル添加(添加速度:50〜100g/min、減圧度:−0.1〜−0.05MPa)した後、150秒間混合し、15質量%塩化カルシウム水溶液を添加し、30℃に冷却して水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物について、香料分散状態、香気評価ならびに粘度、平均粒径及び粗雑粒度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0124】
【表4】

【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
【表8】

【0129】
【表9】

【0130】
【表10】

【0131】
【表11】

【0132】
表4〜9に示すように、本発明を適用した実施例1〜26は、いずれも香料分散状態の目視評価が「○」、a値が5.1以上であり、かつ香気評価が3.6以上であった。加えて、実施例11の結果の通り、香料組成物の溶解度が1質量%であっても、香料分散状態、香気評価は良好であった。
一方、表9〜11に示すように、工程(4)で本発明の剪断速度又は循環回数の条件を満たしていない比較例1〜6は、香料浮きが見られた。加えて、香料組成物、即ち非水溶性香料を油相に添加し、工程(2)で水と混合した比較例7〜13は、いずれも実施例1〜26に比べて香気のフレッシュ感が劣るものであった。加えて、比較例9、10、13は香料浮きが認められ、乳化状態が不安定であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1):陽イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で混合して油相を調製する工程と、
工程(2):前記工程(1)で得られた油相を前記陽イオン性界面活性剤の融点以上の温度で水に分散し乳化物を得る工程と、
工程(3):前記工程(2)で得られた乳化物を前記陽イオン性界面活性剤の融点未満の温度に冷却する工程と、
工程(4):前記工程(3)で冷却した乳化物と非水溶性香料とを剪断速度1,000sec−1以上、下記(i)又は下記(ii)で規定する循環回数2以上で混合する工程とを有する水中油型乳化物の製造方法。
(i)工程(4)をバッチ式混合装置で行う場合、下記(1)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d×θ÷V ・・・(1)
[式(1)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容物の体積(m)]
(ii)工程(4)を連続式混合装置で行う場合、下記(2)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d÷F ・・・(2)
[式(2)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m/min)]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5975(P2012−5975A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145071(P2010−145071)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】