説明

水中油型乳化物

【課題】乳化安定性に優れ、かつ低粘度の水中油型乳化物、及びその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】〔1〕疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に下記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化してなる水中油型乳化物であって、水相に水溶性糖類(c)を含み、かつ水の含有量が40〜90質量%である水中油型乳化物、及び〔2〕疎水性化合物(a)を、高分子化合物(b)で乳化処理してなる水中油型乳化物と、水溶性糖類(c)とを混合する、水中油型乳化物の製造方法である。
−(OX)n−E2−R (1)
(式中、Xは炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基、nは5〜300の数、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基、Rはヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度の水中油型乳化物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油剤等の疎水性化合物を乳化物として安定に配合することは、化粧品や香料品分野、及び衣料用柔軟剤等の分野において重要な技術である。
特に、洗浄料のような大量の界面活性剤が存在する場合には安定性が失われ乳化破壊が生じることが知られている。そのため、側鎖の一部に特定の基を有する高分子化合物と疎水性化合物を含む特定の組成物を調製し、水で希釈することにより安定性の良好な疎水性化合物の水中油型乳化物が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、得られる水中油型乳化物の粘度が高粘度になり易いため、粘度低減のために、水、水溶性ポリオール等の液体成分の添加・希釈を行っており、他に有効な粘度低減技術が知られていなかった。このため、水や水溶性ポリオール濃度を抑制したい場合でも、粘度調整のために、それらを多量に配合する必要があるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2005−314244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乳化安定性に優れ、かつ低粘度の水中油型乳化物、及びその効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、側鎖の一部に特定の基を有する高分子化合物で疎水性化合物を乳化した水中油型乳化物に、水溶性糖類を添加するとその粘度が大幅に低下することを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に下記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化してなる水中油型乳化物であって、水相に水溶性糖類(c)を含み、かつ水の含有量が40〜90質量%である水中油型乳化物。
−(OX)n−E2−R (1)
(式中、n個のXは同一又は異なる炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基、nは5〜300の数、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基、Rはヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。)
〔2〕(a)疎水性化合物を、(b)少なくとも側鎖に上記式(1)で表される基を有する高分子化合物で乳化処理してなる水中油型乳化物と、(c)水溶性糖類とを混合する、水中油型乳化物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乳化安定性に優れ、かつ低粘度の水中油型乳化物、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水中油型乳化物は、疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に前記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化してなる水中油型乳化物であって、水相に水溶性糖類(c)を含み、かつ水の含有量が40〜90質量%であることを特徴とする。
次に、本発明の水中油型乳化物に用いられる各成分について説明する。
【0008】
[疎水性化合物(a)]
本発明に用いられる疎水性化合物(a)に特に制限はなく、例えば高級アルコール類、ステロール類、シリコーン類、フッ素系油剤、香料及びその他油性成分を好ましく挙げることができる。
高級アルコール類としては、炭素数が6〜25程度の直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールや、芳香脂肪族アルコール等が用いられ、このようなものとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シンナミルアルコール等を例示することができる。これらの高級アルコール類の中では、セチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。
また、ステロール類としては、例えばコレステロール、イソステアリン酸コレステリル、プロビタミンD3、カンベステロール、ステグマスタノール、アルケニルコハク酸コレステリル(特開平5−294989号公報)等が挙げられる。これらの中では、特にコレステロール、イソステアリン酸コレステリル、アルケニルコハク酸コレステリルが好ましい。
【0009】
シリコーン類としては、通常トイレタリー製品に配合されるものを用いることができる。例えば、オクタメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンのほか、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルポリシクロシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、更には、アルキル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、特開平6−72851号公報記載の変性オルガノポリシロキサン等の変性シリコーン等が挙げられる。
また、フッ素系油剤としては、常温で液体のパーフルオロ有機化合物であるパーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーンが好ましく、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0010】
香料としては、天然香料、合成香料及び調合香料のいずれも用いることができる。天然香料及び合成香料としては、例えばシネオール、カンファー、ピネン、リモネン、ターピネオール、リナロール、酢酸リナロール、ネロール、酢酸ネリル、カルバクロール、チモール、シトロネロール、シトラール、ゲラニオール、サンタロール、ボルネオール、カルボン、メチルイオノン、サリチル酸ヘキシル、イオノン、ヘディオン、フェノキシエタノール、アンバーコア、セドリルメチルエーテル、シンナミックアルデヒド、酢酸ベンジル、オイゲノール、セドレン、酢酸ボルニル、メントール、メントン、メチルチャビコール、サイメン、プレゴール、アネトール、シヨン、ラバンジュロール、セージオイル、タイムオイル、バジルオイル、ペパーミントオイル、ハッカオイル、ローズマリーオイル、ユーカリプタスオイル、マジョラムオイルセージ、シトロネラオイル、シダーウッドオイル、スイートオレンジオイル、ベルガモットオイル、ラベンダーオイル、シンナモンオイル、レモンオイル、ライムオイル、ひのきオイル等が挙げられる。
【0011】
調合香料としては、レモン調、ライム調、オレンジ調、スイートオレンジ調、マンダリン調、ベルガモット調等のシトラスタイプベース、プチグレン調、ネロリ調、レモングラス調、アグルメン調等のフレッシュタイプベース、アップル調、ピーチ調、ストロベリー調、ココナッツ調、パイナップル調、ラズベリー調、ウォーターメロン調等のフルーティタイプベース、ローズ調、ジャスミン調、ムゲ調、ライラック調、カーネーション調、ヒアシンス調、チュベローズ調、ガーデニア調、ミモザ調、ナルシス調、バイオレット調、イラン調、フローラルブーケ調等のフローラルタイプベース、シナモンバーク調、シナモンリーフ調、クローブ調、ピメントベリー調、ナツメグ調、ペッパー調、カルダモン調、コリアンダー調、クミン調等のスパイシータイプベース、シダーウッド調、ベチバー調、サンダルウッド調、グアイアックウッド調、ウディアンバー調、ウディイリス調等のウッディタイプベース、スモーキー調、キノリン調等のレザータイプ、バニラ調、トンカ調、ハネー調、ピュアーバルサム調等のスィートタイプベース、その他アルデハイディックタイプベース、アンバータイプベース、アニマルタイプベース、アニスタイプベース、アロマティックハーバルタイプベース、アガータイプベース、アクアタイプベース、カンファーシネオールタイプベース、グリーンタイプベース、シードタイプベース、ハーブタイプベース、パインタイプベース、パチュリタイプベース、バルサミックタイプベース、ミントタイプベース、ムスクタイプベース、モスタイプベース、ラベンダータイプベース、リナロールタイプベース、レジンタイプベース等が挙げられる。
【0012】
その他油性成分としては、揮発性又は不揮発性のいずれも用いることができる。例えば、固体状又は液体状パラフィン、ワセリン、クリスタルオイル、スクワラン等の炭化水素類;ユーカリ油、ハッカ油、ヒマワリ油、牛脂、オリーブ油、カルナウバロウ、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、フタル酸ジエチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸セチル、1−イソステアロイル−3−ミリストイルグリセロール、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸グリセロール、ジ−パラメトキシケイヒ酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;リグナン、ビタミンE、油溶性ビタミンC、ビタミンA誘導体、セラミド類、セラミド類似構造物質、油溶性紫外線吸収剤等の機能性油性物質等が挙げられる。
上記疎水性化合物(a)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
[高分子化合物(b)]
本発明において、疎水性化合物(a)を乳化処理するのに用いられる高分子化合物(b)は、少なくとも側鎖に、下記式(1)で表される基を有する。
−(OX)n−E2−R (1)
式(1)において、n個のXは同一又は異なる炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示す。Xは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。Xの具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種シクロペンチレン基、各種シクロヘキシレン基等が挙げられるが、これらの中では、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
nは5〜300の数を示し、5〜200が好ましく、8〜120がより好ましい。
2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示す。オキシカルボニル基は、Rに結合する原子が炭素原子であってもよく、酸素原子であってもよい。
Rは、ヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。Rは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、炭素数6〜25のアルキル基が好ましい。Rの具体例としては、各種のヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、さらには環上にアルキル基が導入されていてもよいシクロヘキシル基やシクロオクチル基等、及びこれらの基の水素原子の少なくとも1つがヒドロキシル基で置換された基が挙げられる。
【0014】
高分子化合物(b)の好適例としては、前記式(1)で表される基を有する多糖誘導体(b−1)及び/又は前記式(1)で表される基を、主鎖構成モノマー単位当たり、平均で0.0001〜0.1個有する重量平均分子量1万〜200万の水溶性合成高分子化合物(b−2)を挙げることができる。
【0015】
<多糖誘導体(b−1)>
多糖誘導体としては、多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、下記基(A)で置換された多糖誘導体(以下、多糖誘導体(b−1−a)という)が好ましい。
(A)一般式(2)で表される基
−E1−(OX)n1−E2−R (2)
(式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状の2価の飽和炭化水素基を示し、n1は8〜300の数を示し、X、E2及びRは前記と同じ意味を示し、n1個のXは同一でも異なっていてもよい。)
前記の多糖類又はその誘導体としては、セルロース、グアーガム、スターチ、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸等の多糖類;これらにメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が置換した誘導体が挙げられる。これらの置換基は、構成単糖残基中に単独で又は複数の組合せで置換することができる。
【0016】
多糖類の誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。
これら多糖類又はその誘導体の中では、セルロース、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
これら多糖類又はその誘導体の重量平均分子量は、1万〜1000万が好ましく、より好ましくは10万〜500万、さらに好ましくは20万〜200万である。
【0017】
前記の基(A)において、E1としては、ヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数2又は3の直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基が好ましい。その好適的としては、エチレン、プロピレン、トリメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン、1−オキソエチレン、1−オキソトリメチレン、1−メチル−2−オキソエチレン等が挙げられる。
Xとしては、炭素数2又は3の直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基が好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン及びトリメチレンが好ましい。
n1で表される(−OX−)の平均付加モル数としては、増粘効果及び乳化安定性の点から、8〜120が好ましく、10〜60がより好ましい。n1個のXは同一でも異なってもよい。E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基であるが、エーテル結合が好ましい。Rとしては、好ましくは炭素数5〜25、より好ましくは6〜20の、ヒドロキシ基で置換されていてもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、また、安定性の観点から、非置換のアルキル基、特に非置換の直鎖状アルキル基が好ましい。具体的にはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基等が好ましい。
【0018】
多糖誘導体(b−1−a)における前記の基(A)による置換度は、構成単糖残基当たり0.0001〜1.0が好ましく、より好ましくは0.0005〜0.5、さらに好ましくは0.001〜0.1である。
本発明における多糖誘導体(b−1)は、基(A)に加え、更に下記の基(B)、(C)及び(D)から選ばれる1以上の基で置換されていてもよい。また、基(A)〜(D)のヒドロキシ基の水素原子は、更に基(A)〜(D)で置換されていてもよい。
(B)ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基又はその塩
(C)ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数2〜6のカルボキシアルキル基又はその塩
(D)一般式(3)で表される基
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、D1はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を示し、R1、R2及びR3は同一又は異なる、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、Y-はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。)
基(B)としては、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、なかでも安定面や製造面の観点から、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基が好ましい。これら基(B)は、その全てあるいは一部がNa、K、Ca、Mg等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、アミン類、アンモニウム等の有機カチオン等との塩となっていてもよい。
基(B)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜1.0が好ましく、より好ましくは0〜0.8、さらに好ましくは0〜0.5である。
【0021】
基(C)としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、安定面や製造面の観点から、カルボキシメチル基が好ましい。基(C)は、その全てあるいは一部がNa、K、Ca、Mg等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属、アミン類、アンモニウム等の有機カチオン等との塩となっていてもよい。
基(C)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜1.0、更に0〜0.8、特に0〜0.5が好ましい。
【0022】
基(D)におけるD1としては、炭素数2又は3のヒドロキシ基で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基が好ましい。具体的には、エチレン、プロピレン、トリメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン等が好ましい。
1、R2及びR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられ、中でもメチル基及びエチル基が好ましい。
-のうち、ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が、有機酸イオンとしては、CH3COO-、CH3CH2COO-、CH3(CH2)2COO-等が挙げられる。Y-としては、ヒドロキシイオン、塩素イオン及び臭素イオンが好ましい。
基(D)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜0.5、特に0〜0.3が好ましい。
【0023】
多糖類又はその誘導体の基(A)〜(D)による置換、即ちポリオキシアルキレン化、スルホアルキル化、カルボキシアルキル化又はカチオン化は、WO00/73351に記載の方法により行うことができる。
本発明で用いられる(b−1)多糖誘導体は、多糖類又はその誘導体としてセルロース類を用いた場合を例に挙げれば、その繰り返し単位は次の一般式(4)で例示される。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R4は水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、上記基(A)、基(B)、基(C)及び基(D)から選ばれる基を示し、Qは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、a、b及びcは、同一又は異なって、それぞれ0〜10の数を示し、QO基、R4基、a、b及びcは、繰り返し単位内で又は繰り返し単位間で同一でも異なってもよく、また基(A)〜(D)のヒドロキシ基は更に他の基(A)〜(D)で置換されていてもよい。ただし、分子中のR4のうち少なくとも1つは基(A)である。)
【0026】
<水溶性合成高分子化合物(b−2)>
水溶性合成高分子化合物は、式(1)の基を主鎖構成モノマー単位当たり、平均で0.0001〜0.1個有する分子量1万〜200万の化合物である。
式(1)の基としては、Xがエチレン基、nが5〜200の数、Rが炭素数4〜30の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。また、式(1)の基の平均数は、主鎖構成モノマー単位当たり、平均で0.001〜0.05が更に好ましく、重量平均分子量は3万〜150万が更に好ましい。
【0027】
当該水溶性合成高分子化合物としては、ポリビニルアルコール及びポリグリシドール等の水酸基を有する水溶性合成高分子化合物に、一般式(5)で表される化合物を反応させることによって得ることができる。
3−(OX)n−E2−R (5)
(式中、E3は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、炭素数2〜6のカルボキシアルキル基、又はそれらの誘導体を示し、X、n、R及びE2は前記と同様の意味を示す。)
また、水溶性モノマーと5〜200個のオキシエチレン(EO)連結鎖を介し炭素数4〜30の疎水基を有するモノマーを共重合させることによっても得ることができる。
上記水溶性モノマーとしては、一般式(6)で表される化合物、又は一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R5、R6及びR7は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、xは平均で2〜100の数を示す。)
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、R8及びR9は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R10及びR11はメチル基又はエチル基を示し、yは0又は2〜5の整数を示し、Zは−N(R12)−基(R12は水素原子又はメチル基)、酸素原子又は直接結合手を示す。)
これらの具体例としては、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等があり、これらの化合物は公知の方法で合成できる。
【0032】
5〜200個のEO連結鎖を介し炭素数4〜30の疎水基を有するモノマーとしては、一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、R13及びR14は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、zは5〜200の数を示し、R15はヒドロキシ基で置換されていても良い炭素数4〜30、好ましくは8〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
具体例としては、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等があり、これらの化合物は公知の方法で合成できる。
【0035】
本発明の水中油型乳化物においては、疎水性化合物(a)を、高分子化合物(b)で、まず乳化処理して、水中油型乳化物を調製する。乳化処理方法に特に制限はなく、ホモゲナイザー等を用いる従来公知の方法を採用することができる。次いで、この水中油型乳化物に、水溶性糖類(c)を加えることにより、水相に当該水溶性糖類を含有する、乳化安定性に優れかつ低粘度の水中油型乳化物が得ることができる。
【0036】
[水溶性糖類(c)]
水溶性糖類(c)に特に制限はなく、例えばグルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、プルラン、あるいはソルビトールやマンニトール等の糖アルコール等が挙げられる。この中でも、溶解性、及び粘度低減効果の観点から、澱粉分解物であるデキストリン等の使用が特に好ましい。
デキストリンは、澱粉を酸、酵素、熱その他の作用で部分加水分解する際に生じる1群の中間生成物であって、ブドウ糖が多数結合した高分子の化合物から、少糖類までの種々の重合度の化合物を含む。種類としては白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガム等があり、いずれも用いることができる。
上記水溶性糖類(c)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
[その他の成分]
本発明の水中油型乳化物においては、本発明の目的を阻害しない範囲内で水溶性ポリオール等を配合することができる。水溶性ポリオールは、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のアルキレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、グルコース、マルトース、マルチトース、蔗糖、フラクトース、キシリトール、マルトトリオース、スレイトール、等の糖アルコール、グリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、及び澱粉分解還元アルコール等が挙げられる。
【0038】
本発明の水中油型乳化物においては、水の含有量は40〜90質量%、好ましくは50〜80質量%である。水の含有量がこの範囲にあれば、乳化安定性が良好で、所望の低粘度を有する水中油型乳化物を得ることができる。
また、疎水性化合物(a)、高分子化合物(b)及び水溶性糖類(c)の含有量については、乳化安定性の良好な水中油型乳化物が得る観点から、疎水性化合物(a)の含有量が1〜50質量%、高分子化合物(b)の含有量が0.01〜10質量%であることが好ましく、疎水性化合物(a)の含有量が4〜30質量%で、高分子化合物(b)の含有量が0.05〜5質量%であることがより好ましい。
一方、水溶性糖類(c)の含有量は、減粘効果及び乳化安定性の観点から、8〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。
本発明の水中油型乳化物においては、乳化粒子の平均粒子径は、0.1〜8μmであることが好ましく、0.3〜6μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。なお、乳化粒子の平均粒子径は、レーザー散乱による粒度分布測定により求められる値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定する。
【0039】
[水中油型乳化物の製造方法]
本発明の水中油型乳化物の製造方法は、疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に前記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化処理してなる水中油型乳化物と、水溶性糖類(c)とを混合することを特徴とする。
水中油型乳化物の製造方法としては、ホモゲナイザーを用い、
(i)疎水性化合物(a)と高分子化合物(b)とを攪拌混合し、次いで水を加えて攪拌し、水中油型乳化物を得たのち、これに水溶性糖類(c)を加えて攪拌する方法、
(ii)疎水性化合物(a)と高分子化合物(b)と水の一部とを攪拌混合し、次いで残りの水を加えて攪拌し、水中油型乳化物を得たのち、水溶性糖類(c)を加えて攪拌する方法、及び
(iii)疎水性化合物(a)と高分子化合物(b)と水の全量とを攪拌混合して、水中油型乳化物を得たのち、水溶性糖類(c)を加えて攪拌する方法等を採用することができる。
また、疎水性化合物(a)と高分子化合物(b)と水溶性糖類(c)とを攪拌混合し、次いで水を加えて攪拌して水中油型乳化物を得る方法も用いることができる。
これらの方法の中では、乳化安定性の良好な粘度が低減された水中油型乳化物が得る観点から、前記(i)の方法が好ましい。
なお、得られた水中油型乳化物に水溶性糖類(c)を加える際、該水溶性糖類(c)は、使用する水の一部に溶解して水溶液の形態で添加してもよく、水を加えずに添加してもよい。このようにして、疎水性化合物(a)、高分子化合物(b)、水溶性糖類(c)及び水の含有量が、それぞれ前記の範囲にある、粘度が低減された水中油型乳化物を製造することができる。
【0040】
本発明の水中油型乳化物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、各種添加剤、例えば界面活性剤、分散剤、溶剤、香料、着色料、無機塩、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤等を含有させることができる。
本発明の水中油型乳化物は、乳化安定性が良好で、かつ低粘度であって、例えば洗浄剤分野、化粧料分野、スキンケア剤分野、衣料処理剤分野、香料分野等に好適に用いられる。
【実施例】
【0041】
実施例及び比較例で得られた水中油型乳化物の諸特性は、以下の方法により求めた。
(1)乳化状態
得られた直後の乳化物1gをイオン交換水9gに希釈し、プレパラート上に適量のせ、デジタルマイクロスコープ[株式会社キーエンス製、「KEYENCE VH−8500」]で乳化液の乳化状態を観察した。
(2)平均乳化粒子径
乳化物中の乳化粒子の平均粒径は、株式会社堀場製作所製のレーザー散乱/粒度分布測定装置「LA−910」を用いて、乳化物0.5gを生理食塩水99.5gで希釈し、室温にて測定した。
(3)粘度
B型粘度計にて、No.4ローター及びNo.2ローターを使用し、25℃、60rpm、1分間の条件で測定した。
【0042】
製造例1(多糖誘導体の製造)
重量平均分子量約80万、ヒドロキシエチル基の置換度1.8のヒドロキシエチルセルロース(ユニオンカーバイド社製、HEC−QP15000H)80g、イソプロピルアルコール640g及びp−トルエンスルホン酸2.0gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分間攪拌した。この溶液に式(9)で表される化合物15gを加え、80℃で8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。
【0043】
【化6】

【0044】
反応終了後、反応液を48質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を80質量%イソプロピルアルコール500gで2回、イソプロピルアルコール500gで2回洗浄し、減圧下70℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化ヒドロキシエチルセルロース(多糖誘導体)73.4gを得た。多糖誘導体の基(A)の置換度は0.010であった。
なお、多糖誘導体の基(A)の置換度は、Zeisel法[D.G.Anderson,Anal.Chem.,43,894(1971)]により求めた。この置換度は、構成単糖残基当たりの置換基の平均数を示す。
【0045】
実施例1及び2
特殊機化工業株式会社製、アジホモミキサー、MODEL F.2/5を用い、表1に示す割合で、疎水性化合物(a)及び高分子化合物(b)を温度40℃、回転速度100rpmの条件で30分間攪拌混合した。次に、同速度で攪拌を継続しながら、イオン交換水を10g/分の条件で滴下投入し、投入終了後30分以上攪拌し、水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物に、水溶性糖類(c)を加え、更に30分以上同速度で攪拌し、粘度の低減した水中油型乳化物を得た。この水中油型乳化物について、諸特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例1及び2
実施例1及び2において、水溶性糖類(c)を使用しなかった以外は実施例1及び2と同様の操作を行い、水中油型乳化物を得た。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から、実施例1及び2の水中油型乳化物は、比較例1及び2の水中油型乳化物に比べて、粘度が著しく低下していることが分かる。また、実施例1及び2の水中油型乳化物は乳化安定性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の水中油型乳化物は、乳化安定性が良好で、かつ低粘度の水中油型乳化物である。このため、例えば洗浄剤、化粧料、スキンケア剤、衣料処理剤、香料等の分野に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に下記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化してなる水中油型乳化物であって、水相に水溶性糖類(c)を含み、かつ水の含有量が40〜90質量%である水中油型乳化物。
−(OX)n−E2−R (1)
(式中、n個のXは同一又は異なる炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基、nは5〜300の数、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基、Rはヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。)
【請求項2】
疎水性化合物(a)1〜50質量%、及び高分子化合物(b)0.01〜10質量%を含有する、請求項1に記載の水中油型乳化物。
【請求項3】
水溶性糖類(c)8〜50質量%を含有する、請求項1又は2に記載の水中油型乳化物。
【請求項4】
疎水性化合物(a)が、高級アルコール類、ステロール類、シリコーン類、フッ素系油剤、香料及びその他油性成分の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の水中油型乳化物。
【請求項5】
高分子化合物(b)が、式(1)で表される基を有する多糖誘導体(b−1)及び/又は式(1)で表される基を、主鎖構成モノマー単位当たり、平均で0.0001〜0.1個有する重量平均分子量1万〜200万の水溶性合成高分子化合物(b−2)である、請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型乳化物。
【請求項6】
水溶性糖類(c)が澱粉分解物である、請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化物。
【請求項7】
疎水性化合物(a)を、少なくとも側鎖に下記式(1)で表される基を有する高分子化合物(b)で乳化処理してなる水中油型乳化物と、水溶性糖類(c)とを混合する、水中油型乳化物の製造方法。
−(OX)n−E2−R (1)
(式中、n個のXは同一又は異なる炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基、nは5〜300の数、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基、Rはヒドロキシル基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。)

【公開番号】特開2008−149218(P2008−149218A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337197(P2006−337197)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】