説明

水中油型乳化組成物の製造方法

【課題】微小粒子が均一に分散し、単分散な粒子径分布で、安定な水中油型乳化組成物を製造する方法の提供。
【解決手段】(A)界面活性剤、(B)25℃で液状の油性成分及び(C)水を含有する組成物を高圧流体となし、当該高圧流体同士を衝突させるためのノズル手段と、該ノズル手段へ前記高圧流体を導入するための導入流路とを備えた微粒化装置により乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法であって、前記ノズル手段は、高硬質材料からなるノズル本体を備え、該ノズル本体に、ノズル本体外周面から軸心方向に向かって形成された複数の貫通孔からなる高圧流体衝突用流路と、これら衝突用流路同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路とが設けられており、前記導入流路に導かれた高圧流体を、前記ノズル本体の外周から前記高圧流体衝突用流路の各外周側端部開口へ導入するようにしたものであり、前記高圧流体衝突用流路の外周側端部開口から前記導出流路に達するまでの長さL1 が、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内であると共に、前記導出流路の断面積A2が、前記高圧流体衝突用流路の断面積の流路個数分の合計A1に対して、5A1≦A2≦50A1を満たす微粒化装置を用いて乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の油性成分が均一に分散し、単分散な粒子径分布で、安定な水中油型乳化組成物を、効率良く製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化組成物は、化粧料に広く用いられており、その使用感は非常に重要な課題となっている。化粧料に用いられる油性成分は、保湿等のスキンケア効果のために必要な成分である。従来、このような油性成分を安定に配合した水中油型乳化組成物を調製するため、乳化粒子を微細化することが行われてきた。しかしながら、このような微細乳化粒子を調製しようとすると、乳化剤の種類が限られたり、乳化剤の含有量を多くする必要があり、べたつき感が生じたり、人によっては皮膚に刺激を感じる場合があった。
【0003】
油性成分を比較的多量に含有する乳化物は、効率的な破砕、分散、乳化を行なう目的で、工業的には、一般に高圧乳化機を用いて製造される。特許文献1には、高圧乳化機で乳剤(乳化物)を製造する際に、高圧乳化処理部の高圧乳化作用点にかかる圧力に対し0.2%以上5%未満の背圧をかけることにより、超微小な乳剤粒子から構成される乳化組成物を製造する方法が記載されている。しかしながら、この方法で得られる乳化組成物は、乳化粒子が微小であるものの、粒子径は均一でなく、十分な安定性を得ることはできなかった。
【0004】
一方、乳化粒子径分布の狭い単分散な乳化組成物を調製することで、乳化安定性を向上することが行われている。高度な単分散性を備えた乳化分散体や微粒子を製造する技術として、特許文献2に記載されているマイクロチャネル乳化技術が知られている。この技術は、分散相と連続相とを区切る膜に人工的に一様な構造を与え、微粒子の直径の標準偏差/微粒子の平均直径が0.03以下になる、非常に単分散の高い微粒子を得られるようにするものである。しかしながら、この方法により、均一な乳化粒子径を得ることはできるものの、その乳化粒子径は1μm程度の大きいものであった。従って、微細な乳化粒子径で、単分散性の高い乳化組成物の製造方法が熱望されていた。
【特許文献1】国際公開第95/35157号パンフレット
【特許文献2】特開2000−273188公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多量の油性成分を安定に乳化した微細な乳化粒子で、単分散な粒子径分布の水中油型乳化組成物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)界面活性剤、(B)25℃で液状の油性成分及び(C)水を含有する組成物を、簡便な構成でありながら、従来よりも原料液の導入における圧力損失及び速度損失を抑えつつ十分な衝突力が確保できると共に部材内部に引張り応力による割れが生じることのないノズル手段を備えた微粒化装置を用いて乳化させることにより、油性成分を多く含有する系においても、高単分散で安定な水中油型乳化組成物が、効率良く得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)界面活性剤、(B)25℃で液状の油性成分及び(C)水を含有する組成物を高圧流体となし、当該高圧流体同士を衝突させるためのノズル手段と、該ノズル手段へ前記高圧流体を導入するための導入流路とを備えた微粒化装置により乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法であって、前記ノズル手段は、高硬質材料からなるノズル本体を備え、該ノズル本体に、ノズル本体外周面から軸心方向に向かって形成された複数の貫通孔からなる高圧流体衝突用流路と、これら衝突用流路同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路とが設けられており、前記導入流路に導かれた高圧流体を、前記ノズル本体の外周から前記高圧流体衝突用流路の各外周側端部開口へ導入するようにしたものであり、前記高圧流体衝突用流路の外周側端部開口から前記導出流路に達するまでの長さL1 が、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内であると共に、前記導出流路の断面積A2が、前記高圧流体衝突用流路の断面積の流路個数分の合計A1に対して、5A1≦A2≦50A1を満たす微粒化装置を用いて乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、当該製造方法により得られる水中油型乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多量の油性成分を含有する系においても、微小粒子が均一に分散し、単分散な粒子径分布で、非常に安定な水中油型乳化組成物を、効率良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で製造される水中油型乳化組成物は、特に制限されず、多量の油性成分を含有する場合にも、安定な乳化組成物を得ることができる。
本発明により得られる水中油型乳化組成物は、(A)界面活性剤、(B)25℃で液状の油性成分及び(C)水を含有するものである。
【0010】
(A)界面活性剤としては、親水性界面活性剤が好ましく、一般に化粧料に用いられるものであって、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤のいずれでも良く、特にアニオン界面活性剤が好ましい。具体的には、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
【0011】
これらのうち、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の長鎖N−アシルタウリン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ミリストイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩が好ましい。特に、アルキル鎖長が16以上の長鎖N−アシルタウリン塩、長鎖N−アシルグルタミン酸塩が好ましい。
【0012】
(A)界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜5質量%、特に0.1〜2.5質量%含有されるのが好ましい。
【0013】
(B)油性成分としては、通常化粧料に用いられるもので、25℃で液状の、合成及び天然由来の油性成分で、例えば炭化水素油、エステル油、エーテル油、シリコーン油、フッ素油等が含まれる。
より具体的には、ホホバ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、グリセリン誘導体、アミノ酸誘導体等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0014】
(B)油性成分は、1種以上を用いることができ、保湿性と使用感の点から、全組成中に0.11〜60質量%、特に1.1〜30質量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明においては、少ない(A)界面活性剤量で、多量の(B)油性成分を乳化させることができ、成分(A)に対する成分(B)の質量割合が、11質量倍以上とすることができ、好ましくは11〜38質量倍、より好ましくは12〜24質量倍、特に好ましくは15〜20質量倍とすることができる。
【0016】
本発明において、(C)水の含有量は、全組成中に10〜99質量%、特に10〜95質量%であるのが好ましい。
また、その他の水性基剤、例えばエタノールやプロパノール等の炭素数1〜4の低級アルコールなどを含有することもできる。
【0017】
本発明の水中油型乳化組成物には、更に(D)両親媒性脂質(25℃で固体)を含有させることができ、少ない処理回数で微細粒子径のエマルションを得ることができる。
かかる両親媒性脂質としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;セラミド類などが挙げられる。セラミド類としては、例えばRobson K.J. et al., J. Lipid Res.,35,2060(1994)や、Wertz P.W. et al., J. Lipid Res.,24,759(1983)等に記載されているタイプI〜VIIのセラミドや、特開昭62-228048号公報記載のセラミド類似化合物などが含まれ、前者の市販品としては、セラミドIII、セラミドIIIB、セラミドIIIA、セラミドIV、フィトセラミドI(以上、デグサ社)、セラミドII(セダーマ社)、セラミドTIC−001(高砂香料社)等が挙げられる。
【0018】
両親媒性脂質は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%含有するのが好ましい。
【0019】
本発明の水中油型乳化組成物には、更に(E)多価アルコール含有させることができ、少ない処理回数で微細粒子径のエマルションを得ることができる。
かかる多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、キシリット、ソルビット、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜50質量%、特に0.5〜30質量%含有するのが好ましい。また、多価アルコールは、油性成分に対して0.8〜2質量倍であるのが好ましい。
また、(D)両親媒性脂質と(E)多価アルコールを組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物は、例えば、全成分を混合して粗乳化液とし、これを高圧流体同士を衝突させるためのノズル手段と、該ノズル手段へ前記高圧流体を導入するための導入流路とを備えた微粒化装置であって、前記ノズル手段は、高硬質材料からなるノズル本体を備え、該ノズル本体は、ノズル本体外周面から軸心方向に向かって形成された複数の貫通孔からなる高圧流体衝突用流路と、これら衝突用流路同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路とが設けられており、前記導入流路に導かれた高圧流体を、前記ノズル本体の外周から前記高圧流体衝突用流路の各外周側端部開口へ導入するようにしたものであり、前記高圧流体衝突用流路の外周側端部開口から前記導出流路に達するまでの長さL1 が、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内であると共に、前記導出流路の断面積A2 が、前記高圧流体衝突用流路の断面積の流路個数分の合計A1に対して、5A1≦A2≦50A1を満たす微粒化装置を用いて乳化させることにより、製造することができる。
【0022】
粗乳化物とは、成分(A)、(B)及び(C)、必要に応じて、成分(D)、(E)、及びその他の成分を加え、これらそれぞれが溶解し得る温度以上に加温してプロペラ撹拌、あるいはホモジナイザー等によって油性成分と水性成分が見かけ上、ほぼ均一に混合された状態であるものをいう。
【0023】
粗乳化物は、装置内の貯蔵槽に充填され、接続する増圧シリンダーに移送され、高い圧力がかけられる。粗乳化物は、微粒化装置に導入される。
【0024】
本発明で用いる微粒化装置は、高圧流体同士を衝突させるためのノズル手段として、高硬質材料からなるノズル本体に、該本体外周面から軸心方向に形成された複数の貫通孔からなる高圧流体衝突用流路(衝突用流路)、これら衝突用流路同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路とが設けられたものを備え、高圧流体がノズル本体の外周から各衝突流路の半径上の外周側端部開口へ導入されるものである。
【0025】
すなわち、本発明で用いるノズル手段においては、ノズル本体外周面から軸心方向に向かって形成された複数の貫通孔からなる各衝突用流路が軸心方向と直交方向に沿って設けられることによって、これら衝突用流路と導出流路とが側面視で略T字形状を形成する。
【0026】
このような各衝突用流路の各外周側端部開口から導入される高圧流体は、各衝突用流路を通ってノズル本体軸心上の合流点へ向かって進み、該合流点で衝突し、衝突後には該合流点から軸心方向に沿って形成された導出流路からノズル本体外へ導出される。従って、ノズル手段においては、高圧流体が部材内で屈曲して形成された流路を進むことなく衝突用流路に導入できるため、圧力損失がほとんど発生することなく良好に流速が増大されて充分な衝突力をもって衝突処理を行うことができる。
【0027】
また、ノズル本体が一つの部材で構成できると共に流路の屈曲が必要ない分外形サイズも小さく抑えられるため、コスト高になることなく、ダイヤモンドなどの高硬質材料でノズル本体を構成して強度を向上させることも可能であり、また高圧流体の導入時にはノズル本体の外周全体に圧力がかかって部材内部に引っ張り応力が生じることもないため、部材割れを回避することができる。
【0028】
なお、衝突用流路は、壁面抵抗による速度損失を抑えるためにより流路壁面を平滑に仕上げることが望まれるが、従来の衝突用流路を形成していた溝のように、断面半円形状や角形状であると平滑仕上げが困難であった。本発明においては、衝突用流路を断面円形状とすることにより、流路壁面の平滑仕上げを容易とすることができる。すなわち、衝突用流路を断面円形状の通し穴とすれば、例えばワイヤによるラッピング仕上げを施すことが可能となり、流路壁面の精度の良い平滑仕上げで衝突用流路内を進む高圧流体を最小限の速度損失で高速ジェット流に変換して衝突速度を上げることができる。
【0029】
さらに、本発明においては、ノズル本体について衝突用流路や導出流路の長さや径等の設計寸法を特定の条件範囲内に規定することによって、高硬質材料の使用量を少なく抑えつつもより耐久性に優れ、高性能、高効率の高圧微粒化処理が可能となる。
【0030】
まず、ノズル本体が円筒形状を有するものとした場合、図3(a)に示すように、前記軸心方向と直交する円柱直径をD、導出流路の口径をd2、衝突用流路の口径をd1、該衝突用流路の導出流路に達するまでの長さをL1 とすると、ノズル本体は幾何学的制約によってD=d2+2L1の関係を満たさなければならない。一方、流量は、衝突用流路の個数nと口径d1によって大略決定する。例えば、n=2のとき、圧力245MPaにおいて、d1=0.1mmで流量0.5L/min、d1=0.25mmで流量4L/min、d1=0.35mmで流量7.5L/minとなる。
【0031】
この衝突用流路の口径d1 と個数nは処理速度に応じて適宜設定されるが、ノズル本体に十分な機械的強度を持たせるためには、円柱直径Dは5d1以上、即ちd1≦0.2Dが好ましく、より好ましくは8d1以上、即ちd1≦0.125Dである。また、導出流路の口径d2は処理速度に応じて適宜設定されるが、ノズル本体に充分な機械的強度を持たせ、且つシール性を維持するためには、円柱直径Dは1.67d2以上、即ちd2≦0.6Dが好ましく、より好ましくは2d2 以上、即ちd2≦0.5Dである。また、ノズル本体厚さ(円柱高さ)tは2d1以上が好ましく、より好ましくは5d1以上、最も好ましくは8d1以上である。
【0032】
一方、高速ジェット流の速度を最大限高めるためには、衝突用流路の長さL1 を短くして流路内壁面と流体との摩擦による速度損失を極力低下させることが望ましい。具体的には衝突用流路の長さL1 を、0.1mm以上1.5mm以下、好ましくは0.2mm以上1.3mm以下の範囲内とする。
【0033】
このとき、衝突用流路の断面積の流路個数分の計A1に対して導出流路断面積A2を、5A1≦A2≦50A1にすることにより、高速ジェット流同士の衝突による流体の乱れ場で発生する流体同士のせん断力を最大限高め、微粒化性能をより高めることができる。すなわち、A2≧5A1とすることにより、導出流路内での流体の流出抵抗をほとんど生じさせることなく高速ジェット流を衝突させることができ、またA2≦50A1とすることにより、近距離で衝突用流路から出た高速ジェット流同士が失速しない状態で衝突させることができる。さらに必要以上に導出流路の口径を大きくすることがないため、高価な硬質材料を多めに用いることもない。
【0034】
また、このようなノズル手段では、高圧流体の圧力をノズル本体の外周全体にかかるようにしたため、内圧を相殺することができ、各衝突用流路に連通する外周側端部の開口部分をそれぞれ外側に向かって拡径するテーパ形状とすることができる。このテーパ形状によって高圧流体の導入をよりスムーズにすることができると共に、実質的に微小口径領域である衝突用流路が短くなって壁面抵抗による速度損失をさらに低減することができる。また、このようなテーパ状開口部分は上記の如く衝突用流路を断面円形状とすることによって容易に加工形成することができる。
【0035】
このような開口部分にテーパ形状を形成した場合、図3(b)に示すように実質的な衝突流路の長さL1 は、開口端から導出流路に達する領域のうち、テーパ部分を除く長さであり、衝突用流路の外周側開口部にテーパ部分を形成することにより、同じ円柱直径及び導出流路口径で衝突用流路長さL1 を短くできるということである。衝突用流路の長さL1 を上記範囲内に入るように短く設定することが容易となり、より流体抵抗を減少せしめ、より高速で流体同士の衝突を実現できるものである。
【0036】
また、衝突用流路が連通する導出流路内の衝突空間が形成される部分は、衝突後の流れを妨げないように十分な空間が確保されることが望まれる。このためには、ノズル本体に導出流路を穿孔形成する際に、図3(c)に示すように下流出口側と対向する奥側の方向に、衝突用流路との連通部端から適度な深さs分だけ導出流路を延長形成することによって、衝突空間を拡げることができる。このように導出流路の奥方向に衝突空間を拡げることによって微粒化性能を向上させることができる。
【0037】
なお、この延長深さsは、ある程度までは大きいほど効果的であるが、図3(d)に示すように導出流路がノズル本体を貫通するまで延長形成しても、悪影響はなく、むしろ製作工程から導出流路を貫通孔として形成するのが容易であり、この場合、装置に組み込む際に下流出口側と対向する開口部をシールする構成とすれば何ら差し支えない。
【0038】
また、導出流路の断面形状は、衝突用流路と同様に円形状が流体と流路内壁面との摩擦損失の低減、加工の容易さ、機械的強度といった点から最も望ましいが、必要に応じて多角形、あるいは下流出口側開口に向かって拡径するテーパ形状としても良い。このような断面形状が円形でない場合、口径d1及びd2をde =√(4A/π)の式で便宜的に算出した断面積相当直径de を用いて代用することができる。
【0039】
また、溝ありプレートに溝なしプレートを当接させて衝突用流路を構成していた従来のノズル手段では、衝突用流路を漏れなくシールするためにプレート同士を押圧シールするのに締め加減の調整が困難な手段を必要としていたのに対して、本発明においては、衝突用流路を高硬質材料からなるノズル本体という一つの部材に形成しているため、従来のようなシール手段を必要とせず、ノズル手段の構成を簡便にすることができる。
【0040】
なお、本発明のノズル手段において、ノズル本体の導出流路から導出される衝突済み流体は、ノズル本体が設置される微粒化装置のハウジング部材に設けられた導出流路を経て装置外へ送られるため、流体の漏れのない導出のためには、このノズル本体側の導出流路と装置ハウジング部材側の導出流路とが良好なシール状態で連通される必要がある。
【0041】
そこで、ノズル本体の導出流路がハウジング部材側の導出流路に対して同軸状に位置決めされた状態でノズル本体をハウジング部材へ押圧するシール手段を設ければ良い。このシール手段としては、ノズル本体が一つの部材からなり、且つ高圧流体の導入時に発生する圧力を利用できることから、ネジ等の強固で加減が困難な締め付け手段は必要なく、バネの付勢力を利用した簡便なもので充分である。
また、衝突用流路及び導出流路内では急激な圧力降下によりキャビテーションを発生する場合があり、従来のネジ等で強固にノズル手段を固定した構造ではキャビテーションによる圧力変動に伴う振動により、ノズル本体が破損してしまうことがあったが、本発明のバネの付勢力を利用したシール手段により、ノズル本体への振動が緩和され耐久性が向上する。
【0042】
本発明において、衝突流路通過前の流体圧力は70000〜245000kPa、特に120000〜210000kPaであるのが好ましく、それにより、微細で高単分散性な粒径分布を持つ乳化粒子を得ることができる。
【0043】
また、本発明においては、流体衝突部にかかる圧力に対し、5〜20%、特に5〜10%の背圧をかけるのが、より効率良く微細乳化物を得ることができ、少ない処理回数で微細な乳化粒子を得ることができるので好ましい。背圧は、微粒化装置のノズル通過直後の圧力をいう。
背圧をかけるための装置は、組成物の流出量を調整する弁で対応でき、流体衝突部の出口側に直接装着するか、又は出口側の配管と耐圧ジョイント等で接続して用いることができる。
【0044】
従来、多量の油性成分を微細に乳化させる場合、強力な剪断エネルギーを発生させるために、高処理圧を与えなくてはならず、これが高圧乳化機の寿命を短くする要因となっていた。本発明においては、高圧乳化処理部の構造を選択することにより、乳化粒子の微細化に必要な処理圧力を、従来より下げることができる。これは、構造上の省エネルギー化ばかりでなく、流体衝突装置の耐久性への負荷が大きく削減できる点でも非常に有効である。得られる乳化粒子は粒径が小さく、単分散であり、透明性が高く、安定性に優れた水中油型乳化組成物が得られるものである。また、圧力エネルギーが、油滴の微細化エネルギーとして効率よく転換されるため、発熱量が少なく抑えることができるため、付属する冷却装置を簡略化することができる。
【0045】
さらに、流体衝突処理中又は処理直後の平均液温度を80℃以下にするのが、微小粒子がより均一に分散し、透明性が高く安定な乳化組成物が得られるので好ましい。具体的には、流体衝突処理部を通過直後に、乳化液を冷却するのが好ましく、流体衝突処理部開口部から25cm以内、特に15cm以内に冷却装置を配設するのが好ましい。市販の高圧乳化機に冷却装置が配設されている場合があるが、通常冷却装置の位置は、高圧乳化処理部開口部から遠い位置(25cmより離れている)であり、冷却効果も十分ではない。
【0046】
本発明によれば、微細粒子に乳化され、油滴の平均粒子径が好ましくは0.01〜0.5μm、特に好ましくは0.025〜0.2μm、更に好ましくは0.025〜0.1μmとなるような乳化組成物を得ることができる。さらに、微細乳化粒子の粒度分布は単分散であり、粒度分布の単分散性を表わすCV値が、好ましくは3〜50%、特に好ましくは5〜25%、更に好ましくは7〜10%となる乳化組成物を得ることができる。
【0047】
CV値は平均粒子径に対する標準偏差の割合で算出される。平均粒子径と標準偏差は動的光散乱法を原理とした粒径測定装置によって測定される。例えば、堀場製作所製LB−500、大塚電子製DLS−7000などを用いることができる。測定には試料濃度が高いと内部光散乱(多重散乱)が生じるため、十分に希釈した試料を用いることが必要である。例えば、堀場製作所製LB−500では、試料濃度を電圧で表示している、0.5V〜16.0Vの範囲にはいるように希釈する。また、測定時には測定温度での分散媒粘度を入力しなければならない。通常は水で希釈する場合が多く、水の粘度に対し、温度補正を行った数値が用いられている。粒子に当たった散乱光はその粒子径に応じて光ゆらぎ信号として検出器にて検出され、その解析により平均粒子径、粒径分布が計算される。その際に様々な算出法が採用されているが、本測定においては、体積基準による粒径分布、メジアン平均粒子径にて行った。
このように高単分散性を持って微細乳化されることにより、乳化組成物は透明性と安定性が高く、油性成分が多量に含有されていても、安定な水中油型乳化物を得ることができる。
【0048】
本発明により得られる水中油型乳化組成物は、そのまま化粧料等として、特に透明性の高い化粧料として、好適に使用することができる。
また、高圧乳化により得られた水中油型乳化組成物を、水等の水性成分、またはそれらに水溶性の有効成分や添加剤を加えたもので希釈して、例えば化粧水や美容液等の化粧料として用いることができる。本発明により得られる水中油型乳化組成物は、さらに希釈によって水等の水性成分が添加されても、高圧乳化により得られた乳化状態が維持され、油滴の平均粒子径が、0.02〜0.5μmであって、透過率が45〜90%の化粧料を得ることが可能である。
【0049】
このような有効成分や添加剤としては、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸等の水溶性ビタミン類;オウバクエキス、カンゾウエキス、アロエエキス、スギナエキス、茶エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、海藻エキス、マロニエエキス、ユズエキス、ユーカリエキス、アスナロ抽出液等の動・植物抽出液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等の塩類;クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩等のpH調整剤;カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸ナトリウム等の増粘剤などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
参考例1
本発明で用いる微粒化装置1として、ノズル本体の外周面から中心軸方向に向かい合うように互いに等角度間隔で形成された二つの貫通孔からなる衝突用流路と導出流路とが略T字状に設けられてなるノズル手段を備えた装置を図1に示す。図1(a)は微粒化装置1の概略構成を示す側断面図であり、(b)はノズル手段の部分拡大図である。微粒化装置1は、略カップ状のハウジング2にプラグ部材6を嵌合して内部に形成されるチャンバ9内に、プラグ部材6側の押さえ部材7とハウジング2側からバネ5により付勢されるノズル押さえ3との間でノズル手段10が保持されるものである。
【0051】
ノズル手段10は、例えば単結晶ダイヤモンド等の高硬質材料からなるノズル本体11に、軸心方向へ向かい合うように軸心と直交する半径方向に沿って形成された二つの貫通孔からなる衝突用流路12と、この衝突用流路12同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路13とが略T字状に設けられたものである。また、ノズル手段10へ高圧流体を導入するための導入流路15は、ノズル押さえ3とプラグ側の押さえ部材7との間でノズル手段10の外側空間に形成される。
【0052】
従って、衝突処理対象原料である高圧流体は、ハウジング2の端部からチャンバ9およびノズル押さえ3に形成された供給流路4を経て導入流路15へ送られ、この導入流路15からノズル手段10の外周面全体に圧をかける状態で供給され、ノズル本体外周面に開口する各衝突用流路12の端部開口からそれぞれ軸心上の合流点へ向かって導入され、該合流点にて衝突する。
【0053】
従って、以上のような構成のノズル手段10を備えた微粒化装置1では、高圧流体がノズル本体11内で屈曲する流路を進むことが無いため、圧力損失をほとんど発生することなく衝突用流路12へ導入される。
【0054】
また、衝突用流路12Yを断面円形状の通し穴状とし、ワイヤによるラッピング仕上げで流路壁面が平滑仕上げされたものとした。これによって壁面抵抗が小さく、速度損失を低減することができる。さらに、高圧流体の導入、加速をよりスムーズにするために各衝突用流路12Yに連通する外周側端部の開口部分12Xをそれぞれ外側に向かって拡径するテーパ形状とした。このテーパ状開口部分12Xでは、高圧流体導入時に引っ張り応力が生じるが、前述のように本ノズル手段10ではノズル本体11の外周面全体に高圧流体の圧がかかることにより相殺されるため問題ない。
【0055】
このようなテーパ状開口部分12Xを設けることによって、導入された高圧流体が実質的に高速ジェット流に変換されるのはテーパ状開口部分12X部分以外の軸心寄りの微小口径の領域であり、該領域が衝突用流路12Yとなる。従ってテーパ状開口部分12Xを設けることによって、結果的に衝突距離13Lを大きくとって速度損失を招くことなく衝突用流路12Yを短くすることができ、壁面抵抗による速度損失がさらに低減できる。
【0056】
また、ノズル本体11の導出流路13は、衝突空間13Xとなる衝突用流路側の口径に対して出口側をテーパ状に拡径するものとした。このテーパ状出口13Yによって導出流路13の圧力損失が減少して衝突後流体の導出がスムーズになり、衝突空間13Xでの圧力損失、速度損失の低減に寄与し、高速ジェット流同士の衝突をより良好なものにできる。
【0057】
さらに、ノズル本体11を装置ハウジング側、ここでは押さえ部材7に対して押圧固定し当接面を良好にシールしてノズル本体11の導出流路13とハウジング側の導出流路8と間の流体漏れを防止するためのシール手段として、バネ5によるノズル押さえ3を設けた。
【0058】
ノズル手段10は、単結晶ダイヤモンド等の高硬質部材からなるノズル本体11という一つの部材で構成されており、また、高圧流体が導入流路15に満たされることにより、ノズル本体11の外周全体に高圧流体の圧力がかかることから、従来の二つのプレートの重なりによって構成された場合のようにネジ止め等の部材破損が生じる危険のある強固で調整加減が困難な締め付け手段は必要なく、上記のようなバネ5の付勢力を利用した簡便なものでノズル本体11とハウジング間は良好なシール状態が得られ、流体漏れは充分に防止できる。
【0059】
以上の微粒化装置1において高圧流体衝突実験を行うと、従来の部材内に屈曲した導入流路が設けられたノズル手段を用いた場合及び溝無しディスクプレート対面配置によるノズル手段を用いた場合よりも圧力損失や速度損失が少なくなった。
【0060】
なお、上記では、導出流路13が断面円形で出口側がテーパ状に拡径したものの場合を示したが、本発明においては、導出流路の形状をこれに限定するものではなく、実際の微粒化工程における原料液や各条件に応じて、良好な衝突条件が得られる衝突空間が形成されると共に衝突後流体の導出がよりスムーズに行えるものであればよい。
【0061】
例えば、図2((a)はノズル手段の側断面図、(b)は(a)のA−A断面矢視図、(c)は(a)のB−B断面矢視図)に示すノズル手段20のように、ノズル本体21に断面略長方形状で衝突空間から出口側に亘って同じ断面積で形成された導出流路23が挙げられる。この導出流路23を断面略長方形状としたことによって、横方向の面積を拡げることとなり、衝突距離を変更せずに、衝突後の原料液がスムーズに流れる。
【0062】
また、上記では、ノズル本体に外周面から軸心方向に向かい合う二つの貫通孔からなる衝突用流路を軸心に対して直交する半径方向に沿って形成し導出流路と略T字形状を成すものの場合を示したが、これに限られず、例えば、図4に示すように、ノズル本体31に互いに等角度間隔で放射状に形成された3本以上の貫通孔からなる衝突流路32を備えたノズル手段30のように、衝突用流路の数や配置は、実際の原料液や処理条件に応じてより高い衝突処理効率が望めるものを適宜選択することができる。
【0063】
また、本発明において、ノズル本体を構成する高硬質材料としては、上記で用いた単結晶ダイヤモンドの他に、例えばサファイヤ等、加工が可能でありながら充分な高硬度を備えたものであれば種々の材質が採用可能である。
【0064】
実施例1〜3
参考例1に示す微粒化装置1と同様で、表1に示すノズルを備えた装置を用い、水中油型乳化組成物を製造した。
すなわち、流動パラフィン250g、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム15g、ステアリン酸30g、グリセリン200g及び精製水505gを混合し、80℃に加熱溶解し、ホモジナイザーで撹拌して粗乳化液とした。この粗乳化液を収容した原料タンクから高圧ポンプを介して操作圧力150MPaで微粒化装置へ送り、微粒化装置の導出流路から排出される衝突済み処理液を背圧調整バルブ(背圧0〜15MPa)を介して冷却機(冷却水入口温度15℃)へ送り、冷却後に再び原料タンクへ回収し、次の衝突処理工程を繰り返す。
【0065】
衝突処理を5回繰り返し、回収した液体を室温まで冷却して、水中油型乳化組成物を得た。得られた組成物を水で100倍に希釈し、光散乱式粒度分布測定装置(LB−500、堀場製作所社製)を用いて、メジアン平均粒子径、標準偏差を測定し、CV値を算出した。結果を表1に併せて示す。
【0066】
【表1】

【0067】
比較例1、2
実施例と同じ手順、同条件にて調製した粗乳化液を既存の高圧微粒化装置にて処理し、水中油型乳化組成物を得た。得られた乳化物を、水で100倍に希釈し、光散乱式粒度分布測定装置(LB−500、堀場製作所社製)を用いて、メジアン平均粒子径、標準偏差を測定し、CV値を算出した。結果を以下に示す。
【0068】
(比較例1)
高圧微粒化装置:マイクロフルイダイザーM−140K(microfluidics社製)、
標準Y型チャンバー装着。
平均粒子径0.070μm、CV値63%
(比較例2)
高圧微粒化装置:アルティマイザーHJP−25005(タウテクノロジー社製)、
標準液−液衝突型チャンバー装着。
平均粒子径0.120μm、CV値71%
【0069】
実施例4〜9、比較例3〜6
実施例1〜3、比較例1、2で得られた乳化組成物、及びそれらの乳化組成物を精製水で10倍希釈した乳化組成物について、保存安定性を評価した。保存開始時の外観は、いずれも透明であり、保存後の外観を目視にて評価して、透明の場合:○、半透明の場合:△、白濁の場合:×と示した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例10
N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム25g、スクワラン100g、ジメチルポリシロキサン(6cs)200g、セラミドIII20g、グリセリン450gに、精製水205mLを加え、ホモジナイザーで撹拌して粗乳化液とした。この粗乳化液を、実施例1で用いた微細化装置にて、処理圧180000kPa、背圧10500kPaにて、5回繰返し処理し、水中油型乳化組成物を得た。
得られた水中油型乳化組成物の平均粒子径は0.055μm、CV値12%であった。この組成物250mLに、4%アスコルビン酸マグネシウム水溶液750mLを混合し、外観が透明な美容液を得た。この美容液を5℃、20℃、30℃の環境下で6ヶ月保存した結果、いずれも外観に変化は認められなかった。
【0072】
実施例11
ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム30g、ジメチルポリシロキサン(6cs)330g、セラミドIII10g、グリセリン200gに、精製水430mLを加え、ホモジナイザーで撹拌して粗乳化液とした。この粗乳化液を、実施例1で用いた微細化装置にて、処理圧125000kPa、背圧12000kPaにて、7回繰返し処理し、水中油型乳化組成物を得た。
得られた水中油型乳化組成物の平均粒子径は0.045μm、CV値11%であった。この乳化物を5℃、20℃、40℃の環境下で6ヶ月保存した結果、いずれも外観に変化は認められなかった。
【0073】
比較例7
実施例11と同じ組成からなる粗乳化物を、比較例1で用いた微細化装置にて、処理圧処理圧125000kPa、背圧12000kPaにて、10回処理し、水中油型乳化組成物を得た。
得られた水中油型乳化組成物の平均粒子径は0.043μm、CV値63%であった。この乳化物を5℃、20℃、40℃の環境下で6ヶ月保存した結果、20℃では外観に変化は認められなかったが、5℃、40℃ではクリーミングが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明で用いる微粒化装置の一例(微粒化装置1)の概略構成図である。(a)は微粒化装置の概略構成を示す側断面図であり、(b)はノズル手段の部分拡大図である。
【図2】本発明で用いる微粒化装置における、ノズル手段の別の例を示す概略構成図であり、(a)は側断面図、(b)は(a)のA−A断面矢視図、(c)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図3】本発明で用いる微粒化装置における、ノズル本体の各タイプを示す概略構成図である。(a)は衝突用流路の開口部分にテーパ形状がなく且つ導出流路が奥方向に延長されていないもの、(b)は衝突用流路の開口部分にテーパ形状が形成され且つ導出流路が奥方向に延長されていないもの、(c)は衝突用流路の開口部分にテーパ形状がなく且つ導出流路が奥方向に深さsmm分延長されたもの、(d)は衝突用流路の開口部分にテーパ形状がなく且つ導出流路が奥方向にノズル本体を貫通して形成されたもの、(e)は衝突用流路の開口部分にテーパ形状が形成され且つ導出流路が奥方向に深さsmm分延長されたものをそれぞれ示す断面図である。
【図4】本発明で用いる微粒化装置における、他のノズル手段の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1:微粒化装置
2:ハウジング
3:ノズル押さえ
4:高圧流体供給流路
5:バネ
6:プラグ部材
7:押さえ部材
8:導出流路
9:チャンバ
10,20,30:ノズル手段
11,21,31:ノズル本体
12X,22X,32X:テーパ状開口部分
12Y,22Y,32Y:衝突用流路
13,23,33,43:(ノズル本体の)導出流路
13X:衝突空間
13Y:テーパ状出口
13L:衝突距離
15:導入流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)界面活性剤、(B)25℃で液状の油性成分及び(C)水を含有する組成物を高圧流体となし、当該高圧流体同士を衝突させるためのノズル手段と、該ノズル手段へ前記高圧流体を導入するための導入流路とを備えた微粒化装置により乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法であって、前記ノズル手段は、高硬質材料からなるノズル本体を備え、該ノズル本体に、ノズル本体外周面から軸心方向に向かって形成された複数の貫通孔からなる高圧流体衝突用流路と、これら衝突用流路同士の合流点から軸心方向に沿って形成された衝突後流体を導出するための導出流路とが設けられており、前記導入流路に導かれた高圧流体を、前記ノズル本体の外周から前記高圧流体衝突用流路の各外周側端部開口へ導入するようにしたものであり、前記高圧流体衝突用流路の外周側端部開口から前記導出流路に達するまでの長さL1 が、0.1mm以上1.5mm以下の範囲内であると共に、前記導出流路の断面積A2が、前記高圧流体衝突用流路の断面積の流路個数分の合計A1に対して、5A1≦A2≦50A1を満たす微粒化装置を用いて乳化させる水中油型乳化組成物の製造方法。
【請求項2】
水中油型乳化組成物が、油滴の平均粒子径が0.01〜0.5μmであり、CV値が3〜50%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
水中油型乳化組成物が、(B)成分/(A)成分の質量割合が11倍以上である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
水中油型乳化組成物が、更に(D)両親媒性脂質を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
水中油型乳化組成物が、更に(E)多価アルコールを含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法により得られる水中油型乳化組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−285455(P2008−285455A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134128(P2007−134128)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】