説明

水中油型乳化組成物及びその製造方法

【課題】連続相が水相である水中油型乳化組成物でありながら、水分蒸散抑制効果が高く、しかも使用感に優れる水中油型乳化組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する水中油型乳化組成物であって、水相中に下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)多価アルコール
(C)水溶性高分子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分蒸散抑制効果が高く、かつ使用感に優れる水中油型乳化組成物、及びその水中油型乳化組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、医薬品、医薬部外品、食品等の分野においては、基剤として水を含有する組成物が数多く存在し、そのような水系組成物では、組成物中から水が蒸発するのを防ぐため、多くの場合、組成物は密閉容器に保存されている。しかしながら、日々の使用による蓋の開放等により、水性組成物から徐々に水が蒸発していき、物性の変化や、変色を生ずる場合がある。また、スプレー式容器、ポンプ式容器などでは、吐出させた内容物が吐出口に残存し、吐出口付近で乾燥してしまうため、吐出口に付着した内容物が、変色・変臭を生じ、使用感を悪化させるという問題があった。さらに、内容物が乾燥固化してしまい、目詰まりを生じ、場合によっては吐出不能となる問題もあった。
【0003】
かかる、内容物の固化を抑制し、吐出容器の目詰まりを防止するため、25℃以下で固形状の物質及び/又は皮膜形成高分子から選ばれる1種以上に対し、不揮発性の液状油を特定比率で配合することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、内容物の固化を抑制するためには、不揮発性油剤を多く配合する必要があり、剤形に制限があった。また、不揮発性油剤を特定比率で配合しても内容物の固化が生じてしまい、目詰まりを抑制する効果は十分でなかった。
【0004】
一方、エチレンオキシドの平均付加数が5以上のポリオキシエチレンベヘニルエーテルを乳化組成物に配合することにより、高濃度のアルコールを配合した際の乳化系の経時安定性を向上させることが提案されている(特許文献2、3参照)が、これは乳化系の硬度や粘度の低下を防止しようとするものであり、水に対する作用については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−321321号公報
【特許文献2】特開平1−266844号公報
【特許文献3】特表平11−508253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者は、水系組成物からの水分蒸散を抑制できる成分を探索した結果、水溶性高分子とポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルとを組み合せて用いた場合に水系組成物からの水分蒸散を顕著に抑制でき、その効果はポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルとして、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24であり、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4のものを用いた場合に特に優れていることを見出し、先に特許出願した(特願2010−102160号)。
しかしながら、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルを特定の油剤とともに乳化させた場合、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルが油剤中に溶解してしまい、水相の水分蒸散抑制効果が低下するという問題が生じることが判明した。
従って、本発明の課題は、水中油型乳化組成物でありながら、水分蒸散抑制効果が高く、しかも使用感に優れる水中油型乳化化粧料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため検討した結果、水相中にアルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルと水溶性高分子と多価アルコールが分散するように配合することにより、水中油型乳化組成物においても水相の水分蒸散が抑えられ、かつ、優れた使用感が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する水中油型乳化組成物であって、水相中に下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)多価アルコール
(C)水溶性高分子
【0009】
また、本発明は、水溶性高分子を含有する水中油型乳化組成物を形成し、次の成分(A)と(B)を含有する組成物と、前記水中油型乳化組成物を、45℃以下の温度で混合することを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法に関する。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)多価アルコール
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、水分蒸散抑制効果が高く、長期間保存しても分離等の外観上の変化を抑制でき、経時安定性に優れる。また、少量の前記ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル(A)の添加により、高い水分蒸散抑制効果が発現することから、剤形の制限がなく、使用感に影響を与えることもない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における水中油型乳化組成物とは、連続相が水を含む相である乳化組成物であって、W/O/W型乳化組成物も包含するものである。
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物は、無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する水中油型乳化組成物であって、水相中に前記(A)〜(C)を含有するものである。
【0013】
本発明におけるIOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標である。具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。
【0014】
ここで、「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値が算出される(例えば、甲田善生 著、「有機概念図―基礎と応用―」11頁〜17頁、三共出版 1984年発行 参照)。
【0015】
本発明においては、無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を用いた場合、前記ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル(A)が油性成分中に溶解しやすくなり、水相の水分蒸散抑制効果が低下する傾向がある。特に無機性値が1500以下、有機性値が3000以下であって、IOB値が0.3〜0.5の油性成分で影響が大きく、無機性値が100〜300、有機性値が200〜700であって、IOB値が0.3〜0.5の油性成分で影響が顕著である。
【0016】
これら油性成分としては、具体的にはイソステアリン酸プロピレングリコール(無機性値:166、有機性値:410、IOB値:0.4)、オレイン酸プロピレングリコール(無機性値:162、有機性値:420、IOB値:0.39)、ジオクタン酸エチレングリコール(無機性値:120、有機性値:340、IOB値:0.35)、ジカプリン酸ジエチレングリコール(無機性値:195、有機性値:480、IOB値:0.41)、ジカプロン酸プロピレングリコール(無機性値:120、有機性値:300、IOB値:0.4)、ジミリスチン酸グリセリル(無機性値:220、有機性値:620、IOB値:0.35)、ジヤシ油脂肪酸グリセリル(無機性値:220、有機性値:540、IOB値:0.41)、ジラウリン酸グリセリル(無機性値:220、有機性値:540、IOB値:0.41)、ジラウリン酸ジエチレングリコール(無機性値:195、有機性値:560、IOB値:0.35)、ジラウリン酸ポリエチレングリコール(無機性値:270、有機性値:600、IOB値:0.45)、ジ酢酸モノステアリン酸グリセリル(無機性値:180、有機性値:500、IOB値:0.36)、セスキオレイン酸グリセリル(無機性値:243、有機性値:600、IOB値:0.41)、セバシン酸ジイソプロピル(無機性値:120、有機性値:300、IOB値:0.4)、セバシン酸ジエチル(無機性値:120、有機性値:280、IOB値:0.43)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(無機性値:180、有機性値:540、IOB値:0.33)、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル(無機性値:180、有機性値:510、IOB値:0.35)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(無機性値:180、有機性値:550、IOB値:0.33)、トリカプリル酸グリセリル(無機性値:180、有機性値:540、IOB値:0.33)、パルミチン酸エチレングリコール(無機性値:160、有機性値:360、IOB値:0.44)、ヒマシ油脂肪酸メチル(無機性値:162、有機性値:380、IOB値:0.43)、ミリスチルアルコール(無機性値:100、有機性値:280、IOB値:0.36)、モノオレイン酸エチレングリコール(無機性値:162、有機性値:400、IOB値:0.41)、モノステアリン酸エチレングリコール(無機性値:160、有機性値:400、IOB値:0.4)、モノステアリン酸プロピレングリコール(無機性値:160、有機性値:420、IOB値:0.38)、ヤシ油アルコール(無機性値:100、有機性値:240、IOB値:0.42)、ラウリルアルコール(無機性値:100、有機性値:240、IOB値:0.42)、乳酸オクチルドデシル(無機性値:160、有機性値:450、IOB値:0.36)、乳酸オレイル(無機性値:162、有機性値:420、IOB値:0.39)、乳酸セチル(無機性値:160、有機性値:380、IOB値:0.42)等を例示することができる。
【0017】
これら油性成分の含有量は、水中油型乳化組成物全量に対し、0.05質量%以上含有されていると水分蒸散抑制効果が低下する傾向があり、特に1質量%以上含有すると影響が大きくなる。
本発明水中油型乳化組成物中のこれら油性成分の含有量の上限は、水中油型乳化系が形成できれば限定されないが、30質量%以下、特に20質量%以下が好ましい。
【0018】
本発明に用いる(A)ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル(以下、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)、POEアルキルエーテルということがある。)は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4である。
【0019】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、その構造を問わないが、好ましくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは直鎖のアルキル基である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は20〜24であり、好ましくは炭素数が21〜23であり、最も好適には炭素数が22のベヘニル基である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20未満の場合には、水分蒸散抑制効果が低いため、好ましくない。また、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が24を超える場合には、水相に溶解し難くなるため、製剤上好ましくない。
【0020】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)のエチレンオキシドの平均付加モル数は、1.5〜4の範囲であり、好ましくは1.5〜3であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。平均付加モル数が1.5未満の場合には結晶性が高く、水相に溶解し難いため、好ましくない。また、平均付加モル数が4を超える場合は、水分蒸散抑制効果が著しく低下するため、好ましくない。一般的に入手可能なポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)は、エチレンオキシドの付加モル数に関しては、所望の重合度を中心として極めて幅広く分布した混合物であるが、平均付加モル数が上記範囲内であることが本発明においては重要である。
【0021】
本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)としては、ポリオキシエチレン(2)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(3)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(4)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(3)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(4)カルナービルエーテル等が挙げられ、好ましくはポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテルが挙げられる。尚、用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の平均付加モル数が上記範囲内であれば、これら例示されたポリオキシエチレンアルキルエーテル以外のものを併用することも可能である。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物中のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の含有量は、組成物全量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。当該範囲内であれば、水分蒸散抑制効果が高く、水相へ容易に配合可能であり、好ましい。
【0023】
本発明で用いる(B)多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量650未満)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(平均分子量650未満)、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
これらのうち、特に本発明のポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の溶解性及び使用性の点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールが好適に利用でき、特に好ましくはジプロピレングリコールである。
【0024】
多価アルコールの含有量は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の含有量に対し、質量比で0.5〜50倍、より好ましくは1〜35倍、さらに1〜20倍の含量で併用することが好ましい。当該範囲内であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)の溶解性が良好で、良好な水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0025】
本発明の水中油型乳化組成物には、(C)水溶性高分子が用いられる。水溶性高分子は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を水相中に安定に分散保持させ、水分蒸散抑制効果に寄与する。ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を水相中に安定に分散保持させることができれば、用いる剤形により、種々の水溶性高分子を選択することができる。
【0026】
本発明の用いる水溶性高分子としては、水溶性のカチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、及び、両性高分子又は双極性高分子等が挙げられる。
【0027】
カチオン性高分子としては、具体的には、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性ポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体カチオン性ポリマー、または第4級窒素含有セルロースエーテル、またはポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン及び牛脂脂肪酸より得られるタロイルアミンの縮合生成物、またはビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物等であり、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性高分子としては、マーコート100 (Merquat100)という商品名で米国メルク社(Merck&Co.Inc.) から販売されているものなどを挙げることができる。ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体型カチオン性ポリマーとしてはマーコート550(Merquat 550)[米国メルク社(Merquat&Co.,Inc.)]などを挙げることができる。ポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン及びタロイルアミンもしくは、ココイルアミンの縮合生成物の例としては、ポリコートH(Polyquat H)という商品名で、西独ヘンケル社(Henkel International Co.)から販売されているものなどを挙げることができる。第4級窒素含有セルロースは、ポリマーJR-400(Polymer JR-400)、ポリマーJR-125(Polymer JR-125)ポリマーJR-30M(Polymer JR-30M)という商品名で、米国ユニオンカーバイト社(Union Carbide Corp. )から販売されているものなどである。ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物はガフコート755 (Gafquat 755)、ガフコート734 (Gafquat734) という商品名で米国GAF社(GAFCorp.)から販売されているもの等である。
アニオン性高分子としては、具体的には、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カラゲーナン、キサンタンガム、ポリスチレンスルホネート、寒天、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン、アルギネート塩、同じくポリ(アクリル酸)およびアクリル酸、メタクリル酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩などのアクリルまたメタクリル酸誘導体が挙げられる。
非イオン性高分子としては、具体的には、セルロースエーテル(ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロール、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、プロピレングリコールアルギネート、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルグアーゴム、ローカストビーンゴム、アミロース、ヒドロキシエチルアミロース、ヒアルロン酸及びそのアルカリ金属塩、澱粉および澱粉誘導体およびこれらの混合物などが挙げられる。
両性高分子又は双極性高分子として、具体的には、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリクオタニウム−47、ポリクオタニウム−43などが挙げられる。
【0028】
これらの水溶性高分子は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。様々な剤形への応用のしやすさから、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリルアミド、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ヒアルロン酸及びそのアルカリ金属塩が好ましく挙げられる。
【0029】
本発明で用いる水溶性高分子の含有量は、組成物全量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%である。当該範囲内であれば、製剤の安定性が保たれ、優れた水分蒸散抑制効果が得られ、好ましい。
【0030】
本発明の水中油型乳化組成物には、前記の必須成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、高級アルコール類、脂肪酸類、エステル類、ステロール類、ステロール脂肪酸エステル類、炭化水素類、油脂類、シリコーンオイル、保湿剤、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防菌防腐剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、キレート剤、中和剤、pH調整剤、香料等を配合することができる。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物の剤形は、特に制限されず、液状、エマルション、ジェル状、スプレー状、ムース状等のものとして調製される。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物の用途としては、特に制限がなく、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適に用いることができる。具体的には、シャンプー、リンス、コンディショナーなどの毛髪化粧料、洗顔料、クレンジング化粧料、ローション、乳液、美容クリーム、下地化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料、各種薬剤を含有する軟膏、クリーム等の外用医薬品として好適に利用できる。特に本発明の水中油型乳化組成物は、水分の閉塞効果が高いことから、洗い流さず、皮膚に保持するタイプの皮膚外用剤として用いることが好ましい。
【0033】
本発明の水中油型乳化組成物は、水相中に前記成分(A)〜(C)を含有させることで、高い水分蒸散抑制効果と、経時安定性を得ることができる。
【0034】
しかしながら、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)は、無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分に溶解しやすいため、通常の転相乳化法(反転乳化法、転相温度乳化法等)や非転相乳化法等の乳化を行う際に、高温(60℃以上)でポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)と特定の油性成分を混合すると、油相中にポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)が溶解してしまい、水相の水分蒸散抑制効果を著しく低下させてしまう。
【0035】
そのため、本発明では予め水溶性高分子を含有する水中油型乳化組成物を形成し、その後、前記(A)及び(B)を含有する組成物と、前記水中油型乳化組成物を、45℃以下の温度で混合することで、水相中にポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を安定に配合することができ、良好な水分蒸散抑制効果や経時安定性が得られる。
【0036】
予め形成する水溶性高分子を含有する水中油型乳化組成物は、分散法(回転・攪拌式乳化装置や膜乳化装置を用いて乳化させる方法)、転相乳化法(反転乳化法、転相温度乳化法など)、自己乳化法(外部から機械的又は熱的エネルギーを加えずに乳化する方法)など様々な形成方法を利用して生成することができる。この水溶性高分子を含有する水中油型乳化組成物を形成するには、必要に応じて50〜80℃に加熱してもよい。
【0037】
一方、前記(A)及び(B)を含有する組成物は、均一にするため加熱混合し、好ましくは50〜80℃に加熱する。
【0038】
この(A)及び(B)を含有する組成物と、予め形成した水中油型乳化組成物を、45℃以下の温度で混合することが望ましく、より好ましくは35〜45℃の温度で混合するのが好ましい。混合時の温度が当該範囲内であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)を水相中に安定に配合することができる。また、混合時の温度が当該範囲内であれば、それぞれの組成物の混合前の温度は制限されないが、温度コントロールを容易にするため、(A)及び(B)を含有する組成物と、予め形成した水中油型乳化組成物とをほぼ等温で混合するのが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。尚、各成分の量は、質量%である。
【0040】
〔試験1〕 水分蒸散抑制効果
下記表1〜4に示す成分の実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1〜4、及び下記コントロールを開口面積13.85cm2のシャーレに5g添加し、湿度30%、温度30℃下で1、3、5、7、12、18、24時間経過後の試料の重量変化を測定した。その重量変化の傾きを最小二乗法により算出される(nX+m;Xは時間h)のnを水分蒸散速度(単位:mg/h)とし、絶対値としてプロットした。尚、水分蒸散速度は、各試料計3回の平均値を求めた。
前記水分蒸散速度から、下記に定義する水分蒸散抑制率を算出した。水分蒸散抑制率が高いほど、水分蒸散を抑制したことになる。結果を表1〜4に合わせて記載する。
【0041】
水分蒸散抑制率(%)={1―(実施例又は比較例での水分蒸散速度)/(コントロールでの水分蒸散速度)}×100
【0042】
〔コントロール〕
成分 含有量(%)
ジプロピレングリコール 10
2%カルボキシビニルポリマー(シンタレンK、和光純薬社製) 7.5
10%水酸化カリウム 0.7
エデト酸二ナトリウム 0.03
フェノキシエタノール 0.35
純水 残 量
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
(製造方法1:POEベヘニルエーテル低温添加)
(1)成分1及び成分2を60℃に加熱し、均一に混合させる。
(2)成分3〜10を80℃で均一に混合させる。
(3)成分11〜14を80℃で均一に混合させる。
(4)(2)に、(3)を80℃に加熱保持しながら、徐々に添加して均一に混合させる。
(5)(4)を40℃まで徐々に冷却し、(1)及び成分15を40℃で(4)に添加し、均一に混合させる。
【0048】
(製造方法2:POEベヘニルエーテル高温添加)
(1)成分1〜9を80℃に加熱し、均一に混合する。
(2)成分10〜14を80℃に加熱し、均一に混合する。
(3)(1)に、(2)を80℃に加熱保持しながら、徐々に添加して均一に混合させる。
(4)(3)を40℃まで徐々に冷却し、成分15を40℃で添加し、均一に混合させる。
【0049】
無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する比較例1〜3では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)が油性成分中に溶解してしまい、水分蒸散抑制効果が著しく低下した。一方、水相中にポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)及び(B)水溶性高分子を含有させた実施例1〜7では、水中油型乳化組成物に対して優れた水分蒸散抑制効果が現れた。
また、無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分以外の油性成分を用いた参考例1〜4では、油性成分中にポリオキシエチレンアルキルエーテル(A)が溶解せず、水相中に分散されているため、水分蒸散効果の明らかな低下は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機性値が2500以下、有機性値が5000以下であって、かつIOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する水中油型乳化組成物であって、水相中に下記(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)多価アルコール
(C)水溶性高分子
【請求項2】
無機性値が1500以下、有機性値が3000以下であって、IOB値が0.3〜0.5の油性成分を含有する請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(A)ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルが、エチレンオキサイドの平均付加モル数1.5〜3のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルである請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
水溶性高分子を含有する水中油型乳化組成物を形成し、次の成分(A)と(B)を含有する組成物と、前記水中油型乳化組成物を、45℃以下の温度で混合することを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法。
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20〜24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5〜4であるポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル
(B)多価アルコール
【請求項5】
前記成分(A)と(B)を含有する組成物と、前記水中油型乳化組成物を、35〜45℃の温度で混合する請求項4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−256117(P2011−256117A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129674(P2010−129674)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】