説明

水中油型乳化組成物

【課題】高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、電解質の塩型薬剤を安定に配合可能であって、乳化安定性に極めて優れた水中油型乳化組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)〜(G)を含有し、高圧乳化により乳化粒子を微細化したことを特徴とする水中油型乳化組成物である。
(A)塩型薬剤
(B)親水性非イオン界面活性剤
(C)N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩
(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ
(E)高級アルコール
(F)油分
(G)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型乳化組成物に関する。さらに詳しくは、高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、塩型薬剤を安定に配合できる水中油型乳化組成物及びこれを利用した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保湿作用、美白作用、抗酸化作用等を有する高機能の皮膚化粧料が望まれており、その開発が期待されている。そこで、皮膚化粧料を構成する乳化組成物においては、目的とする高機能の発現や、pH調整、増粘等の様々な目的のため、植物抽出物、クエン酸、アスコルビン酸、4−メトキシサリチル酸等の有機酸及びその塩などの電解質が塩型薬剤として配合されることが多い。
【0003】
しかしながら、乳化組成物においては、電解質の配合により、その経時および温度変化に対する安定性が低下するという本質的な問題がある。特に水溶液状の物性を示す低粘度の水中油型乳化組成物においては、電解質からなる塩型薬剤の配合により安定性が極端に悪化する。
このような電解質添加による乳化組成物の不安定化については、例えば、特許文献1や、非特許文献1及び非特許文献2等の文献にも記載されている。
【0004】
一方、高圧乳化により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物として、特許文献2〜4には、水溶液状の低粘度の物性を有し、しかもクリーム状の使用感触を備えた水中油型乳化組成物が開示されている。特許文献2及び3は基本的に高級脂肪酸石鹸による乳化技術であり、特許文献4は基本的にN−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩による乳化技術である。
【0005】
しかしながら、特許文献2〜4の水中油型乳化組成物は、安定な乳化組成物を得られる界面活性剤や油分の組み合わせ、これらの配合量等の選択の幅が比較的狭い。したがって、目的とする機能を発現させるため、希望する配合量の各種塩型薬剤を配合して、当該乳化組成物を安定化することは必ずしも容易ではなく、多くの場合に困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4406498号
【特許文献2】特許第3398171号
【特許文献3】特開平7−267814
【特許文献4】特開平9-301847
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】北原文雄/古沢邦男著、「分散、乳化系の化学」、工学図書株式会社、1979年、第242頁
【非特許文献2】蔵多淑子/田端勇仁/内野則之/大沼俊雄/田村博明著、「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社、1995年、第201頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、上述した観点に鑑み、高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、電解質の塩型薬剤を安定に配合できる乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物を得るべく鋭意研究した結果、(A)塩型薬剤、(B)親水性非イオン界面活性剤、(C)N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩、(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ、(E)高級アルコール、(F)油分、(G)水を必須成分とする水中油型乳化組成物が、(A)塩型薬剤を安定に配合でき、乳化安定性に優れた効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、電解質の塩型薬剤を安定に配合可能な乳化安定性に極めて優れた水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(G)を含有し、高圧乳化により乳化粒子を微細化したことを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
(A)塩型薬剤
(B)親水性非イオン界面活性剤
(C)N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩
(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ
(E)高級アルコール
(F)油分
(G)水
【0011】
また、本発明は、上記水中油型乳化組成物からなることを特徴とする化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、電解質の塩型薬剤を安定に配合可能であって、乳化安定性に極めて優れた水中油型乳化組成物を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳述する。
【0014】
「(A)塩型薬剤」
本発明に配合する塩型薬剤は電解質であり、これを配合すれば、多くの場合、水中油型乳化組成物の経時安定性が悪化する成分である。しかしながら、本発明においては、塩型薬剤を配合した場合であっても、当該乳化組成物の経時安定性は極めて優れたものとなる。
塩型薬剤の具体例としては、例えば、アルコキシサリチル酸及びその誘導体の塩;L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド及びそれらの誘導体の塩;4−メトキシサリチル酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、又は、アンモニウム塩、アミノ酸塩;グリチルリチン酸のカリウム塩、アンモニウム塩が好ましく使用される。塩型薬剤は水中油型乳化組成物の水相に存在し、目的とする機能を発揮させる成分である。
【0015】
塩型薬剤の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3質量%であり、最も好ましくは、1〜3質量%である。
【0016】
「(B)親水性非イオン界面活性剤」
本発明において、親水性非イオン界面活性剤は乳化剤として作用する成分である。本発明に用いる親水性非イオン界面活性剤としては特に限定されないが、POEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤を用いることが好ましく、具体的には、POE(20)セチルエーテル(エマレックス120 日本エマルジョン社製)、POE(25)セチルエーテル(エマレックス125 日本エマルジョン社製)、POE(30)セチルエーテル(エマレックス130 日本エマルジョン社製)、POE(30)ベヘニルエーテル(ニッコールBB-30 日光ケミカルズ社製)、POE(20)ベヘニルエーテル(ニッコールBB-20 日光ケミカルズ社製)等の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0017】
親水性非イオン界面活性剤の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、0.01〜1質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜0.5質量%であり、最も好ましくは、0.3〜0.4質量%である。
【0018】
「(C)N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩」
本発明において、N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩は乳化剤として作用する成分である。本発明に用いるN−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩は特に限定されないが、具体的には、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(アミソフト HS−11P(F) 味の素社製)、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(アミソフト LS−11 味の素社製)、ミリストイルグルタミン酸カリウム(アミソフト MK−11 味の素社製)、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム(アミソフト MS−11 味の素社製)等の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0019】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、0.01〜1質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜0.5質量%であり、最も好ましくは、0.3〜0.4質量%である。
【0020】
「(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ」
本発明においては、2種以上の高級脂肪酸と、当該高級脂肪酸の高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリが配合される。すなわち、本発明においては、処方中にて、2種以上の高級脂肪酸と、アルカリが配合され、これらが中和して構成する高級脂肪酸の種類が異なる2種以上の高級脂肪酸石鹸が含有されなければならない。なお、高級脂肪酸とアルカリを処方中に別個に配合するのではなく、2種以上の高級脂肪酸から構成される高級脂肪酸石鹸を配合することも可能である。
高級脂肪酸の種類が異なる2種以上の高級脂肪酸石鹸は、本発明において、上記成分(B)及び(C)と同様に乳化剤として作用する。
本発明に用いる高級脂肪酸は特に限定されないが、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸等の1種又は2種以上を用いることが好ましい。
また、本発明に用いるアルカリは高級脂肪酸石鹸を構成する限り特に限定されないが、特にKOHを用いることが好ましい。
2種以上の高級脂肪酸石鹸としては、ステアリン酸カリウム石鹸及びベヘニン酸カリウム石鹸が特に好ましい。
【0021】
高級脂肪酸の配合量は、水中油型乳化組成物全量に対し、2種以上の合計で、0.1〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜2質量%であり、最も好ましくは、0.8〜1.2質量%である。
アルカリの配合量は、2種以上の高級脂肪酸のモル数の60%以上のモル数を配合することが好ましく、水中油型乳化組成物全量に対し、0.02〜1.6質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.01〜0.6質量%であり、最も好ましくは、0.15〜0.38質量%である。
【0022】
「(E)高級アルコール」
本発明に用いる高級アルコールは水中油型乳化組成物の油相を構成する成分であり、特に限定されないが、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、バチルアルコール、イソステアリルアルコールの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0023】
高級アルコールの配合量は、水中油型乳化組成物全量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは、1〜3質量%であり、最も好ましくは、1.5〜2質量%である。
【0024】
「(F)油分」
本発明に用いる油分は、水中油型乳化組成物の油相を構成する成分であり、特に限定されない。
具体的には、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;
カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固型油脂;
ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カボックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;
流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;
メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン油;
ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアレン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸−2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セパチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、セバチル酸ジイソプロピル、コハク酸−2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油が挙げられ、これらの油分の1種又は2種以上を用いることが可能である。
本発明において特に好ましい油分は、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、メチルポリシロキサン、オクタン酸セチルである。
【0025】
油分の配合量は適宜決定されるが、水中油型乳化組成物全量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは、1〜7質量%であり、最も好ましくは、3〜5質量%である。
【0026】
「(G)水」
本発明において、水は他の水性成分と共に水中油型乳化組成物の水相を構成する成分であり、イオン交換水を用いることが好ましい。
水の配合量は適宜決定されるが、水中油型乳化組成物全量に対して、50〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、60〜80質量%であり、最も好ましくは、65〜75質量%である。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で多価アルコールや保湿剤を配合することにより保湿効果を高めることができる。
例えば、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価のアルコール;キシリトール等の5価のアルコール;ソルビトール、マンニトール、等の6価のアルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール共重合体;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールノモブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ30メチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等の2価のアルコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールものエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等の2価のアルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の2価のアルコールエーテルエステル類;キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等のグリセリンモノアルキルエーテル;ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリスリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等の糖アルコール;グリソリッド、テトラハイドロフルフリルアルコール、POEテトラハイドロフルフリルアルコール、POPブチルエーテル、POP・POEブチルエーテル、チルポリオキシプロピレングリセリンエーテル、POPグリセリンエーテル、POPグリセリンエーテルリン酸、POP・POEペンタエリスルトールエーテル等が挙げられる。
【0028】
保湿剤としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、短鎖可溶性コラーゲン、イザヨイバラ抽出液、セイヨウノコギリソウ抽出物などが挙げられる。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物は、その他にも通常化粧料の分野で配合されている各種成分を配合することができる。例えば、粉末成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、エタノール、pH調整剤、皮膚栄養剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、色素等を必要に応じて適宜配合し、高圧乳化の常法により製造することが出来る。
【0030】
「高圧乳化による乳化粒子の微細化」
本発明の水中油型乳化組成物は、上記の必須成分を有する混合分散液を、マントンゴウリン、フレンチプレス、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザーを用いて30MPa以上の圧力下で高圧乳化して製造することが好ましい。さらに好ましくは50MPa以上が好適である。
本発明において、高圧乳化により微細化された乳化粒子は、乳化粒子径が0.03〜0.15μmであることが好ましい。
また、本発明の水中油型乳化組成物の粘度は低粘度であり、水溶液状の物性を示すことが好ましい。B型粘度計(60rpm 1min 30℃)により測定した粘度範囲は、5〜50(mPa・s)であることが好ましい。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物は、塩型薬剤を配合した場合でも安定した乳化状態を維持できるため、塩型薬剤を配合する化粧料、特には皮膚化粧料として好適に利用できる。
【実施例】
【0032】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0033】
以下の表に示す水中油型乳化組成物を、55MPaの圧力下で高圧ホモジナイザーを用いて、常法により高圧乳化して製造した。
そして、得られた水中油型乳化組成物をサンプル管に充填し、製造直後の外観の状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
次に、経時安定性の評価として、50℃の恒温層に4週間保存して4週間後の外観の状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0034】
<評価基準>
○:外観に変化はなく、安定性が極めて優れている。
△:凝集やクリーミングが観察される。
×:ゲル化する。
【0035】
【表1】

<製法>
(1)〜(6)を80℃で撹拌混合する。これを(7)〜(11)の混合液を70℃で加熱溶解したものに撹拌しながら混合し、55MPaの圧力下で高圧ホモジナイザーを用い乳化した後、(12)〜(16)の混合液に攪拌しながら混合する。
【0036】
「表1」の結果から、本発明の水中油型乳化組成物は、電解質である塩型薬剤の4−メトキシサリチル酸カリウム塩を1〜3質量%も配合した場合であっても、極めて安定した水中油型乳化組成物であることが分かる。また他の塩型薬剤、例えばL−アスコルビン酸2−グルコシドを2質量%、あるいはグリチルリチンを0.5質量%配合した場合であっても極めて安定した水中油型乳化組成物であることが分かる。
得られた水中油型乳化組成物からなる化粧料は、水溶液状の物性を有し、しかも肌へ塗布した後は、クリーム状の優れた使用感触を発揮する化粧料である。
なお、実施例1及び2の乳化粒子の大きさは0.05〜0.1μmの微細粒子である。
【0037】
以下に比較例の水中油型乳化組成物と、経時安定性について示す。
比較例の水中油型乳化組成物は、実施例1及び2の製法に準じて製造した。




【0038】
【表2】

【0039】
比較例1では、塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合されていないので、経時安定性は問題なく安定である。
しかしながら、塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合された比較例2〜4は、(B)ポリオキシエチレンセチルエーテル(POE=25)及び(C)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムが配合されておらず、製造直後からゲル化する。
一方、比較例5〜7は、(C)成分を配合することで、比較例2〜4よりは、経時安定性が若干向上しているが、(B)成分が配合されておらず、経時で凝集やクリーミングが観察され、製品としては経時安定性に問題がある。













【0040】
【表3】

【0041】
塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合された比較例2、比較例8〜15は、(C)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム成分が配合されていないので、経時安定性に問題がある。
なお、比較例12〜15ではPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤の配合により、比較例2及び比較例8〜11よりは若干経時安定性が向上しているが、(C)成分が配合されておらず、経時で凝集やクリーミングが観察され、製品としては経時安定性に問題がある。










【0042】
【表4】

【0043】
比較例1では、塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合されていないので、経時安定性は問題なく安定である。
一方、塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合された比較例7,16〜17は、(B)ポリオキシエチレンセチルエーテル(POE=25)が配合されておらず、経時安定性に問題がある。


















【0044】
【表5】

【0045】
比較例1では、塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合されていないので、経時安定性は問題なく安定である。比較例7及び18〜19は(B)ポリオキシエチレンセチルエーテル(POE=25)成分が配合されておらず、経時安定性に問題がある。比較例15及び20〜21は(C)N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム成分が配合されておらず、経時安定性に問題がある。
これに対して、本発明の実施例1及び実施例2は、(B)及び(C)成分の配合により塩型薬剤の(A)4−メトキシサリチル酸カリウム塩が配合されていても、経時安定性に問題がない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、高圧乳化法により乳化粒子を微細化した水中油型乳化組成物において、塩型薬剤を安定に配合可能な乳化安定性に極めて優れた水中油型乳化組成物を提供することが出来る。
本発明の水中油型乳化組成物は、塩型薬剤を配合する化粧料に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(G)を含有し、高圧乳化により乳化粒子を微細化したことを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)塩型薬剤
(B)親水性非イオン界面活性剤
(C)N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ塩
(D)2種以上の高級脂肪酸及び高級脂肪酸石鹸を構成するアルカリ
(E)高級アルコール
(F)油分
(G)水
【請求項2】
前記水中油型乳化組成物からなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2012−126705(P2012−126705A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209211(P2011−209211)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】