説明

水中油型乳化組成物

【課題】低温安定性が良好で、美白効果に優れ、皮膚安全性が高く、使用感の優れた、ロドデンドロール又はその誘導体を含有する水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化化粧料。(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体


(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロドデンドロール又はその誘導体を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、しみ、そばかす等の皮膚の色素沈着を予防・改善させる成分として、ロドデンドロール及びその誘導体が知られている(特許文献1〜3参照)。これらロドデンドロール及びその誘導体は、水性基剤及び油性基剤のいずれへも溶解性が低い両親媒性物質であることが指摘されている。そのため、乳化組成物にした場合には、乳化粒子の界面付近にロドデンドロール又はその誘導体が集まり、析出しやすいため、安定性、使用感において問題が生じやすいという課題があった。
【0003】
かかる課題を解決するため、例えば、ロドデンドロール又はその誘導体と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル及び/又は両親媒性高分子とを併用することで、高温条件下、光照射条件下又はアルカリ性条件下において、変色や変臭を生ずる問題を改善することが提案されている(特許文献4、5参照)。
【0004】
一方、γ−オリザノールの溶解性を改善するために、水素添加リン脂質、特定の脂肪酸と多価アルコールとのジエステルを併用することで、γ−オリザノールを安定に配合し、使用感の良い皮膚外用剤が提案されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3340928号公報
【特許文献2】特許第3340935号公報
【特許文献3】特許第3455406号公報
【特許文献4】特開2008−081491号公報
【特許文献5】国際公開WO2009/081587号パンフレット
【特許文献6】特開2008−231087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロドデンドロール又はその誘導体を含有する特許文献4、5記載の皮膚外用剤は、高温条件下や光照射条件下では安定であるが、使用感を考慮してロドデンドロール又はその誘導体を水中油型乳化組成物の形態とし、これを低温条件下で保存したところ、結晶が析出するという新たな問題が生じることが判明した。
従って、本発明の課題は、ロドデンドロール又はその誘導体を含有し、低温安定性が良好で、皮膚安全性が高く、美白効果、使用感の優れた水中油型乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく検討した。特許文献6に記載される水素添加リン脂質、特定の脂肪酸と多価アルコールとのジエステルを、ロドデンドロール又はその誘導体の乳化系に配合したが、ロドデンドロール又はその誘導体の低温保存性の改善は全くみられなかった。そこでさらに検討したところ、全く意外にも、ロドデンドロール又はその誘導体と、プロピレングリコールの特定の範囲の炭素数のモノ脂肪酸エステルと、レシチン又はその水素添加物とを併用することにより、低温安定性が著しく向上すると共に、さらに優れた美白効果、皮膚刺激緩和効果を有し、使用感の良い水中油型組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物を提供するものである。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物
【0011】
さらに、本発明は、前記成分(A)を含有する水中油型乳化組成物において、前記成分(B)及び成分(C)を含有させることによる水中油型乳化組成物の低温安定性の改善方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物は、メラニン生成抑制効果を有するロドデンドロール又はその誘導体を十分に効果を奏する量含有しながらも、低温安定性に優れ、皮膚安全性が高く、美白効果及び使用感に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0014】
本発明に用いられる(A)ロドデンドロール又はその誘導体は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
【0017】
本発明に用いられる(A)成分において、R1が水素原子であるロドデンドロール[4
−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール]は、公知の化合物であり、メグスリノキ(Acer nikoence Maxim.)等に含まれていることが知られている。ロドデンドロールは、従来公知の方法により合成されたものを用いてもよく、メグスリノキ抽出物を用いてもよい。
【0018】
本発明の(A)成分において、R1が炭素数2〜20のアシル基であるロドデンドロール誘導体(以下、アシル化ロドデンドロールとも記載する。)は、フェノール化合物のアシル化などの公知の方法を用いて合成することができる。例えば、ピリジン中において4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンと脂肪酸クロライドとを反応させ、その後、水素化ホウ素ナトリウムで、ケトン基を還元することにより容易に得ることができる。R1のアシル基は飽和であっても不飽和であってもよく、又はアミノ基等の官能基を有するものであってもよい。このうち、飽和又は不飽和の脂肪族アシル基が好ましく、アルカノイル基がより好ましい。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、バレリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ラウロイル基、パルミトイル基、ステアロイル基等が挙げられる。このうち、水中油型乳化組成物への応用のしやすさの点から、炭素数2〜18のアルカノイル基が好ましく、炭素数2〜8のアルカノイル基がより好ましく、炭素数2〜4のアルカノイル基がさらに好ましく、さらに好ましいアシル基の具体例としてアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基等が挙げられる。
【0019】
本発明の(A)成分における具体的なアシル化ロドデンドロールとしては、アセチルロドデンドロール、ブチロイルロドデンドロール、ヘキサノイルロドデンドロール、オクタノイルロドデンドロール、ドデカノイルロドデンドロール、テトラデカノイルロドデンドロール、ヘキサデカノイルロドデンドロール、オクタデカノイルロドデンドロール等を挙げることができる。
【0020】
本発明の(A)成分において、R1が単糖類又は二糖類の糖残基であるロドデンドロール誘導体(以下、ロドデンドロール配糖体とも記載する。)は、公知の方法(アメリカ特許第3201385号)を用いて得ることができる。例えば、トルエン等の有機溶媒中においてロドデンドロールとアセチル化糖を三フッ素化ホウ素やオキシ塩化リン等を触媒として縮合した後、アルカリ存在下にアセチル基を脱離することにより目的の配糖体を白色の粉末結晶として容易に得ることができる。また、ラズベリーケトングリコシドを還元することによっても得ることもできる。さらに、天然物から単離することも可能である。
【0021】
前記糖残基は、還元性の単糖類又は二糖類であり、具体的にはグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等の単糖類、マルトース、セロビオース、ゲンチビオース等の二糖類を挙げることができる。本発明の配糖体にはα結合及びβ結合を有する異性体が存在するが、単独またそれらの混合物を用いることもできる。
【0022】
本発明の(A)成分における具体的なロドデンドロール配糖体は、ロドデンドロール−D−グルコシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−ガラクトシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−キシロシド(α又はβ体)、ロドデンドロール−D−マルトシド(α又はβ体)等を挙げることができる。
【0023】
本発明の(A)成分には、光学異性体が存在するが、(+)体、(−)体単独でも、またそれらの混合物(±)を用いることもできる。
【0024】
(A)成分の本発明の組成物中における含有量は、メラニン生成抑制剤として十分な効果を得る点及び低温安定性の点から、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。特に、R1が、水素原子又は炭素数2〜20のアシル基であるロドデンドロール又はその誘導体を用いる場合、メラニン生成抑制効果が高いことから、組成物中の含有量としては、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%であり、R1が、単糖類又は二糖類の糖残基であるロドデンドロール誘導体を用いる場合、組成物中の含有量としては、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0025】
本発明に用いられる(B)プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルは、ロドデンドロール又はその誘導体の低温安定性及び使用感の点から、脂肪酸の炭素数が10〜26であり、モノ脂肪酸エステルである。プロピレングリコールのジ脂肪酸エステルやプロピレングリコールのモノC8脂肪酸エステルを配合しても安定性の良好な水中油型乳化組成物は得られない。当該(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステルとしては、下記一般式(2)で示されるものが好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、R2は、炭素数9〜25の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。)
【0028】
本発明で用いる(B)成分のより好ましいものとしては、低温安定性及び使用感の点から、R2が炭素数11〜23の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基のものであり、具体的には、ラウリン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、パルミチン酸プロピレングリコール、ステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、リノール酸プロピレングリコール、リノレン酸プロピレングリコール、パルミトオレイン酸プロピレングリコール、ベヘン酸プロピレングリコール等が挙げられる。本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて適宜使用することができる。
【0029】
本発明で用いる(B)成分は、公知の物質であり、例えば脂肪酸とプロピレングリコールのエステル化により容易に製造できる。また、一般に市販もされており、ラウリン酸プロピレングリコールとしては、太陽化学株式会社から販売されているサンソフト25BD、イソステアリン酸プロピレングリコールとしては、クローダ社より販売されているシスロールPGMIS、オレイン酸プロピレングリコールとしては、太陽化学株式会社から販売されているサンソフト25ODV、ベヘン酸プロピレングリコールとしてはNovenon社から販売されているSchercemol PGML Ester等が挙げることができる。
【0030】
(B)成分の本発明の組成物中における含有量は、低温安定性、使用感、皮膚刺激性の点から、好ましくは0.05〜30質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
【0031】
本発明の(A)成分と(B)成分の含有質量比(A/B)は、低温安定性、使用感(べたつき感、肌なじみ)の点から、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.1〜5、さらに好ましくは0.2〜5、さらに好ましくは0.5〜5である。
【0032】
本発明に用いる(C)レシチン又はその水素添加物は、大豆又は卵黄等からの抽出物又はその精製物であるレシチン又はその水素添加処理物であり、具体的には大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン水素添加物及び卵黄レシチン水素添加物等が挙げられる。より好ましくは、乳化安定性、刺激感緩和の点から、ホスファチジルコリン(以下、PCともいう)の含有率が70質量%以上であるレシチン又はその水素添加物が好ましい。本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて適宜使用することができる。
【0033】
(C)成分中のホスファチジルコリンの含有量は、薄層クロマトグラフィー(TLC)や高速液体クロマトフラフィー(HPLC)、イアトロスキャン(ヤトロン社製)等を用いた方法で分析することができる。例えば、特開2001−186898号公報に記載されるリン脂質が含まれる有機溶媒をTLCにスポットしてクロロホルム:メタノール:酢酸=65:25:10で展開し、50wt%硫酸エタノールを噴霧、加熱後デンシトメーターでリン脂質を分析する方法が挙げられる。前記方法以外でも、レシチン及びそれらの水素添加物中に含まれるホスファチジルコリンの含有量、含有率を測定、算出できる方法であれば、いずれの方法でも良い。
【0034】
(C)成分としては、日油社から発売されているCOATSOME NC−21(PC含有量90%以上)、日光ケミカルズ社から発売されているレシノールS−10(PC含有量25〜30%)、レシノールS−10E(PC含有量75〜85%)、レシノールS−10EX(PC含有量95%以上)等の市販品を用いることができる。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物における(C)成分の含有量は、低温安定性、皮膚刺激性、使用感の点から0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
【0036】
本発明の(B)成分と(C)成分の含有質量比(B/C)は、低温安定性、皮膚刺激感緩和の点から、0.1〜30が好ましく、より好ましくは0.1〜15、さらに好ましくは0.1〜10である。
【0037】
本発明では、さらに(D)25℃における動粘度が150mm2/s以下、好ましくは1〜150mm2/sの直鎖状又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサンを含有するのが好ましい。シリコーン油としては、種々のものが知られているが、当該多くのシリコーン油のうち、(D)25℃における動粘度が150mm2/s以下の直鎖状又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサンを併用した際には、使用感(べたつき感のなさ、しっとり感)の向上が見られる他に、本発明の水中油型乳化組成物の皮膚刺激感の改善、薬剤皮膚透過性の改善に寄与するため、好ましい。これらのうち、特に薬剤皮膚透過性の点から、25℃における動粘度が2〜125mm2/s以下の直鎖状のジメチルポリシロキサンを含有するのがより好ましく、5〜100mm2/s以下の直鎖状のジメチルポリシロキサンを含有するのがさらに好ましい。
【0038】
25℃での動粘度は、毛細管式粘度計を使って、一定容量の液体が25℃、一気圧下で粘度計の毛細管を流れる時間を測定し、この流出時間と粘度計定数から次式を用いて算出される。毛細管式粘度計は、一般にウベローデやキャノン−フェンスケなど型式が用いられる。
<動粘度の算出方法>
動粘度(mm2/s)=流出時間(秒)×粘度計定数
【0039】
本発明では、(D)成分として市販品を用いることができ、具体的には、信越化学工業社から発売されているシリコーンKF−96シリーズの1〜100CS、東レ・ダウコーニング社から発売されているシリコーンSH200 Fluidシリーズの1〜100CS、2−1184 Fluid、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社より発売されているTSF451シリーズの5A〜100A等が挙げられる。
【0040】
(D)成分の本発明の組成物中の含有量は、皮膚刺激感緩和、使用感(べたつき感のなさ、しっとり感)及び安定性の点から、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜8質量%である。
【0041】
本発明では、使用感を調整するために、さらに(E)1価〜3価アルコールを含有することができる。(E)成分の好ましい例としては、1価のアルコールとして、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール等の炭素数1〜4の1価アルコールが挙げられ、2価のアルコールとしてはプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の炭素数2〜6の2価アルコールが挙げられ、また3価のアルコールとしてはグリセリン、イソプレングリコール等の炭素数3〜6の3価アルコールが挙げられる。また、本発明では、これら1価〜3価のアルコールから選択される1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
特にこれらのうち、エタノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンからなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく用いることができる。
【0043】
特許文献4、5に記載の皮膚外用剤において、水中油型乳化組成物では(E)成分を10質量%程度含有させておかないと、低温安定性を保つことが困難であったが、本発明においては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を併用することで、同等以上の経時安定性を保持することが可能となっている。そのため、本発明の(E)成分の組成物中の含有量を、10質量%以下とすることが可能であり、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜6質量%とすることが可能である。
【0044】
さらに本発明の水中油型乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記必須成分の他、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品等に配合される他の成分、例えば油剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、水、アルコール類、薬剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0045】
本発明の水中油型乳化組成物の用途は任意であるが、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適に用いることができる。具体的には、ローション、乳液、美容クリーム、下地化粧料、日焼け止め化粧料、パック、マッサージ化粧料などの皮膚化粧料;各種薬剤を含有するクリーム等の外用医薬品として好適に利用できる。特に、本発明の水中油型乳化組成物は、べたつき感やぬるつき感がないため、皮膚化粧料として好適に利用できる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物の剤形は任意であり、液状、エマルション、ジェル状、スプレー状、ムース状等のものとして調製される。
【0047】
以下に本発明及び好ましい実施態様の具体例を挙げる。
<1>下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【0048】
【化4】

【0049】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物
【0050】
<2>一般式(1)中のR1が、水素原子、炭素数2〜20の飽和若しくは不飽和の脂肪族アシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基であり、好ましくは水素原子、炭素数2〜18のアルカノイル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基である、前記<1>の水中油型乳化組成物。
<3>一般式(1)中のR1が、水素原子、炭素数2〜8のアルカノイル基、又はグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース、セロビオース若しくはゲンタビオースの糖残基、好ましくは水素原子、炭素数2〜4のアルカノイル基、又はグルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、N−アセチルグルコサミンの糖残基である前記<1>又は<2>の水中油型乳化組成物。
<4>成分(A)の含有量が、0.5〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である前記<1>〜<3>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<5>成分(B)が、一般式(2)
【0051】
【化5】

【0052】
(式中、R2は、炭素数9〜25の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。)
で表されるものである前記<1>〜<4>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<6>成分(B)が、一般式(2)中のR2が、炭素数11〜23の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である前記<5>の水中油型乳化組成物。
<7>成分(B)が、ラウリン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、パルミチン酸プロピレングリコール、ステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコール、リノール酸プロピレングリコール、リノレン酸プロピレングリコール、パルミトオレイン酸プロピレングリコール、及びベヘン酸プロピレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上である前記<1>〜<6>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<8>成分(B)の含有量が、0.05〜30重量%、好ましくは0.05〜20質量%
より好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、さらにより好ましくは0.1〜5質量%である前記<1>〜<7>の何れかの水中油型乳化組成物。
<9>成分(A)と成分(B)の含有質量比(A/B)が0.1〜10、好ましくは0.1〜8、より好ましくは0.1〜5、さらに好ましくは0.2〜5、さらに好ましくは0.5〜5である前記<1>〜<8>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<10>(C)レシチン又はその水素添加物が、ホスファチジルコリンの含有率が70質量%以上である大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン水素添加物及び卵黄レシチン水素添加物からなる群より選択される1種又は2種以上である前記<1>〜<9>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<11>成分(C)の含有量が、0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である前記<1>〜<10>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<12>成分(B)と成分(C)の含有質量比(B/C)が、0.1〜30、好ましくは0.1〜15、より好ましくは0.1〜10である前記<1>〜<11>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<13>さらに、成分(D)25℃における動粘度が150mm2/s以下、好ましくは1〜150mm2/s、より好ましくは2〜125mm2/s、さらに好ましくは5〜100mm2/sの直鎖状又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサンを含有する前記<1>〜<12>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<14>成分(D)の含有量が、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%である前記<13>の水中油型乳化組成物。
<15>さらに成分(E)1価〜3価アルコールを含有する前記<1>〜<14>のいずれかの水中油型乳化組成物。
<16>成分(E)が、炭素数1〜4の1価アルコール、炭素数2〜6の2価アルコール又は炭素数3〜6の3価アルコールである前記<15>の水中油型乳化組成物。
<17>成分(E)の含有量が、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜6質量%である前記<15>又は<16>の水中油型乳化組成物。
<18>下記成分(A)を含有する水中油型乳化組成物において、成分(B)及び成分(C)を含有させることによる水中油型乳化組成物の低温安定性の改善方法。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【0053】
【化6】

【0054】
(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物
【実施例】
【0055】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、以下に示す配合量は質量%である。実施例に先立ち、実施例において行った評価方法について説明する。
【0056】
(安定性評価)
室温(20±5℃)及び0℃で1ヶ月間保存した試料について、目視及び偏光顕微鏡(ECLIPSE80i、ニコン社製)にて、試料中の結晶の析出有無を確認した。下記結晶析出判定基準に準じて評価を行った。
【0057】
結晶析出判定基準
×:結晶あり
△:僅かに結晶あり
○:結晶なし
【0058】
(皮膚刺激性評価)
目視での安定性評価により、析出が見られなかった0℃で1ヶ月間保存した試料について、事前アンケートにより、敏感肌と自認している女性パネル(20〜50代)10名により、試料を朝晩2回、3日間連続で使用し、最終日に以下の皮膚刺激性判定基準に従って、皮膚刺激性を判定した。なお、刺激感を感じた場合には使用を適宜中止してもらい、使用中止した時点で判定を行ってもらった。評価は、判定結果の平均点を算出することにより行った。尚、女性パネルには、1回にひとつの試料を評価し、2日間の休止期間を設けた後、同様にして次の試料を評価した。
【0059】
皮膚刺激性判定基準
4点:かなり刺激を感じる
3点:刺激を感じる
2点:やや刺激を感じる
1点:ほとんど刺激を感じない
0点:まったく刺激を感じない
【0060】
(官能評価)
目視での安定性評価により、析出が見られなかった0℃で1ヶ月間保存した試料について、専門評価パネラー10名により、試料を使用してもらい「べたつきのなさ」、「しっとり感」の各評価項目に関して、下記判定基準により官能評価を実施した。評価は、その平均点により算出することにより行った。
【0061】
判定基準
5点:非常に良い。
4点:良い。
3点:普通。
2点:やや悪い。
1点:悪い。
【0062】
《薬剤皮膚透過性試験》
0℃で1ヶ月間保存した試料について、モデル皮膚を用いた生体外での皮膚透過性試験を行った。モデル皮膚は、コラーゲン処理したポリカーボネート膜上でヒト表皮細胞を培養し、増殖分化させることによって得られた分化表皮細胞膜を用いた。直径10mmの膜表面に薬物試料を10μl塗布し、CO2インキュベーター内で37℃に保った。24時間後に培養液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーにより膜を透過したロドデンドロール又はその誘導体を定量した。結果を薬剤透過率(%)として表した。
【0063】
実施例1〜24、比較例1〜5
表1及び2に記載の処方により水中油型乳化組成物(乳液)を作製し、前記評価試験を実施した。結果を表1及び2に併せて示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
(製造方法)
A:成分1〜19を80℃に加熱し、攪拌混合する。
B:成分20、21、23〜25を80℃に加熱し、攪拌混合する。
C:AにBを徐々に添加し、均一に攪拌混合する。
D:冷却後、Cに成分22を添加し、さらに均一に攪拌混合する。
【0067】
表1及び2より明らかなように、(B)成分を含有しない比較例2では室温及び低温安定性を保つことが出来なかった。(B)成分の代わりに炭素数が9未満のカプリル酸プロピレングリコールを用いた比較例4や、モノ体でないジカプリル酸プロピレングリコールを用いた比較例5でも室温及び低温安定性を保つことができなかった。また、(C)成分を含有しない比較例3でも同様に、室温及び低温安定性を保つことができなかった。
一方、本発明の実施例では、常温及び低温安定性に優れたものであった。また、(A)成分の皮膚透過性も高く、(A)成分の配合量が少なくても高い美白効果が得られることが期待される。また、皮膚刺激性も、(A)成分を含有しない比較例1と比べても、同じかより低い評価が得られた。
【0068】
次に、本発明の水中油型乳化組成物の処方例を示す。いずれも低温安定性に優れ、皮膚安全性が高く、美白効果・使用感に優れたものであることが期待される。
【0069】
処方例1(乳液) 質量%
ロドデンドロール 1.0
ロドデンドロール−D−ガラクトシド 2.0
イソステアリン酸プロピレングリコール*1 2.0
水素添加大豆リン脂質*5 1.0
コレステロール 0.5
精製オリーブスクワラン 1.0
流動パラフィン 1.0
濃グリセリン 1.0
エタノール 4.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
水酸化カリウム 0.1
キサンタンガム 0.1
メチルパラベン 0.1
火棘エキス*14 0.01
ベルゲニアクラシホリア根エキス*15 0.01
セイヨウニワトコ花エキス*16 0.01
精製水 残 量
*14 火棘(サントリー社製)
*15 厚葉岩白菜抽出物BG(丸善製薬社製)
*16 ニワトコ抽出液BG90(丸善製薬社製)
【0070】
処方例2(クリーム)
処方例1(乳液) 質量%
ロドデンドロール 1.0
ブチロイルロドデンドロール 1.0
オレイン酸プロピレングリコール*2 4.0
水素添加大豆リン脂質*2) 2.0
コレステロール 1.0
トリイソステアリン酸グリセリル 1.0
流動パラフィン 1.0
ジメチコン*10 1.0
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 2.0
ジグリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
水酸化カリウム 0.15
キサンタンガム 0.3
フェノキシエタノール 0.1
ホオノキ樹皮エキス*17 0.01
トウヒエキス*18 0.01
ジュズダマエキス*19 0.01
精製水 残 量
*17 ホオノキリキッドK(一丸ファルコス社製)
*18 トウヒリキッドB(一丸ファルコス社製)
*19 ヨクイニン抽出液BG−S(丸善製薬社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C)を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物
【請求項2】
さらに、(D)25℃における動粘度が150mm2/s以下の直鎖状又は分岐鎖状のジメチルポリシロキサンを含有する請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
(C)レシチン又はその水素添加物が、ホスファチジルコリンの含有率が70質量%以上である大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン水素添加物及び卵黄レシチン水素添加物からなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
成分(B)が、下記一般式(2)で示されるプロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化組成物。
【化2】

(式中、R2は、炭素数11〜23の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。)
【請求項5】
下記成分(A)を含有する水中油型乳化組成物において、成分(B)及び成分(C)を含有させることによる水中油型乳化組成物の低温安定性の改善方法。
(A)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール又はその誘導体
【化3】

(式中、R1は、水素原子、炭素数2〜20のアシル基、又は単糖類若しくは二糖類の糖残基を示す。)
(B)プロピレングリコールモノC10〜C26脂肪酸エステル
(C)レシチン又はその水素添加物

【公開番号】特開2012−224622(P2012−224622A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86755(P2012−86755)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】