説明

水中目標物検出装置、該検出装置に用いられる目標物検出方法及び目標物検出プログラム

【課題】水中目標物検出装置での目標物のアスペクト及び方位、全長の推定精度を向上させる。
【解決手段】発振器31から送波器32に駆動信号adが与えられ、音波パルスapが送波される。受波器33により、音波パルスapが目標物20に到達したときの反射波の直接波df,de及びマルチパス波mf,meが合わせて受波されて受信信号wrが出力される。受波指向性合成部34により、受信信号wrが入力され、目標物20を指向するように受波ビームが指向性合成されて合成受信信号trが出力される。マルチパス補正部35により、合成受信信号trから、予め保持されているマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を基にマルチパス波受信信号が除去され、直接波df,deに対応する直接波受信信号drが出力される。相関処理部36により、直接波受信信号drに基づいて、位相の相異なる直接波受信信号dr同士の相関値が算出されて目標物20が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中目標物検出装置、該検出装置に用いられる目標物検出方法及び目標物検出プログラムに係り、特に、海深が100m〜300m程度の浅海域で目標物のアスペクト及び方位、全長を検出する場合に用いて好適な水中目標物検出装置、該検出装置に用いられる目標物検出方法及び目標物検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浅海域(たとえば大陸棚など、海深が100m〜300m程度の領域)などにおいて水中目標物検出装置(Sound Navigation And Ranging、SONAR、以下、「ソーナ」ともいう)を使用して目標物を検出する場合、海面や海底などからの複雑な反射により、同ソーナが直接波以外の伝搬経路によるマルチパス波も受信することになる。たとえば図5に示すように、水中目標物検出装置(ソーナ)10が図示しない船舶などから海深Dの位置に係留され、同水中目標物検出装置10から距離Bの位置に存在する目標物20へ音波パルスapが送波される。目標物20は、長さLの長方形状となっている。そして、音波パルスapが目標物20に到達し、たとえば、左端部で反射したときの反射波の直接波df、右端部で反射したときの反射波の直接波de、及び同直接波df,deの伝搬経路以外の伝搬経路を経て海面SSで反射したマルチパス波mf,meが水中目標物検出装置10で受波される。
【0003】
図6は、図5中の水中目標物検出装置10の内部の電気的構成の例、及び目標物20を抽出して示す図である。
この水中目標物検出装置10は、発振器11と、送波器12と、受波器13と、受波指向性合成部14と、相関処理部15とから構成されている。送波器12と受波器13とは、兼用で一体化されたものでも良い。発振器11は、送波器12に第1の駆動信号adを与える。送波器12は、発振器11から第1の駆動信号adが与えられることにより、所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスapを送波する。受波器13は、図示しない制御部から第2の駆動信号が与えられることにより、所定の方向に受波ビームを形成し、送波器12から送波される音波パルスapが目標物20に到達して反射したときの反射波の直接波df,de及びマルチパス波mf,meを合わせて受波して受信信号wrを出力する。受波指向性合成部14は、受波器13から出力される受信信号wrを入力して、目標物20を指向するように上記受波ビームを指向性合成して合成受信信号trを出力する。
【0004】
相関処理部15は、受波指向性合成部14から出力される合成受信信号trを入力して、複数のビームに対して相関処理を行う。この相関処理では、2本のビームを相関処理した結果得られる位相差情報に基づいて、目標物20の概略のアスペクトや全長、方位などの推定が行われる。このとき、受波器13が直接波df,de及びマルチパス波mf,meを合わせて受信すると、直接波df,deのみのときよりも不安定な位相となり、目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定精度が劣化する。このため、マルチパス波mf,meを排除することにより、推定精度を向上させる必要があるが、この場合、同マルチパス波mf,meは直接波df,deよりも必ず遅れて到達するので、目標物20と水中目標物検出装置10との位置関係に基づいて同マルチパス波mf,meの伝搬経路を計算することにより伝搬遅延時間が求められ、この伝搬遅延時間に基づいてマルチパス波mf,meが排除される。
【0005】
上記のソーナの他、この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載された超音波水中探知装置がある。
この探知装置では、反射エコーを受信する時間の経過に伴って受信ビームの俯角及び指向角の両方が連動して変化し、探知距離の増加にしたがって指向角が小さくなり、水底からの反射エコーの影響を受けない。
【0006】
また、特許文献2に記載された信号検出方式では、複数の指向性パッシブソノブイが用いられる。信号位置算出回路により、2次元座標平面上において、音源ソノブイと各パッシブソノブイとの位置関係と伝搬時間から、各パッシブソノブイ毎に目標存在域が算出される。累加回路により、各目標存在域毎に受信反射音レベルが累加される。閾値処理回路により、各反響音累加レベルから閾値レベルを超えるものが検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−080147号公報
【特許文献2】特開平07−294640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、図6の水中目標物検出装置10では、目標物20の諸元(たとえば、深度、絶対位置情報など)が不明確なことが多く、正確なマルチパスの計算が行われないので、マルチパスが正確に排除されず、同目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定精度が不十分であるという課題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載された探知装置では、広範囲角かつ遠距離までの探知が可能であるが、反射エコーを受信する時間の経過に伴って受信ビームの俯角及び指向角の両方が連動して変化する構成とされているので、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0010】
特許文献2に記載された信号検出方式では、受信反射音が真の目標のものか海面や海底で反射したものかが区別され、海面や海底での反響音の検出が低減され、真の目標の反響音の検出確立が向上するが、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0011】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、マルチパス波の伝搬経路の計算処理などを行うことなく、目標物のアスペクトや方位、全長の推定精度が向上する水中目標物検出装置、該検出装置に用いられる目標物検出方法及び目標物検出プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、水中に配置され、該水中に存在する目標物を検出する水中目標物検出装置に係り、所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスを送波する送波器と、所定の方向に受波ビームを形成し、前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波の直接波及びマルチパス波を合わせて受波して受信信号を出力する受波器と、該受波器から出力される前記受信信号を入力して、前記目標物を指向するように前記受波ビームを指向性合成して合成受信信号を出力する受波指向性合成手段と、前記マルチパス波に対応するマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を予め保持し、該受波指向性合成部の前記合成受信信号から前記情報に基づいて特定された時間幅を有する前記マルチパス波受信信号を除去すると共に、前記直接波に対応する直接波受信信号を出力するマルチパス補正手段と、該マルチパス補正手段から出力される前記直接波受信信号に基づいて、位相の相異なる前記直接波受信信号同士の相関値を算出することにより前記目標物を検出する相関処理手段とを備えてなることを特徴としている。
【0013】
この発明の第2の構成は、水中に配置され、該水中に存在する目標物を検出する水中目標物検出装置に用いられる目標物検出方法に係り、送波器が、所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスを送波し、受波器が、所定の方向に受波ビームを形成し、前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波の直接波及びマルチパス波を合わせて受波して受信信号を出力し、受波指向性合成手段が、前記受波器から出力される前記受信信号を入力して、前記目標物を指向するように前記受波ビームを指向性合成して合成受信信号を出力する受波指向性合成処理と、マルチパス補正手段が、前記マルチパス波に対応するマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を予め保持し、前記合成受信信号から前記情報に基づいて特定された時間幅を有する前記マルチパス波受信信号を除去することにより、前記直接波に対応する直接波受信信号を出力するマルチパス補正処理と、相関処理手段が、前記マルチパス補正手段から出力される前記直接波受信信号に基づいて、位相の相異なる前記直接波受信信号同士の相関値を算出することにより前記目標物を検出する相関処理とを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の構成によれば、マルチパス波の伝搬経路の計算処理などを行うことがないため、目標物の深度などの情報がなくても、目標物のアスペクトや方位、全長の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態である水中目標物検出装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】マルチパス補正部35の処理を説明する模式図である。
【図3】相関処理部36の処理を説明する模式図である。
【図4】水中目標物検出装置30から目標物20までの距離と反射波全体の中で占める直接波の割合をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】関連技術に係る水中目標物検出装置が用いられる環境を示す模式図である。
【図6】図5中の水中目標物検出装置10の内部の電気的構成の例、及び目標物20を抽出して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記マルチパス補正手段(マルチパス補正部)が、当該水中目標物検出装置が配置される水中の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に対応して、上記合成受信信号の時間幅に対する上記マルチパス波受信信号の時間幅の割合が予め設定され、上記受波指向性合成手段から出力される上記合成受信信号のパルスの後端から、当該水中目標物検出装置の現在の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に応じて、対応する上記割合の時間幅の上記マルチパス波受信信号を除去する構成とされている水中目標物検出装置を実現する。
【0017】
また、上記相関処理部は、上記直接波受信信号同士の位相差に基づいて、上記目標物のアスペクト及び方位、全長の推定を行う構成とされている。また、水中目標物検出装置は、上記送波器に、上記音波パルスを発生するための駆動信号を与える発振器を有する。また、当該水中目標物検出装置は、深度がほぼ100m乃至300mの浅海域に配置され、上記マルチパス波は、上記送波器から送波される上記音波パルスが上記目標物に到達したときの反射波が上記浅海域の海面で反射して上記受波器に到達した音波である。
【実施形態】
【0018】
図1は、この発明の一実施形態である水中目標物検出装置の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この形態の水中目標物検出装置30は、図5中の水中目標物検出装置10に代えて設けられるものであり、同図に示すように、発振器31と、送波器32と、受波器33と、受波指向性合成部34と、マルチパス補正部35と、相関処理部36とから構成され、たとえば船舶などに係留されて水中に配置され、水中に存在する目標物20を検出する。発振器31は、送波器32に、音波パルスapを発生するための駆動信号adを与える。送波器32は、図示しない所定数の送波用振動子から構成され、発振器31から駆動信号adが与えられることにより、所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスapを送波する。
【0019】
受波器33は、図示しない所定数の受波用振動子から構成され、図示しない制御部から駆動信号が与えられることにより、所定の方向に受波ビームを形成し、送波器32から送波される音波パルスapが目標物20に到達し、左端部で反射したときの反射波の直接波df、右端部で反射したときの反射波の直接波de、及び同直接波df,deの伝搬経路以外の伝搬経路を経て海面SSで反射したマルチパス波mf,meを合わせて受波して受信信号wrを出力する。受波指向性合成部34は、受波器33から出力される受信信号wrを入力して、目標物20を指向するように受波ビームを指向性合成して合成受信信号trを出力する。
【0020】
マルチパス補正部35は、マルチパス波mf,meに対応するマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を図示しないテーブルなどに予め保持し、受波指向性合成部34の合成受信信号trから上記情報に基づいて特定された時間幅を有するマルチパス波受信信号を除去すると共に、直接波df,deに対応する直接波受信信号drを出力する。
特に、この実施形態では、マルチパス補正部35は、水中目標物検出装置30が配置される水中の深度、もしくは水中目標物検出装置30と目標物20との距離、もしくはその両方に対応して、合成受信信号trの時間幅に対する上記マルチパス波受信信号の時間幅の割合が予め設定されてテーブルなどに保持され、受波指向性合成部34から出力される合成受信信号trのパルスの後端から、当該水中目標物検出装置30の現在の深度、もしくは水中目標物検出装置30と目標物20との距離、もしくはその両方に応じて、対応する上記割合の時間幅の上記マルチパス波受信信号を除去することにより直接波受信信号drを出力する。水中目標物検出装置30の現在の深度は、操作者が海図などに基づいて深度情報を入力することにより、設定される。
【0021】
相関処理部36は、マルチパス補正部35から出力される直接波受信信号drに基づいて、位相の相異なる直接波受信信号dr同士の相関値を算出することにより目標物20を検出し、特に、この実施形態では、直接波受信信号dr同士の位相差に基づいて、目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定を行う。また、上記発振器31、受波指向性合成部34、マルチパス補正部35及び相関処理部36は、目標物検出プログラムに基づいて機能するコンピュータで構成されている。
【0022】
図2は、マルチパス補正部35の処理を説明する模式図、図3は、相関処理部36の処理を説明する模式図、及び図4が、水中目標物検出装置30から目標物20までの距離と反射波全体の中で占める直接波の割合をシミュレーションした結果を示す図である。
これらの図を参照して、この形態の水中目標物検出装置に用いられる目標物検出方法の処理内容について説明する。
この水中目標物検出装置30では、発振器31から送波器32に駆動信号adが与えられ、同送波器32により、所定の方向に送波ビームが形成されて一定の時間間隔で音波パルスapが送波される。そして、受波器33により、所定の方向に受波ビームが形成され、送波器32から送波される音波パルスapが目標物20に到達して反射したときの反射波の直接波df,de及びマルチパス波mf,meが合わせて受波されて受信信号wrが出力される。受波指向性合成部34により、受波器33から出力される受信信号wrが入力され、目標物20を指向するように受波ビームが指向性合成されて合成受信信号trが出力される(受波指向性合成処理)。マルチパス補正部35により、受波指向性合成部34の合成受信信号trから、予め保持されているマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を基にマルチパス波受信信号が除去されるため、直接波df,deに対応する直接波受信信号drが出力される(マルチパス補正処理)。相関処理部36により、マルチパス補正部35から出力される直接波受信信号drに基づいて、位相の相異なる直接波受信信号dr同士の相関値を算出することにより目標物20が検出される(相関処理)。
【0023】
上記マルチパス補正処理では、マルチパス補正部35により、水中目標物検出装置30が配置される水中の深度に対応して、合成受信信号trの時間幅に対する上記マルチパス波受信信号の時間幅の割合が予め設定され、受波指向性合成部34から出力される合成受信信号trのパルスの後端から、水中目標物検出装置30の現在の深度に対応する上記割合の時間幅の上記マルチパス波受信信号を除去することにより直接波受信信号drが出力される。この場合、たとえば図2に示すように、合成受信信号tr(エコー信号)は、時間G(ms)の直接波のみの範囲、時間J(ms)のマルチパス波のみの範囲、時間E(ms)の直接波を主体とし、マルチパス波も含まれる範囲、及び、時間F(ms)のマルチパスを主体とし、直接波も含まれる範囲から構成されているので、上記時間J(ms)のマルチパス波のみの範囲を上記マルチパス波受信信号として除去する。
【0024】
また、上記相関処理では、相関処理部36により、直接波受信信号dr同士の位相差に基づいて、目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定が行われる。この場合、たとえば図3に示すように、xy座標上の(0,0)が受波器33の位置、及び、同受波器33の正面がx軸方向を向いているとすると、同受波器33による受信音圧の波形の後端の不安定な部分を除いたレベルに基づいて方位及び距離が割り出され、xy軸上に目標物20のアスペクト及び方位、全長に対応するデータがプロットされる。これにより、マルチパス補正部35によるマルチパス補正処理を行わない場合に比較して、A%(たとえば、20%〜60%程度)除去された実際の目標物20の長さ(目標長)及びアスペクトのデータが得られる。
【0025】
水中目標物検出装置30を、深度がほぼ100m乃至300mの浅海域に配置した場合、マルチパス波mf,meは、送波器32から送波された音波パルスapが目標物20に到達して反射したときの反射波が上記浅海域の海面SSで反射して受波器33に到達した音波である。この場合、受波器33の指向角がたとえば40度のとき、図4中の直線Qに示すようになり、同受波器33に到達する反射波は、目標物20までの距離が長いほど少なくなる。一方、受波器33に到達する反射波全体の中で直接波の占める割合(エコー比)は、図4中の深度50m、深度70m、深度80m、深度100m及び深度150mの各特性曲線に示されるように、目標物20までの距離の変化に対して差が比較的少ない。これにより、マルチパス補正部35によるマルチパス補正処理を行う場合、水中目標物検出装置30の現在の深度に対応する割合の時間幅のマルチパス波受信信号を用いることにより、適切な直接波受信信号drが出力され、相関処理部36により、目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定が正確に行われる。また、水中目標物検出装置30と目標物20との距離についても同じことが当てはまり、水中目標物検出装置30と目標物20との距離に応じて、除去する時間幅を変化させれば、更に推定精度を向上させることができる。
【0026】
以上のように、この実施形態では、マルチパス補正部35により、受波指向性合成部34の合成受信信号trから、予め保持されているマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を基にマルチパス波受信信号が除去されるため、直接波df,deに対応する直接波受信信号drが出力され、相関処理部36により、位相の相異なる直接波受信信号dr同士の相関値を算出することにより目標物20が検出されるので、マルチパス波mf,meの伝搬経路の計算処理などを行うことなく、目標物20のアスペクト及び方位、全長の推定が正確に行われる。
【0027】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、水中目標物検出装置30は、船舶などに係留されているとは限らず、水中航走体に設けられていても良い。また、送波器32及び受波器33以外の、発振器31、受波指向性合成部34、マルチパス補正部35及び相関処理部36は、船舶などに搭載されていても良い。また、送波器32と受波器33は別々ではなく、両者が兼用された一体化されたものでも良い。また、水中目標物検出装置30が配置される水中の深度は、操作者が海図などに基づいて深度情報を入力する他、送波器32又は受波器33に深度計を付加して計測するようにしても良い。マルチパス波mf,meは、海面SSで反射した波であるが、海底で反射した波を含めても良い。ただし、海底での反射率は、海面反射率に比較して小さいので、含まれていなくても、上記実施形態とほぼ同様の作用、効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、水中や水底に存在する目標物を検出する水中目標物検出装置全般に適用でき、特に、大陸棚など、深度がほぼ100m乃至300mの浅海域で用いて有効である。また、送波ビーム及び受波ビームの指向性が、40度程度以下での水中目標物検出装置で、きわめて有効である。
【符号の説明】
【0029】
31 発振器
32 送波器
33 受波器
34 受波指向性合成部(受波指向性合成手段)
35 マルチパス補正部(マルチパス補正手段)
36 相関処理部(相関処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置され、該水中に存在する目標物を検出する水中目標物検出装置であって、
所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスを送波する送波器と、
所定の方向に受波ビームを形成し、前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波の直接波及びマルチパス波を合わせて受波して受信信号を出力する受波器と、
該受波器から出力される前記受信信号を入力して、前記目標物を指向するように前記受波ビームを指向性合成して合成受信信号を出力する受波指向性合成手段と、
前記マルチパス波に対応するマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を予め保持し、前記受波指向性合成手段の前記合成受信信号から前記情報に基づいて特定された時間幅を有する前記マルチパス波受信信号を除去すると共に、前記直接波に対応する直接波受信信号を出力するマルチパス補正手段と、
該マルチパス補正手段から出力される前記直接波受信信号に基づいて、位相の相異なる前記直接波受信信号同士の相関値を算出することにより前記目標物を検出する相関処理手段とを備えてなることを特徴とする水中目標物検出装置。
【請求項2】
前記マルチパス補正手段は、
当該水中目標物検出装置が配置される水中の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に対応して、前記合成受信信号の時間幅に対する前記マルチパス波受信信号の時間幅の割合が予め設定され、前記受波指向性合成手段から出力される前記合成受信信号のパルスの後端から、当該水中目標物検出装置の現在の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に応じて、対応する前記割合の時間幅の前記マルチパス波受信信号を除去する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の水中目標物検出装置。
【請求項3】
前記相関処理部は、
前記直接波受信信号同士の位相差に基づいて、前記目標物のアスペクト及び方位、全長の推定を行う構成とされていることを特徴とする請求項1又は2記載の水中目標物検出装置。
【請求項4】
前記送波器に、前記音波パルスを発生するための駆動信号を与える発振器を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の水中目標物検出装置。
【請求項5】
当該水中目標物検出装置は、深度がほぼ100m乃至300mの浅海域に配置され、
前記マルチパス波は、
前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波が前記浅海域の海面で反射して前記受波器に到達した音波であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水中目標物検出装置。
【請求項6】
水中に配置され、該水中に存在する目標物を検出する水中目標物検出装置に用いられる目標物検出方法であって、
送波器が、所定の方向に送波ビームを形成して一定の時間間隔で音波パルスを送波し、
受波器が、所定の方向に受波ビームを形成し、前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波の直接波及びマルチパス波を合わせて受波して受信信号を出力し、
受波指向性合成手段が、前記受波器から出力される前記受信信号を入力して、前記目標物を指向するように前記受波ビームを指向性合成して合成受信信号を出力する受波指向性合成処理と、
マルチパス補正手段が、前記マルチパス波に対応するマルチパス波受信信号の時間幅を特定する情報を予め保持し、前記合成受信信号から前記情報に基づいて特定された時間幅を有する前記マルチパス波受信信号を除去することにより、前記直接波に対応する直接波受信信号を出力するマルチパス補正処理と、
相関処理手段が、前記マルチパス補正手段から出力される前記直接波受信信号に基づいて、位相の相異なる前記直接波受信信号同士の相関値を算出することにより前記目標物を検出する相関処理とを行うことを特徴とする目標物検出方法。
【請求項7】
前記マルチパス補正処理では、
前記マルチパス補正手段が、当該水中目標物検出装置が配置される水中の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に対応して、前記合成受信信号の時間幅に対する前記マルチパス波受信信号の時間幅の割合を予め設定し、前記受波指向性合成手段から出力される前記合成受信信号のパルスの後端から、当該水中目標物検出装置の現在の深度、もしくは当該水中目標物検出装置と目標物との距離、もしくはその両方に応じて、対応する前記割合の時間幅の前記マルチパス波受信信号を除去することを特徴とする請求項6記載の目標物検出方法。
【請求項8】
前記相関処理では、
前記相関処理部が、前記直接波受信信号同士の位相差に基づいて、前記目標物のアスペクト及び方位、全長の推定を行うことを特徴とする請求項6又は7記載の目標物検出方法。
【請求項9】
発振器が、前記送波器に前記音波パルスを発生するための駆動信号を与えることを特徴とする請求項6、7又は8記載の目標物検出方法。
【請求項10】
当該水中目標物検出装置を、深度がほぼ100m乃至300mの浅海域に配置し、
前記マルチパス波が、前記送波器から送波される前記音波パルスが前記目標物に到達したときの反射波が前記浅海域の海面で反射して前記受波器に到達した音波であることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載の目標物検出方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1乃至5のいずれか一に記載の水中目標物検出装置として機能させることを特徴とする目標物検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−103054(P2012−103054A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250243(P2010−250243)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】