説明

水冷式ストーカ炉

【課題】 高温還元処理に適用可能な構造のストーカ炉とし、ガス化溶融炉のガス化炉としても使用できるようにした水冷式ストーカ炉を提供する。
【解決手段】 水冷用内部空間を有するケーシングフレーム41と、ケーシングフレーム41と接続され水冷用内部空間と連通する内部流路を有するロッドフレーム42とを備えるフレーム一体型の火格子を有し、ロッドフレーム42は、炉外へ延設されて、内部流路の流水口及び排水口を炉外に設ける。可動火格子4aを往復移動させるための駆動部は炉外に設置し、該駆動部をロッドフレーム42と炉外で駆動連結する。ロッドフレーム42は、ケーシングフレーム41の後端部側方に延びて、炉体側壁部5に形成された通孔を貫通する。炉体側壁部5は、ロッドフレーム42が貫通する通孔を塞いだ状態でスライド可能に支持するスライドシール機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を高温還元処理するのに適した水冷式ストーカ炉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ごみの熱分解ガス化溶融炉の開発が積極的に進められている。熱分解ガス化溶融炉は、ごみ等の被処理物を500℃程度の高温還元雰囲気で蒸し焼きにすることにより、可燃性ガスとチャーと無機物に熱分解され、発生した熱分解ガスは通常、ガス化溶融炉の燃料として使用され、1300℃以上の高温で別ラインから供給されたチャーと共に燃焼させ、灰分をスラグ化させる。
【0003】
熱分解ガス化溶融炉の一形式として、ガス化炉と溶融炉とを組み合わせたものがあり、例えば、ロータリーキルン炉のような熱分解ドラムで発生した熱分解ガスを、後段の高温燃焼溶融炉で別ラインから供給されたチャーと共に燃焼させ、灰分をスラグ化させるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ロータリーキルン炉は、傾斜させた熱分解ドラムを回転させて被処理物を搬送するため、被処理物は落下衝撃を受ける。この衝撃により、脆い被処理物の場合は熱分解ドラム内で形状が変化したり、粉砕されてしまう。処理後の被処理物の形状を問わない場合は問題無いが、例えば、粉体をペレット状に加工した製鋼ダストのように、変形や粉砕を避けたい被処理物に対して適さない。
【0005】
そこで、ロータリーキルン炉に代えて、緩やかな搬送と適度な撹拌機能を有し、被処理物の性状を問わないストーカ式焼却炉のようなストーカを備える炉(以下、「ストーカ炉」と言う。)を利用することが考えられる。
【0006】
そのようなストーカ炉によって高温還元処理を行おうとした場合、高温の低酸素ガスを火格子下部から供給することが有効と考えられる。
【0007】
しかしながら、一般に、従来のストーカ式焼却炉は、火格子下部から供給される燃焼空気は高くても300℃程度であり、火格子上部表面での固体燃焼を目的として設計されているため、火格子裏面が500℃以上の高温に耐えるような設計になっていない。発熱量が高い燃料に対して用いられる水冷式火格子(例えば、特許文献2〜6)であっても、火格子裏面が500℃以上の高温に耐え得る設計になっていない。そのため、従来のストーカ式焼却炉を応用して高温還元処理を行おうとした場合には、火格子を支持しているフレームが熱的損傷を受けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−27411号公報
【特許文献2】特許第3715430号公報
【特許文献3】特許第2831958号公報
【特許文献4】特許第3990463号公報
【特許文献5】特許第3961790号公報
【特許文献6】特許第3838639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高温還元処理に適用可能な構造のストーカ炉とし、ガス化溶融炉のガス化炉としても使用できるようにした水冷式ストーカ炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、水冷用内部空間を有するケーシングフレームと、該ケーシングフレームから炉外へ延びるとともに前記水冷用内部空間と連通する内部流路を有するロッドフレームとを備えるフレーム一体型の火格子を有し、前記ロッドフレームは、前記内部流路の流水口及び排水口が炉外に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る水冷式ストーカ炉は、一形態において、前記火格子が可動火格子であって、該可動火格子を往復移動させるための駆動部が炉外に設置されており、前記駆動部が前記ロッドフレームと駆動連結されている。
【0012】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記ロッドフレームは、前記ケーシングフレームの後端部側方に延びて、炉体側壁部に形成された通孔を貫通して配置され、前記通孔は、前記ロッドフレームの往復移動を許容するように構成されており、前記炉体側壁部は、前記ロッドフレームと連結されるとともに前記通孔を塞いだ状態でスライド可能に支持されたスライドシール機構が設けられている。
【0013】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、複数の前記火格子のロッドフレームが、炉外に配置された共通の中間連結体を介して前記駆動部に接続されている。
【0014】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記炉体側壁部に水冷ジャケットが埋設され、該水冷ジャケットに前記通孔が形成されている。
【0015】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記火格子が、前記水冷用内部空間を、火格子先端部内部で連通する上下2室に分ける内壁を備え、下室から上室へ冷却水が流れるように構成されている。
【0016】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記火格子が、該火格子の上面および下面の少なくとも一方の面が、不定形耐火物若しくは着脱可能に取り付けられた耐火セラミックプレートにより被覆されている。
【0017】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記火格子は、前記ケーシングフレームの上下面の少なくとも一方面に火格子の前後方向に並列して延びる複数条の凸条を有し、該凸条の内面が前記水冷用内部空間の一部を形成する凹条となっており、前記耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物が前記並列する凸条間に埋設されている。
【0018】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記火格子が可動火格子と固定火格子であって、前記固定火格子上を前記可動火格子が摺動するように可動火格子と固定火格子とが交互に配置され、前記火格子の先端部下面に接触子が突設され、前記接触子は、前記固定火格子の凸条上を摺動するように配設されている。
【0019】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、酸素濃度1%以下の高温燃焼排ガスを前記火格子下部に供給する手段を備えている。
【0020】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記高温燃焼ガスが500〜1300℃である。
【0021】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記火格子下部の耐火壁で囲まれた下部スペースにバーナが設置されている。
【0022】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉は、他の一形態において、前記高温燃焼ガスによる被処理物の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉を更に備え、該燃焼炉から排出された高温燃焼排ガスを前記火格子下部へ供給するように構成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る水冷式ストーカ炉は、水冷用内部空間を有するケーシングフレームと、該ケーシングフレームから炉外へ延びるとともに前記水冷用内部空間と連通する内部流路を有するロッドフレームとを備えるフレーム一体型の火格子と、を有し、前記ロッドフレームは、前記内部流路の流水口及び排水口が炉外に設けられているため、炉内にある火格子の上下面およびロッドフレームが水冷されることにより、火格子下部から供給される500℃以上の高温ガスに対する耐熱性を備えることができる。
【0024】
また、可動火格子を往復移動させるための駆動部が炉外に設置され、前記駆動部と前記ロッドフレームとを炉外で駆動連結することにより、駆動部が高温ガスにさらされることがない。
【0025】
また、前記ロッドフレームは、前記ケーシングフレームの後端部側方に延びて、炉体側壁部に形成された通孔を貫通して配置され、前記通孔は、前記ロッドフレームの往復移動を許容するように構成されており、前記炉体側壁部は、前記ロッドフレームと接続されるとともに前記通孔を塞いだ状態でスライド可能に支持されたスライドシール機構が設けられていることにより、通孔からの高温ガスの漏出を防止しつつ、炉外において冷却水をロッドフレームへ供給し又はロッドフレームから排出することができる。
【0026】
また、複数の前記火格子の前記ロッドフレームが炉外に配置された共通の中間連結体を介して前記駆動部に接続されていることにより、複数の火格子を共通の駆動部により一括駆動し、前記中間連結体が高温ガスに晒されることがない。
【0027】
また、前記炉体側壁部に水冷ジャケットを埋設し、該水冷ジャケットに前記通孔を形成することにより、通孔付近を強制的に冷却し、通孔付近の耐火性能を損なわないようにすることができる。
【0028】
また、前記火格子が、前記水冷用内部空間を、火格子先端部内部で連通する上下2室に分ける内壁を備え、下室から上室へ冷却水が流れるように構成することにより、温度の高い火格子下面を優先的に冷却することができる。
【0029】
また、前記火格子の上面を、耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物により被覆することにより、被処理物の冷却を防ぐ。また、前記火格子の下面を、耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物により被覆することにより、火格子下部からの高温ガスが供給された場合にその高温ガスの温度低下を軽減させることができる。
【0030】
また、耐火セラミックプレートを着脱可能とすることにより、耐火セラミックプレートを交換するだけで、長期間性能を維持できる。
【0031】
また、前記火格子が、前記ケーシングフレームの上下両面に火格子の前後方向に延びる複数条の凸条を有し、該凸状の内面が前記水冷用内部空間の一部を形成する凹条となっており、前記耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物を前記凸条間に埋設することにより、放熱性が向上し、その結果、耐熱性が向上する。
【0032】
また、前記火格子が、可動火格子と固定火格子であって、前記固定火格子上を前記可動火格子が摺動するように可動火格子と固定火格子とが交互に配置され、前記火格子の先端部下面に接触子が突設され、前記接触子を、前記固定火格子の凸条上を摺動するように配設することにより、耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物による被覆への衝撃を無くして耐火セラミクプレート若しくは不定形耐火物による被覆の割れや損耗を防止若しくは軽減することができる。
【0033】
また、前記火格子下部に酸素濃度1%以下の高温燃焼排ガスを供給する手段を備えることにより、火格子上の被処理物を高温還元処理することが可能となる。
【0034】
また、前記火格子下部の耐火壁で囲まれた下部スペースにバーナを設置することで、被処理物の熱分解に必要な低酸素濃度で高温の燃焼排ガスを、火格子下部に供給することができる。火格子下部に供給された燃焼排ガスは、火格子間を通って火格子上に上昇し、被処理物を熱分解する。
【0035】
また、前記高温燃焼排ガスによる被処理物の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉を備え、該燃焼炉から排出された高温燃焼排ガスを前記火格子下部へ供給するように構成することにより、熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る水冷式ストーカ炉の内部構造を示す側面図である。
【図2】図1の水冷式ストーカ炉の後段に燃焼炉を設置した例を示す概略構成図である。
【図3】火格子の一実施形態を示す、図5のIII−III断面図である。
【図4】図3の火格子であって、図5のIV−IV断面図である。
【図5】図3の火格子であって、図3のV−V断面図である。
【図6】図3の火格子の一部切り欠き斜視図である。
【図7】図1の水冷式ストーカ炉の要部を拡大して示す、図8のVII−VII断面図である。
【図8】図1の水冷式ストーカ炉の外観を示す側面図である。
【図9】図1の水冷式ストーカ炉の構成要素であるスライドシール機構を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る水冷式ストーカ炉の第1実施形態について、以下に図1〜9を参照して説明する。
【0038】
本発明に係る水冷式ストーカ炉1は、図1に示すように、被処理物を投入するための投入口2、投入された被処理物を押し出すためのプッシャー3、プッシャー3によって押し出された被処理物を搬送する火格子4等を備えている。火格子4は、可動火格子4aと固定火格子4bとが傾斜状に且つ交互に配置されている。可動火格子4aが傾斜方向に往復移動することにより、被処理物は順次下流側へ搬送される。なお、可動火格子と固定火格子を水平方向に向けて、交互に階段状に配置することもできる。
【0039】
図示例の水冷式ストーカ炉1は、被処理物の高温還元処理に適した構造のストーカ炉であり、従来のストーカ式焼却炉のように火格子上の被処理物に対して火炎を放射する始動用バーナは備えておらず、火格子4の下部スペースを形成する風箱11内に火炎を放射するバーナ12が設置されている。風箱11は、高温燃焼排ガスGを火格子4の下部全体に供給可能なように上面開口の箱型をしており、耐火物によって内面ライニングされている。
【0040】
バーナ12は、燃料を燃焼させることにより低酸素濃度の高温燃焼排ガスを発生させ、発生させた高温燃焼排ガスGを火格子4の下部に供給する。火格子4の下部に供給された低酸素濃度の高温燃焼排ガスは、可動火格子4aと固定火格子4bとの間の間隙を通って火格子4上の被処理物を高温還元雰囲気で蒸し焼きにする。
【0041】
バーナ12の燃料としては、例えば、化石燃料、COGガス、バイオガス、あるいは、図1に破線Hdで示すように、被処理物の高温還元処理によって生じた熱分解ガス(乾留ガス)等が使用可能である。
【0042】
火格子4の下部に供給される高温燃焼ガスGは、温度制御手段13により、500〜1300℃の範囲内の所定温度に制御され得る。温度制御手段13は、例えば、火格子4の下面に取り付けられた温度センサSによって検出された温度に基づき、炉内加熱用バーナ12の燃料噴射量を制御するように構成することができる。
【0043】
また、火格子4の下部から火格子4の上部に供給する高温燃焼排ガスは、好適には、酸素濃度1%以下に制御されて供給される。例えば、火格子4の下部に供給される前に高温燃焼排ガスの酸素濃度をレーザー式酸素濃度計等の酸素濃度計(図示せず。)によって検出し、検出された酸素濃度が1%を超える場合には、バーナ12に供給される燃焼用空気の空気比、若しくは、燃料ガス及び燃焼用空気の空燃比を調整することにより、酸素濃度を1%以下に制御することができる。
【0044】
変更態様として、図2に示すように、水冷式ストーカ炉1の炉内上部に、高温還元処理によって生じた熱分解ガスを燃焼させるための燃焼炉20を設けることができる。燃焼炉20は、助燃バーナ20aを備え、熱分解ガスを燃焼させることで被処理物を上方からも加熱できる。
【0045】
燃焼炉20から排出される高温燃焼排ガスGは、高温バグフィルターBFを介し、送風機Fによって、ストーカ炉1の風箱11内に供給するようにしても良い。燃焼炉20から排出される高温燃焼ガスGの酸素濃度は0〜2%程度であり、酸素濃度が1%を超える場合には、例えば、バーナ12に供給する燃焼用空気量を減らすことにより、バーナ12の燃焼によって酸素を消費させて酸素濃度を下げることができる。
【0046】
なお、図示しないが、高温燃焼排ガスによる被処理物の熱分解ガスを燃焼させるための燃焼炉20を、ストーカ炉とは別体として炉外に設置することもできるし、バーナ等を備える加熱装置をストーカ炉とは別体として炉外に設置して、該加熱装置によって燃焼炉20からの排ガスを加熱し、火格子下部に供給する構成とすることも可能である。
【0047】
火格子4下部に供給される燃焼排ガスの高温に耐えるため、可動火格子4a及び固定火格子4bは、図3〜図6に示すように、水冷用内部空間C1を有する直方体をしたケーシングフレーム41と、ケーシングフレーム41と接続され水冷用内部空間C1と連通する内部流路C2を有するロッドフレーム42とを備えるフレーム一体型に構成されており、自重や駆動力等による機械的ストレスに耐え得る構造体となっている。
【0048】
ケーシングフレーム41は、耐熱性合金鋼や耐熱性鋳鋼等の公知の耐熱鋼材により形成され得るが、高温での耐摩耗性を高めた耐熱性鋳鋼によって形成することが好ましい。
【0049】
ロッドフレーム42は、図7を参照すれば、可動火格子4a及び固定火格子4bの各々の後部両側面に接続されて、炉体側壁5を貫通して炉外へ延設されており、内部流路C2の流水口42a及び排水口42bが炉外において配設されている。これら流水口42aおよび排水口42bにそれぞれ、フレキシブルホースFが接続されて、冷却水が給水および排水される。冷却水は、ケーシングフレーム41内に気泡が滞留しないような流量及び圧力が付与され得る。ロッドフレーム42は、合金鋼、鋳鋼等によって形成することができる。
【0050】
ロッドフレーム42の一端部の外周面に雄螺子部を設けるとともにケーシングフレーム41に該雄螺子部と螺合する雌螺子部を設けて該雌螺子部に前記雄螺子部を螺入することにより、ロッドフレーム42をケーシングフレーム41に固定することができるが、ボルト等の締結具を用いてロッドフレーム42をケーシングフレーム41に固定し、あるいは、鋳造等によりロッドフレーム42とケーシングフレーム41を一体成型することもできる。
【0051】
可動火格子4a及び固定火格子4bは、図3〜図7に示すように、ケーシングフレーム41内において上壁及び底壁と中間を平行に延びる内壁41mによって、水冷用内部空間C1が火格子先端部内部で連通する上室と下室の2室に分けられている。
【0052】
ケーシングフレーム41に接続された一方のロッドフレーム42は水冷用内部空間C1の下室とのみ内部連通しており、ケーシングフレーム41に接続された他方のロッドフレーム42は、水冷用内部空間C1の上室とのみ内部連通している。具体的には、図6及び図7に示されているように、水冷用内部空間C1の上室後端部のロッドフレーム接続部位は流入側端が閉じられており、水冷用内部空間C1の下室後端部のロッドフレーム接続部位は流出側端が閉じられている。したがって、流入側のロッドフレーム42を通じて流入する冷却水は水冷用内部空間C1の下室へ流入し、次いで水冷用内部空間C1の上室へ流れ、流出側のロッドフレーム42を通じて排出される。
【0053】
可動火格子4aおよび固定火格子4bは、それらの上面および下面が耐火セラミックプレート4cにより被覆され得る。火格子下部へ高温燃焼排ガスを供給することにより火格子4の下面の方が上面より高温となるため、火格子4の下面のみを耐火セラミックプレート4cにより被覆することもできる。
【0054】
耐火セラミックプレート4cは、ボルト、アンカー金具、或いは、その他の図示しない締結具によって、ケーシングフレーム41に対して着脱可能に取り付けられ得る。
【0055】
可動火格子4a及び固定火格子4bは、ケーシングフレーム41の上面および下面に前後方向に並列に延びる複数条の凸条41pが形成されている。凸条41pの内面は、図5に示すように水冷用内部空間C1の一部を形成する凹条となっており、冷却水が流れることができるようになっている。耐火セラミックプレート4cは、並列して隣り合う凸条41pと凸条41pの間に嵌入されるようにして埋設されている。ケーシングフレーム41の上面を被覆する耐火セラミックプレート4cは、被処理物の冷却を低減する。また、ケーシングフレーム41の下面を被覆する耐火セラミックプレート4cは、火格子下部からの高温ガスの温度低下を低減する。
【0056】
なお、耐火セラミックプレート4cに代えて、不定形耐火物を隣り合う凸条41pと凸条41pの間に埋設することにより被覆することもできる。不定形耐火物としてはキャスタブル耐火物やプラスチック耐火物を例示することができ、これらの耐火物を、吹き付け、塗り込み、圧入等の施工によって、隣り合う凸条41pと凸条41pの間に埋設することにより、ケーシングフレーム41を被覆することができる。
【0057】
火格子4の先端部下面に接触子4dが突設されている。接触子4dは、火格子4の凸条41pの上を摺動するように配設されている。接触子4dは、ケーシングフレーム41と同材料、例えば耐熱性鋳鋼によって形成することができ、ケーシングフレーム41と一体成型とすることもできる。接触子4dが、冷却水によって冷却されている凸条41p上を摺動することにより、接触子4d及びケーシングフレーム41の摩耗が減少し得る。なお、接触子4dにより、可動火格子4aと固定火格子4bとの間に間隙が生じ、この間隙を通じて火格子4の下部から上部へガスGが抜け出ることができる(図4参照)。
【0058】
複数の可動火格子4aのロッドフレーム42が、中間連結体6を介して、炉外に設置された駆動部7と駆動連結されている。駆動部7は、一般には油圧シリンダーが用いられる。この駆動部7を構成する油圧シリンダーは、軸7aに揺動自在に取り付けられている。
【0059】
中間連結体6は、図示例では、駆動部7を構成する油圧シリンダーのピストンロッド7bに連結されたリンク機構6aと、リンク機構6aと接続された連結板6bと、連結板6bの上縁に突設された複数の軸受け部6cと、を備えている。連結板6bは、炉外において炉体側壁5と間隔をおいて平行に配置されるとともに、ローラ部材8を備え、ローラ部材8が炉体側壁5に突設された傾斜ガイド5a上を移動可能となっている。軸受け部6cには、可動火格子4aのロッドフレーム42が回転可能に連結されている。
【0060】
駆動部7を構成している油圧シリンダーのピストンロッド7bがシリンダー7cから突出すると、リンク機構6aを介して連結板6bが傾斜ガイド5aに案内されて斜め上方へスライドし、それに伴って、複数の可動火格子4aが斜め上方へ同時に移動する。その逆に、ピストンロッド7bがシリンダー7c内に退動すれば、可動火格子4aが斜め下方へ移動する。こうして、可動火格子4aが斜め方向に往復移動する。
【0061】
炉体側壁5は、内側から順に、耐火ライニング層5b、断熱材層5c、保温材層5dを備えている。図7,8を参照すれば、炉体側壁5に水冷ジャケット9が埋設されている。水冷ジャケット9は、図示しない給排水部から冷却水が供給、排出されて、冷却水が水冷ジャケット9の内部空間を強制循環している。ロッドフレーム42は、水冷ジャケット9を貫通している。
【0062】
可動火格子4aのロッドフレーム42が貫通する通孔5eは、図9に示すように、可動火格子4aの傾斜方向の往復移動を可能にするために斜め方向に延びる長孔に形成されている。なお、通孔5eは、可動火格子4aのロッドフレーム42の往復移動を許容する開口面積を有しておればよく、その形状は長孔に限られない。固定火格子4bのロッドフレーム42が貫通する通孔5f(図7参照)は丸孔とされ得る。
【0063】
可動火格子4aのロッドフレーム42が貫通する通孔5eから高温ガスが漏れないように、図7及び図9に示すように、スライドシール機構10が設けられている。このスライドシール機構10は、図示例では、ロッドフレーム42に連結されたスライドプレート10aと、通孔5eを囲むようにして炉体側壁5に固定されてスライドプレート10aを摺動自在に受けるガイド10bと、スライドプレート10aをガイド10bへ押圧するローラ10cと、を備えている。スライドプレート10aは、ローラ10cに押圧されることにより通孔5eを塞いだ状態で図9の実線位置と仮想線位置との間をスライドする。なお、ガスシール性を高めるために、ロッドフレーム42に、回転シール機構等の適宜シール機構を更に付加することができる。
【0064】
上記説明から明らかなように、本発明に係る水冷式ストーカ炉によれば、従来のように鋳鋼製の火格子を金属製のフレームに支持させる構成と異なり、火格子4がケーシングフレーム41とロッドフレーム42とを備えたフレーム一体型となっていて、炉体側壁を貫通して延びるロッドフレーム42が炉外から冷却水を供給され炉外へ冷却水を排水することにより、火格子4の下部から高温の低酸素排ガスを投入することができる。
【0065】
また、本発明に係る水冷式ストーカ炉によれば、ロータリーキルン炉のように被処理物の落下撹拌を伴わないため、被処理物の性状を問わずに処理可能である。また、被処理物はロータリーキルン炉や回転炉床炉のようにバーナ火炎に曝されないため、OHラジカルによる被処理物の酸化反応を防止でき、質の高い還元処理が可能となる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、変更可能である。
【0067】
例えば、火格子を各火格子が水平配置された階段状に配置して、流入側ロッドフレームおよび流出側ロッドフレームを火格子の上流側壁に接続するとともに、それらのロッドフレームを炉体上流側壁(前壁)を貫通させ、炉外において流入側ロッドフレームに冷却水を供給するとともに流出側ロッドフレームから排水させる構成とすることも可能である。斯かる構成により、可動火格子のロッドフレームは一定の軸線を往復移動するため、スライドシール機構を省略することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る水冷式ストーカ炉は、高温還元処理の他、汚泥や都市ごみ等の有機系廃棄物の炭化処理、高温の熱風で乾燥する乾燥炉、焼結炉、焼成炉、汚染土壌処理などにも利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 水冷式ストーカ炉
4 火格子
41 ケーシングフレーム
42 ロッドフレーム
5 炉体側壁
6 中間連結体
9 水冷ジャケット
10 スライドシール機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷用内部空間を有するケーシングフレームと、該ケーシングフレームから炉外に延びるとともに前記水冷用内部空間と連通する内部流路を有するロッドフレームとを備えるフレーム一体型の火格子を有し、
前記ロッドフレームは、前記内部流路の流水口及び排水口が炉外に設けられていることを特徴とする水冷式ストーカ炉。
【請求項2】
前記火格子が可動火格子を含み、該可動火格子を往復移動させるための駆動部が炉外に設置されており、前記駆動部が前記ロッドフレームと炉外で駆動連結されていることを特徴とする請求項1に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項3】
前記ロッドフレームは、前記ケーシングフレームの後端部側方に延びて、炉体側壁部に形成された通孔を貫通して配置され、
前記通孔は、前記ロッドフレームの往復移動を許容するように構成されており、
前記炉体側壁部は、前記ロッドフレームと連結されるとともに前記通孔を塞いだ状態でスライド可能に支持されたスライドシール機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項4】
複数の前記火格子のロッドフレームが、炉外に配置された共通の中間連結体を介して前記駆動部に接続されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項5】
前記炉体側壁部に水冷ジャケットが埋設され、該水冷ジャケットに前記通孔が形成されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項6】
前記火格子は、前記水冷用内部空間を、火格子先端部内部で連通する上下2室に分ける内壁を有し、下室から上室へ冷却水が流れるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項7】
前記火格子は、該火格子の上面および下面の少なくとも一方の面が、耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物により被覆されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項8】
前記耐火セラミックプレートは、着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項9】
前記火格子は、前記ケーシングフレームの上下面の少なくとも一方面に火格子の前後方向に並列して延びる複数条の凸条を有し、該凸条の内面が前記水冷用内部空間の一部を形成する凹条となっており、前記耐火セラミックプレート若しくは不定形耐火物が前記並列する凸条間に埋設されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項10】
前記火格子は、可動火格子と固定火格子であって、前記固定火格子上を前記可動火格子が摺動するように可動火格子と固定火格子とが交互に配置され、前記火格子の先端部下面に接触子が突設され、前記接触子は、前記固定火格子の凸条上を摺動するように配設されていることを特徴とする請求項9に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項11】
酸素濃度1%以下の高温燃焼排ガスを前記火格子の下部に供給する手段を備えることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項12】
前記火格子の下部に供給する高温燃焼排ガスが500〜1300℃であることを特徴とする請求項11に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項13】
前記火格子下部の耐火壁で囲まれた下部スペースにバーナが設置されていることを特徴とする請求項11または12に記載の水冷式ストーカ炉。
【請求項14】
前記高温燃焼排ガスによる被処理物の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉を更に備え、該燃焼炉から排出された燃焼排ガスを前記火格子下部へ供給するように構成されていることを特徴とする請求項11〜13の何れかに記載の水冷式ストーカ炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−175154(P2010−175154A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18929(P2009−18929)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】