説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】高温下で不純物イオンのみを選択的に除去できる脱塩処理装置を用いることにより、不純物イオン脱塩浄化負荷を軽減し、ブローダウン水の冷却操作に伴う熱損失の軽減を図るとともに、アンモニア等の薬剤消費を抑制する。
【解決手段】アンモニアを含有する被処理水12を、一対の隔膜14と前記一対の隔膜14の外側に対向配置される電極17に直流電圧を印加する脱塩装置11により処理する水処理方法において、前記被処理水12を100℃以上で処理することにより、不純物イオン成分が除去されたアンモニアが濃縮された処理水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを冷却水中に含有する原子力発電プラントや火力発電プラントにおける水処理技術に係り、特に加圧水型原子力発電所の2次系や火力発電所の系統水における水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に加圧水型発電所では、蒸気発生器で加圧水型原子炉1次系とその2次系とに分かれており、原子炉1次系の原子炉で発生した高温高圧水を蒸気発生器で熱交換し原子炉2次系で蒸気を発生させている。加圧水型原子炉2次系では蒸気発生器で発生した蒸気を蒸気タービンに送り、この蒸気タービンをタービン駆動させて発電をしている。
【0003】
蒸気タービンを駆動して膨張した蒸気は続いて復水器に導入され、復水器内で冷却されて凝縮し復水となる。この復水は、必要に応じて復水脱塩器でイオン交換樹脂等によるイオン除去の脱塩処理を行なっており、その後、発電プラント系統のヒータで加熱されて蒸気発生器に供給される。
【0004】
蒸気発生器に供給される水は発電プラント系統の原子炉2次系系統内の構造材(配管や機器)の腐食抑制の観点から薬剤注入物質が注入される。このうち、pH調整剤としてアンモニアやアミン化合物、脱酸素剤としてヒドラジンなどが用いられる。
【0005】
一方、蒸気発生器では、発電プラント系統である原子炉2次系系統内に持ち込まれたイオン等の不純物や腐食生成物が濃縮されるため、蒸気発生器内の伝熱管の腐食や伝熱性低下を起こす要因となっている。このため、蒸気発生器内の水の一部を排出(ブローダウン)する操作が行なわれている。
【0006】
蒸気発生器からのブローダウン水は、復水脱塩器又はブローダウン水排出経路に設けられたブローダウン水処理装置等の既設の水質浄化設備に導かれて浄化される。ブローダウン水に含まれる薬剤注入物質であるpH調整剤は、復水脱塩器の脱塩処理で除去された後、別途新しい薬剤注入物質が注入される。しかしながら、復水脱塩器でpH調整剤を除去し、別途新しい薬剤を注入することは、復水脱塩器でのイオン除去負荷を増大させ、薬剤注入コストを増加させる要因となっている。
【0007】
そのため、蒸気発生器のブローダウン水から、pH調整剤の除去を抑制し、注入薬剤コストを軽減する方法として、必要に応じてブローダウン水を復水脱塩器(復水脱塩塔)からバイパスさせる手段が提案されている(特許文献1〜3)。
【0008】
一方、ブローダウン水を復水脱塩器又はブローダウン水排出経路に設けられたブローダウン水処理装置で処理する場合、蒸気発生器からのブローダウン水は高温であるため、既設の復水脱塩器又はブローダウン水処理装置では、熱に弱いイオン効果樹脂が用いられることから、ブローダウン水を冷却し常温で処理している。このように、既存の水質浄化設備では処理前にブローダウン水を冷却操作しており、この冷却操作技術を用いないと、復水脱塩器は脱塩機能を充分に維持させることができない構造となっていた(特許文献1、4)。
【特許文献1】特開2000−171585号公報
【特許文献2】特開2000−258589号公報
【特許文献3】特開2005−329314号公報
【特許文献4】特開2006−226697号公報
【特許文献5】特開平11−47560号公報
【特許文献6】特開2007−90299号公報
【特許文献7】特開2006−43580号公報、
【特許文献8】特開2006−88004号公報、
【特許文献9】特開2006−136846号公報
【非特許文献1】Y.Asakura他「In-Line Monitor for Electrical Conductivity of High-Temperature, Aqueous Environments」J.Electrochem.Soc.,第136巻 第11号 3309-3313頁(1989年))
【非特許文献2】竹林良弘著「超臨界水・メタノール中での酸塩基平衡の分光測定」高圧力の科学と技術 第16巻 第2号” 105−112頁(2006年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
加圧水型原子力発電所の2次系のブローダウン水排出経路に電気式脱塩装置等のブローダウン水処理装置を設けた従来の水処理技術においては、ブローダウン水中の不純物イオンの他、pH調整剤であるアンモニアも同時に除去されるために、復水脱塩器の負荷軽減を図ることができる一方、注入するアンモニアのコスト軽減を図ることが困難である。
【0010】
このため、脱塩装置で除去したアンモニアを再利用する技術が提案されているが(特許文献5)、このリサイクル技術においては、除去されたアンモニアとともに濃縮された不純物イオンを分離精製する必要があり、装置が複雑化しコスト増につながる可能性があった。
【0011】
また、耐熱性の陰イオン材を用いる電気再生式脱塩装置により、陰イオン不純物のみを高温で除去し、薬剤注入物質である陽イオン物質を透過リサイクルする技術も提案されているが(特許文献6)、この方法では薬剤陽イオンと共に不純物陽イオンも再注入してしまうおそれがあった。
【0012】
一方、蒸気発生器から高温で排出されるブローダウン水は、イオン交換樹脂を用いる既設の脱塩技術や、イオン交換樹脂とイオン交換膜を用いる従来の電気再生式脱イオン装置では、高温に弱いイオン交換樹脂の耐熱性の観点から、イオン交換機能を維持するために、常温まで冷却されることが要求され、熱交換器等を用いた冷却設備等の余分な設備が必要となり、熱効率が悪くまたコスト上も課題があった。
【0013】
また、高温、高圧下で稼働することができる脱塩装置も存在するが(特許文献7〜9)、ブローダウン水から不純物イオンのみを選択的に除去できる構造とはなっていなかった。
【0014】
このため、高温のブローダウン水から不純物イオンのみを選択的に除去でき、不純物イオンに比べ高濃度に注入調整されるアンモニアを残存させる脱塩技術を確立させることができれば、復水脱塩器におけるイオン除去負荷を軽減させることができ、かつ、アンモニアの薬剤注入コストの軽減も図ることができ、メリットがある。
【0015】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、系統水に薬剤注入を必要とする加圧水型原子炉2次系や火力発電プラントの発電システム系統の水処理方法及び水処理装置において、高温下で不純物イオンのみを選択的に除去できる脱塩処理装置を用いることにより、不純物イオン脱塩浄化負荷を軽減し、ブローダウン水の冷却操作に伴う熱損失の軽減を図るとともに、アンモニア等の薬剤消費を抑制することができる水処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る水処理方法は、上述した課題を解決するために、アンモニアを含有する被処理水を、一対の隔膜と前記一対の隔膜の外側に対向配置される電極に直流電圧を印加する脱塩装置により処理する水処理方法において、前記被処理水を100℃以上で処理することにより、不純物イオン成分が除去されたアンモニアが濃縮された処理水を得ることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る水処理装置は、アンモニアを含有する蒸気発生器ブローダウン水からなる被処理水を、一対の隔膜と前記一対の隔膜の外側に対向配置される電極に直流電圧を印加する脱塩装置により処理し、蒸気発生器の給水源に再利用する水処理装置において、前記被処理水を100℃以上で処理することにより、不純物イオン成分が除去されたアンモニアが凝縮された処理水を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水処理方法及び水処理装置によれば、高温下で不純物イオンのみを選択的に除去できる脱塩処理装置を用いることにより、不純物イオン脱塩浄化負荷を軽減し、ブローダウン水の冷却操作に伴う熱損失の軽減を図るとともに、アンモニア等の薬剤消費を抑制することができる水処理技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る水処理方法及び水処理装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、本発明に係る水処理装置に用いられる電気脱塩装置11に関する。
電気脱塩装置11は、図1に示すように被処理水12の導入経路と、不純物脱塩処理水13の排出経路を有し、電気脱塩装置11筐体に、1対の等間隔に配置される隔膜14と、隔膜外側に配される直流印加のための電極17と、隔膜間に形成された脱塩部15と、各隔膜と各電極間に形成された濃縮部16と、から構成され、アンモニアが濃縮された被処理水12は脱塩部15に導入され、脱塩処理水13として排出し、濃縮部16からは不純物濃縮排水19として除去不純物の濃縮水が排出される。
【0020】
電気脱塩装置11は、図1に示すように、電極17に直流印加を行なうことで脱塩処理が行なわれる。その際、電気脱塩装置11の筐体と電極17や、電気脱塩装置11の筐体と隔膜14、電極17と隔膜14、及び対をなす隔膜14同士はそれぞれ互いに電気的に絶縁することが望ましい。
【0021】
また、電気脱塩装置11内の脱塩部15及び濃縮部16に満たされる液は、電気脱塩装置11の内部において、隔膜16以外の場所から液体が混ざり合わないことが望ましい。電極17は、脱塩時に不純物脱塩処理水13に電極17の構成成分が溶出しにくい材質で構成され、電気脱塩装置11の運用温度、電流安定域で安定に使用できる材料が選定される。
【0022】
電気脱塩装置11内の脱塩部15と濃縮部16とを仕切る隔膜14は、対を成して対向配置され、互いに等間隔に、電極17と平行に配置される。隔膜14は、金属、合金、セラミックス、あるいは耐熱性樹脂系等の素材で構成され、その構成成分が、蒸気発生器ブローダウン水である高温の被処理水であっても、脱塩処理運用環境で溶出、腐食しにくい材料が選定されて利用される。隔膜14は、例えば、平板(プレート)状の平行配置や、同心円筒状(楕円筒状、角筒状)の平行配置構成が採用される。
【0023】
電気脱塩装置11において、被処理液12が脱塩部15に導入され、導入された被処理水12に含まれるイオン成分は、電気脱塩装置11の内部で電極17によって印加される電位勾配によって、脱塩部15と接する隔膜14を透過して脱塩部15の外へ電気泳動により移動する。結果として脱塩部15から不純物脱塩処理水13として電気脱塩装置11によりイオン除去された処理水が排出される。
【0024】
電気脱塩装置11で脱塩部15での電位勾配によって脱塩部15及び隔膜14の外に配置される濃縮室16へ移動したイオン成分は、不純物濃縮排水19として電気脱塩装置11外に排出される。
【0025】
ここで、図1に示した電気脱塩装置11を用いた、アンモニア及び不純物イオンの除去性能試験結果を以下に示す。
[評価試験条件]
電気脱塩セル
電極面積 79cm2
脱塩部体積 47cm3
脱塩部幅 0.6cm
被処理水給水量 6600g/h
印加電圧 60V
不純物濃縮排水量 極微量(ほぼ0g/h)
処理時間 60分
【0026】
[評価試験結果]
25℃下での水素イオン濃度pH9及びpH10に調整したアンモニア水にナトリウムイオン、硫酸イオンを20〜30μg/L添加し、脱塩処理した結果を図2に示す。
図2に示すように、pH9及びpH10環境下では、100℃以上の高温下では、アンモニア除去率が10%以下となった。つまり、処理水中にアンモニアが90%以上残存した処理水を得ることができた。
【0027】
上記評価試験結果における、ナトリウムイオンと硫酸イオン除去率の、アンモニア除去率に対する除去選択の割合、すなわち対アンモニア除去効率比を図3に示す。
常温下と比べ、100℃以上の高温下では、アンモニアに対するナトリウムイオンと硫酸イオン除去選択率が高くなる結果を得た。
【0028】
以上の評価試験結果から、100℃以上、pH9以上では、アンモニア回収率が90%以上となり、また、アンモニア除去に対する不純物イオンの除去選択比は10以上となった。このことから、100度以上、更にpH9以上において、アンモニアと不純物イオンの選択除去比4倍以上となる。
【0029】
本除去性能評価試験におけるアンモニアのイオン化平衡は式1で表される。
NH3+H2O=NH4++OH- (式1)
式1において、高温になるほど水(H2O)の密度が低下し、アンモニウムイオン割合が小さくなること(非特許文献2)、及びpH上昇に伴い、高温効果同様に、アンモニウムイオン割合が小さくなり、被処理水中では大部分がアンモニアとして存在するため、電気的に除去されるアンモニウムイオン割合が小さくなり、結果としてアンモニア除去を抑制することができる。
【0030】
式1で表されるアンモニアのイオン化平衡におけるイオン割合を図4に示す。
図4から、高温・高濃度になるほど、アンモニウムイオン割合は低下することと、図2に示したpH9におけるアンモニア除去率低下傾向は同様の傾向を示すことがわかる。
【0031】
特に、アンモニア濃度1mg/L以上となると、アンモニアのイオン化割合は50%以下となり、高温化により、このイオン化は更に抑制されるため、本発明におけるアンモニア除去抑制効果が高まる。
【0032】
一方、高温水中のイオン導電率は、高温になるほど増加することが知られているが(非特許文献1)、これは高温化によって電場中におけるイオン移動が促進することによる。これはアンモニアのイオン化割合低下と、不純物イオン移動促進の相乗効果によるもので、高温下ではアンモニアと不純物イオンの選択分離性が高まる。
【0033】
第1の実施形態に示された水処理装置によれば、温度やpH、アンモニア濃度などの運用環境を適切に選定することにより、不純物イオンに対し高濃度で存在する薬剤注入物質のアンモニアの大部分を保持しつつ被処理水12から不純物イオンの除去を行うことができる。
【0034】
[第2の実施形態]
本発明に係る水処理装置の第2の実施形態を図5を用いて説明する。
この実施形態の水処理装置を説明するにあたり、図1〜図4に示される第の1実施形態に係る水処理装置と同じ構成及び作用には、同一符号を付して重複説明を省略あるいは簡素化する。
図5は第1の実施形態における、硫酸イオン成分の除去特性を示す図である。なお、図5中に示したpHは、25℃下での水素イオン濃度である。
【0035】
図2、図3に示したように、100℃以上での脱塩処理によりアンモニアを保持したイオン除去が可能となるが、図5に示した硫酸イオン成分については、200℃を超えると、除去率が低下する傾向がある。これは、式2、式3で示される硫酸成分のイオン化が、高温下では抑制される傾向にあること(非特許文献1)、式2、式3に示される硫酸のイオン化が水素イオン(H+)濃度、即ちpHに依存することに起因する。
2SO4=H++HSO4- (式2)
HSO4-=H++SO42- (式3)
このため、例えば、脱塩処理時の温度範囲を、pH9下では100℃以上200℃以下、pH10以下では100℃以上250℃以下の範囲で運用することが望ましい。
【0036】
図5の場合、例えば硫酸イオン除去50%以上となる上限温度として、被処理水pH値を一般的な熱力学的温度依存性を表す式である式5〜7に適用し、式4で求められる温度T(K)の高温度側の解を適用する。ただし、これは、本実施例における電気脱塩装置11の脱塩条件によって求めたものである。
A/T2+B/T+C=0 ; T:温度(K) (式4)
A=91416314×pH−1117340318 (式5)
B=−514858×pH+6080973 (式6)
C=698.38×pH−8021.1 (式7)
【0037】
このように、第2の実施形態によれば、被処理水pHに応じて、処理上限温度を設定することにより、温度やpH、アンモニア濃度などの運用環境を適切に選定し、不純物イオンに対し高濃度で存在する薬剤注入物質のアンモニアの大部分を保持しつつ被処理水12から不純物イオンを除去できる。
【0038】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る水処理装置を図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る水処理装置の構成図である。
この実施形態の水処理装置を説明するに当り、図1〜図5に示される水処理方法及び装置と同じ構成及び作用には、同一符号を付して重複説明を省略あるいは簡素化する。
【0039】
本第3の実施形態に係る水処理装置は、加圧水型原子力発電所に適用するもので、蒸気発生器1が発電システム系統に設けられ、系統はこの蒸気発生器1により加圧水型原子炉1次系と2次系に分けられる。
【0040】
原子炉(図示せず)で発生した高温高圧水は蒸気発生器1に送られ、ここで蒸気発生器1に供給される給水と熱交換される。蒸気発生器1で発生した蒸気は高圧タービン2、湿分分離器3を経由して低圧タービン4に供給され、高圧タービン2及び低圧タービン4をタービン駆動させて発電をする。
【0041】
高圧タービン2へ供給された蒸気の一部は、高圧抽気2−1として、高圧給水加熱器9の熱源に用いたのち、蒸気発生器1の給水系統へ供給され、湿分分離器3にて蒸気から除去された水分は、蒸気発生器1の給水系統へ供給される。また、低圧タービン4から抽気された低圧抽気4−1は、低圧給水加熱器7の熱源に用いられた後に、蒸気発生器1の給水系統へ供給され、低圧タービン4から排出される主蒸気は復水器5で水になり、復水ポンプ5−1を介して、蒸気発生器1の給水系統へ導入される。
【0042】
前記給水系統では、復水ポンプ5−1から復水脱塩器6にて水質浄化し、薬剤20を注入することにより水質調整し、低圧給水加熱器7での温度調節、脱気器8での気液分離、高圧給水加熱器9での温度調節を経て、蒸気発生器1へ給水される。
【0043】
また、蒸気発生器1には、蒸気発生器1内の伝熱管の腐食や伝熱性能低下を防止するために、蒸気発生器1の水の一部を排出する蒸気発生器ブローダウン水排出経路10が配置される。このブローダウン水排出経路10は復水器5側に延び、復水器5の下流かつ復水脱塩器6上流側に接続される。ブローダウン水排出経路10の途中には、第1の実施形態で説明した電気脱塩装置11が設けられる。
【0044】
なお、電気脱塩装置11には蒸気発生器1のブローダウン水がバイパスされるバイパス経路10−1が設けられる。蒸気発生器1から排出されるブローダウン水は、蒸気発生器ブローダウン水排出経路10を経て、被処理水12として電気脱塩装置11に導入され、脱塩処理水13は蒸気発生器1の給水系統へと送られる。
【0045】
この蒸気発生器ブローダウン水排出経路10の経路上には、フラッシュタンクや熱交換器といった構成機器を、必要に応じて配置してもよく(図示せず)、この機器構成等については、既存の技術を用いればよい。しかし、電気脱塩装置11へ送られるブローダウン水の水量や温度の変動が少なくなるような構成・運用にすることが望ましい。
【0046】
ところで、蒸気発生器ブローダウン水排出経路10に設けられた電気脱塩装置11は、高温での不純物イオン脱塩操作が可能なため、従来の水処理装置において必要であった、蒸気発生器ブローダウン水処理時の冷却操作が不要となり、常温にするまでの冷却操作量を低減させることができる。高温高圧下で運用する脱塩装置の形態としては、図2に示すものに限定されず、種々の脱塩装置、例えば特許文献7乃至9に開示されているような脱塩装置を採用することができる。
【0047】
電気脱塩装置11では、電気脱塩装置11内の脱塩部15で蒸気発生器ブローダウン水中の不純物が除去され、pH調整剤であるアンモニアの多くを保持した不純物脱塩処理水13が被処理水12が持つ熱量を保有したまま排出される。
【0048】
この不純物脱塩処理水13は、給水系の例えば脱気器8下流側に戻され、蒸気発生器1に還流される。還流された処理水13は蒸気発生器1で原子炉からの高温高圧水と熱交換されて蒸気化され、高圧タービン2、低圧タービン4に供給される。
【0049】
その際、電気脱塩装置11で処理された不純物脱塩処理水13の供給箇所は、電気脱塩装置11に供給される被処理水温度に応じて選定すればよいが、不純物脱塩処理水13が、特に、高温で脱塩処理した処理水である場合は、高温での運用可能な箇所を選定することが望ましい。不純物脱塩処理水13の給水系への供給には、供給先の温度圧力等を考慮し、任意にポンプ等の機器を設置して接続される。
【0050】
また、高圧タービン2からのタービン抽気(高圧蒸気)を熱源として用いる高圧給水加熱器9のドレン水をPWR2次系へ供給するドレン系統が配置されている場合、このドレン系統へ不純物脱塩処理水13を供給してもよい。
【0051】
さらに、電気脱塩装置11は、同一形態の装置を複数台配置し、蒸気発生器1のブローダウン水の連続浄化を実施することも可能であり、その際、水質浄化と電気脱塩装置11内の洗浄操作を切り替えて実施してもよい。このように、電気脱塩装置11を複数台配置することにより、PWR2次系系統水の浄化を常時安定して実施することができる。
【0052】
本第3の実施形態によれば、電気脱塩装置11の高温での脱塩操作によって、蒸気発生器ブローダウン水が持つ熱量を保持し、かつ、アンモニア量を低減させることがないので、蒸気発生器1へ供給する熱及びアンモニアのリサイクルと、不純物イオン浄化を可能とするとともに、薬剤量の低減により低コスト化を図ることができる。
【0053】
このように、高温でアンモニアと不純物イオンの選択分離が可能となるため、不純物処理水13は、アンモニアを残存した状態で、被処理水12の給水源へ返送することで、不純物の浄化、アンモニアのリサイクルが可能となる。さらに、高温で処理することにより、蒸気発生器給水系統での熱利用を大幅に改善することができる。
【0054】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る水処理装置を図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第4の実施形態に係る水処理装置の構成図である。
この実施形態の水処理装置を説明するに当り、図1〜図6に示される水処理装置と同じ構成及びその機能には、同一符号を付して重複説明を省略あるいは簡素化する。
【0055】
第4の実施形態に示された水処理装置は、第3の実施形態と同様に加圧水型原子力発電所の2次系に適用されるが、第3の実施形態と異なる点は、2次系の蒸気発生器ブローダウン水排出経路10に設けられた電気脱塩装置11より排出される不純物濃縮排水18を、既設の復水浄化設備である復水脱塩器6に供給するものである。
【0056】
この供給経路18−1上には、必要に応じて熱交換機器等の熱回収装置30が配置される。この熱回収装置30については、既存のものを用いればよく、特にその形態等は限定しないが、熱回収装置30で回収された熱は、加圧水型原子力発電所の2次系で再利用されることが好ましい。
【0057】
ここで、復水脱塩器6は、復水脱塩器6の内部に充填されるイオン交換樹脂のメンテナンス等のため、複数台並列配置され、供給経路を切り替えることが可能な形態をとっている。
【0058】
電気脱塩装置11から排出される不純物イオンを濃縮した不純物濃縮排水18は、複数配置する復水脱塩器6のうち、復水を浄化運転中の復水脱塩器以外の脱塩器へ導入し、濃縮した不純物イオンを浄化する。
【0059】
復水と不純物濃縮排水18を区別して、復水脱塩器6で浄化することは、復水脱塩器6にて浄化する被処理水の量ならびに質を区別することにより、復水脱塩器6に充填されているイオン交換樹脂の性能や、復水脱塩器6から排出され蒸気発生器1へ供給する原水質を維持するために有効である。また、電気脱塩装置11から排出される不純物濃縮排水18中の不純物を浄化し、水の再利用を行うことによって、加圧水型原子力発電所の2次系系統水の補給水量を削減することができる。
【0060】
本第4の実施形態に係る水処理装置によれば、濃縮不純物排水18を覆水脱塩器6に供給することにより、蒸気発生器1のブローダウン水中に含まれる不純物イオンの浄化時に電気脱塩装置11から排出される濃縮不純物排水18を安定に浄化しつつ給水系の水質維持を可能とする。その結果、不純物イオンに対し高濃度で存在するアンモニアの大部分を保持・リサイクルしつつ不純物の除去を行うことができる。
【0061】
さらに、高温下での脱塩処理であっても、不純物イオン脱塩浄化負荷やアンモニア消費、及び熱損失が少ない水処理を実現でき、原子力プラントを効率よく適切に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る脱塩装置の模式図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアンモニア除去率の温度依存性を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るアンモニア除去に対する不純物イオン除去の選択比の温度依存性を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るアンモニアイオン化割合の温度依存性を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る硫酸イオン除去率の温度依存性を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る水処理装置の構成図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る水処理装置の構成図。
【符号の説明】
【0063】
1…蒸気発生器、2…高圧タービン(蒸気タービン)、2−1…高圧抽気、3…湿分分離器、4…低圧タービン(蒸気タービン)、4−1…低圧抽気、5…復水器、5−1…復水ポンプ、6…復水脱塩器、7…低圧給水加熱器(低圧ヒータ)、8…脱気器、9…高圧給水加熱器(高圧ヒータ)、10…蒸気発生器ブローダウン水排出経路、10−1…蒸気発生器ブローダウン水バイパス経路、11…脱塩装置、12…被処理水、13…不純物脱塩処理水、14…隔膜、15…脱塩部、16…濃縮部、17…電極、18…不純物濃縮排水、18−1…供給経路、20…薬剤、30…熱回収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含有する被処理水を、一対の隔膜と前記一対の隔膜の外側に対向配置される電極に直流電圧を印加する脱塩装置により処理する水処理方法において、前記被処理水を100℃以上で処理することにより、不純物イオン成分が除去されたアンモニアが濃縮された処理水を得ることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記被処理水がpH9以上である請求項1記載の水処理方法。
【請求項3】
前記被処理水中のアンモニア濃度が1mg/L以上である請求項1記載の水処理方法。
【請求項4】
前記被処理水の処理温度を前記被処理水のpHによって決定することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項5】
被処理水が発電システムの蒸気発生器のブローダウン水であることを特徴とする、請求項1乃至4いずれか1項に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記発電システムが、加圧水型原子力発電プラントであることを特徴とする請求項5記載の水処理方法。
【請求項7】
前記脱塩装置から排出された処理水を前記蒸気発生器の給水系統に返送することを特徴とする、請求項5又は6記載の水処理方法。
【請求項8】
アンモニアを含有する蒸気発生器ブローダウン水からなる被処理水を、一対の隔膜と前記一対の隔膜の外側に対向配置される電極に直流電圧を印加する脱塩装置により処理し、蒸気発生器の給水源に再利用する水処理装置において、前記被処理水を100℃以上で処理することにより、不純物イオン成分が除去されたアンモニアが濃縮された処理水を得ることを特徴とする水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−268999(P2009−268999A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123502(P2008−123502)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】