説明

水処理装置、水処理方法およびそのプログラム

【課題】フロック粒径を加味して溶存酸素の目標値を変更することで、好気槽で硝化反応と脱窒反応を並行的に進行させるための曝気量制御を適切なものとする。
【解決手段】本発明に関わる水処理装置は、廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽1と、該生物反応槽1に送られた廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段6と、生物反応槽1内の廃水にエアレーションするための散気手段4と、該散気手段4の風量を制御する風量制御手段3、5と、記溶存酸素測定手段6の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように風量制御手段3、5を制御する制御手段7とを備えた水処理装置S1であって、活性汚泥の粒径を計測または予測するための粒径計測・予測手段8を備え、制御手段7は、粒径計測・予測手段8の計測値または予測値に応じて溶存酸素の目標値を変更している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水等の汚水を活性汚泥を用いて処理する水処理方法に係り、特に、有機物と窒素を処理するための水処理装置、水処理方法およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場に流入する汚水は活性汚泥と称される微生物により処理される。一般的な処理方式である標準活性汚泥法では、反応槽内の汚水をエアレーション(曝気)して好気条件で汚水中の活性汚泥(好気性微生物)を反応させ、主に有機物を処理している。
【0003】
近年、水質規制が強化され、窒素(N)やリン(P)の除去も求められている。窒素の除去では、好気性微生物により好気条件で進行する硝化反応と、嫌気性微生物により嫌気条件で進行する脱窒反応とで除去される。このため、下水処理場では硝化反応のための好気槽と、脱窒反応のための嫌気槽(無酸素槽、脱窒槽とも称す)を設けて、好気性と嫌気性とのそれぞれの運転条件を適正化している。
【0004】
一般に、汚水中の活性汚泥は微生物の塊であるフロックを形成している。好気槽において、フロック表面では好気条件、フロック内部では酸素が消費されるため嫌気条件になる。このため、フロックの表面で硝化反応、内部で脱窒反応を同時並行的に進行させることも可能である。同時進行させるためには、曝気量の制御が重要で、曝気量が多過ぎるとフロック内部まで好気条件となり脱窒反応が不充分となる一方、曝気量が少な過ぎると硝化反応が進行しない。このように、好気槽単一で窒素除去を進行させるための運転装置の先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−221201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したように、好気槽で好気性の硝化反応と嫌気性の脱窒反応を同時進行させるには、フロック内部で脱窒反応が進行するように内部を嫌気条件に維持することが重要である。フロック内部を嫌気条件とするには、フロック周囲の溶存酸素濃度とフロック粒径が重要な因子となる。すなわち、フロック粒径が大きい場合は、溶存酸素濃度が高くても内部では嫌気条件となり、フロック粒径が小さい場合には、溶存酸素濃度を低くしないと嫌気条件を維持できない。
【0007】
つまり、フロック粒径が大きい場合には、硝化反応の好気条件が不充分となる場合が想定されるので溶存酸素濃度をある程度高くする必要があり、フロック粒径が小さい場合には、脱窒反応の嫌気条件が不充分となるおそれがあるので、溶存酸素濃度を低くする必要がある。
特許文献1では溶存酸素濃度センサを設置し、その計測値を考慮して風量を制御しているが、フロック粒径に関しては考慮されておらず、制御が充分とはいい難い。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み、好気槽で硝化反応と脱窒反応を同時進行させるための曝気量制御を適切なものとできる水処理装置、水処理方法およびそのプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる水処理装置は、廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、該生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、該散気手段の風量を制御する風量制御手段と、前記溶存酸素測定手段の計測値を基に、当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置であって、前記活性汚泥の粒径を計測または予測するための粒径計測・予測手段を備え、前記制御手段は、前記粒径計測・予測手段の計測値または予測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更している。
【0010】
第2の本発明に関わる水処理装置は、廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、該生物反応槽の後段に設置された沈殿池と、前記生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、前記散気手段の風量を制御する風量制御手段、前記溶存酸素測定手段の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置であって、前記沈殿池の上澄み液の固形物質濃度を計測する固形物質計測手段を備え、前記制御手段は、前記固形物質計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更している。
【0011】
第3、第4の本発明に関わる水処理方法は、それぞれ第1、第2の本発明に関わる水処理装置を実現する方法である。
【0012】
第5の本発明に関わる水処理方法のプログラムは、第3、第4の何れかの本発明に関わる水処理方法を、コンピュータで実現するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロック粒径を加味して溶存酸素の目標値を変更することで、好気槽で硝化反応と脱窒反応を並行的に進行させるための曝気量制御を適切なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る水処理装置の構成を示す概念図である。
【図2】溶存酸素が浸透する生物膜厚みと反応液の溶存酸素濃度との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る水処理装置の構成を示す概念図である。
【図4】実測値のフロック粒径とフロックの沈降速度の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る水処理装置の構成を示す概念図である。
【図6】実験したフロック粒径とSVIの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る水処理装置の構成を示す概念図である。
【図8】実験したフロック粒径とMLSSの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<実施形態1>>
図1は、本発明の実施形態1に係る水処理装置S1の構成を示す概念図である。
水処理装置S1は、下水処理場等において、生活雑廃水等の汚水(廃水)を活性汚泥で生物反応処理する装置である。
水処理装置S1は、反応槽として、流入される汚水を生物反応処理する生物反応槽1と、生物反応槽1での処理物を自然沈殿により処理水と活性汚泥とに分離する沈殿池2とを具備している。
【0016】
生物反応槽1内には、複数の微生物群を含む活性汚泥が生息する。通常、活性汚泥は微生物の塊状のフロックとして生物反応槽1内に流入する汚水中を浮遊している。なお、生物反応槽1へ流入する汚水を流入水と称し、沈殿池2から流出する液を処理水と称する。
生物反応槽1にエアを供給するブロワ3の先(ブロワ3の送風路の下流)には散気手段4が接続され、散気手段4により、生物反応槽1内の流入水がエアレーション(曝気)される。散気手段4は並設されるパイプに多数の細孔が穿設され、ブロワ3から送られるエア(空気)が、散気手段4の多数の細孔から生物反応槽1内の流入水に供給される。
【0017】
そして、エアレーションにより空気中の酸素(O)が生物反応槽1内の流入水に溶解し、溶存酸素として活性汚泥に供給される。散気手段4の風量は風量調節弁5の開度および/またはブロワ3の回転速度が調整されることで変更される。
【0018】
エアレーションによって、生物反応槽1内の流入水に好気性雰囲気が形成されると、好気性微生物である亜硝酸化菌、硝酸化菌等の働きによって、フロックの表面側で硝化反応が行われる。すなわち、フロックの表面側で流入水中のアンモニアその他の窒素成分、例えばアンモニア性窒素(NH−N)が酸化され、亜硝酸、硝酸等、例えば亜硝酸性窒素(NO−N)、硝酸性窒素(NO−N)となる。
【0019】
そして、硝酸性窒素(NO−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)を反応させて窒素(N)を生成させるため、嫌気性微生物である脱窒菌を利用した嫌気処理(脱窒反応)が行われる。
脱窒菌は、溶存酸素が存在する好気状態では、分子状の酸素(O)を用いて呼吸し、溶存酸素が存在しない嫌気状態では、分子状酸素の代わりに硝酸性窒素(NO−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)に含まれる原子状の酸素を用いて呼吸する。
【0020】
したがって、脱窒菌が呼吸することにより、溶存酸素が消費されて嫌気状態になるとともに、硝酸性窒素(NO−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)が還元されて窒素ガス(N)となり、流入水中から窒素分が除去される。
このようにして、硝酸性窒素(NO−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)は、嫌気状態で嫌気性微生物により酸素が除去され窒素ガス(N)に還元され流入水中から除去され、窒素ガス(N)として大気に放散される。
【0021】
生物反応槽1の下流には、生物反応槽1から送られる反応液と活性汚泥とを自然沈殿によって固液分離する沈殿池2が設置されている。沈殿池2に沈降(沈殿)した活性汚泥は、生物反応槽1に図1の矢印α2のように返送汚泥として循環され、その一部は余剰汚泥として排出される。
【0022】
次に、水処理装置S1の動作概要を説明する。
生物反応槽1に活性汚泥を含んだ汚水(流入水)が流入(図1の矢印α1参照)される。また、返送汚泥が生物反応槽1に導入(図1の矢印α2参照)される。生物反応槽1内の汚水(流入水)、活性汚泥は、散気手段4から噴出されるエアにより攪拌と酸素供給が行われ、好気性状態が作られる。
【0023】
好気性状態において、汚水(流入水)は、硝化反応(NH−N → NO−N → NO−N)が行われ、嫌気性状態において、硝脱窒反応(NO−N → N、NO−N → N)が行われる。
【0024】
生物反応槽1から流出した処理物は沈殿池2で、処理水と活性汚泥とに固液分離され、上澄液が処理水として図1の矢印α3のように放流される。一方、沈殿した活性汚泥の大部分は返送汚泥として、前記の通り生物反応槽1に図1の矢印α2のように還流され、返送汚泥の一部は余剰汚泥として系外に排出される。
【0025】
ここで、生物反応槽1において、汚水(流入水)を効率良く処理するためには、硝化反応と脱窒反応とを同時並行的にバランスよく、行わせる必要がある。
そこで、水処理装置S1は以下の構成を有している。
生物反応槽1には流入水の溶存酸素の濃度を計測するための溶存酸素計6が設置され、その計測信号が、水処理装置S1を統括的に制御する制御手段7に送信(入力)される。
【0026】
制御手段7は、例えば、コントローラであり、マイコン(microcomputer)等のコンピュータ、A/D・D/A変換器等のインターフェース回路、センサ電流を増幅するセンサ回路、風量調整弁5・ブロワ3の印加電流を制御する制御回路等の周辺回路等を有して構成される。コントローラのROM(Read Only Memory)等の記憶部には、水処理装置S1を制御するための制御プログラムが焼き付けられとともに、制御に用いるデータが記憶される。制御プログラムが実行されることで、水処理装置S1の制御が行われる。
【0027】
制御中(制御プログラムの実行中)の一時データはRAM(Random Access Memory)等の記憶部に記憶される。
なお、センサ回路、風量調整弁5・ブロワ3の制御回路等の周辺回路等は適宜、コントローラの外部に設けるようにしてもよい。
【0028】
また、生物反応槽1には活性汚泥のフロックの粒径を計測するための、公知の粒径計測手段8が設置され、その計測信号が制御手段7に入力(送信)される。
制御手段7は、溶存酸素計6の計測値が、ROM等の記憶部に既入力または既設定された溶存酸素の目標値になるように、風量調整弁5および/またはブロワ3を制御する。
【0029】
次に、水処理装置S1の制御手段7における生物反応槽1内の溶存酸素の目標値の設定方法について説明する。
発明者らの実測値である図2を用いて説明する。図2は、溶存酸素が浸透する生物膜厚みと反応液(生物反応槽1の流入水)の溶存酸素濃度との関係を示している。
【0030】
実測値で溶存酸素濃度が2mg/l(リットル)のときフロック内の700μmまで溶存酸素が浸透した。このとき、溶存酸素の浸透するフロック粒径は1400μmに相当する。
この実測値を利用することにより、溶存酸素の浸透限界の直線(図2の実線)が得られた。この浸透限界の直線を、好気性の制御リミットとすると、水処理装置S1における制御方式の溶存酸素濃度設定値(DO)は下記の式(1)(図2の破線)になる。
【0031】
DO=(2/1400)×D−α (1)
ここで、DO:溶存酸素濃度設定値
D:フロック直径
α:脱窒係数
αは脱窒促進係数でαに相当する分が嫌気領域となる。ここで、脱窒反応を制御するためには、αを変化させればよい。例えば、αは、脱窒反応が進行する0.8〜0.9にするとよい。
【0032】
制御手段7には、図2に示すフロック直径と溶存酸素濃度設定値の関係、すなわち式(1)の関係(図2の破線)が既入力または既設定される。なお、フロック直径と溶存酸素設定値との関係(式(1)の関係)は、制御手段7にオンラインやバッチ処理で他システムから設定するようにしてもよい。
【0033】
制御手段7は、水処理装置S1の稼働時、粒径計測手段8からフロック粒径(フロック直径)の情報が入力される。次に、制御手段7は、式(1)の関係(図2の破線)から、フロック粒径に対応する溶存酸素濃度設定値DOを算出する。続いて、制御手段7は溶存酸素計6の計測値が溶存酸素濃度設定値DOになるように、風量調節弁5および/またはブロワ3を制御する。生物反応槽1の実際の溶存酸素濃度が、溶存酸素計6で計測され制御手段7に入力されるため、フィードバック制御される。これにより、制御手段7は、生物反応槽1の汚水(流入水)を、活性汚泥が最適な好気条件、嫌気条件となる溶存酸素設定値DOに制御できる。
【0034】
実施形態1の水処理装置S1によれば、フロック粒径を加味(考慮)して溶存酸素目標値を変更することにより、好気槽である生物反応槽1で硝化反応と脱窒反応とを同時並行的に効果的に進行させる曝気量制御を実現することができる。
なお、排出される窒素ガス(N)をガスセンサで感知して、窒素ガスの量が最大になるように溶存酸素濃度設定値(DO)を調整してもよい。
【0035】
<<実施形態2>>
図3は、本発明の実施形態2に係る水処理装置S2の構成を示す概念図である。
実施形態2の水処理装置S2は、実施形態1の水処理装置S1の粒径計測手段8に代えて、沈殿池2の上澄み液の固形物質濃度を計測するSS(suspended solids)計9を設けたものである。
SS(suspended solids)とは、浮遊物質濃度のことで水の濁り度を示す指標の一つである。
その他の構成は、実施形態1の水処理装置S1と同様であるから、実施形態1と同様な構成要素には同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0036】
制御手段7には、沈殿池2の処理水の情報として、SS計9で計測された沈殿池2の処理水の浮遊物質濃度の計測信号が入力(送信)される。
実施形態2では、沈殿池2にSS計9を設置する場合を例示したが、生物反応槽1での流入水を計測してもよい。また、SS計9に代えて汚濁計を用いてもよい。
【0037】
次に、水処理装置S2における生物反応槽1の溶存酸素濃度の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)の設定方法について説明する。
図4は発明者らの実測値であり、フロック粒径(μm)とフロックの沈降速度(mm/min(分))の関係を示す。
【0038】
フロックの沈降速度は、フロックに働く下向きの重力と上向きの浮力が関係する。
フロックに働く重力は、フロックの質量と重力加速度との積で求められる。一方、フロックに働く浮力は、フロックの容積の処理水の重量で求められる。ここで、フロック粒径は、フロックの容積、質量に3乗で影響するが、フロックの比重は水より大であり、フロック粒径の増加は、フロックに働く重力への影響は浮力より大きい。
そのため、図4に示すように、フロック粒径が大きい程、フロックの沈降速度が速くなる結果が得られた。
【0039】
そして、フロックの沈降速度が速い程、沈殿池2の固液分離が良好になるため、フロックの沈降速度が速い程、水の濁りが少なくSS計9の計測値は小さくなる。
このため、図4に示すフロックの沈降速度(mm/min(分))とフロック粒径(μm)との関係を基に、制御手段7は、浮遊物質濃度のSSとフロック粒径(μm)との関係が予め入力または設定され記憶部に記憶される。
すなわち、SS計9によりSSの値を計測し、SSの値からフロックの沈降速度を求め、この沈降速度から図4の関係を参照してフロック粒径を予測することができる。
【0040】
これにより、水処理装置S2に粒径計測手段8が無くとも、制御手段7は、SS計9の計測値からフロック粒径を予測することができる。なお、浮遊物質濃度のSSとフロック粒径(μm)との関係は、制御手段7にオンラインやバッチ処理で他システムから設定するようにしてもよい。
【0041】
水処理装置S2における制御手段7による溶存酸素濃度設定値DOの設定について説明する。
制御手段7はSS計9の計測値を得る。次に、制御手段7は予め記憶されたSSとフロック粒径の関係よりフロック粒径を予測する。
【0042】
次に、制御手段7はフロック粒径から実施形態1の式(1)に従い溶存酸素濃度設定値DOの目標値を設定する。
そして、制御手段7は、溶存酸素計6の濃度の計測値が溶存酸素濃度設定値DOになるように、風量調節弁5および/またはブロワ3を制御する。
【0043】
実施形態2の水処理装置S2によれば、SS計9の計測値に基づき、フロック粒径を加味して溶存酸素濃度の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)を変更することで、好気槽である生物反応槽1で硝化反応と脱窒反応を効果的に同時進行(同時並行的に進行)させるための曝気量制御を実現することができる。
【0044】
<<実施形態3>>
図5は、本発明の実施形態3に係る水処理装置S3の構成を示す概念図である。
実施形態3の水処理装置S3は、実施形態1の水処理装置S1(図1参照)の粒径計測手段8の代わりに、活性汚泥のSVI(Sludge volume index)を計測するSVI計10を設けたものである。
【0045】
SVI(Sludge volume index)とは活性汚泥の沈降性を示す指標であり、汚泥容量指標と称される。1gの活性汚泥が占める容積をml(ミリリットル)で表し、 SVI=SV(Sludge volume)×10000/MLSS の式で算出される。SVIは、活性汚泥を30分間静置した場合に1gのMLSS(mixed liquor suspended solid:活性汚泥浮遊物質)の占める容積をml数で示したものである。通常の曝気槽のSVIは100〜150である。高いSVI値は凝集性・沈降性の悪い軽い活性汚泥であることを示す。SVI値を測定することにより活性汚泥の異常を早期に発見することができる。
【0046】
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同様な構成要素には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
水処理装置S3の制御手段7には、生物反応槽1における流入水内のフロックの情報として、SVI計10の計測信号が入力される。
【0047】
発明者らが実験したフロック粒径(μm)とSVI(ml/g)の関係を図6に示す。図6のプロット点が実験点であり、曲線は最小自乗法等を用いて内挿したものである。
SVI(濃度)が低い程、フロック粒径が増加し、SVI(濃度)が高い程、フロック粒径は減少する結果が得られた。
制御手段7には図6のフロック粒径とSVIとの関係が予め入力または設定され記憶部に記憶されており、制御手段7はSVI値からフロック粒径を推定できる。なお、フロック粒径とSVIとの関係は、制御手段7にオンラインやバッチ処理で他システムから設定するようにしてもよい。
【0048】
水処理装置S3の制御手段7の制御方法を説明する。
まず、制御手段7はSVI計10の計測値を受け取る。次に、制御手段7は、既入力または既設定された図6の関係を用いて計測されたSVI値よりフロック粒径を推定する。そして、前記の図2の式(1)におけるフロック粒径と溶存酸素濃度の関係から目標とする溶存酸素濃度設定値DOを得る。最後に制御手段7は溶存酸素計6の計測値が溶存酸素の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)になるように風量調整弁5および/またはブロワ3を制御する。
【0049】
実施形態3の水処理装置S3によれば、SVI計10の計測値に基づき、フロック粒径を加味して溶存酸素の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)を変更することで、好気槽である生物反応槽1における硝化反応と脱窒反応を効果的に同時進行(同時並行的に進行)させるための曝気量制御を実現することができる。
【0050】
<<実施形態4>>
図7は、本発明の実施形態4に係る水処理装置S4の構成を示す概念図である。
実施形態4の水処理装置S4は、実施形態1の水処理装置S1(図1参照)の粒径計測手段8をMLSS計11に代えたものである。
【0051】
MLSS(mixed liquor suspended solids)は生物反応槽1の汚泥量(mg/l)(流入水1リットル当たりの活性汚泥の重さ)を表す。
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、実施形態1と同様な構成要素には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0052】
水処理装置S4では、生物反応槽1の流入水内のフロックの情報として、MLSS計11の計測信号が制御手段7に入力される。
発明者らの実験したフロック粒径とMLSSの関係を図8に示す。図8のプロット点が実験点であり、曲線は最小自乗法等を用いて内挿したものである。
MLSS濃度が低い程、フロック粒径が増加する一方、MLSS濃度が高い程、フロック粒径が減少する結果が得られた。
制御手段7には本図8のフロック粒径とMLSSとの関係が既入力または既設定され記憶部に記憶されており、制御手段7はMLSS値からフロック粒径を推定することができる。
【0053】
本水処理装置S4における制御手段7の制御方法を説明する。
制御手段7は、MLSS計11の計測値を受け取る。次に、制御手段7は図8のフロック粒径とMLSSとの関係より、MLSS値からフロック粒径を推定する。実施形態1の図2の式(1)におけるフロック粒径と溶存酸素の関係から目標の溶存酸素濃度設定値DOを得る。最後に、制御手段7は溶存酸素計6が溶存酸素の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)になるように風量調節弁5および/またはブロワ3を制御する。
【0054】
実施形態4の水処理装置S4によれば、MLSS計11の計測値から、フロック粒径を加味して溶存酸素の目標値(溶存酸素濃度設定値DO)を変更することで、好気槽の生物反応槽1で硝化反応と脱窒反応を効果的に同時進行(同時並行的に)させるための曝気量制御を実現することができる。
【0055】
なお、実施形態1の水処理装置S1〜実施形態4の水処理装置S4は、好気槽(生物反応槽1)で硝化・脱窒反応を、フロック粒径を加味することで行うものであり、窒素を除去することが目的である。好気槽の生物反応槽1では硝化反応が主な反応であるため、ある程度硝化が進んだ状態でないと脱窒反応が効果を及ぼさない。そのため、硝化反応が進行した後に、脱窒反応させることが望ましい。
【0056】
このため、本発明による曝気量の制御は硝化反応が進行した生物反応槽1の後段で実施すると良い。このことから、生物反応槽1の制御は1/3以上後段に設置するのが望ましい。そのため、溶存酸素計6、散気手段4を、生物反応槽1の少なくとも1/3以上後段に備えるとよい。溶存酸素計6、散気手段4を、生物反応槽1の少なくとも1/3以上後段に設置すると窒素の除去を向上できる。
【0057】
なお、前記実施形態では、風量制御手段として、ブロア3、風量調節弁5を例示したが、散気手段4からの風量を調整できるものであれば、その他の方法を用いてもよい。
また、前記実施形態では、生物反応槽1に送られた流入水(汚水)中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段として、溶存酸素濃度を計測する溶存酸素計6を例示したが、流入水(汚水)中の溶存酸素の量を測定できれば、他の溶存酸素測定手段を用いてもよい。
なお、前記実施形態では、制御手段としてコントローラを例示したが、制御手段の少なくとも一部をIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの回路(ハードウェア)で構成してもよく、説明した制御手段の機能を果たせれば、その実施態様は限定されない。
【符号の説明】
【0058】
1 生物反応槽
2 沈殿池
3 ブロア(風量制御手段)
4 散気手段
5 風量調節弁(風量制御手段)
6 溶存酸素計(溶存酸素測定手段)
7 制御手段
8 粒径計測手段(粒径計測・予測手段)
9 SS計(固形物質計測手段)
10 SVI計(粒径計測・予測手段)
11 MLSS計(粒径計測・予測手段)
S1、S2、S3、S4 水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、
該生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、
前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、
該散気手段の風量を制御する風量制御手段と、
前記溶存酸素測定手段の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置であって、
前記活性汚泥の粒径を計測または予測するための粒径計測・予測手段を備え、
前記制御手段は、前記粒径計測・予測手段の計測値または予測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記粒径計測・予測手段は、前記活性汚泥の汚泥容量指標であるSVIを計測するSVI計測手段であり、
前記制御手段は、前記SVI計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記粒径計測・予測手段は、前記活性汚泥の量を表すMLSSを計測するMLSS計測手段であり、
前記制御手段は、前記MLSS計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、
該生物反応槽の後段に設置された沈殿池と、
前記生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、
前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、
前記散気手段の風量を制御する風量制御手段、
前記溶存酸素測定手段の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置であって、
前記沈殿池の上澄み液の固形物質濃度を計測する固形物質計測手段を備え、
前記制御手段は、前記固形物質計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の水処理装置において、
該溶存酸素測定手段と前記散気手段を、前記生物反応槽の少なくとも1/3以上後段に備える
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、
該生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、
前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、
該散気手段の風量を制御する風量制御手段と、
前記活性汚泥の粒径を計測または予測するための粒径計測・予測手段と、
前記溶存酸素測定手段の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置の水処理方法であって、
前記制御手段は、前記活性汚泥の粒径の計測値または予測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
前記粒径計測・予測手段は、前記活性汚泥の汚泥容量指標であるSVIを計測するSVI計測手段であり、
前記制御手段は、前記SVI計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記粒径計測・予測手段は、前記活性汚泥の量を表すMLSSを計測するMLSS計測手段であり、
前記制御手段は、前記MLSS計測手段の計測値に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
【請求項9】
廃水を処理するための活性汚泥が投入される生物反応槽と、
該生物反応槽の後段に設置された沈殿池と、
前記生物反応槽に送られた前記廃水中の溶存酸素の量を測定する溶存酸素測定手段と、
前記生物反応槽内の前記廃水にエアレーションするための散気手段と、
前記散気手段の風量を制御する風量制御手段と、
前記沈殿池の上澄み液の固形物質濃度を計測する固形物質計測手段と、
前記溶存酸素測定手段の計測値を基に,当該計測値が溶存酸素の量の目標値になるように前記風量制御手段を制御する制御手段とを備えた水処理装置の水処理方法であって、
前記制御手段は、前記固形物質濃度に応じて前記溶存酸素の目標値を変更する
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9の何れか一項に記載の水処理方法において、
前記溶存酸素測定手段と前記散気手段とが、前記生物反応槽の少なくとも1/3以上後段に備えて行われる
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項11】
請求項6から請求項10の何れか一項に記載の水処理方法を、コンピュータで実現するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−228645(P2012−228645A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97890(P2011−97890)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】