説明

水処理装置

【課題】 硝化細菌の繁殖によるろ過膜の目詰まりを抑制できる水処理装置を提供することを課題としている。
【解決手段】 硝化細菌の栄養となる成分が含まれている被処理水をろ過処理するろ過膜が備えられている水処理装置であって、ろ過処理前の前記被処理水をpH2〜7に調整すべく前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整手段、ろ過処理前の前記被処理水の溶存酸素を低減すべく前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加手段、および、ろ過処理前の被処理水に硝化細菌生育阻害薬剤を添加する薬剤添加手段、のうちの少なくとも1種が備えられている水処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細孔のあるろ過膜によってろ過することにより、被処理水を精製または濃縮する水処理装置が知られている。このようなろ過膜を用いる水処理装置は、ろ過膜による分離・精製・濃縮をおこなう医薬・食品分野、ろ過膜による廃水処理をおこなう下水処理水、ろ過膜による工場排水処理をおこなう工場排水処理分野、ろ過膜による飲料水の製造や生活用水の製造をおこなう浄水分野、ろ過膜による高純度洗浄水製造をおこなう電子産業分野などで用いられている。
このようなろ過膜を備えた水処理装置では、ろ過膜としては、例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)など、孔の大きさが異なる様々なろ過膜が用いられる。
【0003】
ところが、水処理装置においては、被処理水に含まれている有機物を栄養源として微生物がろ過膜表面あるいはろ過膜の孔の内表面に繁殖して蓄積し、ろ過膜の目詰まり(バイオファウリング)を生じることがある。特に、スパイラル型RO膜を備えた水処理装置においては、RO膜モジュールの膜間流路が狭いため、一度目詰まりを起こすと洗浄などにより目詰まりを解消することが困難となりやすい。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されているように、微生物の繁殖に起因するRO膜の目詰まりを防止すべく、特定の殺菌剤等が添加されるようになっている水処理装置が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1のごとく、被処理水に特定の殺菌剤が添加される水処理装置においては、その殺菌剤によって増殖が抑制されにくい微生物の繁殖に起因して、ろ過膜の目詰まりが抑制されないという問題がある。具体的には、例えば、被処理水に無機窒素化合物等が含まれている場合には、無機窒素化合物等を栄養源とする独立栄養生物としての硝化細菌が繁殖することがあり、硝化細菌以外の微生物の繁殖に起因するろ過膜の目詰まりを防止する手段が備えられていても、硝化細菌の繁殖によりろ過膜の目詰まりが生じ得るという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−177744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、硝化細菌の繁殖によるろ過膜の目詰まりを抑制できる水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る水処理装置は、硝化細菌の栄養となる成分が含まれている被処理水をろ過処理するろ過膜が備えられている水処理装置であって、ろ過処理前の前記被処理水をpH2〜7に調整すべく前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整手段、ろ過処理前の前記被処理水の溶存酸素を低減すべく前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加手段、および、ろ過処理前の被処理水に硝化細菌生育阻害薬剤を添加する薬剤添加手段、のうちの少なくとも1種が備えられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成からなる水処理装置によれば、被処理水が硝化細菌の生育しにくい環境となり、被処理水に存在する硝化細菌の繁殖が抑制され得る。
【0010】
また、本発明に係る水処理装置は、前記pH調整手段、前記還元剤添加手段、および、前記薬剤添加手段のうちの2種以上が備えられていることが好ましい。前記pH調整手段、前記還元剤添加手段、および、前記薬剤添加手段のうちの2種以上が備えられていることにより、被処理水に存在する硝化細菌の繁殖がより抑制され得るという利点がある。
【0011】
さらに、本発明に係る水処理装置は、前記ろ過膜により濃縮される濃縮水を採取して硝化細菌の消長を観測するモニタリング装置が備えられており、前記ろ過膜が逆浸透膜、限外ろ過膜、または、精密ろ過膜であることが好ましい。この構成により、硝化細菌による膜の目詰まりが生じやすい逆浸透膜が用いられた水処理装置であっても、被処理水に存在する硝化細菌の消長を確実に把握することができ、より確実に硝化細菌の繁殖を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水処理装置は、被処理水に存在する硝化細菌の繁殖を抑制し得るものである。従って、本発明の水処理装置は、硝化細菌の増殖によるろ過膜の目詰まりを抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る水処理装置は、硝化細菌の栄養となる成分が含まれている被処理水をろ過処理するろ過膜が備えられている水処理装置であって、ろ過処理前の前記被処理水をpH2〜7に調整すべく前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整手段、ろ過処理前の前記被処理水の溶存酸素を低減すべく前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加手段、および、ろ過処理前の被処理水に硝化細菌生育阻害薬剤を添加する薬剤添加手段のうちの少なくとも1種が備えられている。
【0014】
以下、本発明に係る水処理装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すように本実施形態の水処理装置において、前記pH調整手段は、pH調整剤と、該pH調整剤を前記被処理水槽1に添加するための添加槽4と、該添加槽4に備えられたpH計5とでなる。前記還元剤添加手段は、還元剤と、該還元剤を前記被処理水槽1に添加するための添加槽4と、該添加槽4に備えられた溶存酸素計6と、該添加槽4に備えられた酸化還元電位計7とでなる。前記薬剤添加手段は、硝化細菌生育阻害薬剤を前記被処理水槽1に添加するための添加槽4でなる。
本実施形態の水処理装置は、図1に示すように、処理される被処理水を貯める被処理水槽1と、前記被処理水をろ過するろ過膜3と、前記被処理水槽1にある前記被処理水を前記ろ過膜3へ送り加圧するポンプ2と、前記被処理水槽1に前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤などを添加するための添加槽4とが備えられている。
【0016】
前記被処理水槽1は、処理される被処理水の供給を受け、前記被処理水をいったん貯めることができるものである。前記被処理水槽の大きさは、特に限定されるものではなく、被処理水を処理するろ過膜3の処理能力により、適宜調整され得る。
【0017】
前記被処理水槽1には、pH計5が備えられており、前記被処理水槽1では、前記被処理水のpHが測定できる。また、前記被処理水槽1には、溶存酸素計6が備えられており、前記被処理水槽1では、前記被処理水の溶存酸素量が測定できる。また、前記被処理水槽1には、酸化還元電位計7が備えられており、前記被処理水槽1では、前記被処理水の酸化還元電位が測定できる。
【0018】
前記添加槽から添加されるpH調整剤により、前記被処理水のpHは、pH2〜7に調整される。また、pH2〜4に調整されることが好ましい。前記pH調整剤が添加された前記被処理水のpHがpH2以上である場合、薬剤の添加量をより少なくでき、薬剤にかける費用を少なくすることができ、pH7以下である場合、硝化細菌を抑制できる。また、pH4以下であることにより、硝化細菌をさらに抑制できるという利点がある。
【0019】
添加された前記pH調整剤の前記被処理水における濃度としては、前記被処理水のpHが2〜7となるように添加されれば、特に限定されるものではない。
【0020】
前記pH調整剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、硫酸、塩酸、クエン酸等が挙げられる。なかでも、取り扱いやすい液体状で、比較的低価格という点で硫酸、塩酸が好ましい。
【0021】
前記添加槽4から添加される還元剤により、前記被処理水の溶存酸素は低減される。前記還元剤が添加された前記被処理水の溶存酸素が低減していることにより、硝化細菌の増殖を抑制することができる。硝化細菌の増殖をさらに抑制することができるという点で、前記被処理水の溶存酸素はできる限り少ないことが好ましい。
添加された前記還元剤の前記被処理水における濃度としては、前記被処理水の溶存酸素が低減し得るように添加されれば、特に限定されるものではない。
【0022】
前記添加槽4から添加される還元剤により、前記被処理水の酸化還元電位は−200mV以下に調整されることが好ましい。また、−400mV以下に調整されることがさらに好ましい。前記被処理水の酸化還元電位が−200mV以下であることにより、硝化細菌の増殖をより抑制することができるという利点がある。また、−400mV以下であることにより、硝化細菌の増殖をさらに抑制することができるという利点がある。
【0023】
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。なかでも、取り扱いやすく、比較的安価という点で亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0024】
前記被処理水には、前記添加槽4から前記硝化細菌生育阻害薬剤が添加される。前記被処理水に前記硝化細菌生育阻害薬剤が添加されることにより、被処理水中に存在する硝化細菌の繁殖がさらに抑制される。
【0025】
前記硝化細菌生育阻害薬剤としては、イソチアゾロン系化合物、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、チオ尿素、または、ヨウ素(I2)等があげられ、これらの混合物も挙げられる。前記イソチアゾロン系化合物は、RO膜をリークせずに硝化細菌の生育を阻害し得るという点で好ましい薬剤である。前記イソチアゾロン系化合物を含む前記硝化細菌阻害薬剤としては、例えば、片山ナルコ社製 商品名「PC−55」が挙げられる。
【0026】
前記被処理水中の前記硝化細菌生育阻害薬剤の濃度は、前記硝化細菌生育阻害薬剤がイソチアゾロン系化合物であれば、1ppm〜20ppmであることが好ましい。前記被処理水中の前記イソチアゾロン系化合物の濃度が1ppm以上であることにより、硝化細菌の繁殖がより抑制され得る。また、20ppm以下であることにより、必要以上の薬剤を添加することなく硝化細菌の増殖を完全に抑制できる。前記硝化細菌生育阻害薬剤がチオ尿素であれば、前記被処理水中の窒素量に対して0.5〜10重量%程度の濃度となる量を添加するのが好ましい。
【0027】
なお、前記被処理水槽1の材質としては、ステンレス、プラスチック、コンクリート等が例示される。
また、前記被処理水槽1には、例えば、水不溶性の塩などが原因となるスケールの発生を防止すべく、一般的に用いられるスケール防止剤などを添加することができる。
【0028】
前記ろ過膜3は、前記被処理水がろ過処理されることにより、前記被処理水中にある微粒子類、微生物類、イオン類などの濃度がより高くなった濃縮水と、微粒子類、微生物類、イオン類などの濃度がより低くなった透過水とを生じさせ得るものである。
【0029】
前記ろ過膜3としては、前記ろ過膜3にある孔の大きさにより、次のようなものが例示され得る。即ち、前記ろ過膜3としては、その膜にある孔の大きさが概ね2nm以下のものを逆浸透膜、2〜200nmのものを限外ろ過膜、50nm〜10μmのものを精密ろ過膜として例示できる。
【0030】
前記ろ過膜3の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等を挙げることができる。なかでもろ過膜が逆浸透膜の場合は、操作圧力が低い、塩類阻止率が高いという点で、芳香族ポリアミドが好ましい。
【0031】
前記ろ過膜3としては、通常、非対称膜が挙げられる。他にも複合膜等が挙げられる。
【0032】
前記ろ過膜3は、その取り扱い性向上や物理的耐久性向上の点で、好ましくは、中空糸、チューブラー、スパイラル等が挙げられる。なかでも、耐久性、膜面積集積度という点で、スパイラル膜がより好ましい。
【0033】
前記ポンプ2としては、前記処理水を加圧することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、プランジャポンプ、カスケードポンプ、ジェットポンプ、渦巻ポンプ、多段型渦巻ポンプ、ディフューザーポンプ、ピストンポンプ等が挙げられる。なかでも、精度よく高圧力が得られるという点で多段型渦巻ポンプが好ましい。
【0034】
前記添加槽4は、その内容物である前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤等の添加物が、前記被処理水槽1に添加されるように備えられており、前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤等の添加物がそのなかに貯められ得るものである。前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤は、互いに反応することがない限り、混合されていてもよい。また、前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤は、水などの溶媒によって希釈された状態で前記添加槽4に貯められ得る。なお、前記添加槽4は、前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤をそれぞれ貯めるために、複数備えられ得る。
【0035】
前記添加槽4は、前記pH調整剤、前記還元剤、前記硝化細菌生育阻害薬剤等の添加物が、適宜、適量前記被処理水槽1に添加されるように、バルブあるいは供給ポンプが取り付けられている。該バルブは、前記添加物を前記被処理水槽1に添加する量と時期とを適宜調節できるものである。前記バルブは、手動で開閉できるものであっても、自動的に開閉できるものであってもよい。なお、前記バルブの代わりにポンプ等が取り付けられ得る。
【0036】
前記添加槽4にある前記添加剤は、比較的少量が継続的に前記被処理水槽1へ添加されてもよく、適量が定期的に前記被処理水槽1へ添加されてもよい。また、適宜、必要に応じて前記被処理水槽1へ添加され得る。
【0037】
なお、前記添加槽4の材質としては、ステンレス、プラスチック、コンクリート等が例示される。
【0038】
次に、本発明に係る水処理装置の他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0039】
他の実施形態の水処理装置は、図2に示すように、処理される被処理水を貯める被処理水槽1と、前記被処理水をろ過するろ過膜である逆浸透膜と、前記被処理水槽1にある前記被処理水を前記ろ過膜3へ送り加圧するポンプ2と、前記被処理水槽1にpH調整剤、還元剤、硝化細菌生育阻害薬剤などを添加するための添加槽4と、前記逆浸透膜においてろ過されて濃縮された濃縮水を採取して硝化細菌の消長を観測するモニタリング装置とを備えている。
【0040】
他の実施形態の水処理装置は、前記モニタリング装置を備えており、アンモニウムイオン、亜硝酸イオンなどの無機窒素系イオンを含んでいるが有機物の含有量が比較的少量であるような、例えば、BOD値が2mg/L未満といった被処理水を処理する場合には、前記被処理水に存在する硝化細菌の増殖をより確実に抑制できるという点で、好ましい装置である。
【0041】
前記被処理水槽1、前記ポンプ2および前記添加槽4は、上述した一実施形態のものと同様のものが用いられ得る。
【0042】
前記逆浸透膜は、前記ろ過膜3の1種であり、前記逆浸透膜としては、例えば、ろ過するための孔の大きさが2nm以下のものが挙げられる。前記逆浸透膜としては、通常、その孔が多孔質であるものが例示される。前記逆浸透膜にある孔の孔径は、例えば、水銀圧入法により測定できる。
【0043】
前記逆浸透膜の材質としては、上述した一実施形態のろ過膜と同様のものを用いることができ、前記逆浸透膜の構造としては、上述した一実施形態のろ過膜と同様のものを用いることができる。前記逆浸透膜としては、操作圧力が低く、塩類阻止率が高く、集積度が高いという点で、ポリアミド系スパイラル型モジュールが用いられることが好ましい。
【0044】
前記モニタリング装置は、前記逆浸透膜で処理された濃縮水を採取して硝化細菌の消長を観測するようになっている。前記モニタリング装置としては、例えば、前記濃縮水中に存在する硝化細菌の消長を遺伝子解析により観測できるものが挙げられる。
【0045】
前記遺伝子解析とは、その観測対象が硝化細菌の場合には、あらかじめ知られている硝化細菌の遺伝子パターンをもとにして、具体的にはT−RFLP、DGGEなどの手法により硝化細菌の存在を確認する方法である。この種の遺伝子解析は、市販の遺伝子解析キットを用いることにより行なうことができる。
前記モニタリング装置において硝化細菌の消長を確認する時間間隔としては、特に限定されないが、硝化細菌の増殖速度は通常の細菌に比べて遅いという点で、1〜7日間隔が例示される。また、前記モニタリング装置の他の手段としては、濃縮水中の硝酸イオン濃度を測定するも例示される。この場合は、センサーにより連続的にモニタリングすることが可能である。
【0046】
他の実施形態においては、前記モニタリング装置によって得られた結果をもとにして硝化細菌の増殖が確認されれば、水処理装置は、前記添加槽4から前記添加剤を前記被処理水に添加することにより、前記被処理水のpHを調整したり、前記被処理水の溶存酸素を低減させたり、前記被処理水の酸化還元電位を所望の値としたり、前記硝化細菌生育阻害薬剤を添加したりすることができ、前記被処理水に存在する硝化細菌の増殖を抑制することができるようになっている。
より具体的には、例えば、硝化細菌の増殖が確認された場合には、前記添加槽4にあるバルブが自動的に開けられるようになっており、前記被処理水のpHが所望の値に自動的に調整され、または、前記被処理水の溶存酸素が自動的に低減され、前記被処理水の酸化還元電位が所望の値に自動的に調節され、または、前記硝化細菌生育阻害薬剤が自動的に添加されるようになっている。
なお、前記モニタリング装置によって硝化細菌の増殖が確認された場合に、手動で前記添加剤を前記被処理水に添加するようになっていてもよい。
【0047】
なお、本発明を上記例示の水処理装置に限定するものではない。
また、一般の水処理装置において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0048】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
図1のフローになるような手段を備えた水処理装置において、ろ過膜として、日東電工株式会社製低圧RO膜(商品名:NTR-759HR)の4インチモジュールを用い、処理水量2.2L/分、回収率80%の条件で水処理装置を運転した。
運転開始基準日までの20日間は、スケール防止剤(商品名「PC−191」 片山ナルコ社製)を被処理水中で2.5mg/Lの濃度になるように連続的に添加した。また、同様に、硝化細菌生育阻害薬剤としてのイソチアゾロン系化合物を含む薬剤(商品名「PC−55」 片山ナルコ社製)を被処理水中で10mg/Lの濃度になるよう連続的に添加した。運転開始基準日に「PC−55」の添加を停止し、スケール防止剤「PC−191」の添加は、運転中継続した。
また、濃縮水の硝酸態窒素濃度を管理指標とし、濃縮水の硝酸態窒素濃度が10mg/Lを超えた場合に、pH調整手段によるpH調整を実施した。具体的には、硝化細菌の生育を抑制すべく、塩酸でpH2に調整した水をモジュール内に30分間循環させた。このpH調整は、運転開始基準日から、11、24、38、52日目に実施した。水処理装置の運転は、運転開始基準日から56日間継続した。
運転中の逆浸透膜の処理圧力を測定した結果、および、運転中の被処理水の硝酸態窒素濃度を測定した結果を図3に示す。
【0050】
(比較例1)
実施例で実施したpH調整を実施する代わりに、薬液洗浄(pH11に調整した苛性ソーダで3時間洗浄後、pH2に調整した塩酸で3時間洗浄)を運転開始基準日から、28日目および48日目に実施した。
運転中の逆浸透膜の処理圧力を測定した結果、および、運転中の被処理水の硝酸態窒素濃度を測定した結果を図3に示す。
【0051】
図3から認識できるように、実施例1および比較例1において、硝化細菌生育阻害薬剤の注入停止後10日目頃から濃縮水の硝酸態窒素濃度が上昇し、硝化細菌が増殖していると推察される。
実施例1では、4回にわたってpH調整を実施し、その結果として、処理圧力の上昇は認められず、安定した運転が可能であった。
一方、比較例1では、1回目の薬液洗浄では、ある程度の洗浄効果が認められたが、2回目以降は洗浄効果が低下した。これは、モジュール内に多量の硝化細菌等の微生物が増殖しスライムを形成したため、薬液洗浄時、薬剤がスライム内部まで浸透できず、洗浄が不完全になったためと推察される。結果的に、処理圧力が上昇を続け、回復不能となった。
以上の結果より、本発明の水処理装置の一実施形態により、硝化細菌の増殖を抑制し、ろ過膜の目詰まりを抑制しながら安定的に運転できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】水処理装置の一実施形態の概略図。
【図2】水処理装置の他の実施形態の概略図。
【図3】一実施形態の水処理装置の運転における逆浸透膜の処理圧力等を表す図。
【符号の説明】
【0053】
1・・・被処理水槽
2・・・ポンプ
3・・・ろ過膜
4・・・添加槽
5・・・pH計
6・・・溶存酸素計
7・・・酸化還元電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化細菌の栄養となる成分が含まれている被処理水をろ過処理するろ過膜が備えられている水処理装置であって、
ろ過処理前の前記被処理水をpH2〜7に調整すべく前記被処理水にpH調整剤を添加するpH調整手段、
ろ過処理前の前記被処理水の溶存酸素を低減すべく前記被処理水に還元剤を添加する還元剤添加手段、および、
ろ過処理前の被処理水に硝化細菌生育阻害薬剤を添加する薬剤添加手段、のうちの少なくとも1種が備えられていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記pH調整手段、前記還元剤添加手段、および、前記薬剤添加手段のうちの2種以上が備えられている請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記ろ過膜により濃縮される濃縮水を採取して硝化細菌の消長を観測するモニタリング装置が備えられており、前記ろ過膜が逆浸透膜、限外ろ過膜、または、精密ろ過膜である請求項1又は2に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−183825(P2009−183825A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24706(P2008−24706)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】