説明

水切り装置を備えた炊飯設備

【課題】一種類の炊飯釜により炊飯工程の全行程(浸漬工程も含む)を連続的に行え、その上、浸漬中に溶出した米澱粉を炊飯前に十分に除去することが可能な水切り装置を備えた炊飯設備を提供する。
【解決手段】米を投入する米供給部3と、浸漬水を供給する給水部4と、米に水分を浸透させる浸漬部5と、浸漬後の浸漬水を取り除く水切り部22と、炊飯釜を加熱する炊飯部7と、炊飯後の米飯を蒸らす蒸らし部8と、蒸らし後に炊飯釜内の米飯を取り出す反転冷却部10と、米飯を取り出した炊飯釜を洗浄する釜洗浄部12とを含み、これら各部が同一搬送ライン上に関連的に配置され、これら各部を経由して複数の炊飯釜が循環輸送される炊飯設備であって、水切り部において、炊飯釜を反転させて、炊飯釜の内容物を取り出し、内容物のうち、洗浄した米のみを炊飯釜に再投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用の炊飯設備に関し、特に浸漬後に水切り装置を設けた一釜浸漬式連続炊飯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用の炊飯設備において、浸漬後の浸漬水を取り除き、新たに炊飯水を炊飯釜に供給することが行われている。これは、浸漬中に米から溶出した米澱粉を取り除くためであり、前記米澱粉を炊飯釜内に滞留させた状態で炊飯を行うと、焦げ等が発生するおそれがある。このため、例えば、特許文献1には、水を通し米を通さない蓋を浸漬後の炊飯釜に装着し、その蓋を装着したまま炊飯釜を傾け、炊飯釜内の浸漬水を排出させることが記載されている。
【0003】
しかし、浸漬水を取り除くよりも炊飯釜内の米から溶出した米澱粉を除去することが重要であるのに、特許文献1に記載の方法では、浸漬水の排出はある程度行えると思われるが、溶出した米澱粉の多くは米とともに炊飯釜内に残留してしまうと考えられる。
【0004】
また、特許文献2には、浸漬専用の容器を設け、この容器内で米の浸漬を行い、浸漬後に水切りした米を炊飯釜に移し替えることが記載されている。しかし、この方法では、溶出した米澱粉を移し替え時に除去することは可能であるが、炊飯釜とは異なる複数の容器を別途用意する必要があり、その上、炊飯釜だけではなくそれら容器をも制御しなければならず、炊飯手順が煩雑になると思われる。さらに、炊飯釜用の洗浄装置とは別に前記容器用の洗浄装置を設ける必要があるので、設備が大型し、かつイニシャルコストも増加すると考えられる。
【0005】
以上のことから、浸漬中に溶出した米澱粉を炊飯前に十分に除去することができ、その上、炊飯工程の全行程を一種類の炊飯釜で行えるようにして、炊飯手順をシンプルにし、炊飯設備を小型化することが強く望まれている。
【0006】
【特許文献1】特許第3921478号公報
【特許文献2】特許第3608074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点にかんがみて、一種類の炊飯釜により炊飯工程の全行程(浸漬工程も含む)を連続的に行え、その上、浸漬中に溶出した米澱粉を炊飯前に十分に除去することが可能な水切り装置を備えた炊飯設備を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、炊飯釜内に米を投入する米供給部と、炊飯釜内に浸漬水を供給する給水部と、米に水分を浸透させる浸漬部と、浸漬後の浸漬水を取り除く水切り部と、炊飯釜を加熱する炊飯部と、炊飯後の米飯を蒸らす蒸らし部と、
蒸らし後に炊飯釜内の米飯を取り出す反転冷却部と、米飯を取り出した炊飯釜を洗浄する釜洗浄部とを含み、これら各部が同一搬送ライン上に関連的に配置され、これら各部を経由して複数の炊飯釜が循環輸送される炊飯設備であって、前記水切り部において、炊飯釜を傾斜又は反転させ、該炊飯釜の内容物を取り出し、該内容物のうち、洗浄した米のみを炊飯釜に再投入する、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炊飯設備に設けた水切り装置によれば、浸漬完了後に炊飯釜内の内容物を全て取り出し、洗浄された米のみを炊飯釜に再投入するので、浸漬中に浸漬水に溶出した米澱粉をほぼ完全に除去することが可能である。
【0010】
また、炊飯工程の全行程を一種類の炊飯釜のみで行うので、炊飯における工程及び制御をシンプルに設定でき、また、装置の小型化も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を図1〜図5を参照しながら説明する。図1は炊飯設備1での炊飯手順を示したフロー図であり、各装置は省略して示してある。なお、各装置は搬送ライン13上に配設されており、該搬送ライン13により炊飯釜2が順次搬送される。
【0012】
まず、炊飯釜2は、米供給部3にて洗米が完了した米が供給され、給水部4において浸漬に要する浸漬水が供給される。米及び浸漬水が供給された炊飯釜2は、装着部20で蓋を装着された後、浸漬のための時間を確保するために浸漬部5へ送られる。そして、浸漬部5で所定の浸漬時間が経過した後、蓋取り部21で蓋が取り外され、蓋を取り外した状態で水切り部22を構成する水切り装置23に搬送される。
【0013】
水切り装置23について図4及び図5により説明する。水切り装置23は、反転装置30、水切りホッパー31、シュート32等からなる。反転装置30は、浸漬が終了した炊飯釜2内の内容物を、釜を傾斜又は反転させることによって下方に位置する水切りホッパー31に排出するためのものである。また、取り付け位置や設置個数は特に限定されないが、傾斜又は反転した炊飯釜2内に内容物が残留しないようにするための釜洗浄シャワーノズル33が設けられている。
【0014】
次に、水切りホッパー31について説明する。水切りホッパー31の上方には、炊飯釜2内の内容物が排出された時に、該内容物が装置外に飛び散らないようにするための受け部34が設けられている。また、炊飯釜2から排出された内容物が残留することなくスムーズに水切りホッパー31の下方に流下するように、洗浄水を噴射する洗浄シャワーノズル35が設けられている。なお、洗浄シャワーノズル35の取り付け位置や設置個数は特に限定されないが、効率良く水切りホッパー31内を洗浄可能なように配設することが望ましい。
【0015】
水切りホッパー31の下方の排出口42付近の側壁面には、複数の孔36が設けられている。この孔36の大きさは、米よりも小さく、米が通過不可能なサイズとなっている。孔36は、前記内容物のうち、米だけを水切りホッパー31の下方に残留させるためのものである。
【0016】
前記排出口42には、シャッタ37が設けられており、該シャッタ37は、シリンダ38の伸縮動作により開閉自在である。なお、シャッタ37には、図示されていないが前記内容物の重みによって撓まないようにガイドが設けられている
【0017】
符号39は、孔36から排出された浸漬水や溶出物を排出管40に導くためのトレーである。符号41は、洗浄された米を下方に流下させるための供給樋であって、排出口42の真下に位置する。
【0018】
供給樋41の下方にはシュート32が設けられている。シュート32は、シリンダ43に接続されており、シリンダ43の伸縮動作により左右にスライドする。また、シュート32には、給水ノズル44が設けられている。なお、符号45はドレン受けであり、シュート32の下端が図4で示す位置に停止しているときに、シュート32の下端から流出する付着水等を受ける。
【0019】
次に、水切り装置23の作用について説明する。蓋取り部21で蓋が外された炊飯釜2は、図示しない搬送手段により反転装置30に搬送される。なお、前記搬送手段には、例えば、特開2005−052432号公報に記載されているような産業ロボットを使用してもよい。反転装置30に搬送された炊飯釜2は、その位置で傾斜又は反転され、釜内の内容物が水切りホッパー31内に排出される。この際、釜洗浄シャワーノズル33から噴射される洗浄水により炊飯釜2内の内容物が全て水切りホッパー31に排出されると同時に釜内が洗浄される。この洗浄により、炊飯釜2内には浸漬中に溶出した溶出物が残存することはない。
【0020】
内容物が排出された炊飯釜2は、図示しない搬送手段により、反転装置30から搬送ライン13上の水切り部22の下流の位置に配設された計量部9に搬送される。計量部9に搬送された炊飯釜2には、この位置で、浸漬後に洗浄された米と浸漬水とは別の新たな炊飯水が供給される。なお、前記搬送手段には、炊飯釜2を反転装置30に搬送した搬送手段と同様なものを使用すればよい。
【0021】
水切りホッパー31に排出された炊飯釜2内の内容物は、該水切りホッパー31の下方に流下する。その際、洗浄シャワーノズル35から噴射される洗浄水により洗い流されるので前記内容物が水切りホッパー31の内壁面に残留することはない。前記内容物は、浸漬が終了した米、浸漬水、溶出物、米表面に付着していた糠、砕米の破片等である。
【0022】
水切りホッパー31の下端の排出口42は、この時点ではシャッタ37により閉じられているので、前記内容物は、水切りホッパー31の下方に一時滞留する。その際、水切りホッパー31の下方の側壁面に設けられた孔36からは、前記内容物のうち、米以外の前記内容物が全て孔36からトレー39に排出される。このため、水切りホッパー31の下方には洗浄水により洗浄された米だけが滞留することとなる。なお、前記排出を促進させるためには、洗浄シャワーノズル35から洗浄水を前記内容物に供給することが望ましい。水切り装置23では、浸漬後の炊飯釜内の溶出物を除去することを主な目的としており、浸漬水を除去することが目的ではない。
【0023】
水切りホッパー31の下方に滞留している前記米は、シャッタ37を開くことで下方に位置する供給樋41に排出される。その際、供給樋41の下方にはシュート32の開口部46が位置するように、シリンダ43によりシュート32をスライドさせておく。供給樋41に排出された前記米は、供給樋41を通過し、開口部46からシュート32に供給される。
【0024】
シュート32に供給された前記米は、シュート32内を流下し、シュート32の排出口47から炊飯釜2に投入される。この投入の際、給水ノズル44から炊飯水が供給され、前記米はこの炊飯水によりスムーズに炊飯釜2に投入される。つまり、炊飯釜2に米を投入すると同時に炊飯水を投入していることになる。
【0025】
前記投入においては、前記米を、浸漬時に使用していた釜と同一の炊飯釜2に再投入するようにしてもよいし、炊飯釜2の搬送効率によっては、先行して搬送ライン13上を搬送されている別の炊飯釜2に投入するようにしてもよい。後者の場合は、浸漬時と炊飯時とで炊飯釜が異なることになる。
【0026】
また、給水ノズル44からは、所定の量の炊飯水を供給するようにすればよいが、例えば、蓋取り部21で蓋を外され水切り装置23の反転部30に搬送される時点での、内容物を含めた炊飯釜2の重量を計量し、その重量を基準値として記憶するとともに、炊飯水の給水時に計量部9で内容物を含めた炊飯釜2の重量を計量し、前記基準値と比較して、炊飯釜2への給水量を制御するようにすることができる。
【0027】
なお、前記基準値を求めるタイミングは、炊飯釜2が搬送ライン13上の給水部4と水切り部22との間にあって、米及び浸漬水供給された後で反転装置30により釜内の内容物が排出される前であればいつでもよい。
【0028】
また、米供給部3で供給した米の重量を基準にして供給する炊飯水の量を求めるようにしてもよい。
【0029】
水切り装置23で、浸漬水及び浸漬水中に溶出した米澱粉(溶出物)等が取り除かれた米を投入された炊飯釜2は、具材・調味液供給部6で必要に応じて具材や調味液が添加され、撹拌部24にて撹拌される。該撹拌では、炊飯釜2内の内容物のならしも行えるようにするとよい。そして、装着部25で再度蓋を装着してから炊飯部7へ送られる。
【0030】
炊飯部7で炊飯され飯米となった後、炊飯釜2は、飯米の蒸らしのための時間を確保するために蒸らし部8へ送られる。所定の蒸らし時間が経過してから、炊飯釜2は蒸らし部8から取り出されて蓋取り部26で蓋が取り外され、反転冷却部10で反転されて炊飯釜2内の飯米が取り出される。反転冷却部10では反転、撹拌、ほぐし冷却などが行われ、必要に応じてこの後冷却部11で冷却される。ここで取り出された飯米は、次工程に搬送される。
【0031】
反転冷却部に飯米が投入された後の炊飯釜2は、炊飯釜洗浄部12で洗浄され、そして米供給部3に搬送されて最初からの工程が繰り返される。
【0032】
以上の炊飯設備1は、図2に示すように、炊飯釜2内に供給する米、浸漬水、炊飯水、具材及び調味液の量を入力する入力部15と、この入力部15が接続された制御部16と、この制御部16により総合的に制御される米供給部3、給水部4、浸漬部5、具材・調味液供給部6、炊飯部7、蒸らし部8、計量部9、反転冷却部10、洗浄部12及び水切り部22がそれぞれ接続してある。
【0033】
なお、入力部15での入力値により、米供給部3及び給水部4で炊飯釜2に所定量の米及び浸漬水を供給し、浸漬後の炊飯釜2に炊飯水、具材及び調味液を投入するので、搬送ライン13上の炊飯部7の上流の位置に、水切り部22及び具材・調味液供給部6を設けてある。
【0034】
各炊飯釜2に供給する炊飯水は、水切り部22を形成する水切り装置23において供給され、具材及び調味液は炊飯水供給後に炊飯釜2に投入されるので、米供給後であっても、通常60分を要する浸漬後に、炊飯釜2毎に供給する炊飯水、具材及び調味料の供給量を変更することが可能である。
【0035】
図3により更に詳細に説明すると、搬送ライン13上を順に搬送される炊飯釜2には、まず、米供給部3により規定の量である、例えば6.5kgの米が投入される。さらに給水部4により9kgの浸漬水が給水される。
【0036】
米及び浸漬水が投入された炊飯釜2は、浸漬部5に搬送され約60分間、浸漬のための時間が確保される。本発明の炊飯設備1では、浸漬後に炊飯釜2へ炊飯水、具材及び調味液が供給される。このため、浸漬時間内に炊飯釜2へ供給する炊飯水、具材及び調味液の量に変更が発生しても全く支障がない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による一釜浸漬連続炊飯設備のフローを示す図である。
【図2】炊飯設備1の制御ブロック図を示す図である。
【図3】炊飯設備1の制御を示す概略図である。
【図4】水切り装置22の概略図である。
【図5】水切り装置22の概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 炊飯設備
2 炊飯釜
3 米供給部
4 給水部
5 浸漬部
6 具材・調味液供給部
7 炊飯部
8 蒸らし部
9 計量部
10 反転冷却部
11 冷却部
12 洗浄部
13 搬送ライン
15 入力部
16 制御部
20 装着部
21 蓋取り部
22 水切り部
23 水切り装置
24 撹拌部
25 装着部
26 蓋取り部
30 反転装置
31 水切りホッパー
32 シュート
33 釜洗浄シャワーノズル
34 受け部
35 洗浄シャワーノズル
36 孔
37 シャッタ
38 シリンダ
39 トレー
40 排出管
41 供給樋
42 排出口
43 シリンダ
44 給水ノズル
45 ドレン受け
46 開口部
47 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯釜内に米を投入する米供給部と、
炊飯釜内に浸漬水を供給する給水部と、
米に水分を浸透させる浸漬部と、
浸漬後の浸漬水を取り除く水切り部と、
炊飯釜を加熱する炊飯部と、
炊飯後の米飯を蒸らす蒸らし部と、
蒸らし後に炊飯釜内の米飯を取り出す反転冷却部と、
米飯を取り出した炊飯釜を洗浄する釜洗浄部とを含み、
これら各部が同一搬送ライン上に関連的に配置され、これら各部を経由して複数の炊飯釜が循環輸送される炊飯設備であって、
前記水切り部において、炊飯釜を傾斜又は反転させて、該炊飯釜の内容物を取り出し、該内容物のうち、洗浄した米のみを炊飯釜に再投入することを特徴とする水切り装置を備えた炊飯設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−112597(P2009−112597A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290265(P2007−290265)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】