説明

水力発電機

【課題】商用電源からの電源供給がない環境においても電装機器への給電を可能とし、環境に負荷をかけることがない水力発電機を提供する。
【解決手段】水の流れを受けて回転するように構成された水車1Aと、この水車1Aによって得られる回転力を電力に変換する発電部1Bとを有する水力発電機21において、前記水が水車1Aの羽根20に当たる角度および流量を調整し、水車1Aに応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口14Eを備え、この噴射口14Eと水車1Aの位置関係を固定すると共に水を前記噴射口14Eに導入する導入流路14Cを形成する保持部材14’とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電機に関するものであり、より詳細には、水圧、流量、水栓による圧力損失など、水の流れの状態の異なる環境に対応して設置される水力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の流れを制御する電磁弁などを備えた水栓に水力発電機を組み合わせて用いることにより、エネルギー資源の有効活用を行なうことが行なわれている。特許文献1には、水栓によって制御された水の流れによって回転する水車と、この水車の回転力を電力に変換する発電部を備える水力発電機が記載されており、これによって水の流れを利用して電力を発生させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−100625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような構成では、水栓と水力発電機を組み合わせたことにより、水栓の構造によって水圧や流量が変化する割合が異なるために、設置環境に合わせた構造の変更を行なう必要が生じる。
【0005】
例えば、手洗い用の水栓または小便器洗浄用の水栓では比較的流量が少なく、開栓時間が短いことが多いと考えられるが、大便器洗浄用の水栓やスプリンクラーなどの潅水装置の水栓では大流量の水が比較的長い時間流れる。
【0006】
また、負荷となる電装機器によっても必要とされる電力量が異なる。負荷が温水洗浄便座、暖房便座、フットライト、洗面照明など、比較的大きな電力を必要とするシステムの場合には、水力発電機は大きな電力を出力する必要があるが、自動水栓回路などのシステムの場合には水力発電機が大きな電力を出力する必要はない。
【0007】
このため、大電力を必要とするシステムにおいて水力発電機に大流量の水を流す場合には、水力発電機の水車に当てる水を開口面積の小さなノズルによって絞り込むと、このノズルが水の流れにおける大きな負荷となるために水力発電機に大流量の水を流すことができないという事態が発生する。また、ノズルから噴射される水の流速は早くなるので、それだけ水車が高速回転してその寿命が短くなることが懸念される。
【0008】
他方、比較的小電力しか消費しないシステムにおいて、水栓などによって絞り込まれた少流量の水を水力発電機に流す場合には、ノズルの開口面積が大きすぎるとノズルにより絞り込まれることなく水車に水が当たるので、水車に作用する水の流速が遅くなり、水車に加える力が弱くなり、水車が回転できないか有効利用できるほどの電力を得ることができないという問題が発生する。とりわけ、手洗い用の自動水栓においては流路中に設けた手動バルブを使用者が操作するなどして流量を絞ることもあり、これによって、水力発電機による発電が行なえないということが発生する可能性がある。したがって、水車に回転力を与えるために、水車に水を噴流で当てる必要があり、そのためにノズル形状を小口径にする必要がある。
【0009】
従来の水力発電機では水車が収容される本体ブロックにノズルが形成されているので、この水力発電機を取り付ける環境に合わせて形状が異なる本体ブロックを形成する必要があり、水力発電機の全体的な設計変更が必要となる。例えば、特許文献1の図2に示すように、水の流れを変えることなく水車の羽根を回転させる構成を採用することなどが考えられる。
【0010】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、水圧、流量、水栓による圧力損失など、水の流れの状態の異なる環境に適合して流量を調整することが可能である水力発電機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、第1発明は、水の流れを受けて回転するように構成された水車と、この水車によって得られる回転力を電力に変換する発電部とを有する水力発電機において、前記水が水車の羽根に当たる角度および流量を調整し、水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口を備え、この噴射口と水車の位置関係を固定すると共に水を前記噴射口に導入する導入流路を形成する保持部材とを備えることを特徴とする水力発電機を提供する(請求項1)。
【0012】
前記構成よりなる水力発電機によれば、噴射口の開口面積および/または数が水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように調整されているので、水流のエネルギーを効率よく水車に伝達できる。保持部材は水を噴射口に導入する導入流路を形成するものであるから、水を噴射口に効率よく導入することができ、噴射口が保持部材に形成されているので、噴射口の水路形状や開口面積は、保持部材だけを部品交換するだけで変更することができ小さな保持部材の金型修正だけで済むため、水の流れの環境に容易に合わせる事ができる。保持部材に噴射口を形成することにより水力発電機を製造するための金型を少なくすることができる。
【0013】
すなわち、水の流量が多い場合には、噴射口の開口面積を大きくし、噴射口の数を多くすることにより水力発電機による圧力損失を小さくすることができ、かつ、比較的大きな電力を出力することができる。一方、水の流量が少ない場合には、噴射口の開口面積を小さくし、噴射口の数を少なくすることにより、少ない流量で水車を回転させることができ、電力を出力することができる。
【0014】
第2発明は、水の流れを受けて回転するように構成された水車と、この水車によって得られる回転力を電力に変換する発電部とを有する水力発電機において、前記水が水車の羽根に当たる角度および流量を調整し、水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口を備えるノズル体と、このノズル体と水車の位置関係を固定すると共に水を前記噴射口に導入する導入流路を形成する保持部材とを備えることを特徴とする水力発電機を提供する(請求項2)。
【0015】
前記構成よりなる水力発電機によれば、噴射口の開口面積および/または数が水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように調整されているので、水流のエネルギーを効率よく水車に伝達でき、水の流れが水車に与える回転力を調節できる。発電部には発電するために最も効率の良い回転数があるが、通常の水の使用状況において発電部が最も効率の良い回転数になるように噴射口の開口面積および/または数が調整されていることにより、発電効率を引き上げられる。
【0016】
また、噴射口がノズル体に形成されているので、噴射口の水路形状や開口面積は、小さなノズル体だけを部品交換するだけで変更することができる。つまり、従来のように水力発電機本体に形成された溝を変更するには大掛かりな金型修正が必要となるが、本発明によれば小さなノズル体だけの金型修正で済むため、製造コストを抑えて水の流れの環境に容易に合わせる事ができる。
【0017】
前記ノズル体と保持部材の結合部に位置ずれ防止段部を備える場合(請求項3)には、水車の羽根に対するノズル体の位置をより確実に保持できるので、安定した水車の回転を保つことができる。
【0018】
前記噴射口はスリット形状で、その高さは水車の羽根の高さ以内であり、前記開口面積はスリットの高さおよび/または幅によって調整されており、かつ、水車の羽根と異なる数だけ周方向に等間隔に形成されたものである場合(請求項4)には、開口面積を容易に調整することができると共に、噴射口から噴射される水がより大きな回転力を発生させるように確実に水車の羽根に当てることができる。
【0019】
また、前記水力発電機の発電部に接続されて整流を行う整流回路と、この整流回路に接続されて電圧を蓄電に適切な電圧に調節する蓄電電圧調節回路と、この電圧変換回路によって調節された電力を蓄電するコンデンサと、このコンデンサに蓄電した電力を負荷に必要な電圧に調節する放電電圧調節回路と、この放電電圧調節回路の出力または一次電池の出力の何れか一方を選択的に接続する選択接続回路を有する電源ユニットを設けることにより、発電部から得られる電力とコンデンサに蓄電されている電力に合わせてコンデンサにさらに蓄電を行うことができるので、コンデンサへの初期蓄電状態から満充電状態まで水車を回転させる回転力を一定に保つことができ、常に効率的な発電と蓄電を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
前述したように、本発明によれば、電磁弁を含む水栓金具や水圧などの環境によって変わる最適な吐水流量に合わせて、必要最小限の部品のバリエーションを持たせることにより、様々な流量に対応させることができる。
【0021】
また、水栓金具を変えた場合でもこれに対応させて水力発電機を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の水力発電機を用いた自動水栓システムの全体構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の水力発電機の構成を示す部分切断平面図である。
【図3】前記水力発電機の構成を示す縦断面図である。
【図4】噴射口の変形例を示す平面図である。
【図5】噴射口の別の変形例を示す縦断面図である。
【図6】噴射口のさらに別の変形例を示す平面図である。
【図7】第2実施形態の水力発電機の構成を示す縦断面図である。
【図8】(A)及び(B)は、第3実施形態の水力発電機の構成を示す部分切断平面図及び縦断面図である。
【図9】(A)〜(D)は、第3実施形態で用いる保持部材の構成を示す縦断面図、斜視図、底面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の水力発電機1を用いた自動水栓システム2の構成を示すブロック図であり、この自動水栓システム2は水の流れを用いて発電する水力発電機1と、この水力発電機1によって生成された電力を蓄電して安定した電力を供給する電源ユニット3と、この電源ユニット3から供給される電力を用いて使用者の人体を検知することにより吐水・止水の切換えを行なう自動水栓制御回路4と、水の流れを継断可能である電磁弁5とを備える。また、6は一次電池などの自動水栓システム2のバックアップ電源であり、2Aは自動水栓システム2の吐水口である。
【0024】
前記電源ユニット3は水力発電機1によって生成される交流電力を直流電力に変換する整流回路3Aと、この整流回路3Aに接続されて電圧を蓄電に適切な電圧に調節する蓄電電圧調節回路3Bと、この電圧変換回路3Bによって調節された電力を蓄電するコンデンサ3Cと、このコンデンサ3Cに蓄電した電力を負荷に必要な電圧に調節する放電電圧調節回路3Dと、この放電電圧調節回路3Dの出力またはバックアップ電源6の出力の何れか一方を選択的に接続する選択接続回路3Eとを有する。
【0025】
前記自動水栓制御回路4は前記電源ユニット3から得られる電力を受ける電源回路4Aと、前記電磁弁5を開閉駆動する電磁弁駆動回路4Bと、制御回路4Cと、人体検知センサ4Dとを備える。
【0026】
前記水力発電機1は、水の流れに挿入される水車1Aと、この水車1Aに連結された発電部1Bとを備え、この発電部1Bは例えば永久磁石を備えた回転子1Baとこの回転子1Baに近接する位置に配置しコイルCを設けた固定素子1Bbとを備える。なお、発電部1Bは固定素子1Bb側にコイルCを設けているので、コイルCに対する電気配線を容易としているが、回転子1Ba側にコイルCを設けてもよい。
【0027】
図2、図3に示すように、第1実施形態の水力発電機1は、水の流路中に介在させられるように端部に雌螺子部10Aおよび雄螺子部10Bを備える本体10と、この本体10の水路内に形成された水車収容部11に水車1Aを回転自在に支持する回転軸12と、水が水車1Aの羽根に当たる角度および流量を調整し、水車1Aに応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口13Aを備えるノズル体13と、このノズル体13と水車1Aの位置関係を固定すると共に水を前記噴射口13Aに導入する導入流路を形成する保持部材14と、この保持部材14を押さえつけた状態で水車1Aを水車収容部11に収容した状態で水密状態にする隔壁15と、この隔壁15を介して磁性体を備えた回転子1Baに近接する位置にコイルからなる固定素子1Bbを配置させた状態で固定するコイル押さえ部16を備える。
【0028】
なお、10Cは本体10に設けた回転軸12の軸受け、15Aは隔壁15に設けた回転軸12の軸受け、15Bは隔壁と本体10の間に挟みこまれて水密状態を確実なものとするOリングである。
【0029】
前記水車収容部11は水車1Aが回転自在に収容できる程度の内径を有する略円筒形状の空間であり、水車1Aの下端部をガイドするガイド壁11Aを備える。
【0030】
前記回転軸12は前記水車1Aに設けた7枚の羽根20を支持すると共に、回転子1Baを連結支持するものである。
【0031】
前記ノズル体13はその円周方向に4個の噴射口13Aを備え、その下端部の内周面に前記ガイド壁11Aの上端部の外周部に嵌合することにより水車1Aとの位置関係を固定した所定位置に位置決め保持される凹部13Bを有し、かつ、その上端部で前記噴射口13Aに重ならない部分の外周面に噴射口13Aの数に合わせた個数の位置ずれ防止段部13Cを備える。
【0032】
ノズル体13に設けた噴射口13Aの形状は図2に図示するようにできるだけ外周から円周方向に近づけて水を噴射させることができるよう角度をつけて形成されており、その形状はスリット形状である。また、その高さHは例えば1〜3mmなど水車1Aの羽根20の高さ以内で設定可能であり、その幅Wは0.5〜1.0mmなどである。つまりこの高さHと幅Wの乗算値が噴射口13Aの開口面積であり、この開口面積にノズル数を乗算した総開口面積が動力伝達機構1に流れる水の最大流量においても水流に大きな影響を与えない程度に設定する。なお、本実施形態においては、高さHは3mm、幅Wは1mmの噴射口13Aを4個、回転角90°毎に等間隔で形成し、比較的大流量を流すことができるように設定した例を示している。
【0033】
前記保持部材14は前記位置ずれ防止手段13Cに嵌合する前記位置ずれ防止手段14Aと、水車1Aを水車収容部11内に収めた状態で水車1Aの羽根20を保護する保護フランジ14Bと、ノズル体13を所定位置に位置決めした状態で本体10の段部10Dの間に環状の導入流路14Cを形成する流路形成フランジ14Dとを備える。
【0034】
前記隔壁15は前記回転子1Baと固定素子1Bbの間に介在させる円筒部分15Cを備え、その外周部が前記Oリング15Bによって水密を保って本体10に接続される金属板である。また、コイル抑え部16は隔壁15を本体10に押し付けることにより、水密状態を確実に保つ板状部材である。
【0035】
前記羽根20は前記噴射口13Aを通って外周から流れ込む水を受け止める受圧面20Aを有するものであり、その数は噴射口13Aの数と異ならせており、好ましくは奇数である。本実施形態では7枚の羽根を形成しているが、本発明は羽根20の数を7枚に限定されるものではない。羽根20の下端部で前記ガイド壁11Aに対応する位置には円筒状のガイドリング20Bを備え、たとえ水車1Aが何らかの力によってその中心から外れた位置において回転することがあっても羽根20が直接的ガイド壁11Aやノズル体13に衝突することがないように構成している。
【0036】
以下、前記構成の水力発電機1の動作を図1の自動水栓システム2を例にとって説明する。自動水栓システム2は電源ユニット3から得られる電力を用いてセンサ回路4Dが間欠的に赤外線などのセンサ光を照射し、使用者が手を差し伸べたことを検知すると制御回路4Cがこの検知信号を受けて電磁弁駆動回路4Bを介して電磁弁5を開かせる。
【0037】
電磁弁5が開くと雌螺子部10Aおよび雄螺子部10Bを用いて電磁弁5の下流側に接続された本体10内に水が流れ、水力発電機1が発電を行なう。このとき、雌螺子部10Aから流入した水は保持部材14およびノズル体13と段部10Dの間の環状の導入流路14Cに導かれ、この導入流路14Cに連通する噴射口13Aを介して円周方向に回転する流れを形成してノズル体13の内側に噴射される。
【0038】
噴射口13Aから噴射される水は羽根20の受圧面20Aにほぼ直角に近い角度で噴射されるので、水車1Aに強力な回転力を与えることができる。加えて、噴射口13Aの形状がスリットであるから効率よく羽根20の外側部分に均一な層流となって噴射されるので、効率よく回転力を与えることができ、かつ、噴射口13Aの高さHは水車1Aの羽根20の高さ以内であるから、噴射される水は確実に羽根20にあたって回転力を生み出すものとなる。
【0039】
羽根20に当たって水車1Aに回転力を与えた水は図3において下方に流れて雄螺子部10Bを介して下流側に流れることにより吐水口2Aから吐水される。さらに、羽根20の数と噴射口13Aの数を異ならせているので羽根20と噴射口13Aの関係が回転方向においてそれぞれ異なっているので、回転ムラをできるだけ抑えることができる。
【0040】
一方、水車1Aによって得られた回転力により永久磁石を有する回転子1Baが回転することにより固定素子1Bb内のコイルCに交流の起電力が発生し、この交流の電力は整流回路3Aによって直流変換され、蓄電圧調節回路3Bによってコンデンサ3Cに蓄電するために調節された電圧に調節される。なお、直列に接続された2つのコンデンサ3C1,3C2はどちらかの電圧V1,V2が定格電圧(満蓄電)になったときに蓄電を止める必要があるが、畜電開始時の電圧V1,V2が同じ電圧でない場合にコンデンサ3C1,3C2は満蓄電とはならない。
【0041】
例えば、充電開始時におけるコンデンサ3C1の電圧V1がコンデンサ3C2の電圧V2より高い場合、コンデンサ3C1,3C2を同じように蓄電すると、コンデンサ3C1の方が早く定格電圧に到達するため蓄電が完了するが、コンデンサ3C2は定格電圧に到達しないという状況が生じ、両コンデンサ3C1,3C2を満蓄電できないという状況が発生する。したがって、蓄電圧調節回路3Bはコンデンサ3C1,3C2の端子電圧V1,V2をモニタすることにより、どちらかのコンデンサ3C1,3C2が先に満蓄電とならないように、畜電圧調節回路3Bはコンデンサ3C1,3C2が同じように(同時に)定格電圧となるようにそれぞれのコンデンサ3C1,3C2への蓄電電圧を制御する。
【0042】
コンデンサ3Cに蓄電された電力は放電電圧調節回路3Dによってバックアップ電源6より大きい電圧になるように調節して出力することにより選択接続回路3Eは放電電圧調節回路3D側からの電力を選択的に電源回路4Aに供給する。このときバックアップ電源6からは電流が流れないので、バックアップ電源6が消費することはない。
【0043】
使用者が自動水栓の使用を止めると、センサ回路4Dが使用者を検知しなくなり、制御回路4Cが電磁弁駆動回路4Bを介して電磁弁5を閉じさせることにより、水の流れが止まることになり、水力発電機1による電力の生成が止まる。つまり、コンデンサ3Cに蓄電された電力を用いて自動水栓制御回路4を駆動させ、コンデンサ3Cが放電しきると、昇圧回路3Dの出力電圧がバックアップ電源6の出力電圧を下回ることにより、以後はバックアップ電源6からの電力供給が行なわれることになる。
【0044】
本発明の水力発電機1ではノズル体13に設けた噴射口13Aによって水力発電機1に流れる水の流量を環境に合わせて調節することが可能であるから、例えば自動水栓システム2において電磁弁5より上流側において流路絞りを設けた場合や、水圧の低い地域において使用した場合においても、これに対応することができる。
【0045】
図4は自動水栓システム2において流路絞りを設けた場合に使用されるノズル体13の変形例を示す図である。図4(A)は噴射口13Aを3個にした場合、図4(B)は噴射口13Aを2個にした場合、図4(C)は噴射口13Aを1個にした場合を示す図である。図4(A)〜図4(C)に示すように、噴射口13Aの数を調節することにより、少ない流量であっても噴射口13Aから噴射される水の勢いを保つことができ、水車1Aに回転力を加えることを可能とすることができる。
【0046】
図5は前記ノズル体13の別の変形例を示す図である。図5(A)は噴射口13Aを羽根20の高さの75%の高さH1に形成した例を示し、図5(B)は噴射口13Aを羽根20の高さの半分の高さH2に形成した例を示し、図5(C)は噴射口13Aを羽根20の高さの25%の高さH3に形成した例を示す。図5(A)〜図5(C)に示すように、噴射口13Aの高さH1〜H3を変えることによっても水力発電機1に流す水の流量を調整することができる。
【0047】
図6は前記ノズル体13のさらに別の変形例を示す図である。図6(A)〜図6(C)は噴射口13Aの幅をそれぞれW1,W2,W3と調整した例を示す。図6(A)〜図6(C)に示すように、噴射口13Aの幅W1〜W3を変更することにより水力発電機1に流す水の流量を調整することも可能である。噴射口13Aの幅Wは容易に広くすることができるので、水力発電機1を大流量化するのに適している。
【0048】
また、図4〜図6に示す変形例は組み合わせて用いることにより、水力発電機1に流す水の流量を広いスパンで調整することが可能となる。また、何れの場合にも、水源の水圧や流量、水栓の圧力損失など異なる環境に水力発電機1を取り付ける場合には、水力発電機1全体の構造を変えることなく、噴射口13Aの数、高さH、幅Wの少なくとも一つを変更したノズル体13と差し替えることにより、これに対応することができるので、製造コストを最小限に抑えることができる。
【0049】
図7は第2実施形態の水力発電機21の構成を示す図である。図7に示す例において、第1実施形態の水力発電機1と異なる点は、保持部材14’がその円周方向に4個の噴射口14Eを備え、その下端部の内周面に前記ガイド壁11Aの上端部の外周部に嵌合することにより水車1Aとの位置関係を固定した所定位置に位置決め保持される凹部14Fを有する点である。その他の構成は第1実施形態の水力発電機1と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の水力発電機21においても、保持部材14’に形成する噴射口14Eの高さH、幅、数を調整することにより、水力発電機21を設置する環境(水圧、流量、水栓の圧力損失)に合わせて調整することができる。
【0051】
つまり、水力発電機21全体の構成を変えることなく、保持部材14’に形成した噴射口14Eの形状を変えることにより環境に適応させることができるので、それだけ、低コストにてあらゆる環境に合わせて設置可能な水力発電機21を製造することができる。なお、第1実施形態の水力発電機1に比べて部品点数を一つ減らすことができるので、それだけ、金型の数を少なくすることができ、それだけ製造コストの削減を行うことができる。
【0052】
図8(A)及び(B)は第3実施形態の水力発電機31の構成を示す図、図9(A)〜(D)は水力発電機31に用いる保持部材14’の構成を示す図である。第3実施形態の水力発電機31は、第2実施形態の水力発電機21と比べて以下の点で異なる。
【0053】
まず、本体10の平面視形状が矩形状ではなく略円形状であり(図8(A)参照)、よりコンパクトとなっている。また、保持部材14’が備える噴射口14Eの数が4個ではなく2個であり(図8(A)及び(B)、図9(A)〜(D)参照)、水車1Aの羽根20が7枚ではなく13枚である(図8(A)参照)。
【0054】
隔壁15と本体10の間に挟みこまれて水密状態を確実なものとするOリング15Bの設置位置は、図7に示す位置よりも本体10の奥側に移動させてある(図8(B)参照)。
【0055】
回転子1Baの永久磁石Mは回転子本体に対してスナップフィットSにより簡単に装着可能となっている(図8(B)参照)。
【0056】
コイル押さえ部16として、固定素子1Bbを上下から挟み込む一対の鉄心16Aを用い、両鉄心16Aの先端部(永久磁石Mに対向する部分)には上下方向に延び互いに接触しない範囲で噛合う櫛の歯部分が設けられている。
【0057】
その他の第3実施形態の水力発電機31の構成は第2実施形態の水力発電機21と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0058】
1,21 水力発電機
1A 水車
1B 発電部
13 ノズル体
13A 噴射口
14、14’ 保持部材
14C 導入流路
14E 噴射口
20 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の流れを受けて回転するように構成された水車と、この水車によって得られる回転力を電力に変換する発電部とを有する水力発電機において、
前記水が水車の羽根に当たる角度および流量を調整し、水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口を備え、この噴射口と水車の位置関係を固定すると共に水を前記噴射口に導入する導入流路を形成する保持部材とを備えることを特徴とする水力発電機。
【請求項2】
水の流れを受けて回転するように構成された水車と、この水車によって得られる回転力を電力に変換する発電部とを有する水力発電機において、
前記水が水車の羽根に当たる角度および流量を調整し、水車に応じて効率的な発電が可能となる回転力を発生させるように開口面積および/または数が調整された噴射口を備えるノズル体と、このノズル体と水車の位置関係を固定すると共に水を前記噴射口に導入する導入流路を形成する保持部材とを備えることを特徴とする水力発電機。
【請求項3】
前記ノズル体と保持部材の結合部に位置ずれ防止段部を備える請求項2に記載の水力発電機。
【請求項4】
前記噴射口はスリット形状で、その高さは水車の羽根の高さ以内であり、前記開口面積はスリットの高さおよび/または幅によって調整されており、かつ、水車の羽根と異なる数だけ周方向に等間隔に形成されたものである請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の水力発電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225341(P2012−225341A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85163(P2012−85163)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】