説明

水力発電装置

【課題】高落差の水流に対応可能で、エネルギー回収効率の高い水力発電装置を提供する。
【解決手段】水管WT1,WT2に連結されて電機子コイル14を有する円環状の固定子4,39と、外周に永久磁石21を有すると共に内周より径方向内側に突出するプロペラブレード28を有し、固定子4,39の内周側に配置される円環状の複数の回転子19と、プロペラブレード28の内側先端を結ぶ径よりも外径が小さく、プロペラブレード28の内側先端に沿うように各回転子19の中心軸線上に固設される固定ボス30,47とを備え、各回転子19が水流方向に直列配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水管から流入する水流でプロペラブレードを回転させて発電する水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇等のエネルギー問題やオゾン層破壊等の環境問題が地球規模での懸案事項となっており、石油等の化石エネルギー源に代替し得るクリーンな自然エネルギーを利用する種々の研究がなされている。現在、国内には高低差のある上下水道、河川、農業用水、工場排水などの未使用小水力資源が約24万kW存在すると言われており、それらを利用してダムを造らずに発電を行う水路式の小水力発電が注目されている。
【0003】
この小水力発電には、低落差小流量であっても効率よく発電できる構造が求められ、例えば、小水力用フランシス水車、ポンプ逆転水車、横軸プロペラ水車などが使用される。これらのうち横軸プロペラ水車は、1mから20m程の低落差、0.06m/sから3m/s程度の流量に適用して、2kWから300kW程度の電力を得ることができ、特に低落差の小水力発電に適合するとされている。
【0004】
従来の横軸プロペラ水車は、水路の中心に設けた回転軸の周囲に複数のプロペラブレードを設け、水流による回転軸の回転運動を外部の発電機に伝達して発電する構成としている。しかし、水中にある横軸プロペラ水車の回転軸と外部にある発電機の回転軸とを接続する必要があるため、水管を外部に貫通する回転軸のシール構造を要して装置が複雑化することとなる。
【0005】
そこで、特許文献1乃至3には、水管を貫通する回転軸が存在せず複雑なシール構造等を必要としない水力発電機が開示されている。これらの水力発電機では、外周に永久磁石を有する回転子の内周に設けた羽根車が流体通路に配置され、回転子の外周側に電機子コイルを有する固定子が配置されている。即ち、該水力発電機は、羽根車が水流を受けることで永久磁石を有する回転子が回転し、電磁誘導により固定子の電機子コイルに電力が発生する仕組みとなっている。
【特許文献1】特開平5−111216号公報
【特許文献2】特開2000−213446号公報
【特許文献3】特開2003−129931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載の従来のプロペラ型の水力発電機では、キャビテーション等の問題により1台では20m以上の高落差の水流に適用することができないという問題があった。また、回転子の羽根車が管断面積の全面に配置されているため、水流は大きい流路面積で羽根車に流れ込み、羽根車に作用する際の水の流速が高速化されず、エネルギー回収効率を十分に上げることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、高落差の水流に対応可能で、エネルギー回収効率の高い水力発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る水力発電装置は、水管に連結されて電機子コイルを有する円環状の固定子と、前記固定子の内周側に配置されて外周に永久磁石を有する円環状の複数の回転子と、前記固定子に接続された状態で前記回転子の中心軸線上に固設される固定ボスとを備え、前記各回転子はそれぞれ径方向内側に突出するプロペラブレードを有し、前記固定ボスは前記プロペラブレードの内側先端を結ぶ径よりも小径であり、前記各回転子が水流方向に直列配置された状態で前記各プロペラブレードが前記固定ボスの外周面に沿って回転する構成であることを特徴とする。
【0009】
このようにすると、複数の回転子が水流方向に直列配置されていることで、水流が連続して複数のプロペラブレードを通過し、多くの水流エネルギーが連続して電気エネルギーに変換される。よって、キャビテーション等が発生しにくくなり、高落差の水流に適用することが可能となる。また、固定ボスが回転子の中心軸線上に固設されて、プロペラブレードが固定ボスと分離された状態で回転するので、回転子の重量が小さくなりエネルギー回収効率が向上する。さらに、固定ボスが水流を径方向の外側に案内することで、プロペラブレードに作用する水流は流路面積が小さく流速が増加することとなり、さらにエネルギー回収効率が向上する。
【0010】
前記複数の回転子は、互いに独立して回転する構成であってもよい。
【0011】
このようにすると、個々の回転子は独立して回転するので、夫々の回転子が互いに干渉せずに最適効率で回転でき、エネルギー回収効率が向上する。
【0012】
前記固定子及び前記固定ボスは、前記複数の回転子にそれぞれ対応するように複数設けられており、前記固定子、前記回転子及び前記固定ボスを備える複数の発電ユニットが水流方向に直列で分解可能に連結されていてもよい。
【0013】
このようにすると、水力発電装置は、固定子と回転子と固定ボスとを備える発電ユニットで個々にユニット化され、発電ユニット単位で分解可能となっているので、メンテナンス性が向上する。
【0014】
前記複数の固定ボスは、互いの外径が同一であり水流方向に連続配置されていてもよい。
【0015】
このようにすると、水流方向に直列配置された夫々の固定ボスが同径で且つ連続しているので、各固定ボスの間では流路面積が水流方向に増減することがなく、エネルギー損失を低減することができる。また、複数の固定ボスは連続して設けられているので、水流方向の装置長さが低減されてコンパクト化することができる。
【0016】
前記複数の固定子は、互いの連結面に径方向の位置決めを行う嵌合構造を有していてもよい。
【0017】
このようにすると、隣接する複数の発電ユニットを連結する際に、隣接する固定子の連結面が嵌合されることで、隣接する同径の固定ボス同士が径方向に自動的に位置決めさせることが可能となる。したがって、水力発電装置の現場での組付け性が非常に良好となる。
【0018】
前記回転子の側面及び円周面に対面配置されてスラスト方向及びラジアル方向の荷重を支える水潤滑軸受をさらに備え、少なくとも1つの前記発電ユニットの前記水潤滑軸受が、隣接する別の前記発電ユニットの前記固定子の連結面により直接支持されていてもよい。
【0019】
このようにすると、潤滑油を使わない水潤滑軸受を用いているので、水流を汚染する心配がないと共に、潤滑油のシール構造が要らず複雑なメンテナンスも不要とすることができる。しかも、隣接する別の発電ユニットの固定子の連結面が水潤滑軸受の支持壁面を兼用しているので、水潤滑軸受の支持用の壁材が削減されて、部品点数及び組立性工数の削減を図ることができる。
【0020】
少なくとも1つの前記発電ユニットは、潤滑用に水を供給する給水配管と連通する給水空間を有すると共に、前記給水空間を隣接する別の前記発電ユニットの前記水潤滑軸受に連通孔を介して連通させていてもよい。
【0021】
このようにすると、前記少なくとも1つの発電ユニットの潤滑用の給水経路として、隣接する別の発電ユニットの給水空間を利用しているので、スペース効率を向上させることができる。
【0022】
前記固定子には前記各回転子よりも上流位置に取水口が設けられ、該取水口から導出される水が給水配管を介して前記水潤滑軸受に導かれていてもよい。
【0023】
このようにすると、回転子より上流の取水口の水圧は、プロペラブレードを通過して圧力低下した下流よりも十分高いので、ポンプを用いなくても水潤滑軸受に水を供給することが可能となる。
【0024】
前記給水配管は、前記回転子の下流側の側面に対面配置された前記水潤滑軸受に導かれていてもよい。
【0025】
このようにすると、回転子には水流による流れ方向のスラスト力が発生し、回転子の下流側の側面に対面配置された水潤滑軸受に負荷が生じるが、その水潤滑軸受に給水配管を導くことで静圧作用によりスラスト力に対抗するカウンタ力が付与されて、潤滑作用が十分に確保されると共に軸受の長寿命化を図ることができる。
【0026】
前記プロペラブレードの傾きと反対方向に傾いた状態で前記プロペラブレードに水流を導くガイドベーンをさらに備え、該ガイドベーンは前記固定子の内壁と前記固定ボスの外壁との間に固設されていてもよい。
【0027】
このようにすると、ガイドベーンを通過した水流がプロペラブレードの面に向かって流れ込むよう案内されるので、プロペラブレードを効率良く回転させることが可能となる。また、ガイドベーンが固定ボスを固定子に接続するための部材を兼ねているので、部品点数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明の水力発電装置によれば、高落差の水流に適用することが可能となると共に、エネルギー回収効率が向上し、エネルギー損失も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る水力発電装置1の断面図である。図2は図1のII−II線断面図である。図1に示すように、水力発電装置1は、水流方向に直列的に連結された2つの発電ユニット2,3を備え、同径である上流水管WT1と下流水管WT2の間に介設されるものである。
【0031】
まず、第1発電ユニット2について説明する。
【0032】
図1及び2に示すように、第1発電ユニット2は、上流水管WT1に連結される円環状の固定子4と、この固定子4の内周側に配置されて内周より径方向内側に突出するプロペラブレード28を有する円環状の回転子19と、回転子19の中心軸線上に固設される固定ボス30と、固定子4と固定ボス30との間に固設されてプロペラブレード28に水流を導くガイドベーン31とを備えている。
【0033】
固定子4は、上流水管WT1に連結する第1ケーシング5を備えている。第1ケーシング5は、上流水管WT1と同径の円管部5aと、円管部5aの上流端より径方向外側に突出したフランジ部5bと、円管部5aの下流端より径方向外側に突出したフランジ部5cと、円管部5aの一部に開口する取水口5dとを有している。
【0034】
取水口5dには金網からなるフィルタ33が設けられている。また、給水配管34の先端のジョイント部35がプレート36に螺着されており、そのプレート36が取水口5dを水密的に閉鎖してボルト37で第1ケーシング5に締結されている。これにより、第1ケーシング5内に流入した水の一部が取水口5dのフィルタ33を通過して給水配管34に導かれる。
【0035】
第1ケーシング5の下流側のフランジ部5cの外周部には、第2ケーシング6が固定されている。第2ケーシング6は、第1ケーシング5のフランジ部5cにOリング8を介してボルト7で締結されるフランジ部6aと、このフランジ部6aの内周端より下流方向に突出する円筒部6bとを有している。
【0036】
第2ケーシング6のフランジ部6aの外周部には、第3ケーシング9が固定されている。第3ケーシング9は、第2ケーシング6のフランジ部6aにボルト10で締結されるフランジ部9aと、このフランジ部9aの内周端より下流方向に突出する円筒部9bと、この円筒部9bの下流端より径方向外側に突出するフランジ部9cとを有している。
【0037】
第3ケーシング9のフランジ部9cには、第4ケーシング11が固定されている。第4ケーシング11は、第3ケーシング9のフランジ部9cにボルト12で締結されるフランジ部11aと、このフランジ部11aの内周端より上流方向に突出する円筒部11bとを有している。
【0038】
第2〜第4ケーシング6,9,11により形成される環状空間には、円環状のコア13に巻き付けられた状態で電機子コイル14が配置されている。コア13の内周側には鍔付きの円環形状である薄肉のキャン15が取り付けられている。このキャン15は、絶縁性及び耐水性を有する渦電流損の小さい材料からなり、第2ケーシング6の円筒部6bと第4ケーシング11の円筒部11bの対向端によりOリング16,17を介して挟持されている。
【0039】
回転子19は、外周面に凹部19bを有する円環部19aと、円環部19aの内周端より回転軸線方向(水流方向)の両側に突出する鍔部19c,19dと、円環部19aの内周面に形成されたネジ穴19eとを有している。円環部19a及び鍔部19c,19dの内径は、上流水管WT1の内径と略同一となっている。円環部19aの凹部19bには磁束の通路となるヨーク20が埋設されている。このヨーク20には、複数の永久磁石21がコア13に対向するように周方向に等間隔をあけた状態で極性が互い違いとなるように埋設されている(図2)。
【0040】
回転子19と固定子4との間には一対の水潤滑軸受22,23が介設され、回転子19が回転自在に支持されている。水潤滑軸受22,23は、回転子19の円環部19aの両側面及び鍔部19c,19dの円周面に対面配置されており、回転子19に働くスラスト方向及びラジアル方向の荷重を支えている。水潤滑軸受22,23の回転子19との摺動面には、セラミックが溶射されている。ただし、水潤滑軸受22,23自体をセラミックソリッドで形成してもよい。
【0041】
下流側の水潤滑軸受23には、その下流側面から回転子19の円環部19aの側面に向けて連通する貫通孔23aが設けられており、後述する給水配管34から導かれた水が貫通孔23aを通して、水潤滑軸受22,23の摺動面に供給される。また、貫通孔23aの流路軸線方向は、プロペラブレード28が配置されたメイン流路Rの水流方向と同方向となっており、貫通孔23aは、回転子19の円環部19aの側面に向けて段階的に縮径している。また、下流側の水潤滑軸受23は、フランジ部11aの第2発電ユニット3との連結面11cより上流側に窪んだ位置に配置され、連結面11cの内周側に円環状の嵌合凹部48が形成されている。
【0042】
水潤滑軸受22の外周面には第2ケーシング6との間にOリング24が介設され、水潤滑軸受22の上流側面には第1ケーシング5との間にOリング25が介設されている。かつ、水潤滑軸受23の外周面には第4ケーシング11との間にOリング26が介設され、水潤滑軸受23の下流側面には第1ケーシング5との間にOリング27が介設されている。このようにOリング24〜27を配置することで、シール機能を果たすだけでなく、ラジアル方向及びスラスト方向の負荷を弾性的に吸収して水流による衝撃力を緩和することが可能となる。
【0043】
図3は回転子19、プロペラブレード28、固定ボス30及びガイドベーン31の分解斜視図である。図1及び3に示すように、回転子19の内周面にはプロペラブレード28が取り付けられている。プロペラブレード28は、回転子19に内嵌固定される円筒部28aと、円筒部28aの内周面から周方向に等間隔をあけて径方向内側に突出する複数のブレード部28bとを有している。即ち、ブレード部28bの内側先端は自由端となっている。
【0044】
円筒部28aには、回転体19のネジ穴19eに対応するネジ穴28cが形成されており、ネジ穴19e,28cにネジ29を締結することでプロペラブレード28が回転子19に固定される。また、ブレード部28bの内側先端を結ぶ径は、後述する固定ボス30の外径より若干大きくなっている。よって、プロペラブレード28は、固定ボス30の外周面に対して若干の空隙をあけた状態で沿うように回転する構成となっている。
【0045】
固定ボス30は、流線型の円筒体であって回転子19の中心軸線上に固設されている。固定ボス30は、プロペラブレード28の内側先端を結ぶ径より外径が小さい円筒部30aと、円筒部30aの上流端を閉鎖する半球面状の先端壁部30bと、円筒部30aの下流端を閉鎖する平面状の後端壁部30cとを備えている。
【0046】
円筒部30aの上流側の外周面には凹部30dが形成されており、この凹部30dにネジ穴30eが設けられている。固定ボス30の円筒部30aの外径は、第1ケーシング5の内径(メイン流路Rの内径)の35%〜75%の大きさとしている。
【0047】
固定ボス30はガイドベーン31を介して第1ケーシング5に固定されている。ガイドベーン31は、第1ケーシング5の円管部5aに内嵌固定される外円筒部31aと、固定ボス30の凹部30dに外嵌される内円筒部31cと、外円筒部31aと内円筒部31cとを連結するように周方向に等間隔をあけて配置される複数のベーン部31bとを有している。
【0048】
ベーン部31bは、プロペラブレード28のブレード部28bの傾きと反対方向に傾いている。外円筒部31aにはネジ穴31dが形成されており、ネジ32によりガイドベーン31が第1ケーシング5に固定される。また、内円筒部31cには固定ボス30のネジ穴30eに対応するネジ穴31eが形成されており、ネジ(図示せず)によりガイドベーン31が固定ボス30に固定される。
【0049】
次に、第2発電ユニット3について説明する。
【0050】
図1に示すように、第2発電ユニット3は、第1発電ユニット2の固定子4に固定される固定子39と、この固定子39の内周側に配置されて内周より径方向内側に突出するプロペラブレード28を有する円環状の回転子19と、回転子19の中心軸線上に固設される固定ボス47と、固定子39と固定ボス47との間に固設されてプロペラブレード28に水流を導くガイドベーン31とを備えている。
【0051】
なお、第2発電ユニット3のうち、第2〜第4ケーシング6,9,11、コア13、電機子コイル14、回転子19、ヨーク20、永久磁石21、プロペラブレード28、水潤滑軸受22,23、ガイドベーン31などについては上述した第1発電ユニット2と共通するため、以下の説明では同一符号を付して説明を簡略化している。
【0052】
固定子39は、第1発電ユニット2の第4ケーシング11に固定される第1ケーシング40を備えている。第1ケーシング40は、第4ケーシング11にボルト41で締結されるフランジ部40aと、フランジ部40aの内周端より下流方向に突出する円筒部40bと、円筒部40bの下流端より径方向外側に突出するフランジ部40cと、円筒部40bよりも大径であって対向する各フランジ部40a,40cを連結する円筒形状のスラストカラー部40dとを有している。フランジ部40aの連結面40gには、第1発電ユニット2の嵌合凹部48に内嵌される円環状の嵌合凸部40hが形成されている。
【0053】
第1発電ユニット2と第2発電ユニット3は、水管WT1,WT2の外径より大径でそれぞれ径方向外側に突出しているため、スラストカラー部40dによってスラスト方向の強度が保持されている。スラストカラー部40dの所要箇所には、上述した給水配管34の分岐した他端のジョイント42が接続される導水口40eが形成されている。よって、フランジ部40a,40c、円筒部40b及びスラストカラー部40dにより囲繞される円環状の給水空間43に給水配管34より水が供給される構成となっている。また、フランジ部40aには給水空間43を水潤滑軸受23の貫通孔23aに連通させる連通孔40fが形成されている。
【0054】
第1ケーシング40の下流側のフランジ部40cの外周部には、第2ケーシング6がOリング8を介してボルト7で固定されている。第2ケーシング6のフランジ部6aの外周部には、第3ケーシング9がボルト10で固定されている。第3ケーシング9のフランジ部9cには、第4ケーシング11がボルト12で固定されている。
【0055】
第4ケーシング11のフランジ部11aには、第5ケーシング44が固定されている。第5ケーシング44は、第4ケーシング11のフランジ部11aにボルト45で締結されるフランジ部44aと、このフランジ部44aの内周端より下流方向に突出する円筒部44bと、この円筒部44bの下流端より径方向外側に突出して下流水管WT2に連結されるフランジ部44cとを有している。フランジ部44aには、上述した給水配管34の分岐した他端のジョイント46が接続されて水潤滑軸受23の貫通孔23aに連通する導水口44dが形成されている。
【0056】
第2〜第4ケーシング6,9,11により形成される環状空間には、円環状のコア13に巻き付けられた状態で電機子コイル14が配置され、コア14の内周側にはキャン15が取り付けられている。
【0057】
回転子19の円環部19aの凹部19bには磁束の通路となるヨーク20が埋設されている。このヨーク20には、複数の永久磁石21がコア13に対向するように周方向に等間隔をあけた状態で極性が互い違いとなるように埋設されている。回転子19と固定子39との間には一対の水潤滑軸受22,23が介設され、回転子19が回転自在に支持されている。
【0058】
回転子19の内周面にはプロペラブレード28がネジ29で取り付けられている。プロペラブレード28のブレード部28bの内側先端を結ぶ径は、後述する固定ボス47の外径より若干大きくなっている。よって、プロペラブレード28は、固定ボス47の外周面に対して若干の空隙をあけた状態で沿うように回転する構成となっている。以上より、第2発電ユニット3の回転子19は、第1発電ユニット2とは独立して回転することとなる。
【0059】
固定ボス47は、中空円筒体であって回転子19の中心軸線上に固設されている。固定ボス47は、第1発電ユニット2の固定ボス30と同径である円筒部47aと、円筒部47aの上流端を閉鎖する平面状の先端壁部47bと、円筒部47aの下流端を閉鎖する略半球面状の後端壁部47cとを備えている。円筒部47aの上流側の外周面には凹部47dが形成されている。
【0060】
後端壁部47cは、第1発電ユニット2の固定ボス30の先端壁部30aよりも傾斜角が小さく、下流側に向けて徐々に縮径している。先端壁部47bは、第1発電ユニット2の固定ボス30の後端壁部30cに直接的に面接触し、2つの固定ボス30,47が水流方向に連続して配置されている。なお、固定ボス30の後端壁部30cと固定ボス47の先端壁部47bとの間に弾性材(例えば、ゴム板)を介在させてもよい。
【0061】
固定ボス47はガイドベーン31を介して第1ケーシング40に固定されている。ガイドベーン31の外円筒部31aは、第1ケーシング40の円筒部40bにネジ32で内嵌固定されている。ガイドベーン31の内円筒部31cは、固定ボス47の凹部47dにネジ(図示せず)で外嵌固定されている。
【0062】
次に、水力発電装置1の動作について説明する。
【0063】
図1に示すように、上流水管WT1から第1発電ユニット2の第1ケーシング5内に水が流入すると、水流は流線型の固定ボス30に沿って径方向外側に案内され、流路面積が減少することで流速が増加する。その水流は、ガイドベーン31のベーン部31bによりプロペラブレード28のブレード部28bに適切な流入角度で入射するように案内され、プロペラブレード28を効率良く回転させる。これにより、プロペラブレード28と一体である回転子19が水潤滑軸受22,23に支持されながら回転し、それに伴い回転する永久磁石21により回転磁界が発生する。そうすると、固定子4のコア13に磁束変化が与えられ、電磁誘導により第1発電ユニット2の電機子コイル14に電力が発生する。
【0064】
さらに、第1発電ユニット2のプロペラブレード28を通過してエネルギーが減少した水流は、第2発電ユニット3の第1ケーシング40内に流入する。その水流は、固定ボス30に連続する固定ボス47に沿ってガイドベーン31を通過してプロペラブレード28に入射し、プロペラブレード28を効率良く回転させる。これにより、プロペラブレード28と一体である回転子19が水潤滑軸受22,23に支持されながら回転し、それに伴い回転する永久磁石21により回転磁界が発生する。そうすると、固定子4のコア13に磁束変化が与えられ、電磁誘導により第2発電ユニット3の電機子コイル14に電力が発生する。
【0065】
また、第1発電ユニット2の第1ケーシング5に設けられた取水口5dからはフィルタ33を通過した水が導出され、その一部は分岐した給水配管34を介して第2発電ユニット3の導水口40eに導かれ、給水空間43及び連通孔40fを介して水潤滑軸受23の貫通孔23aへと供給される。また、取水口5dから導出された水の残りは、分岐した給水配管34を介して第2発電ユニット3の導水口44dに導かれて水潤滑軸受23の貫通孔23aへと供給される。なお、導水口40e,44dは、水流がプロペラブレード28に対する仕事をして取水口5の位置よりも圧力低下する下流に設けられているので、ポンプ等がなくとも給水配管34を通じた水の流れが自動的に発生する。
【0066】
水潤滑軸受23の貫通孔23aを通過した水は、メイン流路Rの水流の向きと逆向きに回転子19の円環部19aの側面に向けて供給される。この水の静圧作用により、プロペラブレード28に水流が衝突する際に回転子19に負荷されるスラスト力に対抗するカウンタ力が付与され、水潤滑軸受23の長寿命化が図られる。
【0067】
また、水潤滑軸受23の貫通孔23aを通過した水は、水潤滑軸受23の回転子19に対する摺動面に供給されると共に、上流側の水潤滑軸受22の回転子19に対する摺動面にも供給され、動的流体膜作用により潤滑が図られる。そして、潤滑した水は、回転子19と各ケーシング5,40,44との隙間からメインの水流に戻されることとなる。
【0068】
図4は水力発電装置1の分解時の断面図である。図4に示すように、メンテナンス時などには、ボルト41を外して第1発電ユニット2の第4ケーシング11と第2発電ユニット3の第1ケーシング40とを分離し、第1発電ユニット2と第2発電ユニット3とを分解することで、水力発電装置1のユニット毎のメンテナンスが可能となる。
【0069】
以上の構成とすると、2つの回転子19が水流方向に直列配置されていることで、多くの水流エネルギーが電気エネルギーに変換され、例えば各段当たりの落差を20m以下とすればキャビテーション等が発生せず、高落差の水流に適用することが可能となる。また、固定ボス30,47が回転子19の中心軸線上に固設されて、プロペラブレード28が固定ボス30,47と分離された状態で回転するので、回転子19の重量が小さくなりエネルギー回収効率が向上する。さらに、固定ボス30、47が水流を径方向の外側に案内することで、プロペラブレード28に作用する水流は流路面積が小さく流速が増大しているので、さらにエネルギー回収効率が向上する。また、固定ボス30,47は回転しないので、水流が乱れにくくなりエネルギー損失を低減することもできる。
【0070】
さらに、第1発電ユニット2の回転子19と、第2発電ユニット3の回転子19とは独立して回転するので、夫々の回転子19が互いに干渉せずに最適効率で回転し、エネルギー回収効率が向上する。また、水力発電装置1は、第1発電ユニット2と第2発電ユニット3とを分解可能としているので、メンテナンス性が向上する。さらに、水流方向に直列配置された夫々の固定ボス30,47は同径で連続しているので、2つの固定ボス30,47の間で流路面積が水流方向に増減することがなく、エネルギー損失を低減することができると共に装置をコンパクト化できる。
【0071】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態に係る水力発電装置50の断面図である。第1実施形態では連結される発電ユニット2,3が二段であるのに対して、本実施形態の水力発電装置50では三段としている。図5に示すように、水力発電装置50は、第1発電ユニット2と第2発電ユニット3との間に中間発電ユニットとなる第3発電ユニット51が介設されている。なお、第1発電ユニット2及び第2発電ユニット3は第1実施形態と共通するため、以下の説明では同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
第3発電ユニット51は、第1発電ユニット2の固定子4と第2発電ユニット3の固定子39とに連結される固定子52と、この固定子52の内周側に配置されて内周より径方向内側に突出するプロペラブレード28を有する円環状の回転子19と、回転子19の中心軸線上に固設される固定ボス53と、固定子52と固定ボス53との間に固設されてプロペラブレード28に水流を導くガイドベーン31とを備えている。
【0073】
なお、第3発電ユニット51のうち、第1〜第4ケーシング40,6,9,11、コア13、電機子コイル14、回転子19、ヨーク20、永久磁石21、プロペラブレード28、水潤滑軸受22,23、ガイドベーン31などについては上述した第2発電ユニット3と共通するため、以下の説明では同一符号を付して説明を簡略化している。
【0074】
固定子39は、第1発電ユニット2の第4ケーシング11にボルト41で固定される第1ケーシング40を備えている。第1ケーシング40のフランジ部40aの連結面40gには、第1発電ユニット2の嵌合凹部48に内嵌される円環状の嵌合凸部40hが形成されている。第1ケーシング40のスラストカラー部40aには、給水配管34の分岐した他端のジョイント42が接続されて水潤滑軸受23の貫通孔23aに連通する導水口40eが形成されている。第1ケーシング40の下流側のフランジ部40cの外周部には、第2ケーシング6がボルト7で固定されている。第2ケーシング6のフランジ部6aの外周部には、第3ケーシング9がボルト10で固定されている。第3ケーシング9のフランジ部9cには、第4ケーシング11がボルト12で固定されている。第4ケーシング11のフランジ部11aには、第2発電ユニット3の第1ケーシング40がボルト41で固定されている。また、下流側の水潤滑軸受23は、フランジ部11aの第2発電ユニット3との連結面11cより上流側に窪んだ位置に配置され、連結面11cの内周側に円環状の嵌合凹部48が形成されている。
【0075】
第2〜第4ケーシング6,9,11により形成される環状空間には、円環状のコア13に巻き付けられた状態で電機子コイル14が配置され、コア14の内周側にはキャン15が取り付けられている。
【0076】
回転子19の円環部19aの凹部19bには磁束の通路となるヨーク20が埋設されている。このヨーク20には、複数の永久磁石21がコア13に対向するように周方向に等間隔をあけた状態で極性が互い違いとなるように埋設されている。回転子19と固定子39との間には、回転子19に対して上下流に一対の水潤滑軸受22,23が介設され、回転子19が回転自在に支持されている。
【0077】
回転子19の内周面にはプロペラブレード28がネジ29で取り付けられている。プロペラブレード28のブレード部28bの内側先端を結ぶ径は、後述する固定ボス53の外径より若干大きくなっている。よって、プロペラブレード28は、固定ボス53の外周面に対して若干の空隙をあけた状態で沿うように回転する構成となっている。以上より、第3発電ユニット51の回転子19は、第1発電ユニット2及び第2発電ユニット3とは独立して回転することとなる。
【0078】
固定ボス53は、中空円筒体であって回転子19の中心軸線上に固設されている。固定ボス53は、第1発電ユニット2の固定ボス30と同径である円筒部53aと、円筒部53aの上流端を閉鎖する平面状の先端壁部53bと、円筒部53aの下流端を閉鎖する平面状の後端壁部53cとを備えている。円筒部53aの上流側の外周面には凹部53dが形成されている。先端壁部53bは、第1発電ユニット2の固定ボス30の後端壁部30cに直接的に面接触すると共に、後端壁部53cは、第2発電ユニット3の固定ボス47の後端壁部47bに直接的に面接触している。これにより、3つの固定ボス30,47,53が水流方向に連続して配置されている。
【0079】
固定ボス53はガイドベーン31を介して第1ケーシング40に固定されている。ガイドベーン31の外円筒部31aは、第1ケーシング40の円筒部40bにネジ32で内嵌固定されている。ガイドベーン31の内円筒部31cは、固定ボス53の凹部53dにネジ(図示せず)で外嵌固定されている。
【0080】
以上の構成とすると、3つの回転子19が水流方向に直列配置されていることで、さらに多くの水流エネルギーが電気エネルギーに変換されてキャビテーション等が発生しにくくなり、さらに高落差の水流に適用することが可能となる。また、3つの回転子19はそれぞれ独立して回転するので、各回転子19が互いに干渉せずに最適効率で回転し、エネルギー回収効率が向上する。また、水力発電装置1は、第1発電ユニット2と第2発電ユニット3と第3発電ユニット51とボルト41を取り外すことで分解可能としているので、メンテナンス性が向上する。
【0081】
なお、第2実施形態の水力発電装置50では、第1発電ユニット2と第2発電ユニット3との間に第3発電ユニット51を1つ介設して三段としているが、第3発電ユニット51と同種のものを第1発電ユニット2と第2発電ユニット3との間に直列的に追加して発電ユニットを四段以上設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る水力発電装置は、高落差の水流に対応可能であり、エネルギー回収効率が高いという優れた効果を有し、高低差のある上下水道、河川、農業用水、工場排水などの水管に接続して用いる水力発電装置に適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水力発電装置の断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示す水力発電装置を構成する回転子、プロペラブレード、固定ボス及びガイドベーンの分解斜視図である。
【図4】図1に示す水力発電装置の分解時の断面図である。
【図5】第2実施形態に係る水力発電装置の断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,50 水力発電装置
2 第1発電ユニット
3 第2発電ユニット
4,39,52 固定子
5d 取水口
14 電機子コイル
19 回転子
21 永久磁石
22,23 水潤滑軸受
28 プロペラブレード
30,47,53 固定ボス
31 ガイドベーン
34 給水配管
51 第3発電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管に連結されて電機子コイルを有する円環状の固定子と、前記固定子の内周側に配置されて外周に永久磁石を有する円環状の複数の回転子と、前記固定子に接続された状態で前記回転子の中心軸線上に固設される固定ボスとを備え、
前記各回転子はそれぞれ径方向内側に突出するプロペラブレードを有し、前記固定ボスは前記プロペラブレードの内側先端を結ぶ径よりも小径であり、
前記各回転子が水流方向に直列配置された状態で前記各プロペラブレードが前記固定ボスの外周面に沿って回転する構成であることを特徴とする水力発電装置。
【請求項2】
前記複数の回転子は、互いに独立して回転する構成である請求項1に記載の水力発電装置。
【請求項3】
前記固定子及び前記固定ボスは、前記複数の回転子にそれぞれ対応するように複数設けられており、
前記固定子、前記回転子及び前記固定ボスを備える複数の発電ユニットが水流方向に直列で分解可能に連結されている請求項1又は2に記載の水力発電装置。
【請求項4】
前記複数の固定ボスは、互いの外径が同一であり水流方向に連続配置されている請求項3に記載の水力発電装置。
【請求項5】
前記複数の固定子は、互いの連結面に径方向の位置決めを行う嵌合構造を有している請求項4に記載の水力発電装置。
【請求項6】
前記回転子の側面及び円周面に対面配置されてスラスト方向及びラジアル方向の荷重を支える水潤滑軸受をさらに備え、
少なくとも1つの前記発電ユニットの前記水潤滑軸受が、隣接する別の前記発電ユニットの前記固定子の連結面により直接支持されている請求項3乃至5のいずれかに記載の水力発電装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記発電ユニットは、潤滑用に水を供給する給水配管と連通する給水空間を有すると共に、前記給水空間を隣接する別の前記発電ユニットの前記水潤滑軸受に連通孔を介して連通させている請求項6に記載の水力発電装置。
【請求項8】
前記固定子には前記各回転子よりも上流位置に取水口が設けられ、該取水口から導出される水が給水配管を介して前記水潤滑軸受に導かれる請求項6又は7に記載の水力発電装置。
【請求項9】
前記給水配管は、前記回転子の下流側の側面に対面配置された前記水潤滑軸受に導かれている請求項7又は8に記載の水力発電装置。
【請求項10】
前記プロペラブレードの傾きと反対方向に傾いた状態で前記プロペラブレードに水流を導くガイドベーンをさらに備え、該ガイドベーンは前記固定子の内壁と前記固定ボスの外壁との間に固設されている請求項1乃至9のいずれかに記載の水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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