説明

水及び廃水中の有機化合物の効果的な除去のための浮揚性多機能複合材料

水又は廃水の処理のための複合材料が記載される。複合材料は、浮揚性支持体、有機化合物を吸着するための吸着剤、有機化合物を分解するための光触媒、及び該吸着剤と該光触媒との間での物質移動を促進するための、複合材料の選択性を増大するための、又は光触媒の効率を改善するためのエンハンサを有する。吸着剤、光触媒及びエンハンサは、支持体上に固定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年2月2日付けで出願された米国仮出願第61/300,514号の利益を主張する。上記出願の全教示が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水中の大量の有機化合物は通常、様々な生物学的プロセスを通じて除去される。再利用(reclamation)のための廃水処理プラントからの廃液中、又は給水のための生水中の比較的低レベルの有機化合物に関して、吸着は通常、一般的な工業的操作における除去方法として使用されてきた。しかしながら、産業廃液中の多くの有機化合物(例えば、色素、フェノール系物質及び合成物質)又は天然水中の多くの有機化合物(例えば、腐植質物質)は、事実上生分解性ではない。したがって、従来の生物学的プロセスは多くの場合、所望の処理目標を達成することができなかった。一方で、吸着による有機化合物の除去は、使用される吸着剤の容量及び特性に大きく依存する。吸着剤は通常、それらの機能を回復させるために頻繁な再生を必要とし、それは多くの場合、達成することが不可能ではないにしても困難であることがわかっている。
【0003】
有機化合物(毒性のものを含む)を最終的に無機物(例えば、二酸化炭素及び水)へ分解することができるオゾン酸化、フェントン反応又は光触媒作用のような高度酸化プロセス(AOP)は、水及び廃水の汚染除去に関して近年ますます注目を集めている。これらのプロセスの中でも、光触媒作用は、それが処理反応中に更なる化学物質を必要としないため、焦点となる分野となっている。光触媒プロセスでは、光照射下での光触媒は、水又は廃水中の有機化合物を攻撃して、それらをより単純なもの又は無毒性のものへと分解することができる活性ラジカルを生じる。しかしながら、これらのラジカルは、有機汚染物質との反応により、又は他のラジカル若しくはキャリアと再結合することによって、10−5秒未満の時間スケール内でそれらの活性を容易に喪失し得る。標的とされる有機汚染物質が低濃度で存在する場合、又は水から光触媒への有機汚染物質の物質移動が限定因子である場合、ほとんどのラジカルは、それらが汚染物質化合物に遭遇する機会を得て分解反応に関与する前に、その活性を迅速に喪失し得る。この問題を克服するために、幾つかの研究は、吸着剤粉末上へ光触媒粒子を固定化すること、又は吸着剤粉末を光触媒粒子と混合することのいずれかを通じて、吸着剤を光触媒と組み合わせている(非特許文献1、非特許文献2)。過去の研究により、これらのアプローチが汚染物質除去の動態を改善すること、即ち単一光触媒系と比較して、組み合わせた吸着剤及び光触媒の系において、汚染物質がより迅速に光分解されることが見出された。
【0004】
反応速度の加速は、吸着剤上への汚染物質の吸着、続く光触媒の表面への汚染物質の迅速な移行に起因すると説明された。しかしながら、解決する必要のある様々な問題が存在している。第一に、光触媒及び吸着剤はともに、非常に小さなサイズの粉末で(多くの場合、ナノメートル範囲又はマイクロメートル範囲で)存在し、したがって処理した水と分離するのが非常に困難でありかつコストがかかった。第二に、粉末形態又は小粒子形態での光触媒は通常、スラリー状で処理される水中で適用された。水中若しくは水表面上に設置されたUVランプ、又は自然太陽光のいずれかから供給される光は、水を通って進んで、光触媒粒子の表面に達しなくてはならない。不運にも、光は、空気を通った距離による減衰と比較した場合、水中の距離によってより著しく減衰する。結果として、供給される光は多くの場合、これらの従来の光触媒プロセスでは非常に低い利用効率を有する。第三に、組み合わせた吸着/光触媒作用の系で使用される多孔質吸着剤は、孔中の光触媒粒子によって塞がり、吸着剤及び光触媒の両方の性能が大きく低減した。したがって、水及び廃水中の有機化合物の有効かつ低コストの除去及び無機化のための吸着、光触媒作用及び光利用効率の相乗効果を達成する材料及び方法が必要とされる。また、特定の有機混入物質に対するかかる処理システムの選択性に対処する開発が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y. Li et al., Water Res. 40(2006) 1119-1125
【非特許文献2】X. Wang et al., J. Hazard. Mater. 169 (2009) 1061-1067
【発明の概要】
【0006】
本発明では、種々の機能を有する2種〜3種の構成要素材料を、制御された温度下で、溶融・結合法を通じて熱可塑性支持体上に固定化して、浮揚性多機能複合材料を得る。構成要素材料としては、光触媒、吸着剤及び相乗エンハンサが挙げられる。支持体は、それが構成要素材料用のキャリアとして役立つだけでなく、最終生成物の浮揚性のためのかさ密度も提供するように選択される。
【0007】
最終的な浮揚性多機能複合材料は、水中に容易に懸濁させることができるが、それは水表面へ自然に浮遊する。したがって、処理プロセス中の水塊は、複合材料を有する最上部層及び水のみの底部領域へ分離することができる。したがって、複合材料を処理した水と分離させることはより容易である。複合材料は水表面で浮遊するため、支持体上の光触媒は、光が水を通って進む場合と比較して、光が空気を通って進む場合にはさほど著しく光が減衰しないため、より高い効率でUVランプ又は自然太陽光のいずれかに由来する光を使用することができる。
【0008】
支持体上の吸着剤は、それらを水中に懸濁するとバルク水由来の有機化合物を迅速に濃縮することができ、増強された物質移動速度で、分解される有機化合物を光触媒に提供することができる。これにより、水から光触媒への有機化合物の供給が緩慢な物質移動により制限されることが多い従来の光触媒分解技術における問題が克服される。支持体上の光触媒は、吸着剤由来の有機化合物を単純なものへ(最終的には無機物へ)分解することができ、連続的に吸着剤を再生することができる。これにより、従来の吸着技術に必須である更なる再生プロセスが排除される。
【0009】
エンハンサは、構成要素に追加することができ、支持体上に固定化されて、吸着及び光触媒作用の組合せに対する相乗効果をもたらすことができ、複合材料へ選択性を付加することができる。例えば、エンハンサは、吸着剤と光触媒との間での有機化合物の物質移動のための橋渡し又は経路として機能し得る。別の例として、エンハンサは、光照射中に光触媒上で発生した電子及び正孔の再結合を防止し、それにより有機化合物に対する光触媒分解効率を増大させることによって、光触媒の活性を改善させることができる。
【0010】
浮揚性複合材料は、1未満の比重を有する熱可塑性物質から調製される。熱可塑性物質は、その上に吸着剤、エンハンサ及び光触媒構成要素が配置される支持体として機能する。熱可塑性物質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン等及びそれらのブレンド又はアロイであり得るが、これらに限定されない。
【0011】
複合材料は、吸着剤及び光触媒を含み、したがって吸着機能及び光触媒機能を組み合わせる。吸着剤は、水中の有機化合物を濃縮して、光触媒への有機化合物のより速い物質移動を提供する。吸着剤は、活性炭、ゼオライト、任意の合成吸着剤又は天然吸着剤、及びそれらの組合せであり得るが、これらに限定されない。光触媒は、吸着剤由来の有機化合物を分解し、連続的に吸着剤を再生/回復させる。光触媒は、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、三酸化タングステン(VI)(WO)、炭化ケイ素(SiC)、無機元素でドープされた金属酸化物、又はそれらの任意の組合せであり得るが、これらに限定されない。
【0012】
吸着剤を頻繁に再生してその能力を回復させる更なるプロセスを要し、したがって非常にコストが高い従来の吸着技術と比較して、本発明は、吸着剤を再生する更なるプロセスを要さない。多くの場合にバルク水から光触媒への有機化合物の緩慢な物質移動の問題を被る従来の光触媒技術と比較して、本発明は、吸着剤がバルク水由来の有機化合物を迅速に濃縮し得るため、光触媒へのより高い物質移動速度をもたらす。
【0013】
複合材料は、吸着剤と光触媒との間の相乗効果(例えば、吸着剤から光触媒への物質移動を促進すること、分離及び分解される有機化合物に対する選択性を増大させること、又は電子を捕捉して、電子−正孔の再結合を防止すること)をもたらすエンハンサを含有することができ、これにより光触媒反応効率を改善することができる。複合材料の調製におけるこのような進歩はこれまでのところ全く存在していない。
【0014】
複合材料の光触媒反応は、水表面で行うことができ、空気媒体中で供給される光を十分に利用することができる。このことにより、高い設置コスト及び供給される光の著しい減衰をもたらす、多くの場合に水中で光を使用する従来の光触媒技術で直面する低い光利用効率の問題が解決される。
【0015】
浮揚性多機能複合材料は、有機化合物の除去が必要とされる任意の水及び廃水の処理で使用され得る。上記材料は、特に毒性及び非生分解性有機化合物が関与する場合(ほとんどの工業廃液を含む)、競争力のある解決法を提供する。この材料は、必要となる資本コスト及び運転コストがより低い可能性のある単純な処理システムを提供するという利点も有する。
【0016】
本発明によれば、浮揚性多機能性複合材料は、以下のプロセスから調製することができる:
(a)適切な粒子又は分子のサイズ及び重量又は容量の比での選択された吸着剤、光触媒及びエンハンサが混合される。これらの構成要素は、粒子、小チューブ、繊維、粉末等の形態で存在することができ、支持体の融点を最大30℃上回る温度で、化学的に安定であるべきである。
(b)(a)における構成要素材料よりもはるかに大きなサイズを有する顆粒、繊維、シート又は他の形状の形態での選択された熱可塑性支持体は、必要に応じて水、アルコール又は他の溶媒で洗浄され、続いて乾燥させられる。
(c)反応器中で、吸着剤、光触媒及びエンハンサの混合物は、調製される複合材料の最終的な形状に応じて、支持体の融点を10℃下回る温度〜支持体の融点を30℃上回る温度の範囲の特定温度へ攪拌しながら加熱されて、続いてその温度で維持される。次に、支持体は混合物へ添加されて、支持体の表面が構成要素混合物で十分に覆われるまで、1分〜15分の範囲の時間、混合が続けられる。
(d)複合材料は、篩に通して、残存する構成要素混合物と分離されて、室温に冷却される。
(e)調製された材料は、水又は水/アルコール混合物で洗浄され、乾燥させて、最終生成物を得る。
【0017】
本発明は幾つかの利点を提供する。複合材料は浮揚性であり、したがって水表面で使用することができる。光は、水と比較して、空気を通って進む間にはさほど著しく減衰しないため、光触媒に供給される光は、より十分に利用することができる。さらに、自然太陽光は、光触媒プロセスのための光源として使用することができる。
【0018】
複合材料はまた、水又は廃水中の有機化合物を迅速に濃縮する良好な吸着性能を有し、したがって、材料の表面上における光触媒反応部位への水中の有機化合物の物質移動速度を改善又は増強する。
【0019】
複合材料は、UV光、可視光又はその両方の照射下での有機化合物に対する良好な光触媒分解性能を有し、これは、材料上の有機化合物を無害のより単純なものへ分解するだけでなく、同時に材料を再生して、水中の有機化合物に対するその吸着性能を回復させる。
【0020】
材料は、吸着と光触媒作用との間の相乗効果を増強して、特定の有機化合物に対する材料の選択性、又は調製される複合材料の化学的安定性を増大又は改善する1つ又は複数のエンハンサを含有することができる。
【0021】
したがって、本発明は、コスト効率がよく、1つのプロセスで複数の機能を達成することができる単純な解決法を提供し、従来技術ではそれを、達成することが不可能な場合があるか、又は達成するのに複数の段階が必要な場合がある。材料の浮揚特性は、光触媒又は吸着剤の一般的に使用されるスラリー系に関して直面してきた分離の問題を解決する。従来技術では、光触媒及び吸着剤は多くの場合、ナノ粒子又はミクロ粒子の形態で使用される。従来技術は、水が処理された後の分離において深刻な問題を示しており、分離には通常、非常に高い運転コストがかかる。浮揚性材料は、表面へ浮遊することができ、したがって容易に取り扱うことができ、必要な時に分離することができる。
【0022】
上記事項は、添付の図面に示されるように、本発明の例示的な実施形態の下記のより詳細な説明から明らかである。該図面中では、同様の参照文字が種々の図全体にわたって同じ部品を指す。図面は、必ずしも同一縮尺で表されている訳ではなく、むしろ、本発明の実施形態の例示に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で記載される多機能複合材料の構造の概略図である。粒状支持体上に固定化された小さなサイズの構成要素は、吸着剤、光触媒及びエンハンサを含む。
【図2】エンハンサが吸着剤と光触媒との間の相乗効果を改善することができるメカニズムの概略図である。有機化合物は、吸着剤によって吸着されて、光触媒へ移動し、ここでヒドロキシルラジカル(OH・)のような活性基が生じる。エンハンサは、複合材料の選択性、光触媒の活性、又は吸着剤と光触媒との間の物質移動を改善することができる。
【図3】単純かつコスト効率がよい形で複合材料を使用する水処理システムの概略図である。光源は、自然太陽光又は水表面上に設置されたUVランプのいずれかであり得る。複合材料は、処理される水と混合されて、水の表面へ浮遊する。処理された水は、実施上の困難を何ら伴わずに反応器の底部から回収することができる。
【図4】水、フェノール及び浮揚性多機能複合材を用いた場合のビーカー内でのキセノンランプ下での光触媒反応に関するフェノール濃度(ppm)対時間(時間)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の例示的な実施形態の説明を以下に記載する。
【0025】
本発明は、浮揚性多機能複合材料、その調製方法及びその適用プロセスに関する。
【0026】
a)光触媒構成要素は、粉末、チューブ又は繊維の形態の、およそ1nm〜およそ50000nm、典型的にはおよそ10nm〜およそ100nmの有効サイズを有する任意の活性光触媒、典型的にはTiOであり得る。吸着剤構成要素は、任意の吸着剤(例えば、無機化合物又は有機化合物)であってもよく、単一種の吸着剤又は吸着剤の混合物であり得る。典型的には、吸着剤は、粉末又はチューブの形態の、およそ1nm〜およそ100000nmの範囲の有効サイズを有する活性炭若しくはゼオライト又はその両方であり得る。吸着剤構成要素及び光触媒構成要素はともに、支持体の融点を下回る温度〜支持体の融点を30℃上回る温度の範囲の温度で安定である。例えば、融点を下回る温度の範囲の下限としては、0℃が挙げられ得るが、これに限定されない。エンハンサは、調製される複合材料の選択性及び活性を改善する任意の化合物であり得る。典型的には、エンハンサは、カーボンナノチューブ、貴金属塩、無機化合物(例えば、SiO)又は機能性ポリマーであり得る。吸着剤、光触媒又はその両方を、選択されるエンハンサ(単数又は複数)で前処理してもよい。エンハンサ(単数又は複数)はまた、吸着剤構成要素及び光触媒構成要素と直接混合してもよい。混合物中での吸着剤対光触媒の質量比は、およそ0.1〜およそ10、典型的にはおよそ0.2〜およそ6と多様であり得る。エンハンサの質量は、吸着剤の質量、光触媒の質量、又は吸着剤及び光触媒の質量の組合せのおよそ0.001%〜およそ5%、典型的には、吸着剤の質量、光触媒の質量、又は吸着剤及び光触媒の質量の組合せのおよそ0.01%〜およそ0.2%であり得る。支持体は、およそ0.8〜およそ1、典型的にはおよそ0.9〜およそ0.95の比重を有する任意の熱可塑性物質又はそれらのブレンド若しくはアロイであり得る。
【0027】
b)吸着剤、光触媒及びエンハンサの混合物は十分に混合され、続いて、支持体の融点をおよそ10℃下回る温度〜支持体の融点をおよそ30℃上回る温度の範囲の温度へ予熱されて、その温度で維持される。次に、混合物のおよそ10%〜およそ60%、典型的にはおよそ30%〜およそ50%の容量を有する支持体は、支持体表面が全て融着されて、光触媒/吸着剤/エンハンサ混合物で十分に覆われるまで、およそ0.5分間〜およそ30分間、典型的にはおよそ2分間〜およそ10分間攪拌しながら、予熱された混合物へ添加される。続いて、調製された複合材料は、篩によって混合物と分離される。熱可塑性支持体は、およそ80℃〜およそ300℃、典型的にはおよそ100℃〜およそ180℃の範囲の融点を有し得る。調製された複合材料は、繊維、織物、シート又は顆粒の形状であり得るが、これらに限定されない。
【0028】
代替的な経路では、支持体は、その融点をおよそ10℃〜およそ25℃上回る温度へ加熱される。次に、液体支持体は、鋳型に通して押し出され、顆粒、チューブ、繊維等へ切断されて、吸着剤、光触媒及びエンハンサ混合物と混合され得る。冷却後、調製された複合材料は、篩によって混合物と分離される。
【0029】
c)調製された多機能複合材料は、光源としてUVランプ又は太陽光を用いて、水又は廃水処理反応器中で使用することができる。多機能複合材料は、水表面をちょうど覆う最小量で、又は反応器容量の最大70%を満たす最大量で反応器へ入れることができる。光源は、光触媒の光感度により決定される波長で、また少なくとも30W/mの光強度で反応器の最上部から反応器へ供給されるように設計される。水中の有機化合物の物質移動は、空気バブリングによる攪拌等の攪拌(しかし、これらに限定されない)又は機械的混合によって増強され得る。
【実施例】
【0030】
実施例1:
25nmのサイズを有する5グラム量のTiO粒子を、2g/Lのサリチル酸溶液中で30分間処理して、炉中で100℃で2時間乾燥させる。続いて、処理したTiO粒子を、0.05グラムの多層カーボンナノチューブ(長さ5μm〜9μmで直径110nm〜170nm)と混合して、炉中で200℃で2時間、加熱する。次に、10グラム量の100メッシュ活性炭粒子をTiO及びカーボンナノチューブ混合物と混合して、続いて構成要素全てを250mLの反応器へ入れる。反応器中の混合物を、ホットプレート加熱器を用いて200℃へ予熱して、200℃で維持して、メカニカルミキサーで攪拌する。続いて、直径およそ4mmを有する30グラム量のポリプロピレン(PP)顆粒を反応器へ添加する。反応器中の混合物を、温度が160℃へ上昇し、160℃で維持されるように攪拌しながら更に加熱する。上記プロセスを更に3分間続ける。続いて、PP顆粒を、小さなサイズの粉末混合物で十分に固定化して、篩に通して残存する粉末と分離して、室温に冷却して、調製するべき複合材料を得る。適用の実証のため、3グラム量の浮揚性多機能複合材料を、50mLの50ppmフェノール溶液を満たした100mLビーカーへ空気バブリングしながら添加する。ビーカー中の内容物を48W/mの出力のUV光を有するキセノンランプ(Newport)下に置く。溶液中のフェノールは、4時間以内に完全に除去されることがわかった。
【0031】
実施例2
多機能浮揚性光触媒を、800mLの反応器中で50グラムの100メッシュ活性炭粒子と混合した50グラムのP25 TiO(AEROXIDE、Degussa)から調製した。混合物を、ホットプレート加熱器を用いて185℃へ予熱して、185℃で維持して、メカニカルミキサーで攪拌する。次に、直径約4mmを有する50個のポリプロピレン(PP)顆粒を反応器へ添加した。混合物を、攪拌しながら10分間、更に加熱した。PP顆粒を、TiO及び活性炭粒子でコーティングした。続いて、処理したPP顆粒を回収して、エタノール及び水で洗浄した。洗浄した顆粒を、300mLの10ppmフェノール溶液とともに300mLのガラスビーカーへ添加した。ガラスビーカーを、3”の直径の光線を有する150Wキセノンランプにより照射した。1分当たり1.5リットルの空気を、散気装置を用いてフェノール溶液へ導入した。フェノール濃度を、C18カラムを備えたHPLCで分析した。図4に示されるように、フェノールの濃度は、5時間後に0ppmに近づいた。
【0032】
本発明を、その例示的な実施形態を参照して具体的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることは、当業者に理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
浮揚性を有する支持体、
有機化合物を吸着するための吸着剤、
有機化合物の分解のための光触媒、並びに
前記吸着剤と前記光触媒との間の物質移動を促進し、前記複合材料の選択性を増大し、前記複合材料の化学的安定性を増大し、及び/又は前記光触媒の効率を改善するためのエンハンサ
を含み、
前記吸着剤、前記光触媒及び前記エンハンサが、前記支持体上に固定化される、複合材料。
【請求項2】
前記支持体が、1未満の比重を有する熱可塑性物質である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記熱可塑性物質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン又はそれらのブレンド及びアロイである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記支持体が、前記構成要素材料よりも大きいサイズを有する顆粒、繊維、シート及び他の形状の形態で存在する、請求項2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記吸着剤が、有機化合物を濃縮して、前記光触媒への物質移動に関して該吸着された有機化合物を促進する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記吸着剤が、前記支持体の融点を下回る温度〜前記支持体の融点をおよそ30℃上回る温度の範囲の温度で化学的に安定である、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記吸着剤が、活性炭、ゼオライト、任意の他の合成吸着剤若しくは天然吸着剤、又はそれらの組合せである、請求項5に記載の複合材料。
【請求項8】
前記光触媒が、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、三酸化タングステン(VI)(WO)、炭化ケイ素(SiC)、無機元素でドープされた金属酸化物、又はそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記光触媒が、およそ1nm〜およそ50000nmの範囲の直径を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
前記光触媒が、およそ10nm〜およそ100nmの範囲の直径を有する、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記エンハンサが、有機化合物の除去及び分解に関する選択性をもたらすか、前記複合材料の光触媒の活性を増大するか、又は前記複合材料の化学的安定性を増大する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記吸着剤対前記光触媒の比が、およそ0.1〜およそ10である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
前記吸着剤対前記光触媒の比が、およそ0.2〜およそ6である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記エンハンサの量が、グラムで吸着剤の量のおよそ0.001%〜およそ5%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項15】
前記エンハンサの量が、グラムで吸着剤の量のおよそ0.01%〜およそ0.2%である、請求項14に記載の複合材料。
【請求項16】
前記エンハンサの量が、グラムで光触媒の量のおよそ0.001%〜およそ5%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記エンハンサの量が、グラムで光触媒の量のおよそ0.01%〜およそ0.2%である、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記支持体が、およそ0.8〜およそ1の比重を有する熱可塑性物質、そのアロイ又はブレンドである、請求項14に記載の複合材料。
【請求項19】
前記支持体が、およそ0.9〜およそ0.95の比重を有する熱可塑性物質、そのアロイ又はブレンドである、請求項18に記載の複合材料。
【請求項20】
複合材料を調製する方法であって、
吸着剤、光触媒及びエンハンサを混合して混合物を形成することと、
攪拌しながら、支持体の融点をおよそ10℃下回る温度〜支持体の融点をおよそ30℃上回る温度で前記混合物を反応させることと、
前記支持体を前記混合物へ添加することと、
前記混合物を、前記支持体上へ固定化して前記複合材料を形成することと、
前記複合材料を、残存する混合物と分離することと
を含む、方法。
【請求項21】
a)前記複合材料を冷却すること、
b)前記複合材料を洗浄すること、又は
c)前記複合材料を乾燥させること
を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項22】
前記支持体上で融合される前記混合物が、前記支持体の表面を完全に覆う、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−518704(P2013−518704A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551133(P2012−551133)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/SG2011/000044
【国際公開番号】WO2011/096893
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507335687)ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール (28)
【Fターム(参考)】