説明

水圧又は蒸気圧を用いた成型方法及び成型装置

【課題】本発明は、金型内で均一な高圧状態を短時間内で誘導することができる水圧又は蒸気圧を用いた成型方法及び成型装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、水圧又は蒸気圧発生器;及び前記発生器と連通された金型を含む成型装置の金型内に被成型体を固定する段階;前記水圧又は蒸気圧発生器で水圧又は蒸気圧を発生させ、これを前記金型に注入する段階;及び、前記水圧又は蒸気圧によって発生される圧力を用いて、金型に固定された被成型体を成型する段階を含む成型方法、及びこれに用いられる成型装置に関するものである。本発明の方法及び装置によると、既存の真空成型技法などでは具現することが難しかったアンダーカット部位や、繊細な成型が必要とされる部分の成型が可能であり、成型後の厚み偏差や白化現象などの問題が発生する点も解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水圧又は蒸気圧を用いた成型方法及び成型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や電子部品などに適用される高級内外装材として、人造皮革又はデコレーションフィルムなどを表面材として成型するときに、真空成型、ホットプレス(Hot Press)成型、低圧射出成型、及びインサート成型などのような加工方法が使用されている。
【0003】
しかし、真空成型工法の場合、成型時の加熱によって素材が変形されるか、気泡が発生される短所があり、また、ディープドロー(Deep Drow)された成型体が金型と不規則に接触しながら伸びるようになり、成型後、厚みが不均一になる問題がある。また、真空成型の場合、表面に印刷パターンがある場合、不均一な成型により、印刷パターンと成型体のピントなどがずれる問題がある。
【0004】
また、リブリング成型方法などの場合、高圧を発生することが難しく、高圧の空気でフィルムを強制延伸させるため、フィルムなどの成型体に白化現象が発生する問題がある。
【0005】
また、低圧射出成型の場合、メルト(melt)状の樹脂を射出とともに成型する方式であるが、樹脂の流動性が大きくないので、高温の樹脂を成型物に直接接触させることによって成型物の損傷を誘発する問題がある。また、金型内部の圧力差によって成型物の厚みが一定ではなく、成型物の表面は加温されないため、やはり表面に白化が生じる問題があった。
【0006】
ホットプレス(Hot Press)成型の場合も、上記の工法と同様の問題を有しており、アンダーカット部位が存在するなどの、複雑な形状の成型は不可能であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金型内で均一な高圧状態を短時間内で誘導することができる水圧又は蒸気圧を用いた成型方法及び成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、水圧又は蒸気圧発生器;及び前記発生器と連通された金型を含む成型装置の金型内に被成型体を固定する段階;前記発生器で水圧又は蒸気圧を発生させ、これを金型に注入する段階;及び金型に注入された水圧又は蒸気圧による圧力を用いて、金型に固定された被成型体を成型する段階を含む成型方法を提供する。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための他の手段として、水圧又は蒸気圧発生器;及び前記水圧又は蒸気圧発生器と連通されており、前記発生器によって発生される水圧又は蒸気圧による圧力で被成型体を成型することができる成型凸凹が形成されている金型を含む成型装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、必要に応じて適切に加温及び/又は加圧された水圧又は蒸気圧を瞬間的に金型内に注入して、被成型体を前記水圧又は蒸気圧による圧力で成型し、これによって工程時間を大きく短縮することができる。また、本発明では、既存の工法では正確に成型することができなかったアンダーカット(under cut)部位及び細密な成型が必要な部位などに対しても効果的な成型が可能である。また、本発明では、被成型体に印刷物又は印刷パターンなどが形成されている場合にも、印刷物及び成型物のピントが一致する成型物を得ることができる。
【0011】
また、本発明では、水圧又は蒸気圧を用いて、成型物の全体面積に対し均一な圧力を瞬間的に発生させることができる。これによって本発明では、従来の方式の、被成型体の面積が大きくなる場合、単位面積当りに加えられる圧力の低下、又は不均一によって成型不良が発生する問題を解決することができる。また、機械的な方法で圧力を上げる既存の方法と比べて著しく低い単価及び容易な方式で高圧を具現することができる。
【0012】
また、本発明では、成型後フィルムなどの成型体で発生していた白化現象、熱損傷及び気泡発生などの問題を解決することができ、金型接触時の温度偏差による膨張率差異、又はそれによる皺や厚み偏差問題、又は成型後、後収縮の問題を防止することができる。
【0013】
また、本発明では、真空成型法におけるクランプなどのようなものが必要ではないため、設備空間効率を増大させ、素材のロス(Loss)を大きく減らすことができる。また、従来の成型工法では必須的な被成型体(ex.原緞)の固定装置(ex.クランプ)、又は加熱装置などの付随的な装備を必要とせず、単一の蒸気圧又は水圧発生器を多台の成型機(ex.金型)に連結することができるため、作業場の空間活用度を高め、全体的な投資費を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一様態による成型装置を概略的に示した図面である。
【図2】本発明の一様態による成型方法が進行される過程を例示的に示した模式図である。
【図3】本発明の一様態による成型方法が進行される過程を例示的に示した模式図である。
【図4】真空成型技法によって成型したサンプル(A)及び本発明の方法によって成型されたサンプル(B)の比較写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、水圧又は蒸気圧発生器;及び前記発生器と連通された金型を含む成型装置の金型内に被成型体を固定する段階;前記発生器で水圧又は蒸気圧を発生させ、これを金型に注入する段階;及び金型に注入された水圧又は蒸気圧による圧力を用いて、金型に固定された被成型体を成型する段階を含む成型方法に関するものである。
【0016】
以下、本発明の成型方法を詳細に説明する。
【0017】
本発明の成型方法及び成型装置が適用される被成型体は、例えば、自動車や電子製品などの内外装材として使用される各種装飾フィルム又は人造皮革などのフィルムである。本発明では上記のようなフィルムを表面材として成型することにおいて、水圧又は蒸気圧発生器を含む成型装置を使用する。これによって、本発明では、金型内部で被成型体に全体的に均一な圧力が瞬間的に加えられる高圧状態を効果的に形成することができる。本発明で前記水圧又は蒸気圧発生器は、例えば、水又はスチーム発生器である。これによって、本発明では、例えば、前記発生器を使用して水又はスチームを発生させ、発生された水又はスチームを金型内部に注入することによって金型内部で高圧状態を誘導し、前記圧力を用いて被成型体(ex.フィルム)を成型することができる。
【0018】
このような本発明の成型方法では、例えば、添付された図1に示したような成型装置を使用することができる。しかし、前記図1に示した成型装置は本発明の一つの例示に過ぎない。即ち、本発明では図1に示した装置の他にも、水圧又は蒸気圧発生器、及び前記発生器から発生された水圧又は蒸気圧を用いて被成型体(ex.フィルム)を成型することができるように構成された金型を含むものなら、いずれの成型装置でも使用することができる。
【0019】
図1に示したように、本発明による成型装置は、例えば、水圧又は蒸気圧発生器1;前記発生器1から発生された水圧又は蒸気圧を金型に流入又は排出することができる流入排出口2;前記流入排出口2と連結されている金型3を含むことができる。
【0020】
図1に示した装置に含まれる発生器1は、例えば、水を発生させて金型3内に注入し、被成型体(ex.フィルム)を成型することができる水圧を起こすか、加温及び/又は加圧された水を金型3内に注入して被成型体(ex.フィルム)を成型することができる水圧を起こすか、または、水を加温及び/又は加圧してスチームを発生させ、前記スチームを金型内に注入して被成型体(ex.フィルム)を成型することができる蒸気圧を起こす装置である。
【0021】
上記において、加温又は加圧の範囲は、金型内に注入されている被成型体(ex.フィルム)を成型することができる程度であれば、特に制限されない。例えば、前記発生器1から発生され、被成型体(ex.フィルム)の成型に使用される水(水圧)又はスチーム(蒸気圧)は、150bar乃至2,000bar、好ましくは150bar乃至1,000bar、より好ましくは150bar乃至500bar、さらに好ましくは150bar乃至200barの圧力で加圧されたものであり得る。上記において、加圧される圧力が150bar未満であると、被成型体(ex.フィルム)を成型することができる程度の充分な水圧又は蒸気圧が発生しない恐れがあり、2,000barを超過すると、被成型体(ex.フィルム)に不適切な変形や損傷が誘発される恐れがある。
【0022】
一方、前記発生器1から発生され、被成型体(ex.フィルム)の成型に使用される水(水圧)又はスチーム(蒸気圧)は、30℃乃至250℃、好ましくは30℃乃至180℃の温度に加温されたものであり得る。上記において、加温の範囲が30℃未満であると、被成型体(ex.フィルム)を成型することができる程度の充分な水圧又は蒸気圧が発生しない恐れがあり、250℃を超過すると、被成型体(ex.フィルム)に不適切な熱的変形や損傷が誘発される恐れがある。
【0023】
図1に示した装置に含まれる流入排出口2は、前記発生器1で発生された水(水圧)又はスチーム(蒸気圧)を金型3内に流入させる役割をすることができる。本発明において前記流入排出口2は、その一側が前記発生器1に連結され、他側は金型3に連結される。
【0024】
図1に示した装置において金型3は、発生器1から発生された水圧又は蒸気圧によって被成型体(ex.フィルム)4が成型される所であって、例えば、図1に示したように、上部金型31及び下部金型32を含むことができる。
【0025】
上記において、上部金型31は流入排出口2と連結されており、流入排出口2を介して流入された水又はスチームを金型3内に注入することができるように孔が形成されている。また、下部金型32は被成型体(ex.フィルム)4を成型しようとする形態によって、各種成型凸凹が内部に形成されることもできる。
【0026】
これによって、例えば、成型される被成型体(ex.フィルム)4は前記上部金型31及び下部金型32の間に位置される。
【0027】
また、前記金型3は、成型される被成型体(ex.フィルム)4を固定させるための固定部材34をさらに含むことができる。このとき、固定部材34の種類は、金型3に装着された被成型体(ex.フィルム)4を固定する役割をするものなら、特に制限されなく、例えば、シリコン又は軟質ウレタン素材のオーリング(O-ring)である。このような固定部材34を介して被成型体(ex.フィルム)4をさらに安定的に金型3に装着することができ、これにより、さらに正確な成型が可能になる。
【0028】
また、前記金型3は、流入排出口2から水又はスチームが流入されて水圧又は蒸気圧が発生する場合、金型3内部が過度に加圧されることを防止するための空気排出溝33を一つ以上含むことができる。このような空気排出溝33は、例えば、下部金型33に形成される。前記空気排出溝33は、金型内で空気を排出することができる通常の手段(ex.真空ポンプなど)と連結されることもできる。
【0029】
上記のような空気排出溝33を形成することによって、成型時に金型内部が過度に加圧される問題を解決することができ、必要によっては、水圧又は蒸気圧を使用した成型時に金型内部を真空化して、さらに効率的な成型を行うこともできる。
【0030】
本発明の被成型体(ex.フィルム)成型装置は、図1に示したように、金型3、例えば、上部金型31と被成型体(ex.フィルム)4の間に位置するように、前記上部金型31の下段に付着された軟質補助素材5をさらに含むことができる。このような軟質補助素材5は、例えば、発生器1から発生された蒸気圧又は水圧によって容易に変形される可撓性又は伸張性素材を使用して構成することができる。このような軟質補助素材5は、例えば、クロロプレンゴム、シリコンゴム、又は軟質ウレタンなどの素材を使用して構成することができる。成型装置がこのような軟質補助素材5を含む場合、水圧又は蒸気圧などによって被成型体(ex.フィルム)が損傷されることを防止することができ、また、被成型体(ex.フィルム)自体に気空などが存在し、真空成型の適用が不可能な被成型体に対しても効果的な成型が可能である。
【0031】
このように、可撓性又は伸張性素材で構成された補助素材が配置される場合、発生器1から発生された水圧又は蒸気圧は前記補助素材5を媒介に、被成型体(ex.フィルム)に圧力を加えて被成型体(ex.フィルム)を成型することもでき、必要によっては軟質素材5を媒介にせず、直接、被成型体(ex.フィルム)に圧力を印加して成型工程を行うこともできる。
【0032】
上記のような装置を使用して被成型体(ex.フィルム)を成型する方法は次のようである。
【0033】
まず、図1に示したように、成型される被成型体(ex.フィルム)4を上部金型31及び下部金型32の間に固定させる。
【0034】
その後、図2に示したように、発生器1を通じて水(水圧)又はスチーム(蒸気圧)を発生させ、これを金型内部に注入することができる。このような過程を経る場合、前記発生器1から発生した蒸気圧又は水圧によって被成型体(ex.フィルム)の全体に均一な圧力が加えられ、これによって下部金型32に向けて被成型体(ex.フィルム)4が移動するようになる。移動された被成型体(ex.フィルム)4は金型内に形成された成型凸凹に追従して変形され、これにより、図3に示したように被成型体(ex.フィルム)を成型することができる。本発明では、この過程で金型に形成された空気排出溝33を介して空気を適切に排出させるか、必要に応じて金型内部を真空化して、さらに成型効率を高めることができる。
【0035】
また、発生器1を通じて発生した水圧又は蒸気圧を用いるため、成型される被成型体(ex.フィルム)4に全体的に均一な圧力を印加することができるようになり、成型後の厚み偏差などが発生することを防止することができる。
【0036】
また、本発明では発生器1によって発生された水圧又は蒸気圧、必要に応じて適切に加温及び/又は加圧された水圧又は蒸気圧を通じて、短時間内に被成型体(ex.フィルム)4が均一に下部金型の内部の凸凹に付着され、図3に示したように成型が完了される。
【0037】
このような本発明の方法によると、必要に応じて加温及び/又は加圧される水圧又は蒸気圧を使用して、被成型体(ex.フィルム)全体に一定した圧力を加えて成型することにより、既存の工法(ex.真空成型)では具現することのできなかったアンダーカット(under cut)部位、及びその他の繊細な成型が必要とされる部分の成型を効率的に行うことができる。また、本発明によると、真空成型などで発生していた成型後の厚み偏差、及び被成型体(ex.フィルム)の白化現象なども効果的に防止することができる。
【0038】
例えば、図4に示したように、既存の工法である真空成型法を使用したサンプルAは印刷ラインが壊れてパターンが乱れるなど、外観が損傷される反面、本発明による場合(図4のB)はエッジ部位などが鮮やかに現れ、有効面積に対するパターンが生きていることを確認することができる。
【0039】
また、本発明は、水圧又は蒸気圧発生器;及び前記水圧又は蒸気圧発生器と連通されており、前記発生器によって発生される水圧又は蒸気圧による圧力で被成型体を成型することができる成型凸凹が形成されている金型を含む成型装置に関するものである。
【0040】
本発明の成型装置は、例えば、前述したような各種のフィルムを成型するための成型装置であり得る。
【0041】
このような本発明の成型装置の具体的な構成は特に制限されなく、例えば、前述したような図1に示した装置であり得る。
【0042】
即ち、本発明の成型装置は、前述したように、金型が発生器と連通されている上部金型;及び内部に成型凸凹が形成されている下部金型を含むことができる。
【0043】
また、本発明の成型装置は、前述したように、下部金型に空気排出溝が形成され得る。
【0044】
また、本発明の成型装置は、前述したように、水圧又は蒸気圧発生器及び上部金型と連結され、前記発生器から発生された水圧又は蒸気圧を金型内に流入させることができる流入排出口をさらに含むことができる。
【0045】
また、本発明の成型装置は、前述したように、上部金型の下部に形成された軟質補助素材をさらに含むことができる。
【0046】
また、本発明の成型装置は、前述したように、金型が被成型体を固定するOリングをさらに含むことができ、このOリングはシリコン又は軟質ウレタンで構成されることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・発生機
2 ・・・流入排出口
3 ・・・金型
4 ・・・被成型体
31 ・・・上部金型
32 ・・・下部金型
33 ・・・空気排出溝
34 ・・・固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧又は蒸気圧発生器、及び前記発生器と連通されており、前記発生器によって発生される水圧又は蒸気圧による圧力で、内部に装着された被成型体を成型することができる成型凸凹が形成されている金型を含み、
前記金型は、前記発生器と連通されている上部金型;及び、
内部に成型凸凹が形成されている下部金型を含み、
前記上部金型の下部に形成された軟質補助素材をさらに含む成型装置。
【請求項2】
前記下部金型には空気排出溝が形成されている請求項1に記載の成型装置。
【請求項3】
前記水圧又は蒸気圧発生器、及び前記上部金型と連結され、前記発生器から発生された水圧又は蒸気圧を金型内に流入させることができる流入排出口をさらに含む請求項1に記載の成型装置。
【請求項4】
前記軟質補助素材は、クロロプレンゴム、シリコンゴム、又は軟質ウレタンから構成される請求項1に記載の成型装置。
【請求項5】
前記金型は、前記被成型体を固定することができるOリングをさらに含む請求項1に記載の成型装置。
【請求項6】
前記Oリングはシリコン又は軟質ウレタンから構成される請求項5に記載の成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206522(P2012−206522A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171425(P2012−171425)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2011−530929(P2011−530929)の分割
【原出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】