説明

水密絶縁電線用水密材料及び該水密材料を用いた水密絶縁電線

【課題】水密性及び皮剥ぎ性が両立した水密絶縁電線を達成できる水密絶縁電線用水密材料及び該水密材料を用いた水密絶縁電線を提供する。
【解決手段】エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、架橋剤及び架橋助剤を含んでなる、水密絶縁電線用水密材料。好適には、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂100重量部か、或いは、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂と低密度ポリエチレンの合計重量100重量部当たり、架橋剤を0.1〜5.0重量部、架橋助剤を0.1〜5.0重量部を含有する。エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂には、エチルアクリレート単位の含有量および/またはメルトフローレートが異なる2種以上のエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂を使用するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水密性に優れ、かつ、導体に適度な密着力で密着し得る水密絶縁電線用水密材料及び該水密材料を用いた水密性と皮剥ぎ性が両立した水密絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
撚線導体において、素線の線引き加工時や撚り線加工時に発生する引っ張り応力や曲げ応力が歪みとして残留し、こうした残留応力と水分との相乗作用によって導体が腐食する現象があり、該現象は応力腐食といわれている。このような応力腐食が激しい場合、導体が断線する場合もあり、従来から、応力腐食の防止対策が種々検討されている。
【0003】
例えば、応力腐食の防止のために、撚線導体を圧縮成形することが提案されており、撚線導体を圧縮成形することで、残留応力をキャンセルする効果があると言われている。また、応力腐食に関与する水分が導体と接触するのを防ぐために、導体に水密材料を被覆することが行われている(例えば、特許文献1、2)。かかる水密材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)等が用いられてきたが、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)は水分の存在下で導体腐食を促進させる酢酸イオンが生成するという問題があり、近年、このような問題を生じることのないエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)の使用が主流になりつつある(特許文献2)。しかし、本発明者等の研究では、市販されているエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)は導体への密着性が低過ぎるか、或いは、高過ぎるものしかなく、水密性と皮剥ぎ性(すなわち、水密材料の導体からの剥がし易さ)が両立した水密絶縁電線を実現できていないのが実状である。
【特許文献1】特開2003−51217号公報
【特許文献2】特開2005−105016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような事情に鑑み成されたもので、その解決しようとする課題は、水密性及び皮剥ぎ性が両立した水密絶縁電線を達成し得る水密絶縁電線用水密材料及び該水密材料を用いた水密絶縁電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、架橋剤とともに架橋助剤を添加してエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)の架橋を行うと、架橋剤および架橋助剤の添加量によって、当該エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を主体とする架橋組成物の導体への密着性を任意に制御できることが分かり、かかる知見に基づき更に研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、架橋剤及び架橋助剤を含んでなる、水密絶縁電線用水密材料、
(2)低密度ポリエチレンをさらに含有する、上記(1)記載の水密絶縁電線用水密材料、
(3)エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂100重量部か、或いは、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂と低密度ポリエチレンの合計重量100重量部当たり、架橋剤を0.1〜5.0重量部、架橋助剤を0.1〜5.0重量部を含有する、上記(1)又は(2)に記載の水密絶縁電線用水密材料、
(4)エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂が、エチルアクリレート単位の含有量および/またはメルトフローレートが異なる2種以上のエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂からなる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の水密絶縁電線用水密材料、
(5)撚線導体の素線の間に上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の水密材料が充填され、該水密材料中の樹脂成分の少なくとも一部が架橋されてなることを特徴とする水密絶縁電線、
(6)撚線導体の素線の間に水密材料が圧入により充填されたものである、上記(5)記載の水密絶縁電線、
(7)撚線導体が素線を多層に撚り合わせたものであり、各層の素線の撚り合わせの際に、水密材料を各層上に被覆することにより、撚線導体の素線の間に水密材料が充填されたものである、上記(5)記載の水密絶縁電線、及び
(8)外層上に水密材料を被覆する前に、撚線導体を圧縮成形してなる、上記(7)記載の水密絶縁電線、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベースポリマーに水の存在下で導体の腐食を促進する成分を生成しないエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を使用しながら、撚線導体の素線間(相互間の隙間)への充填性が良好で、しかも、適度な付着力で導体に密着し得る水密絶縁電線用水密材料を提供することができ、該水密材料を使用することで水密性と皮剥ぎ性が両立した水密絶縁電線を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明の水密絶縁電線用水密材料は、その主成分たるポリマー成分(以下、「ベースポリマー」という。)に少なくともエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を使用し、さらに架橋剤および架橋助剤を配合したことが特徴である。
【0009】
ベースポリマーの好適態様としては、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)の単独か、または、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)と低密度ポリエチレンのブレンドである。
【0010】
架橋剤としては、加熱によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限なく使用でき、例えば、無機過酸化物、有機過酸化物、ジアゾ化合物及びジサルファイド化合物等が挙げられるが、有機過酸化物が好適である。有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイドなどが挙げられ、より具体的には、ジクミルパーオキシド、ジtert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロルベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシドなどを挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、ジアルキルパーオキサイド類が好ましい。
【0011】
また、架橋助剤は、上記架橋剤(ラジカル発生剤)とともに用いられて、ベースポリマー(すなわち、少なくともエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を含むポリマー成分)の架橋効率を向上させるものであり、多官能モノマー或いはビニル基を2個以上有する化合物、例えば、メタフェニレンビスマレイミド、キノンジオキシム、1,2−ポリブタジエン、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、トリメタアリルイソシアヌラート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。また、硫黄を使用してもよい。中でも、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、トリメタアリルイソシアヌラートが好ましい。当該架橋助剤は1種又は2種以上を使用できる。
【0012】
本発明の水密絶縁電線用水密材料(以下、単に「水密材料」ともいう)において、架橋剤と架橋助剤の配合量は、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を少なくとも含むベースポリマー100重量部当たり、架橋剤を0.1〜5.0重量部、架橋助剤を0.1〜5.0重量部の範囲内とすることが好ましく、架橋剤と架橋助剤のいずれか一方が当該範囲よりも少なかったり多かったりすると、絶縁電線の水密性と皮剥ぎ性とを両立することが困難になる。好ましくは、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)を少なくとも含むベースポリマー100重量部当たり、架橋剤は0.5〜3.0重量部であり、架橋助剤は0.2〜3.0重量部である。
【0013】
本発明で使用するエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)は、公知の重合方法で製造してもよいし、市販品をそのまま使用してもよい。本発明において、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)は、エチルアクリレート含有量(以下、「EA量」という。)が5〜40重量%(好ましくは10〜30重量%)の範囲で、かつ、メルトフローレート(以下、「MFR」という。)が0.1〜400g/10min(好ましくは0.5〜300g/10min)の範囲にあるものを少なくとも使用するのが好ましい。EA量が5重量%未満であると、そのようなエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)から得られる水密材料は導体との密着度が低く、水密性が低下する傾向となり、また、EA量が40重量%を超えると、そのようなエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)から得られる水密材料は導体との密着性が高くなり過ぎて、皮剥ぎ性が低下する傾向となる。一方、MFRが0.1g/10min未満であると、そのようなエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)から得られる水密材料は溶融粘度が高いために導体素線間の隙間へ充填性が低下する傾向となり、また、MFRが400g/10minを超えると、そのようなEEAから得られる水密材料は溶融粘度が低すぎるために、導体素線間の隙間に充填した際に垂れ落ちが生じて、成形性が低下する傾向となる。
このようなEA量及びMFRを満たすEEAの具体例としては、日本ユニカー社製NUC−6070(EA量:25%、MFR:250g/10min)、三井デュポン社製A704(EA量:25%、MFR:275g/10min)、日本ユニカー社製NUC−6221(EA量:10%、MFR:2.6g/10min)、三井デュポン社製A709(EA量:34%、MFR:25g/10min)、三井デュポン社製A703(EA量:25%、MFR:5g/10min)、三井デュポン社製A702(EA量:19%、MFR:5g/10min)、日本ユニカー社製NUC−6940(EA量:35%、MFR:20g/10min)等が挙げられる。
【0014】
また、本発明において、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂はEA量および/またはMFRが異なる2種以上をブレンドして用いることができ、その場合、EA量が5〜40%で、MFRが100〜400g/10minの範囲にあるエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(以下、「EEA−1」ともいう。)と、EA量が5〜40%で、MFRが0.1〜99g/10minの範囲にあるエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(以下、「EEA−2」ともいう。)とを、両者の重量比(EEA−1:EEA−2)が1:0.01〜1(好ましくは1:0.05〜0.5)となる範囲でブレンドした態様が好ましい。
【0015】
また、上記のEA量が5〜40%で、MFRが0.1〜99g/10minの範囲にあるエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA−2)に代えて、そのMFRがEEA−2のそれと同じ範囲にあるエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂以外の架橋可能な樹脂(好適には低密度ポリエチレン)を使用しても、好ましい結果を得ることができる。
【0016】
なお、本発明でいう、メルトフローレート(MFR)とはJIS K 7210に基づいて測定される190℃−2.16kgfの測定条件下での測定値である。
【0017】
本発明の水密材料において、ベースポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂や低密度ポリエチレン以外の他のポリマーをさらに含有させてもよく、該ポリマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPEA)、1,2ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(TPVB)、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー(TPI)、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、アイオノマー系熱可塑性エラストマー、ポリマーアロイ系エラストマー等が挙げられる。ただし、かかる他のポリマーは、ベースポリマー全体当たり0〜50重量%の範囲内である。
【0018】
本発明の水密材料には、必要に応じて、ベースポリマー、架橋剤および架橋助剤以外に、酸化防止剤、加工助剤、着色剤等の従来からこの種の水密材料に配合されている公知の添加剤を配合することができる。
【0019】
本発明の水密材料は、ベースポリマー、架橋剤および架橋助剤、並びに、必要に応じて配合される添加剤を、公知の混練機を用いて混合することで調製される。
【0020】
本発明の水密絶縁電線は、少なくとも、撚線導体、撚線導体の素線の間(素線相互間の空隙部)を充填する水密材料及び最外層としての絶縁層を含んで構成され、撚線導体と絶縁層間の空隙部にも水密材料が充填されているのが好ましい。撚線導体としては銅素線(硬銅線、軟銅線)を拠り合わせたものが好適であり、素線の本数、拠り合わせの形態等は絶縁電線の用途に応じて適宜決定される。
【0021】
本発明の水密絶縁電線に使用される絶縁層には、水密絶縁電線用の絶縁層に使用されている公知の材料を適用すれば良く、例えば、非架橋タイプのポリエチレン、架橋タイプのポリエチレン等が使用される。中でも、耐熱性が良いという点で、架橋タイプのポリエチレンを使用するのが好ましく、具体的には、過酸化物系架橋剤入りポリエチレン、シラン系架橋剤入りポリエチレン等が挙げられる。中でも、シラン系架橋剤入りポリエチレンは架橋工程が煩雑でないという点で好ましい。
【0022】
本発明の水密絶縁電線は例えば以下の2つの方法のいずれかで製造するのが好ましい。
第1方法:
(A)銅素線を撚線した導体に、水密材料を押出し、銅素線間および導体外周に水密材料を充填、被覆する。
(B)引続き、導体外周に塗布された水密材料の外周に絶縁層を押出被覆し、ドラムに巻き取る。
水密材料の架橋は、水密材料の充填、被覆後、例えば、高温(140〜220℃)、高圧(4〜25kg/cm)下に付すことで行われる。なお、絶縁層に過酸化物系架橋剤入りポリエチレンを使用する場合、過酸化物系架橋剤入りポリエチレンを押出被覆後にその架橋処理を行うが、かかる過酸化物系架橋剤入りポリエチレンの架橋処理時に水密材料を同時に架橋することができるので、絶縁層に過酸化物系架橋剤入りポリエチレンを使用する場合は、水密材料の押出し後(水密材料の充填、被覆後)に、水密材料の架橋処理は必ずしも行う必要はない。絶縁層にシラン系架橋剤入りポリエチレンを使用する場合、シラン系架橋剤入りポリエチレンを押出被覆後、ドラムに巻き取った状態で60〜90℃の水蒸気中でポリエチレンを架橋させればよい。また、絶縁層に過酸化物系架橋剤入りポリエチレンを使用する場合、過酸化物系架橋剤入りポリエチレンを押出被覆後、高温(140〜220℃)、高圧(4〜25kg/cm)に保持された雰囲気でポリエチレンを架橋させ、被覆導体をドラムに巻き取ればよい。
【0023】
第2方法:
(A)銅素線を多層に撚り合せ、各層の素線の撚り合わせの際に水密材料を各層上に被覆する。こうして得られる撚線導体は、応力腐食(残留応力)の軽減の点から、外層上に水密材料を被覆する前に圧縮成形するのが好ましく、圧縮の程度としては撚線導体の占積率が85〜95%となるようにするのが好ましい。
(B)上記得られた撚線導体の外周に絶縁層を押出被覆し、ドラムに巻き取る。
なお、該第2方法における水密材料及び絶縁層の架橋処理は第1方法のそれに準じて行えばよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例と比較例を示して本発明をより具体的に説明する。
実施例1〜13
表1に示す組成の水密材料(1種のEEAを使用した水密材料)を使用し、それぞれの水密材料を撚線導体の外から圧入し、過酸化物系架橋剤入りのポリエチレンを押出し被覆し、高圧水蒸気(圧力:17kg/cm、温度:200℃)中で架橋させ、電線を試作した。試作した電線は導体サイズ(断面積)が125mmで、導体の構成は、中心線1となる素線1本(第1層)の外周に素線6本(第2層)を撚り合わせ、その外周に素線12本(第3層)をさらに撚り合わせた素線本数19本の撚線導体とした。また、導体素線径は2.90mmである。そして、試作したそれぞれの電線の水密性および皮剥ぎ性を次の方法で調査した。
【0025】
[水密性]
長さ2mの電線の片端に、差圧が0.01気圧になるように水圧を掛け、24時間後の水の進入長を測定し、時間当たりの水の進入速度(mm/H)を求め、これを水密性の指標とし、判定の基準を次の通りとした(◎、○、△は実用可能。×は実用できない。)。
A判定(◎):水の進入速度が1mm/H未満
B判定(○):水の進入速度が1〜10mm/H
C判定(△):水の進入速度が10〜100mm/H
D判定(×):水の進入速度が100mm/H以上
【0026】
[皮剥ぎ性]
間隔を80cm離して作業台に固定された1対のバイスに、長さ約1mの電線の両端を挟んで、挟まれた電線の中央部を約40cm、専用皮剥工具(GSピラー古川電機製)で皮剥ぎする。尚、皮剥ぎ時の周囲温度は常温(25±5℃)とする。そして、皮剥ぎ性の判定基準は次の通りとした(◎、○、△は実用可能。×は実用できない。)
A判定(◎):撚線導体を構成する複数の導体素線の表面に水密材料の付着がない。
B判定(○):水密材料の残りはあるが、導体素線の間のみで、撚線導体の外接円周を超えて残っていない。
C判定(△):水密材料が導体素線の撚り溝に、撚線導体の外接円周を超えて残っている場合。
D判定(×):水密材料が、皮剥ぎ両端部に連続して、つながって残っている場合。
E判定(×):水密材料が、撚線導体の円周方向に幅3mm以上で、残っている場合。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例14〜19
表2に示す組成の水密材料((i)2種のEEAを使用した水密材(実施例14〜16)、(ii)1種のEEAと1種の低密度ポリエチレンを使用した水密材料(実施例17、18)、(iii)2種のEEAと1種の低密度ポリエチレンを使用した水密材料(実施例19))を使用した以外は実施例1〜13と同様にして電線を試作し、それぞれの電線の水密性および皮剥ぎ性を前記の方法で調査した。
【0029】
実施例20
撚線導体を作製する際に各層を実施例2で用いた水密材料と同じ水密材料で被覆し(すなわち、各層上に水密材料を被覆し)、次いで、シラン架橋剤入りのポリエチレンを押出し被覆し、90℃水蒸気中で架橋させ、電線を試作した。すなわち、水密材料は第1層(中心線)上、第2層(6本)上、第3層(12本)上の3箇所を被覆した。試作した電線は導体サイズ(断面積)が125mmで、導体の構成は、中心線1となる素線1本の外周に素線6本(1層目)を撚り合わせ、その外周に素線12本(2層目)をさらに撚り合わせた素線本数19本の撚線導体とした。また、導体素線径は2.90mmである。試作した電線の水密性および皮剥ぎ性を前記の方法で調査した。
【0030】
実施例21
撚線導体の作製(すなわち、各素線を実施例2で用いた水密材料と同じ水密材料で被覆しながら素線を撚り合わせて撚線導体を作製)において、第3層(12本)上に水密材料を被覆する前に撚線導体に圧縮成形を施した以外は、実施例20と同様にして、電線を試作し、試作した電線の水密性および皮剥ぎ性を前記の方法で調査した。なお、撚線導体の圧縮成形における圧縮の程度は、撚線導体の占積率が圧縮前の88%となるように行った。試作した電線は導体サイズ(断面積)が125mm、導体素線径は2.90mmである。試作した電線の水密性および皮剥ぎ性を前記の方法で調査した。
【0031】
【表2】

【0032】
比較例1〜5
表3に示す組成の水密材料を使用した以外は実施例1〜13と同様にして電線を試作し、それぞれの電線の水密性および皮剥ぎ性を前記の方法で調査した。
【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明で得られる水密絶縁電線は、水密性及び皮剥ぎ性の両立した絶縁電線であり、種々の用途に使用できる。例えば、架空配電線、海底ケーブル、水底ケーブル、潜水艦用ケーブル、船用ケーブル、電力ケーブル等が挙げられるが、特に架空配電線用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、架橋剤及び架橋助剤を含んでなる、水密絶縁電線用水密材料。
【請求項2】
低密度ポリエチレンをさらに含有する、請求項1記載の水密絶縁電線用水密材料。
【請求項3】
エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂100重量部か、或いは、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂と低密度ポリエチレンの合計重量100重量部当たり、架橋剤を0.1〜5.0重量部、架橋助剤を0.1〜5.0重量部を含有する、請求項1又は2に記載の水密絶縁電線用水密材料。
【請求項4】
エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂が、エチルアクリレート単位の含有量および/またはメルトフローレートが異なる2種以上のエチレン−エチルアクリレート共重合樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか一項記載の水密絶縁電線用水密材料。
【請求項5】
撚線導体の素線の間に請求項1〜4のいずれか一項記載の水密材料が充填され、該水密材料中の樹脂成分の少なくとも一部が架橋されてなることを特徴とする水密絶縁電線。
【請求項6】
撚線導体の素線の間に水密材料が圧入により充填されたものである、請求項5記載の水密絶縁電線。
【請求項7】
撚線導体が素線を多層に撚り合わせたものであり、各層の素線の撚り合わせの際に、水密材料を各層上に被覆することにより、撚線導体の素線の間に水密材料が充填されたものである、請求項5記載の水密絶縁電線。
【請求項8】
外層上に水密材料を被覆する前に、撚線導体を圧縮成形してなる、請求項7記載の水密絶縁電線。

【公開番号】特開2007−103060(P2007−103060A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288315(P2005−288315)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(502122521)株式会社エクシム (25)
【Fターム(参考)】