説明

水性ウレタン樹脂組成物、コーティング剤、鋼板表面処理剤ならびに硬化物及び積層物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、基材に対する密着性や追従性に優れ、かつ、耐溶剤性等の耐久性に優れた皮膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させて得られる脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)ならびに水性媒体(E)を含有し、前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対する、前記ウレタン樹脂(D)中に含まれる脂肪族環式構造の割合が2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物、それを含むコーティング剤及び鋼板表面処理剤に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材や金属基材、木質基材をはじめとする各種基材のコーティング剤や接着剤等の様々な分野に使用可能な水性ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング剤は、各種基材表面に意匠性を付与する役割のほかに、基材表面を外的要因から保護する役割を有しており、近年は、形成する皮膜の高耐久化の要求が高まっている。
【0003】
高耐久性を備えた皮膜を形成可能なコーティング剤としては、近年、ウレタン(メタ)アクリレート含有の水性コーティング剤が注目されている。前記コーティング剤は、通常、光照射や加熱することによって架橋反応を進行させ皮膜を形成するため、他のコーティング剤と比較して高耐久性を備えた皮膜を形成できる場合が多い。
【0004】
前記ウレタン(メタ)アクリレート含有の水性コーティング剤としては、例えば、少なくとも1個のポリイソシアネート化合物(i)と、少なくとも1個のポリオール(ii)と、イソシアネート基と反応できる少なくとも1個の反応基を含有し、直接又は中和剤との反応後に、水性媒質中でポリウレタンプレポリマーを分散可能にし、塩を提供することができる少なくとも1個の親水性化合物(iii)と、イソシアネート基と反応できる少なくとも2個の反応基を含有する少なくとも1個の(メト)アクリル化化合物(iv)と、イソシアネート基と反応できる基本的に1個の反応基を含有する少なくとも1個の(メト)アクリル化化合物(v)の前記5種類の化合物の反応から得られる(メト)アクリル化ポリウレタンプレポリマー(A)と、少なくとも1個のエチレン不飽和化合物(B)を含み、前記組成物が、3meqの(メト)アクリル化基及び重合性のエチレン不飽和基の総量を含む水性放射線硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
前記したようなウレタン(メタ)アクリレート含有のコーティング剤であれば、高架橋密度の皮膜を形成できるものの、例えば洗浄剤等の各種溶剤が付着した際に、皮膜の溶解や劣化等を引き起こす場合があった。また、前記高架橋密度の皮膜は、一般に、基材に対する密着性や追従性の点で十分でない場合が多いため、硬化直後または経時的に皮膜の基材表面からの剥離を引き起こしたり、基材の変形や皮膜表面が擦過等されたりする等の力が加わった場合に、やはり皮膜の剥離やひび割れ等を引き起こす場合があった。
【0006】
前記文献1記載の水性放射線硬化性組成物もまた、溶剤等の付着による皮膜の劣化や、前記のとおりプラスチック基材や金属基材をはじめとする各種基材への密着性や追従性が不十分な場合があるため、基材表面からの皮膜の剥離やひび割れを引き起こしやすく、前記基材の腐食等を十分に防止できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−533504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、基材に対する密着性や追従性に優れ、かつ、耐溶剤性等の耐久性に優れた皮膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定量の脂肪族環式構造を有するラジカル重合性の水性ウレタン樹脂組成物であれば、本発明の課題を解決できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させて得られる脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)ならびに水性媒体(E)を含有し、前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対する、前記ウレタン樹脂(D)中に含まれる脂肪族環式構造の割合が2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物、それを含むコーティング剤及び鋼板表面処理剤に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物であれば、プラスチック基材や金属基材をはじめとする各種基材に対して密着性や追従性に優れた高耐久性の皮膜を形成できることから、例えば各種基材表面の保護や、意匠性を付与する為のコーティング剤に使用することができる。とりわけ、鋼板等の金属基材の表面保護コーティング剤に使用することができる。
【0012】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、例えば、ABS樹脂、PC樹脂、ABS/PC樹脂、PS樹脂、PMMA樹脂等のプラスチック基材の表面被覆に好適に使用できることから、たとえば携帯電話、家電製品、OA機器、自動車内装材等の表面被覆に使用することが可能である。
【0013】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等の金属基材の錆等の発生を防止可能な耐食性に優れた皮膜を形成できることから、例えば外壁、屋根等の建築部材、ガードレール、防音壁、排水溝等の土木部材、家電製品、産業機械、自動車の部品等の表面塗装用のコーティング剤等に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させて得られる脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)、水性媒体(E)、ならびに、必要に応じてその他の添加剤を含有するものであって、ウレタン樹脂(D)全量中に脂肪族環式構造を2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲で有するウレタン樹脂(D)が前記水性媒体(E)中に溶解または分散したものである。
【0015】
はじめに、本発明で使用するウレタン樹脂(D)について説明する。
本発明で使用するウレタン樹脂(D)は、脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するもののうち、前記脂肪族環式構造を2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲で有するものである。
【0016】
前記ウレタン樹脂(D)は、前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対して2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲の脂肪族環式構造を有するものであることが、基材密着性や基材追従性に優れた皮膜を形成するうえで重要であり、特に3000〜5000mmol/kgの脂肪族環式構造を有することが好ましい。前記特定量の脂肪族環式構造を有するウレタン樹脂(D)を使用することによって、得られる皮膜の各種基材に対する密着性や追従性を大幅に向上させることができる。
【0017】
ここで、前記ウレタン樹脂(D)の代わりに脂肪族環式構造が1500mmol/kg程度であるウレタン樹脂を使用した水性ウレタン樹脂組成物では、各種基材への密着性や追従性に優れた皮膜を形成することができない場合がある。また、前記ウレタン樹脂(D)の代わりに、例えば脂肪族環式構造が約6000mmol/kgであるウレタン樹脂を含む水性ウレタン樹脂組成物では、基材への追従性に優れた比較的柔軟な皮膜を形成することができない場合がある。また、脂肪族環式構造が概ね6000mmol/kg程度のウレタン樹脂は、その製造途中にゲル化を引き起こしやすい等の問題がある。なお、前記脂肪族環式構造の含有量は、前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対する、前記ウレタン樹脂(D)中に含まれる脂肪族環式構造の割合を示し、前記ウレタン樹脂(D)の製造に使用するポリオール(A)やポリイソシアネート(B)等の全原料の合計質量と、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用した、例えば脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)や脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート等の脂肪族環式構造含有化合物が有する脂肪族環式構造の物質量に基づいて算出した値である。
【0018】
前記脂肪族環式構造は、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、プロピルシクロヘキシル基、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デシル基、ビシクロ〔4,3,0〕−ノニル基、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデシル基、プロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデシル基、ノルボルネン基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等が挙げられるが、なかでもシクロヘキシル基、ノルボルネン基であることが、基材に対する密着性に優れた皮膜を形成するうえで好ましい。
【0019】
また、本発明で使用するウレタン樹脂(D)は、単に前記範囲の脂肪族環式構造を有すればよいというものではなく、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させて得られるものを使用することが重要である。
【0020】
前記ウレタン樹脂(D)の有する脂肪族環式構造の一部または全部は、ウレタン樹脂(D)を製造する際に使用する脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の構造であることが、本発明の課題を解決するうえで重要である。ここで、前記ウレタン樹脂(D)の代わりに、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)を使用せず一般的な脂肪族ポリオールと、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートとを反応させることによって得られた、2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲の脂肪族環式構造を有するウレタン樹脂を使用した場合、優れた基材密着性と追従性を両立することができない場合がある。
【0021】
一方、前記ウレタン樹脂(D)中に存在する脂肪族環式構造の全てが、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の構造である必要はなく、その一部が脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートや鎖伸長剤等に由来するものであっても良い。
【0022】
前記ウレタン樹脂(D)としては、前記2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲の脂肪族環式構造を有するとともに、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造を、300mmol/kg〜2000mmol/kg使用することが好ましく、300mmol/kg〜1500mmol/kg有するものを使用することが、形成する皮膜に適度な力学的強度等を付与し、その結果、基材密着性や追従性を向上できるため好ましい。
【0023】
また、前記ウレタン樹脂(D)としては、水性媒体(E)中における良好な水分散安定性を付与し、保存安定性に優れた水性ウレタン樹脂組成物を得る観点から、親水性基を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、なかでもアニオン性基又はカチオン性基を使用することが好ましく、アニオン性基を使用することがより好ましい。
【0025】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン酸基や、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基、スルホネート基等を使用することができる。なかでもカルボキシル基やカルボキシレート基を使用することが、良好な水分散性を有するウレタン樹脂(D)を得るうえで好ましい。
【0026】
前記アニオン性基の中和に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンや、Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物等が挙げられる。
【0027】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができる。前記3級アミノ基は、その一部又は全てが酢酸やプロピオン酸等で中和されたものであっても良い。
【0028】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等が挙げられる。
【0029】
前記アニオン性基やカチオン性基等の親水性基は、ウレタン樹脂(D)全体に対して50mmol/kg〜1000mmol/kgの範囲で存在することが、水性媒体(E)中におけるウレタン樹脂(D)の良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。
【0030】
また、前記ウレタン樹脂(D)としては、前記脂肪族環式構造及び親水性基とともに、重合性不飽和二重結合を有するものを使用することが重要である。
【0031】
前記重合性不飽和二重結合は、ラジカル重合性を備えた不飽和二重結合であって、例えば(メタ)アクリロイル基等のビニル基が挙げられる。より具体的には、各種(メタ)アクリル単量体等のビニル単量体由来の(メタ)アクリロイル基等のビニル基が挙げられる。
【0032】
ここで、前記ウレタン樹脂(D)の代わりに前記重合性不飽和二重結合を有さないウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂組成物では、耐溶剤性等の耐久性に優れた皮膜を形成することが困難な場合がある。
【0033】
したがって、前記ウレタン樹脂(D)としては、前記ウレタン樹脂(D)全体に対して重合性不飽和二重結合を200mmol/kg〜2000mmol/kgの範囲で有するものを使用することが好ましく、400mmol/kg〜1000mmol/kgの範囲で有するものを使用することが、優れた基材密着性と追従性を両立した上で、さらに優れた耐久性を有する皮膜を形成できるためより好ましい。
【0034】
前記重合性不飽和二重結合は、前記ウレタン樹脂(D)の分子中に存在すればよいが、前記ウレタン樹脂(D)の分子末端や分子側鎖に存在することがより好ましく、分子末端に存在することが、基材への追従性に優れた比較的柔軟な皮膜を形成できるため特に好ましい。
【0035】
以上のような2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲の脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)は、優れた基材密着性と追従性を両立する観点から5000〜500000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、10000〜500000のものを使用することがより好ましく、30000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することがより好ましく、40000〜100000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが特に好ましい。
【0036】
前記ウレタン樹脂(D)は、例えばポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂(D’)を製造する工程(I)、及び、前記ウレタン樹脂(D’)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させる工程(II)を経ることによって製造することができる。
【0037】
はじめに、前記工程(I)について説明する。
前記工程(I)は、前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂(D’)を製造する工程である。
【0038】
ここで、前記ポリオール(A)及び前記ポリイソシアネート(B)としては、脂肪族環式構造や親水性基を有するものを使用することが、ウレタン樹脂(D)中に脂肪族環式構造や親水性基を導入するうえで好ましい。なかでも、前記ポリオール(A)として脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含有するものを使用することが好ましく、更に、前記ポリイソシアネート(B)として脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を含有するものを使用することが、各種基材への密着性や追従性を向上するうえでより好ましい。
【0039】
前記ポリオール(A)としては、前記のとおり脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)や親水性基含有ポリオール(a2)を使用することができる。
【0040】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)としては、例えばシクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の、概ね100〜500程度の低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)を使用することができる。なお、上記脂肪族環式構造含有ポリオールの分子量は、式量に基づくものである。
【0041】
また、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)としては、前記した低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)と他の成分とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールや脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールや脂肪族環式構造含有ポリエーテルポリオール等を使用することができる。
【0042】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールとしては、例えば前記低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)と、ジメチルカーボネートやホスゲン等とを反応して得られたものを使用することができる。
【0043】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールとしては、800〜3000の数平均分子量を有する脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールを使用することが好ましく、800〜2000の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0044】
また、前記脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールとしては、例えば前記した低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)を含むポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの等を使用することができる。
【0045】
前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0046】
前記脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールとしては、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)の他に必要に応じて、ネオペンチルグリコールや2−ブチル−2−エチルプロパンジオール等のその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。具体的には、基材に対する追従性を向上する観点から、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)とともに前記ネオペンチルグリコール等の分岐構造を備えたポリオールを組み合わせ使用することが好ましい。
【0047】
また、前記脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールとしては、ネオペンチルグリコール等の一般に知られる脂肪族ポリオールと、1,3−シクロペンタンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族環式構造含有ポリカルボン酸とを反応させて得られるものやその酸無水物などを使用することができる。
【0048】
また、前記脂肪族環式構造含有ポリエーテルポリオールとしては、例えば前記した低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)を開始剤として、例えばエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0049】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)としては、優れた基材密着性を付与する観点から、前記したもののうちシクロヘキサンジメタノール等の脂肪族環式構造含有ポリオール(a1−1)や、前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールや、前記脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0050】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)の使用量は、ウレタン樹脂(D)中に導入しようとする脂肪族環式構造量やポリオール(A)の組み合わせ及びその分子量等によって異なるが、概ね、前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の合計質量に対して、2質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0051】
また、前記親水性基含有ポリオール(a2)としては、脂肪族環式構造を有さず親水性基を有するものを使用することができ、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することがより好ましい。
【0052】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0053】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
【0054】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0055】
前記カルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオールは、前記ウレタン樹脂(D)の酸価が10〜70となる範囲で使用することが好ましく、10〜50となる範囲で使用することがより好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ウレタン樹脂(D)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0056】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0057】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0058】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0059】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0060】
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0061】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0062】
前記親水性基含有ポリオール(a2)は、前記ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の合計質量に対して、2質量%〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0063】
また、前記ポリオール(A)としては、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)や前記親水性基含有ポリオール(a2)の他に、必要に応じてその他のポリオール(a3)を併用することができる。
【0064】
前記その他のポリオール(a3)としては、例えば、ポリエーテルポリオールや、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等のうち、脂肪族環式構造や親水性基を有さないものを使用することができる。また、脂肪族環式構造や親水性基を有さない、比較的低分子量のポリオールを使用することもできる。なかでも、前記その他のポリオール(a3)として前記ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールを使用することが、皮膜の良好な柔軟性や基材追従性を付与するうえで好ましい。
【0065】
前記その他のポリオール(a3)としては、具体的には、汎用の脂肪族系および/または芳香族系ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオールや、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールを使用することが特に好ましい。
前記その他のポリオール(a3)の数平均分子量としては、500〜3000の範囲であることが好ましく750〜2000の範囲であることがより好ましい。
【0066】
前記その他のポリオール(a3)は、優れた基材密着性を損なうことなく、皮膜に良好な柔軟性や基材追従性を付与する観点から、前記ポリオール(A)の全量に対して0質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0067】
また、前記ポリイソシアネート(B)としては、例えばノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、黄変色を防止する観点では脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、前記変色防止とともに、耐擦過性や耐アルカリ性のより一層の向上を図る観点から、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(b1)を使用することが好ましい。
【0068】
前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)との反応は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と前記親水性基含有ポリオール(a2)と必要に応じてその他のポリオール(a3)とを含むポリオール(A)、及び、前記ポリイソシアネート(B)を、反応温度50℃〜150℃程度の範囲で行うことができる。
【0069】
前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)との反応は、例えば、前記ポリオール(A)の水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0070】
前記工程(I)で使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。前記有機溶剤を使用した場合には、環境負荷低減等の観点から、前記ウレタン樹脂(D’)またはウレタン樹脂(D)の製造途中や製造後に、必要に応じて蒸留法等によって前記有機溶剤を除去することが好ましい。
以上のように、工程(I)を経ることによって、ウレタン樹脂(D’)またはその有機溶剤溶液を得ることができる。
【0071】
次に、工程(II)について説明する。
工程(II)は、前記で得たウレタン樹脂(D’)と、水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させることによって、重合性不飽和二重結合を備えたウレタン樹脂(D)を得る工程である。具体的には、前記工程(II)では、前記工程(I)で得たウレタン樹脂(D’)の有するイソシアネート基と、前記水酸基含有ビニル単量体(C)の水酸基とを反応させる。
【0072】
前記イソシアネート基と水酸基との反応は、例えば前記ウレタン樹脂(D’)単独またはその有機溶剤溶液と、前記水酸基含有ビニル単量体(C)とを混合し、概ね50℃〜100℃の範囲で1時間〜5時間程度行うことができる。
【0073】
前記水酸基含有ビニル単量体(C)は、前記水酸基含有ビニル単量体(C)の水酸基と前記ウレタン樹脂(D’)のイソシアネート基との当量割合[水酸基/イソシアネート基]が0.05〜0.7の範囲で使用することが、優れた耐久性と適度な力学的強度や伸びを両立した皮膜を形成するうえで好ましい。また、後述する鎖伸長剤を使用する場合も、前記当量割合の範囲で使用し、得られるウレタン樹脂中にイソシアネート基を一部残存させることが好ましい。
前記工程(II)で使用する水酸基含有ビニル単量体(C)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレートを使用することができる。
【0074】
また、前記水酸基含有ビニル単量体(C)としては、水酸基含有ジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。
前記水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、および、ソルビトール等の糖アルコールの(メタ)アクリレートエステル、等から選択される1種または2種以上を使用することができる。また、これらの(メタ)アクリレートにアルキレンオキサイド、脂肪族エステル、カプロラクトン等をさらに付加したものも使用することができる。前記アルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等を使用することができる。
【0075】
前記水酸基含有ビニル単量体(C)としては、その使用量が少量であっても皮膜の架橋密度を高めることができ、その結果、耐久性に優れた皮膜を形成できることから、水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を使用することがより好ましい。
【0076】
前記水酸基含有ビニル単量体(C)は、前記ウレタン樹脂(D)の製造に使用する前記ポリオール(A)や前記ポリイソシアネート(B)や前記水酸基含有ビニル単量体(C)や、後述する鎖伸長剤を使用する場合にはそれを含む原料の合計質量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲で使用することが、基材密着性や追従性及び耐久性を向上するうえで好ましい。
【0077】
以上のように、前記した工程(I)及び工程(II)を経ることによって、2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲の脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)を製造することができる。
【0078】
また、前記ウレタン樹脂(D)は、前記した製造方法のほかに、例えば脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と親水性基含有ポリオール(a2)と、前記親水性基含有ポリオール(a2)とは別にカルボキシル基含有ポリオール等を含むポリオールと、ポリイソシアネート(B)とを反応させることによってカルボキシル基を有するウレタン樹脂(D’’)を製造する工程(III)、及び、ウレタン樹脂(D’’)の有するカルボキシル基の一部または全部と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基に対して反応性を備えた官能基を有する(メタ)アクリル単量体とを反応させる工程(IV)とを経ることによって製造することもできる。
かかる製造方法によれば、分子側鎖に重合性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂を製造することができる。
【0079】
また、前記ウレタン樹脂(D)は、前記した製造方法のほかに、例えば脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と親水性基含有ポリオール(a2)等とを含むポリオール、ポリイソシアネート(B)、ならびに、エポキシ基含有化合物と(メタ)アクリル酸等とを反応して得られた水酸基及び重合性不飽和二重結合有化合物を反応させることによって製造することもできる。
【0080】
具体的には、前記エポキシ基含有化合物の有するエポキシ基と、(メタ)アクリル酸等の有するカルボキシル基とを反応させ、前記エポキシ基を開裂させることによって、水酸基が新たに形成されるとともに、(メタ)アクリル酸由来の重合性不飽和二重結合が導入される。この水酸基が、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマー中のイソシアネート基やカルボキシル基等の一部と反応することによって、分子側鎖に重合性不飽和二重結合を有するウレタン樹脂を製造することができる。
【0081】
前記エポキシ基含有化合物としては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、及び、それらにアルキレンオキサイドを付加したジグリシジル化合物等の2個以上のエポキシ基を有する化合物を使用することができる。
【0082】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、前記方法で製造したウレタン樹脂(D)と水性媒体(E)とを混合、攪拌することによって製造することができる。具体的には、前記方法で製造したウレタン樹脂(D)またはその有機溶剤溶液と、水性媒体(E)とを、必要に応じてホモジナイザー等を用いて混合することによって行うことができる。
【0083】
前記水性媒体(E)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0084】
前記水性媒体(E)は、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を製造する際の急激な粘度上昇を抑制し、かつ、水性ウレタン樹脂組成物の生産性や、その塗工のしやすさや乾燥性等を向上する観点から、前記水性ウレタン樹脂組成物全量に対して30質量%〜80質量%の範囲で含むことが好ましく、40質量%〜75質量%の範囲であることがより好ましい。
【0085】
前記ウレタン樹脂(D)は、前記水性媒体(E)と混合する前、または、前記水性媒体(E)と混合する際に、前記ウレタン樹脂(D)の有するアニオン性基等の親水性基の一部または全部を中和することが、ウレタン樹脂(D)の水分散安定性を向上するうえで好ましい。前記中和には、前記した塩基性化合物等を使用することができる。
また、前記ウレタン樹脂(D)の有機溶剤溶液を使用した場合には、水性媒体(E)と混合した後に、蒸留法等の方法によって有機溶剤を除去することが好ましい。
【0086】
また、前記ウレタン樹脂(D)を製造する際には、得られる皮膜の耐久性をより一層向上する観点から、前記ポリオール(A)や前記ポリイソシアネート(B)や水酸基含有ビニル単量体(C)の他に、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。
【0087】
前記鎖伸長剤としては、ポリアミンをはじめ、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0088】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0089】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のコーティング剤の保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0090】
前記ポリアミン等の鎖伸長剤は、前記ウレタン樹脂(D)中に残存しうるイソシアネート基と反応し、高分子量化したウレタン樹脂(D)を形成する。そのため、前記ポリアミン等の鎖伸長剤を使用する場合には、前記ウレタン樹脂(D’)の有するイソシアネート基と前記水酸基含有ビニル単量体(C)の有する水酸基との当量割合を前記した範囲とすることで、得られるウレタン樹脂(D)中にイソシアネート基が残存するよう調整することが好ましい。
【0091】
前記ポリアミン等の鎖伸長剤は、例えば前記ポリアミンが有するアミノ基と、前記ウレタン樹脂(D)中に残存しうるイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。鎖伸長剤を前記した範囲で使用することにより、形成する皮膜の耐久性や力学的強度を向上させることができる。
前記鎖伸長剤と前記ウレタン樹脂(D)との反応は、前記ウレタン樹脂(D)と水性媒体(E)とを混合する前、または、前記水性媒体(E)と混合した後のいずれにおいても行うことが可能である。
【0092】
前記方法で得られた本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(D)の有する重合性不飽和二重結合に起因したラジカル重合をさせることによって、耐久性に優れ、かつ、様々な基材に対する密着性や追従性に優れた皮膜等の硬化物を形成することができる。
【0093】
前記水性ウレタン樹脂組成物を硬化させフィルムや皮膜等の硬化物を形成する際には、光照射や加熱等によってラジカルを発生し、前記ウレタン樹脂(D)の重合性不飽和二重結合のラジカル重合を進行させる重合開始剤を使用することが好ましい。前記重合開始剤としては、光重合開始剤や熱重合開始剤を使用することができる。
【0094】
前記光重合開始剤としては、例えば4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類; ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン( 別名= ミヘラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、α−アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート(「バイキュア55」)、2−エチルアンスラキノン等のアンスラキノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(「ルシリンTPO」)等のアシルフォスフィンオキサイド類;3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン〔日本油脂(株)製の「BTTB」〕、アクリル化ベンゾフェノンなどを使用することができる。
【0095】
前記光重合開始剤としては、水性ウレタン樹脂組成物の硬化物の経時的な変色を防止でき、かつ水性ウレタン樹脂組成物の硬化物の厚膜化を可能とするうえで、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのうち1種、または2種、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等を組み合わせ使用することが好ましい。
【0096】
また、前記重合開始剤に使用可能な熱重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができ、具体的には、アゾ系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、パーオキシエステル系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、ケトンパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、アルキルパーエステル系化合物、パーカーボネート系化合物等を使用することができる。
【0097】
前記重合開始剤の使用量は、通常、前記ウレタン樹脂(D)100質量部に対して、0.1質量部〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.5質量部〜2質量部の範囲であることがより好ましい。
【0098】
前記重合開始剤は、前記方法で得た水性ウレタン樹脂組成物と混合し使用してもよく、また、前記ウレタン樹脂(D)と水性媒体(E)とを混合する際に、重合開始剤もあわせて混合してもよい。
【0099】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、形成する皮膜の架橋密度をより一層向上し、高耐久性で、かつ、基材密着性や追従性をも両立した皮膜を形成する観点から、前記したウレタン樹脂(D)及び水性媒体(E)のほかに、必要に応じて、多官能ビニル単量体を含むものであっても良い。
【0100】
前記多官能ビニル単量体は、前記水酸基含有ビニル単量体(C)とは異なり、前記ウレタン樹脂(D’)と反応しうる水酸基等の官能基を有さないものを使用することが好ましい。
【0101】
前記多官能ビニル単量体は、水性媒体(E)中において前記ウレタン樹脂(D)の水性粒子内もしくは粒子近傍もしくは水性媒体(E)中に存在し、光照射や加熱等によってラジカル重合が進行した際に、該多官能ビニル単量体間において反応し架橋構造を形成しうるものである。
【0102】
前記多官能ビニル単量体としては、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAをエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドで変性した変性(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0103】
前記多官能ビニル単量体は、前記ウレタン樹脂(D)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲で使用することが、高耐久性と、基材密着性等とを両立した皮膜を形成するうえで好ましい。
【0104】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、前記したものの他に、その他の添加剤成分を含有していても良い。
【0105】
前記添加剤としては、例えば増感剤、重合禁止剤、硬化剤、硬化促進剤をはじめ、粘着付与樹脂や充填材、顔料、染料、安定剤や難燃剤等を使用することができる。
【0106】
前記増感剤としては、例えば、ビフェニル、1,4−ジメチルナフタレン、9−フルオレノン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、ベンズアルデヒド等を使用することができる。
【0107】
前記重合禁止剤としては、例えば3,5−ビスターシャルブチル−4−ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、パラターシャルブチルカテコール等を使用することができる。
【0108】
前記硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト等の有機金属塩、アミン系、β−ジケトン類等を使用することができる。
【0109】
前記硬化剤としては、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどから誘導されるアダクト体、及びヌレート体などに代表されるポリイソシアネート化合物や、多官能エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレートなどを使用することができる。
【0110】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物には、前記したものの他に、必要に応じて硬化触媒、充填材、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等の各種の添加剤等を使用することができる。
【0111】
前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム、ナトリウムメチラート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ジ−n−ブチル錫ジアセテート、ジ−n−ブチル錫ジオクトエート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫マレエート、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸、燐酸、モノアルキル燐酸、ジアルキル燐酸、モノアルキル亜燐酸、ジアルキル亜燐酸等を使用することができる。
【0112】
前記充填材としては、例えば粘土鉱物、金属、金属酸化物、ガラス等の各種の無機粒子を使用することができる。金属の種類としては、金、銀、銅、白金、チタン、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、鉄、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、それらの金属酸化物等が挙げられる。
【0113】
前記光触媒性化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化ゲルマニウム、酸化銅、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化ルテニウム等を使用することができる。具体的には、例えば、「ST−01」〔石原産業(株)製酸化チタン、平均粒子径7nm〕、「ST−21」〔石原産業(株)製酸化チタン、平均粒子径20nm〕、「AMT−100」〔テイカ(株)製酸化チタン、平均粒子径6nm〕、「TKD−701」〔テイカ(株)製酸化チタン分散体、平均粒子径6nm〕、「TKD−702」〔テイカ(株)製酸化チタン分散体、平均粒子径6nm〕、「STS−21」〔石原産業(株)製酸化チタン水分散体、平均粒子径20nm〕、「TKS−203」〔テイカ(株)製の酸化チタン水分散体、平均粒子径6nm〕等を使用することができる。なかでも、化学的に安定で、無害であり、しかも光触媒活性が高い酸化チタンや酸化亜鉛を使用することが好ましい。
【0114】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物を硬化させる方法としては、前記した重合開始剤の種類によって相違する。例えば前記光重合開始剤を使用した水性ウレタン樹脂組成物は、該水性ウレタン樹脂組成物を基材上に塗布し、次いで、水性媒体(E)を蒸発等させ除去した後、メタルハライドランプ、水銀ランプ等の一般的な紫外線光照射装置を用いて所定の紫外線を照射することによって硬化させることができる。
【0115】
前記紫外線等のエネルギー線の照射は、好ましくは50〜5000mJ/cm、より好ましくは100〜3000mJ/cm、特に好ましくは300〜1500mJ/cmの範囲であることがよい。尚、紫外線照射量は、UVチェッカーUVR−N1(日本電池(株)製)を用いて300〜390nmの波長域において測定した値を基準とした。
【0116】
一方、前記熱重合開始剤を使用した水性ウレタン樹脂組成物は、該水性ウレタン樹脂組成物を基材上に塗布し、次いで、水性媒体(E)を蒸発等させ除去した後、例えば高温炉等を用いて、好ましくは50〜250℃の温度で加熱することによって硬化させることができる。
【0117】
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を硬化させる場合、空気中の酸素による重合阻害を受け、硬化が不十分となり、目的とする粘着性能が発現しないことがある。これを防止するために、窒素などの不活性ガス存在下で活性エネルギー照射や加熱する方法や、後述する基材をラミネートし、該組成物の表面の空気への接触を遮断した状態で活性エネルギー照射や加熱する方法により、硬化させることが好ましい。
【0118】
以上のような本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、コーティング剤や接着剤、粘着剤、各種成形材料等に使用することができる。とりわけ、金属基材の表面保護用コーティング剤に使用することが好ましく、鋼板表面処理剤に使用することがより好ましい。
【0119】
前記コーティング剤等を塗布可能な基材としては、例えば各種プラスチックやそのフィルム、金属、ガラス、紙、木材等が挙げられる。特に各種プラスチック基材に前記コーティング剤を使用した場合であっても、比較的低温の乾燥工程において優れた耐溶剤性、耐水性を有する皮膜を形成でき、かつ該皮膜のプラスチック基材からの剥離を防止することができる。
【0120】
プラスチック基材としては、一般に、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成型品に採用されている素材として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ABS/PC樹脂、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、プラスチックフィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等を使用することができる。
【0121】
また、前記コーティング剤は、金属材料自体の腐食を抑制し得る緻密に造膜した架橋皮膜を形成できるため、金属基材の表面保護用コーティング剤に好適に使用することができる。
【0122】
金属基材としては、例えば、自動車、家電、建材等の用途に使用される亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
【0123】
前記金属基材表面に前記コーティング剤を用いて形成された皮膜の積層された積層物は、加工の際に皮膜の剥離等を引き起こすことなく耐溶剤性等にも優れることから、例えば鋼板防錆剤、建材塗料、ソフトフィール塗料等の用途に使用することができる。
【0124】
また、前記コーティング剤は、その架橋被膜が5μm程度の膜厚であっても、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤に対してきわめて優れた耐溶剤性を発現することが可能である。また、前記コーティング剤は、1μm程度の膜厚であっても、耐酸性や耐アルカリ性等を含む耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0125】
前記コーティング剤は、基材上に塗工し、乾燥、硬化することによって皮膜を形成することができる。
【0126】
コーティング剤の塗工方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0127】
前記乾燥は、塗布層中に含まれる水性媒体(E)を蒸発させ除去できる条件であれば、常温下で自然乾燥でも良いが、加熱乾燥させることが好ましい。加熱乾燥は、通常、40〜250℃で、1〜600秒程度の時間で行うことが好ましい。
また、前記硬化は、前記したとおり使用する重合開始剤の種類等によっても相違するが、前記水性ウレタン樹脂組成物を硬化させる方法と同様に、光照射や加熱を行うことで皮膜を形成することができる。
【0128】
以上のように、前記コーティング剤は、基材密着性等に優れた皮膜を形成できることから、例えば電子機器の各種プラスチック部材の表面被覆、例えば自動車や鉄道等を構成する部材の表面被覆、太陽光発電装置等の光発電装置等の受光表面の表面被覆、電子部品等の表面被覆、壁材や床材、窓ガラス等、眼鏡等の表面被覆に使用するコーティング剤等をはじめとする様々な用途に使用することが可能である。
【0129】
また、前記水性ウレタン樹脂組成物は、フィルム等の各種硬化物の製造に使用可能な成形材料に使用することができる。
具体的には、離型紙や離型フィルムの表面に前記水性ウレタン樹脂組成物を塗布し、前記と同様の方法で硬化させた後、前記離型紙等を除去することによって、透明なフィルムからなる硬化物を得ることができる。
【0130】
前記フィルム等の硬化物は、例えば位相差フィルムや偏光板保護フィルム等の光学フィルムや、携帯電話、家電製品、OA機器をはじめ、自動車内外装材等の自動車部品や各種家電製品の部品、電子材料、建材製品、人工骨や人工歯等の医療材料等の製造等に使用することが可能である。
また、本発明の水性ウレタン樹脂組成物を含有する接着剤または粘着剤は、各種基材に対して優れた密着力を有することから、例えば自動車や家電製品等を構成する部品の固定や、粘接着シート等に使用することができる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0132】
[脂肪族環式構造の含有量]
ウレタン樹脂(D)の脂肪族環式構造の含有量は、前記ウレタン樹脂(D)の製造に使用するポリオール(A)やポリイソシアネート(B)等の全原料の合計質量と、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用した、例えば脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)や脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート等の脂肪族環式構造含有化合物が有する脂肪族環式構造の物質量に基づいて算出した。
【0133】
[重量平均分子量の測定]
ウレタン樹脂(D)の重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)により測定した。
【0134】
水性ウレタン樹脂組成物を、ガラス板上に3milアプリケーターで塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの皮膜を作成した。得られた皮膜をガラス板から剥し、0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解して測定試料とした。
【0135】
測定装置としては、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
【0136】
標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレン(分子量:448万、425万、288万、275万、185万、86万、45万、41.1万、35.5万、19万、16万、9.64万、5万、3.79万、1.98万、1.96万、5570、4000、2980、2030、500)を用いて検量線を作成した。
【0137】
溶離液、及び試料溶解液としてテトラヒドロフランを用い、流量1mL/min、試料注入量500μL、試料濃度0.4%としてRI検出器を用いて重量平均分子量を測定した。
【0138】
[実施例1]水性ウレタン樹脂組成物(X−1)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0139】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0140】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン10質量部とを混合することで、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水562質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.0である水性ウレタン樹脂組成物(X−1)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−1)中に含まれるウレタン樹脂(D−1)の脂肪族環式構造含有量は4266mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1211mmol/kg)、重量平均分子量は75000であった。
【0141】
[実施例2]水性ウレタン樹脂組成物(X−2)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールと炭酸エステルとを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリカーボネートジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0142】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0143】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水562質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.1である水性ウレタン樹脂組成物(X−2)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−2)中に含まれるウレタン樹脂(D−2)の脂肪族環式構造含有量は4266mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1211mmol/kg)、重量平均分子量は72000であった。
【0144】
[実施例3]水性ウレタン樹脂組成物(X−3)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0145】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液に2−ヒドロキシエチルアクリレート7質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0146】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水539質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが7.9である水性ウレタン樹脂組成物(X−3)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−3)中に含まれるウレタン樹脂(D−3)の脂肪族環式構造含有量は4445mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1261mmol/kg)、重量平均分子量は55000であった。
【0147】
[実施例4]水性ウレタン樹脂組成物(X−4)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0148】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0149】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート26質量部とを混合し、次いで、トリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水638質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.0である水性ウレタン樹脂組成物(X−4)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−4)中に含まれるウレタン樹脂(D−4)の脂肪族環式構造含有量は4266mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1211mmol/kg)、重量平均分子量は75000であった。
【0150】
[実施例5]水性ウレタン樹脂組成物(X−5)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0151】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0152】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水565質量部を加え十分に攪拌し、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが7.8である水性ウレタン樹脂組成物(X−5)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−5)中に含まれるウレタン樹脂(D−5)の脂肪族環式構造含有量は4302mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1221mmol/kg)、重量平均分子量は40000であった。
【0153】
[実施例6]水性ウレタン樹脂組成物(X−6)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量0mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール4質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸9質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート46質量部を、N−エチル−2−ピロリドン23質量部とメチルエチルケトン39質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0154】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート8質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0155】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン7質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水354質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を5質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.3である水性ウレタン樹脂組成物(X−6)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−6)中に含まれるウレタン樹脂(D−6)の脂肪族環式構造含有量は2255mmol/Kg(内、(a1)由来が166mmol/kg)、重量平均分子量は83000であった。
【0156】
[実施例7]水性ウレタン樹脂組成物(X−7)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール26質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン35質量部とメチルエチルケトン61質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0157】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にシクロヘキサンジメタノールモノアクリレート12質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0158】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液と、トリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水550質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが7.9である水性ウレタン樹脂組成物(X−7)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−7)中に含まれるウレタン樹脂(D−7)の脂肪族環式構造含有量は4588mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1238mmol/kg)、重量平均分子量は61000であった。
【0159】
[実施例8]水性ウレタン樹脂組成物(X−8)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール15質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸12質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート88質量部を、メチルエチルケトン84質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0160】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート20質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0161】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン9質量部とを混合することで、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水502質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を13質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.1である水性ウレタン樹脂組成物(X−8)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−8)中に含まれるウレタン樹脂(D−8)の脂肪族環式構造含有量は3856mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は1048mmol/kg)、重量平均分子量は69000であった。
【0162】
[実施例9]水性ウレタン樹脂組成物(X−9)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量1426mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール9質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸12質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート79質量部を、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶融物を得た。
【0163】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの溶融物にペンタエリスリトールトリアクリレート24質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの溶融物を得た。
【0164】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの溶融物とトリエチルアミン9質量部とを混合することで、前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水400質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を15質量部加え鎖伸長反応させることによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.5である水性ウレタン樹脂組成物(X−9)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X−9)中に含まれるウレタン樹脂(D−9)の脂肪族環式構造含有量は3557mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は906mmol/kg)、重量平均分子量は65000であった。
【0165】
[比較例1]水性ウレタン樹脂組成物(X’−1)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量0mmol/kg〕100質量部、1,4−ブタンジオール18質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸11質量部、及びヘキサメチレンジイソシアネート68質量部を、N−エチル−2−ピロリドン28質量部とメチルエチルケトン49質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0166】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0167】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン9質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水458質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.2である水性ウレタン樹脂組成物(X’−1)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X’−1)中に含まれるウレタン樹脂(D’−1)の脂肪族環式構造含有量は0mmol/Kg、重量平均分子量は66000であった。
【0168】
[比較例2]水性ウレタン樹脂組成物(X’−2)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量250mmol/kg〕150質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール1質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸8質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート44質量部を、N−エチル−2−ピロリドン29質量部とメチルエチルケトン50質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0169】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート7質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0170】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン6質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水452質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を5質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.2である水性ウレタン樹脂組成物(X’−2)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X’−2)中に含まれるウレタン樹脂(D’−2)の脂肪族環式構造含有量は1814mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は210mmol/kg)、重量平均分子量は88000であった。
【0171】
[比較例3]水性ウレタン樹脂組成物(X’−3)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸エステルとを反応させて得られる脂肪族環式構造含有ポリカーボネートジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量5882mmol/kg〕100質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール31質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸13質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート114質量部を、N−エチル−2−ピロリドン37質量部とメチルエチルケトン63質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0172】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート19質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0173】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水590質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を12質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが8.0である水性ウレタン樹脂組成物(X’−3)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X’−3)中に含まれるウレタン樹脂(D’−3)の脂肪族環式構造含有量は6000mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は2874mmol/kg)、重量平均分子量は48000であった。
【0174】
[比較例4]水性ウレタン樹脂組成物(X’−3)の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール〔水酸基当量1000g/当量、脂肪族環式構造含有量0mmol/kg〕100質量部、1,4−ブタンジオール16質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸14質量部、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート107質量部を、N−エチル−2−ピロリドン34質量部とメチルエチルケトン58質量部に混合し、前記反応容器中の温度80℃の条件下で反応させることによって、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0175】
次いで、前記ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液にペンタエリスリトールトリアクリレート18質量部を混合し、さらに80℃の条件下で、前記イソシアネート基の一部と前記ペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基とを反応させることによって、イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0176】
次いで、前記イソシアネート基と重合性不飽和二重結合を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液とトリエチルアミン10質量部とを混合することで前記ウレタンプレポリマーが有するカルボキシル基の一部または全部を中和した後、更に水541質量部を加え十分に攪拌し、20質量%のエチレンジアミン水溶液を11質量部加え鎖伸長反応させ、更に減圧蒸留することによって、不揮発分が35質量%で、pHが7.9である水性ウレタン樹脂組成物(X’−4)を得た。前記水性ウレタン樹脂組成物(X’−4)中に含まれるウレタン樹脂(D’−4)の脂肪族環式構造含有量は3171mmol/Kg(内、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造含有量は0mmol/kg)、重量平均分子量は80000であった。
【0177】
[密着性の評価方法]
(基材と皮膜との密着性の評価方法)
前記で得た水性ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を0.5質量部配合して得た配合液を、乾燥皮膜の膜厚が2μmとなるように、下記[1]〜[8]で示される8種類の基材の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で180秒間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cm照射することによって、各基材表面に皮膜が積層した試験板1を得た。
【0178】
〔基材〕
基材は全てエンジニアリングテストサービス社から購入した。
【0179】
[1]PET:ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm
[2]PC:ポリカーボネート,1.0mm×70mm×150mm
[3]PVC:塩化ビニル,2.0mm×70mm×150mm
[4]SUS:JIS G4305 SUS304,0.5mm×70mm×150mm
[5]SPC:JIS G3141 SPCC−SB,0.8mm×70mm×150mm
[6]AL:アルミ、JIS H4000 A1050P,0.8mm×70mm×150mm
[7]ガラス:JIS R3202,2.0mm×70mm×150mm
[8]GL:溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛45質量%、アルミ55質量%),0.8mm×70mm×150mm
前記で得た試験板を構成する皮膜と基材との密着性を、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0180】
◎:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
○:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%未満であった。
△:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%以上50%未満であった。
×:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の50%以上であった。
【0181】
[耐水性の評価方法]
(耐水密着性の評価方法)
前記で得た水性ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を0.5質量部配合して得た配合液を、乾燥皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[8]GL:溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛45質量%、アルミ55質量%、0.8mm×70mm×150mm)の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で180秒間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cm照射することによって、溶融亜鉛めっき鋼板からなる基材表面に皮膜が積層した試験板2を得た。
一方、前記で得た水性ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を0.5質量部配合して得た配合液を、乾燥皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[1]PET(ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm)からなる透明フィルム基材の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で180秒間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cm照射することによって、前記透明フィルム基材の表面に皮膜が積層した試験板3を得た。
【0182】
前記試験板2及び3を、40℃の温水中に24時間浸漬し、その表面の水を拭き取った後、浸漬後の試験板2及び3をそれぞれ構成する皮膜と基材との密着性を、JIS K5600 碁盤目試験法に基づいて測定し、下記評価基準に従って評価した。
【0183】
◎:皮膜の剥がれが全く見られなかった。
○:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%未満であった。
△:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の3%以上50%未満であった。
×:皮膜の剥がれた面積が、全碁盤目面積の50%以上であった。
【0184】
(耐水白化性の評価方法)
前記試験板3を、40℃の温水中に24時間浸漬し、その表面の水を拭き取った後、前記試験板3を構成するコーティング皮膜の白濁の有無を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
【0185】
◎:浸漬前の試験板3の外観と全く変化がなく、白化も認められなかった。
○:ごく一部分で僅かな白化が確認できたが、実用上問題ないレベルであった。
△:試験板3の全体にわたり、僅かな白化が認められた。
×:試験板3の全体にわたり、著しい白化が認められた。
【0186】
[耐溶剤性の評価方法]
前記で得た水性ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を0.5質量部配合して得た配合液を、乾燥皮膜の膜厚皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[8]GL:溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛45質量%、アルミ55質量%、0.8mm×70mm×150mm)の表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で180秒間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cm照射することによって、溶融亜鉛めっき鋼板基材の表面に皮膜が積層した試験板4を得た。
【0187】
前記擦過後の皮膜の表面を目視で観察し、下記基準に基づいて評価した。
◎:皮膜の表面に全く変化が無い。
○:皮膜の若干の溶解が見られるも、実用上問題ないレベルであった。
△:皮膜表面全体に対して10%以上30%未満の範囲に、溶解または基材からの脱離が見られた。
×:皮膜表面全体に対して30%以上の範囲に、溶解または基材からの脱離が見られた。
【0188】
また、前記メチルエチルケトンを含浸したガーゼの代わりに、エタノールを含浸したガーゼを用いること以外は、前記と同様の方法で、コーティング皮膜表面の擦過を行い、擦過後の表面状態を目視で観察し、上記と同様の基準により評価した。
【0189】
[基材追従性の評価方法(折り曲げ試験)]
前記で得た水性ウレタン樹脂組成物100質量部に対して、光重合開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)を0.5質量部配合して得た配合液を、乾燥皮膜の膜厚が2μmとなるように、上記[8]GL:溶融亜鉛めっき鋼板と同じ材質で、0.3mm×50mm×150mmの大きさの基材表面に、バーコーターを用いてそれぞれ塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃で180秒間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて400mJ/cm照射することによって溶融亜鉛めっき鋼板表面に皮膜が積層した試験板5を得た。
前記試験板5を使用して、JIS K−5600 耐屈曲性試験法に基づいて評価した(マンドレル直径は2mm)。評価基準は下記の通りである。
◎:折り曲げ部分の皮膜表面にクラックおよびシワや白化の発生が見られない。
○:折り曲げ部分の皮膜表面のごく一部にシワや白化の発生が見られるも、実用上問題ないレベルであった。
△:折り曲げ部分の皮膜表面のごく一部に若干のクラックの発生が見られる。
×:折り曲げ部分の皮膜表面全体にクラックの発生が見られる。
【0190】
【表1】

【0191】
表中の略号を以下に示す。
PET:ポリエチレンテレフタレート,1.0mm×70mm×150mm
PC:ポリカーボネート,1.0mm×70mm×150mm
PVC:塩化ビニル,2.0mm×70mm×150mm
SUS:JIS G4305 SUS304,0.5mm×70mm×150mm
SPC:JIS G3141 SPCC−SB,0.8mm×70mm×150mm
AL:アルミ、JIS H4000 A1050P,0.8mm×70mm×150mm
ガラス:JIS R3202,2.0mm×70mm×150mm
GL:溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛45質量%、アルミ55質量%),0.8mm×70mm×150mm
MEK;メチルエチルケトン
EtOH;エタノール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)とを反応させて得られる脂肪族環式構造と親水性基と重合性不飽和二重結合とを有するウレタン樹脂(D)ならびに水性媒体(E)を含有し、前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対する、前記ウレタン樹脂(D)中に含まれる脂肪族環式構造の割合が2000mmol/kg〜5500mmol/kgの範囲であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(D)が、前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)由来の脂肪族環式構造を前記ウレタン樹脂(D)の全質量に対して300mmol/kg〜2000mmol/kg有するものである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)が、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールまたは脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオールを含むものである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(A)が脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)と親水性基含有ポリオール(a2)とその他のポリオール(a3)とを含有するものであって、前記その他のポリオール(a3)がポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(A)が、30000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂(A)が、その分子末端または分子側鎖に重合性不飽和二重結合を有するものである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂(A)が、脂肪族環式構造含有ポリオール(a1)及び親水性基含有ポリオール(a2)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と水酸基含有ビニル単量体(C)と、必要に応じて鎖伸長剤(D)とを反応させることによって得られるものである、請求項1に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
更に重合開始剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性ウレタン樹脂組成物を含有するコーティング剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性ウレタン樹脂組成物を含有する鋼板表面処理剤。
【請求項11】
請求項8に記載の水性ウレタン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項12】
金属基材の表面に、請求項10に記載の鋼板表面処理剤を用いて形成された皮膜が積層した積層物。

【公開番号】特開2012−162588(P2012−162588A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21594(P2011−21594)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】