説明

水性ポリウレタン組成物およびその製造方法

【課題】 貯蔵安定性が良好で、加熱硬化により、塗膜強度、耐水性、耐溶剤性に優れた硬化被膜を形成することができる、水性ポリウレタン組成物および水性ポリウレタン組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを配合して、水性ポリウレタン組成物を製造する。水性ポリウレタン組成物の製造においては、親水性のウレタンプレポリマーと、親水性のブロックポリイソシアネートとを混合し、水に分散させた後、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤により、ウレタンプレポリマーを鎖伸長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン組成物、および、水性ポリウレタン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタン樹脂は、溶媒として有機溶剤が用いられる有機溶剤系のものが主流であったが、近年、公害防止および省資源の観点より、水系のものへ転換されつつある。しかし、水系のポリウレタン樹脂では、その塗膜強度、耐水性、耐溶剤性などが、有機溶剤系のポリウレタン樹脂よりも低下するため、水系のポリウレタン樹脂において、架橋を形成させて、上記物性の改善を図ることが検討されている。例えば、ガラス保護塗料組成物において、ポリオール化合物、有機ポリイソシアネート、カルボキシル基もしくはスルホン酸基を含有するその他のポリオールまたは分子中に塩基性基を含有するその他のポリオールおよび鎖延長剤から製造される水系ポリウレタンに、ブロックイソシアネート等を併用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−283660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されるように、ブロックイソシアネートを併用するには、多量の界面活性剤が必要となり、却って、上記物性が低下するという不具合がある。また、単に、ブロックイソシアネートを併用しても、水系ポリウレタンにおいて形成できる架橋密度には限界があるため、必ずしも所望する物性が得られないという不具合がある。
そこで、本発明の目的は、貯蔵安定性が良好で、加熱硬化により、塗膜強度、耐水性、耐溶剤性に優れた硬化被膜を形成することができる、水性ポリウレタン組成物および水性ポリウレタン組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の水性ポリウレタン組成物は、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを含有することを特徴としている。
また、本発明の水性ポリウレタン組成物は、ポリウレタン樹脂が、アニオン性であることが好適である。
【0005】
また、本発明の水性ポリウレタン組成物は、ブロックポリイソシアネートが、アニオン性であることが好適である。
本発明の水性ポリウレタン組成物の製造方法は、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを混合し、水に分散させることを特徴としている。
【0006】
本発明の水性ポリウレタン組成物の製造方法は、ウレタンプレポリマーとブロックポリイソシアネートとを混合し、水に分散させた後、鎖伸長剤により前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長し、前記ウレタンプレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、原料成分として加水分解性ケイ素基含有化合物を含有させていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性ポリウレタン組成物の製造方法により製造された、本発明の水性ポリウレタン組成物によれば、貯蔵安定性が良好で、加熱硬化により、塗膜強度、耐水性、耐溶剤性、さらには、透明性、平滑性、伸び率、破断強度などの物性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の水性ポリウレタン組成物は、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを含有している。
本発明において、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂は、特に制限されないが、アニオン性基を有する自己乳化型であることが好ましく、そのような自己乳化型ポリウレタン樹脂は、例えば、原料成分として、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を含有する化合物(以下、イソシアネート基含有化合物と記す。)と、1分子中に少なくとも2個の活性水素基を含有する化合物(以下、活性水素基含有化合物と記す。)と、1分子中に少なくとも1個の活性水素基および親水性基(すなわち、アニオン性基)を含有する化合物(以下、親水性基含有化合物と記す。)と、1分子中に少なくとも1個の活性水素基および加水分解性ケイ素基を含有する化合物(以下、加水分解性ケイ素基含有化合物と記す。)とを含んでいる。
【0009】
イソシアネート基含有化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を含有する化合物であれば、特に制限されない。イソシアネート基含有化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3、5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω、ω'−ジイソシアネート−1、4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4',4"−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、例えば、4,4'−ジフェニルジメチルメタン−2,2'−5,5'−テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量(数平均分子量)200未満の低分子量ポリオールの上記ポリイソシアネート単量体への付加体、例えば、後述する分子量(数平均分子量)が200〜200000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。これらのイソシアネート基含有化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0010】
活性水素基含有化合物は、1分子中に少なくとも2個の活性水素基を含有する化合物であれば、特に制限されない。活性水素基としては、イソシアネート基と反応する活性水素基であって、例えば、アミノ基、水酸基、メルカプト基等が挙げられる。この中では、水酸基が好ましい。水酸基を含有する化合物を用いると、イソシアネート基との反応速度、および塗膜の機械的物性に優れる。また、水酸基を含有する化合物の官能基数は、2〜6が好ましく、2〜4が特に好ましい。官能基数が前記範囲内であれば、塗膜の機械的物性を良好に保つことができる。また、水酸基を含有する化合物の分子量(数平均分子量)は、60〜10000が好ましく、300〜5000が特に好ましい。分子量が前記範囲内であれば、最終的な塗膜性能に与えるウレタン結合の濃度、および製造上の作業性に優れる。
【0011】
水酸基を含有する化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールが挙げられる。これらの水酸基を含有する化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0012】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール、例えば、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。これらポリエステルポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。これらポリエーテルポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。これらポリエーテルエステルポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリエステルアミドポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールのポリエステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を含有する脂肪族ジアミンを原料として、上記ポリエステル化反応物の原料に追加して反応させることによって得られるもの等が挙げられる。これらポリエステルアミドポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0016】
アクリルポリオールとしては、1分子中に1個以上のヒドロキシル基を含有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル等あるいはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはそのエステルとを共重合させることによって得られるもの等が挙げられる。これらアクリルポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−Aおよび水添ビスフェノール−Aからなる群から選ばれた1種または2種以上のグリコールと、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるもの等が挙げられる。これらポリカーボネートポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリヒドロキシアルカンとしては、イソプレン、ブタジエン、またはブタジエンとアクリルアミド等とを共重合させて得られる液状ゴム等が挙げられる。これらポリヒドロキシアルカンは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタンポリオールとしては、例えば、分子量(数平均分子量)200〜5000のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と、上記したイソシアネート基含有化合物とを(イソシアネート基/水酸基)の比が1未満、好ましくは0.9以下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。これらポリウレタンポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0019】
さらに上記水酸基を含有する化合物として、平均分子量を調節する目的で、分子量が62〜200の低分子量ポリオールが挙げられる。これら低分子量ポリオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のポリエステルポリオールの製造に使用されるグリコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の水酸基を3個以上含有するポリオール類が挙げられる。
【0020】
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール類、ブタノール類、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のモノオールも併用することができる。
親水性基含有化合物は、1分子中に少なくとも1個の活性水素基および親水性基を含有する化合物であれば、特に制限されない。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基、エポキシ基、ポリオキシアルキレン基等のアニオン性基が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。
【0021】
親水性基含有化合物としては、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸含有化合物もしくはこれらの誘導体、またはこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物と上記した活性水素基含有化合物とを反応して得られるカルボシキル基含有化合物もしくはそれらの誘導体、またはこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、エチレンオキサイドの繰り返し単位を少なくとも30重量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素基を含有する分子量300〜10000のポリオキシアルキレン化合物等のノニオン基含有化合物またはこれらを共重合して得られるポリエステルエーテルポリオール等が挙げられる。これら親水性基含有化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0022】
加水分解性ケイ素基含有化合物は、1分子中に少なくとも1個の活性水素基および加水分解性ケイ素基を含有する化合物であれば、特に制限されない。
加水分解性ケイ素基としては、シラノール縮合触媒の存在下、または、非存在下で、加水分解を受けたときに生じる加水分解性基がケイ素基原子に結合している基が挙げられる。加水分解性基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。この中では、加水分解性が比較的小さく、取扱いが容易である点から、アルコキシ基が好ましい。加水分解性基は、通常、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合しているが、塗布後の加水分解性ケイ素基の反応性、耐水性、耐溶剤性の点から、2〜3個結合しているものが好ましい。
【0023】
また、活性水素基としては、イソシアネート基と反応する活性水素基であって、例えば、メルカプト基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。また、耐候性、耐溶剤性の点から、ポリウレタン樹脂の分子中間部分にシラノール基を導入することが好ましく、そのため、1分子中に少なくとも2個の活性水素基を含有することが好ましい。
活性水素基としてメルカプト基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を含有する加水分解性ケイ素基含有化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、活性水素基としてアミノ基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を含有する加水分解性ケイ素基含有化合物としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N´-ビス〔a-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等が挙げられる。これら加水分解性ケイ素基含有化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明において、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂の製造方法は、特に制限されないが、例えば、まず、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物とを反応させて親水性(アニオン性)のウレタンプレポリマーを調製し、次いで、そのウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物とを反応させて鎖伸長する方法が挙げられる。
【0025】
ウレタンプレポリマーを調製するには、イソシアネート基含有化合物、活性水素基含有化合物および親水性基含有化合物を、活性水素基含有化合物中および親水性基含有化合物中の活性水素基の合計に対する、イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.0以上、好ましくは、1.2以上の配合割合において、反応させる。これによって、分子末端部分にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを調製することができる。
【0026】
また、親水性基含有化合物は、ウレタン樹脂の酸価が、例えば、5〜100mgKOH/g、好ましくは、10〜60mgKOH/gとなるように配合する。
また、ウレタンプレポリマーの調製では、反応溶媒や触媒を用いることができる。
反応溶媒としては、水に対する溶解度が比較的高いものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。反応溶媒は、反応溶媒中において、原料成分が10〜50重量%程度となるように、用いることが好ましい。
【0027】
また、触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル酸錫などの有機金属触媒が挙げられる。触媒は、反応条件に応じて適宜の割合で用いられる。
そして、ウレタンプレポリマーは、上記した原料成分を、必要により上記した反応溶媒中に配合し、さらに、必要により上記した触媒を添加して、例えば、反応温度30〜100℃、好ましくは、40〜80℃で、反応時間1〜12時間、好ましくは、3〜8時間反応させることにより、得ることができる。
【0028】
反応後には、必要に応じて、中和剤を配合する。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。これら中和剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0029】
中和剤の配合割合は、特に制限されないが、親水性基含有化合物中の親水性基に対して、例えば、0.1〜2.0当量、好ましくは、0.3〜1.3当量である。配合量が前記の範囲内であれば、次の鎖伸長反応を阻害せず、かつ、ウレタン樹脂の水中での良好な分散性を確保することができる。
また、このようにして調製されたウレタンプレポリマーは、次の鎖伸長反応を水中でするために、水中に分散させてエマルションとして調製する。ウレタンプレポリマーをエマルションとして調製するには、例えば、水中に、ウレタンプレポリマーの反応溶液を、攪拌下、滴下すればよい。
【0030】
そして、得られたウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物とを反応させて鎖伸長するには、例えば、加水分解性ケイ素基含有化合物を水溶液として調製し、この水溶液を、ウレタンプレポリマーのエマルション中に、攪拌下、滴下すればよい。
また、この鎖伸長反応では、加水分解性ケイ素基含有化合物以外の鎖伸長剤を併用することもできる。そのような鎖伸長剤としては、例えば、公知のポリアミン化合物等が挙げられる。ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類、例えば、ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアミノ基と水酸基とを有する化合物、ヒドラジン類、酸ヒドラジド類等が挙げられる。これら鎖伸長剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、この鎖伸長反応では、ウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤とを、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤中の活性水素基に対する、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、0.5〜1.2、好ましくは、0.8〜1.0の割合において、反応させる。
なお、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基に対する加水分解性ケイ素基含有化合物中の活性水素基の当量比(活性水素基 /イソシアネート基)は、0.05〜1.0、好ましくは、0.1〜0.8の割合となるように調整することが好ましい。この当量比が、0.05未満であると、分子中に導入される加水分解性ケイ素基が少なくなり、十分に硬化されず、耐水性、耐溶剤性等の物性が低下する場合がある。
【0032】
これによって、加水分解性ケイ素基含有化合物が変性された自己乳化型ウレタン樹脂のエマルションを調製することができる。そして、加水分解性ケイ素基は、水中において加水分解を受け、シラノール基を生成するので、これによって、本発明における分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するシラノール基を有するウレタン樹脂のエマルションを得ることができる。
【0033】
なお、シラノール基は、十分な水の環境下にあるため、シラノール基同士が互いに反応してシロキサン結合を形成することなく、水中で安定に存在する。
また、エマルションとして調製する際には、ホモジナイザーやホモミキサーなどを用いて、攪拌することができ、必要に応じて、後述する界面活性剤を添加してもよい。また、調製時には、中和剤の蒸発を防止し、作業性を確保すべく、室温〜70℃程度に保つことが好ましい。また、反応溶媒を用いる場合には、エマルション中に残留する場合があるので、これを蒸留等で留去することが好ましい。
【0034】
また、ウレタン樹脂のエマルションは、その固形分濃度を、10〜50重量%程度に調整することが好ましい。
本発明において、ブロックポリイソシアネートは、特に制限されないが、ブロック剤によってイソシアネート基がブロックされているポリイソシアネートであって、アニオン性基を有する自己乳化型であることが好ましく、そのような自己乳化型ブロックポリイソシアネートは、例えば、原料成分として、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を含有する化合物(以下、イソシアネート基含有化合物と記す。)と、1分子中に少なくとも2個の活性水素基を含有する化合物(以下、活性水素基含有化合物と記す。)と、1分子中に少なくとも1個の活性水素基および親水性基(すなわち、アニオン性基)を含有する化合物(以下、親水性基含有化合物と記す。)と、熱処理により解離するブロック剤とを含んでいる。
【0035】
イソシアネート基含有化合物としては、上記したイソシアネート基含有化合物と同様のものを用いることができる。
活性水素基含有化合物としては、上記したイソシアネート基含有化合物と同様のものを用いることができ、好ましくは、上記した分子量(数平均分子量)62〜200の低分子量ポリオールや上記したモノオールが用いられる。
【0036】
親水性基含有化合物としては、上記した親水性基含有化合物と同様のものを用いることができる。
ブロック剤としては、熱処理により、ポリイソシアネートから解離するブロック剤であれば、特に制限されない。ブロック剤としては、例えば、フェノール類、アルキルフェノール類、活性メチレン化合物類、オキシム類、ラクタム類、重亜硫酸塩類、イミダゾール類等のブロック剤等が挙げられる。この中では、200℃以下で解離するブロック剤が好ましく、そのようなブロック剤として、例えば、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類、例えば、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類等が挙げられる。また、イソシアネートダイマーのようにイソシアネートが熱処理によって再生する樹脂を用いることもできる。これらのブロック剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明において、ブロックポリイソシアネートの製造方法は、特に制限されないが、例えば、まず、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物とを反応させて親水性(アニオン性)のポリイソシアネートを調製し、続いて、そのポリイソシアネートと、ブロック剤とを反応させる方法が挙げられる。
ポリイソシアネートを調製するには、イソシアネート基含有化合物、活性水素基含有化合物および親水性基含有化合物を、活性水素基含有化合物中および親水性基含有化合物中の活性水素基の合計に対する、イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.0以上、好ましくは、1.2以上の配合割合において、反応させる。これによって、分子末端部分にイソシアネート基を有するポリイソシアネートを調製することができる。
【0038】
また、親水性基含有化合物は、ポリイソシアネートの酸価が、例えば、5〜100mgKOH/g、好ましくは、10〜60mgKOH/gとなるように配合する。
また、ポリイソシアネートの調製では、上記したウレタンプレポリマーの調製と同様に、上記した反応溶媒や触媒を用いることができる。
そして、ポリイソシアネートは、上記した原料成分を、必要により上記した反応溶媒中に配合し、さらに、必要により上記した触媒を添加して、例えば、反応温度30〜100℃、好ましくは、40〜80℃で、反応時間1〜12時間、好ましくは、3〜8時間反応させることにより、得ることができる。
【0039】
続いて、得られたポリイソシアネートにブロック剤を反応させて、ブロックポリイソシアネートを得る。ポリイソシアネートにブロック剤を反応させるには、ポリイソシアネート中のイソシアネート基に対する、ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基の当量比(活性基/イソシアネート基)が、0.8以上、好ましくは、1.0以上の配合割合において、反応させる。
【0040】
これによって、ポリイソシアネートの分子末端部分のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされるブロックポリイソシアネートを調製することができる。
反応後には、必要に応じて、中和剤を配合する。中和剤としては、例えば、上記した中和剤が用いられる。中和剤の配合割合は、特に制限されないが、親水性基含有化合物中の親水性基に対して、例えば、0.1〜2.0当量、好ましくは、0.3〜1.3当量である。
【0041】
そして、このようにして調製されたブロックポリイソシアネートは、水中に分散させてエマルションとして調製する。ブロックポリイソシアネートをエマルションとして調製するには、例えば、水中に、ブロックポリイソシアネートの反応溶液を、攪拌下、滴下すればよい。
これによって、自己乳化型ブロックポリイソシアネートのエマルションとして、本発明におけるブロックポリイソシアネートのエマルションを調製することができる。
【0042】
そして、本発明の水性ウレタン組成物は、上記により得られた分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを配合することにより調製することができる。
分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとの配合割合は、特に制限されないが、水性ウレタン組成物中のブロックポリイソシアネートの配合割合が、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%となるように調製する。
【0043】
分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを配合するには、上記により得られた分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂のエマルションと、上記により得られたブロックポリイソシアネートのエマルションとを混合すればよい。
また、上記の説明では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを、予めそれぞれエマルションとして調製し、その後、これらを混合したが、本発明の水性ウレタン組成物では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを混合した後、水中に分散させてエマルションとして調製することもできる。
【0044】
さらには、まず、ウレタンプレポリマーと、ブロックポリイソシアネートとを混合した後、水中に分散させてエマルションとし、次いで、このエマルションに、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤を配合して、ウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤とを反応させることにより、調製することもできる。
このような調製では、上記の方法において、まず、ウレタンプレポリマーを調製後に、ウレタンプレポリマーの反応溶液に中和剤を配合した後、水中に分散させて、ウレタンプレポリマーのエマルションを調製する。また、別途、上記の方法により、ブロックポリイソシアネートのエマルションを調製する。次いで、ウレタンプレポリマーのエマルションと、ブロックポリイソシアネートのエマルションとを混合する。その後、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤の水溶液を、混合されたエマルション中に、攪拌下、滴下すればよい。
【0045】
このような方法によって、本発明の水性ウレタン組成物を調製すれば、得られた水性ウレタン組成物から調製される硬化塗膜の、耐アルカリ性などの物性を向上させることができる。
そして、このようにして得られる本発明の水性ウレタン樹脂組成物では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂、および、ブロックポリイソシアネートの合計量が、水性ウレタン樹脂組成物に対して、粘度をあまり増加させず、貯蔵安定性を保持する点から、好ましくは、60重量%以下、より好ましくは、10〜50重量%程度となるように、調整する。
【0046】
また、本発明の水性ウレタン組成物には、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂、および、ブロックポリイソシアネートを、水中で安定化させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤を適宜の配合割合で添加してもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合物等のノニオン系界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0047】
なお、界面活性剤の配合は、上記した水性ポリウレタン組成物の製造において、いずれの段階で、いずれの成分(エマルション)に添加してもよい。
また、本発明の水性ポリウレタン組成物には、硬化触媒として、強塩基性第3級アミンを添加することができる。強塩基性第3級アミンは、水性ポリウレタン組成物を塗膜化する際に、特異的にシロキサン結合の形成触媒として作用する。従って、強塩基性第3級アミンを含有する水性ポリウレタン組成物を塗布等した場合には、室温程度の温度域においても効率よく架橋が形成され、耐水性、耐溶剤性に優れた塗膜を形成することができる。
【0048】
強塩基性第3級アミンとしては、特に制限されないが、室温域での架橋促進の点から、pKaが11以上であるものが好ましい。このような強塩基性第3級アミンとしては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,6−ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン−5等が挙げられる。これら強塩基性第3級アミンは、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0049】
強塩基性第3級アミンの配合割合は、水性ポリウレタン組成物の固形分100重量部に対して0.001〜10重量部が好ましく、0.001〜7重量部がより好ましく、0.001〜5重量部がさらに好ましい。強塩基性第3級アミンの配合割合が、0.001重量部未満では、硬化速度が遅い場合があり、また、強塩基性第3級アミンの配合割合が、10重量部を越えると、形成された塗膜の耐溶剤性、耐水性が低下する場合がある。
【0050】
なお、強塩基性第3級アミンの配合は、上記した水性ポリウレタン組成物の製造において、いずれの段階で、いずれの成分(エマルション)に添加してもよい。
さらに、本発明の水性ポリウレタン組成物には、塗膜形成性を改善することを目的として、必要に応じて適宜の配合割合で造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のアルコール類、例えば、セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のエーテル類、例えば、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類等が挙げられる。これら造膜助剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0051】
なお、造膜助剤の配合は、上記した水性ポリウレタン組成物の製造において、いずれの段階で、いずれの成分(エマルション)に添加してもよい。
また、本発明の水性ウレタン組成物には、通常塗料に配合される、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン等の白色顔料、例えば、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルー等の有色系顔料、コロイダルシリカ、可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜の配合割合で配合してもよい。
【0052】
また、本発明の水性ウレタン組成物には、市販の水系塗料を配合することもできる。水系塗料としては、例えば、アクリル系塗料、アクリルメラミン系塗料などの熱硬化性アクリル系塗料、アルキッド塗料、エポキシ系塗料、フッソ樹脂塗料等が挙げられる。これら水系塗料を配合すると、耐候性、耐酸性、耐溶剤性等を向上させることができる。
そして、本発明の水性ウレタン組成物は、貯蔵安定性が良好で、加熱硬化により、塗膜強度、耐水性、耐溶剤性、さらには、透明性、平滑性、伸び率、破断強度などの物性に優れた硬化被膜を形成することができる。そのため、本発明の水性ウレタン組成物は、例えば、建築物内外装用、補修用メタリックベース上のクリアー等の自動車用、アルミニウム、ステンレス、コンクリート、ガラス等の直塗用塗料、紙、プラスチック、フィルム等の接着剤、粘着剤、表面コート剤、表面改質剤、シーリング剤として、好適に用いることができる。
【0053】
なお、上記の説明では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂の製造において、まず、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物とを反応させて親水性のウレタンプレポリマーを調製し、次いで、そのウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物を含む鎖伸長剤とを反応させて鎖伸長する方法を例示したが、例えば、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物と、加水分解性ケイ素基含有化合物とを反応させて親水性のウレタンプレポリマーを調製し、次いで、そのウレタンプレポリマーと、加水分解性ケイ素基含有化合物を含まない鎖伸長剤とを反応させて鎖伸長する方法を採用することもできる。また、ウレタンプレポリマーを調製せずに、原料成分を一度に配合して、ワンショットで製造することもできる。
【0054】
さらに、上記の説明では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂を、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物と、加水分解性ケイ素基含有化合物とを配合して、自己乳化型ウレタン樹脂のエマルションとして調製したが、親水性基含有化合物を配合せずに、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、加水分解性ケイ素基含有化合物とからウレタン樹脂を調製し、これを界面活性剤を用いて、水に分散させることにより、ウレタン樹脂のエマルションとして調製することもできる。
【0055】
また、上記の説明では、ブロックポリイソシアネートの製造において、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、親水性基含有化合物と、ブロック剤とを配合して、自己乳化型ブロックポリイソシアネートのエマルションとして調製したが、親水性基含有化合物を配合せずに、イソシアネート基含有化合物と、活性水素基含有化合物と、ブロック剤とからブロックポリイソシアネートを調製し、これを界面活性剤を用いて、水に分散させることにより、ブロックポリイソシアネートのエマルションとして調製することもできる。さらには、活性水素基含有化合物を配合せずに、イソシアネート基含有化合物と、親水性基含有化合物と、ブロック剤とを配合して、自己乳化型ブロックポリイソシアネートのエマルションとして調製してもよく、また、イソシアネート基含有化合物と、ブロック剤とを界面活性剤を用いて、水に分散させることにより、ブロックポリイソシアネートのエマルションとして調製してもよい。
【0056】
また、上記の説明では、分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂およびブロックポリイソシアネートをエマルションとして、水性ウレタン組成物を調製したが、これらを、水に溶解させることにより、溶液として、水性ウレタン組成物を調製してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、何らこれに限定されない。
実施例1
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、および、温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)262.4g、テトロヒドロフランの開環重合によって得られた数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール347.2g、ネオペンチルグリコール10.9g、ジメチロールブタン酸25.7g、および、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン215.4gを投入し、窒素雰囲気下、80℃に昇温し、さらにオクチル酸第一錫0.01gを添加して7時間撹拌した。反応液が所定のアミン当量に達したことを確認し、40℃まで降温した後、トリエチルアミン16.7gを添加し、10分間撹拌することにより中和反応し、ウレタンプレポリマーのピロリドン溶液を得た。
【0058】
また、これとは別に、撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、および、温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)80.2g、トリメチロールプロパン10.9g、ジメチロールブタン酸4.5g、および、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン85.1gを投入し、窒素雰囲気下、80℃に昇温し7時間攪拌した。反応液が所定のアミン当量に達したことを確認し、40℃まで降温した後、メチルエチルケトンオキシム31.9gを添加して、さらに80℃で1時間攪拌した。反応液が所定のアミン当量に達したことを確認し、40℃まで降温した後、トリエチルアミン2.9gを添加し、10分間撹拌することにより中和反応し、ブロックポリイソシアネートのピロリドン溶液215.6gを得た。
【0059】
このブロックポリイソシアネートのピロリドン溶液を、別途調製したウレタンプレポリマーのピロリドン溶液に配合して、10分間攪拌した。このウレタンプレポリマーとブロックポリイソシアネートのピロリドン混合溶液を、水1200.0gに、ホモディスパーを用いて、攪拌しながら滴下し、エマルションを調製した。
次に、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン(信越化学工業(株) KBM−602)24.5gおよびヒドラジン一水和物11.9gを水37.7gに溶解した水溶液を、上記エマルションに、攪拌しながら滴下し、鎖伸長反応させた。さらに、このエマルションに、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.65gを加え、固形分濃度が35重量%、粘度が200mPa.sの1液熱硬化型水性ポリウレタン組成物(A)を得た。
【0060】
実施例2
実施例1と同様の製造方法によりウレタンプレポリマーのピロリドン溶液を得た。これを水1050gに、ホモディスパーを用いて、攪拌しながら滴下し、エマルションを調製した。
次に、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン(信越化学工業(株) KBM−602)24.5gおよびヒドラジン一水和物11.9gを水35.6gに溶解した水溶液を、上記エマルションに、攪拌しながら滴下し、鎖伸長反応させた。さらに、このエマルションに、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)0.65gを加え、固形分濃度が35重量%、粘度が300mPa.sのシラノール基含有ウレタン樹脂エマルションを得た。
【0061】
また、これとは別に、撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、および、温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)76.9g、トリメチロールプロパン8.7g、ジメチロールブタン酸14.5g、および、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン130.7gを投入し、窒素雰囲気下、80℃に昇温し7時間攪拌した。反応液が所定のアミン当量に達したことを確認し、40℃まで降温した後、メチルエチルケトンオキシム30.6gを添加して、さらに80℃で1時間攪拌した。反応液が所定のアミン当量に達したことを確認し、40℃まで降温した後、トリエチルアミン9.4gを添加し、10分間撹拌することにより中和反応し、ブロックポリイソシアネートのピロリドン溶液270.9gを得た。
【0062】
このブロックポリイソシアネートのピロリドン溶液を、水129.5gにホモディスパーを用いて、攪拌しながら滴下し、ブロックポリイソシアネートのエマルションを得た。その後、別途調製したシラノール基含有ポリウレタンエマルションと、ブロックポリイソシアネートのエマルションとを混合し、固形分濃度が35重量%、粘度が250mPa.sの1液熱硬化型水性ポリウレタン組成物(B)を得た。
【0063】
比較例1
実施例2と同様の製造方法により、固形分濃度が35重量%、粘度が300mPa.sのシラノール基含有ポリウレタンエマルション(C)を得た。
比較例2
実施例2と同様の製造方法により、ウレタンプレポリマーとブロックポリイソシアネートのピロリドン混合溶液を得た。この混合溶液を、水1990.0gに、ホモディスパーを用いて、攪拌しながら滴下し、エマルションを調製した。
【0064】
次に、ヒドラジン一水和物17.8gを水14.7gに溶解した水溶液を、上記エマルションに、攪拌しながら滴下し、鎖伸長反応させ、固形分濃度が35重量%、粘度が150mPa.sのブロックイソシアネート含有水性ポリウレタン組成物(D)を得た。
比較例3
実施例2と同様の製造方法により、ウレタンプレポリマーのピロリドン溶液を得た。この溶液を、水1030.0gにホモディスパーを用いて、攪拌しながら滴下し、エマルションを調製した。
【0065】
次に、ヒドラジン一水和物17.8gを水20.7gに溶解した水溶液を、上記エマルションに、攪拌しながら滴下し、鎖伸長反応させ、固形分濃度が35重量%、粘度が350mPa.sのポリウレタンエマルション(E)を得た。
試験例1
各実施例および各比較例で得られた水性ポリウレタン組成物およびポリウレタンエマルションを、ガラス板上に塗布することにより、厚さが20μmの塗膜を形成し、100℃で5分、170℃で20分間乾燥させた。この塗布面上に水を浸漬し、室温で1週間放置後、塗布面の状態を観察した。その結果を「耐水性」の評価として表1に示す。
【0066】
試験例2
試験例1と同様の方法により、塗膜を形成し、乾燥させ、この塗布面上にアルカリ水溶液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を浸漬し、80℃で5時間放置後、塗布面の状態を観察した。その結果を「耐アルカリ性」の評価として表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
上記表1から明らかなように、各実施例の1液熱硬化型ポリウレタン水性組成物(A)、(B)から形成した塗膜は、各比較例のポリウレタンエマルションまたはポリウレタン水性組成物(C)(D)(E)から形成した塗膜に比べて、明らかに耐水性、耐アルカリ性が優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを含有することを特徴とする、水性ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、アニオン性であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記ブロックポリイソシアネートが、アニオン性であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン組成物。
【請求項4】
分子内に少なくとも1個のシラノール基を含有するポリウレタン樹脂と、ブロックポリイソシアネートとを混合し、水に分散させることを特徴とする、水性ポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項5】
ウレタンプレポリマーとブロックポリイソシアネートとを混合し、水に分散させた後、鎖伸長剤により前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長し、前記ウレタンプレポリマーおよび/または前記鎖伸長剤に、原料成分として加水分解性ケイ素基含有化合物を含有させていることを特徴とする、水性ポリウレタン組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−104226(P2006−104226A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288505(P2004−288505)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501140544)三井武田ケミカル株式会社 (115)
【Fターム(参考)】