説明

水性ポリマー分散物

本発明は、コア−シェル構造を有する水性ポリマー分散物、それらの製造方法ならびにコーティング剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア−シェル構造を有する水性ポリマー分散物、それらの調製方法ならびにコーティング組成物としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多−相水性ポリアクリレート結合剤は、比較的長い前からすでに既知であった。そのような結合剤において、相は多くの場合に異なるガラス転移温度(T)を有する。多くの場合に生成物は2−段階重合で、2種のモノマー混合物をラジカル乳化重合において連続的に重合させることにより製造され、相は乳化重合の機構のために同じ分散粒子内に形成される。
【0003】
ポリアクリレートコーティング組成物のフィルム形成は、基質及びガラス転移温度に従って、内部可塑剤として働く補助溶剤の助けによって高められた温度で、あるいは室温で起こる。
【0004】
コーティングが溶剤に対して可能な限り高い抵抗性を示すために、ポリマーの高いガラス転移温度は一般に有利であり、それは、溶剤の拡散の速度がコーティングのガラス転移温度より低温で有意により低いからである。
【0005】
異なるガラス転移温度を有する多−相構造は、最低フィルム−形成温度(MFT)が比較的低く、且つそれに伴ってフィルム形成のための補助溶剤の含有率が比較的低く、溶剤抵抗性は高いガラス転移温度を有する相のおかげで比較的高いという利点を与える。
【0006】
可能な限り低い親水性を有する結合剤の使用は、水又はアルコールのような極性溶剤に対するコーティングの抵抗性に関する利点を与える。コーティング組成物の親水性はポリマーの組成により与えられ、スチレンのようなモノマーは疎水性であるとみなされ、おそらくアクリル酸のようなイオン性モノマーは強力に親水性であると考えられる。
【0007】
乳化重合において、重合の間に遊離のモノマーを乳化するため、成長している粒子を安定化するために外部乳化剤が加えられ、プロセスの開始時にミセル形成により重合中心の形成が起こる。しかしながら、結合剤の適用及び続くフィルム形成の後、乳化剤はコーティングの表面に移動し、それは多くの場合に適用に関する欠点と関連している。
【0008】
特許文献1は、60℃より高いコアのガラス転移温度及び80℃より高いガラス転移温度を有するシェルを有するコーティング組成物を記載している。分散物は20.2重量%より少ないモノビニルアリール化合物及び4.5重量%より多いメタクリル酸を含有する。加えられる乳化剤の量は、固体に基づいて常に>2重量%である。
【0009】
特許文献2は、<20℃のガラス転移温度を有する軟質コア及び>60℃のガラス転移温度を有する硬質のシェルから成る水性多−相コーティング組成物を記載している。分散物は室温で密閉フィルム(closed film)を形成し、スチレンを含有しない。
【0010】
特許文献3は、コアのガラス転移温度がシェルのガラス転移温度より低いか又はそれと等しく、シェルの酸含有率が>5重量%である水性ポリマー分散物を開示している。
【0011】
特許文献4は、シェルが>−9℃のガラス転移温度を有し、コアのガラス転移温度に関する差が少なくとも20℃であるコア−シェル粒子を記載している。実施例の乳化剤含有
率は3.0重量%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第A 0 376 096号明細書
【特許文献2】国際公開第01/72897号パンフレット(WO−A 01/72897)
【特許文献3】ドイツ特許第A 19,727,504号明細書
【特許文献4】欧州特許第A 1 520 865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、合体助剤(coalescence aids)の低い含有率を有しながら、高い溶剤抵抗性、特にエタノール及びマスタード抵抗性を有する微粉砕された水性ポリアクリレート分散物を提供することである。さらにそれから形成されるコーティングは優れた視覚的フィルム外観を有しているべきであり、且つ表面欠陥(surface
defects)又はコーティングの不完全さを示してはならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
今回、規定されるコア及びシェルの重量比を有するコア−シェル構造を有する水性ポリアクリレート分散物により、上記で規定した目的が達成されることが見出され、ここでコア及びシェルは規定されるガラス転移温度範囲を有し、分散物は少量のみの乳化剤を含有する。
【0015】
従って本出願は、少なくとも1種のコアコポリマーA)及び少なくとも1種のシェルコポリマーB)を含有し、コアのガラス転移温度(T)が70℃〜100℃であり、シェルのガラス転移温度(T)が20℃〜55℃であり、コア−シェルコポリマーの全体的なガラス転移温度(T)が30℃〜80℃であり、分散物が固体に基づいて1.5重量%の量で乳化剤含有物を含有することを特徴とする水性ポリマー分散物を提供する。
【0016】
本発明において用いられるガラス転移温度という表現は、ポリマーがガラス−様状態からポリマー鎖のセグメント移動性がより高い状態に変化する温度を意味する。ランダムコポリマーのガラス転移温度は、Fox式(Bulletin of the American Physical Society 1,3,page 123,1956):
【0017】
【数1】

【0018】
に従って計算され得、式中、Tg(i)はn個のモノマーのそれぞれのホモポリマーiのガラス転移温度を示し、wはモノマーiの重量による量を示し、ここで重量によるすべての量の合計w+w+・・・w+・・・w=1である。
【0019】
他にことわらなければ、本発明で言及されるすべてのガラス転移温度は、Fox式に従って計算されるガラス転移温度に関する。
【0020】
ポリマーの実験的ガラス転移温度(T)は既知の方法で、例えば示差走査熱量測定(DSC)により決定され得る。
【0021】
本発明に従う分散物中に含有されるポリマー粒子は、75〜140nm、好ましくは80〜125nm、特に好ましくは90〜110nmの平均粒度を有する。
【0022】
本発明に従って用いられるコポリマーA)及びB)は物理的混合物の形態あるいは好ましくは多段階ポリマー(multi−stage polymer)の形態にあることができる。多−段階重合はコアコポリマーA)の製造で始まり、シェルコポリマーB)の製造が続く。
【0023】
「コア−シェル粒子」という表現は先行技術から十分に周知であり、本発明の範囲内で、多段階乳化重合により得ることができるポリマーを示す。この方法は先行技術からすでにずっと以前から既知であり、例えばHouben−Weyl,Volume E20,Part 2(1987),p.1150ffに記載され且つ議論されている。当該技術分野における熟練者は、公開文献米国特許第A 3 793 402号明細書、ドイツ特許第A 41 21 652号明細書、ドイツ特許第A 41 36 993号明細書、欧州特許第A 828 772号明細書中にさらに別の価値のある参照文献を見出すことができ、それらの開示を明確に本明細書において引用する。
【0024】
コポリマーA)(コア)のモノマー混合物は、Fox式に従って計算される70〜100℃、好ましくは80〜100℃、特に好ましくは85〜95℃のガラス転移温度(T)を有する。
【0025】
コポリマーB)(シェル)のモノマー混合物のFoxに従って計算されるTは、20〜55℃、好ましくは25〜45℃、特に好ましくは25〜35℃である。
【0026】
コポリマーB)のTは、コポリマーA)のTより少なくとも30℃低く、好ましくは少なくとも50℃低い。
【0027】
計算されるポリマーの全体的なTgは、Flory Foxに従って数学的に与えられ、本発明に従うポリマーのTgは、好ましくは30〜80℃、好ましくは35〜70℃、特に好ましくは40〜65℃である。
【0028】
コポリマーA)は、構造成分として
a)C−C20−アルキル(メタ)アクリレート、
b)最高で20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、
c)酸−官能基性モノマー及び
d)場合によりヒドロキシ−官能基性モノマー
を含有する。
【0029】
コポリマーA)のモノマー混合物は、好ましくは、Fox式に従って計算される得られるガラス転移温度(T)が70〜100℃、好ましくは80〜100℃、特に好ましくは85〜95℃であるようなやり方で、成分a)、b)、c)及び場合によりd)から構成される。
【0030】
コポリマーB)のモノマー混合物は、好ましくは、Fox式に従って計算される得られるガラス転移温度(T)が20〜55℃、好ましくは25〜45℃、特に好ましくは25〜35℃であるようなやり方で、成分a)、b)、c)及び場合によりd)から構成さ
れる。
【0031】
本発明の範囲内で、「(メタ)アクリレート」という表示は、アクリレート、メタクリレート及び2者の混合物を示す。適したメタクリル酸のエステルには、特にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−オクチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−tert−ブチルヘプチルメタクリレート、3−イソプロピルヘプチルメタクリレート、デジルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、5−メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、5−メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、2−メチルヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、5−イソプロピルヘプタデシルメタクリレート、5−エチルオクタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレートが含まれる。さらに、対応するニトリル又はアミドの形態におけるメタクリル酸誘導体、例えばメタクリロニトリル又はメタクリルアミドを用いることもできる。さらに、所望の用途に依存して、他の官能基性モノマー、例えばジアセトンメタクリルアミド又はアセトアセトキシエチルメタクリレートを用いることができる。メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、メタクリルアミド又はメタクリロニトリルが好ましく、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート又はブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0032】
適したアクリル酸のエステルには、特にメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2−メチル−オクチルアクリレート、2−tert−ブチルヘプチルアクリレート、3−イソプロピルヘプチルアクリレート、デジルアクリレート、ウンデシルアクリレート、5−メチルウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−メチルドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、5−メチルトリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、2−メチルヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、5−イソプロピルヘプタデシルアクリレート、5−エチルオクタデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノナデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、シクロアルキルアクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、ボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート及びイソボルニルアクリレートが含まれる。さらに、対応するニトリル又はアミドの形態におけるアクリル酸誘導体、例えばアクリロニトリル又はアクリルアミドを用いることもできる。さらに、所望の用途に依存して、他の官能基性モノマー、例えばジアセトンアクリルアミド又はアセトアセトキシエチルアクリレートを用いることができる。エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリルアミド又はアクリロニトリルが好ましく、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートが特に好ましい

【0033】
最高で20個の炭素原子を有する適したビニル芳香族化合物b)は、例えばスチレン、ビニルトルエン、o−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン又はテトラブロモスチレンである。スチレンが好ましい。
【0034】
適したオレフィン性不飽和酸−官能基性モノマーc)は、スルホン−、ホスフェート−又はカルボン酸−官能基性モノマーであり、カルボン酸−官能基性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアリレート、クロトン酸、ギ酸、無水マレイン酸、イタコン酸又は二塩基性酸もしくは無水物のモノアルキルエステル、例えばマレイン酸モノアルキルエステルが好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸が特に好ましく、アクリル酸が最も特別に好ましい。
【0035】
例えば国際公開第A 00/39181号パンフレット(p.8,1.13−p.9,1.19)に記載されているような、ホスフェート又はホスホネート又はスルホン酸又はスルホネート基を有する不飽和ラジカル重合可能化合物も、成分c)の化合物として適している。
【0036】
場合によりヒドロキシ−官能基性モノマーd)を用いることもできる。適したメタクリレート化合物は、ヒドロキシ官能基を保有するものである。これらには例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びヒドロキシブチルメタクリレートが含まれる。ヒドロキシ官能基を保有するアクリレート化合物も適した化合物d)であり;これらには、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート及びヒドロキシブチルアクリレートが含まれる。
【0037】
コポリマーA)中のモノマーa)の含有率は20〜80重量%、好ましくは40〜60重量%であり、コポリマーA)中のモノマーb)の含有率は19〜79重量%、好ましくは37〜57重量%であり、コポリマーA)中のモノマーc)の含有率は1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%であり、コポリマーA)中のモノマーd)の含有率は<30重量%、好ましくは<20重量%であり、成分a)、b)、c)及び場合によりd)の合計は100重量%である。
【0038】
コポリマーB)中のモノマーa)の含有率は35〜90重量%、好ましくは60〜80重量%であり、コポリマーB)中のモノマーb)の含有率は9.9〜60重量%、好ましくは19〜37重量%であり、コポリマーB)中のモノマーc)の含有率は0.1〜3.7重量%、好ましくは1〜3.2重量%であり、コポリマーB)中のモノマーd)の含有率は<30重量%、好ましくは<20重量%であり、成分a)、b)、c)及び場合によりd)の合計は100重量%である。
【0039】
コポリマーA)のモノマー対コポリマーB)のモノマーの重量比は、3:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:3、特に好ましくは3:2〜1:2である。
【0040】
本発明に従うポリマー分散物の調製を、それ自体既知の方法で、例えば多−段階乳化重合により行うことができる。有利には、それはフェド−バッチ法(fed−batch process)によって行われ、その方法では、水、乳化剤及び場合により少量の開始剤が最初に反応容器中に入れられる。最初の装入材料は、好ましくは水の合計量に基づいて40〜80重量部の水、固体に基づいて0.1〜1.5重量部の乳化剤及び場合により固体に基づいて0.01〜0.3重量%の開始剤を含有し、示された重量部の合計は10
0.00重量部である。次いで少量の、好ましくは1〜10重量%のモノマーを計量添加し、場合により好ましくは0.01〜0.3重量%の開始剤を同時に計量添加して、内部シード(internal seed)を形成し、その上にさらなる重合段階が行われる。
【0041】
次いでコポリマーA)(コア)のためのモノマーを、言及される比率で内部シードに段階的に加え、それぞれそれらの合計重量に基づいて少なくとも5.0重量%、好ましくは少なくとも90.0重量%、特に好ましくは少なくとも95.0重量%、最も特別に好ましくは少なくとも99重量%の転換率まで重合を行い、コポリマーB)のためのモノマーを示される比率で加え、それぞれそれらの合計量に基づいて少なくとも85.0重量%、好ましくは少なくとも90.0重量%、特に好ましくは少なくとも95.0重量%、最も特別に好ましくは少なくとも99重量%の転換率まで重合を行う。乳化重合は一般的に30〜100℃、好ましくは50〜90℃の温度で行われる。
【0042】
従って、本発明は、水、乳化剤及び場合により少量の開始剤を最初に反応容器中に入れ、次いで1〜10重量%の量のモノマーa)〜c)、好ましくはa)及びb)を計量添加し、場合により開始剤を同時に計量添加して内部シードを形成せしめ、次いでコポリマーA)(コア)のためのモノマーa)〜c)を内部シードに段階的に加え、それぞれそれらの合計重量に基づいて少なくとも5.0重量%の転換率まで重合させ、そしてコポリマーB)のためのモノマーa)〜c)を加え、それぞれそれらの合計重量に基づいて少なくとも85.0重量%の転換率まで重合させることを特徴とする、本発明に従うポリマー分散物の製造方法も提供する。
【0043】
重合の開始は、フリーラジカル重合のために通常用いられる開始剤により行われる。これらには、例えば、過酸化水素、ヒドロペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、例えばジ−tert−ブチルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート及びペルオキシケタールが含まれる。水溶性無機過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウム又はナトリウムも適している。さらに、アゾ開始剤、例えば、アゾジイソブチロニトリルを用いることもできる。適した還元剤の添加により、レドックス開始剤の形態で開始剤を用いることができる。適した還元剤は、例えば二亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド又はイソアスコルビン酸である。重合は、通常、固体に基づいて0.05重量%〜2.0重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%の開始剤の存在下で行われる。固体に基づいて0.2〜0.8重量%の濃度を有する無機過硫酸塩又はヒドロペルオキシドが好適に用いられる。
【0044】
分散物の安定化は、中でもイオン性及び/又は非−イオン性乳化剤及び/又は保護コロイドにより行われる。適したイオノゲン性乳化剤は、特定的にアニオン性乳化剤である。これらはアルキル、アリール又はアルキルアルールスルホネート、ホスフェート、ホスホネート又は他のアニオン性末端基を有する化合物のアルカリ又はアンモニウム塩であることができ、ここで炭化水素基とアニオン性基の間にオリゴ−又はポリ−エチレンオキシド単位が置かれていることもできる。典型的な例はラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムラウリルジグリコールサルフェート、ナトリウムデシルグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムオクチルフェノールグリコールエーテルサルフェート及びナトリウムドデシルベンゼンサルフェートである。
【0045】
非−イオン性乳化剤は通常、アルキルポリグリコールエーテル、例えばラウリル、オレイル又はステアリルアルコールあるいはココナツ脂肪アルコールのような混合物のエトキシル化生成物である。アルキルフェノールポリグリコールエーテル、例えばオクチル−もしくはノニル−フェノール、ジイソプロピルフェノール、トリイソプロピルフェノール、
ジ−もしくはトリ−tert−ブチルフェノールのエトキシル化生成物も適している。言及した種類の化合物の他に、プロピレンオキシドのエトキシル化生成物を用いることもできる。
【0046】
適した保護コロイドとして、アラビアゴム、デンプン、アルギン酸塩のような天然物質あるいはメチル、エチル、ヒドロキシアルキル又はカルボキシメチルセルロースのような修飾天然物質あるいはポリビニルアルコールもしくは修飾ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンのような合成物質が用いられる。
【0047】
乳化剤を、それらがモノマーとラジカル共重合するように、適した官能基化により修飾することもできる(サーフマー(surfmer))。
【0048】
言及した乳化剤の混合物を用いることもさらに可能である。
【0049】
乳化剤として好ましくはアルキルホスフェートエステル、例えば、非−イオン性且つポリオキシエチレン付加物のホスフェートエステル(Hercules,USAからDextrol OC(R)の名前の下に入手可能)が用いられる。固体に基づく乳化剤の合計量は、0.3〜1.5重量%、好ましくは0.3〜1.0重量%である。
【0050】
乳化重合は一般に30〜100℃、好ましくは50〜90℃で行われる。重合媒体は水のみか、あるいは水及びそれと混和性の液体、例えばエタノールの混合物から成ることができる。好ましくは、水のみが用いられる。乳化重合をバッチ法として、ならびに段階又は勾配法を含むフェド−バッチ法の形態での両方で行われ得る;フェド−バッチ法が好ましい。フェド−バッチ法では、重合は比較的小さいモノマークッション(monomer
cushion)を用いて行われ、純粋なもしくは乳化された形態における1種もしくはそれより多いモノマー及びほとんど水溶性である補助物質が空間的に離れた複数の供給路を介して連続的に、段階的に又は勾配の形態で量り込まれる。粒度の調整は内部シードのその場形成を介して行われ、種の粒度は乳化剤対モノマーの比により決定される。規定される粒度の外部種を最初に導入することにより、粒度を制御することも可能である。本発明に従うコア−シェル粒子の調製のために、少なくとも2種のモノマー混合物の段階的な量り込みが行われる。第1段階又は第2段階のモノマー混合物のモノマーは、次の段階のモノマーの添加が始められる前に、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%そして最も特別に好ましくは少なくとも99重量%の程度まで重合する。
【0051】
ラジカル水性乳化重合の間に開始剤を重合容器に加える方法は、当該技術分野における熟練者に既知である。それをすべて最初の装入材料として重合容器中に入れることができるか、あるいはラジカル水性乳化重合の経過中にその消費に従って連続的又は段階的にそれを用いることができる。特に、それは開始剤系の化学的性質及び重合温度に依存する。好ましくは、一部を最初の装入材料として用い、残りをその消費に従って重合領域に供給する。
【0052】
当該技術分野における熟練者に既知の方法により、例えば、界面−活性化合物(乳化剤及び/又は保護コロイド)の量、量り込み分布及び構造ならびに/あるいは対応する撹拌機速度を変えることにより、単一モードの(monomodal)狭い粒度分布、すなわち低い多分散指数を得ることができる。
【0053】
完全な転換を保証するため、及び分散物が微量の遊離のモノマーを含まないようにするために、好ましくは後活性化(post−activation)を行い、後活性化では、好ましくは0.01〜0.2重量%の少量の開始剤が加えられる。さらに、例えば続く
水蒸気蒸留のような物理的方法により、分散物を精製することができる。
【0054】
分散物の固体含有率は、一般に水対有機出発材料の比により決定される。本発明に従うポリマー分散物の固体含有率は25〜65重量%、好ましくは30〜55重量%、最も特別に好ましくは35〜55重量%である。
【0055】
本発明に従うポリマー分散物の粘度は5〜300mPas、好ましくは10〜150mPas、特に好ましくは15〜100mPasである。
【0056】
規定される量の塩基の添加により、分散物のpH値を変えることができ、pH3〜12であることができ、6〜9のpH値が好ましい。ほとんどの場合、重合は酸性pH領域で行われ、重合が完了する時に中和が行われる。しかしながら、凝集を防ぐために、重合の経過中に塩基の一部を供給することもできる。塩基として当該技術分野における熟練者に既知の無機もしくは有機塩基を用いることができ、それには、例えば、アルカリヒドロキシド、水酸化アンモニウム、有機アミン、例えばトリエチルアミン又はエチルジイソプロピルアミンの水溶液が含まれる。アルカリヒドロキシド及び水酸化アンモニウムが好ましい。
【0057】
本発明に従うポリマー分散物が、優れ且つ均一な視覚的フィルム外観を有するコーティング組成物として用いられ得るために、可能な限り低い微小凝塊の含有率が必要である。当該技術分野における熟練者に既知の手段、例えば撹拌機の形、撹拌速度、供給時間、固体含有率、用いられる界面−活性剤の量、計量スキームmetering scheme)及び型ならびに静電的及び/又は立体的安定化のための化合物の量により、微小凝塊の形成を抑制することができる。形成された微小凝塊を濾過により分離することもできる。
【0058】
さらに別の通常の補助物質及び添加物を、本発明に従うポリマー分散物に加えることができる;これらには例えば殺生物剤(biocides)、消泡剤、酸化防止剤、UV安定剤、フィルム−形成助剤、増粘剤又は補助溶剤が含まれる。
【0059】
本発明に従うポリマー分散物をラッカーのフィルム−形成成分として用いることができ、それは木材、金属、プラスチックス、紙、皮革、編織布、ガラス及び無機基質のコーティングに適しており、木材コーティングにおけるそれらの使用が好ましい。本発明に従う分散物をクリヤラッカー又は着色ラッカーの形態で用いることができる。本発明に従うポリマー分散物を、例えば、さらに別のポリアクリレート、ポリスチレンアクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、アルキレン−もしくはエチレン−酢酸ビニル分散物を含むさらに別の水性分散物と組み合わせることも可能である。
【0060】
本発明は、本発明に従う水性ポリマー分散物を含有する水性コーティング組成物を提供する。
【0061】
しかしながら、本発明に従うポリマー分散物を架橋剤C)と組み合わせることもできる。
【0062】
架橋剤C)との組み合わせにより、架橋剤の反応性又は場合により遮断に依存して、一成分ラッカー及び二成分ラッカーの両方を与えることができる。一成分ラッカーは、本発明の範囲内で、架橋反応が顕著な程度まで、あるいは続く適用に有害な程度まで起こることなく、結合剤成分及び架橋剤成分を一緒に保存できるコーティング組成物と理解されるべきである。架橋反応は、架橋剤の活性化後に適用すると初めて起こる。活性化は、例えば温度を上昇させることによりもたらすことができる。二成分ラッカーは、本発明の範囲
内で、結合剤成分及び架橋剤成分をそれらの高い反応性の故に別の容器内に保存しなければならないコーティング組成物と理解される。2つの成分は適用の直前まで混合されず、次いで一般に追加の活性化なしで反応する。しかしながら架橋反応を加速するために、触媒を用いることができるか、あるいは比較的高い温度を適用することができる。
【0063】
適した架橋剤C)は、例えば、ポリイソシアナート架橋剤、アミド−及びアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド及びケトン樹脂である。
【0064】
好ましい架橋剤C)は、場合により親水的に修飾されていることができる遊離の又は遮断されたポリイソシアナートならびに/あるいは少なくとも部分的に親水的に修飾された非遮断ポリイソシアナートであることができる。
【0065】
ポリイソシアナートは、好ましくは少なくとも部分的に親水的に修飾されている。
【0066】
適したポリイソシアナートは、二官能基性イソシアナート、例えばイソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4−及び2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び/又はより高分子量のそれらの三量体、ビウレット、ウレタン、イミノオキサジアジンジオンならびに/あるいはアロファネートである。脂肪族又は環状脂肪族イソシアナートに基づく上記で言及した型の低粘度の、場合により親水性化されていることができるポリイソシアナートの使用が特に好ましい。
【0067】
遮断のために、上記で言及したポリイソシアナートを、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アセトキシム、ブタノンオキシム、カプロラクタム、フェノール、マロン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジメチルピラゾール、トリアゾール、ジメチルトリアゾール、アセト酢酸エステル、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、tert−ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル、ジシクロヘキシルアミン及び/又はtert−ブチルイソプロピルアミンのような遮断剤と反応させる。
【0068】
非遮断及び遮断ポリイソシアナートを、親水性基、例えばカルボキシレート、スルホネート及び/又はポリエチレンオキシド構造の導入により、水−分散性形態に転換し、かくして本発明に従う調製物と組み合わせて用いることもできる。言及した遮断ポリイソシアナートを、ヒドロキシ−又はアミノ−官能基性でやはり比較的高分子量の成分、例えばジオール、トリオール、アミノアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートならびに言及した及び/又は他の原料の混合物を同時に使用して製造することもできる。
【0069】
架橋剤C)として用いられるポリイソシアナートは、一般に23℃において10〜5000mPasの粘度を有し、粘度を調整するために望ましければ、少量の不活性溶剤との混合物において用いることもできる。
【0070】
一般的に、種々の架橋剤C)の混合物を用いることも、もちろん可能である。
【0071】
本発明は、コーティングの調製における本発明に従う水性ポリマー分散物の使用を同様に提供する。コーティングは、好ましくは基質としての木材又は誘導材木製品(derived timber products)上に実施される。
【発明を実施するための形態】
【0072】
実施例:
化学品:
アクリル酸(ACA),CAS 79−10−7,Aldrich,DE
メチルメタクリレート(MMA),CAS 80−62−6,Aldrich,DE
スチレン(S),CAS 100−42−5,Aldrich,DE
n−ブチルアクリレート(BA),CAS 141−32−2,Aldrich,DE
過硫酸アンモニウム(APS),CAS 7727−54−0,Aldrich,DE
乳化剤Tannemul(R) 951(E951),CAS 68610−22−0,Tanatex,DE
乳化剤Dextrol OC(R) 40(PHT),CAS 009046−01−9(>25%)、CAS 024938−91−8(<10%)、CAS 007664−38−2(<10%)の混合物,Hercules,USA
BYK(R) 341,表面添加物,BYK Chemie,DE
BYK(R) 348,湿潤剤,BYK Chemie,DE
BYK(R) 028,消泡剤,BYK Chemie,DE
Dehydran(R) 1620,消泡剤,Cognis,De
Acrylsol(R) RM−8 W,増粘剤,Rohm & Haas,USA
【0073】
方法:
計算されるガラス転移温度:
ガラス転移温度は、Fox式(Bulletin of the American Physical Society 1,3,page 123,1956):
【0074】
【数2】

【0075】
に従って計算され、式中、Tg(i)はn個のモノマーのそれぞれのホモポリマーiのガラス転移温度を示し、wはモノマーiの重量による量を示し、ここで重量によるすべての量の合計w+w+・・・w+・・・w=1である。
【0076】
粒度:
平均粒度(MPS)は、レーザー相関分光分析(装置:Malvern Zetasizer 1000,Malvern Instruments LTD)により決定された;数平均を示す。
【0077】
固体:
固体含有率は、DIN−EN ISO 3251に従って決定された。
【0078】
粘度:
粘度は、通常のBrookfield粘度計を用い、室温において装置の製造者により規定される通りに決定される。
【0079】
振り子硬度(pendulum hardness):
Koenigに従う振り子硬度をDIN 53157に従って測定した。
【0080】
視覚的フィルム外観:
ラッカーフィルムの視覚的評価を行い、高い数字は劣った視覚的外観を示した。
【0081】
フィルムの曇り度:
BYK Gardnerからの曇り光沢度計(haze gloss meter)を用い、DIN EN ISO 13803に従って曇り度を測定した。
【0082】
エタノール抵抗性:
エタノールを浸み込ませた綿棒とコーティングを接触させ、ペトリ皿で覆う。物質を30分間作用させ、次いでコーティングを3日間放置し、その後視覚的評価を行い、高い数字は劣った抵抗性を示す。
【0083】
他の抵抗性(赤ワイン、マスタード及びコーヒー):
エタノール抵抗性の項の下に記載した方法に従ったが、作用の持続時間は16時間である。
【0084】
分散物の調製:
以下の節で、本発明に従う分散物の調製のための一般的な合成法を記載する;それぞれの試験の特定の組成を表1中に示す。
【0085】
一般的な合成法:
制御された加熱及び冷却ならびに撹拌モーターを有する3−リットルのガラス反応器中に、52部の水を対応する量の乳化剤E1と一緒に入れる。次いで溶液を80℃に加熱する。重合温度に達したら、内部シードの製造のためのモノマー混合物M1及び開始剤溶液W1を、量り込みポンプを介して30分間かけて加え、その後さらに30分間撹拌を行う。次いで120分間かけてコアのモノマー混合物M2及び水溶液W2を80℃において量り込む。次いで120分内にシェルのモノマー混合物M3及び水溶液W3の添加を行う。M3及びW3の計量添加の直後に、5部の水中の0.05部のAPSを、後−活性化のために60分かけて量り込み、分散物を60分間さらに撹拌し、次いで冷却する。pHをpH7に調整するために、対応する量のアンモニア性溶液をゆっくり滴下し、完成した分散物を125μmのフィルター上に排出する。
【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
【表2−1】

【0089】
【表2−2】

【0090】
分散物の調製:
以下の節で、代表的な分散物の調製のための一般的な方法を示す;秤量される量を表3中に示す。
【0091】
分散物を容器中に入れ、撹拌する。次いでBYK 341及びBYK 348を2m/秒の撹拌速度で加え、10分間撹拌を行う。次いで2m/秒の撹拌速度で消泡剤Dehydran 1620の添加を行い、撹拌を5分間行い、次いで2m/秒の撹拌速度でBYK 028を加え、撹拌をさらに5分間行う。この後に水との1:1混合物における補助溶剤ブチルジグリコールを1〜1.5m/秒の撹拌速度で加え、撹拌を5分間行い、最後に0.5〜1m/秒の撹拌速度で増粘剤を加え、調製物を再び5分間撹拌する。ランアウトタイム(run out time)が約25秒であるように、増粘剤の量を調整する(DIN−4 ビーカー)。
【0092】
【表3】

【0093】
調製物の適用及び結果:
手動ドクターブレードにより、調製物をMDFシートに200μmの湿潤層厚さで適用し、次いで室温で24時間乾燥を行う。試験の結果を表4中に示す:
【0094】
【表4−1】

【0095】
【表4−2】

【0096】
表4に、代表的な分散物1〜11の対応する木材ラッカーの物理的パラメーター及び試験結果を示す。単位のない試験結果において、低い数字は正の結果を示し、高い数字は負
の結果を示す。
【0097】
本発明に従う分散物のみが>50秒の適した振り子硬度を示しながら、同時に高い溶剤抵抗性と組み合わされた優れた視覚的フィルム外観及び低い曇り度を有することがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のコアコポリマーA)及び少なくとも1種のシェルコポリマーB)を含有し、コアのガラス転移温度(T)が70℃〜100℃であり、シェルのガラス転移温度(T)が20℃〜55℃であり、コア−シェルコポリマーの全体的なガラス転移温度(T)が30℃〜80℃であり、分散物が固体に基づいて1.5重量%の量で乳化剤含有物を含有することを特徴とする水性ポリマー分散物。
【請求項2】
ポリマー粒子が75〜140nmの平均粒度を有することを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項3】
コポリマーB)のTがコポリマーA)のTより少なくとも30℃低いことを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項4】
コポリマーA)及びB)のモノマー混合物が
a)C−C20−アルキル(メタ)アクリレート、
b)最高で20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、
c)酸−官能基性モノマー及び
d)場合によりヒドロキシ−官能基性モノマー
を含有することを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項5】
コポリマーA)中のモノマーa)の含有率が20〜80重量%であり、モノマーb)の含有率が19〜79重量%であり、モノマーc)の含有率が1〜10重量%であり、モノマーd)の含有率が<30重量%であり、成分a)、b)、c)及び場合によりd)の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項6】
コポリマーB)中のモノマーa)の含有率が35〜90重量%であり、モノマーb)の含有率が9.9〜60重量%であり、モノマーc)の含有率が0.1〜3.7重量%であり、モノマーd)の含有率が<30重量%であり、成分a)、b)、c)及び場合によりd)の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項7】
コポリマーA)のモノマー対コポリマーB)のモノマーの重量比が3:1〜1:5であることを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項8】
乳化剤がアルキルホスフェートエステルであることを特徴とする請求項1に従う水性ポリマー分散物。
【請求項9】
水、乳化剤及び場合により少量の開始剤を最初に反応容器中に入れ、次いで1〜10重量%の量のモノマーa)〜c)を計量添加し、場合により開始剤を同時に計量添加して内部シード(internal seed)を形成せしめ、次いでコポリマーA)(コア)のためのモノマーa)〜d)を内部シードに段階的に加え、それぞれそれらの合計重量に基づいて少なくとも5.0重量%の転換率まで重合させ、そしてコポリマーB)のためのモノマーa)〜d)を加え、それぞれそれらの合計重量に基づいて少なくとも85.0重量%の転換率まで重合させることを特徴とする、本発明に従うポリマー分散物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に従う水性ポリマー分散物を含有する水性コーティング組成物。
【請求項11】
基質上でのコーティングの形成における請求項1に従う水性ポリマー分散物の使用。
【請求項12】
基質が木材又は誘導材木製品であることを特徴とする請求項11に従う使用。

【公表番号】特表2012−515812(P2012−515812A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546661(P2011−546661)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000122
【国際公開番号】WO2010/083954
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】