説明

水性分散体、塗料組成物および塗装体

【課題】本発明は、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、各種基材に対して密着性が高く、得られる皮膜の耐水性に優れる水性分散体を提供する。
【解決手段】本発明は、特定の組成、結晶化度、質量平均分子量および分子量分布のプロピレン系重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の特定の組成、質量平均分子量、酸価および結晶化度の酸変性オレフィン系重合体(B)と、1〜10質量部の界面活性剤(C)と、0.5〜20質量部の水(D)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化度が低いプロピレン系重合体を主成分とする水性分散体、その水性分散体を含む塗料組成物、およびその塗料組成物を塗装した塗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は軽量且つ安価、良成形性、耐溶剤性が高いため、近年、車輌用樹脂として多く採用されている。
ところで、ポリオレフィン樹脂の成形体に対して塗装や接着を行う場合には、従来はトルエンやキシレン等の芳香族系有機溶剤に溶解させた塩素化ポリオレフィンを含有する塗料や接着剤が多く用いられてきた。しかしながら、近年の環境への配慮から、溶剤も塩素も含有しない塗料や接着剤、あるいは、プライマーの成分として使用できる水性の分散体がユーザーから求められている。
そこで、特許文献1では、酸変性ポリオレフィンと変性澱粉と乳化剤とを含み、pHが6以上の水性分散体が提案されている。
【特許文献1】特開2004−285227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の水性分散体は、溶剤型の塗料や接着剤程の密着性を発揮することはなかった。特に、基材がポリオレフィン成形体である場合には、密着性が低かった。また、特許文献1に記載の水性分散体は、得られる塗膜の耐水性も不充分であった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、各種基材、特にプラスチック成形体(中でも車輌内外装用ポリオレフィン成形体)に対して密着性が高く、得られる皮膜の耐水性に優れる水性分散体を提供することを目的とする。また、その水性分散体を含む塗料組成物およびその塗料組成物が塗装されて形成された皮膜を有する塗装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性オレフィン系重合体(B)と、1〜10質量部の界面活性剤(C)と、0.5〜20質量部の水(D)とを含有する水性分散体であって、
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単位80〜89質量%とα−オレフィン単位11〜20質量%とを含有する共重合体で、結晶化度が8〜16%、質量平均分子量が150,000〜250,000、分子量分布Mw/Mnが1.5〜3.5であり、
酸変性オレフィン系重合体(B)は、プロピレン単位60〜90質量%とエチレン単位および/または1−ブテン単位10〜40質量%とを含有するオレフィン系重合体に、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物が結合された酸変性オレフィン系重合体で、質量平均分子量が40,000〜100,000、酸価が20〜80mgKOH/g、結晶化度が0.1〜16%であることを特徴とする水性分散体
[2] 前記プロピレン系重合体(A)を構成するα−オレフィン単位がエチレン単位であることを特徴とする[1]に記載の水性分散体
[3] 前記プロピレン系重合体(A)がメタロセン系触媒を用いて重合されたことを特徴とする[1]または[2]に記載の水性分散体
[4] 前記界面活性剤(C)がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水性分散体
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の水性分散体を含むことを特徴とする塗料組成物。
[6] 基材と、該基材の表面に[5]に記載の塗料組成物が塗装されて形成された皮膜とを有することを特徴とする塗装体。
【発明の効果】
【0005】
本発明の水性分散体および塗料組成物は、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、各種基材、特にプラスチック成形体に対して密着性が高く、得られる皮膜の耐水性に優れる。
本発明の塗装体は、基材に対する密着性および耐水性に優れる皮膜を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
「水性分散体」
本発明の水性分散体は、プロピレン系重合体(A)と酸変性オレフィン系重合体(B)と界面活性剤(C)と水を含有するものである。
【0007】
(プロピレン系重合体(A))
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単位80〜89質量%とα−オレフィン単位11〜20質量%とを含有する共重合体である。
プロピレン系重合体(A)におけるプロピレン単位含有率が80質量%未満であると、得られる塗料組成物より形成した皮膜の密着性が低くなり、また、得られる皮膜の耐水性が低下する。プロピレン単位含有率が89質量%を超える場合も、得られる塗料組成物より形成した皮膜の密着性および耐水性が低下する。
また、プロピレン系重合体(A)における好ましいプロピレン単位含有率は82〜87質量%である。
【0008】
プロピレン系重合体(A)のα−オレフィン成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。それらの中でもエチレンが好ましい。α−オレフィンがエチレンであれば、得られる塗料組成物から形成した皮膜のベタツキやタックを防止できる。
【0009】
プロピレン系重合体(A)の結晶化度は8〜16%であり、好ましくは10〜14%である。プロピレン系重合体(A)の結晶化度が16%を超えると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性が低くなり、8%未満であると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の耐水性が低下する。
ここで、結晶化度は、X線回折を測定して求めた結晶のピーク面積の割合である。
【0010】
プロピレン系重合体(A)の質量平均分子量は150,000〜250,000の範囲であり、好ましくは170,000〜230,000の範囲である。プロピレン系重合体(A)の質量平均分子量が250,000を超えると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性が低くなり、150,000未満であると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の耐水性が低下する。
【0011】
プロピレン系重合体(A)の分子量分布Mw/Mnは1.5〜3.5の範囲であり、好ましくは2.0〜2.8の範囲である。プロピレン系重合体(A)の分子量分布が3.5を超えても1.5未満であっても、成形体に塗布した後、乾燥して得られる皮膜の密着性が低下する。
本発明における質量平均分子量Mwおよび数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0012】
プロピレン系重合体(A)を製造する方法としては、特開2004−115712号公報に記載されているようなメタロセン系触媒を用いる方法が好ましい。メタロセン系触媒はマルチサイト触媒であるチーグラー・ナッタ触媒とは異なり、触媒活性が均一であるために、結晶化度、組成分布、分子量を任意に制御することが可能である。
メタロセン系触媒を用いて製造したプロピレン系重合体(A)を用いた場合、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造したプロピレン系重合体(A)を用いた場合には、皮膜の密着性と耐水性が低下する傾向にある。
【0013】
メタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属の錯体を挙げることができる。例えば、特開平9−151205号公報に記載されたメタロセン系触媒を用いることができる。
【0014】
プロピレン系重合体(A)の組成は、プロピレン系重合体(A)重合時のプロピレンモノマーとα−オレフィンモノマーの供給量を適宜変更することにより、調節できる。またプロピレン系重合体(A)の質量平均分子量と結晶化度の調整方法としては、重合時に水素ガスを使用して制御する方法、モノマー濃度を制御する方法、重合温度を制御する方法等が挙げられる。
【0015】
(酸変性オレフィン系重合体(B))
酸変性オレフィン系重合体(B)としては、オレフィン系重合体にカルボン酸またはカルボン酸無水物が結合された変性物が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0016】
酸変性オレフィン系重合体(B)は、プロピレン単位60〜90質量%とエチレン単位および/または1−ブテン単位10〜40質量%とを含有する。プロピレン単位含有率が60質量%未満であっても90質量%を超えても、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性および耐水性が低くなる。
また、酸変性オレフィン系重合体(B)における好ましいプロピレン単位含有率は63〜84質量%である。
【0017】
酸変性オレフィン系重合体(B)の酸価は20〜80mgKOH/gであり、好ましくは40〜60mgKOH/gである。ここでいう酸価は、酸変性オレフィン系重合体1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価が20mgKOH/g未満であっても80mgKOH/gを超えても、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性および耐水性が低くなる。
【0018】
酸変性オレフィン系重合体(B)の質量平均分子量は40,000〜100,000であり、好ましくは60,000〜80,000である。酸変性オレフィン系重合体(B)の質量平均分子量が40,000未満であっても100,000を超えても、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性および耐水性が低下する。
【0019】
酸変性オレフィン系重合体(B)の結晶化度は0.1〜16%である。酸変性オレフィン系重合体(B)の結晶化度が16%を超えると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性が低くなり、0.1%未満であると、塗料組成物から形成した皮膜の耐水性が低下する。
【0020】
酸変性オレフィン系重合体(B)の量は、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、好ましくは10〜15質量部である。酸変性ポリオレフィン(B)の量が5質量部未満であると、プロピレン系重合体(A)を分散させることができないため、水性分散体が得られず、20質量部を超えると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性および耐水性が低下する。
【0021】
酸変性オレフィン系重合体(B)の製造方法についてはオレフィン系重合体を製造する重合工程と、予め製造したオレフィン系重合体をエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性する変性工程の2つの工程を有する。
【0022】
重合工程でのオレフィン系重合体の製造方法では、プロピレン系重合体(A)の重合方法と同様の方法や特開平10−273570号公報に記載された方法のように、プロピレンモノマーとエチレンモノマー、あるいは1−ブテンモノマーの供給量を適宜変更することによりオレフィン系重合体の組成を容易に調節できる。
オレフィン系重合体の質量平均分子量と結晶化度の調整方法は、プロピレン系重合体(A)の重合方法と同様に、重合時に水素ガスを使用する方法、モノマー濃度を制御する方法、重合温度を制御する方法などが適用される。
【0023】
酸変性オレフィン系重合体(B)を製造する際の変性工程は、重合工程で得たオレフィン系重合体をエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で変性して酸変性オレフィン系重合体を得る工程である。具体的には、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体の主鎖にグラフト反応させる工程である。
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、およびこれらの無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0024】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体の主鎖にグラフト反応させる工程では、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾニトリルから適宜選択して使用できる。
有機過酸化物としては、ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、クメンヒドロキシパーオキシドなどのハイドロパーオキシド類、ジ(t−ブチル)パーオキシドなどのジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
アゾニトリルとしては、アゾイソブチロニトリル、アゾイソプロピロニトリル等が挙げられる。
これらラジカル重合開始剤は1種を単独で用いても構わないし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0025】
グラフト反応させる方法は、本発明を満たす重合体を製造できれば、いかなる方法であってもよい。例えば、溶液中で加熱攪拌して反応させる方法、無溶媒で溶融加熱攪拌して反応させる方法、押出機で加熱混練して反応させる方法等が挙げられる。それらの中でも押出機を用いてグラフト重合する方法は溶媒を使用する必要がなく、溶媒留去工程が不要であり、さらにグラフト重合工程に時間を有しないためエネルギー的に有利な点で好適である。
【0026】
(界面活性剤(C))
界面活性剤(C)としては、ノニオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤、高分子乳化剤等が挙げられ、その中でも、より耐水性に優れる皮膜を形成させることができる点から、アニオン性界面活性剤が好ましい。例えば、第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、第1級高級アルキルスルホン酸塩、第2級高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スルホン化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルベンゾイルイミダゾールスルホン酸塩などが挙げられる。
上記のアニオン性界面活性剤を構成する高級脂肪酸としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸等の飽和脂肪酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸と、これらの混合物が挙げられる。
高級脂肪酸と塩を形成するための元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0027】
界面活性剤(C)の量は、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して1〜10質量部であり、好ましくは3〜5質量部である。界面活性剤(C)の量が1質量部未満であると、水性分散体を得ることができず、10質量部を超えると、得られる塗料組成物から形成した皮膜の密着性および耐水性が低くなる。
【0028】
水性分散体中の水(D)は転相時に必要な水であり、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部である。
なお、水(D)の量が前記範囲である水性分散体の固形分濃度は84質量%以上であり、実質的に固体である。そのため、この水性分散体を既存の塗工方法を適用するため、あるいは、他の薬剤を混合しやすくするためには、粘度を適切な範囲にする目的で、水性分散体に40質量部以上の希釈水を添加し、希釈して、固形分濃度が10〜60質量%の水性分散液とすることが好ましい。
【0029】
(水性分散体の製造方法)
本発明における水性分散体の製造方法は特に限定されないが、例えば、プロピレン系重合体(A)と酸変性オレフィン系重合体(B)と界面活性剤(C)に水および水以外の溶媒を添加して混合物を調製した後、該混合物から水以外の溶媒を留去する方法が挙げられる。また、プロピレン系重合体(A)と酸変性オレフィン系重合体(B)と界面活性剤(C)が溶融する温度以上で溶融させた後に水を添加する方法が挙げられる。これらの中でも、後者の方法が好ましい。後者の方法であれば、貯蔵安定性の高い水性分散体を得ることができる上に、得られた水性分散体から形成した塗膜の密着性および耐水性をより高くできる。また、水以外の溶媒を留去する必要がなく、消費エネルギーの点から有利である。
【0030】
上記特定のプロピレン系重合体(A)と酸変性ポリオレフィン系重合体(B)を含有する本発明の水性分散体は、有機溶剤および塩素原子含有ポリマーを含まないにもかかわらず、各種基材、特にプラスチック成形体に対して密着性が高い。また、該水性分散体から得られる皮膜は耐水性に優れる。
【0031】
「塗料組成物」
本発明の塗料組成物は、上記水性分散体と、必要に応じて、副資材とを含む。
(副資材)
副資材としては、例えば、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の分散剤、乳化剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、ゲル化剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤、造膜助剤、レベリング剤、ポリオレフィン樹脂エマルション、塩素化ポリオレフィン樹脂エマルション、アクリル樹脂やウレタン樹脂等の水性樹脂エマルション等が挙げられる。
【0032】
上述した塗料組成物は、上記水性分散体を含有するため、各種基材に対する密着性および皮膜の耐水性に優れる。このような塗料組成物は、車輌内外装用のプライマー塗料として適している。
【0033】
「塗装体」
本発明の塗装体は、基材と、該基材の表面に上記塗料組成物が塗装されて形成された皮膜とを有するものである。
基材としては、例えば、プラスチック成形体、金属成形体、金属酸化物成形体、木質成形体、紙、繊維織物等が挙げられる。これらの中でも、本発明の高い密着性の効果がとりわけ発揮されることから、プラスチック成形体が好ましい。さらには、プラスチック成形体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの成形体であって、インストルメントパネル、表皮材、センターコンソール等の車輌内装用ポリオレフィン成形体が好ましい。
車輌内外装用ポリオレフィン成形体には、ポリエチレンおよびポリプロピレン以外の他のポリオレフィン(例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム等)、無機フィラー(例えば、タルク、ガラス繊維、炭酸カルシウム等)、安定剤、着色剤などの各種添加剤が含まれていてもよい。車輌内外装用ポリオレフィン成形体各種添加剤が含まれる場合においても、発揮される効果は同等である。
【0034】
皮膜の厚さは、目的に応じて適宜選択されるが、1〜50μmであることが好ましい。皮膜の厚さが1μm以上であれば、皮膜の機能を充分に発揮させることができ、50μm以下であれば、容易に皮膜を形成できる。
塗料組成物の塗装方法としては、例えば、各種塗工機を用いる方法、スプレーを用いる方法、刷毛塗りなどの方法を用いることができる。
【0035】
本発明の塗装体は、上記塗料組成物が塗装された皮膜を有するため、基材に対する密着性および耐水性に優れる皮膜を有する。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において「%」は「質量%」のことを意味する。
プロピレン系重合体(A)および酸変性オレフィン系重合体(B)の特性(各単量体単位の量、質量平均分子量、結晶化度、酸価、平均粒子径)は、下記のようにして測定した。
○プロピレン系重合体(A)および酸変性オレフィン系重合体(B)の前駆体であるオレフィン系重合体の単量体単位の定量:重ベンゼンに溶解させた後、高分解能フーリエ変換核磁気共鳴装置JNM−AL400型(日本電子(株)製)を用いて、H,13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレン単量体単位由来のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテン単量体単位由来のメチル炭素スペクトルとの強度比からプロピレン単量体単位とエチレン単量体、1−ブテン単量体単位のそれぞれの含有量(単位:モル%)を求め、組成比を算出した。
○プロピレン系重合体(A)および酸変性オレフィン系重合体(B)の前駆体であるオレフィン系重合体および酸変性オレフィン系重合体(B)の質量平均分子量測定:ウォーターズ社製、アライアンスGPC V2000型(標準物質;ポリスチレン, 溶媒;オルトジクロロベンゼン, 測定温度;140℃, 溶媒流速;1mL/分)により測定した。
○プロピレン系重合体(A)および酸変性オレフィン系重合体(B)の結晶化度:理学電機(株)製、広角X線回折装置RAD−RX型により求めた。
○酸変性オレフィン系重合体(B)の酸価の測定方法;酸変性オレフィン系重合体200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した酸変性オレフィン系重合体(B)液体セルに入れ、FT−IR(日本分光社製)を用いて、積算回数32回にて赤外吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し、検量線を作成したものを用いて計算した。カルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出した。算出した酸成分含有量/(100−酸成分含有量)×1/97(グラフトされた無水マレイン酸1分子当りの分子量)×2当量(グラフトされた1分子の無水マレイン酸が中和された時のカルボン酸基数)×57(KOH分子量)×1000から酸価を算出した。
○平均粒子径測定:日機装社製のマイクロトラック(ナノトラック150)(測定溶媒;純水)を用いて体積基準の平均粒子径を測定した。
【0037】
以下の実施例、比較例において、(A)成分として、下記の(A−1)〜(A−9)を用いた。
プロピレン系重合体(A−1):
1000mL丸底フラスコに、脱イオン水110mL、硫酸マグネシウム・7水和物22.2gおよび硫酸18.2gを採取し、攪拌して溶解させた。これにより得た溶液に、市販の造粒モンモリロナイト16.7gを分散させ、100℃まで昇温し、2時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したウェットケーキを1000mL丸底フラスコにて、脱塩水500mLにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で一晩乾燥して、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
得られた化学処理モンモリロナイト4.4gに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/mL)20mLを加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン80mLを加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/mL)を得た。別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19mLおよびジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム]131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間攪拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積24リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に液体プロピレン2.48Lおよび液体エチレン0.45Lを導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、85℃まで昇温し重合時全圧を0.75MPa、水素濃度400ppmで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンを放出して重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒並びに粘土残渣を除去して、プロピレン−エチレン共重合体トルエン溶液を得た。得られたプロピレン−エチレン共重合体をプロピレン系重合体(A−1)とした。
プロピレン系重合体(A−1)のエチレン単位量は15%、質量平均分子量Mwは160,000(ポリスチレン換算)、結晶化度は10%であった。
【0038】
プロピレン系重合体(A−2)〜(A−9):
重合条件を表1に示したように変更した以外は、プロピレン系重合体(A−1)と同様にしてプロピレン系重合体(A−2)〜(A−9)を製造した。
【0039】
【表1】

【0040】
プロピレン系重合体(A−10):
重合触媒にシクロペンタジエニルを添加しなかった(すなわち、トリエチルアルミニウム[3EtAl]のみを触媒として用いた)以外は、プロピレン系重合体(A−1)と同様の方法により、プロピレン系重合体(A−10)を得た。
【0041】
プロピレン系重合体(A−1)〜(A−10)における各単量体の組成、結晶化度、質量平均分子量を表2,3に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
酸変性オレフィン系重合体(B)は、重合工程にて、プロピレン系重合体(A)を製造したのと同様の方法で酸変性オレフィン系重合体(B)の前駆体であるオレフィン系重合体を製造し、変性工程にて、該オレフィン系重合体を変性することにより得た。以下、具体的に手順を示す。
【0045】
酸変性オレフィン系重合体(B−1):
(i)重合工程
1000mL丸底フラスコに、脱イオン水110mL、硫酸マグネシウム・7水和物22.2gおよび硫酸18.2gを採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト16.7gを分散させ、100℃まで昇温し、2時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1000mL丸底フラスコにて、脱塩水500mLにて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト13.3gを得た。
得られた化学処理モンモリロナイト4.4gに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/mL)20mLを加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン80mLを加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/mL)を得た。別のフラスコに、トリイソブチルアルミニウム0.2mmolを採取し、ここで得られた粘土スラリー19mLおよびジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム]131mg(57μmol)のトルエン希釈液を加え、室温で10分間攪拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積24リットルの誘導攪拌式オートクレーブ内に液体プロピレン2.48Lおよび液体エチレン0.83Lを導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、85℃まで昇温し重合時全圧を0.75MPa、水素濃度400ppmで一定に保持しながら、同温度で2時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンを放出して重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を全量回収し、溶媒並びに粘土残渣を除去して、酸変性オレフィン系重合体の前駆体であるオレフィン系重合体のトルエン溶液を得た。得られたオレフィン系重合体のエチレン単位量は25%、質量平均分子量Mwは80,000(ポリスチレン換算)、結晶化度は10%であった。
【0046】
(ii)変性工程
上記オレフィン系重合体100質量部に、無水マレイン酸6質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド3質量部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて反応させた。その際、押出機内を脱気して、残留する未反応物を除去した。
この反応により得られた酸変性オレフィン系重合体(B−1)は、質量平均分子量50,000、無水マレイン酸のグラフト質量が4質量%(酸価50mgKOH/g)であった。
【0047】
酸変性オレフィン系重合体(B−2)〜(B−7),(B−10)〜(B−15),(B−18),(B−19):
重合条件を表4に示すように変更して得たオレフィン系重合体を前駆体として用いたこと以外は、酸変性オレフィン系重合体(B−1)の製造と同様にして、酸変性オレフィン系重合体(B−2)〜(B−7),(B−10)〜(B−15),(B−18),(B−19)を得た(表5〜7参照)。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
酸変性オレフィン系重合体(B−8):
無水マレイン酸を4質量部に変更した以外は、酸変性オレフィン系重合体(B−1)の製造と同様にして、酸変性オレフィン系重合体(B−8)を得た(表6参照)。
【0053】
酸変性オレフィン系重合体(B−9):
無水マレイン酸を8質量部に変更した以外は、酸変性オレフィン系重合体(B−1)の製造と同様にして、酸変性オレフィン系重合体(B−9)を得た(表6参照)。
【0054】
酸変性オレフィン系重合体(B−16):
無水マレイン酸を2質量部に変更した以外は、酸変性オレフィン系重合体(B−1)の製造と同様にして、酸変性オレフィン系重合体(B−16)を得た(表7参照)。
【0055】
酸変性オレフィン系重合体(B−17):
無水マレイン酸を10質量部に変更した以外は、酸変性オレフィン系重合体(B−1)の製造と同様にして、酸変性オレフィン系重合体(B−17)を得た(表7参照)。
【0056】
(実施例1)
プロピレン系重合体(A−1)と、プロピレン系重合体100質量部に対して、10質量部の酸変性オレフィン系重合体(B−2)と、プロピレン系重合体100質量部に対して5質量部のオレイン酸カリウム(C−1)を、二軸押出機(スクリュー径;30mm、L/D;40、バレル温度;230℃)にその投入口から供給して溶融混練した。
また、該二軸押出機のベント部に設けた供給口より14%の水酸化カリウム水溶液を、プロピレン系重合体(A−1)と酸変性オレフィン系重合体(B−2)とオレイン酸カリウムの総質量に対して、1.8MPaで3.5質量部を連続的に圧入した。そして、二軸押出機先端より押し出された固形状の水性分散体を、165質量部の温水中で分散させて、固形分濃度が40%で、平均粒子径0.21μmの水性分散体を得た。
得られた水性分散体を車輌内外装用ポリオレフィン成形体に塗装し、乾燥して、皮膜を有する塗装体を得た。
得られた皮膜の密着性と耐水性を、以下のように評価した。その結果を表8に示す。
【0057】
[試験片の作製]
車輌内外装用のポリオレフィン成形体であるトヨタスーパーオレフィンポリマー素材(100×100mm、厚さ2mmの平板)表面を脱脂処理した後、水性分散体を乾燥膜厚で15μmになるようにスプレー塗装した。そして、80℃で20分間乾燥し、室温で24時間静置して皮膜を形成し、皮膜を形成した平板を試験片として用いた。
【0058】
[密着性試験]
JIS K5400に準拠して、セロハンテープを用いて剥離試験を行った。2mm間隔で25個のマス目を形成させた後、それらのマス目にセロハンテープを密着させた後、引き剥がし、残存したマス目の数を記録した。残存したマス目の数が20マス以上であれば密着性に優れる。
【0059】
[耐水性試験]
ステンレス製のカゴの中に入れた試験片を、40℃の温水中に完全に浸漬し、10日間放置した。その後、温水中から取出し、外観に異常が認められなければ、引き続き、上記密着性試験と同様の試験を行った。残存したマス目の数が20マス以上であれば耐水性に優れる。
【0060】
(実施例2)
プロピレン系重合体(A−1)をプロピレン系重合体(A−2)に変更した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.26μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表8に示す。
【0061】
(実施例3)
プロピレン系重合体(A−1)をプロピレン系重合体(A−3)に変更した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.30μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表8に示す。
【0062】
【表8】

【0063】
(実施例4)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−1)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0064】
(実施例5)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−3)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.30μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0065】
(実施例6)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−4)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.35μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0066】
(実施例7)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−5)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0067】
(実施例8)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−6)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0068】
(実施例9)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−7)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.39μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0069】
(実施例10)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−8)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.29μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0070】
(実施例11)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−9)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0071】
(実施例12)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−10)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0072】
(実施例13)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)を酸変性オレフィン系重合体(B−11)に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.39μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表9に示す。
【0073】
【表9】

【0074】
(実施例14)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の添加量を6質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.50μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表10に示す。
【0075】
(実施例15)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の添加量を18質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.28μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表10に示す。
【0076】
(実施例16)
オレイン酸カリウム(C−1)の添加量を2質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.68μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表10に示す。
【0077】
(実施例17)
オレイン酸カリウム(C−1)の添加量を9質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.29μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表10に示す。
【0078】
(実施例18)
オレイン酸カリウム(C−1)の代わりにエマルゲン920(花王(株)製、ノニオン性界面活性剤)(C−2)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径2.1μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性の評価をした。その結果を表10に示す。
【0079】
【表10】

【0080】
(比較例1)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−4)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0081】
(比較例2)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−5)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.30μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0082】
(比較例3)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−6)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.35μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0083】
(比較例4)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−7)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.40μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0084】
(比較例5)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−8)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.36μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0085】
(比較例6)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−9)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.37μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0086】
(比較例7)
プロピレン系重合体(A−1)の代わりにプロピレン系重合体(A−10)を使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.37μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表11に示す。
【0087】
【表11】

【0088】
(比較例8)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−12)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0089】
(比較例9)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−13)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.34μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0090】
(比較例10)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−14)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0091】
(比較例11)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−15)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.33μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0092】
(比較例12)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−16)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0093】
(比較例13)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−17)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.35μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0094】
(比較例14)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−18)を使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.32μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0095】
(比較例15)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の代わりに酸変性オレフィン系重合体(B−19)を使用した以外は施例2と同様にして、平均粒子径0.31μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表12に示す。
【0096】
【表12】

【0097】
(比較例16)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の添加量を3質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、水性分散体を得ようとしたが、得ることができなかった。
【0098】
(比較例17)
酸変性オレフィン系重合体(B−2)の添加量を25質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.28μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表13に示す。
【0099】
(比較例18)
オレイン酸カリウム(C−1)の添加量を0.5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、水性分散体を得ようとしたが、得ることができなかった。
【0100】
(比較例19)
オレイン酸カリウム(C−1)の添加量を15質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.85μmの水性分散体を得た。そして、実施例1と同様にして密着性および耐水性を評価した。その結果を表13に示す。
【0101】
【表13】

【0102】
本願請求項1に係る発明の範囲にある実施例1〜18の水性分散体では、プラスチック成形体に対して密着性が高く、得られる皮膜の耐水性に優れていた。
【0103】
プロピレン系重合体(A)のエチレン単位含有量が20%を超える比較例1の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
プロピレン系重合体(A)のエチレン単位含有量が11%未満の比較例2の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
プロピレン系重合体(A)の結晶化度が8%を超える比較例3の水性分散体では、皮膜の耐水性が低かった。
プロピレン系重合体(A)の結晶化度が16%未満の比較例4の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低かった。
プロピレン系重合体(A)の質量平均分子量が15万を超える比較例5の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低かった。
プロピレン系重合体(A)の結晶化度が25万未満の比較例6の水性分散体では、皮膜の耐水性が低かった。
プロピレン系重合体(A)が非メタロセン系触媒を用いて得た重合体である比較例7の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
【0104】
酸変性オレフィン系重合体(B)のエチレン単位含有量が40%を超える比較例8の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)のエチレン単位含有量が10%未満の比較例9の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の質量平均分子量が4万未満の比較例10の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の質量平均分子量が10万を超える比較例11の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の酸価が20mgKOH/g未満の比較例12の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の酸価が80mgKOH/gを超える比較例13の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の結晶化度が0.1%未満の比較例14の水性分散体では、耐水性が低かった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の結晶化度が16%を超える比較例15の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
【0105】
酸変性オレフィン系重合体(B)の含有率が5%未満の比較例16では、水性分散体が得られなかった。
酸変性オレフィン系重合体(B)の含有率が25%を超える比較例17の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。
界面活性剤(C)の含有率が0.5%未満の比較例18では、水性分散体が得られなかった。
界面活性剤(C)の含有率が10%を超える比較例19の水性分散体では、プラスチック成形体に対する密着性が低く、耐水性も低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、5〜20質量部の酸変性オレフィン系重合体(B)と、1〜10質量部の界面活性剤(C)と、0.5〜20質量部の水(D)とを含有する水性分散体であって、
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単位80〜89質量%とα−オレフィン単位11〜20質量%とを含有する共重合体で、結晶化度が8〜16%、質量平均分子量が150,000〜250,000、分子量分布Mw/Mnが1.5〜3.5であり、
酸変性オレフィン系重合体(B)は、プロピレン単位60〜90質量%とエチレン単位および/または1−ブテン単位10〜40質量%とを含有するオレフィン系重合体に、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物が結合された酸変性オレフィン系重合体で、質量平均分子量が40,000〜100,000、酸価が20〜80mgKOH/g、結晶化度が0.1〜16%であることを特徴とする水性分散体
【請求項2】
前記プロピレン系重合体(A)を構成するα−オレフィン単位がエチレン単位であることを特徴とする請求項1に記載の水性分散体
【請求項3】
前記プロピレン系重合体(A)がメタロセン系触媒を用いて重合されたことを特徴とする請求項1または2に記載の水性分散体
【請求項4】
前記界面活性剤(C)がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散体を含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項6】
基材と、該基材の表面に請求項5に記載の塗料組成物が塗装されて形成された皮膜とを有することを特徴とする塗装体。

【公開番号】特開2010−106178(P2010−106178A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281195(P2008−281195)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(502163421)ユーエムジー・エービーエス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】