説明

水性化粧料及びその製造方法

【課題】微少な粒径を有するセラミド類含有粒子が安定に分散されると共に、沈殿物を生じることなく適用態様に応じた粘度を呈する水性化粧料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記(1)、(2)、及び(3)を少なくとも含み、且つ液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲である水性化粧料。
(1)セラミド類を少なくとも含有し、油相成分として水相中に分散される体積平均粒子径が2nm以上150nm以下のセラミド類含有粒子
(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
(3)水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下含まれる天然多糖類

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、皮膚の角質層に存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築し、水分を維持していくために重要な役割を果たしている。角質層にあるセラミドは、セレブロシドが、セレブロシダーゼという酵素により分解して生成したものである。セラミドの一部は、セラミダーゼと呼ばれる酵素により、フィトスフィンゴシン及びスフィンゴシンに変化し、細胞の増殖及び分化の調節剤として重要であることが知られている。人間の皮膚には、6種類の異なったタイプのセラミドが存在し、機能もそれぞれ異なっている。
しかしながら、セラミドは結晶性の高い物質であり、他の油剤への溶解性が低く、低温で結晶を析出する等の理由のため、化粧料に配合する場合、安定性を確保することが困難であった。また、水性のセラミド分散物は、界面活性剤等を用いて分散することは可能であるが、その粒子径を充分に小さくすることが難しく、透明性を欠いた分散物となることがあった。
【0003】
セラミド類を含有する組成物としては、保湿作用、肌荒れ防止作用及び乳化作用を有する特定スフィンゴ糖脂質群を含む乳化組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、コレステロール、脂肪酸、水溶性高分子を含有するセラミド配合化粧品添加物(例えば、特許文献2参照。)や、温度変化の激しい場合にも安定性に優れ、使用感が良好な外用組成物として、スフィンゴシン類と特定の脂肪酸で形成された塩を乳化剤として使用し、油溶性の酸化防止剤を特定割合で添加した油中水型乳化組成物(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
また、製剤化技術として、スフィンゴ糖脂質のエモリエント効果を充分に発揮させるために、スフィンゴ糖脂質の粗分散液を所定のジェット流を用いて微粒子化処理を行なう化粧料用添加剤の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
一方、セラミド類を透明に可溶化し、安定に配合する技術として、特定の脂肪酸や特定の界面活性剤を配合することが開示されている(例えば、特許文献5、6参照。)。しかしながら、セラミド類を透明に可溶化するためには、界面活性剤の配合を多くする必要があり、そのため安全性や使用感を損なう場合があった。一方、優れた使用感を得るために、界面活性剤の配合量を少なくした場合には、白濁ないし半透明の乳濁状になることが多く、セラミド類を透明に可溶化しきれず、この場合、経時での分離やクリーミングが起こり、充分な経時安定性を確保することが難しい状況にあった。
【0005】
また、水性化粧料については、その剤型や充填容器の種類等の理由から、増粘する必要性が生じる場合がある。例えば、充填容器として近年汎用されるアトマイザー型容器に、水性化粧料を充填する場合、容器からの突出性を考慮すれば、ある程度の粘度を有する水性化粧料を用いることが必要である。しかしながら、セラミド類を含有する水性化粧料は、アクリル酸増粘剤など従来公知の増粘剤を用いると沈殿物が生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2000−51676号公報
【特許文献2】特開平7−187987号公報
【特許文献3】特開2006−335692号公報
【特許文献4】特開平11−310512号公報
【特許文献5】特開2001−139796公報
【特許文献6】特開2001−316217公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微少な粒径を有するセラミド類含有粒子が安定に分散され、沈殿物を生じることなく適用態様に応じた粘度を呈する水性化粧料、及び該水性化粧料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記(1)、(2)、及び(3)を少なくとも含み、且つ25℃での液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲である水性化粧料。
(1)セラミド類を少なくとも含有し、油相成分として水相中に分散される体積平均粒子径が2nm以上150nm以下のセラミド類含有粒子
(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
(3)水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下含まれる天然多糖類
<2> 前記天然多糖類が、ヒアルロン酸、キサンタンガム、及びセルロース系高分子からなる群から選択された少なくとも1つの天然多糖類である<1>に記載の水性化粧料。
<3> 前記天然多糖類が、その分子構造中にカチオン性基を持たない天然多糖類である<1>に記載の水性化粧料。
<4> 更に、界面活性剤を、前記セラミド類の全質量に対して0又は0.5倍量以下で含む<1>〜<3>に記載の水性化粧料。
<5> 前記炭素数10〜30の脂肪酸が30℃で液体である<1>〜<4>に記載の水性化粧料。
<6> 前記セラミド類含有粒子の体積平均粒子径が5nm以上50nm以下である<1>〜<5>に記載の水性化粧料。
<7> 更に、多価アルコールを含む<1>〜<6>に記載の水性化粧料。
<8> 前記炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩が、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸、及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1つである<1>〜<7>に記載の水性化粧料。
<9> <1>〜<8>のいずれかに記載の水性化粧料の製造方法であって、少なくとも前記セラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合して、セラミド分散物を得ること、前記セラミド分散物と、水性組成物とを混合すること、を含む水性化粧料の製造方法。
<10> 前記セラミド類を、セラミド類の良溶媒に溶解することを含む<9>に記載の水性化粧料の製造方法。
<11> 前記セラミド類の良溶媒が、水溶性有機溶媒である<10>に記載の水性化粧料の製造方法。
<12> 前記油相成分と前記水相成分との混合が、最も狭い部分の断面積が1μm以上1mm以下であるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合するものである<9>〜<11>のいずれかに記載の水性化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微少な粒径を有するセラミド類含有粒子が安定に分散され、沈殿物を生じることなく適用態様に応じた粘度を呈する水性化粧料、及び該水性化粧料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水性化粧料は、下記(1)、(2)、及び(3)を少なくとも含み、
且つ25℃での液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲である水性化粧料である。
(1)セラミド類を少なくとも含有し、油相成分として水相中に分散される体積平均粒子径が2nm以上150nm以下のセラミド類含有粒子(なお、以下では、単に「セラミド類含有粒子」と称する場合がある。)
(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
(3)水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下含まれる天然多糖類
【0010】
本発明の水性化粧料は、(1)セラミド類含有粒子と、(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩と、を含むことで、セラミド類含有粒子が系中に安定に分散される。さらに、本発明の水性化粧料は、(3)天然多糖類を特定量含有することにより、セラミド類を含有するにも拘らず、沈殿物を生じることなく、液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲にあるという優れた効果を発揮する。
【0011】
本発明の水性化粧料は、液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲であり、200mPa・s以上1800mPa・s以下の範囲がより好ましく、200mPa・s以上1500mPa・s以下の範囲がさらに好ましい。液粘度の調整は、(3)天然多糖類の種類及び含有量により調整することができる。
【0012】
本発明の水性化粧料が有する液粘度が上記範囲であることで、例えば、当該水性化粧料をその好適な充填容器の一つであるアトマイザー型の容器に充填した場合であれば、液詰まりや液飛散の無い良好な突出性が発揮される。
【0013】
ここで、本明細書における液粘度は、B型粘度計(TVB−10型、東機産業(株)製)を用い、以下の条件により測定した値である。
ローター:M2又はM3ローター(試料が示す液粘度が900mPa・s以下の場合は、M2ロータを使用し、試料が示す液粘度が900mPa・sを超える場合にはM3ロータを使用して測定する。)
回転数 :30rpm
測定温度:25℃
【0014】
本発明の水性化粧料は、セラミド類含有粒子が、油相成分として水相に分散されたエマルションの形態を採るものである。ここで、油相成分として含有される本発明におけるセラミド類含有粒子は、本発明で規定する範囲内の粒子径を有するものであれば、完全に溶解した油滴の状態であっても部分的に不溶の固形物であってもよい。このような油滴及び固形物を総称して、本明細書では分散粒子と称する場合がある。
【0015】
また、セラミド類含有粒子が分散される分散媒である水相には、水など水性媒体を主成分とする水溶液を用いることができ、水以外に高級アルコールや、本発明の効果を損なわない範囲の水溶性抗酸化剤及び植物抽出液等の水溶性機能性成分をさらに添加することが可能である。
【0016】
以下、本発明の水性化粧料が含む各成分について、さらに詳細に説明する。
【0017】
(1)セラミド類含有粒子
本発明におけるセラミド類含有粒子は、セラミド類を少なくとも含有し、油相成分として水相に分散される3nm以上150nm以下の体積平均粒径を有する粒子である。
【0018】
本発明におけるセラミド類は、セラミド及びその誘導体を包含するものであり、合成品、抽出品等の由来は問わない。本発明における「セラミド類」とは、後述する天然型セラミド及びこれを基本骨格として有する化合物、並びにこれらの化合物を派生しうる前駆物質を包含し、天然型セラミド、スフィンゴ糖脂質などの糖修飾セラミド、セラミド類似体、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシン、これらの誘導体を総称したものである。以下、本発明におけるセラミド類について詳述する。
【0019】
(天然型セラミド)
本発明において、天然型セラミドとは、ヒトの角層に存在するものと同じ構造を有するセラミドのことを意味する。また、天然型セラミドのより好ましい態様は、スフィンゴ糖脂質を包含せず、且つその分子構造中に水酸基を3個以上有する態様である。
以下、本発明に用いうる天然型セラミドについて詳細に説明する。
【0020】
本発明に好適に用いうる天然型セラミドの基本構造式の例を、下記(1−1)〜(1−9)に示す。
(1−1)はセラミド1、(1−2)はセラミド9、(1−3)はセラミド4、(1−4)はセラミド2、(1−5)はセラミド3、(1−6)はセラミド5、(1−7)はセラミド6、(1−8)はセラミド7、(1−9)はセラミド8として知られた化合物である。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
前記構造式は、それぞれのセラミドについての一例を示しているが、天然物であるために、実際にヒトや動物等に由来するセラミドは、上記アルキル鎖の長さには様々な変形例が存在し、上記骨格を有するものであれば、アルキル鎖長については、いかなる構造のものでもよい。
また、溶解性を付与するために分子内に二重結合を導入することや、浸透性を付与するために疎水基を導入することなど、上記セラミド類に目的に応じて、修飾を加えたものを用いることもできる。
【0024】
これら天然型と称される一般的な構造を有するセラミドは、天然物(抽出物)、微生物発酵法で得られたものあるが、合成物、動物由来のものをさらに含んでもよい。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いるが、さらに必要に応じて非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。
なお、本発明の水性化粧料を、皮膚のエモリエントなどの目的に使用する場合には、バリア効果の観点から、天然型の光学活性体をより多く使用するのが好ましい。
【0025】
このような天然型セラミドは、市販品としても入手可能であり、例えば、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社製)、Ceramide TIC-001(高砂香料社製)、CERAMIDE II(Quest International社製)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社製)、CERAMIDE2(セダーマ社製)等が挙げられ、また、前記例示化合物(1−5)は、「セラミド3」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として、前記例示化合物(1−7)は、「セラミド6」〔商品名、エボニック(旧デグサ)社製〕として入手可能である。
【0026】
セラミド類含有粒子が含有する天然型セラミドは、1種であっても、2種以上を併用してもよいが、セラミド類は一般に融点が高く、結晶性が高いことから、2種以上併用すると、乳化安定・取り扱い性の観点で好ましい。
【0027】
(糖修飾セラミド)
糖修飾セラミドは、分子内に糖類を含むセラミド化合物である。該セラミド化合物の分子内に含まれる糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトースなどの単糖類、ラクトース、マルトースなどの二糖類、さらには、これらの単糖類や二糖類をグルコシド結合により高分子化したオリゴ糖類、多糖類などが挙げられる。また、糖類としては、糖の単位におけるヒドロキシル基を他の基で置き換えた糖誘導体であっても構わない。このような糖誘導体としては、例えば、グルコサミンやクルクロン酸、N-アセチルグルコサミンなどがある。
中でも、分散安定性の観点から、糖単位の数が1〜5である糖類が好ましく、具体的には、グルコース、ラクトースが好ましく、グルコースがより好ましい。
糖修飾セラミドの具体例としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
糖修飾セラミドは、合成によっても、市販品としても入手可能である。例えば、上記例示化合物(4−1)は、岡安商店、「コメスフィンゴ糖脂質」(商品名)として入手可能である。
【0030】
(セラミド類似体)
セラミド類似体は、セラミドの構造を模倣して合成されたものである。このようなセラミド類似体の公知の化合物としては、例えば、下記構造式に示されるようなセラミド類似体を使用することもできる。
【0031】
【化4】

【0032】
セラミド類似体を適用する場合、例えば、本発明の水性化粧料の使用感と保湿感等の観点からは、天然型セラミドや糖修飾セラミドの類似体であることが好ましく、天然型セラミドの類似体であることがより好ましい。
【0033】
(スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン)
スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンとしては、合成品、天然品を問わず、天然型のスフィンゴシン、スフィンゴシン類縁体を使用することができる。
【0034】
天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)、アセチル化体等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。具体例としては、例えば、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び以下に記載の例示化合物を挙げることができる。
【0035】
【化5】

【0036】
フィトスフィンゴシンとしては、天然からの抽出品、合成品のいずれを用いてもよい。また、合成によっても、市販品としても入手可能である。
天然型スフィンゴシン類の市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DSphytosphingosine(DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられ、さらに、前記例示化合物(5−5)は、エボニック(旧デグサ)社製、「フィトスフィンゴシン」(商品名)として入手可能である。
【0037】
−酸−
本発明において、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンなどのスフィンゴシン類を使用する場合には、その化合物と塩を形成しうる酸性残基を有する化合物を併用することが好ましい。酸性残基を有する化合物としては、無機酸又は炭素数5以下の有機酸が好ましい。
無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられ、リン酸、塩酸が好ましい。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン40酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。これらの化合物としては、リン酸、塩酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましく、特に乳酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が好ましい。
併用される酸は、スフィンゴシン類とあらかじめ混合して用いてもよく、セラミド類縁体含有粒子の形成時に添加してもよく、セラミド類含有粒子形成後にpH調整剤として添加して使用してもよい。
酸を併用する場合、添加量としては、用いられるスフィンゴシン類100質量部に対して、1〜50質量部程度であることが好ましい。
【0038】
−セラミド類の含有量−
本発明において、セラミド類含有粒子は、セラミド類を油相に含まれる油成分の全質量に対して50質量%以上含有することが好ましい。本発明の水性化粧料を使用する際におけるセラミド成分の経皮からの効率的な吸収、及びセラミドに起因する効果発現の期待の観点からは、油相に含まれる油成分の全質量に対して、セラミド類を50質量%以上100質量%以下含有することがより好ましく、75質量%以上100質量%以下含有することが更に好ましい。本発明においては、高濃度でセラミド類含有粒子に含有されるセラミド類全質量のうち、前記天然型セラミドが50質量%以上であることが天然型セラミドの効果発現の期待の観点から好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0039】
ここで、本発明の水性化粧料において、油相中に含まれる油成分とは、油相に含まれる成分のうち、本発明における天然型セラミド及びこれと併用しうる後述のセラミド類縁体等のセラミド類はもとより、後述される他の油成分を含む各種油成分(例えば、脂溶性カロチノイド、脂溶性ビタミン、ユビキノン類、脂肪酸類、油脂類)などのセラミド分散物の適用目的に応じた物性や機能性を有する油成分を意味する。但し、油相を調製するために用いうる成分のうち、界面活性剤、水溶性有機溶媒は、本発明における油成分には包含されない。
【0040】
なお、本発明の水性化粧料中におけるセラミド類の含有量としては、0.01質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下の範囲であることより好ましい。水性化粧料中に、セラミド類を上記範囲で含有することで、例えば、当該化粧料を使用した際において、使用者の感触の観点から好ましいものとなる。
【0041】
−粒径−
セラミド類含有粒子は、その体積平均粒径が2nm以上150nm以下であり、3nm以上150nm以下が好ましく、5nm以上120nm以下がより好ましく、5nm以上100nm以下が最も好ましい。
セラミド類含有粒子の粒径を2nm以上150nm以下とすることにより、水性化粧料の透明性が確保されると共に、皮膚吸収性などの水性化粧料に所望とされる効果を良好に発揮することができる。
【0042】
セラミド類含有粒子の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。
粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0043】
本発明におけるセラミド類含有粒子の粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用すること好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0044】
本発明におけるセラミド類含有粒子の粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値であり、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
即ち、セラミド類含有粒子の粒径の測定方法は、本発明の水性化粧料から分取した試料に含まれる油成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
【0045】
セラミド類含有粒子の形成態様としては、1)セラミド類含有粒子(油相)を予め固体粒子として形成した後、分散媒(水相)に分散させる態様の他、2)セラミド類を加熱して溶融状態とするか、或いは、適切な溶剤に溶解して液状とした後、水相に添加して分散させ、その後、常温に降温するか、或いは、溶剤を除去することで、セラミド類含有粒子を系中で形成する態様が挙げられる。また、天然型セラミド等は、他の油成分と相溶させるか、有機溶剤に溶解して調製する方が好ましい。
【0046】
(他の油成分)
本発明の水性化粧料は、水相に、セラミド類含有粒子を分散させて油相として構成されるものであるが、油相中に前記した天然型セラミド等のセラミド類とは異なる油成分(本明細書においては、適宜、他の油成分と称する。)及び/又は溶媒を含有させて、該油成分及び/又は溶媒中に、天然型セラミドを含む油滴様の分散粒子が、天然型セラミド類含有粒子として存在する形態を採ることもできる。なお、かかる形態を採る場合、本発明におけるセラミド類含有粒子の平均粒径とは、セラミド類含有粒子を含む油滴様の分散粒子の平均粒径を意味する。
【0047】
なお、本発明における「他の油成分」とは、常温では、セラミド類とは分離しない油成分を指し、「溶媒」とはセラミド類を溶解できる溶媒のことをいい、たとえばアルコール類が挙げられる。
ここで、本発明において併用しうる他の油成分には特に制限はない。他の油成分としては、例えば、水性化粧料の使用目的に応じて添加される有効成分としての油成分であってもよく、また、分散安定性、皮膚に対する使用感の改善、水性化粧料の物性制御のために用いられる油成分であってもよい。以下、本発明に使用しうる他の油成分について述べる。なお、本発明における「(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩」のうち、炭素数10〜30の脂肪酸は、他の油成分としてセラミド含有粒子に含有されてもよい。炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩の詳細については後述する。
【0048】
(有効成分としての油成分)
本発明においては、水性媒体、特に水に不溶又は難溶の、化粧品用機能性材料を油成分として含むことが好ましい。本発明の水性化粧料が、例えば、後述するカロチノイド類等の機能性油成分を含むことで、本発明の水性化粧料に優れたエモリエント効果、皮膚の老化防止効果や酸化防止効果を付与することができる。
本発明で使用することのできる油成分としては、水性媒体、特に水に不溶又は難溶の、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定は無いが、カロチノイド類、トコフェロール等の油溶性ビタミンを含むラジカル捕捉剤、またココナッツ油等の油脂類が好ましく用いられる。
なお、水性媒体に不溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01gであることをいい、水性媒体に難溶とは、水性媒体100mLに対する溶解度が、25℃において、0.01gを超え0.1g以下であることをいう。
【0049】
−カロチノイド類−
有効成分としての油成分としては、天然色素を含むカロチノイド類を好ましく用いることができる。
本発明の水性化粧料に使用可能なカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリア等の天然物のものを含む。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロチノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
【0050】
カロチノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
カロチノイド類としては、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0051】
カロチノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばシス・トランス混合物である。
カロチノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロチノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0052】
なお、上記のカロチノイド類は、セラミド類含有粒子に含有させる他、セラミド類含有粒子とは別に、水性化粧料中に含有させてもよい。
【0053】
−油脂類−
他の油成分として用いられる油脂類としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
上記の中でも、水性化粧料における分散粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドである、ココナッツ油が、好ましく用いられる。
【0054】
本発明において、前記油脂は市販品を用いることができる。また、本発明において、前記油脂は1種単独で用いても混合して用いてもよい。
【0055】
前記フェノール性OHを有する化合物として、ポリフェノール類(例えば、カテキン)、グアヤク脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、没食子酸エステル類、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ビタミンE類及びビスフェノール類等が挙げられる。没食子酸エステル類として、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル及び没食子酸オクチルが挙げられる。
【0056】
アミン系化合物としてフェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンが挙げられ、ジフェニル−p−フェニレンジアミン又は4−アミノ−p−ジフェニルアミンがより好ましい。
【0057】
アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体としては、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル、などが挙げられる。
【0058】
以上の中でも、安全性、及び、酸化防止の機能に優れる観点から、特にビタミンE類が好ましく用いられる。
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0059】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0060】
これらのビタミンE類は、油溶性酸化防止剤として水性化粧料の特に油相に含まれていることが、効果的に油成分の酸化防止機能を発揮することができるため好ましい。上記ビタミンE類の中でも酸化防止効果の観点から、トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選択されたものを少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
【0061】
以上説明した、カロチノイド類、油脂類等の他の油成分の含有量は、本発明の水性化粧料の剤型に応じて適宜設定することができる。
【0062】
(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
本発明の水性化粧料は、炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩(以下、適宜「脂肪酸成分」と総称する場合がある。)を含有する。このような脂肪酸成分であれば、水性化粧料を調製する際に、油相成分及び水相成分の混合工程において系中に容易に溶解するので、水性化粧料に含まれる微細なセラミド類含有粒子の分散安定性を良好にすることができる。このため、例えば、水性化粧料に透明性が要求される場合においても、透明性が損われることがない。
【0063】
脂肪酸成分として、炭素数10〜30の脂肪酸が適用される場合、該脂肪酸は油相成分として水性化粧料に含まれ、前記セラミド含有粒子に構成成分の一つとして含まれることが好ましい。また、脂肪酸成分として、炭素数10〜30の脂肪酸の塩(脂肪酸塩)が適用される場合、該脂肪酸塩は、水性媒体に可溶であるので水性化粧料の水相成分とすることができる。本発明における脂肪酸成分としては、炭素数10〜30の脂肪酸又はその塩を単独で含んでもよいし、双方を併用してもよい。
【0064】
炭素数10〜30の脂肪酸としては、飽和又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
乳化及び分散安定性の観点からは、炭素数10〜30の脂肪酸としては、30℃で液体である脂肪酸であることが好ましい。
【0065】
本発明における脂肪酸成分として具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸等、及びこれらの塩を例示することができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、色味、臭い、及び皮膚刺激性の観点から、本発明における脂肪酸成分としては、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましく、オレイン酸であることが特に好ましい。
【0066】
脂肪酸成分として脂肪酸塩を適用する場合、該脂肪酸塩を構成する塩構造としては、ナトリウム、カリウム等の金属塩や、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−リジン等の塩基性アミノ酸塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。塩の種類は、用いられる脂肪酸の種類等により適宜選択されるが、溶解性及び分散性の観点からは、ナトリウムなどの金属塩が好ましい。
【0067】
本発明の水性化粧料に含まれる脂肪酸成分は、セラミド類を良好に分散可能にする量で含有されていればよく、保存安定性及び透明性の観点から、セラミド類の全質量に対して0.01倍量以上1.0倍量以下であることが好ましく、保存安定性の観点から0.05倍量以上0.5倍量以下であることがより好ましい。
脂肪酸成分の含有量をセラミド類の全質量に対して1.0倍量以下とすることにより、過剰な脂肪酸の分離、析出を抑制することができ、一方、0.01倍量以上とすることによりセラミドへの定着が充分となって好ましい。
【0068】
また、水性化粧料の透明性の観点からは、脂肪酸成分の含有量は、水性化粧料の全質量の0.00001質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.00005質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
(3)天然多糖類
本発明の水性化粧料は、天然多糖類を水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下含有する。天然多糖類を含有することにより、本発明の水性化粧料は、セラミド類を含有するにも拘らず、沈殿物を生じることなく、液粘度を200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲とすることができる。
【0070】
ここで、本発明において、天然多糖類とは、天然由来の成分を原料とする多糖類を指す。天然由来の成分とは、培養法で製造・抽出してもよいし、植物・微生物等から抽出したものなどをさす。これらを原料に合成的手法により修飾を施したものも含む。
【0071】
本発明における天然多糖類は、粘度の観点から、高分子であることが好ましく、重量平均分子量が5000以上のものが好ましく、5000〜3000000の範囲のものが好ましく、10000〜2000000の範囲のものがより好ましい。そのような、天然多糖類として具体的には、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カラヤガム、キャロブガム、セルロース系高分子、コーンスターチ類等の植物系の天然多糖高分子;キサンタンガム、デキストラン、プルラン、カードラン、サクシノグルカン、レバン、等の微生物系の天然多糖高分子;ガラクタン、キチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、ふのり等の海草海産物系の天然多糖高分子;コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類が好ましい。
【0072】
これらの天然多糖類のうちでも、粘度の保持と保湿性の観点からは、ヒアルロン酸、キサンタンガム、及びセルロース系高分子からなる群から選択された少なくとも1つの天然多糖類であることが好ましい。
ヒアルロン酸としては、重量平均分子量が30000以上のものが好ましく、より好ましい重量平均分子量は300000以上である。ヒアルロン酸としては、市販品を適用することもでき、例えば、キューピー(株)製のヒアルロンサンQ−5、ヒアルロンサンQ−5AQ、ヒアロロンサンHA−LQ、L510、LQH、HA−Q、HA−QSS、HA−M5070、(株)資生堂製のバイオヒアルロン酸HA9、HA12、HA20、バイオヒアルロン酸1%水溶液、(株)紀文フードケミファ製のFCHシリーズ等が挙げられる。
キサンタンガムとしては、重量平均分子量が100000以上のものが好ましく、より好ましい重量平均分子量は100000〜500000の範囲である。キサンタンガムとしては、市販品を適用することもでき、例えば、大日本住友製薬(株)製のエコーガムシリーズ、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のサンエースシリーズ等が挙げられる。
セルロース系高分子としては、市販品を適用することもでき、例えば、ダイセル化学工業(株)製のヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を用いた。
【0073】
また、セラミド類含有粒子の凝集抑制の観点からは、天然多糖類は、その分子構造中にカチオン性基を持たないことが好ましい。
カチオン性基としては、例えば、1級〜3級アミノ基、4級アンモニウム基等が挙げられる。
【0074】
天然多糖類は、水性化粧料中に、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
【0075】
本発明の水性化粧料中における天然多糖類の含有量は、水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下であり、0.1質量%以上0.6質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。
【0076】
(4)界面活性剤
本発明の水性化粧料には、界面活性剤が含まれていてもよい。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、本発明の水性化粧料における油相成分として含有することができる。
【0077】
このような非イオン性界面活性剤は、中でも、乳化安定性の観点からポリグリセリン酸脂肪酸エステルであることが好ましく、特にHLBが10以上16以下のポリグリセリン脂肪酸エステル(以下、適宜、「特定ポリグリセリン脂肪酸エステル」と称する。)であることがより好ましい。該ポリグリセリン脂肪酸エステルは油相に含有してもよい。
【0078】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤は、油相/水相の界面張力を大きく下げることができ、その結果、油相として水性化粧料中に含まれるセラミド類含有粒子の粒径を細かくすることができる点で好ましい。
【0079】
ここで、HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0080】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0081】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0082】
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、その少なくとも一つが、平均重合度が10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸とのエステルであることが特に好ましい。
【0083】
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのHLBは10以上16以下である。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
本発明においては、これらの特定ポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は2種以上用いることができる。
【0084】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、デカグリセリンオレイン酸エステルが最も好ましく、その例としては、例えば、デカグリセリンモノリノール酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=15.5)が挙げられる。
【0085】
本発明における界面活性剤としては、HLBが10以上16以下のポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種と、それとは分子構造の異なるHLBが5以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される1種以上とを組み合わせてもよい。なお、該HLBが5以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、上述したポリグリセリン脂肪酸エステルに包含されるポリグリセリン脂肪酸エステルあってもよいし、それ以外のポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
【0086】
さらに、本発明においては、界面活性剤として、デカグリセリンオレイン酸エステル、及び、グリセリンの重合度が10未満であり、且つ脂肪酸の炭素数が12〜18のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する態様が好ましい。該グリセリンの重合度が10未満であり、且つ脂肪酸の炭素数が12〜18のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及びテトラグリセリン脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種であり、且つそのHLBが5.0以上15以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであることがより好ましい。
【0087】
デカグリセリンオレイン酸エステルと好適に併用される、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及びテトラグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=6)、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=6)、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=14.5)、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=11)、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=9)、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=9)が挙げられる。
【0088】
本発明において、デカグリセリンオレイン酸エステルと、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル及び/又はテトラグリセリン脂肪酸エステルとを併用する場合、その含有比率は、セラミド分散物の適用形態に応じて、適宜に設定することができるが、(デカグリセリン脂肪酸エステル)/(テトラグリセリン脂肪酸エステル及び/又はヘキサグリセリン脂肪酸エステル)=1/0〜1/1の範囲が好ましく、より好ましくは1/0.5であり、更に好ましくは1/0.25である。
【0089】
特定ポリグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を適用することもできる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO−CV、NIKKOL DGMO−90V、NIKKOL DGDO、NIKKOL DGMIS、NIKKOL DGTIS、NIKKOL Tetraglyn 1−SV、NIKKOL Tetraglyn 1−O、NIKKOL Tetraglyn 3−S、NIKKOL Tetraglyn 5−S、NIKKOL Tetraglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn 1−L、NIKKOL Hexaglyn 1−M、NIKKOL Hexaglyn 1−SV、NIKKOL Hexaglyn 1−O、NIKKOL Hexaglyn 3−S、NIKKOL Hexaglyn 4−B、NIKKOL Hexaglyn 5−S、NIKKOL Hexaglyn 5−O、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、NIKKOL Decaglyn 2−SV、NIKKOL Decaglyn 2−ISV、NIKKOL Decaglyn 3−SV、NIKKOL Decaglyn 3−OV、NIKKOL Decaglyn 5−SV、NIKKOL Decaglyn 5−HS、NIKKOL Decaglyn 5−IS、NIKKOL Decaglyn 5−OV、NIKKOL Decaglyn 5−O−R、NIKKOL Decaglyn 7−S、NIKKOL Decaglyn 7−O、NIKKOL Decaglyn 10−SV、NIKKOL Decaglyn 10−IS、NIKKOL Decaglyn 10−OV、NIKKOL Decaglyn 10−MAC、NIKKOL Decaglyn PR−20、
【0090】
三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル、L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DP、DS13W、DS3、HS11、HS9、TS4、TS2、DL15、DO13、太陽化学(株)社製サンソフトQ−17UL、サンソフトQ−14S、サンソフトA−141C、理研ビタミン(株)社製ポエムDO−100、ポエムJ−0021などが挙げられる。
【0091】
上記の中でも、好ましくは、NIKKOL Decaglyn 1−L、NIKKOL Decaglyn 1−M、NIKKOL Decaglyn 1−SV、NIKKOL Decaglyn 1−50SV、NIKKOL Decaglyn 1−ISV、NIKKOL Decaglyn 1−O、NIKKOL Decaglyn 1−OV、NIKKOL Decaglyn 1−LN、リョートーポリグリエステル L−7D、L−10D、M−10D、P−8D、SWA−10D、SWA−15D、SWA−20D、S−24D、S−28D、O−15D、O−50D、B−70D、B−100D、ER−60D、LOP−120DPである。
【0092】
さらに、他の非イオン性界面活性剤の例としては、他のグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。より好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。また、これらの界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0093】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0094】
ソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL SL−10、SP−10V、SS−10V、SS−10MV、SS−15V、SS−30V、SI−10RV、SI−15RV、SO−10V、SO−15MV、SO−15V、SO−30V、SO−10R、SO−15R、SO−30R、SO−15EX、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲン30V、40V、50V、90、110、花王(株)社製の、レオドールAS−10V、AO−10V、AO−15V、SP−L10、SP−P10、SP−S10V、SP−S30V、SP−O10V、SP−O30Vなどが挙げられる。
【0095】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0096】
ショ糖脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステル S−070、S−170、S−270、S−370、S−370F、S−570、S−770、S−970、S−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−070、P−170、P−1570、P−1670、M−1695、O−170、O−1570、OWA−1570、L−195、L−595、L−1695、LWA−1570、B−370、B−370F、ER−190、ER−290、POS−135、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F−A50、F−20W、F−10、F−A10E、コスメライクB−30、S−10、S−50、S−70、S−110、S−160、S−190、SA−10、SA−50、P−10、P−160、M−160、L−10、L−50、L−160、L−150A、L−160A、R−10、R−20、O−10、O−150等が挙げられる。
上記の中で、好ましくは、リュートーシュガーエステルS−1170、S−1170F、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、L−1695、DKエステルSS、F160、F140、F110、コスメライクS−110、S−160、S−190、P−160、M−160、L−160、L−150A、L−160A、O−150である。
【0097】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0098】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL TL−10、NIKKOL TP−10V、NIKKOL TS−10V、NIKKOL TS−10MV、NIKKOL TS−106V、NIKKOL TS−30V、NIKKOL TI−10V、NIKKOL TO−10V、NIKKOL TO−10MV、NIKKOL TO−106V、NIKKOL TO−30V、花王(株)社製の、レオドールTW−L106、TW−L120、TW−P120、TW−S106V、TW−S120V、TW−S320V、TW−O106V、TW−O120V、TW−O320V、TW−IS399C、レオドールスーパーSP−L10、TW−L120、第一工業製薬(株)社製の、ソルゲンTW−20、TW−60V、TW−80V等が挙げられる。
【0099】
(5)多価アルコール
本発明の水性化粧料は、セラミド類含有粒子の粒子径、分散安定性及び保存安定性、並びに防腐性の観点から多価アルコールを含有することが好ましい。
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
以上より、水性化粧料が多価アルコールを含有することは、水性化粧料に含まれる分散粒子の粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、水性化粧料の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0100】
本発明に使用できる多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0101】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、例えば、本発明の水性化粧料を皮膚に適用する場合であれば、皮膚吸収性をより高いものとすることができる。
【0102】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、水性化粧料中の分散粒子の粒径がより小さくなり、かつ該粒径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、好ましい。
【0103】
多価アルコールの含有量は、前述の粒子径、安定性、防腐性に加えて、ナノセラミド分散物、組成物の粘度の観点から、水性化粧料の全質量に対して5質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
多価アルコールの含有量が5質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、充分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、最大限の効果が得られ、水性化粧料の粘度が所望の範囲以上に高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0104】
(6)多糖類脂肪酸エステル
本発明の水性化粧料は、多糖類脂肪酸エステルを含んでもよい。本発明の水性化粧料のような乳化・分散物は、一般に、種々の機能を有する各成分を安定して処方するため、各種の有機塩又は無機塩の形態で処方することがある。このように有機塩又は無機塩が多くなると、この塩により、白濁、凝集、沈澱、増粘、分離といった現象、いわゆる塩析が起こりやすくなるしやすくなる傾向がある。特に、透明性を重視した処方の場合には、このような塩析は透明性を損なうことがある。本発明の水性化粧料が、多糖類脂肪酸エステルを含有するを含有する場合には、分散安定性に加えて、各種有機又は無機塩を配合する場合であっても、いわゆる塩析を良好に抑制することができる。
また、セラミド分散物の析出抑制といった水性化粧料の経時安定性を向上させることも可能である。
【0105】
多糖類脂肪酸エステルにおいて、多糖類部分は、平均重合度が2〜140のグルコース又はフルクトースなどの糖単位で構成され、ショ糖などの二糖類、オリゴ糖、イヌリン(グルコースにフラクトースが2個から60個程度直鎖状につながったもの)、デンプン、及びデキストリンなどの六糖以上の多糖類を挙げることができる。塩を加えることに起因する、水性化粧料における塩析現象(即ち、白濁、凝集、沈澱、増粘、分離といった現象)の抑制効果の観点から、デキストリン、イヌリン又はこれらの組み合わせであることが好ましく、イヌリンであることが更に好ましい。イヌリンは、D−フルクトースを主要成分とするオリゴ糖であり、β−1,2結合したフラノイドフルクトースと、還元末端においてショ糖結合したα−D−グルコースを有する構造を示すフラノイドフルクトース単位は一般に2〜60程度となる。
多糖類とエステルを形成する脂肪酸部分は、塩析の抑制効果の観点から、12以上18以下の炭素数の脂肪酸であることが好ましく、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エチルヘキサン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。
【0106】
このような多糖類脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、オリゴ糖脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル等を挙げることができ、イヌリン脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステルが好ましい。イヌリン脂肪酸エステルとしては、オクタン酸イヌリン、デカン酸イヌリン、ラウリン酸イヌリン、ミリスチン酸イヌリン、ラウリルカルバミン酸エステル、パルミチン酸イヌリン、ステアリン酸イヌリン、アラキン酸イヌリン、ベヘン酸イヌリン、オレイン酸イヌリン、2−エチルへキサン酸イヌリン、イソミリスチン酸イヌリン、イソパルミチン酸イヌリン、イソステアリン酸イヌリン、イソオレイン酸イヌリンなどを挙げることができる。本発明の多糖類脂肪酸エステルとしては、水性化粧料の安定性の観点から、ステアリン酸イヌリン、ラウリルカルバミン酸エステル、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/オクタン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリンが好適であり、ラウリルカルバミン酸イヌリンが最も好ましい。
【0107】
ラウリルカルバミン酸イヌリンは、HLB値が約8で、油性成分に対する溶解性は低いが、分散性は良好で、水に対する溶解性も低く、水相中で凝集する。そして水中油型エマルション中では、イヌリン骨格が水和化されることによって、ラウリルカルバミン酸イヌリンが分散粒子の表面に位置して立体的バリアを形成し、その立体的バリアによって、水相中で分散粒子を包囲したような乳化構造を形成する。
【0108】
多糖類脂肪酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせ使用することができる。また、多糖類脂肪酸エステルの含有量は、セラミド分散物中のセラミド類に対して0.1倍量以上2倍量以下とすることができ、水性化粧料の安定性の観点からの観点から0.5倍量以上1.5倍量以下とすることが更に好ましい。また多糖類脂肪酸エステルは、セラミド分散物全質量の0.05質量%以上2質量%以下であることが、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが更に好ましい。0.05質量%以上とすることによって効果が充分に期待でき、2質量%以下とすることによりセラミド分散物を適度な粘度に維持することがきるため、それぞれ好ましい。
【0109】
多糖類脂肪酸エステルは、水相及び油相のいずれに添加してもよく、選択された多糖類脂肪酸エステルの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ラウリルカルバミン酸イヌリンは水相成分として本分散物に含有可能であり、パルミチン酸デキストリンは油相成分として本分散物に含有可能である。
【0110】
(7)水溶性有機溶媒
本発明の水性化粧料は、水溶性有機溶媒を含有していてもよい。なお、本明細書における「油成分」には包含されない。
本発明における水溶性有機溶媒は、天然成分を含む油相として、後述する水性溶液との混合に用いられる。この水性有機溶媒は同時に、天然成分を抽出する抽出液の主成分である。即ち、本発明において天然成分は、水溶性有機溶媒を主成分とする抽出液へ抽出された状態で、水性溶液との混合に使用される。
【0111】
本発明に用いられる水溶性有機溶媒とは、水に対する25℃での溶解度が10質量%以上の有機溶媒を指す。水に対する溶解度はできあがった分散物の安定性の観点から30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、複数の水溶性有機溶媒の混合溶媒でもよい。また、水との混合物として用いてもよい。水との混合物を用いる場合には、上記水溶性有機溶媒は、少なくとも50容量%以上含まれていることが好ましく、70容量%以上であることがより好ましい。
【0112】
水溶性有機溶媒は、後述する水性化粧料の製造方法において、セラミド分散物を調製する際に、油相成分を混合して油相を調製するために好ましく用いられ、水相との混合後には除去されることが好ましい。
【0113】
このような水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品への用途に限定した場合、エタノール、プロピレングリコール、又はアセトンが好ましく、エタノール、又はエタノールと水との混合液が特に好ましい。
【0114】
(8)その他の成分
上記した各成分の他、本発明の水性化粧料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、水性化粧料の用途に応じて、例えば、種々の薬効成分、防腐剤、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
そのような他の添加物としては、例えば、グリシンベタイン・キシリトール・トレハロース・尿素・中性アミノ酸・塩基性アミノ酸等の保湿剤、アラントイン等の薬効剤、セルロースパウダー・ナイロンパウダー・架橋型シリコーン末・架橋型メチルポリシロキサン・多孔質セルロースパウダー・多孔質ナイロンパウダー等の有機粉体、無水シリカ・酸化亜鉛・酸化チタン等の無機粉体、メントール・カンファー等の清涼剤などの他、植物エキス、pH緩衝剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素等が挙げられる。
【0115】
本発明の水性化粧料において、セラミド類含有粒子を、油相に他の油成分とともに用いる場合には、油相として含有される分散粒子の粒子径は、水性化粧料に含有される成分による因子以外に、後述するセラミド分散物の製造方法における攪拌条件(剪断力・温度・圧力)やマイクロミキサーの使用条件、油相と水相比率、などの要因によって目的とする150nm以下の微細化された油相粒子を得ることができる。
【0116】
本発明の水性化粧料の透明性は、外観を目視することによって概略判断することができるが、一般に、水性化粧料の濁度により判断することができる。水性化粧料の濁度は、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550((株)島津製作所製)を使用し、10mmセルにて、25℃における660nmの吸光度として測定することができる。本発明の水性化粧料が透明であることは、この660nmの吸光度による測定で0.050以下とする。水性化粧料の透明性としては、好ましくは0.040以下である。
【0117】
本発明の水性化粧料のpHは、5.0以上9.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH6.0以上8.5以下である。水性化粧料のpHはこの範囲内にすることにより、良好な分散安定性及び保存安定性を示す水性化粧料となる。水性化粧料のpHをこの範囲に調整するために、各種pH調整剤を用いてもよい。
pH調整剤は、水性化粧料の製造工程において、pHを所定の範囲内となるように、油相又は水相を調製する際に添加・配合してもよく、得られた水性化粧料に対して直接添加してもよい。使用可能なpH調整剤としては、塩酸、リン酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ等、この分野で通常用いられる各種無機塩類や、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等を用いることができる。
【0118】
<水性化粧料の製造方法>
本発明の水性化粧料は、脂肪酸若しくはその塩と、油相成分として水相中に分散されたセラミド類含有粒子と、少なくとも天然多糖類を含む水相成分と、で構成されていれば如何なる方法で製造してもよい。
【0119】
本発明の水性化粧料の好適な製造方法の一つは、微細で良好な分散安定性を示すセラミド類含有粒子を容易に形成しうるという観点から、脂肪酸若しくはその塩と油相成分として水相中に分散されたセラミド類含有粒子とを含むセラミド分散物を予め製造した後に、他の必須成分又は任意成分を含む水性組成物と混合する方法である。
この方法を採る場合、水性組成物としては、水などの水性媒体を主成分とする水溶液を用いることができ、上述した天然多糖類、多価アルコール等を含むものとして構成することができる。水性組成物は、セラミド分散物の水相成分との関係において適宜選択することができる。
また、セラミド分散物と水性組成物との配合比率は、前記した各成分の含有量が、上述した水性化粧料中の含有量の範囲内となれば如何なる配合比率で混合してもよいが、一般に、1:0.1〜1:10000とすることが好ましく、1:0.1〜1:1000とすることが更に好ましい。
【0120】
以下、本発明の水性化粧料の好適な製造方法に用いうるセラミド分散物に関して、更に詳細に説明する。
【0121】
−セラミド分散物−
水性化粧料を製造する際に調製されるセラミド分散物は、油相成分として水相中に分散されたセラミド類含有粒子と、油相成分又は水相成分である脂肪酸成分とを含む透明なセラミド分散物であり、少なくともセラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合することを含む製造方法により得ることができる。
本方法によれば、40℃以下の温度で油相成分と水相成分とを混合するので、油相成分が良好に溶解すると共に、経時安定性及び保存安定性に優れたセラミド分散物を得ることができる。
【0122】
油相を調製する際には、セラミド類を溶解させるための前述した水溶性有機溶媒を好ましく用いることができる。この目的で使用される水溶性有機溶媒としては前述したものをそのまま例示することができる。
【0123】
水相成分と油相成分との混合は、100MPa以上の剪断力を付加する高圧乳化法や、水相成分に油相成分を直接注入するジェット注入法などを公知の方法を用いてもよいが、油相成分及び水相成分を各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm以上1mm以下であるマイクロ流路に通過させた後、各相を組み合わせて混合するマイクロミキサーを用いた方法を用いることが、セラミド類含有粒子の粒子径、分散安定性、保存安定性の観点からこのましい。
このとき、水相の粘度は30mPa・s以下であることが、セラミド類含有粒子の微粒子化の観点から好ましい。
【0124】
セラミド分散物を調製する際において油相成分と水相成分との混合時の温度は40℃以下であることが好ましい。この混合時の40℃以下の温度は、油相成分と水相成分とを混合する際に達成できればよいが、適用される混合(乳化)方法によって設定される領域を適宜変更することができる。マイクロミキサーを用いた方法では、少なくとも混合直前から分散直後までの領域における温度を40℃以下とすればよい。
【0125】
セラミド分散物の製造方法としては、例えば、a)脂肪酸塩(存在する場合)を含む水性媒体(水等)を用いて水相を調製し、b)少なくともセラミド類を含む油相成分を用いて油相を調製し、c)前記油相と、前記水相とを、マイクロミキサーを用いて、後に詳述する方法にて混合して分散を行い、体積平均粒径が1nm以上100nm以下のセラミド類含有粒子(分散粒子)を含むセラミド分散物(エマルション)を得るステップが挙げられる。
【0126】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を上記範囲とすることにより、有効成分を充分に含み、実用上充分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0127】
セラミド分散物を用いて粉末状態の組成物を得たい場合は、上記により得られたエマルション状態のセラミド分散物を噴霧乾燥等により乾燥させるステップを追加することで、粉末状態の組成物を得ることができる。
セラミド分散物の製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明のセラミド分散物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組合せがより好ましい。
【0128】
[マイクロミキサー]
セラミド分散物の製造に適用される製造方法においては、1nm以上100nmの天然型セラミド類含有粒子を安定に形成するため、油相成分と、水相成分とを、各々独立に、最も狭い部分の断面積が1μm以上1mm以下であるマイクロ流路に通過させた後に組み合わせて混合する製造方法をとることが好ましい。
油相成分と水相成分との前記混合は、より微小な分散粒子を得るとの観点から、対向流衝突による混合であることが好ましい。
対向流衝突により混合させる最も適切な装置は、対向衝突型マイクロミキサーである。マイクロミキサーは、主に2つの異なる液を微小空間中で混合するもので、一方の液が機能性油成分を含有する有機溶媒相であり、もう一方が水性溶液とする水相である。
マイクロ化学プロセスの一つである粒径が小さなエマルション調製にマイクロミキサーを適用した場合、比較的低エネルギーで発熱が少なく、通常の攪拌乳化分散方式や高圧ホモジナイザー乳化分散に比べて、粒径が揃っていて、保存安定性にも優れる良好なエマルション又はディスパージョンを得易い。熱劣化し易い天然成分を含む乳化に最適な方法である。
【0129】
マイクロミキサーを用いて乳化又は分散する方法の概要は、水相と油相とをそれぞれ微小空間に分け、それぞれの微小空間同士を接触、あるいは衝突させることにある。これは、片方だけを微小空間に分け、もう一方がバルクであるような方法である、膜乳化法やマイクロチャネル乳化法とは明らかに異なるものであり、実際に片方だけを微小空間に分けても本発明のような効果は得られない。公知となっているマイクロミキサーとしては、種々の構造のものがある。マイクロ流路中の流れと混合に着目すると、層流を維持してミキシングする方法と、流れを乱して、すなわち乱流でミキシングする方法の2種を挙げることができる。層流を維持してミキシングする方法では、流路幅より流路深さの寸法を大きくとることで、2液の境界面積をなるべく大きくし、両層の厚さを薄くすることで混合の効率化を図っている。また、2液の入り口を多数に分割して交互に流す多層流にする方法も考案されている。
【0130】
一方、乱流でミキシングする方法では、それぞれの液を狭い流路に分けて比較的高速で流す方法が一般的である。アレイ化したマイクロノズルを用いて片方の液を、微小空間に導入されたもう一方の液中に噴出させる方法も考案されている。また、高速で流れる液同士を種々の手段を用いて強制的に接触させる方法は特に混合効果が良好である。前者の層流を用いた方法は一般に、できる粒子は大きいが比較的分布が揃ったものになるが、後者の乱流を用いた方法は、非常に微細なエマルションが得る可能性があり、安定性及び透明性の点では乱流を用いた方法が好ましい場合が多い。乱流を用いた方法としては、櫛歯型と衝突型が代表的なものである。前記櫛歯型マイクロミキサーとしては、IMM社製に代表されるように、2つの櫛歯状の流路が対面して交互に入り組むように配置された構造となっている。
【0131】
KMミキサーに代表される衝突型マイクロミキサーでは、運動エネルギーを利用して強制接触をはかる構造となっている。具体的には、長澤ら(「H.Nagasawa et al, Chem.Eng.Technol,28,No.3,324−330(2005)」、特開2005−288254号公報)によって開示された、中心衝突型マイクロミキサーが挙げられる。水相と有機溶媒相とを対向衝突させる方法は、混合時間が極めて短く、瞬時に油相滴が形成されるため、極めて微細なエマルション又はディスパージョンを形成し易い。
【0132】
本発明において、衝突型マイクロミキサーでミクロ混合して乳化する場合、乳化時の温度(乳化温度)は、得られるエマルションの粒径均一性の観点からマイクロミキサーの前記別な微小空間の温度(マイクロミキサーのミクロ混合部の温度)を40℃以下としてミクロ混合することが好ましく、0℃〜40℃がより好ましく、5℃〜30℃が特に好ましい。前記乳化温度0℃以上とすることにより、分散媒の主体が水であるため、乳化温度管理でき好ましい。マイクロミキサーの前記微小空間の保温温度は40℃以下であることが好ましい。前記保温温度を40℃以下とすることにより、保温温度の管理が容易に制御でき、また、乳化性能に悪影響があるミクロな突沸現象を無くすことができる。前記保温温度は35℃以下の温度で制御することがさらに好ましい。
【0133】
本発明において、マイクロミキサーの微小空間に分けられる前後の水相、油相、及びマイクロミキサーの前記微小空間及び前記別な微小空間の保温温度を室温より高くして、ミクロ混合して乳化した後は、マイクロミキサーにより得られた水中油滴型エマルションは採取後、冷却して常温にすることは特に好ましい。
【0134】
本発明におけるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、1μm以上1mm以下であり、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm以上50,000μm以下が好ましい。
本発明における水相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、混合安定性の観点から、1,000μm以上50,000μm以下が特に好ましい。
油相に用いるマイクロミキサーの微小空間(流路)の最も狭い部分の断面積は、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープネス化の観点から、500μm以上20,000μm以下が特に好ましい。
【0135】
また、マイクロミキサーで混合(乳化分散)する場合、乳化分散時の油相と水相の流量としては、用いるマイクロミキサーによっても異なるが、エマルション粒径の微細化及び粒径分布のシャープ化の観点から、水相の流量としては、10ml/min以上500ml/min以下が好ましく、20ml/min以上350ml/min以下がより好ましく、50ml/min以上200ml/min以下が特に好ましい。
油相の流量としては、エマルション粒子径の微細化及び粒子径分布のシャープ化の観点から、1ml/min以上100ml/min以下が好ましく、さらには3ml/min以上50ml/min以下がより好ましく、5ml/min以上50ml/min以下が特に好ましい。
【0136】
両相の流量をマイクロチャンネルの断面積で割った値、すなわち両相の流速比(Vo/Vw)は、粒子の微細化とマイクロミキサーの設計上、0.05以上5以下の範囲であることが好ましい。但し、Voは水不溶性天然成分を含む有機溶媒相の流速であり、Vwは水相の流速である。また、流速比(Vo/Vw)が0.1以上3以下であることが、さらなる粒子の微細化の観点から最も好ましい範囲である。
【0137】
また、水相及び油相の送液圧力としては、水相と油相は0.030MPa以上5MPa以下と0.010MPa以上1MPa以下が好ましく、さらには、0.1MPa以上2MPa以下と0.02MPa以上0.5MPa以下がより好ましく、0.2MPa以上1MPa以下と0.04MPa以上0.2MPa以下が特に好ましい。前記水相の送液圧力を0.030MPa以上5MPa以下とすることにより、安定な送液流量を維持できる傾向となり、油相の送液圧力を0.010MPa以上1MPa以下とすることにより、均一な混合性が得られる傾向となり好ましい。
本発明において、前記流量、送液圧力及び保温温度はそれぞれ好ましい例の組み合せがより好ましい。
【0138】
次に、前記水相、油相がマイクロミキサーに導入され、水中油滴型エマルションとして排出されるまでの経路について、本発明におけるマイクロミキサーの一例としてマイクロデバイスの例(図1)を用いて説明する。
図1に示されるようにマイクロデバイス100は、それぞれが円柱状の形態の供給要素102、合流要素104及び排出要素106により構成されている。
供給要素102の合流要素104に対向する面には、本発明における油相又は水相の流路としての断面が矩形の環状チャネル108及び110が同心状に形成されている。供給要素102にはその厚さ(又は高さ)方向に貫通してそれぞれの環状チャンネルに至るボア112及び114が形成されている。
合流要素104には、その厚さ方向に貫通するボア116が形成されている。このボア116は、マイクロデバイス100を構成するために要素を締結した場合、供給要素102に対向する合流要素104の面に位置するボア116の端部120が環状チャンネル108に開口するようになっている。図示した態様では、ボア116は4つ形成され、これらが環状チャンネル108の周方向で等間隔に配置されている。
【0139】
合流要素104には、ボア116と同様にボア118が貫通して形成されている。ボア118も、ボア116と同様に、環状チャンネル110に開口するように形成されている。ボア118も環状チャンネル110の周方向で等間隔に配置され、かつ、ボア116とボア118が交互に位置するように配置されている。
合流要素104の排出要素106に対向する面122には、マイクロチャンネル124及び126が形成されている。このマイクロチャンネル124又は126の一端はボア116又は118の開口部であり、他方の端部は、面122の中心128であり、全てのマイクロチャンネルはこの中心128に向かってボアから延在し、中心で合流している。マイクロチャンネルの断面は、例えば矩形であってよい。
【0140】
排出要素106は、その中心を通過して厚さ方向に貫通するボア130が形成されている。従って、このボアは、一端にて合流要素104の中心128に開口し、他端にてマイクロデバイスの外部に開口している。
本マイクロデバイス100では、ボア112及び114の端部にてマイクロデバイス100の外部から供給される流体A及びBは、それぞれボア112及び114を経由して環状チャンネル108及び110に流入する。
【0141】
環状チャンネル108とボア116が連通し、環状チャンネル108に流入した流体Aは、ボア116を経由してマイクロチャンネル124に入る。また、環状チャンネル110とボア118が連通し、環状チャンネル110に流入した流体Bは、ボア118を経由してマイクロチャンネル126に入る。流体A及びBは、それぞれマイクロチャンネル124及び126に流入した後、中心128に向かって流れて合流する。
前記合流した流体は、ボア130を経由してマイクロデバイスの外部にストリームCとして排出される。
【0142】
このようなマイクロデバイス100は、下記のような仕様とすることができる。
環状チャンネル108の断面形状、幅/深さ/直径:矩形、1.5/1.5/25mm
環状チャンネル110の断面形状、幅、深さ、直径:矩形、1.5/1.5/20mm
ボア112の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア114の直径、長さ:1.5/10mm(円形断面)
ボア116の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
ボア118の直径、長さ:0.5/4mm(円形断面)
マイクロチャンネル124の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
350μm/100μm/12.5mm/35000μm
マイクロチャンネル126の断面形状、幅、深さ、長さ:矩形、断面積、
50μm/100μm/10mm/5000μm
ボア130の直径、長さ:500μm、10mm(円形断面)
【0143】
水相と油相が衝突するマイクロチャンネル(図1中、124及び126)の寸法は、水相及び油相の流量との関係において好ましい範囲が規定される。
【0144】
本発明においては、特開2004−33901号公報に示されるマイクロミキサーも好ましく用いることができる。
図2は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。図3は、T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
図2には、T字型マイクロリアクターのT字型流路200の断面が示されている。T字型流路200は、流入口202aから矢印Dの方向に流入した流体と、流入口202bから矢印Eの方向に流入した流体は、T字型流路200の流路内中央部で衝突し、混合して微細な流体粒子となる。微細な流体粒子は、流出口204から矢印Fの方向へ流出する。このT字型マイクロリアクターは、流路の容積が小さいときには混合するのに有用である。
【0145】
図3には、他のT字型マイクロリアクターの流体混合機構(概念)300が示されている。図3に示す流体混合機構は、2つの流路302aと302bから流出した流体が互いに衝突・混合して、微細な流体粒となるものである。すなわち、流体は、一方で、矢印Gの方向に流路302aに流入し、矢印Hの方向に流出する。他方で、矢印Iの方向に流路302bに流入し、矢印Jの方向に流出する。流路302aと302bからそれぞれ流出した流体は、衝突し、混合して、矢印G〜Jの方向とおよそ直交する方向に飛散する。流路図3に記載した流体混合機構は、霧化等の手法により拡散させた流体を衝突・混合させるものである。この衝突・混合により、流体はより微細となり、大きな接触面を得ることができる。
【0146】
セラミド分散物の製造に適用しうる製造方法では、用いられた水溶性有機溶媒は、マイクロ流路を通して乳化又は分散後、除去することが好ましい。溶媒を除去する方法としては、ロータリーエバポレーター、フラッシュエバポレーター、超音波アトマイザー等を用いた蒸発法、限外濾過膜、逆浸透膜等の膜分離法が知られているが、特に限外濾過膜法が好ましい。
【0147】
限外濾過(Ultra Filter:略してUF)とは、原液(水、高分子物質、低分子物質、コロイド物質等の混合水溶液)を加圧し、UF装置に注水することにより、原液を透過液(低分子物質)と濃縮液(高分子物質、コロイド物質)2系統の溶液に分離し、取り出すことができる装置である。
【0148】
限外濾過膜は、ロブ−スリーラーヤン法により作製される典型的な非対称膜である。使用される高分子素材は、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ化ビニリデン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。限外濾過法では逆浸透法等と異なり、前処理をおこなわないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。限外濾過膜の性能指標は分画分子量であり、これが1,000〜300,000まで各種の膜が市販されている。市販の膜モジュールとしては、マイクローザーUF(旭化成ケミカルズ(株))、キャピラリー型エレメントNTU−3306(日東電工(株))等があるがこれに限定されるものではない。
【0149】
得られた乳化物からの溶媒除去には、膜の材質は溶媒耐性の観点から、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミドが特に好ましい。膜モジュールの形態としては、実験室スケールでは平膜が主に用いられるが工業的には中空糸型、スパイラル型が用いられるが、中空糸型が特に好ましい。また、分画分子量は有効成分の種類によって異なるが、通常、5,000〜100,000の範囲のものが用いられる。
操作温度は0℃〜80℃まで可能であるが、有効成分の劣化を考慮すると10℃〜40℃の範囲が特に好ましい。
【0150】
ラボスケールの限外濾過装置としては、平膜型モジュールを用いる、ADVANTEC−UHP(アドバンテック(株))、フロータイプラボテストユニットRUM−2(日東電工(株))等がある。工業的にはそれぞれの膜モジュールを必要能力に応じた大きさと本数を任意に組み合わせてプラントを構成することができる。ベンチスケールのユニットとしては、RUW−5A(日東電工(株))等が市販されている。
【0151】
本発明のセラミド分散物に適用しうる製造方法では、溶媒除去に引き続き、得られた乳化物を濃縮化する工程を加えてもよい。濃縮方法としては、蒸発法、濾過膜法等溶媒除去と同じ方法、装置を用いることができる。濃縮の場合も限外濾過膜法が好ましい方法である。溶媒除去と同一膜を使うことができれば好ましいが、必要に応じて、分画分子量の異なる限外濾過膜を使用することもできる。また、溶媒除去とは異なる温度で運転し、濃縮効率を高めることも可能である。
【0152】
上記マイクロミキサーによる混合により得られたセラミド分散物は、水中油滴型エマルションである。本発明においては、セラミド分散物が含むセラミド類含有粒子の体積平均粒径(メジアン径)を、2nm以上150nm以下とするものである。得られた分散物の透明性の観点からは、より好ましくは2nm以上50nm以下である。セラミド類含有粒子(分散粒子)の粒径は、市販の粒度分布計等で計測することができ、その詳細は、既述のとおりである。
【0153】
<水性化粧料の用途>
本発明の化粧料は、化粧水、美容液、ジェル、乳液、クリーム、洗顔料等、化粧料として知られている一般的な剤型のいかなる態様であってよい。本発明におけるセラミド類含有粒子の粒径が小さいという特徴を生かすためには、透明性の高い剤型にすることが好ましく、化粧水、美容液、ジェル製剤であることが好ましい。
【0154】
また、本発明の水性化粧料が充填される容器は特に限定されるものではないが、液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲の水性化粧料であることから、アトマイザー型の容器に充填した場合においても優れた突出性を奏することができる。
【実施例】
【0155】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0156】
(セラミド分散物の調製−1)
下記油相液1組成物に記載の各成分を室温にて1時間攪拌し、油相液1を調製した
<油相液1組成>
セラミド3〔天然型セラミド、具体例1−5〕 0.9部
セラミド6〔天然型セラミド、具体例1−7〕 1.1部
オレイン酸(融点:14℃) 0.4部
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 76.0部
【0157】
<水相液1組成>
純水
0.1モル水酸化ナトリウム 適量
【0158】
得られた油相液1(油相)と水相液1(水相)をそれぞれ30℃に加温し、それぞれ1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサ100/100を用いてミクロ混合して、30℃のセラミド分散液1を得た。なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記のとおりである。
【0159】
−マイクロチャンネル−
油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
−流量−
外環に水相を21.0ml/min.の流量で導入し、内環に油相を3.0ml/min.の流量で導入してミクロ混合した。
【0160】
得られたセラミド分散液1を大川原製作所製の「エバポール(CEP−lab)」を使用し、エタノール濃度が0.1質量%以下になるまで繰り返し脱溶媒することで、セラミド濃度が1.0質量%になるように濃縮、調整し、pH=7.3のセラミド分散物Aを得た。こここで、セラミド濃度とは、セラミド分散物の全質量を基準としたセラミド類の含有量である
【0161】
(セラミド分散物の調製−2)
セラミド分散物の調製−1において油相液1を下記油相液2に変更し、得られた油相液2(油相)と水(水相)をそれぞれ40℃に加温し、それ以外はセラミド分散物の調製−1と同様にして、セラミド分散液2を得た。更に、得られたセラミド分散液2をセラミド分散物の調製−1と同様にして濃縮、調整し、pH=6.2のセラミド分散物Bを得た。
<油相液2組成>
セラミド3〔天然型セラミド、具体例1−5〕 0.9部
セラミド6〔天然型セラミド、具体例1−7〕 1.1部
イソステアリン酸(融点:−10℃) 0.4部
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 76.0部
【0162】
(セラミド分散物の調製−3)
セラミド分散物の調製−1において用いた油相液1及び水相液1を、下記のように調製した油相液3及び水相液3に変更した以外は、セラミド分散物の調製−1と同様にして、セラミド分散液3を得た。更に、得られたセラミド分散液3をセラミド分散物の調製−1と同様にして濃縮、調整し、pH=7.3のセラミド分散物Cを得た。
【0163】
油相液3は、下記油相液3に記載の各成分を室温にて約30分間攪拌して調製した。また水相液3は、純水にラウリンカルバミン酸イヌリンを加えて約50℃に加温し、充分に攪拌溶解した後、残りの成分を加えて混合し、液温を30℃に調整した。
<油相液3組成>
セラミド3〔天然型セラミド、具体例1−5〕 0.9部
セラミド6〔天然型セラミド、具体例1−7〕 1.1部
オレイン酸(融点:14℃) 0.4部
エタノール〔水溶性有機溶媒〕 97.6部
<水相液3組成>
純水 96.86部
ラウリルカルバミン酸イヌリン 0.29部
グリセリン 1.43部
1,3−ブタンジオール 1.43部
0.1モル水酸化ナトリウム 適量
【0164】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
(水性化粧料の調製)
セラミド分散物を除く各成分を、調製後の水性化粧料において表1記載の種類及び量となるように80℃で混合溶解した35℃まで冷却し、セラミド分散物を表1に記載の種類及び量となるように添加して、全体で100質量部となるように残量を水で調整した。
以上のようにして、実施例1〜5及び比較例1〜3の各水性化粧料を得た。得られた各水性化粧料のpHを表1に示す。
【0165】
<評価>
1.粘度
各水性化粧料の粘度を、B型粘度計(TVB−10型、東機産業(株)製)を用い、以下の条件により測定した。結果を下記表1に示す。
ローター:M2又はM3ローター(実施例1、5、比較例2は、M2ローターを用い、実施例2〜4、比較例1、3は、M3ローターを用いた。)
回転数 :30rpm
測定温度:25℃
【0166】
2.セラミド類含有粒子の粒径
調製直後の各水性化粧料中におけるセラミド類含有粒子(或いはそれを含む油滴様の分散粒子)の粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した。該粒径の測定は、セラミド類含有粒子の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて行った。粒子径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めた。得られた粒子径を以下の基準により評価した。△以上が実用上問題のないレベルである。結果を下記表1に示す。
○:50nm未満
△:50nm以上150nm未満
×:150nm以上
【0167】
2.水性化粧料の経時安定性の評価
経時安定性の評価は、濁度を用いて以下の方法により行った。
実施例1〜5及び比較例1〜3の各水性化粧料の調製直後の濁度を、UV−VIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550((株)島津製作所製)を使用し、10mmセルにて660nmの吸光度として測定した。(測定温度:25℃)
さらに、各水性化粧料を60℃の恒温槽に24時間保管し、次に4℃の冷蔵庫に24時間保管するという繰り返しを7サイクル(2週間)実施した後、25℃に戻して再度濁度を測定した。
各水性化粧料の濁度の変化として、経時保存後の濁度と調製直後の濁度との差を算出し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
×:濁度の変化が0.1以上(化粧料としての商品価値がないレベル)
△:濁度の変化が0.05以上0.1未満(化粧料としての商品価値上なんとか許容できるレベル)
○:濁度の変化が0.01以上0.05未満(濁度の変化はわかるが、化粧料としての商品価値上は問題の無いレベル)
◎:濁度の変化が0.01未満(目視では、濁度の変化を認知し難いレベル)
【0168】
3.析出物の有無の評価
実施例1〜5及び比較例1〜3の各水性化粧料について、析出物の有無を目視により観察し、以下の基準により評価した。結果を下記表1に示す。
○:析出物が発生していない
×:析出物が発生している
【0169】
4.アトマイザー容器からの突出性(容器突出適性)の評価
実施例1〜5及び比較例1〜3の各水性化粧料を、浅井硝子(製)の容器「HID−30」にそれぞれ充填し、充填後の各容器に、ポンプとして0.15mL〜0.25mLの突出量のAS−ディスペンサー取り付けた。突出性は、充填後の各容器から化粧料を突出させ、以下の評価基準により行った。結果を下記表1に示す。
◎:容器からの突出性が全く問題なかった
○:容器からの突出性が若干悪いが、使用上の問題はなかった
×:容器からの突出性が悪い(ポンプが詰まりやすくなるか、突出した液が飛散しやすくなる)
【0170】
【表1】

【0171】
実施例1〜5の各水性化粧料は、いずれも粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲であり、経時安定性に優れ、析出物も発生しておらず、アトマイザー容器からの突出性も良好であった。
一方、カルボマー(合成高分子であるカルボキシビニルポリマー)を含有する比較例1の水性化粧料は、析出物の発生が認められた。また、天然多糖類が、本発明における含有量よりも少ない量で含有される比較例2の水性化粧料は、液粘度が50mPa・sと低く、アドマイザー容器から突出させた際に突出性が悪く(液が飛散しやすい)ものであった。また、天然多糖類が、本発明における含有量よりも多い量で含有される比較例3の水性化粧料は、液粘度が5000mPa・sと高く、アドマイザー容器から突出できないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】マイクロミキサーの一例としてのマイクロデバイスの分解斜視図である。
【図2】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概略断面図である。
【図3】T字型マイクロリアクターによる混合機構の一例を示すT字型マイクロリアクターの概念図である。
【符号の説明】
【0173】
100 マイクロデバイス
102 供給要素
104 合流要素
106 排出要素
124 マイクロチャンネル
126 マイクロチャンネル
128 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)、(2)、及び(3)を少なくとも含み、且つ25℃での液粘度が200mPa・s以上2000mPa・s以下の範囲である水性化粧料。
(1)セラミド類を少なくとも含有し、油相成分として水相中に分散される体積平均粒子径が2nm以上150nm以下のセラミド類含有粒子
(2)炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩
(3)水性化粧料の全質量に対して0.1質量%以上0.7質量%以下含まれる天然多糖類
【請求項2】
前記天然多糖類が、ヒアルロン酸、キサンタンガム、及びセルロース系高分子からなる群から選択された少なくとも1つの天然多糖類である請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
前記天然多糖類が、その分子構造中にカチオン性基を持たない天然多糖類である請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項4】
更に、界面活性剤を、前記セラミド類の全質量に対して0又は0.5倍量以下で含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項5】
前記炭素数10〜30の脂肪酸が30℃で液体である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項6】
前記セラミド類含有粒子の体積平均粒子径が5nm以上100nm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項7】
更に、多価アルコールを含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項8】
前記炭素数10〜30の脂肪酸若しくはその塩が、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸、及びそれらの塩からなる群より選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の水性化粧料の製造方法であって、
少なくとも前記セラミド類を含む油相成分と、水相成分と、を40℃以下の温度で混合して、セラミド分散物を得ること、
前記セラミド分散物と、水性組成物とを混合すること、
を含む水性化粧料の製造方法。
【請求項10】
前記セラミド類を、セラミド類の良溶媒に溶解することを含む請求項9に記載の水性化粧料の製造方法。
【請求項11】
前記セラミド類の良溶媒が、水溶性有機溶媒である請求項10に記載の水性化粧料の製造方法。
【請求項12】
前記油相成分と前記水相成分との混合が、最も狭い部分の断面積が1μm以上1mm以下であるマイクロ流路にそれぞれ独立して通過させた後に組み合わせて混合するものである請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の水性化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−83801(P2010−83801A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254537(P2008−254537)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】