説明

水性樹脂組成物およびその製品

【解決手段】
水性エラストマー分散体を含む水性樹脂組成物、及び水性エラストマー分散体から製造される製品を提供するもので、水性エラストマー分散体は分散相と水相を含み、分散相は、ポリイソプレン等の硬化性脂肪族共役ジエンエラストマーを含むエラストマーと少なくとも一種の添加剤とを含む。一方水相は、水と可溶状態又は分散状態である他の任意の成分とを含む。水性エラストマー分散体は、ゴムなどのエラストマー及び添加剤を溶媒混合物中に溶かして得られた溶液を水性乳濁液に転化させて調製する。水性乳濁液を濃縮して溶媒を除去すると希薄ラテックスを得ることができ、この希薄ラテックスを再度濃縮する。水性エラストマー分散体から製造される製品としては、医療用手袋、コンドーム、プ
ローブカバー、デンタルダム、指サック、カテーテルなどがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エラストマー分散体を含む新規な水性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、水性エラストマー分散体の調製方法、および、従来の方法で調製された水性樹脂組成物から製造された物品と比べて実質的な性能向上を示す水性エラストマー分散体から製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、被覆材、接着剤等の物品を製造するために水性樹脂分散体を使用することは、溶媒に分散させる場合と対比すると、いくつかの利点がある。とりわけ、水性分散体は環境に優しく、配合、温度制御およびプレマチュレーションの調節が容易で、粘度調整が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,335,807号明細書
【特許文献2】米国特許第3,250,737号明細書
【特許文献3】米国特許第3,285,869号明細書
【特許文献4】米国特許第3,971,746号明細書
【特許文献5】米国特許第3,968,067号明細書
【特許文献6】米国特許第6,329,444号明細書
【特許文献7】米国特許第6,828,387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の水性樹脂分散体を使用すると、いくつか不都合な点もある。たとえば、分散体の調合と製造される物品の双方に制約がある。調合後に、エラストマー分散体と、硬化成分の分散体や付加重合体分散体等の残存成分との間に、バリヤが形成される。フィルム形成過程中、これらの残存成分は、それ自体の分散体(水、界面活性剤および乳化剤)の境界はそのままにして、調合物の水性媒質を通過し、エラストマー粒子の分散体の表面を横切り、最終的にエラストマー粒子内に浸入することによって、このバリヤを克服しなければならない。これが起こる可能性は、分子量が高い成分ほど、小さくなる。この障害は、使用可能な成分の性質に対しても制約をもたらす。
【0005】
不都合な点として2番目に挙げられるのは、従来のエラストマー分散体から調製された物品の性能における制約である。エラストマーと残存成分との間の混和性は、特に両者が異なる固有の構造を有するものである場合、制約される。そのため、エラストマーと残存成分が大きな塊の状態のまま維持されて、その拡散して均一に混ざる能力が阻害される。その結果、従来のエラストマー分散体から製造される物品の特性が劣化する。
【0006】
3番目の不都合な点は、従来のエラストマー分散体の配合が複雑であること、および、従来のエラストマー分散体から製造される物品の性能を向上させることを企図しつつ配合を変更する際のフレキシビリティに欠けることである。
【0007】
したがって、このような不都合を改善ないし解消することが可能な新規なエラストマー分散体を開発することが必要とされている。それは、結果として製造される物品の性能に劇的な向上をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新規な水性エラストマー分散体、その調製方法、および当該水性エラストマー分散体から製造された物品に関する。本発明の水性エラストマー分散体は、分散相と水相とを含む。分散相は、ポリイソプレン等のエラストマーと、少量の少なくとも一種の添加剤とを含む。水相は、水と、水に溶解した他の任意追加成分とを含む。
【0009】
水性エラストマー分散体は、エラストマーと添加剤とを溶媒混合物に溶かして、生成した溶液を水性乳濁液に転化させることによって調製可能である。水性乳濁液は、水相の物質を除去することによって濃縮し、濃縮乳濁液から溶媒を除いて希薄ラテックスを得る。得られた希薄ラテックスは、好ましくは、所望の固形分にするため、もう一度濃縮する。
【0010】
水性エラストマー分散体から製造された物品には、医療用手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、カテーテル等が含まれる。
【0011】
本発明は、新規な水性エラストマー分散体、その調製方法、および当該水性エラストマー分散体の調合物から製造された物品に関するものであり、上述の課題を克服するものである。
【0012】
以下の用語および定義は、特別な用語の意味を明確にするものである。
【0013】
コロイド「分散体(dispersion)」とは、真の溶液(solution)と混合物(mixture)または懸濁液(suspension)との中間形態である。また、これは、「分散相(dispersed phase)」たる微小塊を「分散媒(dispersing phase)」中に分散させた、二種の液相からなる「乳濁液(emulsion)」と考えることもできる。水中油分散体(O/W)において、分散媒は、水相とも称される。本発明の乳濁液は、一般に合成コロイド重合体と呼ばれ、この重合体は、乳化重合(ニトリル、ポリクロロプレン)、配位(チーグラー-ナッタ)重合(シスポリイソプレン)、またはアニオン重合(シスポリイソプレン)により調製することができる。
【0014】
「ラテックス(latex)」は、元来、ゴム製品製造用のゴムの木から採れる樹液の呼称であった。したがって、分散体、乳濁液、およびラテックスはすべて、速度論的に安定なコロイド系であると考えられ、これらの用語は、本発明における水性エラストマー系に対して区別なく用いられる。
【0015】
「加硫(vulcanization)」とは、硫黄の添加を含む特定のゴム硬化プロセスのことであり、通常、固体ゴムプロセスに用いられ、硫黄原子からなる原子架橋によって重合体分子が他の重合体分子と結合する不可逆化学架橋反応である。
【0016】
「硬化(curing)」とは、高分子量化をもたらす化学反応または固体化相変化を伴う物理的プロセスのいずれかをいう。本発明のプロセスでは、硫黄または硫黄ドナーを用いたプロセスについていう場合、硬化と加硫とは同義語として用いている。
【0017】
エラストマーの従来型「硬化プロセス」は、(1)元素の硫黄および/または加熱すると硫黄を放出する種々の不溶性硫黄ドナーおよび/または過酸化物硬化剤等の硬化/架橋剤と、(2)主促進剤(たとえば、メルカプトベンゾチアゾールMBTおよび二硫化メルカプトベンゾチアゾールMBTS)または副促進剤(たとえば、チウラム、ジチオカルバメートおよびグアニジン)に分類される、反応のための触媒のようにふるまう促進剤と、(3)金属酸化物および金属塩等(たとえば酸化亜鉛)の活性剤とを含む、硬化成分を用いた架橋反応である。
【0018】
「クリーミング」は、新しく製造したエラストマー分散体を濃縮する方法として開発された複数の方法(遠心分離、電気デカンテーション、蒸発)のうちの一つである。このプロセスによって、低固形分の乳濁液を濃縮して、たとえば固形分が50%を超える乳濁液にすることができる。クリーミングのプロセスは、水とエラストマー重合体の間の比重の差(水:1.0;エラストマー重合体:たとえば約0.91)あるいは乳濁液の底部近傍または上表部近傍で漿液に囲まれる粒子の凝集によるエラストマー重合体の浮力に依存する。分離が完了すると、水性漿液相が除去され、濃縮乳濁液クリーム相が残る。クリーミングは、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、あるいはセルロース誘導体といった、特定のクリーミング剤を添加することによって促進可能である。
【0019】
本発明の水性エラストマー分散体は、分散相と水相とを含む。分散相は、エラストマーと少量の少なくとも一種の添加剤とを含む。水相は、従来のエラストマー分散体配合物で用いられ、界面活性剤やpH調整剤や他の水溶性補助剤(adjuvants)などの、水溶性成分を含む。エラストマー分散体の水相中の水溶性成分量は、全分散体の固形分の重量比にして、通常約10%以下、好ましくは約2〜10%である。
【0020】
エラストマーとしては、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブロック共重合体、およびブチルゴムを含むがこれらに限定されない硬化性脂肪族共役ジエンを採用することができる。本発明の好ましいエラストマーは、ポリイソプレンであり、これは天然であっても合成であってもよい。市販されている任意の、合成、直鎖型で、分子量約100,000〜約3,000,000の高分子量ポリイソプレンが使用可能である。
【0021】
水性エラストマー分散体の分散相中の少なくとも一種の添加剤は、エラストマーと同一、類似または異なる化学構造を有し、後述する硬化成分、非硬化成分、および付加重合体のうちの少なくとも一つを含むものとすることができる。使用する添加剤の総量は、全分散体固形分の重量比にして約0.5〜49%である。
【0022】
硬化成分としては、従来のエラストマー分散体調合配合物に見られるような任意の成分を含むものとすることができる。たとえば、硬化成分は、当業者にとって周知の、硫黄/硫黄ドナー、促進剤(主促進剤および副促進剤)、硫黄硬化(すなわち加硫)活性剤、および過酸化物硬化/架橋剤を含むものとすることができるが、これらに限定されない。硬化成分の化学的性質や数に制限はないが、以下に詳述するエラストマー溶液の溶媒系に溶解または分散可能でなければならない。硬化成分の化学構造およびその作用が、乳化プロセス中を通じて損なわれずに維持される必要はないが、硬化剤の混入が、本発明の分散体により製造される製品の望ましい性能に悪影響を及ぼすことがあってはならない。
【0023】
硫黄を用いて硬化する際、主たる硬化剤には、元素の硫黄(一般にS8の形態であると考えられているが、それに限らない)を含むのが好ましい。これを単独で用いてもよく、硫黄ドナーと組み合わせて用いてもよい。硫黄を含まない系を採用することもできるが、その場合、硫黄ドナーは必須である。硫黄ドナーは、テトラメチルチウラムジスルフィドやテトラエチルチウラムジスルフィド等の、加硫促進剤としても作用する多硫化チウラム類、および、ブチルキサントゲンジスルフィドやCPBやジイソプロピルキサントゲンポリスルフィドDIXPやジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等の多硫化キサントゲン類を含むものとすることができるが、その限りではない。
【0024】
過酸化物は、ポリイソプレンラテックスに対する硬化温度が120℃/20分のR.T.Vanderbilt社製Varox A−75のような過酸化ジベンゾイル、ポリイソプレンゴムに対する硬化温度が120℃/20分のAkzo Nobel社製Perkadox BC−40Bのような過酸化ジクミル、およびそれらを組み合わせたものを含むものとすることができるが、その限りではない。
【0025】
促進剤は、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)およびペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD)等のジチオカルバメート類、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)および2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛(ZMBT)等のチアゾール類、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)およびテトラペンタメチレンチウラムジスルフィド(TPTD)等の硫化チウラム類、ジフェニルフアニジン(DPG)およびジ−o−トリルグアニジン(DOTG)等のグアニジン類、および、チオ尿素およびジフェニルチオ尿素等のチオ尿素類を含むものとすることができるが、その限りではない。本発明のエラストマー分散体を調合するために一種ないしそれ以上の促進剤を用いることができる。
【0026】
活性剤は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、および酸化鉛を含むものとすることができるが、その限りではない。酸化亜鉛が最もよく使用されている加硫活性剤である。一種類の促進剤を使用してもよく、促進剤を共働作用するように組み合わせて使用してもよい。
【0027】
硫黄/硫黄ドナー、促進剤、および/または活性剤等の硬化成分を乳化プロセスで含むことによって、硬化機序が向上し、硬化後の物品の位相上の特徴が改変される。たとえば、従来のやり方でエラストマーのみを含有する樹脂分散体と水性分散体として添加される硬化成分とによって製造される製品と比べて、膜厚が薄く、化学的残留物レベルが低く、硬化効率が高いといった性質を備えた製品が提供される。
【0028】
当分野の水性エラストマー分散体配合物において用いられる非硬化成分は、そのほとんどが、固体で、湿度の影響を受けやすく、分子量が高い。そのため、このエラストマー分散体から製造される製品は、低い材料利用効率、変色、特性劣化、加工し難さなどのような問題を有するものとなる。これらの問題は、本発明のエラストマー分散体で克服可能である。本発明のエラストマー分散体の調製では、(従来のエラストマー分散体の配合で発生する)凝集、拡散、移動等一連の物理化学プロセスを経ずに、非硬化成分を配合中に含めることができる。その結果、手袋等、得られる物品の性能が向上する。
【0029】
エラストマー分散体化合物配合において従来用いられている非硬化成分は、いずれも本発明の水性エラストマー分散体において用いることができる。たとえば、非硬化成分は、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、オゾン分解防止剤、顔料、充填剤、抗菌剤、指示薬および付加重合体を含むものにできるが、それに限定されるものではない。
【0030】
水性エラストマー分散体に添加することができる適切な酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)およびチオジエチレンビス−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナート等のヒンダードフェノール類、p−クレゾールおよびジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等のヒンダードポリフェノール類、トリメチル−トリス(ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジム)−ベンゼンまたはオクタデシルジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェニルプロピオナート等のヒンダードフェノール/ヒンダードポリフェノール類、6PPDのメチルスチレン混合物およびビス−α−ジメチルベンジルジフェニルアミン等のアミン類、メルカプトツルムイミダゾール亜鉛/フェノール等の混合物、トリアジノン−フェノール類混合物等のトリアジノン誘導体、ポリ(m−アニシジン)等の多芳香族アミン類、無水共重合体を有するフェノール類等のフェノール酸化防止剤ヒドラジド類、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール類、2,4−ジメチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール等のクレゾール類、およびスチレン化フェノール類を含むものとすることができるが、それに限定されるものではない。ヒンダードフェノール類を使用することが好ましい。
【0031】
また、pH調整のためのアルカリ、界面活性剤、およびカゼイン酸ナトリウム等のアルカリ性カゼイン塩を含むコロイド安定剤を水相に添加してもよい。
【0032】
水性エラストマー分散体に添加することができる適切な可塑剤は、脂肪酸塩、鉱油およびエステル可塑剤を含むものとすることができるが、その限りではない。
【0033】
高不飽和ポリイソプレン物等、ある種のエラストマー物品は、オゾンによって激しく損壊されるため、水性エラストマー分散体にオゾン分解防止剤を添加してもよい。本発明の水性エラストマー分散体に含有させると、パラフィンろう、EPDMおよび水素化ポリジエン等、ある種の高分子量重合体は、良好なオゾン耐性を有する物品をもたらすことができる。本発明に使用可能なオゾン分解防止剤の他の例としては、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン6PPD等のアルキル/アリールp−フェニレンジアミン類、アルキル−アリル−p−フェニレンジアミンを有するスメクタイト含有粘土等の有機粘土オゾン分解防止剤錯体、N,N−二基置換パラ−フェニレンジアミン等の官能化ベンゾトリアゾール類、トリス(N−1,4−ヂメチルペンチル−p−フェニレンジアミノ)1,3,5−トリアジンおよびトリス(N−アルキル−p−フェニレンジアミノ)1,3,5−トリアジン等のトリアジン類、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)等のp−フェニレンジアミン類を含むものとすることができるが、その限りではない。また、パラフィンろう(MW=300〜500)、微晶ろう(MW=600〜700)(パラフィンろうを有する)、および低MWのPEろう(MW=100〜1100)等のろう、重合体ジフェニルジアミン等の重合体オゾン分解防止剤、および、EPDMおよび臭素化イソブチレン/パラ−メチルスチレン共重合体(BIMSM)等のオゾン不活性重合体をオゾン分解防止剤として使用することもできる。ろうを使用するのが好ましい。
【0034】
水性エラストマー分散体に添加することができる適切な顔料は、二酸化チタンや酸化鉄等広い範囲の天然顔料および合成顔料を含むものとすることができる。
【0035】
水性エラストマー分散体に添加することができる適切な充填剤は、粘土、炭酸カルシウム、タルクおよびシリカ等の無機充填剤や、架橋ポリメタクリル酸メチル、細粒ウレタン樹脂粒子およびポリエチレン微小球等の有機充填剤を含むものとすることができるが、その限りではない。
【0036】
本発明の水性エラストマー分散体に抗菌剤を分散させると、効果的に感染を防止することが可能となる。抗菌剤はポリイソプレンと親密に混合/分散するので、無視できないほど浸出することはない(たとえば、室温、相対湿度60%で3ヶ月貯蔵後、物品中に少なくとも95%残留する)ため、製造される抗菌手袋等の物品は、より安全に使用できる。本発明のポリイソプレン分散体に使用することができる抗菌剤の例としては、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール(トリクロサン)、2−ヒドロキシ−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン、o−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、クロロフェノール、クロロチモール、およびパラ−クロロ−メタ−キシレノール(PCMX)等の水に溶けない有機フェノール化合物、銀イオン−ゼオライト粒子およびスルファジアジン銀等の無機銀化合物、ピリチオン亜鉛等の亜鉛化合物、酸化銅等の銅化合物、グリセロールモノカプラートおよびグリセロールモノラウラート等の脂肪酸エステル、シリコーン−アンモニウム重合体、ポリヘキサメチレンビグアニド等の窒素含有重合体、およびポリ(メタクリレート)含有ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸含有重合体が挙げられるが、これらに限定されない。有機フェノール化合物を用いるのが好ましい。
【0037】
ラテックス製品の状態の変化、たとえば、手袋が裂ける場合の信号をもたらすために、指示薬を本発明の水性エラストマーに含めることができる。物理化学的特性および異なる機序による作用に基づき、さまざまな指示薬が用いられる。たとえば、水分指示薬としては、塩化コバルト、オゾン化金属およびオゾン化物エステルなどの無機塩類、トリアリールメタン、アゾ染料およびアルファズリン等の着色剤、チモールスルホンフタレインおよびフェノールフタレイン等のフタレイン染料、遷移金属を加えた染料(フェノールフタレイン、チモールブルー、m−クレゾールパープル)等の有機酸塩、およびベタイン等のソルバトクロミック染料が挙げられるが、これらに限定されない。微生物指示薬としては、ベタイン/ライヒアルト染料、双性イオン/メロシアニンおよびヨウ化ピリジニウム等のソルバトクロミック染料、ブロムクレゾールパープルおよびフタレイン等の酸性pH染料、およびアントシアニン染料が挙げられるが、これらに限定されない。血液指示薬としては、o−トリジンOTOおよびo-ジアニシジン(3,3’−ジメトキシベンジジン)等の中間体(弱塩基)、フェノールフタレイン等の酸塩基指示薬、および5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン(ルミノール)等の化学発光体が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸塩、ソルバトクロミック染料および酸塩基指示薬が好ましい。
【0038】
水性エラストマー分散体の分散相に、付加重合体を用いることができる。そのような重合体としては、その付加重合体を溶媒系に溶かしたときに重合体分子の少なくとも一部がエラストマーと混和可能であるよう選択するのが好ましい。エラストマーと付加重合体の違いとしては、化学組成、鎖構造、重合体配座、分子量/分子量分布、およびこれらの組み合わせが挙げられる。付加重合体は、硬化プロセスに関与してもしなくてもよいが、その存在が製品の最終的な性能を損なうことがあってはならない。硬化性脂肪族共役ジエンエラストマーとしてポリイソプレンが用いられているか否かにかかわらず、付加重合体は、液状ポリイソプレン、低分子量のポリイソプレン、ポリイソプレンの異性体または類似体、ポリイソプレンの末端官能化誘導体、ポリイソプレンの共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、およびこれらの重合体の修飾形態を含むものとすることができるが、その限りではない。本発明の水性エラストマー分散体は、分散相中に0.5〜49%の範囲の付加重合体を有するものとすることができる。
【0039】
約25,000〜50,000の分子量を有する流動性液状ポリイソプレンをエラストマー調合における処理の補助剤として使用してもよく、本発明において記載されているように、従来の高分子量ポリイソプレンと共分散させることができる。これは、バリヤ用シール、接着剤およびエラストマー被膜としての用途(米国特許第7,335,807号参照)に加え、成膜性を改良して、本発明のポリイソプレン分散体に含めることで手袋等の薄いフィルムを提供することもできる。何ら限定されない液状ポリイソプレン材料の例としては、解重合ゴムDPRおよびClaprene L−IR−30等の合成液状ポリイソプレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
低分子量のポリイソプレンは、反応性可塑剤と同様に作用するので、硬化プロセスを調節することができる。これら低分子量のポリイソプレンは、物品を薄く、柔らかくし、触覚感度を向上させることができる。通常、これら重合体の分子量は、約20,000〜100,000の範囲である。これらには、Lycopene、Isolene、Synotex 800、Natsyn 2210が含まれるが、その限りではない。
【0041】
構造上の異性体は、環化ポリイソプレン/3,4−ポリイソプレン、trans−1,4−ポリイソプレン、および分岐鎖ポリイソプレン/星型エラストマーを含む。Synotex 800およびIsogrip等の、環化ポリイソプレン/3,4−ポリイソプレンは、その環化構造のおかげで、製品の引き裂き抵抗、湿潤時グリップ、引っ張り強度を向上させ、モジュラス(係数)を下げることができる。たとえばTP−301といったtrans−1,4−ポリイソプレンは、フィルムのエージングおよび寸法の変化に抗するフィルム安定性のために、異なる鎖構造を提供する。Shellvis 250等の、分岐鎖および星型ポリイソプレンは、その非線形構造の固有の時間−温度緩和特性により、手袋等の物品のフィット感を改善し、粘着性を低減する(Terminal relaxation and diffusion of entangled three-arm star polymers: Temperature and molecular weight dependencies, Journal of Polymer Science Part B: Polymer Physics 35 (15) 2503-2510 1997参照、本文献の記載は、引用により本稿に組み込まれるものとする)。これらの有効性は、分岐指数に依存し、1より大きい値が好ましい(Rheological Properties of 1,4-Polyisoprene over a Large Molecular Weight Range, Macromolecules, 37 (21), 8135-8144, 2004参照、本文献の記載は、引用により本稿に組み込まれるものとする)。
【0042】
類似体エラストマーの一例としては、LIR920として市販されている、水素化ポリイソプレンがある。これによれば、手袋などの製品を、モジュラスが低く、エージングにともなう劣化度が低く、フィット感が良好で、延伸時の回復が良いものにできる。これは、その軟質脂肪族鎖がフィルム形成時に重合体鎖の移動性に潤滑性をもたらすためである。
【0043】
ポリイソプレンの末端官能化誘導体としては、アクリル化ポリイソプレン、カルボキシル化ポリイソプレン、エポキシ化ポリイソプレン、スルホン化ポリイソプレン、およびヒドロキシル化ポリイソプレンが挙げられるが、これらに限定されない。アクリル化ポリイソプレンには、HEMA−およびアクリル酸−修飾ポリイソプレンが含まれるが、その限りではない。これらは、手袋などの製品に、全体の塩素化レベルを下げることによる塩素化プロセスの向上をもたらすことができる。カルボキシル化ポリイソプレンは、本発明の水性エラストマー分散体の安定性を向上させることができる。また、これらは、製品に、成膜特性の向上をもたらすものでもある。その親水性は、水分吸収を助け、製品に通気性を与えるのに役立つ。スルホン化ポリイソプレンは、製品に、帯電防止性、抗菌性、良好なウェット装着(wet donning)性および抗凝固性等の特性を与える。
【0044】
水性エラストマー分散体の分散相に使用可能なポリイソプレンの共重合体としては、ジブロック(di-block)共重合体およびトリブロック(tri-block)共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。ジブロック共重合体の例としては、ポリイソプレン−b−ポリブタジエン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、ポリイソプレン−b−ポリメチルメタクリレート、およびポリイソプレン−b−ポリアクリル酸が挙げられる。トリブロック共重合体の例としては、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)およびスチレン−b−(エチレン−コ−ブチレン)−b−スチレン(SEBS)が挙げられる。共重合体は、分散相に入れる前にトルエン等の溶媒に溶かしてもよい。このような共重合体は、得られる製品のバリヤ性を高める。
【0045】
水性ラテックスの加硫のための一般化された配合に、下記の表1に示すようなさまざまな添加物を添加することにより、本発明の水性エラストマー分散体を調製することができる。安定剤を例外として、表1の配合におけるすべての成分は、水性分散体(固体の場合)、または水性乳濁液(液体の場合)の形態をとる。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の配合は、天然ゴムラテックス用に、または現在市販されている合成ゴムラテックスの中に入れて、用いることができる。一般に、さまざまな組み合わせまたは濃度で前記添加剤を使用することにより、現在市販されている合成ゴムラテックスでは得られない優れた特性がもたらされる。表1の配合は、本発明の水性エラストマー分散体を製造するために変更可能である。特に、特定の用途では、さらに良い、あるいは同様の特性を得るために添加物の濃度を低くすることが望ましいこともある。
【0048】
本発明の一実施形態において、架橋剤(好ましくは硫黄)は、ラテックス粒子中のゴムが早すぎる過度の架橋を引き起こすおそれもあり、ラテックスには添加しない。本発明の他の実施形態において、架橋剤(好ましくは硫黄および/または硫黄ドナー)は、使用前、水性ラテックスの配合中に、水性分散体として添加される。同様に、加硫活性剤(好ましくは酸化亜鉛)は無機物であって、有機溶媒には溶けないため、ラテックス分散体中に入れることはできない。したがって、加硫活性剤は、使用前、水性ラテックスの調合中に、水性分散体として添加される。
【0049】
乾燥ゴム等のエラストマーから、本発明による分散相の添加剤を用いて水性エラストマー分散体を調製する方法を、図1のフローチャートに示す。この方法について、以下実施例において説明する。図1に概略を示した基本ステップは、本発明の範囲を限定することを意味するものではなく、本発明にしたがってさまざまなタイプのラテックスを調製するために、反復したり、異なる順序で実行したりすることが可能である。
【0050】
図1に示すように、開始エラストマー(ゴム等)は、随意、溶媒に溶け易いようサイズを小さくする処理が施される。ゴム粒子の好ましい粒径範囲は、約1〜3mmである。
【0051】
その後、溶媒系中にエラストマーと少量の少なくとも一種の添加剤を入れた溶液を調製する。溶媒系は、乳化前にエラストマーと添加剤とを均一に混合するための媒質を提供する。分散相に含まれることになる添加剤は、溶媒または溶媒混合物中に溶かす。添加物のための溶媒は、限定されないが、エラストマーを溶かすのに用いられる溶媒と混合できるものでなければならない。添加物用に適した溶媒としては、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、アセトンおよびアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
添加される促進剤の濃度は、表1において提供されるゴムを硫化するための配合に基づくものとすることができ、加硫ゴムの所望の特性を得るため最適化される。添加剤がゴムの溶媒で引き続き溶解可能となるよう、充分な量の溶媒を追加する。添加物は、まず溶媒に溶かしてから、ゴムの溶媒と混ぜてもよく、添加物の溶媒とゴムの溶媒の混合物に溶かしてもよい。
【0053】
ゴムは、溶媒および添加物を含む溶液に溶かす。代替的に、ゴムは、まず、そのゴム用の溶媒に溶かしてから、添加物とその溶媒の混合物に加えてもよい。エラストマーに適した溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ペンテン、トルエン、シクロペンタン、およびシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。エラストマー用の溶媒としては、大気圧下もしくは必要に応じ部分真空を与えた状態で、沸点が100℃未満(好ましくは70℃未満)となる有機物液が採用可能である。溶媒系は、単一の溶媒であっても、共溶媒を含む溶媒混合物であってもよい。
【0054】
溶媒中のゴムの濃度は、溶媒中のゴムの溶解度により調節される。溶液中にできるだけ多くのゴムを溶かすのが好ましい。しかし、最大溶解度では溶液は粘度が高すぎて乳濁液の溶液と混合できず小滴状に分解されて乳濁液を生成してしまうので、その濃度は、溶解度の最大限界値の、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、最も好ましくは50%以下とすべきである。
【0055】
ゴム/添加物/溶媒の混合物を収容する容器は、蒸発を最小限に抑えるため閉鎖して、ゴムが完全に溶けるまで攪拌してもよい。溶媒の温度は、好ましくは約25〜35℃、より好ましくは約28〜30℃に維持される。
【0056】
次に、結果として生成した、ゴム、添加剤および溶媒を含む溶液を、米国特許第3,250,737号、第3,285,869号、第3,971,746号、第3,968,067号および第6,329,444号(これらの文献中の記載は、引用により本稿に組み込まれるものとする)に記載されたプロセスのような、当業者に周知のプロセスで、水性乳濁液に転化させる。このプロセスとしては、乳化組成物を用いて重合体溶液を乳化し、該溶液の除去ないし重合体溶液の液化処理を行い、それを乳濁液の安定化に好適な条件下で水性媒質と一緒にするステップを含むものとすることができる。代替的に、重合体溶液を水性媒質中で乳化組成物を用いて乳化してから、溶液を除去するという、図1に概略を示したような下記の諸工程により、水性分散体を生成してもよい。
【0057】
一般に、乳化剤は、溶媒の蒸発中の熱に耐えうるだけの安定した乳濁液を生成することができるものでなければならず、その後で生成されるラテックスは、(たとえば、手袋を製造するための凝集剤浸漬に使用される硝酸カルシウム由来の)カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンにより不安定化されることがある。乳化剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびカプリル酸石鹸、カプリン酸石鹸、ラウリン酸石鹸、オレイン酸石鹸およびロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸、あるいはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適した乳化剤としては、好ましくは、ポリイソプレンラテックス濃縮物を分離するさまざまなプロセス工程中に過度の発泡が起こらないように、発泡性向の低いものを採用すべきである。乳化剤溶液の重量は、溶媒の体積に基づき、通常約1〜5重量/体積%、好ましくは1〜3重量/体積%である。たとえば、水に2%のNekal BX dry(BASF、68%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)を入れた乳化剤溶液を、たとえば3%の水酸化カリウム溶液でpH10.5〜11.0に調整したものが使用できる。
【0058】
次に、ゴム/添加剤/溶媒溶液を、好ましくは、たとえば、Square Hole High Shear ScreenTMを装着した実験用Silverson L4RTミキサーにより約3500〜4500rpmで攪拌した乳化剤溶液内に投入することによって、ラテックス乳濁液が調製される。ミキサーの速度は、形成される泡が壊れるまで変化させる。例示するプロセスにおいては、約5分間3500〜4500rpmで攪拌した後、ミキサーの速度を約5000〜7000rpmに上げて約10分間攪拌してもよい。そして、ミキサーの速度を約500〜1000rpmにまで下げて、約5分間攪拌し、その間に、形成された泡が壊れるようにしてもよい。高速剪断(5000〜7000rpm)の時間の後、過度な発泡が起こった場合、混合速度を約1000rpmまで下げて、泡が壊れるまで攪拌を継続してもよい。そして、再び、混合速度を上げて5000〜7000rpmまで戻し、この速度での剪断の合計時間が約10分間となるまで混合を継続する。
【0059】
攪拌速度は、上記の範囲に限らず、エラストマー粒子の最終平均粒径が市販のラテックス製品と同様になるよう選択される。たとえば、市販のポリイソプレンラテックス製品は、約1μmの体積平均粒径を有する。通常、約0.5〜1.5μmの体積平均粒径が望ましい。攪拌速度が高いほど、最終エラストマーラテックス粒子の粒径が小さくなる。速度の範囲は、所望の用途により、拡げることができる。たとえば、高剪断混合の合計時間によっては、約5000rpm〜8000rpmで、所望の最終粒径となるはずである。高速が採用されるほど、必要な時間は少し短くなり、低速になるほど、粒径は大きくなる。
【0060】
次に、水性乳濁液を濃縮することにより、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%の水相を除去し、第1の乳濁液濃縮物を得る。乳濁液は、分離率を高めるためクリーミング剤を用いて濃縮するのが好ましい。クリーミング剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、メチルセルロース、イナゴマメゴム、トラガカントゴム、およびカラゲニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
クリーミング剤を含む乳濁液は、たとえば、約1500rpmの速度で5分間攪拌される。その後、その混合物は、モスリン布を通して濾過して、分液漏斗に投入してもよい。分液漏斗内に混合物を約16〜20時間放置すると、乳濁液は2層に分かれる。上側の層は、濃縮乳濁液を含み、下側の水性層は、水と、おそらくは少量の乳濁液とを含むが、これは排出される。
【0062】
乳濁液を濃縮する他の方法としては、連続遠心分離機(たとえば、アルファ・ラバル(Alpha Laval)社製、ウェストファリア(Westphalia)社製またはシャープルズ(Sharples)社製の装置)を使用するもの、ルーワ(Luwa)薄層蒸発装置等の薄膜蒸発装置を使用した蒸発法、あるいは膜を用いた限界濾過法がある。産業規模においては、乳濁液を背の高い円筒形のタンクに保持しておき、適時に、スキムの下側層を排出して濃縮乳濁液の上側層を残り次の処理にかけるようにしてもよい。
【0063】
濃縮乳濁液の水層が除去されると、溶媒の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%が濃縮乳濁液から除去されて、希薄ラテックスが得られる。溶媒は、たとえば、蒸発フラスコを約50〜55℃の温度の水槽に部分的に浸すビュッヒ(Buchi)社の回転蒸発装置のような実験用回転蒸発装置内で熱することにより、濃縮乳濁液から除去してもよい。蒸発フラスコは、乳濁液の新しい薄膜を連続して形成させることで蒸発が起こる表面積を拡げるべく、約150〜200rpmで回転させることができる。
【0064】
溶媒蒸気は、蒸発装置の冷却コイルを通して約−15〜−25℃の温度でエチレングリコールを循環させることによって、そしてまた、上記温度でエチレングリコールの槽に蒸発装置の受けフラスコを浸すことによって、濃縮および回収することができる。
【0065】
通常、溶媒の沸点より約10〜15℃高い温度で、溶媒はかなり高速で蒸発する。しかし、蒸発プロセスの最終段階で微量の残留溶媒を蒸発させるために、溶媒を、その沸点よりも約20〜25℃高い高温で加熱してもよい。温度範囲は拡げることができる。たとえば、溶媒の沸点が高い場合、たとえば約60〜100℃または100℃より高い場合、溶媒の沸点を約60℃未満まで下げるために、乳濁液に部分真空をあたえるのが望ましい。
【0066】
溶媒を除去するために回転蒸発装置を使用する方法に替えて、たとえば、ルーワ薄膜蒸発装置のような薄膜蒸発装置を含む適切な装置を使用してもよい。産業規模においては、大規模回転蒸発装置が使用可能である。
【0067】
溶媒を除去した後、残留水性成分を除去するために、たとえばアルギン酸ナトリウムを用いて、クリーミングによってラテックスを含む乳濁液を、再度濃縮してもよい。たとえば、乳濁液の体積に基づいて約0.1%のアルギン酸ナトリウムを(2%の水溶液として)乳濁液に加えて、攪拌してよく混ぜ合わせてもよい。そして、混合物を分液漏斗に移して、一晩、その約16〜18時間の間に混合物が2層に分かれるよう、放置してもよい。上側の層は濃縮ラテックスを含み、下側の層は通常やや濁った水溶液と、おそらくはいくらかのラテックスとを含む。下側の水性層を排出して、濃縮ラテックスを取得する。たぶん、この第2の濃縮工程において、希薄ラテックスの全固形分は、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍、より好ましくは少なくとも5倍増加する。たとえば、全固形分は、約45〜65%まで増えるかもしれない。
【0068】
濃縮ラテックスは、さらに分離するため、分液漏斗中にそのまま保持しておいてもよい。それが望ましい場合には、ある時間経過後、下側の主として水性の層を、再び排出してもよい。そして、ラテックスは、モスリン布を通して濾過してもよい。このプロセスから得られる全固形分は、好ましくは、ラテックスを分離するために放置した時間によって、重量比で約40%〜約70%である。輸送費を考慮すると、全固形分の値が高いほど輸送されるゴムが多く水が少なくなるため、ラテックスの全固形分は一般に高いほど好ましいということになる。
【0069】
手袋の製造する場合、配合される(すなわち、加硫成分および他の添加剤をラテックスに加えた後の)ラテックスの固形分は、必要な手袋の厚みによって約25%〜40%である。通常、手袋は、厚いほど全固形分を高くする必要がある。
【0070】
ラテックスが所望の固形分となるまで濃縮した後、得られたラテックスのpHを、たとえば、約5%の水酸化カリウム溶液で、調整してもよい。pHは、目的とする用途に基づいて調整することができる。たとえば、手袋を製造するためのポリイソプレンラテックスのpH範囲は、約10〜11である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の水性エラストマー分散体を調製するための好ましい方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1の工程および前記説明にしたがってポリイソプレンラテックスを調製する方法を、以下、実施例1として詳細に説明する。
【0073】
[実施例1−添加剤としてWingstay L、ZDECおよびDPGを加えたポリイソプレンラテックス]
【0074】
この実施例では、添加剤としてWingstay L、酸化防止剤(グッドイヤー(Goodyear)社より入手したもの)、およびジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)およびジフェニルグアニジン(DPG)、加硫促進剤(ともにFLexsys社より入手したもの)を、最初に溶媒に溶かす。溶液は、60mLのDCMに0.4gのWingstay Lを溶かし、10mLのDCMに0.2gのDPGを溶かし、10mLのDCMに0.1gのZDECを溶かした上で、これらを1リットルのビーカーに入れたペンタン(メルク(Merck)社より入手したもの)600mL中に加えることにより調製する。
【0075】
20gのポリイソプレンゴム(クレイトンIR(Kraton IR)社)を小片に切断し、600mLのペンタンと、前もって2phrのWingstay L、1phrのDPGおよび0.5phrのZDECを溶かし込んでおいた80mLのDCMとを含む添加剤溶液が入っており継続的に攪拌されているビーカーの中にゆっくりと加える。実施例1の濃度は、約2.9ポリイソプレン重量/溶媒体積である。約6%重量/体積程度の高濃度であってもよい。
【0076】
ビーカーは、蒸発を最小に抑えるため、たとえばポリエチレンシートでしっかり蓋をして、ゴム/添加剤/溶媒の混合物をゴムが完全に溶けるまで攪拌する。溶媒の温度は、約25〜32℃、より好ましくは約28〜30℃に維持される。
【0077】
ゴム/添加剤/溶媒の混合物を、適当な乳化剤と高剪断ミキサーを用いて水性乳濁液に転化させる。2%Nekal BX dry(BASF、68%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)の乳化剤溶液は、18gのNekal BX dryを900mLの水に溶かして、たとえば3%の水酸化カリウム溶液でpH10.5〜11.0に調整することによって調製される。そして、ポリイソプレンラテックス乳濁液は、ゴム/添加剤/溶媒溶液を、たとえば、Square Hole High Shear ScreenTMを装着した実験用Silverson L4RTミキサーにより約3500〜4500rpmで攪拌した乳化剤溶液内にゆっくりと投入することによって、調製される。
【0078】
この速度で約5分間攪拌後、ミキサーの速度を約6000〜7000rpmまで上げて、約10分間攪拌する。そして、ミキサーの速度を約500〜1000rpmまで下げて約5分間攪拌すると、その間に、形成された泡が壊れる。そして、混合速度を再度上げて6000〜7000rpmまで戻し、この速度での合計剪断時間が約10分になるまで混合を継続する。
【0079】
乳濁液は、その中に、25mLの水に溶かした0.45gのアルギン酸ナトリウムを加えて約1500rpmで5分間攪拌することによって濃縮される。混合物はモスリン布を通して濾過されて、分液漏斗に投入される。混合物を分液漏斗の中に約16〜20時間放置した後、乳濁液は、2層に分かれる。上側の層は、濃縮乳濁液(約700〜750mL)を含み、下側の水性層は、水と、おそらくは少量の乳濁液とを含むが、これは排出される。
【0080】
次に、たとえば、蒸発フラスコを約50〜55℃の温度の水槽に部分的に浸すビュッヒ社の回転蒸発装置のような実験用回転蒸発装置内で熱することにより、濃縮乳濁液から、溶媒(この実施例においては、ペンタンおよびDCM)を除去する。蒸発フラスコは、乳濁液の新しい薄膜を連続して形成させることにより蒸発が起こる表面積を拡げるために、約150〜200rpmで回転させる。
【0081】
溶媒を除去した後、ポリイソプレンラテックスを含む乳濁液を、たとえばアルギン酸ナトリウムを用いて、クリーミング処理することによって再び濃縮する。乳濁液の体積に基づき約0.1%のアルギン酸ナトリウムを(2%の水溶液として)乳濁液に加え、攪拌してよく混ぜ合わせる。そして、混合物を分液漏斗に移して、一晩、約16〜18時間の間放置すると、その間に混合物が2層に分かれた。上側の層は、濃縮ラテックスを含み、下側の層は、少量のラテックスが入ったやや濁った水溶液を含む。下側の水性層を排出し、濃縮ラテックスを得る。
【0082】
濃縮ラテックスは、さらに分離させるべく、分液漏斗中に保持しておく。約7日後、下側の主として水性の層を、再び排出する。ラテックスは、モスリン布を通して濾過され、そのpHは、たとえば5%の水酸化カリウム溶液で、10.6に調整される。
【0083】
図1の工程によるポリイソプレンラテックス調製の他の実施例を実施例2として以下に詳述する。
【0084】
[実施例2−添加剤としてWingstay L、ZDEC、DPGおよびMBTを加えたポリイソプレンラテックス]
【0085】
60mLのDCM(メルク社より入手したもの)に0.44gのWingstay L(グッドイヤー社より入手したもの,2phr)を溶かし、20mLのDCMに0.22gのDPG(Flexsys社より入手したもの,1phr)を溶かし、20mLのDCMに0.11gのZDEC(Flexsys社より入手したもの,0.5phr)を溶かし、50mLのアセトン(メルク社より入手したもの)に0.11gのMBT(メルク社より入手したもの,0.5phr)を溶かして、1リットルのビーカーに入れた600mLのペンタン(メルク社から入手したもの,ポリイソプレンの溶媒)にこれらの溶液を一度に一種ずつ加えることにより、4種の添加剤を含む溶液を調製する。
【0086】
22gのポリイソプレンゴム(クレイトンIR社)を小片に切断して、前記4種の添加剤があらかじめ溶かし込まれて継続的に攪拌されている溶媒混合物中にゆっくりと加える。ビーカーは、蒸発を最小に抑えるため、一枚のポリエチレンシートでしっかり蓋をして、ゴム/添加剤/ペンタン/DCM/アセトンの混合物をゴムが完全に溶けるまで攪拌する。溶媒混合物の温度は、好ましくは約25〜32℃、より好ましくは約28〜30℃に維持される。
【0087】
2%Nekal BX dry(BASF、68%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)乳化剤溶液を、18gのNekal BX dryを900mLの水に溶かして、たとえば3%の水酸化カリウム溶液でpH10.5〜11.0に調整することによって調製する。
【0088】
そして、ゴム/添加剤/溶媒溶液を、たとえば、Square Hole High Shear ScreenTMを装着した実験用Silverson L4RTミキサーにより約4000〜4500rpmで攪拌した乳化剤溶液内にゆっくりと投入することによって、ポリイソプレンゴム/添加剤/溶媒乳濁液を調製する。この速度で約5分間攪拌後、ミキサーの速度を約5800〜6000rpmまで上げて、約10分間攪拌を継続する。そして、ミキサーの速度を約500〜1000rpmまで下げて約5分間攪拌を継続すると、その間に、形成されている泡が壊れる。泡が壊れた後、混合速度を再度上げて5800〜6000rpmまで戻し、この速度で約10分間混合を継続する。
【0089】
乳濁液は、25mLの水に溶かした0.5gのアルギン酸ナトリウム(日本の君津化学工業株式会社から入手したもの)を加えて約1500rpmで5分間攪拌することによって濃縮される。混合物はモスリン布を通して濾過されて、分液漏斗に投入される。混合物を約16〜20時間放置した後、乳濁液は、2層に分かれる。上側の層は、濃縮乳濁液(約720mL)であり、下側の水性層は、少量の乳濁液を含むが、これは排出される。
【0090】
溶媒(この実施例においては、ペンタン/DCM/アセトン)は、たとえば、ビュッヒ回転蒸発装置における熱蒸発によって、約50〜55℃の温度の水槽に部分的に浸した蒸発フラスコ内に入れて熱することで、濃縮乳濁液から除去される。蒸発フラスコは、乳濁液の新しい薄膜を連続して形成させることにより蒸発が起こる表面積を拡げるために、約150〜180rpmで回転させる。蒸発が遅くなったところで(約2時間後)、熱水の温度を60〜65℃に上げて蒸発を完了(約3時間)させてもよい。合計蒸発時間は通常約5時間である。
【0091】
溶媒を除去した後、乳濁液(ポリイソプレンラテックスである)を、たとえばアルギン酸ナトリウムを用いて、クリーミング処理することによって再び濃縮する。乳濁液の体積に基づき約0.15%のアルギン酸ナトリウムを(2%の水溶液として)乳濁液に加え、攪拌してよく混ぜ合わせる。そして、混合物を分液漏斗に移して、11日間放置することによって、混合物が2層に分かれる。上側の層は、濃縮ラテックスを含み、下側の層は、おそらくは少量のラテックスが入った、やや濁った水溶液を含む。下側の水性層を排出し、濃縮ラテックスを得る。ラテックスは、モスリン布を通して濾過され、そのpHは、たとえば、5%の水酸化カリウム溶液で、10.9に調整される。
【0092】
たとえば実施例1および実施例2に記載した方法で調製された本発明の水性エラストマー分散体は、市販の従来型エラストマー分散体に匹敵する固形分、粒径、pH等の特性を示す。この特徴を実証するために、実施例1および2により調製した添加剤Wingstay L、DPGおよびZDECを添加したポリイソプレンラテックスの試料を、試験して、広く入手可能なKraton(R)IR401 PIラテックス製品の2つの異なる試料と比較した。下記表2に要約したデータによれば、実施例1および2の水性ポリイソプレンラテックスの体積平均粒径、固形分およびpHのような特性については、Kratonポリイソプレン製品に遜色ないことがわかる。
【0093】
【表2】

註記:粒径は、Malvern Instruments Ltd.社製のMastersizer Sを用いて計測した。
【0094】
上述の図1の諸工程によるポリイソプレンラテックス調製の追加実施例として、実施例1および2よりも促進剤濃度を高めた例を以下に実施例3〜5として説明する。実施例の対照として、異なる方法により調製したラテックスを、実施例3〜5のラテックスと対比するため同様の試験にかける。
【0095】
[実施例3〜5およびその対照−添加剤としてWingstay L、ZDEC、DPGおよびZMBTの量を変えて加えたポリイソプレンラテックス]
【0096】
実施例3〜5では、下記の表3に示すように、さまざまに異なる量のWingstay L、ZDECおよびDPGを、ポリイソプレンと合わせて、図1を参照して上述した方法にしたがって単一の分散体にする。実施例の対照は、表3に示すように、実施例3と同様の配合とするが、本発明の方法により調製するものではない。実施例の対照は、本発明の方法に替えて、米国特許第6,828,387号の実施例1(Example 1; col. 7, line 45 to col. 8, line 67参照)において説明されている方法により調製される。米国特許第6,828,387号では、促進剤はそれぞれ別の分散体として配合され、水にラテックスを含有させた溶液に個別に添加した。実施例の対照においては、促進剤であるZDEC、DPGおよびZMBTと、Wingstay Lとを、あらかじめ分散体の形態にしておいたものを、水溶液中のラテックスに加えて、混ぜ合わせた。
【0097】
実施例3〜5においては、実施例1および2の値よりもラテックス粒径が大きくなるよう、低速で乳濁液を攪拌した。実施例3および4では、高剪断攪拌速度を、10分5900rpm+/−100rpmに替えて、10分5000rpm+/−100rpmとした。実施例5では、攪拌速度を、10分5500rpm+/−100rpmとした。実施例3〜5における粒径を下記の表3に示す。
【0098】
実施例3〜5および対照から、それぞれ約25gのラテックスを量ってビーカーに入れ、磁石で攪拌した。さらに、S、ZnO、ZMBTを水性分散体として、カゼイン酸ナトリウムを水溶液として、下記の表3に示す量を、各ラテックスに加えた。対照については、Wingstay L、ZDECおよびDPGも分散体として加えた。調合したラテックスを約45%の全固形分となるよう希釈するため水を加えるとともに、調合したラテックスのpHを、約10.5になるよう希炭酸カリウムで調整した。そして、各ラテックス混合物は、モスリン布を通して濾過した。混合物は、周囲温度約28℃で約18時間連続攪拌した。
【0099】
約60mm×100mmの囲まれた領域を有する水平なガラス板上に約6〜8gのラテックスを流し込むことにより、ラテックスフィルムを調製した。ラテックスは、約24〜48時間放置し乾燥させた。乾燥したフィルムに、炭酸カルシウムや澱粉パウダー等の粘着防止剤を塗布し、フィルムをガラス板から剥がした。そして、フィルムは、1時間の間70℃の水中で浸出処理され、30分間空気中で乾燥させた。そして、フィルムは、約20分の間135℃の熱風炉に入れて硬化させた。硬化後のフィルムのダンベル状試験片が、ASTM金型Dを用いて物性試験用に切り抜かれ、ASTMのD412−98a試験法により試験された。さまざまな物性試験の結果を以下に表3として示す。
【0100】
【表3】

【0101】
実施例3の硬化フィルムは柔らかく粘性があるため試験できなかった。表3に示すように、ラテックス粒子に含まれるZDECの量を実施例3の0.5phrから実施例4の0.75phrに増やすと、硬化後のフィルムは、引っ張り強さが9.4MPaとなった。実施例対照のフィルムは、実施例4のフィルムより引っ張り強さが高かった。
【0102】
実施例5において、ラテックス粒子に含まれるZDECの量を0.5phrから0.75phrに、調合中のZMBTの量を0.5phrから0.69phrに増やすことで、米国特許第6,828,387号の実施例1に記載されている公知の方法を用いて調製された実施例対照により示された物性に匹敵する物性を有する硬化フィルムが得られた。総じて、表3の結果は、本発明により調製された新規のPIラテックスが、引っ張り強さのような物性において良好となることを示している。外科手術用手袋のためのASTM D3577−06 TypeII分類標準規格では、17MPaの最小引っ張り強さ、7.0MPaの500%伸張時における最大応力、650%の最小極限伸びが要求されている。
【0103】
別の手法として、水相への可溶度が低い促進剤、たとえば炭化水素鎖が長いものや分子量が高いものなどを選択するアプローチがある。そのような促進剤の例としては、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジノニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛、およびN−ドデシル−N−イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。このような促進剤は、ゴム相において可溶度が高く、水相において可溶度が低い。
【0104】
米国特許第6,828,387号において、混合物に加えたZDEC、ZMBTおよびDPGの量は、約0.50〜1.00phrの範囲であった。本発明では、これらの促進剤のそれぞれの量は、もっと高くしてもよい。特に、ZDECの量は、約0.2phr〜約7.0phr、好ましくは約0.5phr〜約3.0phrの範囲であってもよく、DPGの量は、約0.2〜10.0phr、好ましくは約0.5phr〜約4.0phrの範囲であってもよく、ZMBTの量は、約0.2phr〜約10.0phr、好ましくは約0.5phr〜約4.0phrの範囲であってもよい。
【0105】
本発明のプロセスによって製造されたラテックスにおいては、調合前に、添加剤がエラストマーにすでに含まれている。これは、添加剤を、適切な溶剤に溶解して、ポリイソプレン溶液と合わせてから、分散体にしているからである。この方法は、米国特許第6,828,387号の実施例1や、前記実施例対照に記載されている方法のような、各成分(エラストマーおよび添加剤)の分散体/乳濁液をサプライヤーから別々に入手してそれらを一緒にする他の公知の方法とは異なる。
【0106】
分散体/乳濁液は、本質的に、熱力学的に不安定な系であり、複数配合プロセスにおいては、望ましい均一な混合物を得るためには多くの困難がある。特に、個々の分散体/乳濁液系のそれぞれの安定化を調和させることは難しく、そのため、粒径分布に大きなばらつきが生じることが多い。本発明の方法によれば、この問題を克服できる。
【0107】
さらに、これら3種の添加剤を含む溶液をラテックスに転化させるプロセスは、添加剤を加えていないポリイソプレンの溶液を、ラテックスに転化させるプロセスと同様である。したがって、この方法は、余分なエネルギーを必要としない。このプロセスは、エネルギー、装備コスト、原料(分散体を安定化させるのに必要とされる界面活性剤の量が少ない)、およびこれら3種の成分を分散させるのに必要な手間が、米国特許第6,828,387号の実施例1に記載の方法と比べて節約できる。
【0108】
Wingstay L、ZDECおよびDPGに加え、ポリイソプレンの共重合体を、図1に概略を示した方法に沿った実施例6および7として後述する方法により、ポリイソプレンラテックスの分散相に入れてもよい。
【0109】
[実施例6−添加剤としてWingstay L、ZDEC、DPGおよびSIS(Quintac3421)を加えたポリイソプレンラテックス]
【0110】
この実施例において用いたポリイソプレン共重合体は、商品名をQuintac3421というゼオンケミカルズ(Zeon Chemicals)社から入手したスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ジブロック共重合体である。Quintac3421は、スチレンを14%含有する。60mLのDCM(メルク社より入手したもの)に0.44gのWingstay L(グッドイヤー社より入手したもの,2phr)を溶かし、20mLのDCMに0.22gのDPG(Flexsys社より入手したもの,1phr)を溶かし、20mLのDCMに0.165gのZDEC(Flexsys社より入手したもの,0.75phr)を溶かし、30mLのトルエン(メルク社より入手したもの)に3.3gのQuintac3421(ゼオンケミカルズ社より入手したもの,15phr)を溶かすことにより溶液を調製した。そして、この溶液を一度に一種類ずつ、1リットルのビーカーに入った600mLのペンタン(メルク社より入手したもの,ポリイソプレン用の溶媒)に加えた。Quintac3421のトルエン溶液は、非常に粘度が高く、ガラス容器に付着した残滓をすすぐために3mLのトルエンを使用した。
【0111】
22gのポリイソプレンゴム(クレイトンIR社)を小片に切断して、前記4種の添加剤があらかじめ溶かし込まれて継続的に攪拌されている溶媒混合物中にゆっくりと加えた。ビーカーは、蒸発を最小に抑えるため、一枚のポリエチレンシートでしっかり蓋をしてゴムバンドで括り、ゴム/添加剤/ペンタン/DCM/トルエンの混合物を約3時間磁気攪拌することでゴムを完全に溶け込ませた。溶媒混合物の温度は、約28〜30℃に維持した。
【0112】
18gのNekal BX dryを900mLの水に溶かして、3%の水酸化カリウム溶液数滴によってpH10.5〜11.0に調整することによって、2%Nekal BX dry(BASF、68%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)乳化剤溶液を調製した。
【0113】
そして、ゴム/添加剤/溶媒溶液を、Square Hole High Shear ScreenTMを装着した実験用Silverson L4RTミキサーにより4400〜4600rpmで攪拌した乳化剤溶液内にゆっくりと投入することによって、ポリイソプレンのゴム/添加剤/溶媒乳濁液を調製した。この速度で5分間攪拌後、ミキサーの速度を4900〜5100rpmまで上げて、約10分間攪拌を継続した。そして、ミキサーの速度を約1000rpmまで下げて約5分間攪拌を継続したところ、その間に、形成された泡が壊れる。これらの条件下で、余分な発泡は認められなかった。
【0114】
乳濁液を、25mLの水に溶かした0.5gのアルギン酸ナトリウム(日本の君津化学工業株式会社から入手したもの)を加えて約1500rpmで5分間攪拌することによって、濃縮した。混合物を、モスリン布を通して濾過し、分液漏斗に投入した。混合物を約16〜20時間放置した後、乳濁液は、2層に分かれた。上側の層は、濃縮乳濁液(約810mL)であり、下側の水性層は、少量の乳濁液を含むものであったが、これは排出した。
【0115】
ビュッヒ回転蒸発装置における熱蒸発によって、約45℃の温度で3時間、続けて50℃で4時間、水槽に部分的に浸した蒸発フラスコ内に入れて乳濁液を熱することで、有機溶媒ペンタン/DCM/トルエンを濃縮乳濁液から除去した。蒸発フラスコは、乳濁液の新しい薄膜を連続して形成させることにより蒸発が起こる表面積を拡げるために、約210rpmで回転させた。エチレングリコールを約−15℃〜−25℃の温度で蒸発装置の冷却コイルを通して循環させるとともに蒸発装置の受けフラスコを上記温度のエチレングリコール槽に浸すことによって、溶媒蒸気を濃縮し回収した。その後、沸点が高いトルエンを約60℃で、約100torrに減圧した状態で4時間蒸発させた。濃縮ラテックスの重量は、246.2gであった。
【0116】
ラテックスを、アルギン酸ナトリウムを用いたクリーミングによってさらに濃縮した。0.25gのアルギン酸ナトリウムを15mLの水に溶かしてラテックスに加え、攪拌することでよく混ぜ合わせた。そして、混合物を分液漏斗に移し、10日間放置したところ、その間に混合物は2層に分離した。上側の層は、濃縮ラテックスを含み、下側の層は、少量のラテックスでやや濁った水溶液を含むものであった。下側の水性層を排出して、濃縮ラテックスを得た。ラテックスは、モスリン布を通して濾過し、そのpHを5%水酸化カリウム溶液で10.95に調整した。得られた濃縮ラテックスの重量は、42.16g、全固形分は55.4%であった。平均体積粒径は0.69μmであった。
【0117】
このラテックスに、水溶液として添加する0.75phrのカゼイン酸ナトリウム、分散体として添加する1.25phrの硫黄、分散体として添加する0.5phrの酸化亜鉛、および分散体として添加する0.69phrのZMBTを配合した。全固形分が約45%になるように、混合物に水を加えて希釈し、希薄水酸化カリウム溶液で、配合ラテックスのpHを約10.5に調整した。ラテックスは、モスリン布を通して濾過し、ビーカーに入れて蓋をし、周囲温度(26〜28℃)で20時間、磁石で攪拌した。60mm×100mmの囲まれた領域を有する水平なガラス板上に7〜8gのラテックスを流し込むことにより、ラテックスフィルムを調製した。ラテックスは、約48時間放置し乾燥させた。乾燥したフィルムの表面に炭酸カルシウムパウダーを塗布し、フィルムをガラス板から剥がした。そして、フィルムを1時間の間70℃の水中で浸出処理し、30分間空気中に吊して乾燥させた。そして、フィルムは、約20分間、135℃の熱風炉に入れて硬化させた。
【0118】
物性試験用に、硬化後のフィルムを、ASTMの金型Dを用いてダンベル状試験片に切り抜き、下記の表4に示すように、ASTMのD412−98a法によって試験した。
【0119】
[実施例7−添加剤としてWingstay L、ZDEC、DPGおよびSIS(Vector 4111A)を加えたポリイソプレンラテックス]
【0120】
この実施例で使用したポリイソプレンの共重合体は、商品名をVector 4111AというSISトリブロック共重合体(Dexco Polymers社より入手したもの)であり、スチレンを18%含有するものである。60mLのDCM(メルク社より入手したもの)に0.44gのWingstay L(グッドイヤー社より入手したもの,2phr)を溶かし、20mLのDCMに0.22gのDPG(Flexsys社より入手したもの,1phr)を溶かし、20mLのDCMに0.165gのZDEC(Flexsys社より入手したもの,0.75phr)を溶かし、30mLのトルエン(メルク社より入手したもの)に3.3gのVector 4111A(Dexco Polymers社より入手したもの,15phr)を溶かして、1リットルのビーカーに入れた600mLのペンタン(メルク社より入手したもの、ポリイソプレン用の溶媒)にこれらの溶液を一度に一種類ずつ加えることにより、溶液を調製した。Vector 4111Aのトルエン溶液は、非常に粘度が高く、ガラス容器に付着した残滓をすすぐために3mLのトルエンを使用した。
【0121】
22gのポリイソプレンゴム(クレイトンIR社)を小片に切断して、前記4種の添加剤があらかじめ溶かし込まれて継続的に攪拌されている溶媒混合物中にゆっくりと加えた。ビーカーは、蒸発を最小に抑えるため、一枚のポリエチレンシートでしっかり蓋をしてゴムバンドで括り、ゴム/添加剤/ペンタン/DCM/トルエンの混合物を約3時間磁気攪拌することでゴムを完全に溶け込ませた。溶媒混合物の温度は、約28〜30℃に維持した。
【0122】
18gのNekal BX dryを900mLの水に溶かして、3%の水酸化カリウム溶液数滴によってpH10.5〜11.0に調整することによって、2%Nekal BX dry(BASF、68%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)乳化剤溶液を調製した。
【0123】
そして、ゴム/添加剤/溶媒溶液を、Square Hole High Shear ScreenTMを装着した実験用Silverson L4RTミキサーにより4400〜4600rpmで攪拌した乳化剤溶液内にゆっくりと投入することによって、ポリイソプレンのゴム/添加剤/溶媒乳濁液を調製した。この速度で5分間攪拌後、ミキサーの速度を4900〜5100rpmまで上げて、約10分間攪拌を継続した。そして、ミキサーの速度を約1000rpmまで下げて約5分間攪拌を継続したところ、その間に、形成された泡が壊れるが、これらの条件下で、余分な発泡は認められなかった。
【0124】
乳濁液を、25mLの水に溶かした0.5gのアルギン酸ナトリウム(日本の君津化学工業株式会社から入手したもの)を加えて約1500rpmで5分間攪拌することによって濃縮した。混合物を、モスリン布を通して濾過してから分液漏斗に投入した。混合物を約16〜20時間放置した後、乳濁液は2層に分かれた。上側の層は、濃縮乳濁液(約800mL)であり、下側の水性層は少量の乳濁液を含むものであり、これは排出した。
【0125】
ビュッヒ回転蒸発装置における熱蒸発によって、約45℃の温度で3時間、続けて50℃で4時間、水槽に部分的に浸した蒸発フラスコ内に入れて乳濁液を熱することで、有機溶媒ペンタン/DCM/トルエンを濃縮乳濁液から除去した。蒸発フラスコは、乳濁液の新しい薄膜を連続して形成させることにより蒸発が起こる表面積を拡げるために、約210rpmで回転させた。エチレングリコールを約−15℃〜−25℃の温度で蒸発装置の冷却コイルを通して循環させるとともに蒸発装置の受けフラスコを上記温度のエチレングリコール槽に浸すことによって、溶媒蒸気を濃縮し回収した。その後、沸点が高いトルエンを約60℃で、約100torrに減圧した状態で4時間蒸発させた。濃縮ラテックスの重量は、241.0gであった。
【0126】
ラテックスを、アルギン酸ナトリウムを用いたクリーミングによってさらに濃縮した。0.25gのアルギン酸ナトリウムを15mLの水に溶かしてラテックスに加え、攪拌することでよく混ぜ合わせた。そして、混合物を分液漏斗に移し、10日間放置することによって、混合物は2層に分離した。上側の層は、濃縮ラテックスを含み、下側の層は、少量のラテックスでやや濁った水溶液を含むものであった。下側の水性層を排出して、濃縮ラテックスを得た。ラテックスは、モスリン布を通して濾過し、そのpHを5%水酸化カリウム溶液で10.99に調整した。得られた濃縮ラテックスの重量は、41.52g、全固形分は54.27%であった。平均体積粒径は0.57μmであった。
【0127】
ラテックス25gに、水溶液として添加する0.75phrのカゼイン酸ナトリウム、分散体として添加する1.35phrの硫黄、分散体として添加する0.60phrの酸化亜鉛、および分散体として添加する0.75phrのZMBTを配合した。混合物に水を加えて全固形分が約45%になるまで希釈し、希薄水酸化カリウム溶液で、配合ラテックスのpHを約10.5に調整した。そして、ラテックスは、モスリン布を通して濾過し、ビーカーに入れて、蓋をし、周囲温度(約26〜28℃)で40時間、磁石で攪拌した。この実施例では、ラテックスの攪拌は、実施例6でのように20時間ではなく、40時間行った。
【0128】
上述の実施例6において説明したように、配合物を転化させて硬化フィルムにした。物性試験用に、硬化後のフィルムを、ASTMの金型Dを用いてダンベル状試験片に切り抜き、ASTMのD412−98a法によって試験した。
【0129】
実施例6および7の硬化ラテックスフィルムの物性を試験し、ASTM D3578−05ゴム検査手袋用標準規格のタイプII分類と比較した。結果を集約して表4に示す。
【0130】
【表4】

【0131】
表4に示すように、実施例6および7の硬化後のポリイソプレン−SISラテックスフィルムはASTM D3578−05標準に適合した。さらに、500%伸びにおける応力(モジュラス)、M500の低さは驚くべき水準を示し、上述の硬化後のポリイソプレンフィルム(M500が1.7MPaとなる前記実施例対照参照)に匹敵するものであった。低いモジュラスは、製造される製品が柔らかく快適な感触を持ち、使用者に良好な触感を与えるので、望ましい特性である。実施例6および7のフィルムのM500値は、約3.9MPa(2.6〜5.0MPaの範囲)のM500値を有する天然ゴムの手袋よりも著しく低い。ポリイソプレン手袋は、通常、約2.0MPa(1.4〜2.5MPaの範囲)のM500値を有する。
【0132】
本発明の方法は、SISを分散相に対して(全分散体固形分の重量比で)20%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは40%以下、そして最も好ましくは49%以下、含ませるものとすることができる。通常、SISは、硬質の固体ではなく、商用SISラテックスは市販されていないので、硫黄、加硫促進剤、酸化防止剤等に使用されるもののような分散体を生成するために粉砕することができない。したがって、SISは、ポリイソプレンラテックスと混合して従来の方法で製品を製造することはできない。
【0133】
ポリイソプレンのようなエラストマーと組み合わせてSISを使用する利点は、SISがポリイソプレンに比べ、極めて安価であり、ラテックスに用いられるポリイソプレンの量を、SISを含めることにより、少なくすることで、原料費の削減が可能となることである。分散相にSISを含めることによって、加工面での優位性が得られるとともに、引裂き強度、突刺し強度、耐溶媒性および劣化耐性といった特性を向上させることができる。
【0134】
実施例6および7に記載した方法は、ポリイソプレンのようなエラストマーにSISを添加することに限定されない。上述のように、本発明のプロセスを利用してエラストマーと共に他の重合体を含めてもよい。また、SISを添加物を加えずにエラストマーと合わせてもよい。そして、そのような添加物のないエラストマー−SISラテックスは、上述の方法を利用することによって、硬化フィルムに転化させてもよい。
【0135】
本発明のラテックス、当該ラテックスの製造プロセス、および当該ラテックスから製造された物品は、高い成膜性(従来の組成物に比べて少ない界面活性剤/乳化剤)、手袋等の物品の改造性(劣化しやすい添加剤の保護)、および高い調合特性(調合安定性および適合性)といった利点を有する。また、当該ラテックスは、手袋等の物品の全体的な特性向上(柔らかさ、バリヤ性および酸化分解耐性)、たとえば掃除作業員用手袋の表面汚染の低減(表面への不純物転移の抑制)、調合効率の向上(拡散損失ない添加物の利用)、マチュレーションプロセスの改善(成分/添加剤の拡散プロセスがない)、および製造コストの削減(個別の添加物製造が少ない)をもたらす。
【0136】
本発明の水性ポリイソプレンラテックスは、本発明の水性ポリイソプレンラテックスのエラストマー製品がラテックス中に広い範囲の添加物を含めてもよいのでさまざまな用途において実質的な性能の向上をもたらすものであるため、クレイトン社製品よりも利便性が高い。性能の向上は、乳化前にポリイソプレン溶液中に溶かす添加剤の性質および量に依存する。たとえば、本発明の水性エラストマー分散体から製造された手袋等の製品の有利な点としては、バリヤ性能、触覚、触感、引裂き抵抗、および器具把持性等の機械的特性や、抗菌活性、静電特性、清浄な手袋表面、および汗吸収等の手袋表面の改善された性能が挙げられる。このように、本発明により、以前可能であった範囲より幅広い範囲の適用分野において製品の個々の特性を向上させるために添加剤を選択することができる。
【0137】
本発明の水性(aqueous water-based)エラストマー組成物は、医療用手袋、コンドーム、プローブカバー(すなわち、超音波プローブ用およびトランスデューサープローブ用)、デンタルダム、指サック、カテーテル等を含む(もっとも、これらに限定されない)さまざまな物品を製造するために加工することができる。当該組成物を加工するための方法としては、凝着浸漬、分散浸漬、乾燥、浸出およびオーブン硬化を含むものとすることができるが、これらに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーおよび少なくとも一種の添加剤を含む分散相と、
水相と
を含む水性エラストマー分散体。
【請求項2】
前記エラストマーが、硬化性脂肪族共役ジエンエラストマーである、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項3】
前記エラストマーが、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブロック共重合体、およびブチルゴムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項4】
前記エラストマーが、約100,000〜約3,000,000の分子量を有する、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項5】
前記少なくとも一種の添加剤が、硫黄/硫黄ドナー、過酸化物硬化/架橋剤、促進剤、活性剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、オゾン分解防止剤、顔料、充填剤、抗菌剤、指示薬、および付加重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項6】
前記少なくとも一種の添加剤の量が、当該エラストマー分散体の全固形分の重量比で約0.5〜約49%である、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項7】
硫黄ドナーが、多硫化チウラム類および多硫化キサントゲン類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項8】
過酸化物硬化/架橋剤が、過酸化ジベンゾイル類、過酸化ジクミル類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項9】
促進剤が、ジチオカルバメート類、チアゾール類、硫化チウラム類、グアニジン類、およびチオ尿素類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項10】
活性剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、および酸化鉛からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項11】
酸化防止剤が、ヒンダードフェノール類、ヒンダードポリフェノール類、ヒンダードフェノール/ヒンダードポリフェノール類、アミン類、トリアジノン誘導体、多芳香族アミン類、フェノール酸化防止剤ヒドラジド類、フェノール類、クレゾール類、およびスチレン化フェノール類からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項12】
安定剤が、アルカリ類、界面活性剤、およびアルカリカゼイン塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項13】
前記オゾン分解防止剤が、アルキル/アリールp−フェニレンジアミン類、有機粘土オゾン分解防止剤錯体、官能化ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、p−フェニレンジアミン類、ろう、重合体オゾン分解防止剤、およびオゾン不活性重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項14】
抗菌剤が、水不溶性有機フェノール化合物、無機銀化合物、亜鉛化合物、銅化合物、脂肪酸エステル、シリコーン−アンモニウム重合体、窒素含有重合体、およびヒドロキシ安息香酸類含有重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項15】
指示薬が、水分指示薬、着色剤、フタレイン染料、有機酸塩、遷移金属、ソルバトクロミック染料、微生物指示薬、ソルバトクロミック染料、酸性pH染料、アントシアニン染料、血液指示薬、酸塩基指示薬、および化学発光体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項16】
前記付加重合体が、液状ポリイソプレン、分子量が約20,000〜100,000のポリイソプレン、ポリイソプレンの異性体または類似体、ポリイソプレンの末端官能化誘導体、ポリイソプレンの共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、および前記重合体の修飾形態からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項17】
前記スチレンブロック共重合体が、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体である、請求項16の水性エラストマー分散体。
【請求項18】
前記付加重合体が、前記分散相における前記付加重合体の(重量比)約0.5〜約49%の範囲であることを特徴とする、請求項16の水性エラストマー分散体。
【請求項19】
前記加硫促進剤が、約0.2〜約10.0phrの範囲の量添加されていることを特徴とする、請求項5の水性エラストマー分散体。
【請求項20】
前記水相が、水溶性成分を含むことを特徴とする、請求項1の水性エラストマー分散体。
【請求項21】
水溶性成分の量が、当該水性エラストマー分散体の全固形分の重量比で10%以下である、請求項20の水性エラストマー分散体。
【請求項22】
請求項1の水性エラストマー分散体から製造された製品。
【請求項23】
該製品が、手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、およびカテーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22の製品。
【請求項24】
エラストマーと少なくとも一種の添加剤と溶媒系とを含むエラストマー/添加剤溶液を調製するステップと、
前記エラストマー/添加剤溶液を乳化し、乳濁液を生成するためのステップと、
前記乳濁液を濃縮し、濃縮乳濁液を生成するためのステップと、
前記濃縮乳濁液から前記溶媒系を実質的に全て除去し、実質的に無溶媒の分散体を生成するためのステップと、
任意選択的に、前記実質的に無溶媒の分散体を濃縮するステップと
を含む水性エラストマー分散体を調製する方法。
【請求項25】
前記エラストマーが、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレンブロック共重合体、およびブチルゴムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項24の方法。
【請求項26】
前記エラストマーが、約100,000〜約3,000,000の分子量を有する、請求項25の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一種の添加剤が、硫黄/硫黄ドナー、過酸化物硬化/架橋剤、加硫促進剤、加硫活性剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、オゾン分解防止剤、顔料、充填剤、抗菌剤、指示薬、および付加重合体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項25の方法。
【請求項28】
前記少なくとも一種の添加剤の量が、前記エラストマー分散体の全固形分の重量比で約0.5〜49%である、請求項27の方法。
【請求項29】
前記溶媒系が、第1の溶媒および第2の溶媒を含む、請求項24の方法。
【請求項30】
前記エラストマーが前記第1の溶媒に可溶で、前記少なくとも一種の添加剤が前記第2の溶媒に可溶である、請求項29の方法。
【請求項31】
前記第1の溶媒が一種以上の溶媒を含み、前記第2の溶媒が一種以上の溶媒を含む、請求項29の方法。
【請求項32】
前記乳化するステップが、乳化剤を添加することを含む、請求項24の方法。
【請求項33】
前記乳化するステップが、高剪断型ミキサーで混合することをさらに含む、請求項32の方法。
【請求項34】
前記濃縮するステップのうちの一方もしくは両方が、クリーミング剤を添加することを含む、請求項24の方法。
【請求項35】
前記濃縮するステップのうちの一方もしくは両方が、濃縮物と水溶液とを分離することをさらに含む、請求項34の方法。
【請求項36】
前記濃縮するステップのうちの一方もしくは両方が、連続遠心分離機を用いて遠心分離することによって行われることを特徴とする、請求項24の方法。
【請求項37】
前記除去するステップが、前記濃縮後の溶液から前記溶媒系を蒸発させることを含む、請求項24の方法。
【請求項38】
前記除去するステップが、前記溶媒系を蒸発させるために前記濃縮後の溶液を加熱することを含む、請求項24の方法。
【請求項39】
前記水性エラストマー分散体のpHを調節するステップをさらに含む、請求項24の方法。
【請求項40】
前記水性エラストマー分散体の全固形分が、重量比で約45〜65%である、請求項24の方法。
【請求項41】
前記水性エラストマー分散体から物品を製造するステップをさらに含む、請求項24の方法。
【請求項42】
前記物品が、手袋、コンドーム、プローブカバー、デンタルダム、指サック、およびカテーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項41の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−518233(P2011−518233A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550898(P2010−550898)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/037130
【国際公開番号】WO2009/114788
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(397037834)アレジアンス、コーポレイション (21)
【住所又は居所原語表記】1430 Waukegan Road, Waukegan, Illinois 60085 United States of America
【Fターム(参考)】