説明

水晶体変化による老眼治療

本発明の実施態様は、ヒトの眼で老眼を治療するための方法および薬学的組成物に関する。実施態様によれば、薬学的組成物は、老眼の原因となる眼内の水晶体内結合の破壊と還元によって眼の調節能力の変化をもたらすために眼に投与される。該組成物は、不活性状態で投与され、その後に活性化されて治療効果を発揮してもよい。

【発明の詳細な説明】
【出願の利益】
【0001】
[0001] 本出願は、2002年1月18日出願の米国出願シリアル番号10/050,879の一部継続出願である。米国出願シリアル番号10/050,879は、2001年8月16日出願の米国出願シリアル番号09/930,287の一部継続出願であり、当該出願は現在取り下げられ、2001年1月19日出願の仮出願番号60/262,423に対して35 USC 119(e)の優先権を主張する。米国出願シリアル番号09/930,287は、2000年8月16日出願の仮出願番号60/225,659に対して35 USC 119(e)の優先権を主張する。上記同定された出願の各々は、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
[0002] 本発明は、老眼を解消および治療するための方法および装置に関する。
【発明の背景】
【0003】
[0003] 老眼は、44歳を超えたほとんど全ての人の問題である。ジョブソン・オプティカル・データベースによれば、45人中93%以上の人が老眼である。老眼は、加齢によって起こる遠近調節力の段階的な衰えによって起こる。Adler’s Physiology of the Eye(参照によって本明細書中に組み込まれる)によれば、ヒトの遠近調節幅は年齢とともに衰え、遠近調節力自体は50〜55歳までに実質的に喪失する。調節能力(米国特許第5,459,133号(Neufeld)によって定義、その背景情報については参照によって本明細書中に組み込まれる)とは、水晶体の形状をより凸面に変えることによって近いものに焦点に合わせる眼の能力である。
【0004】
[0004] 調節反応に関与する眼球組織には、水晶体、小帯、水晶体包および毛様体筋が含まれる。これらのうち、水晶体が中心組織である。これらの構造は一緒になって機能し、水晶体の形状を変えることによって近い物体に焦点を合わせることを可能にする。水晶体は、前房と、虹彩による瞳孔開口部後方の後房との間に位置する。水晶体は、放射状方向づけられた小帯線維の列によって支持される。小帯線維は、水晶体の側方端から外周の毛様体筋の内側境界まで延びている。毛様体筋は、眼の強膜被膜に取り付けられる。眼を休めたとき、遠い場所に焦点が定められ、水晶体はいくらか平坦または凸面度が低下する。この形状は、小帯によって水晶体末端に及ぼされる張力によるものである。小帯は、毛様体に向かって水晶体の端を引っ張る。
【0005】
[0005] 調節の間、水晶体の形状は、毛様体筋の収縮を通してより凸面になる。つまり、小帯の毛様体結合部を水晶体に向かって動かし、前小帯への張力を減少させる。この張力の減少は、水晶体の中心領域の凸面度を増加させるので、近い物体が網膜上に像として結ばれる。造られることを可能にする。網膜の近くにはっきりとした像を結ぶ能力を導く、特に水晶体、小帯、毛様体、内側直筋および虹彩の調整力に関するプロセスが、調節プロセスである。
【0006】
[0006] いくつかの理論が、加齢にともなう調節力の喪失を説明するために提示されている。これらの理論には、加齢に伴う水晶体の硬化、毛様体筋の筋力喪失、水晶体の物理的成長に関連した要因、および水晶体包の弾力の喪失が含まれる。毛様体筋の筋力喪失に関しては、年齢に関係した形態学的変化があるにもかかわらず、毛様体筋の筋力を減少させる証拠に乏しい点に注意が必要である。事実、ピロカルピンの影響を受けて、毛様体筋は、老眼でも活発に収縮する。
【0007】
[0007] 水晶体はヒトの一生を通して成長し、小帯の作用が水晶体の形状に変化を与えるのを妨げるという理論が提唱されてきた。この可能性を探る最近研究は、あまり広い支持を受けなかった。水晶体の成長の大半は、その直径方向ではなく前後方向である。
【0008】
[0008] 水晶体包の変化に関しては、事実、水晶体包の弾力の減少が老眼の原因因子であると仮定されてきた。さらに、水晶体包の弾力のヤング率が若年者から60歳になるまでに約50%も減少し、調節能力が98%も減少することが明らかになっている。結果として、老眼の主因は、現在、「水晶体の硬化症」または水晶体の硬化であると考えられている。
【0009】
[0009]白内障は、水晶体の透明度が失われた状態である。白内障の研究は、水晶体および包の変化に対する洞察を与える。通常の老人性白内障は、眼から取り出したとき、かなりの円板形状であり、その形状は硬い水晶体物質によって与えられる。液化性過熟白内障は、弾性の水晶体包によって抽出され、集められたとき球形である。これは、老眼と関連した水晶体の変化を元に戻すことができ、かつ水晶体包がまだ十分に弾力的である間接的な証拠である。
【0010】
[0010] 今のところ、老眼の一般的治療には、拡大鏡、二重焦点眼鏡または単眼視用コンタクトレンズが含まれる。これらの溶液の全ては、装具の使用を必要とするといったさらなる欠点を有する。
【0011】
[0011] 老眼を治療するための代わりの理論には、強膜の伸張と角膜再構築が含まれる。このような技術の有効性は十分に確立されておらず、重要なことに、これらの技術は、以下に詳細に説明するように、通常の老化現象を経た水晶体の調節幅の喪失において、本出願の発明者らが本質的な因果関係があると考えているものを取り除くものではない。さらに、強膜の伸張と角膜再構築は、水晶体および/または角膜の形態における巨視的変化を伴うので、老眼を解消することはできない。
【0012】
[0012] 最後に、多焦点屈折表面を生み出す角膜再構築プロセス用のエキシマー・レーザーの使用が、特許第5,395,356に開示されている。この方法は有望ではあるが、水晶体の年齢変化を補正するために角膜の構造的変化を必要とする。老眼によってもたらされる変化を元に戻そうとするというよりはむしろ、これらの技術は、眼球構造を変えることによって調節機能の喪失を補正しているに過ぎない。
【発明の概要】
【0013】
[0013] 特定の理論にも拘束されることなく、現在、老眼は水晶体の硬化によって引き起こされると考えられている。これは、構造タンパク質の変化または水晶体線維間の癒着の増加によるものである。水晶体内粘度が水晶体内の特定の化学的結合構造の形成の結果として年齢と共に増加すると考えられている。従って、本発明は、水晶体の治療を通して水晶体の粘度を低下させ、弾力と運動能を水晶体線維に回復させ、かつ水晶体の調節幅を増加させる、老眼を予防および解消させるための方法および装置に関する。
【0014】
[0014] 本発明はまた、構造の顕著な変化および/または調節過程に関連した眼の成分、特に水晶体および/または水晶体包を含む分子の相互作用をもたらす、老眼を解消または治療する方法に関する。
【0015】
[0015] 一実施態様において、本発明は、水晶体の調節幅を回復することによって老眼を解消する、そして他の好ましい実施態様において、その回復した調節幅を失う水晶体の傾向を減少させることによって老眼を解消する新規な分子手法を提供する。
【0016】
[0016] 本発明の他の実施態様において、老眼の発症は、水晶体の弾力および調節能力が回復する治療を定期的に施すことによって予防する。30年代半ばから後半あるいはより若い世代の人の眼に本明細書中に記載された治療を適用することによって、眼の調節力が2.5ジオプター未満になる調節力の喪失によって定義されるような老眼の発症を回避することができる。本発明の一実施態様において、老眼を予防または解消させる目的の治療は、患者の一生を通して適宜繰り返される。治療の頻度は、回復の必要のある調節力喪失の程度、一手順で安全に回復できる調節の量、および所望の回復の度合によって決定される。
【0017】
[0017] 一実施態様において、本発明は、眼の構造、特に水晶体および水晶体包の構造を構成する分子中のジスルフィド結合を破壊することによって老眼を解消および/または治療するための方法に関する。ジスルフィド結合は、調節幅の段階的喪失の実質的原因と考えられている。他の実施態様において、ジスルフィド結合の破壊は、ジスルフィド結合の破壊によって形成されるシステイン分子中の硫黄部位の化学的修飾によって達成される。このような化学的修飾は、硫黄部分に新たなジスルフィド結合を形成させる可能性が低い。この方法は、新たなジスルフィド結合を形成する可能性を減少させることによって老眼の再発を予防および/または減少させる方法を含む。特に、この発明は、この方法は、(1)ヒトの水晶体の調節能力の変化を引き起こす様々な還元剤を使用し、および/またはヒト水晶体の調節能力の変化に影響を与える適合したエネルギーの使用によって、ヒト水晶体の調節能力の変化に影響を与える。水晶体線維を架橋しかつ水晶体粘度を増加させ、水晶体皮質および水晶体核の硬化を引き起こすジスルフィド結合を破壊することによって、本発明は、水晶体皮質、水晶体核、および/または水晶体包の弾力および伸長性を増加させると考えられている。
【0018】
[0018] 老眼または水晶体の調節幅の喪失は、しばしば45歳以上の人で進行し、老眼鏡の形態における数種類の拡大鏡または他の処置が必要となる。調節幅の喪失は、45歳前後の年齢の人で起こり得ることを理解すべきである。従って、本発明は、あらゆる特定の年齢の人における老眼の治療に限定されるものとして解釈されるべきではない。本発明は、ある程度まで回復が望まれるまでに調節幅が減少した人において最も有用である。しかしながら、本発明は、老眼の修正に限定されず、老眼の予防のためにも使用することができる。
【0019】
[0019] 本発明の一実施態様において、老眼を解消または予防する方法は、少なくとも約0.5ジオプターまでの調節幅の増加をもたらす。本発明の他の実施態様において、老眼を解消または予防する方法は、少なくとも約2.0ジオプターの調節幅の増加をもたらす。さらに他の実施態様において、本発明の老眼を解消または予防する方法は、少なくとも約5ジオプターまで調節幅の増加をもたらす。本発明の他の実施態様において、本発明の老眼を解消または予防する方法は、水晶体の調節幅の増加によって、2.5ジオプターまたはそれ以上の正常な調節幅をもつ水晶体への回復をもたらす。水晶体の調節幅を正常な調節幅にまで回復させることは明らかに最も利益あることであるが、一方、より少ない程度の回復もまた有益であることに留意したい。例えば、幾つかのケースにおいて、進行した老眼は調節幅の深刻な減少をもたらすので、調節幅の完全回復の見込みはない。
【詳細な説明】
【0020】
[0020] 水晶体の調節幅は、ジオプター(D)で計量される。調節能力の喪失は、非常に若い年齢、例えば平均的な眼の調節力が10Dである10歳までに始まり、30歳で5D、40歳でたった2.5Dまで調節能力が低下する。老眼ではない人(すなわち、水晶体が正常に調節能力を発揮する人)の水晶体は、典型的には約2.5ジオプターまたはそれ以上の調節幅を有する。用語「老眼の回復」または「老眼の治療」は、本明細書中で使用されるとき、水晶体の調節幅を増加することを意味する。
【0021】
[0021] 上述したように、水晶体の非弾力性またはその硬化は、老眼の原因と考えられる。水晶体の硬化は、構造的タンパク質の変化または水晶体線維間の増加した接着が原因である。さらに、水晶体粘度がまた、水晶体内の一定の化学結合構造の増加した濃縮が原因で年齢とともに増加した。一実施態様において、本発明は、皮質水晶体線維間の分子結合および/または細胞結合を変化させ、その運動を互いについて自由にする。水晶体器官の増加した弾性は、調節幅の喪失を回復できる。特に、適切な調節幅を担う眼の構造は、水晶体の硬化および調節幅の同時的喪失における実質的要因である。
【0022】
[0022] 従って、本発明の一実施態様において、治療プロセスは、ジスルフィド結合を破壊し、その後に新たに形成された硫黄部位を、還元剤、例えば水素原子を与えるグルタチオンでプロトン化することを含む。該工程は同時かつ継続的に行われ得る。いずれの場合においても、還元剤は、ジスルフィドの再形成を排除するために、ジスルフィド結合が破壊された時点で存在し得る。すなわち、還元剤は、ジスルフィド結合を破壊した後に遊離硫黄上にある基を導入または結合させることができ、他のジスルフィド結合の再形成の可能性を防止または少なくとも減少させる。還元剤は、水素原子を裸の硫黄部位に導入してスルフヒドリル基(-SH)を形成するので、得られた-SH基は再び酸化されて新たなジスルフィド結合を形成してしまう。従って、裸の硫黄部位に対して、例えば低級アルキル、メチル化化合物、または新たなジスルフィド結合の形成の傾向を減少させる他の薬剤を導入することは有益である。この方法は、老眼の再発の実質的防止をもたらし得る。
【0023】
[0023] 上述したように、ジスルフィド結合は、水晶体線維間、水晶体タンパク質間の両方、ならびに水晶体タンパク質と水晶体線維内および上の様々なチオールとの間で形成されることが考えられる。これらの結合は、互いに比較的容易に動く水晶体線維の能力および適切に遠近調節を行う水晶体の能力を実質的に低下させる。あらゆる特定の理論によって拘束されることなく、該結合は光エネルギーの吸収によって形成され得る。水晶体タンパク質上のスルフヒドリル結合を酸素化し、2つの隣接する-SH基から水素原子を除去して水およびジスルフィド結合を生成する。ジスルフィド結合の還元には、水素供与体、例えばグルタチオンまたは他の分子を必要とする。他の可能な理論は、タンパク質-チオール混合型ジスルフィド結合、例えばタンパク質-S-S-グルタチオンまたはタンパク質-S-S-システインを形成することを含む。グルタチオンは、溶液の一部および問題の一部の両方にある。あらゆる治療法におけるグルタチオンの使用は、望まない結合形成の増加の可能性を考えて注意深くモニターしなければならない。
【0024】
[0024] 水晶体の全屈折力は、屈曲および屈折の指数に基づいて予測されるものよりも大きい。上述したように、毛様体筋の収縮が、毛様体を前方および水晶体の赤道方向に移動させる。これによって、小帯が水晶体包上の張力を弛緩させ、水晶体がより球形をとることができる。調節の間、その主要な変化は、水晶体前方表面の径の変化である(未調節状態では12mm、調節中は中心から3mmになる)。前方末端および後方レンズ表面は、調節中わずかしかその屈曲度を変化させない。直径が減少している間に軸方向の厚みが増加する。中心前方の水晶体包は、残りの前方包よりも薄い。これは、水晶体が調節の間、より中央付近で膨張する理由を説明している。前記包の最も薄い部分は後方包である。これは、未調節状態の前方包より大きい屈曲度を示す。水晶体のタンパク質含量(約33重量%)のタンパク質含有量は、体を構成するあらゆる他の器官よりも多い。水晶体中の特異的対象である多くの化合物が存在する。例えば、水性液中においてほとんど存在しない、グルタチオンが水晶体皮質中に高濃度で見出される。従って、水晶体はグルタチオンに対して強い親和性を有し、能動的にグルタチオンを吸収、運搬および合成する。約93%の水晶体内グルタチオンは還元された形態である。グルタチオンは、水晶体タンパク質、スルフヒドリル基(-SH)をその還元された形態で維持することに関与している。すなわち、ジスルフィド結合が破壊され、硫黄部位が利用可能になった後、グルタチオンは水素原子を与え、スルフヒドリル基を形成することができる。その結果、ジスルフィド結合の再形成を防止または最小限に抑えることが可能となる。さらに、アスコルビン酸がまた、水晶体中に非常に高濃度で見出され得る。これは水性液で能動的に輸送され、血流中で見出される量の15倍の濃度にもなる。イノシトールおよびタウリンは、その理由は不明であるものの、水晶体中に高濃度で存在する。
【0025】
[0025] 本発明の一実施態様によれば、調節幅の増加は、水晶体の非弾力性の原因と考えられるジスルフィド結合を破壊するのに十分な、放射線、音または電磁気エネルギー、熱、化学物質、粒子線、プラズマ線、酵素、遺伝子治療、栄養剤、他のエネルギー源、および/または上記の任意の組み合わせによって、外側の水晶体領域(皮質)または内層(核)を治療することによって達成される。化学物質は、自由な動きと弾力を妨げる固着性水晶体線維と考えられるジスルフィド結合を減少させるのに有用である。前方皮質および/またはより弾力のある核を作ることによって、粘度が低下し、調節中に水晶体が特徴的な中心湾曲構造をとることが再び可能になる。
【0026】
[0026] 還元を引き起こすのに適切な化合物には、一例として、グルタチオン、アスコルビン酸、ビタミンE、テトラエチルチウラム ジスルフィル、すなわち、還元剤、任意の生物学的に適切な容易に酸化される化合物、オフタルミン酸、イノシトール、ベータ カルボリン、任意の生物学的に適切な還元化合物、還元チオール誘導体であって、以下の構造を有するもの:
【化1】

【0027】
または
【化2】

【0028】
または下記構造をもつ硫黄誘導体:
【化3】

【0029】
式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、例えば、ヒドロキシル、低級アルコキシまたは低級アルキル カルボニルオキシによって置換可能な直鎖または枝分れした低級アルキルである、その誘導体またはその薬学的に許容可能な塩が含まれる。好ましい典型的な還元剤には、ジエチル・ジチオカルバミン酸塩、1-メチル-1H-テトラゾール-5-イル-チオールおよび1-(2-ヒドロキシエチル)-1H-テトラゾール-5-イル-チオール、および/またはこれらの薬学的に許容可能な塩が含まれる。他の有用な化合物は、米国特許第5,874,455号に見出すことができ、その背景情報については参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる。上述した化学物質は例示に過ぎず、ジスルフィド結合を破壊して同様のふるまいを示す他の還元剤が本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
[0027] 化学還元剤は、単独または酵素のような触媒と組み合わせて使用され得る。還元を引き起こすかまたは容易化するのに適切な酵素および他の栄養素には、例えば、アルドレダクターゼ、グリオキシラーゼ、グルタチオンS-転移酵素、ヘキソキナーゼ、チオール還元酵素、チオールトランスフェラーゼ、チロシン還元酵素または任意の適合性還元酵素が含まれる。ジスルフィド結合の還元のために印加エネルギー源についての要求は、水晶体内に存在するグルコース-6-リン酸の追加によって満たされる。また、グルコースをG6Pエネルギー状態に転換するヘキソキナーゼは、チオール酸化のプロセスによって非機能的に与えられる。上述したように、上記に挙げた酵素は一例に過ぎず、排他的なリストではないことに留意されたい。酵素は、眼球内に自然に存在するものか、あるいは本明細書中に開示された化学還元剤またはエネルギー手段と一緒にまたは別々に別個に眼球に加えることもできる。上述したように、ジスルフィド結合の破壊を補助または同様なふるまいをする他の化学的および生物学的酵素もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
[0028] 本発明の一実施態様において、水晶体タンパク質のジスルフィド基のスルフヒドリル基への還元は、ジスルフィド結合および他の分子および細胞性接着を還元するのに十分な量のグルタチオン、チオール、またはその他の化合物を水晶体に送達することによって達成される。裸の硫黄原子上のメチル化に影響を与える他の酵素または化学物質には、例えば、メチル-メタン チオスルホネート、メチル グルタチオン、S-メチル グルタチオン、S-転移酵素および他の生物学的に適合性のメチル化薬剤が含まれる。エマルジョン、例えばナノカプセル、アルブミン ミクロスフェア、キャリア分子、例えばイノシトール、タウリンまたは他の生物学的に適切な手段、例えばウイルス ファージの、還元剤または酵素を水晶体に送達するための使用は、本発明の不可欠な部分である。化学還元剤は、典型的には、眼科的に許容可能なキャリア中、溶液または懸濁液の形態において送達されるであろう。いくつかの場合において、ジスルフィド結合の還元ならびに他の結合および接着の破壊に影響または触媒作用を示すエネルギーを加えることは有益である。エネルギー単独での印加は、ジスルフィド結合を破壊するのに使用され得る。加えられたエネルギーは任意の形態をとることができ、例えば、レーザー、超音波、粒子線、プラズマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、熱、イオン化、光、磁気、マイクロ波、音、電気その他の形態をとることができる。これらは単独または老眼の治療に影響を与える還元剤との組み合わせ、あるいは印加エネルギーの上記任意の種類の組み合わせにおいて使用され得る。
【0032】
[0029] 同様の方法において、薬剤は水晶体包に送達され、前記包と結合または相互作用し、より大きな弾性または膨脹性を与える。このような薬剤は、前記包を表面領域において収縮させるか、または水晶体の周辺前方または後方で水晶体包の張力を増加させる。印加されるエネルギーは、任意の形態、例えば、レーザー、超音波、熱、粒子線、プラズマ線、X線、紫外線、可視光、赤外光、イオン化、光、磁気、マイクロ波、音、電気その他の形態をとることができる。これらは単独または老眼の治療に影響を与える還元剤との組み合わせ、あるいは印加エネルギーの上記任意の種類の組み合わせにおいて使用され得る。
【0033】
[0030] 本発明の他の実施態様において、印加エネルギーは、還元反応の割合を誘導または増加させる触媒として使用され得る。このように、エネルギーを印加することによって、前記包の周辺部が優先して影響を受け、調節の中心4 mm領域には影響を与えない。これは、水晶体がより大きな調節状態を担うことを可能にする。印加エネルギーは単独で適用され、最終的に水晶体皮質に影響を与える還元反応および細胞変化を促進することができる。例として、本発明において有用なレーザーには、エキシマー、アルゴンイオン、クリプトンイオン、二酸化炭素、ヘリウムネオン、ヘリウムカドミウム、キセノン、亜酸化窒素、ヨウ素、ホルミウム、イットリウムリチウム、染料、化学製品、ネオジム、エルビウム、ルビー、チタンサファイヤ、ダイオード、フェムト秒またはアト秒レーザー、任意の調和性振動レーザー、または任意の他の電磁放射線が含まれる。熱放射線の典型的な形状には、赤外線、加熱、赤外線レーザー、放射線療法、または水晶体を加熱する任意の他の方法が含まれる。最後に、本発明の実施態様において使用され得る音エネルギーの典型的な形態には、超音波、任意の可聴音および非可聴音の治療、および任意の他の生物学的に適合性の音エネルギーが含まれる。
【0034】
[0031] 本発明のさらに他の実施態様において、放射線、例えば紫外線光、可視光、赤外線、マイクロ波または他の電磁気のエネルギーは、ジスルフィド結合の破壊を補助するために眼に照射され得る。これは、存在するジスルフィド結合の還元を可能にする。
【0035】
[0032] 本発明の様々な実施態様および本発明で使用される印加エネルギーは、強膜または角膜との接触、非接触技術、または送達の眼内方法を通して適用することができる。複数の治療が、調節幅の適切な増加に影響を与えるために必要であってもよい。複数様式の治療が望ましいとき、化学治療は、エネルギーの印加前、後または同時に適用することができる。
【0036】
[0033] 本発明の実施態様はさらに、眼内の異常な水晶体内の結合を減少させることによって眼の調節能力に影響を与える、眼の外側表面を通ることができる薬学的剤に関する。より具体的には、前記薬学的剤は、エネルギー源の追加の有無に関わらず、角膜を透過し、かつ眼の調節能力を増加させることができる。また、より具体的には、前記薬学的剤は、眼の前方水晶体表面の調節能力を増加させることができる。前記薬学的剤は、水晶体の弾性の喪失の原因である異常な生化学的結合を減少または除去する作用がある。既に議論したように、異常な生化学的結合は、水晶体の弾力および調節能力の低下を誘導する水晶体線維間の付着を引き起こす。異常な生化学的結合は、例えば、糖タンパク質を形成する様々な糖残基の共通結合、リン酸基(PO42-)または硫酸基(SO42-)のチロシン(大半のタンパク質を形成するアミノ酸の一つ)への付加、あるいは隣接するシステイン アミノ酸間のジスルフィド結合によって形成される。
【0037】
[0034] 一実施態様において、薬学的剤はプロドラッグであってもよい。本明細書中に使用された「プロドラッグ」の意味には、不活性状態から活性状態へ変換可能な性質を有することを含む。その不活性状態において、プロドラッグはその活性状態よりもより容易に体膜を通ることができ、不活性なプロドラッグを特定の位置までより容易に送達することができる。しかしながら、いったんその位置までくると、プロドラッグは、目的とするどのような治療効果をも生み出すことができる活性状態となる。プロドラッグを活性化、すなわちプロドラッグを活性状態にすることは、プロドラッグを構成する化合物の化学的性質の変化を伴う。従って、「プロドラッグ」の意味は、第一の生化学的または薬理学的物質から、第一の物質の性質とは異なる性質をもつ第二の生化学的または薬理学的物質に変換または転換する能力を有することをさらに包含する。
【0038】
[0035] 眼の場合、還元物質は、例えば、液滴でのプロドラッグ形態で眼の外表面に滴下される。プロドラッグは、最初に滴下されたときに不活性状態にある。プロドラッグは、活性状態における場合と比較して、不活性状態において眼の外側表面から眼内により容易に移行することができる。より具体的には、プロドラッグは角膜の外側から眼の房水内に移行することができる。プロドラッグはさらに、例えば角膜境界部を通過できる可溶性または酸/塩基の性質を示す。プロドラッグ剤の例は、N-アセチルカルノシンである。N-アセチルカルノシンのような物質は、角膜を通過する能力を有し、その後に前房において他の薬剤、例えばカルノシンに転換する能力を有する。
【0039】
[0036] いったん眼の内部に移行すると、プロドラッグは活性化/転換される。その活性状態/転換された形態において、プロドラッグが還元剤として作用する。このため、その活性状態におけるプロドラッグには、還元化合物が含まれる。その不活性状態から活性状態へのプロドラッグの転移は、一以上の多数の因子によって引き起こされる。例えば、眼の房水内に天然に存在する酵素は、転移を引き起こすことができる。代わりにまたは追加的に、エネルギーが既に記載したように外部から印加される。すなわち、放射線、音波または電磁気エネルギー、熱、化学線、粒子線、プラズマ線、酵素、遺伝子治療、栄養素、他の印加エネルギー源、および/または先の任意の組み合わせが用いられる。印加エネルギーは、不活性状態から活性状態へのプロドラッグの転移を引き起こすとともに、水晶体の弾性喪失の原因と考えられる異常な生化学的結合を破壊する。活性プロドラッグは、破壊された結合を還元する機能を有する。活性プロドラッグは、特に水晶体が親和性を示す物質である。このとき、水晶体は、プロドラッグが角膜を通過すると眼内に活発に取り込む。
【0040】
[0037] 本発明のさらなる実施態様によれば、一または複数の酵素はまた、プロドラッグの形態で眼に導入される。例えば、大きな酵素(例えばチオールレダクターゼ)は、点眼で投与することができる。点眼では、大きな酵素が分解された形態にあり、これを不活性形態にする。酵素の分解された形態は、酵素が角膜境界部から眼内に移行し、水晶体によって取り込まれることを容易にする。いったん眼内に移行すると、酵素は活性化する。ここで、活性化とは、酵素の構成を再構築することを意味する。活性化は、様々な外部からの印加されたエネルギーの形態の使用を通して、あるいは水晶体内に既に存在する様々な水晶体内酵素によってもたらされる。いったん水晶体内で構築されると、酵素は、ジスルフィド結合を含むがこれに限定されない異常な生化学的結合を破壊することによって還元反応を促進するよう作用し、還元分子(プロトン)を還元化合物から破壊された結合へ転移させ、結合の再形成を防ぐ。これに応じて、還元分子を供給する還元剤は、酵素と同時に導入する。代わりに、還元剤は、酵素の導入の前または後に導入してもよい。還元剤は、プロドラッグ形態をとる。
【0041】
[0038] 本発明の代替の実施態様によれば、眼の調節能力に影響を与えることができる薬学的剤は、直接的な注入によって導入することができる。薬学的剤には、還元反応、および/または還元物質を促進する一または複数の酵素が含まれる。注入は、水晶体に直接行うか、あるいは前眼房、硝子体または後眼房に行われる。注入の手法は、例えば、角膜または強膜を通して行われる。注入後、還元反応を促進するために外部エネルギーの印加を行ってもよい。
【0042】
[0039] 水晶体に注入せず、代わりに、例えば房水内に注入を行うとき、注入された物質は、水晶体包境界部を通過することができる。例えば、注入される物質は、水晶体が親和性を示す物質である。このとき、水晶体は、前記物質が眼内部に入ると、活発にそれを取り込む。注入された物質は、水晶体内に入り、眼の調節能力に影響を与えることができる第二の物質、例えば還元物質に転換される。
【0043】
[0040] 自然に生じる水晶体形状の変化の大半は、眼が遠くの物体から近くの物体へ視点を合わせたとき、水晶体の前方中心部で起こる。異常な水晶体内の結合の減少が水晶体の前方中心、より具体的には調節中にその組織分布を変化させる水晶体の前方中心領域で起こるとき、特に有益である。水晶体の前方中心領域はまた、薬剤とエネルギーが最も容易にとどく場所である。従って、本発明の実施態様は、治療のために水晶体の前方中心領域を特に対象とするものに関する。他方、本発明の実施態様はさらに、治療のために水晶体の前方中心領域の外側領域を特に対象とするものに関する。またさらに、本発明の実施態様は、治療のために水晶体の前方中心領域および前方中心領域の外側領域を特に対象とするものに関する。
【0044】
[0041] 本発明の実施態様による狙いを定めた適用には、例えば、非選択的または非対象的様式、例えば点眼等によって眼に還元物質を投与することが含まれる。還元物質は、角膜境界部を通って眼内に入ることができる。その後、エネルギーが水晶体の選択された部位にのみ、例えば水晶体の前方中心領域にのみ加えられる。このような狙いを定めた適用において、還元剤は、エネルギーの印加のない状態では異常な水晶体内の結合を還元することに対し不活性であるが、エネルギーが印加されたときには活性化され、破壊された水晶体内の結合を還元するように処方することができる。従って、エネルギーの狙いを定めたあるいは的を絞った印加は、水晶体の選択された部位の水晶体内の結合を破壊し、選択された部位に存在する還元剤を活性化する。後者の性質を有する還元剤は、当業者によれば、例えば、薬剤を適切に選択するとか、薬剤の構成化合物を適切に処方するとか、薬剤の濃度(または薬剤の構成化合物それぞれの濃度)を適切に調節するとか、あるいは上記任意の組み合わせによって得ることができる。還元剤は、例えばプロドラッグであってもよい。他方、還元剤は投与時点から活性形態であってもよく、この場合、還元剤は角膜境界部を通って眼内に入ることができ、活性化するためのエネルギーを印加する必要はない。
【0045】
[0042] 上述したような狙いを定めた治療は、眼内には変更されるべきではない多くの重要かつ必要な結合が存在するという点において、異常な水晶体内の結合を減少させる老眼の治療に関係した重要な留意事項を知らせる。例えば、ジスルフィド結合は、酵素やタンパク質の三次元構造を担う基本的なタンパク質間の結合の一つである。仮に、全てのジスルフィド結合が除去された場合(例えば結合を破壊しかつ還元することによって)、水晶体の真の三次元構造が保てなくなってしまう。このとき、水晶体はいわば液体の入ったカプセル袋と化すであろう。他方、ジスルフィド結合は、既に議論したように、老眼を引き起こす原因と考えられている。上述したような狙いを定めた治療を行うことによって、水晶体内の結合の減少量を、特定の範囲内、眼の特定の部位内に制御することができ、その結果、有益な結合を保存しつつ、他の結合を選択的に還元することが可能になる。一つの範囲として、異常な水晶体内の結合は、標的領域内において10%〜70%まで減少する。他の範囲において、異常な水晶体内の結合は、標的領域内において20%〜50%まで減少する。
【0046】
[0043]本発明の実施態様において、狙いを定めた治療は、エネルギーの印加と組み合わされた還元剤の投与を必要としない。変わりに、還元物質は適切に処方され(例えば、上述したように、構成化合物、濃度等の観点において)、眼の特定の部位内における異常な生化学的結合を破壊し、かつ破壊された結合を還元することができる。特定の部位には、例えば眼の前方中心領域がある。眼の特定の部位を標的にするために、還元物質は、例えば、特定の部位について親和性を示すように処方することができる。水晶体内の結合の減少量は、特定の範囲内に制御される。一つの範囲として、異常な水晶体内の結合は、標的領域内において10%〜70%まで減少される。他の範囲において、異常な水晶体内の結合は、標的領域内において20%〜50%まで減少する。
【0047】
[0044] 本発明の実施態様において、眼内および水晶体内に還元物質を輸送するのを補助するイオン導入を使用することができる。エネルギーの印加をこれと組み合わせて使用してもしなくてもよい。
【0048】
[0045] 本発明のさらに他の実施態様において、還元反応を促進する一以上の酵素が、ウイルス ファージを使用して水晶体内に導入される。ウイルス ファージは、酵素それ自体を導入するのとは異なり、水晶体内細胞に遺伝子を導入し、水晶体内細胞中に既に存在するRNAまたはDNA転写酵素を使用して酵素の遺伝子コードを水晶体内細胞中で転写する。この遺伝子コードが水晶体内細胞中にいったん入ると、細胞内に存在する天然のタンパク質製造機構が遺伝子コードに基づいて酵素を製造する。この技術は、水晶体包を通して大きな酵素を水晶体に入れる問題を回避する。その後、水晶体は任意の形態の還元剤による治療を受け、水晶体の特定の部位に狙いを定めたエネルギーの印加を受ける。
【0049】
[0046] 最後に、様々な種類のヒト組織が、水晶体と同じ胚細胞の上皮系統から誘導されることに言及する。皮膚はその一例である。皮膚は、加齢によってもたらされた典型的な変化を誘導する、酸化の様々な形態を経験する。上述した方法は、組織内の酸化された生化学的結合を還元するために皮膚のような上皮組織に適用することができる。様々な上皮組織の各々は、組織の位置やアクセス可能性を考慮して特別にデザインされた治療を受けることができる。例えば、皮膚は、還元剤で直接的に治療することでき、酸化された結合の破壊を補助するためにエネルギーを印加することができる。さらに、酵素と触媒の組み合わせを使用して還元反応を刺激することができる。皮膚または他の上皮組織の特定の部位にエネルギーを印加して治療することが可能である。
【0050】
[0047] 上述した皮膚または他の上皮組織を治療するために使用される還元剤および酵素は、活性形態において投与することができる。また、老眼の治療と関連した上述した還元剤および酵素の性質のうちどれか一つまたは任意の組み合わせとすることができる。すなわち、還元剤および酵素は、活性状態になるためにエネルギーの印加を必要とするようなプロドラッグ形態とすることができる。
【0051】
[0048]本発明のいくつかの実施態様が特別に例証され、本明細書中に記載されている。しかしながら、本発明の修飾およびバリエーションは、本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、上述の技術および添付の請求の範囲内に含まれることに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の外側表面に薬学的剤を投与することを含む方法であって、前記薬学的剤が、前記外側表面を通ることができ、眼の異常な水晶体内の結合を減少させることによって眼の調節能力に影響を与える方法。
【請求項2】
前記異常な水晶体内の結合が、酸化された結合である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬学的剤が、外側表面を通ることを促進する第一の形態を有し、前記第一の形態が、外面表面を通った後に第二の形態に転換可能であり、その第二の形態に、眼の調節能力に影響を与えることができる生化学物質が含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エネルギーを眼に印加し、前記薬学的剤を前記第一の形態から前記第二の形態に転換させることをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的剤が、眼の房水内に天然に存在する酵素によって前記第二の形態に転換することができる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記生化学物質が、還元物質を含む請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記生化学物質が、還元反応を促進する酵素を含む請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の形態が分解可能な形態の酵素を含み、その酵素が眼の内部で活性酵素に再構築される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬学的剤がプロドラッグである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
眼の水晶体の調節能力に影響を与えるように適合された薬学的剤を眼に投与し、かつ
眼の特定の部位にエネルギーを印加し、前記薬学的剤が調節能力に影響を与えるようにすることを含む方法。
【請求項11】
前記薬学的剤が還元物質を含み、かつ前記印加エネルギーが還元反応を引き起こす請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記印加エネルギーが酸化された水晶体内の結合を破壊し、かつ前記還元物質が前記破壊された酸化された水晶体内の結合を還元する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記特定の部位が、水晶体の前方中心領域である請求項1に記載の方法0。
【請求項14】
前記特定の部位が、水晶体の前方中心領域の外側である請求項10に記載の方法。
【請求項15】
眼の特定の部位において、異常な水晶体内の結合が10%〜70%まで減少する請求項10に記載の方法。
【請求項16】
眼の特定の部位において、異常な水晶体内の結合が20%〜50%まで減少する請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記還元物質が、エネルギーの印加のない状態において不活性である請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記還元物質が、グルタチオンを含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記還元物質が、N-アセチルカルノシンを含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
第一の生化学物質を眼の房水に注入することを含む老眼を治療する方法であって、前記第一の生化学物質は、水晶体包境界部を通ることができ、前記第一の生化学物質はさらに、眼の調節能力に影響を与えることができる第二の生化学物質に転換することができる方法。
【請求項21】
前記第二の生化学物質が、還元物質を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第二の生化学物質が、還元反応を促進するための酵素を含む請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第一の生化学物質が、還元反応を促進する酵素を生成するための遺伝情報を含むウイルス ファージを含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第一の生化学物質がグルタチオン誘導体を含み、かつ前記第二の生化学物質が還元されたグルタチオンを含む請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第一の生化学物質がN-アセチルカルノシンを含み、かつ前記第二の生化学物質がカルノシンを含む請求項20に記載の方法。
【請求項26】
プロドラッグまたは活性薬剤として、酸化された結合の還元に影響を与えることに適合した生化学物質を皮膚または上皮組織に適用し、かつエネルギーを皮膚または上皮組織の特定の部位に印加し、酸化された結合の還元に影響を与える還元物質によって還元反応を引き起こす、体全体の酸化された上皮組織の還元をもたらす方法。
【請求項27】
前記還元された結合が、ジスルフィド結合である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エネルギーが、任意の電磁気エネルギーの形態である請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電磁気エネルギーが、可視光エネルギー、紫外線光エネルギー、赤外線エネルギー、マイクロ波エネルギーを含む一以上のレーザー エネルギーである請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記生化学物質が、還元化合物を含む請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記生化学物質が、酵素を含む請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記生化学物質が、印加エネルギーによって活性化される請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記エネルギーが、酸化された結合を破壊する請求項26に記載の方法。
【請求項34】
眼の内側部分に入るために眼の外側表面を通ることができる生化学物質を眼に投与し、かつ
不活性状態から目の調節能力に影響を与えることができる活性状態への前記物質の状態における転移を引き起こすことを含む老眼を治療するための方法。
【請求項35】
眼の調節能力に影響を与えるために、前記物質が眼の異常な水晶体内の結合を還元することができる請求項34に記載の方法。
【請求項36】
眼の調節能力に影響を与えるために、前記物質が眼の還元反応を促進することができる請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記物質が、酵素を含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記転移が、眼の天然に存在する酵素によって引き起こされる請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記転移が、外部エネルギーの印加によって引き起こされる請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記生化学物質が、N-アセチルカルノシンを含む請求項31に記載の方法。
【請求項41】
還元剤を眼に投与し、かつ
眼の特定部位にエネルギーを照射し、前記特定部位における水晶体内の結合を破壊することを含む老眼を治療するための方法。
【請求項42】
前記還元剤が、照射エネルギーを伴わずに破壊された水晶体内の結合を還元する活性を有する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記照射されたエネルギーが還元剤を活性化し、破壊された水晶体内の結合を還元する請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記還元剤が、グルタチオンを含む請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記エネルギーが、紫外線レーザーである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記エネルギーが、可視光レーザーである請求項44に記載の方法。
【請求項47】
還元物質が、N-アセチルカルノシンを含む請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記エネルギーが、紫外線レーザーである請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記エネルギーが、可視光レーザーである請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記物質を、眼の特定部位内で眼の調節能力に影響を与えるように処方する、前記物質を眼に投与することを含む老眼を治療するための方法。
【請求項51】
前記物質が、特定部位内でジスルフィド結合を含むがこれに限定されない異常な生化学的結合を破壊および還元することができる請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記物質が、特定部位に対する親和性を有する請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記特定部位が、眼の前方中心領域内である請求項50に記載の方法。
【請求項54】
眼の特定部位において、ジスルフィド結合を含むがこれに限定されない10%〜70%の異常な生化学的結合が破壊および還元される請求項50に記載の方法。
【請求項55】
眼の特定部位において、ジスルフィド結合を含むがこれに限定されない20%〜40%の異常な生化学的結合が破壊および還元される請求項50に記載の方法。
【請求項56】
眼の水晶体の調節能力に影響を与えることができる生化学物質を含むプロドラッグ剤を眼に注入することを含む方法。
【請求項57】
前記生化学物質が、水晶体内の異常な水晶体内の結合を還元する請求項56に記載の方法。
【請求項58】
エネルギーを眼に印加し、還元反応を活性化させることをさらに含む請求項56に記載の方法。
【請求項59】
角膜境界部を通って眼の水晶体の調節能力に影響を与えることができる生化学物質の導入を促進するためにイオン導入を使用することを含む方法。
【請求項60】
前記生化学物質が、異常な水晶体内の結合を還元する請求項58に記載の方法。
【請求項61】
角膜境界部を通って眼の水晶体の調節能力に影響を与えることができる生化学物質の導入を促進するためにウイルス ファージを使用することを含む方法。
【請求項62】
前記生化学物質が、酵素の遺伝子コードを含む請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ウイルス ファージが水晶体の細胞内に遺伝子を導入し、前記水晶体の細胞内において前記遺伝子コードを転写する請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記遺伝子コードが、チオトランスフェラーゼを転写する請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記遺伝子コードが、ヘキソキナーゼを転写する請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記遺伝子コードが、グルタチオンレダクターゼを転写する請求項63に記載の方法。
【請求項67】
眼を還元剤で治療することをさらに含む請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記還元剤が、還元されたグルタチオンである請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記還元剤が、チオール誘導体を還元する請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記還元剤が、置換されたインドールである請求項67に記載の方法。
【請求項71】
眼にエネルギーを印加することをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記エネルギーが、紫外線レーザーである請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記エネルギーが、可視光レーザーである請求項71に記載の方法。
【請求項74】
還元剤が組織中の生化学的結合を還元するのに適合された、ヒトの上皮組織に還元剤を適用することを含む方法。
【請求項75】
還元剤を活性化させるためにエネルギーを上皮組織に印加することをさらに含む請求項74に記載の方法。
【請求項76】
眼内における異常な水晶体内の結合を減少させることによって目の調節能力に影響を与える、眼の外面表面を通ることができる薬学的剤を含む老眼の治療のための薬学的組成物。
【請求項77】
前記薬学的剤が、目の調節能力に影響を与えることができる生化学物質にエネルギーの印加によって転換できる請求項76に記載の薬理学的組成物。
【請求項78】
前記薬学的剤が、目の房水中に天然に存在する酵素によって生化学物質に転換され得る請求項77に記載の薬学的組成物。
【請求項79】
前記薬学的剤は、N-アセチルカルノシンを含む請求項78に記載の薬学的組成物。
【請求項80】
前記薬学的剤が、任意のグルタチオン誘導体を含む請求項78に記載の薬学的組成物。
【請求項81】
前記生化学物質が、還元物質を含む請求項76に記載の薬学的組成物。
【請求項82】
前記還元物質が、還元されたグルタチオンを含む請求項81に記載の薬学的組成物。
【請求項83】
前記還元物質が、チオール誘導体を還元することを含む請求項81に記載の薬学的組成物。
【請求項84】
前記還元物質が、置換されたインドールを含む請求項81に記載の薬学的組成物。
【請求項85】
前記還元物質が、還元されたカルノシンを含む請求項81に記載の薬学的組成物。
【請求項86】
前記生化学物質が、還元反応を促進する酵素を含む請求項76に記載の薬学的組成物。
【請求項87】
前記酵素が、チオールトランスフェラーゼを含む請求項86に記載の薬学的組成物。
【請求項88】
前記酵素が、ヘキソキナーゼを含む請求項86に記載の薬学的組成物。
【請求項89】
前記酵素が、グルタチオンレダクターゼを含む請求項86に記載の薬学的組成物。
【請求項90】
前記酵素が、グルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む請求項86に記載の薬学的組成物。
【請求項91】
前記薬学的剤が、分解された形態の酵素を含み、かつ前記酵素が眼内で活性酵素に再構築される請求項86に記載の薬学的組成物。
【請求項92】
組織中の異常な酸化された結合の還元をもたらすのに適合された生化学物質を含む、上皮組織の治療のための薬学的組成物。
【請求項93】
前記生化学物質が、酸化された結合の還元をもたらす生化学物質による還元反応を引き起こすエネルギーの印加によって活性化することができる請求項92に記載の薬学的組成物。
【請求項94】
前記生化学物質が、還元剤を含む請求項92に記載の薬学的組成物。
【請求項95】
前記生化学物質が、酵素を含む請求項92に記載の薬学的組成物。
【請求項96】
前記生化学物質が、プロドラッグを含む請求項92に記載の薬学的組成物。

【公表番号】特表2008−517911(P2008−517911A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537922(P2007−537922)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/036434
【国際公開番号】WO2006/047080
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(503260859)ニューレンズ、エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】