説明

水晶発振器

【課題】水晶発振器のプリント基板への実装ラインにおいて、水晶発振器が長さ方向を向いていることが保証されていれば、この向きが正しいか否かが保証されている必要がないようにすること、マーキングを検知して180度の方向転換させるための装置を備えることを必要としなくすることを課題とする。
【解決手段】本水晶発振器1は、下面が長方形をなすパッケージ2を有し、水晶振動子及びこの水晶振動子と協働して発振回路を形成する発振回路用ICを備えた水晶発振器であって、発振回路の内部アースラインに接続されている表面実装用端子GND、発振回路に電力を供給する内部電力供給ラインに接続されている表面実装用端子DC、及び、発振回路の内部出力ラインに接続されている表面実装用端子OUTが、パッケージ2の下面に、それぞれが対をなしており、180度の点対称をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に実装するための水晶発振器、特に表面実装用端子を下面に備えた水晶発振器における表面実装用端子の配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器は、通常、下方への投影が長方形をなす直方体形状をしている。水晶発振器の特定の表面実装用端子(パッケージ下面に設けられる)は、プリント基板上面の特定のランドと電気的に接続されている必要があることから、プリント基板への実装時には、特定の表面実装用端子が特定の位置に来るように向きを揃えて配置、固定されることになる。これを誤ると、水晶発振器が正常に動作しないのはもちろんのこと、場合により水晶発振器自体や組み付けられている他の素子が破損するおそれがある。
【0003】
このため、水晶発振器のパッケージの適宜箇所には予め方向を定めるためのマーキングが施されている。具体的には、(イ)パッケージの一部の形状を他の部分の形状と異なるようにする、(ロ)パッケージの特定の位置に印を付ける、あるいは、(ハ)表面実装用端子自体の形状を他のものと異ならせる等によって、これらが水晶発振器の向きの指標とされることになる。
【0004】
図7は上記従来技術(ハ)の例であって、水晶発振器1の裏面図である。この例は、パッケージ2内に納められている発振回路の内部アースラインに接続されている表面実装用端子GND、発振回路に電力を供給する内部電力供給ラインに接続されている表面実装用端子DC、及び、発振回路の内部出力ラインに接続されている表面実装用端子OUTの基本3端子の他、電圧によって発振周波数を制御するための内部制御ラインに接続された表面実装用端子VCを備えた電圧制御型の水晶発振器において、点線○囲みaに示すように、表面実装用端子VCだけを長方形の一部を切り欠いた形状とし、他の表面実装用端子の長方形形状と異なるようにして、水晶発振器の向きを示すようにしている。このような、水晶発振器の向きに着目した発明の例を特許文献1〜3に挙げることができる。
【0005】
水晶発振器をプリント基板に装填するに当たっては、このマーキングの位置を、機械的、電気的、光学的、等の何らかの手段によって検知し、このとき水晶発振器の向きが誤っていれば、これを180度回転して正しい方向に向けなければならない。実装ラインにおいて、水晶発振器が長さ方向を向いていることが保証されている場合であっても、この向きが正しいか否かが保証されていない場合には、マーキングを検知して180度の方向転換させるための装置を備えることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−158441号公報
【特許文献2】特開2007−067135号公報
【特許文献3】特開2009−065471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水晶発振器における表面実装用端子を工夫することにより、プリント基板への実装ラインにおいて、水晶発振器が長さ方向を向いていることが保証されていれば、この向きが正しいか否かが保証されている必要がない、つまり、向きの正逆を問わない、ようにすること、及び、これにより、マーキングを検知して180度の方向転換させるための装置を備えることを必要としなくすることを課題とする。また、本願発明の水晶発振器を使用することにより、プリント基板の単一の層内でラインを交差させないように配線することを容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、下面が長方形をなすパッケージを有し、水晶振動子及びこの水晶振動子と協働して発振回路を形成する発振回路用ICを備えた水晶発振器において、上記発振回路の内部アースラインに接続されている表面実装用端子GND、上記発振回路に電力を供給する内部電力供給ラインに接続されている表面実装用端子DC、及び、上記発振回路の内部出力ラインに接続されている表面実装用端子OUT、を含む少なくとも3種の内部ラインに接続されている表面実装用端子が、上記パッケージの下面に、それぞれが対をなして備えられているとともに、これら対をなす表面実装用端子は、互いに上記下面の長方形の中心に関して180度の点対称をなす位置に配置されていることを特徴とする水晶発振器である。
【0009】
第2番目の発明は、第1番目の発明の水晶発振器において、上記水晶発振器が、電圧制御型の水晶発振器であり、上記表面実装用端子には、更に、電圧によって発振周波数を制御するための内部制御ラインに接続された表面実装用端子VCの対が含まれていることを特徴とする水晶発振器である。
【0010】
第3番目の発明は、第1番目又は第2番目の発明の水晶発振器において、上記対をなす表面実装用端子同士は、上記パッケージの内部において互いに電気的に接続されていることを特徴とする水晶発振器である。
【0011】
第4番目の発明は、第1番目乃至第3番目のいずれかの発明の水晶発振器において、上記パッケージが、上記水晶振動子及び発振回路用ICがともに封入される単一のキャビティを備えていることを特徴とする水晶発振器である。
【0012】
第5番目の発明は、第1番目乃至第3番目のいずれかの発明の水晶発振器において、上記パッケージが、中間壁によって分けられた上記水晶振動子を収納するための上部のキャビティ及び上記発振回路用ICを収納するための下部のキャビティを備えていることを特徴とする水晶発振器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水晶発振器では、水晶発振器の表面実装用端子がパッケージの下面に、それぞれが対をなして備えられているだけでなく、これら対をなす表面実装用端子が、互いにパッケージ下面の長方形の中心に関して180度の点対称をなす位置に配置されているため、プリント基板への実装ラインにおいて、水晶発振器が長さ方向を向いていることが保証されていれば、この向きが正しいか否かが保証されている必要がないという効果を奏する。また、これにより、マーキングを検知して180度の方向転換させるための装置を必要としなくすることができるという効果を奏する。
【0014】
更に、プリント基板のためのパターン設計に当たって、スルーホールによる層間の配線はできるだけ避けたい、あるいは、少なくしたいところであるが、本発明の水晶発振器では、表面実装用端子が対をなして設けられていることから、この対の内のいずれか都合のよい方を使用すればよいので、プリント基板の単一の層内でラインを交差させないように配線することが容易になるというプリント回路パターン設計上の効果を奏する。ひいてはスルーホールを設けることに伴う費用を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の水晶発振器の正面の部分切断図である。
【図2】本発明の実施例1の水晶発振器を下から見たときの裏面図である。
【図3】本発明の実施例1の水晶発振器が実装されたプリント基板のランドパターンと配線の一例である。
【図4】本発明の実施例1の水晶発振器が実装されたるプリント基板のランドパターンと配線の他の例である。
【図5】本発明の実施例2の水晶発振器の正面の部分切断図である。
【図6】本発明の実施例2の水晶発振器を下から見たときの裏面図である。
【図7】従来技術の一例を示す水晶発振器の裏面図であって、表面実装用端子の一つの形状を他のものと異ならせるたものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施例を示して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1であって、本発明を、水晶振動子と発振回路用ICが一室に納められたタイプの水晶発振器に適用した場合のものである。図1は水晶発振器の正面の部分切断図であり、図2は水晶発振器1を下から見たときの図(裏面図)である。このタイプの水晶発振器1は、下面が長方形をなすパッケージ2の内部に単一のキャビティ(収納室)が形成されており、水晶振動子3、この水晶振動子3と協働して発振回路を形成する発振回路用IC4等は単一のキャビティ内に格納されている。
【0018】
水晶振動子3は、表裏に励振電極31、32及びこれに繋がる水晶端子33、34を備えており、導電性接着剤35を通して発振回路用IC4に接続されて発振回路が形成される。パッケージ2本体は絶縁性の材料でできており、例えばセラミック基板を何層も積層すること、つまり、底壁21を形成する基板、単一の空間からなるキャビティ(収納室)を形成するための穴あきの下枠壁22、上枠壁23のそれぞれに対応する各基板を積層することによって、パッケージ2が形成されている。
【0019】
上枠壁23の上面(端面)には、通称、リング24と呼ばれるリング状の金属製の層が形成され、水晶振動子3、発振回路用IC4を組み込んだ後、この金属製のリング24に金属カバー25が溶接される。
【0020】
図2に示すように、パッケージ2の下面には、上記発振回路の内部アースラインに接続されている表面実装用端子GND、上記発振回路に電力を供給する内部電力供給ラインに接続されている表面実装用端子DC、及び、上記発振回路の内部出力ラインに接続されている表面実装用端子OUTが形成されている。そして、この実施例では、更に、上記表面実装用端子には、更に、電圧によって発振周波数を制御するための内部制御ラインに接続された表面実装用端子VCが備えられている。
【0021】
本発明では、上記各表面実装用端子GND、DC、OUT及びVCは、それぞれが2つずつ対をなして備えられており、各対は互いにパッケージ2内部で電気的に接続されているとともにパッケージ2の下面の長方形の中心に関して180度の点対称をなす位置に配置されている。このため、パッケージを上記中心に関して180度回転させた場合でも、特に回転させない場合でも、プリント基板に取り付けられたときには、どちらの場合でも電気的に等価であることになる。
【0022】
換言すれば、パッケージ2の長さ方向さえ正しく揃えればよいので、プリント基板への実装ラインにおいて、水晶発振器が長さ方向を向いていることが保証されていれば、この向きが正しいか否かが保証されている必要がない、つまり、向きの正逆を問わない、ことになる。また、これにより、従来のようなマーキングを検知して180度の方向転換させるための装置は備える必要が無くなる。
【0023】
図3、図4は、本発明の実施例の水晶発振器1が実装されたプリント基板のランドと配線の例であって、両図を比較することにより本発明の他の効果を説明する。図3のように、プリント基板側の配線L1〜L4が所定のランドから水晶発振器1の所定の表面実装用端子に接続可能であったとき、何かの都合により、図4のように表面実装用端子VCへの配線L1の進路を妨げるような配線Lxを設けなければならなくなった場合を想定する。
【0024】
従来では、配線Lxを跨ぐために、一旦他の層へ移るためのスルーホール、ジャンパー線等を設ける必要があり、コスト高となっていた。本発明では、表面実装用端子VCが対であるため、同じ層内でもう一つの表面実装用端子VCを結ぶような配線L1’が存在する可能性が大きくなるので、配線パターンの設計が非常に容易になる。
【0025】
上記例では、表面実装用端子VCに関する例を挙げて本発明の効果を説明したが、表面実装用端子DC、GND、OUTの場合でも同様である。なお、図中、プリント基板側のNCは回路を構成しない(どこにも接続されていない)端子あるいはランドを示している。
【実施例2】
【0026】
図5は、本発明の実施例2であって、本発明を、水晶振動子3と発振回路用IC4が上部、下部と別のキャビティに納められるタイプの水晶発振器に適用した場合のものである。このタイプの水晶発振器1は、中間壁26によって、上部と下部のキャビティに分けられているため、その縦断面がH形をなしていることからH形パッケージともいわれる。
【0027】
上部のキャビティには水晶振動子3が納められ、実施例1の場合と同様に、上枠壁23の端面に設けられたリング24とこれに溶接される金属カバー25によって閉鎖されている。これに対し、下部のキャビティには発振回路用IC4が納められるが特に閉鎖されてはいない。各表面実装用端子6は、下枠壁22の端面に形成される。
【0028】
図6に示されるように、表面実装用端子6の形状は、全体から発振回路用IC4が納められる下部キャビティの水平断面形状を抜き取った形になっている。上記各表面実装用端子GND、DC、OUT及びVCは、それぞれが2つずつ対をなして備えられており、各対は互いにパッケージ2内部で電気的に接続されているとともにパッケージ2の下面の長方形の中心に関して180度の点対称をなす位置に配置されており、このため、パッケージを上記中心に関して180度回転させた場合でも、特に回転させない場合でも、プリント基板に取り付けられたときには、どちらの場合でも電気的に等価であることは実施例1と同様である。その他の説明は実施例1に関する説明を援用することとする。
【符号の説明】
【0029】
1 水晶発振器
2 パッケージ
21 底壁
22 下枠壁
23 上枠壁
24 リング
25 金属カバー
26 中間壁
3 水晶振動子
31、32 励振電極
33、34 水晶端子
35 導電性接着剤
4 発振回路用IC
6、GND、DC、OUT 表面実装用端子
NC 未接続端子(ランド)
L1〜L4、Lx 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が長方形をなすパッケージを有し、水晶振動子及びこの水晶振動子と協働して発振回路を形成する発振回路用ICを備えた水晶発振器において、
上記発振回路の内部アースラインに接続されている表面実装用端子GND、上記発振回路に電力を供給する内部電力供給ラインに接続されている表面実装用端子DC、及び、上記発振回路の内部出力ラインに接続されている表面実装用端子OUT、を含む少なくとも3種の内部ラインに接続されている表面実装用端子が、上記パッケージの下面に、それぞれが対をなして備えられているとともに、これら対をなす表面実装用端子は、互いに上記下面の長方形の中心に関して180度の点対称をなす位置に配置されていること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
請求項1に記載された水晶発振器において、
この水晶発振器が、電圧制御型の水晶発振器であり、
上記表面実装用端子には、更に、電圧によって発振周波数を制御するための内部制御ラインに接続された表面実装用端子VCの対が含まれていること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された水晶発振器において、
上記対をなす表面実装用端子同士は、上記パッケージの内部において互いに電気的に接続されていること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された水晶発振器において、
上記パッケージは、上記水晶振動子及び発振回路用ICがともに封入される単一のキャビティを備えていること
を特徴とする水晶発振器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された水晶発振器において、
上記パッケージは、中間壁によって分けられた上記水晶振動子を収納するための上部のキャビティ及び上記発振回路用ICを収納するための下部のキャビティを備えていること
を特徴とする水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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