説明

水栓装置

【課題】 水栓装置を利用する人が、差出す被洗浄物によっては水が出ない状態になる。
【解決手段】
ドップラーセンサと、吐水口と、前記吐水口から吐水された水を受水する受水部と、前記吐水口からの吐止水を切り替えるためのバルブと、前記バルブの駆動を制御するための制御部と、を備えた水栓装置であって、速度成分のうち低速度成分のみを検知するための低速抽出部をさらに備え、前記制御部は、被洗浄物が吐水口に到達する前に吐水を開始させるために、前記低速抽出部により低速度成分が検知されたときの、低速度成分以外の他の速度成分の検知情報に基づいてバルブの駆動を制御し、前記吐水口からの吐止水を切り替えることを特徴とする水栓装置を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば公衆トイレの手洗い場や、家庭の洗面化粧台や、キッチンに備えている水栓装置に関し、利用者の手又は利用者が保持する被洗浄物あるいはコップを検知して、水栓装置からの吐止水を制御する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐水を開始する水栓装置としては、被検知体である人体が到達点に達したことを検知したら、吐水を開始するものがあった。また、他の物体を誤検知しないために、人の手のみを検知できる領域に、センサの検知可能範囲を限定し、人の手が吐水口付近の到達点に達したら、吐水を開始するものがあった。
【0003】
マイクロ波などの送信波が被検知体に当たると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波あるいは透過波を受信することにより、人体を検知することができ、水栓装置などに使用される。放射したマイクロ波の人体からの反射波を受信して、そのドップラー周波数信号のパワースペクトルを求め、そのピーク値と所定の閾値とを比較することにより、人体を検知する人体検知装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−80150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、身体や人の手などの被検知体が到達点に達したことを検知してから吐水を開始するのでは、吐水のタイミングが遅くなりやすいという問題があった。また、ドップラー周波数信号のパワースペクトルは、センサまでの距離と反射体の面積とに依存する。吐水口の下に挿入された手の掌の向きなどによっては十分な強度の反射波が得られず、挿入された手を確実に検知できない場合もあった。
【0005】
本発明は、人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、
ドップラーセンサと、吐水口と、前記吐水口から吐水された水を受水する受水部と、
前記吐水口からの吐止水を切り替えるためのバルブと、前記バルブの駆動を制御するための制御部と、を備えた水栓装置であって、速度成分のうち低速度成分のみを検知するための低速抽出部をさらに備え、前記制御部は、被洗浄物が吐水口に到達する前に吐水を開始させるために、前記低速抽出部により低速度成分が検知されたときの、低速度成分以外の他の速度成分の検知情報に基づいてバルブの駆動を制御し、前記吐水口からの吐止水を切り替えることを特徴とする水栓装置
が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、ドップラーセンサは、異なる帯域の速度を識別するための少なくとも2ヶのフィルタを有し、最も低速度帯を検知するフィルタが前記低速抽出部であることを特徴とする水栓装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、ドップラーセンサは、前記受水部の内部または前記吐水口に向かって電波を放射するように配置された水栓装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利用者が水栓装置を利用する際に手を差し出す際に最適なタイミングで吐水を開始する使い勝手の良い水栓装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる水栓装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
(第1の実施例)
図1(a)に水栓装置の第1の実施例の概観図を示し、図1(b)に図1(a)の上視図を示し、図1(c)に図1(b)のA視断面図を示す。また、図2に制御ブロック図を示す。
【0011】
図1に示す水栓装置10は、水道水を供給するためのスパウト1と、スパウト1から吐水される水を受ける陶器性の受水部2と、受水部2の内部に利用者の手やコップや雑巾等の被洗浄物である被検知体が侵入してきたことを検知する電波センサ3と、スパウト1からの吐止水を切替えるバルブ部4と、電波センサ3からの信号に基づき、バルブ部4のon,offを制御する制御部5とで構成されている。ここで、電波センサ3は、利用者が受水部2に接近する際に対面する側である前側に配設されている。
【0012】
水栓装置10は、受水部2の近傍のみを検知したときにスパウトからの吐水を開始する吐水開始用スイッチとして利用する吐水口近傍の検知エリアと、手を差し出せば即差し出した手に水を供給できるように吐水口近傍の検知エリアと、の二つの検知エリアを設定でき、前者を第一検知エリアa、後者を第ニ検知エリアbとして以下説明する。
電波センサは、水あるいは金属に対して反射するため、被検知体の素材によらず検知することができ、第一検知エリアaを設定した場合では、利用者の手などの被洗浄物が侵入されると、電波センサ3が被検知体を検知して、その結果が制御部5に転送され、制御部5がバルブ部4を開動し、スパウト1から水道水を吐水する。したがって、第一検知エリアaは、スイッチ機能を有しているエリアであり、利用者が手を差し出しやすいように受水部2の手前の端部2aにマーカー6を釉薬を用いて設けた方が使いやすく、他の方法としては、樹脂製やガラス製の可視光を透過する素材で受水部2を形成し、内部にLED等の発光部材を点灯させて利用者の洗浄行為を誘導してもよい。その場合は、第ニ検知エリアbは、スパウト1からの給水を継続するか、止水に切替えるかを識別するための自動止水機能を有しているエリアとなる。この検知方法の利点は、使用者がスパウトから吐水を開始させたいとき意外である、例えば物を受水部に置くための行為や受水部に置かれたものを取り上げる行為に対しては、スパウト1から水道水を供給することはないため、袖や服を濡らすことなく節水性の高い水栓装置を提供することができる。
一方、第ニ検知エリアbに検知エリアを設定した場合は、手を差し出す行為と洗浄行為が一つのアクションで成立するため、さっと手洗い動作を行うことができるため、手先のみをすばやく洗いたいときには好都合の水栓装置となる。詳細の制御フローについては、後述する。
【0013】
次に、図2を用い検知手段である電波センサ3の説明をする。
電波センサ3は、電波を生成する発振回路11と、発振回路11で生成された電波を被検知体に送信し、被検知体からの反射電波を受信する送受信一体のアンテナ12と、アンテナ12からの受信信号により被検知体の有無を判断する検知部13と、で構成されている。尚アンテナ12は、送受信別体でも構わないが、本発明においては、受水部2の内部に設置するために、小型化を優先し一体にしている。このように、電波センサ3から放射される電波は、受水部2の材料が金属以外であれば透過することができ、また、水滴や水垢等の汚れに対しても電波の透過量が依存することもないために、赤外線センサや超音波センサや静電容量センサ等他のセンシング方式では、設置できない汚れる可能性のある受水部2の手前側に配設することができる。
この検知部13は、発振回路11からのローカル信号と、アンテナ12からのRF信号をミキシングするミキサ部14と、ミキサ部14で抽出したドップラー信号を周波数解析または所定の周波数のみを通過させる周波数変換部17とで、構成されている。周波数変換部17は、ソフト処理しても、電気回路で構成しても良いが、本発明では、ソフト処理を用いている。また、周波数変換部17で行われる周波数解析は、FFT解析を用いても良いが、本発明においては、複数の帯域に分けたフィルターを有し、それぞれのフィルターを通過後の波形の有無により実施している。この周波数変換部には、移動体が目標物に停止する直前の減速過程のゆっくりした低速成分の動きのみを抽出する低速抽出部15とその動きよりも速い高速成分を抽出する高速抽出部16とが設けられている。このように低速成分とは、被験者が到達地点に止まる寸前の遅い動きを示し、使用者の身長姿勢より様々な方向から移動した場合にもセンサ部で検知できる速度であり、後述するセンサ部100が検知する信号としては、所定の閾値、例えば、10Hz以下の周波数である。一方高速成分とは、スパウト近傍を横切る動きや、受水部内部で水を切る行為や、手と手をこする手もみ行為など加速または等速の動きを示しており、後述するセンサ部100が検知する信号としては、所定の閾値、例えば10Hz以上の動きである。
尚、このセンサ部100が検知するドップラー信号の周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c 式(1)
但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×106m/s)
センサ部100に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより速度vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜10.55GHzの範囲、または24.05〜24.25GHzの範囲の周波数が使用できる。以下この得られたドップラー信号の周波数変換部17を用いた信号処理について説明をする。
【0014】
次に図3に水栓装置を利用する人の手の速度を示し、その行為に対するフローチャートとを図4に示し、図5、図6、図7に周波数変換部で抽出したドップラー信号の波形を示す。これらの図を用い、検知部13で行うスパウト1からの吐止水の制御フローについて説明する。
【0015】
人の手の差し出し方は、使用者の背の高さや手洗いの姿勢など様々あり、ゆっくりした手の動きでも図4(a)のv1のような速度変化をもち目標物であるセンサ近傍にむかって減速する。またすばやく手を差し出す方の場合でも図4(b)に示すように、はじめに高速で受水部に進入し、その後目標物にむかって急減速しやがて検知エリアである目標値にて停止する。このように受水部に手が進入してからの速度は様々あり、停止するまでの時間は異なるものの、全て、10Hz以下の速度成分を有し、やがて停止することがわかる。この速度変化を利用したシーケンスを図4をもとに説明する。
最初にS01にて検知部13は、周波数変換部17の低速抽出部15からの信号を抽出する。低速抽出部は、前記のように10Hz以下の速度を検知するようにしている。このましくは、静止物体の手や受水部内部にある揺らぎを検知しないように数Hz〜10Hzの信号を抽出するのが望ましいが、ここでは、0〜10Hzに設定している。S01にて、低速抽出部の信号Vsが極大値と極小値がVs>V1または、Vs<V2になるかを判定している。ここで、信号Vsが図5(a)の状態から図5(b)に変化すると、前記S01で検知状態になるため、次にS02にて、高速抽出部16の信号を抽出する。ここで、高速抽出部が図6(a)に示すように信号VsがV3〜V4の間におさまっている場合は、第一検知エリアaに利用者の手が入ってきたと検知部13が判断でき、S03にて検知部13から制御部5にバルブ部4を“on”する命令が行われ、バルブ部4が開動し、スパウト1から受水部2に向かって水道水を供給する。一方、図6(b)に示すように、信号Vsの極大値と極小値がVs>V3または、Vs<V4になっている場合は、S05にて制御部はバルブ閉を継続する。このS02の判定時間は、低速抽出部15で検知する周波数の周期よりも早い時間に設定しているのがのぞましい。また、高速抽出部の信号波形を記憶し、S01にて低速抽出部が検知した時間にさかのぼって判断すると良い。
これは、受水部2内部で電波センサ3が検知する手洗い行為以外の動きを判別するためのアルゴリズムであり、例えば、手洗い行為以外に洗浄後の手に付着した水を切る行為や、石鹸を手につけて満遍なく汚れを浮きだたせる手もみ行為や、受水部内部に水を捨てる排水行為や、受水部内壁に付着した水の落下する動きである。これらの行為や水の移動は、電波センサ3に対して、水平方向、垂直方向様々な方向や様々な速度成分を有するため、動きの中で瞬間的に低速抽出部15が低周波成分を抽出することがある。その時制御部5は手の減速と判断する可能性があり、使用者が手洗い目的でないときに水が出てくる使い勝手の悪い水栓装置になる可能性があるが、これらの動きは、かならず低速成分だけでなく、同時に高速成分も検知したり、低速成分を検知後に周期的な動きの中で高速成分を発するため、S02による判断を入れることでスパウトからの誤吐水をなくすことができる。しかもこれらの信号処理を入れているにもかかわらず、このS02の判定時間は、低速抽出部15で検知する周波数の周期よりも早い時間に設定していたり、高速抽出部の信号波形を記憶し、S01にて低速抽出部が検知した時間にさかのぼって判断するアルゴリズムを加えると、センサ近傍に停止する前の減速する動きで制御部5が手洗い行為か否かを識別でき、バルブ”開”命令を送るため、目標物に停止する前の早いタイミングで吐水を開始することができ、使用者にとっては差し出す位置を迷わない使い勝手の良い水栓装置になる。このアルゴリズムは、前記第二検知エリアbに差し出された手に対して、スパウトから水を供給するときの制御部のアルゴリズムを説明したが、第一検知エリアaに差し出された検知エリアの場合は、同様のアルゴリズムにしても構わないし、S02にて第一検知エリアaにて被洗浄体を検知した後、その後手洗い行為を行うために、手を吐水口に向かって方向転換するため、節水性を考えるならば、検知した瞬間にバルブを開状態にするのではなく、制御部が検知したことを使用者に感知するブザー音またはLEDにて表示を行い、吐水口に停止するまでにバルブを開状態にするような時間差を設けても使い勝手を損なわず、快適な水栓装置を提供することができる。
バルブ開後は、S04にて検知部13は、第ニ検知エリアbにおける利用者の洗浄状態を識別するために、高速抽出部の信号Vsが周波数変換部17で1Hz以上のハイパスフィルタを通過させた時のドップラー信号Vsが、図7(c)に示すVs>V5あるいはVs<V6になるかを判定している。この時に図7(a)のような大きな振幅を有する波形を得た場合には、利用者の手または指先で飛散した水道水の水流に基づくドップラー信号を示しており、検知部13は、バルブ部4を“on”状態で継続する。しかし、図7(b)に示すVsの極大値と極小値が、V7<Vs<V5または、V8<Vs<V6となった場合は、利用者が手洗い動作を終了し、スパウト1水から供給される水だけの水流状態にあることを示しており、S05にて検知部13から制御部5にバルブ部4を“off”する命令が行われ、バルブ部4が閉動する。ただし、図7(c)のような、V8<Vs<V7の場合は、スパウト1から供給された水をコップ等の器に水を汲んでいる状態の水面の揺らぎを検知していることを示しており、検知部13は、バルブ部4を“on”状態で継続する。その後、コップから水があふれると、コップの周辺にて飛散する水からの反射電波に伴うドップラー信号を得る為、図7(b)のような振幅強度となり、検知部13は、S05にてバルブ部4を“off”にする。
【0016】
以上のように、早いタイミングでスパウトから受水部に向かって吐水を開始すると、使用者は、その水に対して手を差し出すことができるため、差出す位置を迷うことなく確実に手を洗うことができる。
尚、これまで手洗い行為を想定した説明を行ってきたが、歯ブラシを洗浄したり、コップに水を汲む行為も同様に、それぞれ水を利用したい物を持つ手が検知エリアに入る速度成分を識別し、スパウトからの吐水開始のタイミングをコントロールすることができるため、使用者が吐水口に停止する前に水を供給でき、差し出す行為を迷うことのない快適な水栓装置を提供することができる。
【0017】
(第2の実施例)
図8に水栓装置の第2の実施例の概観図を示しす。
【0018】
水栓装置50は、水道水を供給するためのスパウト30と、スパウト30から吐水される水を受ける受水部32と、制御部35と、スパウト30からの吐止水を切替えるバルブ部34とで構成されている。スパウト30は、内部に電波センサ33と、電波センサ33のアンテナから送受信する電波をスパウト30の吐水口31まで導く導波管36と、バルブから吐水口まで水を搬送する水路37とが内蔵されている。
【0019】
導波管36は、使用する電波の周波数と通過させたい発振モードに基づきそのサイズは決定されており、ここではサイズを最も小さくできるTE10モードを想定した形状にしている。形状は方形でも円形でも良く、スパウト30のデザインにより決定すればよくここでは方形型を採用している。また、導波管36の吐水口31側の開放端36aには、水道水の進入を防ぐための封し部材38が挿入されている。
【0020】
このように配置したことにより、電波センサ33のアンテナから放射された電波は、導波管36の内部を通過し、封し部材38を通過後、受水部32に向かって放射される。被洗浄体である手がスパウト30近傍に存在すると、手から反射した電波が封し部材38、導波管36を通過し、電波センサ33のアンテナで受信できる。電波センサ33の構成やスパウト30からの吐止水のアルゴリズムについては、第1の実施例と同様につき省略する。
第1の実施例とは、異なり電波センサ33がスパウト内部に配置されているため、受水部32は電波を通過させない金属製の材料など素材や形状に依存しないため何を利用してもよく汎用性が高くなる。またスパウトに向かって減速する手が、センサ向かってくる方向になるため、近づくに従い反射電力量が距離の反比例に2乗に反して大きくなるためS/Nが向上し、制御部はより精度の高い吐止水の判定を行うことができる。
【0021】
また、第1の実施例同様、電波センサ33は、手や歯ブラシなどの被洗浄体が受水部32に挿入された瞬間から吐水口31に向かって減衰する速度変化を検知することができるため、被洗浄体の減速して止まる寸前の動きなのか、それとも使用者が洗浄目的外の受水部32内で水を切る動きや石鹸を掌全体に広げる手もみ動作とを識別することが可能になる。従って、吐水口31近傍に停止する直前に制御部35はバルブ34に開命令を出すことができ、結果早い吐水を実現でき、手の差し出す位置が迷わず、水に手を差し出す快適な水栓装置30を提供することができる。
【0022】
(第3の実施例)
図9(a)にキッチン水栓装置に水栓装置を組み込んだ第3の実施例の概観図を示し、図9(b)に図9(a)のB視断面図を示す。
【0023】
キッチン水栓装置70は、水栓装置60と、料理作業台51と、コンロ(図示せず)と、前面パネル52で構成されている。また、水栓装置60は、水道水を供給するためのスパウト51と、スパウト51から吐水される水を受ける受水部であるシンク52と、シンク52の内部に利用者の手や包丁やまな板等の調理器具や、食材等の被洗浄物である被検知体が侵入してきたことを検知する電波センサ53と、スパウト51からの吐止水を切替えるバルブ部54と、電波センサ53からの信号に基づき、バルブ部54のon,offを制御する制御部55とで構成されている。ここで、電波センサ53は、受水部52の外側で且つ料理作業台51の下方側に隠蔽された状態で設置されている。
【0024】
水栓装置60は、二つの検知エリアを有しており、第一検知エリアdは、シンク52の内面の料理作業台51側の電波センサ53の近傍に設定されており、第ニ検知エリアeは、スパウト51から吐水される水の軌跡と受水部のあふれ面との交差する点近傍に設定されている。
第1の実施例同様、第一検知エリアdでは、利用者の手などの被洗浄物が侵入されると、電波センサ53の検知部(図示せず)は、制御部55にバルブ部54を開動するための命令を行い、スパウト51から水道水を吐水するため、スイッチ機能を有したエリアとなっている。尚、この第一検知エリアdは、シンク52の壁面にあるため、作業台の前からシンク52を横切ってスパウト51を利用する場合に便利であり、また利用者が受水部の前に立った際にもシンク52の奥まで手を差出すことなく水道水の供給を開始することができるため使いやすい。更に使い勝手を向上させるには、利用者が手を差し出しやすいように調理作業台51の上面と受水部52の側面52aにマーカー56を設けた方がよりよい。このマーカー56は、利用者が慣れるまでの間、取外し可能なシールタイプの物であれば、キッチン水栓装置70がシンプルに構成できて良いし、調理作業台51が、樹脂製やガラス製の可視光を透過する素材で形成している場合は、内部にLED等の発光部材を点灯させて利用者の洗浄行為を誘導してもよい。また、第ニ検知エリアeでは、スパウト51からの給水を継続するか、止水に切替えるかを識別するための自動止水機能を有しているエリアである。
【0025】
電波センサ53の構成、及び電波センサ53の検知部の制御フローは第一実施例と同様につき省略する。なお、電波ビームは、利用者の手や水の他に金属製の素材に対しても反射する性質があるため、包丁やフライパンや鍋など、調理器具の色,形状,素材に関係なく検知することができ、第一検知エリアdに手をかざさなくても手にもつ被洗浄物をかざすだけで、スパウト51から水道水を給水することができ、手がふさがっている状態や、作業台の前からシンク52を横切ってスパウト51離れた場所から操作することができ、便利である。
【0026】
また、第1の実施例同様、電波センサ53は、シンク52の端部52aからスパウト51に向かって電波ビームを放射しているため、手や包丁や食器などの被洗浄体がシンク52に挿入された瞬間から第一検知エリアdに向かって減衰する速度変化を検知することができるため、被洗浄体の減速して止まる寸前の動きなのか、それとも使用者がシンク内で水を切る動きやなべなどの調理器具を置くために第一検知エリアdを横切る動きなのかを見極めることが可能である。従って、被洗浄物が第一検知エリアdに停止する前にスパウト51から吐水を開始することができたり、第一検知エリアdで検知したことを使用者にブザーまたはLEDで放置した後、被洗浄物が第一検知エリアdから洗浄ポイントである第二検知エリアeに移動し、第二検知エリアeに到達する前にスパウト51から吐水を開始することができ、手の差し出す位置が迷わず、水に手を差し出す快適な水栓装置60を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施例を説明する図である。
【図2】電波センサのブロック図である。
【図3】被洗浄体の速度変化を示す概念図である。
【図4】検知部の制御フローを示す図である。
【図5】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図6】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図7】検知部で得られるドップラー信号波形を示す図である。
【図8】第2の実施例を説明する図である。
【図9】第3の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
1,30,51、 スパウト
2,22,52、 受水部
3,23,53、 電波センサ
4,24,54、 バルブ部
5,25,55、 制御部
10,50,60、水栓装置
発振回路
アンテナ
検知部
ミキサー部
低速抽出部
高速抽出部
周波数変換部
吐水口
導波管
水路
38、 封し部材
70、 キッチン水栓装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドップラーセンサと、
吐水口と、
前記吐水口から吐水された水を受水する受水部と、
前記吐水口からの吐止水を切り替えるためのバルブと、
前記バルブの駆動を制御するための制御部と、
を備えた水栓装置であって、
速度成分のうち低速度成分のみを検知するための低速抽出部をさらに備え、
前記制御部は、被洗浄物が吐水口に到達する前に吐水を開始させるために、前記低速抽出部により低速度成分が検知されたときの、低速度成分以外の他の速度成分の検知情報に基づいてバルブの駆動を制御し、前記吐水口からの吐止水を切り替えることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記ドップラーセンサは、異なる帯域の速度を識別するための少なくとも2ヶのフィルタを有し、最も低速度帯を検知するフィルタが前記低速抽出部であることを特徴とする請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記ドップラーセンサは、前記受水部の内部または前記吐水口に向かって電波を放射するように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144497(P2010−144497A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326547(P2008−326547)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】