説明

水溶性活性成分を投与するための経皮治療システム

本発明は、閉塞性裏打ち層、剤を放出するため皮膚に面した中央のデバイス、投薬デバイスを同心状に囲む粘着性層及び取り外し可能な保護フィルムを含む、水相から水溶性医薬活性成分を制御放出するための経皮治療システムに関する。
前記デバイスは、固定固相及び水溶液中に活性成分を含む液相でできており、固相はフリース又はスポンジ状構造を有する固形物で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経皮治療システムは、長年、多くの活性物質について市場で確立されている。この種の投与形態は、全身治療効果を得るために健康なヒト皮膚を通して皮膚透過性活性の医薬物質を通過させることができる。一般に、この種の医薬活性物質のパッチ(pharmaceutical active-substance patches)は、主に親油性ポリマー中に溶解された又は結晶性の形態で組み込まれた活性物質を含む、マトリックスパッチ(matrix patches)又はリザーバー/メンブランパッチ(reservoir/membrane patches)として知られているものに基づく。また、多くの技術は、主に脂溶性賦形剤の添加に基づいており、これは、場合により、活性物質の結合強度又は拡散性を高めることを意図し、そしてもう一方では、皮膚自体の吸収効果を促進することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
親油性媒体中で溶解度が制限される親水性の顕著な活性物質をヒト皮膚へ送達することは、現在まで、あまり重要な研究の主題ではなかった。実際に、知られているヒドロゲルシステムでは、皮膚に面した粘着性マトリックス(adhesive matrix)は主に水で構成され、そのため高い水溶性活性物質の使用が可能である。しかしながら、このようなシステムの欠点は、医薬活性物質、特に高分子量のものは、ポリマーゲルの骨格が存在する結果、皮膚に到達する前に拡散が非常に妨げられるということである。
【0003】
特許文献1は、水性エマルション又はディスパージョンから構成される医薬製剤を記載しており、より具体的には経皮投与を意図しており、これはさらに水相に活性物質として医薬活性タンパク質又はポリペプチド、乳化剤及び油性相を含む。さらに、特許明細書は、前記製剤を経皮投与するためのマトリックスを記載しており、これは吸収された形態で前記製剤を含む多孔性、吸収性及び単層状の固形物質で構成される。さらに、マトリックスには、柔軟性のある、通気性のある(すなわち、非閉塞性の(nonocclusive))裏打ち層(backing layer)を設けることができる。
【0004】
特許文献2は、閉塞性層(occlusive layer)及びリザーバー層を含む、皮膚表面を局所治療するための複合フィルムを提案している。リザーバー層は、シリコーンポリマーからなるマトリックスから形成され、そして内部の含有物中に、活性医薬物質による水性ゲル層を含む。補強のため、リザーバー層は、有孔繊維の不織布インレーを含んでもよいが、このインレーは活性物質ゲルと接触しない。明細書の記載及び請求項から、この複合フィルムは、全身的な経皮投与に必要な活性物質を確実に制御放出する手段が示されていないため、皮膚の局所治療にしか適していないことは明らかである。
【0005】
また、最後に記載した欠点は、特許文献3、そしてまた特許文献4による水性活性物質製剤を投与する提案にもあり、これらは不特定量の(undosed)水性製剤の皮膚への投与を記載している。これらの刊行物は、いずれもヒト皮膚に対して領域的に正確に適用するための又は水溶性活性物質の拡散を妨げない溶液を記載していない。さらに、先行技術は、蒸発から保護する問題の解決法をなんら明記していない。揮発性成分、特に水を含む複合医薬製剤は、揮発性画分が蒸発する結果、皮膚上で製剤が予想できない変化を受ける。従って、液体活性物質製剤は、皮膚上で非制御的に広がり、作用領域を増大させ、そしてさらに、皮膚上での活性物質の固定が確実でないため、皮膚への単純な適用又はおそらく純粋なホイルの適用によって問題がなくなることはない。
【0006】
かなり長い間、経皮治療システムにおける不透過性の(閉塞性の)裏打ち層の存在が一般に活性物質の皮膚透過を高めることは、不変の事実であると考えられていた(非特許文献1、特許文献5)。しかしながら、より最近の刊行物は、閉塞性条件下で、ヒト皮膚の浸透又は透過は、親油性活性物質によってしか高められず、親水性及び低い親油性活性物質によるそれは、変わらないままであることを示している(非特許文献2;非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5 707 641号
【特許文献2】EP 0 412 869 B1
【特許文献3】インド特許第187032号
【特許文献4】DE 42 23 004 A1
【特許文献5】米国特許第4 597 961号(1986)、第2欄、第61〜65行
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ann. Red. Med., Vol. 33, 18 (1982); p. 475, 476
【非特許文献2】Bucks, D.A. et al, J. Invest Dermatol 1988 Jul; 91(1): 29-33
【非特許文献3】Treffel P.; Skin Pharmacol. 1992, 5(2), 108-113
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、ここで、連続的に同心状に配置された水不溶性粘着性層の縁(margin)、活性物質のための不透過性の閉塞性裏打ち層、皮膚に面しており、水相から親水性活性物質を送達するためのデバイス、及び取り外し可能な保護ホイルを含む本発明の経皮治療システムは、送達デバイスから活性物質の制御放出が可能であり、そして皮膚を通しての透過を高めることができることが見出された。
【0010】
本発明の経皮治療システムを以下の通り詳述することができる:
活性物質を送達するための中央のデバイス(central device)は、二相で構成され、固定固相(stationary solid phase)は固形物から形成され、これは柔軟性があってもよく、そして繊維状又は開孔フリース状又はスポンジ状の構造を有し、そして液相は、医薬活性物質を含む水性の溶液、乳濁液又は懸濁液から構成される。
【0011】
二相送達デバイスは、慣用の粘着性ポリマーからなる粘着性層の縁によって同心状に囲まれている。本発明の一つの好ましい実施態様において、この縁は、非粘着性ポリマー層によって厚さが補強されており、それは密閉孔フォーム(closed-pore foams)の形態で存在してもよい。この層の厚さは200〜5000μm、好ましくは500〜2000の範囲であり、これを通して中央の送達デバイスの空間を制御することができる。
【0012】
送達デバイスは、円形であってもよく、又は正方形若しくは長方形であってもよく、その角は、丸くするか又は斜めに角度をつけてもよい(図1)。円形送達デバイスの場合、粘着性層の縁は、環状形態を有する。
【0013】
本発明を、図面、図1及び図2によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の経皮治療システムの平面図を示す。
【図2】本発明のシステムの横断面を示す。
【0015】
1は中央の送達デバイスを表し、2は少なくとも1つの非粘着性ポリマー層、3は粘着性層、4は剥離ライナー、そして5は閉塞性裏打ち層である。
【0016】
中央の送達デバイスの固定相は、固相であり、硬くてもよいし又は柔軟性があってもよく、そして繊維状の開孔したフリース状又はスポンジ状構造を有する。この固相として企図される物質には、合成又は天然繊維物質の群からの物質、例えば、セルロース、ビスコース、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、シリコーン繊維、などが含まれる。好ましいのは、不織布と称する物質である。
【0017】
中央の送達デバイスの液相として、親水性である、すなわち、容易に水溶性である活性医薬物質の水溶液を使用することができ;この水溶液は、乳濁液又は懸濁液の一部であってもよい。
【0018】
液相は、乳濁液又は懸濁液を形成するために必要な賦形剤に加えて、さらなる賦形剤を含んでもよく、それは、例えば、リポソームの形成が可能である。
【0019】
本発明に関する親水性活性物質は、有機媒体中よりも水中での溶解度がより高いものを意味する。この群には、経皮的使用がこれまでまったく又は限られた程度しか可能でなかった多くの薬物が含まれる。それらには、例えば、アドレナリン、ヘパリン、塩酸メトクロプラミド、塩酸サルブタモール、そしてまた、例えばペプチド又はポリペプチド、例えばバソプレッシン、インスリン、ソマトトロピン又はカルシトニンが含まれる。
【0020】
閉塞性裏打ち層については、オレフィンホイル、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタンのものが企図されるが、好ましくはポリエチレンテレフタレートホイルである。粘着性層の縁は、ポリイソプレン基、ポリイソブチレン基若しくはポリアクリル酸エステル基のポリマー又は他にポリシロキサンコポリマーで構成されてもよい。
【0021】
粘着性層の縁を補強するのに役立つ非粘着性ポリマー層は、ポリオレフィン、好ましくは、これらの物質の少なくとも1つのフォームで構成される。
【0022】
以下の半固形又は液体活性物質の製剤の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。
【0023】
実施例1:半固形製剤
精製水 10g
安息香酸ナトリウム 0.03g
胆汁酸塩 0.8g
コレステロール 0.7g
ポリオキシエチレン 0.8g
ペプチド 0.1g
SDS 0.5g
グリセロール 2.0g
【0024】
実施例2:液体製剤
精製水 10g
パラオキシ安息香酸(PHB) 0.03g
ペプチド 0.1g
マクロゴール(Marcrogol) 0.8g
ソルビタンモノステアレート 0.8g
中鎖トリグリセリド 0.5g
グリセロール 1.0g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞性裏打ち層、皮膚に面しており、活性物質を送達するための中央のデバイス、送達デバイスを同心状に囲む粘着性層、及び再び取り外し可能な保護ホイルを含む、水相から水溶性活性医薬物質を制御送達するための経皮治療システムであって、前記デバイスが、固定固相及び水溶液中に活性物質を含む液相から構成され、固相がフリース又はスポンジ状構造を有する固形物によって形成されることを特徴とする前記経皮治療システム。
【請求項2】
中央の送達デバイスの固相が、硬いか又は柔軟性であることを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
固相が繊維状及び/又は開孔フリース又はスポンジ状構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
固相が少なくとも1つの合成及び/又は天然繊維物質で構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
固相が不織布で構成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
中央の送達デバイスの液相が、活性医薬物質の水溶液で構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
中央の送達デバイスの液相が、活性医薬物質の水溶液を含む乳濁液又は懸濁液から形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
閉塞性裏打ち層が活性医薬物質に対して不透過性であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
中央の送達デバイスを同心状に囲む粘着性層が粘着性ポリマーで構成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
厚さを増すために、粘着性層が非粘着性ポリマーの少なくとも1つの層によって補強されることを特徴とする、請求項9に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
使用する活性医薬物質が、アドレナリン、ヘパリン、塩酸メトクロプラミド又は塩酸サルブタモールであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
使用する活性医薬物質が、ペプチド又はポリペプチドであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
バソプレッシン、インスリン、ソマトトロピン又はカルシトニンが使用されることを特徴とする請求項12に記載の経皮治療システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−518033(P2010−518033A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548596(P2009−548596)
【出願日】平成20年1月19日(2008.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000392
【国際公開番号】WO2008/095597
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】