説明

水滴落下音の低減化装置、およびこの低減化装置を取り付けてなる突出構造体

【課題】 雨上がりの後に、屋根以外の建物躯体の外装壁面から突出する突出構造体上に滴下する水滴によって発生する騒音を、効果的に低減させることができるようにした水滴落下音の低減化装置、およびこの低減化装置を取り付けてなる突出構造体を提供する。
【解決手段】 建物躯体1の壁部2から外側前方に向けて、少なくとも一部が突出する窓枠(突出構造体)5上に、左右方向に取り付けるためのシート保持体10と、このシート保持体10に、少なくとも下方に空間を存在させた状態で前方に向けて下降傾斜させて張設した多孔性シート状物9とよりなることを特徴とする水滴落下音の低減化装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体の壁部から外側前方に向けて突出する窓枠等の突出構造体上に設置される水滴落下音の低減化装置に係り、特に雨上がりの後に落下する水滴によって発生する騒音を低減させるようにした水滴落下音の低減化装置、およびこの低減化装置を取り付けてなる突出構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨の最中における雨音は、騒音が多少大きくても、通常殆んど気にならないものであるが、雨上がりの後に、例えば戸建住居等における寝室、台所、居間、書斎などの軒下等の壁部外側面から突出する窓枠等の上面に、屋根の庇や樋などから落下する水滴が、前記窓枠等の上面に衝突することによって発生する騒音は、雨上がりの後の開放感から、意外と気になり易く、特に神経過敏な人によっては、耳障りとなって、精神的な夷羅付きを覚えることすらある。
【0003】
従来、降雨の際における建物躯体に、雨音の低減化を図るようにした装置としては、特許文献1に開示されているように、例えば体育館、野球場、サッカー場、陸上競技場、パビリオン施設、多目的公共施設などの大規模構造物、所謂ドーム構造物やテント構造物(膜構造物)、骨組構造物などの空間構造物などにおいて、軽量化の要請等からステンレス、チタン、スチール等の薄い金属板や、ガラス繊維布を四フッ化エチレン樹脂によってコーティングして張設される膜材などが使用された屋根材の上方に、メッシュ膜を張設することにより、雨音の低減化を図るようにしたものが公知である。
【0004】
しかし、前記した特許文献1に記載の屋根構造では、降雨の最中における雨音の低減化を図るために適用されているもので、雨上がり後に、窓等の上枠上面に落下衝突する水滴によって発生する騒音を低減化しうるようにする対策は講じられていない。
【0005】
また、建物躯体の壁部外側面から突出する出窓の天板と、この天板を覆う屋根板との間の空間に、ビーズ発泡成形体を充填するか(特許文献2参照)、あるいは上屋根の屋根板を鋼板によって形成して、下屋根との間に離間した空間および下屋根内の空間に発泡材を充填するとともに、屋根板と下屋根との間、または下屋根内に制振シートおよび吸音材を介在させたもの(特許文献3参照)が公知である。
【0006】
しかし、特許文献2,3に記載されるのは、いずれも屋根板内の空間に、専ら発泡材等の吸音材を充填するものであり、雨上がりの後に落下衝突する水滴によって生ずる鈍い響きの騒音を効果的に低減させることはできない。
【特許文献1】特開2004−116187号公報
【特許文献2】特開平9−32182号公報
【特許文献3】特開2000−220353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の現状に鑑み、特に雨上がりの後に、建物躯体の壁部外側面から突出する突出構造体上に落下衝突する水滴によって発生する騒音を、効果的に低減させることができるようにした水滴落下音の低減化装置、およびこの低減化装置を取り付けてなる突出構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、「特許請求の範囲」における各請求項に示すように、次のような構成からなる発明によって解決される。
【0009】
(1)建物躯体の壁部から外側前方に向けて、少なくとも一部が突出する突出構造体上に、左右方向に取り付けるためのシート保持体と、このシート保持体に少なくとも下方に空間を存在させた状態で前方に向けて下降傾斜させて張設した多孔性シート状物とよりなることを特徴とする水滴落下音の低減化装置とする。
【0010】
(2)上記(1)項において、突出構造体を、窓枠、出窓、または上部にシャッター収容ケースを有する窓用シャッターとする。
【0011】
(3)上記(1)項または(2)項において、シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置されるとともに、前方に向けて下降傾斜する傾斜面を有する側面視ほぼ直角三角形状の中空構造体によって形成し、かつ前記傾斜面の上下端に膨出端部を設け、この上下端の膨出端部間に、多孔性シート状物を前記傾斜面との間に空間を存在させて張設する。
【0012】
(4) 上記(1)項または(2)項において、シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置される起立片と、この起立片の下端から前方に向けて延びる水平片とよりなる側面視ほぼL字状に形成するとともに、起立片の上端と水平片の前端との間に、多孔性シート状物を前方に向けて下降傾斜させて張設する。
【0013】
(5) 上記(1)項または(2)項において、シート保持体を、多孔性シート状物を張設させる第1部材と、この第1部材を所望の角度で支持する第2部材とより構成するとともに、第1部材を前方に向けて下降傾斜する傾斜面を有する側面視三角形状の中空構造体として形成し、多孔性シート状物を前記傾斜面との間に空間を存在させて張設するか、または第1部材を上下方向に開口する平面視矩形状の枠状部材として形成し、この枠状部材の少なくとも上面開口に多孔性シート状物を張設する。
【0014】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、多孔性シート状物を、孔径0.1mm〜2.5mmの小孔を多数有する多孔板または網状物をもって形成する。
【0015】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、多孔性シート状物を張設したシート保持体の左右側端を、側面部材で被覆する。
【0016】
(8)請求項1〜7のいずれかに記載の水滴落下音の低減化装置を取り付けてなる突出構造体とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、各請求項に記載の発明においては、次のような効果が奏せられる。
【0018】
請求項1記載の発明によれば、建物躯体の壁部から外側前方に向けて、少なくとも一部が突出する突出構造体上に、左右方向に取り付けるためのシート保持体と、このシート保持体に少なくとも下方に空間を存在させた状態で前方に向けて下降傾斜させて張設した多孔性シート状物とよりなるため、雨上がりの後に、多孔性シート状物上に落下衝突する水滴の衝突音は、次のような作用により低減される。
すなわち、落下する各水滴は、その大半が多孔性シート状物の孔の周縁に衝突するが、この衝突の際に、個々の水滴は、水滴の下面全体が孔の周縁に衝突するのではなく、下面の一部が衝突し、下面の大半は孔内部に位置する。
そのため、孔内部に位置した部分は衝突を生じないとともに、多孔性シート状物がシート状で薄く、かつ下方に空間を存在させた状態で張設してあるため、多孔性シート状物が上下方向に弾性的に振れ動いて、クッション作用をなし、これにより、孔の周縁に衝突することによって生ずる衝突音も相応に低減される。
またさらに、個々の水滴について、水滴の下面のうち孔内部に位置した部分が、分離して下方に落下しても、すでに部分的に孔の周縁に衝突することにより、落下速度が大幅に小さいものとなっており、分離した部分がさらに下方に落下して生ずる衝突音は極めて小さく、問題とはならない。
このように、本発明の低減化装置により、水滴の落下音を大幅に低減することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、突出構造体を、窓枠、出窓、または上部にシャッター収容ケースを有する窓用シャッターとしてあるため、水滴の落下音を、より効果的に低減することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置されるとともに、前方に向けて下降傾斜する傾斜面を有する側面視ほぼ直角三角形状の中空構造体によって形成し、かつ前記傾斜面の上下端に膨出端部を設けてあるため、多孔性シート状物を上下端の膨出端部間に張設することにより、多孔性シート状物を下方に空間を存在させた状態で、前方に向けて、下降傾斜させて張設することができる。
さらに、シート保持体を中空構造体とすることにより、低減化装置の軽量化とコスト低減の両者を図ることができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置される起立片と、この起立片の下端から前方に向けて延びる水平片とよりなる側面視ほぼL字状に形成してあるため、多孔性シート状物を起立片の上端と水平片の前端との間に張設することにより、多孔性シート状物を下方に空間を存在させた状態で、前方に向けて下降傾斜させて張設することが容易にできる。
【0022】
請求項5載の発明によれば、シート保持体を、多孔性シート状物を張設させる第1部材と、この第1部材を所望の角度で支持する第2部材とより構成してあるため、第2部材を第1部材を支持する角度が異なるものに変更することにより、所望の角度で第1部材を支持させることができ、これにより、多孔性シート状物を所望の角度で前方に向けて下降傾斜させて張設することができる。
例えば降雪量が多い地方においては、傾斜角度を大きくして、雪が本発明の低減化装置上に堆積することを防止することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、多孔性シート状物を、孔径0.1mm〜2.5mmの小孔を多数有する多孔板または網状物をもって形成してあるため、落下する水滴が、そのまま小孔内を通過して、さらに下方に落下して衝突音を発生するという事態を防止することができる。
落下する水滴は、その大半が小孔の周縁に衝突し、請求項1記載の発明についての効果の項において説明した作用により、水滴落下音の低減化の効果が奏せられる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、シート保持体の左右側端が開口されている場合でも、側面部材で被覆することにより開口が閉塞されるとともに、必要に応じて側面部材を窓枠等にねじ等をもって止着することにより、低減化装置を安定して固定することができる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、突出構造体に、水滴落下音の低減化装置を取り付けてなるため、構造体から発生する水滴の落下音を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明における第1実施形態の水滴落下音の低減化装置を備えた窓部を示す要部斜視図、図2は、図1のII−II線における要部拡大縦断面図、図3は、同じく、図2の要部を更に拡大するとともに、多孔性シート状物の一部を更に拡大して示す縦断面図、図4は、窓枠への水滴落下音の低減化装置の取付方法を説明するための分解斜視図である。
【0027】
図1および図2に示すように、建物躯体1の壁部2には、窓用開口部3が形成されているとともに、この窓用開口部3には、開口枠4が組み込まれ、この開口枠4の外側前端には、合成樹脂製の窓枠5が取り付けられている。
【0028】
窓枠5は、壁部2の外側面2aから外側に向けて、外側前端を一部突出させて取り付けられているともに、その枠内には、左右1対の引違い戸6,6および網戸7が左右方向に開閉自在に設けられている。
【0029】
窓枠5のうち、壁部2の外側面2aから外側に突出した部分における上面5aには、左右長手方向に沿って水滴落下音の低減化装置8が取り付けられている。
この低減化装置8は、図4に示すように、多孔性シート状物9とシート保持体10と側面部材11とにより構成されている。
【0030】
図3、図4に示すように、シート保持体10は、側面視においてやや扁平な側面視直角三角形状をなし、左右方向に長尺な中空構造体となっている。
シート保持体10における外側に向けて下降傾斜する傾斜面10aの上下端には、側面視ほぼ円形断面形状の膨出端部10b,10cが左右方向に延設されている。
【0031】
多孔性シート状物9は、シート保持体10における傾斜面10aの上方に、この傾斜面10aの上下端の膨出端部10b,10c間に架け渡すようにして、シート保持体10に張設されている。
すなわち、多孔性シート状物9の上端部分9aをシート保持体10の後面10dに、下端部分9bをシート保持体10の底面10gに、それぞれ両面接着テープ(図示省略)等をもって固定することにより、多孔性シート状物9と傾斜面10a間に空間が存在するような状態で、多孔性シート状物9がシート保持体10に取り付けられている。
【0032】
多孔性シート状物9のうち、傾斜面10aと対向する部分には、多数の小孔12が穿設されている
この小孔12は、上方より多孔性シート状物9上に落下してく水滴の粒径よりも小さな孔径、一般的には、0.1mm〜2.5mm、さらに好ましくは0.1mm〜1.4mmの孔径を有するものが用いられる。
【0033】
小孔12の孔径が水滴の粒径、一般的には、前記の上限2.5mmより大きい場合には、水滴が小孔12を通過して傾斜面10aに衝突してしまい、この衝突時に発生する衝突音を低減することができない。
一方、小孔12の孔径が過度に小さい場合、水滴が多孔性シート状物9に落下衝突するときに、相当程度の衝突音が発生してしまう。
また、小孔12の孔径が前記の範囲内にあれば、相応の衝突音の低減効果が奏されるが、隣接する小孔12が過度に離間している場合には、その小孔12間の多孔性シート状物9部分に水滴が衝突し、衝突音の低減効果が減少するおそれがある。
このため、傾斜面10aと対向する部分における多孔性シート状物9の小孔12の開口率は、55%以上、さらに好ましくは65%以上であることが望まれる。
【0034】
多孔性シート状物9としては、いわゆる多孔板、多孔シート、多孔フィルム、または網状物が好ましく用いられるとともに、中でも、コスト面、入手の容易さ、および取扱いの容易さの観点から、網状物を用いることが好ましい。
多孔性シート9が網状物である場合、網状物は、10〜50メッシュで、目開きが0.28〜2.11mm、特に16〜30メッシュで、目開きが1.39〜0.51mmであることが好ましい。
多孔性シート状物9の材質としては、耐候性のほか、軽量化も考慮した場合、多孔板、多孔シート、多孔フィルムである場合には、ステンレススチール、ガラス繊維含有樹脂、ポリプロピレン樹脂等からなるものが挙げられ、特に極薄のステンレススチール板が好ましく用いられる。
また、網状物である場合には、ポリプロピレンメッシュなどの樹脂メッシュ、ステンレススチールメッシュが挙げられ、特に線径0.5〜0.05mmのステンレススチールメッシュが好ましく用いられる。
【0035】
シート保持体10の左右側端10eは、側面部材11によって被覆され、小口開口10fは、閉塞される。
側面部材11は、シート保持体10の側端10eとほぼ同じ形状を有し、この側端10eを覆うとともに、シート保持体10の底面10gよりも下方まで延びる側基板11aと、この側基板11aの上端傾斜縁に、左右方向の内側に向けて設けられた縁片11bと、側基板11aの同じく内側面に設けられた嵌入部11cとにより形成されている。
【0036】
嵌入部11cは、シート保持体10の小口開口10fとほぼ同じ形状をなし、この嵌入部11cを、小口開口10fの開口13内に内嵌することにより、多孔性シート状物9を取り付けた後におけるシート保持体10の左右側端10eが被覆される。
【0037】
次いで、側面部材11の側基板11aの下部に穿設された前後1対のビス孔11dに、ビス14を挿通して、窓枠5の外側面5bに螺着することにより、低減化装置8が窓枠5の上面5aに取り付けられている。
【0038】
図5は、本発明における第2実施形態の低減化装置15を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
本実施形態では、第1実施形態におけるシート保持体10への多孔性シート状物9の張設構造に改良を施したものである。
【0039】
図5に示すように、シート保持体16は、第1実施形態における場合と同様に、側面視においてやや扁平な直角三角形状をなし、左右方向に長尺な中空構造体となっている。
【0040】
シート保持体16における外側に向けて下降傾斜する傾斜面16aの上下端には、それぞれ後向き、下向きに開口し、左右方向に延設される膨出端部としての係止部17a,17bが設けられている。
この係止部17a,17bは、側面視において、奥部が幅広溝となっており、幅方向の外向きの1対の係止爪18a,18aを備える止めピン18が係止されるようになっている。
【0041】
多孔性シート状物19をシート保持体16に張設するには、次のようにする。
すなわち、多孔性シート状物19を、シート保持体16における上下部の係止部17a,17b間に緊張状態で架け渡すと共に、多孔性シート状物19の上端部分19a、下端部分19bを、それぞれシート保持体16の上部係止部17a、下部係止部17bの開口位置まで巻き込ませ、次いで、止めピン18を、上下部の係止部17a,17bに係止させることにより、多孔性シート状物19の上端部分19a、下端部分19bが、それぞれ上部係止部17a、下部係止部17bの幅広溝内に押し入れられて、多孔性シート状物19がシート保持体16の上下部の係止部17a,17b間に張設される。
【0042】
このような張設構造をとることにより、第1実施形態のように、両面接着テープを用いる場合よりも、簡便にかつ強固に、多孔性シート状物19をシート保持体16に張設することができる。
【0043】
また、シート保持体16の左右側端は、第1実施形態の場合と同様に、側面部材20によって被覆される。
【0044】
図6は、本発明における第3実施形態の低減化装置21を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【0045】
図6に示すように、本実施形態におけるシート保持体22は、第1部材23と第2部材24の2部材により構成されている。
両部材23,24とも、左右方向に長尺な側面視L字状をなし、第2部材24は、第1部材23の内方に抱き込まれるようにして積み重ねることができるようになっている。
【0046】
多孔性シート状物25をシート保持体22に張設するには、次のようにする。
まず、第1部材23の起立片23aを建物躯体1の壁部2の外側面2aに当接させた状態で窓枠26の上面に載置するとともに、上方からねじ27をもって、水平片23bを挿通して、窓枠26に螺止することにより、第1部材23を窓枠26に固定する。
【0047】
次いで、第2部材24の起立片24aの上端と、水平片24bの前端間に、多孔性シート状物25を架け渡すとともに、多孔性シート状物25の上端部分25a、下端部分25bを、それぞれ第2部材24における起立片24aの背面、水平片24bの下面に巻き廻した状態で、第2部材24を第1部材23に積み重ねて、ねじ28,29をもって、第2部材を第1部材23に固定する。
これにより、多孔性シート状物25の上端部分25a、下端部分25bは、両部材23,24間に挟持され、多孔性シート状物25がシート保持体22に張設される。
【0048】
また、シート保持体22の左右側端は、第1実施形態の場合と同様に、側面部材30によって被覆される。
【0049】
図7は、本発明における第4実施形態の低減化装置31を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【0050】
図7に示すように、本実施形態におけるシート保持体32も、第1部材33と第2部材34の2部材により構成されている。
第1部材33は、平面視において、左右方向に長尺な枠状部材である。
第2部材34は、側面視において、後向きに拡開するV字状をなす左右1対の支持部材である。
【0051】
多孔性シート状物35をシート保持体32に張設するには、次のようにする。
まず、枠状部材33の上下面に多孔性シート状物35を架け渡して、接着テープで固定する。
例えば、前後左右の4つの枠材よりなる枠状部材32において、多孔性シート状物35の一端を両面接着テープで後枠材33aの後面に固定した後、多孔性シート状物35を、後枠材33aの上面から前枠材33bの上面に架け渡し、前枠材33bの前面に当接させて巻き廻し、前枠材33bの下面から後枠材33aの下面に架け渡して、多孔性シート状物35の他端を、同じく後枠材33aの後面に両面接着テープで固定する。
【0052】
次いで、左右1対の支持部材34を、枠状部材33の左右枠材33cに止着する。
さらに、シート保持体32の左右側端を、第1実施形態の場合と同様に、側面部材36によって被覆するとともに、この側面部材36を、図示を省略したねじをもって窓枠37に固定することによって、多孔性シート状物35がシート保持体32に張設された低減化装置31が、窓枠37の上面に安定的に取り付けられる。
【0053】
また、枠状部材33の前枠材33bには、水切り38が取り付けられている。
この水切り38は、枠状部材33の上面に張設された多孔性シート状物35上に落下する水滴の水切りを良好にするためのものである。
【0054】
本実施形態においては、多孔性シート状物35が上下に2重に張設されているため、多孔性シート状物35の小孔の孔径は、多少大き目であっても、落下する水滴は、上下2重の多孔性シート状物35のいずれかで捕獲され、衝突音の低減が図られる。
なお、枠状部材33の左右の枠材33c間にも必要に応じて適宜中間枠材を設けて、この中間枠材を、左右1対の支持部材34とは別途設けた支持部材をもって支持させるようにしてもよい。
【0055】
図8は、本発明における第4実施形態の低減化装置39を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【0056】
図8に示すように、本実施形態におけるシート保持体40も、第1部材41と第2部材42の2部材により構成されている。
第1部材41は、第1実施形態におけるシート保持体10をさらに扁平にした形状の部材である。
第2部材42は、第1部材41を支持する部材である。
【0057】
本実施形態の特徴は、多孔性シート状物43を張設した第1部材41の前後方向の位置、すなわち建物躯体1における壁部2から外方へ向かう位置を調節可能としたことである。
すなわち、上方から落下する水滴の位置に合わせて、第1部材41の前後方向の位置を調節可能としたことである。
【0058】
第2部材42は、支持部44と固定台45とにより構成されている。
支持部44は、平面視において、左右方向に長尺な四角形状の支持板44aと、この支持板44aの前端縁から垂下する垂下片44bと、この垂下片44bの後面から後向きに延設される係合片44cとにより形成されている。
係合片44cの上下面には、断面が鋸歯状の係合凹凸部44dが前後方向に連設されている。
【0059】
固定台45は、側面視において、片仮名コ字状をなし、前方が開口する係合溝45aを有している。
係合溝45aの上下内面には、支持部44における係合片44cと同様に、係合凹凸部45bが設けられている。
この係合溝45aに支持板44aの係合片44cを内挿して係合させ、支持板44aを前後方向の任意の位置で位置安定よく係止させることができる。
【0060】
なお、第1部材41への多孔性シート状物43の張設は、第1実施形態の場合と同様に、両面接着テープ等で適宜行えばよい。
また、第1部材41の支持板44aへの固定は、図示を省略したねじ等で容易に行うことができる。
さらに、固定台45は、ねじ46をもって窓枠47に固定されている。
なお、固定枠45は、窓枠47と一体成型することもでき、この場合には、建物躯体1の窓用開口部3への窓枠47の取付けの容易さの観点から、固定台45を、窓枠47の内部に組み込むとともに、窓枠47の上面が、平坦となるようにすることが好ましい。
【0061】
第1部材41および第2部材42の左右側端は、第1実施形態の場合と同様に、側面部材48によって適宜被覆される。
この場合、第1部財41は、前後方向に調節可能であるため、側面部材48は、窓枠47に固定することなく、第1部財41に固定して、これに追従して前後方向に移動可能とするとよい。
【0062】
なお、本発明の低減化装置は、以上実施形態として示した建物躯体の壁部から一部外方に突出する窓枠の上面に取り付ける場合以外に、例えば建物躯体の壁部に設けられた開口部に取り付けて使用される出窓またはシャッター等の少なくとも一部が、前記壁部から外側前方に突出する構造体における突出部の上面に取り付けて使用するなど、必要に応じて所望の場所に取り付けることができる。例えばシャッターとしては、特開2004−257019号公報(図1参照)に開示されているように、上部にシャッター収容ケースを有する窓用シャッター等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明における第1実施形態の水滴落下音の低減化装置を備えた窓部を示す要部斜視図である。
【図2】図1のII−II線における要部拡大縦断面図である。
【図3】同じく、図2の要部を更に拡大するとともに、多孔性シート状物の一部を更に拡大して示す縦断面図である。
【図4】窓枠への水滴落下音の低減化装置の取付方法を説明するための分解斜視図である。
【図5】本発明における第2実施形態の低減化装置を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【図6】本発明における第3実施形態の低減化装置を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【図7】本発明における第4実施形態の低減化装置を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【図8】本発明における第5実施形態の低減化装置を備えた窓部の要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 建物躯体
2 壁部
2a 外側面
3 窓用開口部
4 開口枠
5 窓枠(突出構造体)
5a 上面
5b 外側面
6 引違い戸
7 網戸
8 低減化装置
9 多孔性シート状物
9a 上端部分
9b 下端部分
10 シート保持体(中空構造体)
10a 傾斜面
10b,10c 膨出端部
10d 後面
10e 側端
10f 小口開口
10g 底面
11 側面部材
11a 側基板
11b 縁片
11c 嵌入部
11d ビス孔
12 小孔
13 開口
14 ビス
15 低減化装置
16 シート保持体
16a 傾斜面
17a,17b 係止部
18 止めピン
18a,18a 係止爪
19 多孔性シート状物
19a 上端部分
19b 下端部分
20 側面部材
21 低減化装置
22 シート保持体
23 第1部材
23a 起立片
23b 水平片
24 第2部材
24a 起立片
24b 水平片
25 多孔性シート状物
25a 上端部分
25b 下端部分
26 窓枠(突出構造体)
27 ねじ
28,29 ねじ
30 側面部材
31 低減化装置
32 シート保持体
33 第1部材(枠状部材)
33a 後枠材
33b 前枠材
33c 左右枠材
34 第2部材(支持部材))
35 多孔性シート状物
36 側面部材
37 窓枠(突出構造体)
38 水切り
39 低減化装
40 シート保持体
41 第1部材
42 第2部材
43 多孔性シート状物
44 支持部
44a 支持板
44b 垂下片
44c 係合片
44d 係合凹凸部
45 固定台
45a係合溝
45b 係合凹凸部
46 ねじ
47 窓枠(突出構造体)
48 側面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の壁部から外側前方に向けて、少なくとも一部が突出する突出構造体上に、左右方向に取り付けるためのシート保持体と、このシート保持体に少なくとも下方に空間を存在させた状態で前方に向けて下降傾斜させて張設した多孔性シート状物とよりなることを特徴とする水滴落下音の低減化装置。
【請求項2】
突出構造体を、窓枠、出窓、または上部にシャッター収容ケースを有する窓用シャッターとした請求項1記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項3】
シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置されるとともに、前方に向けて下降傾斜する傾斜面を有する側面視ほぼ直角三角形状の中空構造体によって形成し、かつ前記傾斜面の上下端に膨出端部を設け、この上下端の膨出端部間に、多孔性シート状物を前記傾斜面との間に空間を存在させて張設した請求項1または2記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項4】
シート保持体を、後面が建物躯体の壁部外側面に沿って配置される起立片と、この起立片の下端から前方に向けて延びる水平片とよりなる側面視ほぼL字状に形成するとともに、起立片の上端と水平片の前端との間に、多孔性シート状物を前方に向けて下降傾斜させて張設した請求項1または2記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項5】
シート保持体を、多孔性シート状物を張設させる第1部材と、この第1部材を所望の角度で支持する第2部材とより構成するとともに、第1部材を前方に向けて下降傾斜する傾斜面を有する側面視三角形状の中空構造体として形成し、多孔性シート状物を前記傾斜面との間に空間を存在させて張設するか、または第1部材を上下方向に開口する平面視矩形状の枠状部材として形成し、この枠状部材の少なくとも上面開口に多孔性シート状物を張設した請求項1または2記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項6】
多孔性シート状物を、孔径0.1mm〜2.5mmの小孔を多数有する多孔板または網状物をもって形成した請求項1〜5のいずれかに記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項7】
多孔性シート状物を張設したシート保持体の左右側端を、側面部材で被覆した請求項1〜6のいずれかに記載の水滴落下音の低減化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の水滴落下音の低減化装置を取り付けてなる突出構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−53638(P2010−53638A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221868(P2008−221868)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(300088186)株式会社エクセルシャノン (30)
【Fターム(参考)】