説明

水田作業機

【課題】走行機体の走行状態の変動にかかわらず、粉粒体散布装置により単位面積あたりに適切な供給量の粉粒体を散布供給することが可能な状態で、水田作業機が作業を実行しているときに粉粒体を散布することができる水田作業機を提供する。
【解決手段】走行機体の後部に備えられた粉粒体散布装置13が、貯留部24から供給経路26を通して供給される粉粒体を拡散散布する拡散手段27と、供給経路26を開閉自在なシャッター部材33と、そのシャッター部材33を切り換えるアクチュエータ34とを備えて構成され、アクチュエータ34の作動を制御する制御手段が、直進走行中において走行距離が設定距離に達する毎に、シャッター部材33を設定時間が経過する間だけ開状態に切り換え、且つ、旋回走行中であることが検出されている状態においては、シャッター部材33を閉状態に維持するようにアクチュエータ34の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に粉粒体散布装置が備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の水田作業機の一例としての乗用型田植機において、従来では、次のように構成されたものがあった。
すなわち、前記粉粒体散布装置としての薬剤散布装置が、貯留ホッパーに貯留されている薬剤(粉粒体の一例)が供給経路を通して供給されて、回転羽根式の拡散手段によって拡散散布させるように構成され、アクチュエータ(ソレノイド)によって駆動されて供給経路を閉塞する閉状態と供給経路内に薬剤通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材が備えられて、植付け対象苗における複数株の苗を送り出し供給する動作に同調させて、シャッター部材を一定時間開状態に操作するように構成され、さらに、シャッター部材のアクチュエータに対する取り付け位置を変更することにより、シャッター部材が開状態に操作されるときの薬剤の供給量を変更することができるように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、乗用型田植機に保持されている植付け対象苗における複数株の苗を送り出し供給する動作に同調させて、シャッター部材を一定時間開状態に操作する構成であるから、苗の植え付け間隔が一定であれば、圃場の単位面積に対する粉粒体(薬剤)の散布量は走行機体の速度にかかわらず同じになるが、例えば、走行機体の進行方向に沿う苗の植え付け間隔を変更させると、圃場の単位面積に対する薬剤の散布量が変化することになる。
【0005】
その結果、従来構成によれば、苗の植え付け間隔を変更させる場合には、単位面積当たりの粉粒体の散布量が予め設定した設定量になるように、例えばシャッター部材の位置を調整することにより通過用開口の開口面積を変更調整する等の調整動作が必要であり、苗の植え付け間隔を変更させる毎に、このような開口面積の調整という煩わしい操作が必要であり、この点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、このような不利を解消するために、走行機体の車速を検出する車速検出手段を備えて、車速検出手段にて検出される走行機体の車速が大であるほど粉粒体の繰出し量が大になるようにシャッター部材を駆動するアクチュエータの作動を制御するように構成することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このように走行機体の車速の情報に基づいてアクチュエータの作動を制御するものでは、次のような不利があり、未だ改善の余地がある。
【0008】
例えば水田作業機の一例としての乗用型田植機では、作業行程に沿って走行しながら苗植付け作業を実行して苗が植付けられた領域に薬剤散布装置により除草剤等の薬剤を散布するようになっているが、畦際の枕地での旋回走行中においては、苗植付け作業を実行しない非作業状態で走行機体が走行する状態となっているから、走行機体の車速の情報に基づいてアクチュエータの作動を制御すると、非作業状態で枕地を旋回走行しているときであっても薬剤(粉粒体)を散布するという不利がある。
【0009】
又、水田作業機が作業を実行している場合であっても、走行機体の車速が安定しているとは限らず、特に不慣れな運転者であれば、車速が変化することもあるが、上記したような車速の情報に基づいてアクチュエータの作動を制御するものでは、このような場合において車速を検出するタイミングが不適切であれば、薬剤の繰出し量がそのときの走行機体の平均的な車速に対して設定される適切な値と異なる等、粉粒体の繰出し量を精度よく調節することができないおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、車速が変化するなどの走行機体の走行状態の変動にかかわらず、粉粒体散布装置により単位面積あたりに適切な供給量の粉粒体を散布供給することが可能な状態で、水田作業機が作業を実行しているときに粉粒体散布装置により粉粒体を散布することができる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の後部に粉粒体散布装置が備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記粉粒体散布装置が、貯留部の下部出口から供給経路を通して供給される粉粒体を拡散散布する拡散手段と、前記供給経路を閉塞する閉状態と前記供給経路内に通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材と、そのシャッター部材を前記閉状態と前記開状態とに切り換えるアクチュエータとを備えて構成され、
前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、前記走行機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、前記走行機体が直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出する走行状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記走行状態検出手段にて直進走行中であることが検出されている状態において、前記走行距離検出手段にて検出される走行距離が設定距離に達する毎に、前記シャッター部材を設定時間が経過する間だけ前記開状態に切り換えるように前記アクチュエータの作動を制御する粉粒体散布処理を実行し、且つ、前記走行状態検出手段にて旋回走行中であることが検出されている状態においては、前記シャッター部材を前記閉状態に維持するように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点にある。
【0012】
第1特徴構成によれば、制御手段は、走行状態検出手段にて直進走行中であることが検出されている状態で、走行距離検出手段にて検出される走行距離が設定距離に達する毎に粉粒体散布処理を実行するので、シャッター部材を設定時間が経過する間だけ開状態に切り換えられて、貯留ホッパーの下部出口から供給経路を通して粉粒体が拡散手段に供給されて圃場に拡散散布される。一方、走行状態検出手段にて旋回走行中であることが検出されている状態では、シャッター部材が閉状態に維持されるから粉粒体が散布供給されることがない。
【0013】
水田作業機は、複数の作業行程において、走行機体を直進走行させながら作業を実行するものであり、このように複数の作業行程にて作業を行う場合、畦際で旋回走行するときは作業を実行しないから、上記構成により、水田作業機が作業を実行しているときにだけ粉粒体散布装置により粉粒体を散布することになる。
ところで、走行機体が旋回走行する枕地については、上記複数の作業行程での作業が終了した後において、走行機体を作業行程の走行方向とは直交する方向に走行させながら作業を行うことがあるが、このような作業形態で作業する場合には、枕地を走行するときにも粉粒体(例えば、薬剤)の散布が行われることになる。つまり、このような作業形態において枕地での旋回走行中に散布すると粉粒体(薬剤)が2重散布されるおそれがあるが、上記したように旋回走行時には散布しないようにしているので、枕地で粉粒体(薬剤)が2重散布されることを回避できるものとなる。
【0014】
しかも、走行距離検出手段にて検出される走行距離が設定距離に達する毎に、シャッター部材を設定時間が経過する間だけ開状態に切り換えるので、例えば、車速が変動するようなことがあっても、走行距離検出手段にて検出される走行距離が同じであれば、走行機体が進行する距離は常に同じであるから、粉粒体散布装置による単位面積当たりの粉粒体の散布量を予め設定した設定量に調節することを適切に行い易いものとなる。
【0015】
従って、車速が変化するなどの走行機体の走行状態の変動にかかわらず、粉粒体散布装置により単位面積あたりに適切な供給量の粉粒体を散布供給することが可能な状態で、水田作業機が作業を実行しているときに粉粒体散布装置により粉粒体を散布することができる水田作業機を提供できるに至った。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、
前記走行状態検出手段により旋回走行中であることが検出されている状態から直進走行中であることが検出される状態に切り換わると、前記走行距離検出手段にて検出されている走行距離にかかわらず前記粉粒体散布処理を実行し、且つ、その後は、前記粉粒体散布処理を実行してからの前記走行機体の走行距離が前記設定距離に達する毎に前記粉粒体散布処理を実行するように構成されている点にある。
【0017】
旋回走行中は、シャッター部材を前記閉状態に維持するようにアクチュエータの作動を制御するようになっているので、旋回走行中に走行機体の走行距離が設定距離に達することがあっても、旋回走行中は粉粒体散布処理を実行しないが、旋回走行している状態から直進走行する状態に切り換わると粉粒体散布処理を実行し、しかも、その後は、粉粒体散布処理を実行してからの走行機体の走行距離が設定距離に達する毎に粉粒体散布処理を実行するようにしたから、水田作業機が作業を行う作業領域において未供給領域が発生しない状態で適切な供給量の粉粒体を散布供給することが可能となる。
【0018】
又、直進走行に切り換わると、粉粒体散布処理を実行するので、運転者が粉粒体散布装置が正常に動作していることを認知させることができる利点もある。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記走行機体の後部に水田作業装置が備えられるとともに、前記走行機体に備えた原動部の動力が作業クラッチの入切に伴って断続自在に前記水田作業装置に伝達されるように構成され、
前記走行状態検出手段が、前記作業クラッチの作動状態に基づいて、前記作業クラッチが入状態であれば直進走行中であり、前記作業クラッチが切状態であれば旋回走行中であると検出するように構成されている点にある。
【0020】
水田作業機は、走行機体を直進走行させながら作業を実行し、畦際で旋回走行するときは作業は行わないが、作業を実行するときは、走行機体に備えた原動部の動力が入り状態に切り換えられた作業クラッチを介して水田作業装置に伝達されて、水田作業装置により作業が行われることになる。一方、旋回走行しているときは、水田作業装置による作業が行われないので、作業クラッチが切り状態に切り換えられることになる。そこで、第3特徴構成では、このような作業クラッチの状態に基づいて、走行機体が直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するようにしている。
【0021】
作業クラッチの入切り状態の検出は、例えば検出スイッチ等の簡単な構成で対応することができ、水田作業装置への動力伝達の断続のために備えられる作業クラッチを利用して、走行機体が直進走行中であるか旋回走行中であるかについて簡単な構成で検出することが可能となる。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記設定時間を変更調節自在な手動操作式の調節操作手段が備えられている点にある。
【0023】
第4特徴構成によれば、調節操作手段を操作して粉粒体散布処理を実行するときのシャッター部材を開状態に維持する時間を変更することにより、例えば、粉粒体の性状の違いや圃場の作業状況の違い等に応じて、粉粒体の繰出し量を変更調節することができ、粉粒体散布装置により単位面積あたりに適切な供給量の粉粒体を散布供給することをより一層的確に行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置の背面図である。
【図4】薬剤散布装置の縦断側面図である。
【図5】薬剤散布装置の底面図である。
【図6】拡散放出機構の横断平面図である。
【図7】繰出し機構の縦断側面図である。
【図8】繰出し機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断正面図である。
【図10】繰出し機構の分解斜視図である。
【図11】薬剤散布装置の電気回路図である。
【図12】圃場における作業形態を示す図である。
【図13】圃場における作業形態を示す図である。
【図14】制御動作のタイムチャートである。
【図15】制御動作のタイムチャートである。
【図16】別実施形態の制御動作のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明に係る水田作業機の一例としての乗用型田植機について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、原動部としてのエンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、粉粒体としての例えば除草剤等の薬剤を散布する粉粒体散布装置としての薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0026】
図1及び図2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。苗植付装置12の左右両側には、田面に次回の作業行程での走行指標を描くマーカー82が出退操作自在に設けられている。
【0027】
エンジン4の動力がミッションケース5に備えられた変速装置にて変速された後、ミッションケース5内に備えられた植付クラッチ90(作業クラッチに相当)及びPTO軸91を介して苗植付装置5におけるフィードケース14に伝達され、フィードケース14から伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付ける構成となっており、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0028】
運転座席8の右側に、苗植付装置5を上昇させる上昇位置、苗植付装置5の昇降を停止させる中立位置、苗植付装置5を接地するまで下降させる下降位置、植付クラッチ90を入り状態に切り換える植付位置の夫々に切り換え自在が昇降操作レバー92が備えられている。つまり、この昇降操作レバー92の操作により、リフトシリンダ10に対する油圧制御弁(図示せず)を対応する操作位置に切り換え、且つ、植付クラッチ90を入り切り操作することができるように構成されている。
【0029】
次に、薬剤散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で、左右両側の伝動ケース15に夫々固定されて架設された支持フレーム23Aの中間部から支柱23Bを固定立設してあり、この支柱23Bの上部に、
苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で薬剤散布装置13が支持される構成となっている。そして、図4及び図5に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散放出させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0030】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図5に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0031】
図7〜図10に示すように、繰出し機構25は、薬剤の通過用開口31が形成された金属製の開口形成板32と、通過用開口31を閉塞する閉状態と薬剤の通過用開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0032】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された通過用開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が通過用開口31を開放する位置までスライドすると、通過用開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、通過用開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、通過用開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0033】
通過用開口31は、図10に示すように、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0034】
開口形成板32には、通過用開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0035】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0036】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図7及び図10に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0037】
図4に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、通過用開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0038】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図7参照。)。
【0039】
シャッター部材33は、ソレノイド34に備えられるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(通過用開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(通過用開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0040】
図4及び図6に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0041】
受止め体51は縦軸芯周りで回転する状態で板面が横向き姿勢となるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0042】
具体的には、図6に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0043】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0044】
図4に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
説明を加えると、上述したように、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されるが、図6に示すように、案内通路26の下端の出口54が平面視で羽根無し領域Qに対応する位置に設けられている。
【0045】
図4に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0046】
案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口54側の開口面積より大にする形態で形成されている。説明を加えると、この案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されており、この案内通路26を形成する4つの内面のうち径方向外方側に位置する内面55(図4参照)の上下途中箇所に、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されている。但し、受止め体51の径方向内方側に位置する内面57は上下方向に沿って平坦面に形成されている。
【0047】
そして、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0048】
拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成するものでもよい。
【0049】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0050】
以下、粉粒体の繰出し状態を調節するための制御構成について説明する。
図11に示すように、ソレノイド34及び電動モータ41の作動を制御する制御手段としての制御装置66が電気制御ユニット28に備えられている。そして、走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。走行機体2にはバッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0051】
電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0052】
又、第1レギュレータ回路64により出力される直流12Vの端子とソレノイド34の入力端子とを、スイッチングトランジスタ67を迂回して接続する状態に切り換えて強制的にソレノイド34を開作動させるための強制排出スイッチ81が備えられている。この強制排出スイッチ81は押し操作によりオン状態となり、手を離すとオフ状態に戻るように復帰付勢される構成となっている。
【0053】
直流12Vの電力は、制御装置66により出力されるパルス信号PUにより電動モータ41に供給する電力を調整する駆動回路71と、パルス信号PUを反転させる反転回路72と、反転回路72により出力される反転信号によりパルス信号PUがオフの時に電動モータ41にて発生する逆起電圧(誘起電圧)VXを検出する検出回路73とを備えて、この検出回路73の検出結果を制御装置66にフィードバックして電動モータ41に供給される電力が所望の値になるように、言い換えると、所望の回転数で受止め体51を回転する状態になるように、制御装置66が、駆動回路71に出力するパルス信号のデューティ比を変更して電動モータ41の駆動状態を制御するように構成されている。
ちなみに、前記逆起電圧はそのときの電動モータ41の回転数に比例して変化する電圧値であり、このような逆起電圧に基づいてモータ回転数をフィードバック制御することは周知の構成である。
【0054】
このように構成することで、例えば、発電機61による発電状態が変動すること等に起因して電源電圧が変動することがあっても、電動モータ41により、受止め体51を極力、所望の回転数で回転することができるように構成されている。
【0055】
電気制御ユニット28は、上記したような電気部品が収納ケース76の内部に組み付けられて一体的に形成されており、収納ケース76をケーシング29に図示しないビスにより取り付ける構成となっている。又、電気制御ユニット28と走行機体3との間での電気配線77は、途中に備えられたコネクタ78によって接続分離自在に構成されている。
【0056】
従って、コネクタ78の接続を解除して電気配線77を分離させた状態で収納ケース76を取り外すことにより、電気制御ユニット28はケーシング29から容易に取り外すことができるように構成されている。
【0057】
そして、走行機体3には、後輪2への伝動系の駆動軸(図示せず)の回転に応じて、例えば駆動軸が1回転する毎に設定個数のパルス信号を出力する回転センサS1が備えられ、この回転センサS1が制御装置66に入力されており、制御装置66は、回転センサS1から入力されるパルス信号を積算することにより、積算を開始してからの走行機体3の走行距離を求めることができる。従って、回転センサS1が走行距離検出手段を構成する。
【0058】
又、植付クラッチ90が入り状態であるか切り状態であるかを検出することにより走行機体#が直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出する走行状態検出手段としての植付クラッチセンサS2が備えられ、その出力が制御装置66に入力されている。
【0059】
植付クラッチ90の入切の状態が走行機体3の走行状態(直進走行中であるか旋回走行中であるか)に対応することについて説明する。
圃場における乗用型田植機の作業形態は、図12に示すような作業形態、すなわち、直進状態で走行する複数の作業行程L01〜L05と、畦際での旋回走行LL1〜LL6とを交互に繰り返しながら、植付け作業を行うのが一般的であり、作業行程L01〜L05では、苗植付装置5を下降させて植付クラッチ90を入り状態に切り換えて苗植付け作業を実行し、旋回走行を行うときには、苗植付装置5を上昇させて植付クラッチ90を切り状態に切り換えることになる。つまり、植付クラッチ90が入り状態であれば、走行機体3が直進走行を行っている状態であり、植付クラッチ90が切り状態であれば、走行機体3が旋回走行を行っている状態である。
ちなみに、作業開始点K1からの1回目の走行行程LA1では植付け作業は行わないが、複数の作業行程L01〜L05での作業が終了した地点K2から後に、最後の走行行程LB1及び枕地部分における畦に沿う作業行程LB2、LB4と共に作業行程LB3として畦に沿って走行しながら植付け作業を行うことになる(図13参照)。
【0060】
前記作業行程L01〜L05での走行時には、次回の作業行程での走行指標を描くために、左右のマーカー82のうち次回の作業行程側に位置するマーカー82を突出状態に切り換えて走行することになる。又、畦際の旋回走行LL1〜LL6ではマーカー82は左右両側共に格納状態に切り換える。
【0061】
制御装置66は、植付クラッチ90が入り状態であること、つまり、直進走行中であることが検出されている状態において、回転センサS1の検出情報に基づいて検出される走行距離が設定距離に達する毎に、シャッター部材33を設定時間Tsが経過する間だけ開状態に切り換えるようにソレノイド34の作動を制御する粉粒体散布処理を実行し、且つ、植付クラッチセンサS2にて植付けクラッチ90が切り状態であることが検出されている状態においては、シャッター部材33を閉状態に維持するようにソレノイド34の作動を制御するように構成されている。
【0062】
又、手動操作式の調節操作手段としてのポテンショメータ式の散布量調節器69が備えられ、制御装置66は、この散布量調節器69の調節操作に基づいて、粉粒体散布処理においてシャッター部材33を開状態に維持する設定時間Tsを変更設定できるように構成されている。このようにシャッター部材33を開状態に操作する設定時間Tsを変更することにより、繰出し機構25による薬剤の繰出し量を変更調整することが可能な構成となっている。
【0063】
制御装置66は、粉粒体散布処理を実行するときにのみ電動モータ41を回転駆動して薬剤を拡散放出させるよう構成され、繰出しを行わないときの無用な電力消費を抑制するようにしてある。
【0064】
次に、制御装置66による制御動作について説明する。
図14に示すように、電源入切スイッチ62をオンさせた状態で、植付け作業を開始するために植付クラッチ90が切り状態から入り状態に切り換わり、そのことが植付クラッチセンサS2にて検出されると、制御装置66が粉粒体散布処理を実行する。つまり、図15に示すように、ソレノイド34を作動してシャッター部材33を開状態に切り換え、散布量調節器69の調節操作に基づいて設定された設定時間Tsだけ開状態を維持した後、閉状態に切り換える。そして、この粉粒体散布処理においては、電動モータ41を回転駆動させて薬剤を散布させる。
【0065】
又、図14に示すように、作業行程に沿って走行機体3が走行しながら植付け作業を実行するに伴って、回転センサS1の検出情報に基づいて検出される走行距離が設定距離Dsに達する毎に粉粒体散布処理を繰り返し実行する。このように走行距離の検出が行われているときは、走行距離が設定距離Dsに達することを予測することができるから、粉粒体散布処理を実行する毎に、図15に示すように、走行距離が設定距離Dsに達するタイミングよりも所定時間t1だけ早いタイミングで電動モータ41の回転駆動を開始する。所定時間t1とは、電動モータ41の回転が安定するのに必要な時間である。そして、電動モータ41の駆動を開始したのちは、上述したように駆動回路71の駆動状態を制御して、所望の回転数で受止め体51を回転駆動させる。
【0066】
このように、シャッター部材33を開状態に切り換えるタイミングよりも所定時間t1だけ早いタイミングで電動モータ41の回転駆動を開始するようにしたから、薬剤が落下供給されるときには、受止め体51及び拡散用羽根体52は既に安定した状態で回転しているので、薬剤が回転している拡散用羽根体52にて打撃を受けて拡散させた状態で放出させることができる。
【0067】
1つの作業行程での植付け作業が終了して畦際での旋回走行に切り換わると、苗植付装置5が最大位置まで上昇操作されるとともに植付クラッチ90が切り操作され、旋回走行中は、その状態が維持されるので、旋回走行中は、回転センサS1の検出情報に基づいて検出される走行距離が設定距離Dsに達することがあっても、粉粒体散布処理は実行しない。
【0068】
旋回走行が終了して次回の作業行程での植付け作業が開始されると、苗植付装置5が接地位置まで下降操作されるとともに植付クラッチ90が入り操作されるが、植付クラッチ90が切り状態から入り状態に切り換わったことが植付クラッチセンサS2にて検出されると、前回の作業行程と同様に、粉粒体散布処理を実行する。このとき、回転センサS1の検出情報に基づいて検出される走行距離が初期値(零)にリセットされて、その位置からの走行距離の検出が開始される。
【0069】
そして、前回の作業行程と同様に、作業行程に沿って走行機体3が走行しながら植付け作業を実行するに伴って、回転センサS1の検出情報に基づいて検出される走行距離が設定距離Dsに達する毎に粉粒体散布処理を繰り返し実行することになる。
以後、複数の作業行程及び旋回走行にて同様な処理が繰り返し行われる。
【0070】
尚、上述したように枕地では薬剤散布が行われないが、図13に示すように、畦際での枕地部分は、複数の作業行程L01〜L05の作業の終了後に植付け作業を行うことになるから、そのときに、薬剤散布が行われることになる。
つまり、作業行程L01〜L05の作業途中に枕地で薬剤散布すると、薬剤が2重散布されることになり、しかも、苗の植付け前に薬剤を散布しておくと、苗の根に薬剤が付着して苗が枯れてしまうおそれがあるから、枕地での旋回走行時には薬剤散布しないようにしている。
【0071】
圃場内で苗植付け作業が終了したのちに、貯留ホッパー24に薬剤が残っているような場合には、貯留ホッパー24に備えられた合成樹脂材からなる蓋体85を取り外して、排出口86を開放した薬剤を排出させることができるが、排出口86から排出することができない貯留ホッパー24の底部や薬剤散布装置13の内部に残っている薬剤を排出させるときは、強制排出スイッチ81をオン状態にしてソレノイド34を開状態に切り換えることにより薬剤を排出することができる。このとき、受止め体51は回転しているが、落下する薬剤を受止め体51を覆うように設けられた図示しない回収袋により回収することになる。
【0072】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、粉粒体散布処理を実行する際、走行機体3の走行距離が設定距離Dsに達するタイミング(シャッター部材33を開状態に切り換えるタイミング)よりも所定時間t1だけ早いタイミングで電動モータ41の回転駆動を開始するようにしたが、このような構成に代えて、例えば、図16に示すように、粉粒体散布処理を実行する際、走行機体3の走行距離が設定距離Dsに達するタイミング(シャッター部材33を開状態に切り換えるタイミング)よりも所定時間t2だけ遅いタイミングで電動モータ41の回転駆動を開始するようにしてもよい。
【0073】
このように構成すると、繰出し機構25から薬剤が落下供給された時点では、受止め体51は回転していないが、その後、所定時間t2が経過すると、電動モータ41による受止め体51の回転駆動が開始される。その結果、落下供給される薬剤は、回転が停止している受止め体51上に一旦受止められる。この受止め体51の受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されているから、受止め面51A上に落下した薬剤は、傾斜面による案内作用により回転軸芯Y側に向けて移動するような案内作用を受け、そのように受止められている状態で受止め体51が回転を開始するので、遠心力の作用によって周方向に均等に均した状態で拡散し易いものとなる。
【0074】
尚、受止め面51Aが平坦面であっても、一旦受止められたのちに受止め体51が回転を開始するので、回転し始めるときに受止められた薬剤が周方向に均されることになり、その後の回転による遠心力の作用によって周方向に均等に均した状態で拡散し易いものとなる。
【0075】
又、図示はしないが、上記構成に代えて、粉粒体散布処理を実行する際、走行機体3の走行距離が設定距離Dsに達するタイミング(シャッター部材33を開状態に切り換えるタイミング)と同じタイミングで電動モータ41の回転駆動を開始するようにしてもよい。
【0076】
(2)上記実施形態では、旋回走行が終了して作業行程での植付け作業が開始され、植付クラッチ90が切り状態から入り状態に切り換わったことが植付クラッチセンサS2にて検出されると、すぐに粉粒体散布処理を実行するようにしたが、このような構成に代えて、植付クラッチ90が切り状態から入り状態に切り換わったことが植付クラッチセンサS2にて検出されてから所定時間が経過したのちに粉粒体散布処理を実行するようにしてもよい。
【0077】
(3)上記実施形態では、走行状態検出手段が、作業クラッチとして植付クラッチの作動状態に基づいて、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するようにしたが、このような構成に代えて、次の(3−1)〜(3−9)のように構成してもよい。
(3−1)施肥装置を備える場合には、施肥装置を作動状態と停止状態とに切り替え自在な施肥クラッチの作動状態を検出する施肥クラッチ検出手段の検出結果に基づいて、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
(3−2)走行機体3に備えられたステアリングハンドル6の切れ角を切れ角検出手段により検出して、切れ角検出手段の検出に基づいて、直進用の切れ角であるか旋回用の切れ角であるかを判別して、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
(3−3)マーカー82が突出作用状態であるか格納状態であるかを検出するマーカー状態検出手段の検出結果に基づいて、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
(3−4)接地フロート19の姿勢変化を検出するフロートセンサの検出結果に基づいて、苗植付装置5の植付け深さが設定値になるようにリフトシリンダ10を制御する昇降制御を実行する昇降制御手段を備えるものであれば、その昇降制御手段が昇降制御を実行しているか実行していないかを判別して、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
(3−5)直進状態と旋回状態とで変速操作が異なるものであり、変速操作状態を検出する検出手段の検出結果に基づいて、その変速操作の状態により直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
(3−6)直進走行する作業状態から旋回走行に至ると、旋回内側の後輪2の回転状態と予め判明している車体の旋回半径の情報とから機体の位置を検出して、旋回の終了位置に至ったか否かを検出すると、植付クラッチ90を自動で入り操作する自動苗揃え制御を実行するものでは、この自動苗揃え制御を実行しているか実行していないかを判別して、直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出するもの。
尚、この自動苗揃え制御を実行するものでは、旋回の終了位置に至る少し手前であることが検出することができるので、旋回が終了する少し手前で電動モータ41を駆動開始する等、薬剤散布装置の駆動のタイミングを変更設定するようにしてもよい。
(3−7)直進走行する作業状態から旋回走行に至り、旋回開始検出手段の検出結果により旋回走行を開始したことを検出してから設定時間が経過するまでは旋回走行中であり、設定時間が経過したのちは直進状態であると判別するもの。ちなみに、旋回開始検出手段としては、植付クラッチ90の切り操作に基づいて検出するもの、苗植付装置5の上昇操作に基づいて検出するもの、施肥クラッチの切り操作により検出するもの、ステアリングハンドルの旋回用操作を検出するもの等により検出することができる。
(3−8)昇降操作レバー92が植付位置に操作されると直進走行状態であり、上昇位置に操作されると旋回走行状態であるとして検出するもの。
(3−9)植付クラッチ90の入り切りを操作する専用の操作具にて、クラッチ入りが指令されると直進走行状態であり、クラッチ切りが指令される旋回走行状態であるとして検出するもの。
【0078】
(4)上記実施形態では、走行距離検出手段として、後輪2の回転に伴ってパルス信号を出力する回転センサS1を用いるようにしたが、これに代えて、後輪2の回転に伴って機械的に積算を行うカウンタ装置を用いるようにしたり、GPS等の位置計測システムを利用する等、種々の構成で実施してもよい。
【0079】
(5)上記実施形態では、開口形成板32とシャッター部材33とにより通過用開口31を開閉させる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、通過用開口31が形成された開口形成板32、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33に加えて、シャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作する板バネ式の押圧部材(図示せず)を上下に重ね合わせた三層構造とする等、種々の構成を用いることができる。
【0080】
(6)上記実施形態では、電動モータ41が所定の回転速度で受止め体51を回転駆動する構成としたが、別途備えられる調節操作具の操作に基づいて電動モータ41の回転速度を変更するように制御装置66により制御する構成としてもよい。
【0081】
(7)上記実施形態では、電動モータ41が受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、ソレノイド34が電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられているものを示したが、電動モータ41とソレノイド34とが上下方向に位置をずらせて配備されるものでもよい。
【0082】
(8)上記実施形態では、粉粒体として薬剤を散布するものを示したが、薬剤に限らず、肥料や種子等、他の粉粒体を散布するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の走行機体の後部に粉粒体散布装置が備えられている水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
3 走行機体
4 原動部
5 水田作業装置
13 粉粒体散布装置
24 貯留部
25 繰出し手段
26 供給経路
27 拡散手段
31 通過用開口
33 シャッター部材
34 アクチュエータ
66 制御手段
69 調節操作手段
90 作業クラッチ
Ds 設定距離
S1 走行距離検出手段
S2 走行状態検出手段
Ts 設定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に粉粒体散布装置が備えられている水田作業機であって、
前記粉粒体散布装置が、貯留部の下部出口から供給経路を通して供給される粉粒体を拡散散布する拡散手段と、前記供給経路を閉塞する閉状態と前記供給経路内に通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材と、そのシャッター部材を前記閉状態と前記開状態とに切り換えるアクチュエータとを備えて構成され、
前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、前記走行機体の走行距離を検出する走行距離検出手段と、前記走行機体が直進走行中であるか旋回走行中であるかを検出する走行状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記走行状態検出手段にて直進走行中であることが検出されている状態において、前記走行距離検出手段にて検出される走行距離が設定距離に達する毎に、前記シャッター部材を設定時間が経過する間だけ前記開状態に切り換えるように前記アクチュエータの作動を制御する粉粒体散布処理を実行し、且つ、前記走行状態検出手段にて旋回走行中であることが検出されている状態においては、前記シャッター部材を前記閉状態に維持するように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている水田作業機。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記走行状態検出手段により旋回走行中であることが検出されている状態から直進走行中であることが検出される状態に切り換わると、前記走行距離検出手段にて検出されている走行距離にかかわらず前記粉粒体散布処理を実行し、且つ、その後は、前記粉粒体散布処理を実行してからの前記走行機体の走行距離が前記設定距離に達する毎に前記粉粒体散布処理を実行するように構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記走行機体の後部に水田作業装置が備えられるとともに、前記走行機体に備えた原動部の動力が作業クラッチの入切に伴って断続自在に前記水田作業装置に伝達されるように構成され、
前記走行状態検出手段が、前記作業クラッチの作動状態に基づいて、前記作業クラッチが入り状態であれば直進走行中であり、前記作業クラッチが切り状態であれば旋回走行中であると検出するように構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記設定時間を変更調節自在な手動操作式の調節操作手段が備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−152168(P2012−152168A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15462(P2011−15462)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】