説明

水硬性組成物用分散剤

【課題】水硬性組成物用として十分な分散性能を有し、更にはフレッシュコンクリート製造時における練上がり速度を向上できる水硬性組成物用分散剤を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン基を有する特定のエチレン系不飽和単量体Aと、エチレン系不飽和リン酸単量体Bとを重合して得られる重合体からなる水硬性組成物用分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用分散剤及び該分散剤を含有する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性組成物用混和剤の中で、流動性付与効果の大きいものは特に高性能分散剤と呼ばれている。その代表的なものに、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩(ナフタレン系)、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩(メラミン系)、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系等がある。
【0003】
近年、代表的な水硬性組成物であるコンクリートの高耐久化指向が強まってきている。例えば、コンクリートに使用される水量を低減して高強度化することが行われており、この傾向は今後も増加するものと予測される。水量を低減するのに減水性と流動保持性に優れるポリカルボン酸系分散剤を使用することが主流となっている(例えば特許文献1)。しかし、ポリカルボン酸系分散剤は、ナフタレン系やメラミン系に比べてコンクリート製造時における練上がりが遅い傾向がある。
【0004】
特許文献2には、ホスホン酸等とポリエチレングリコールモノアリルエーテルスルフェートとの共重合体を使用することによって、高スランプを有するが、過度のエアレーションのない建築材料が製造可能であることが開示されている。また、特許文献3には、わずかな配量ですでに高濃度のコンクリート混合物の加工性を長期間保持し、かつ同時に水/バインダー比の著しい低下により個々の建設材料を分離させることなく硬化した状態の建材で強度を向上する効果を有する、不飽和モノカルボン酸誘導体またはジカルボン酸誘導体およびオキシアルキレングリコール−アルケニルエーテル基をベースとする共重合体に、ビニルホスホン酸が付加された共重合体を用いることが開示されている。特許文献4には、特定のリン酸エステル系重合体を含有する水硬性組成物用分散剤が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭59−18338号公報
【特許文献2】特表2005−504712号公報
【特許文献3】特開2000−351820号公報
【特許文献4】特開2006−52381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のポリオキシアルキレン鎖を有するセメント用分散剤は分散性能に優れるが、フレッシュコンクリート製造時における練上がり速度については、更なる向上が望まれる。
【0007】
本発明の課題は、セメント等の水硬性組成物用として十分な分散性能を有する分散剤、更にはフレッシュコンクリート製造時における練上がり速度を向上できる水硬性組成物用分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般式(1)で表される単量体A(以下、単量体Aという)と一般式(2)で表される単量体B(以下、単量体Bという)とを重合して得られる共重合体からなる水硬性組成物用分散剤に関する。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−COOH又はCH2COOHを示し、R3は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、R6は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、COOR7(R7は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、Yは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、iは0〜5の整数を示し、mは0〜2の整数を示し、j及びlはそれぞれ0又は1を示し、kは平均値であり5〜200の数を示す。)
【0011】
また、本発明は、上記本発明の水硬性組成物用分散剤と、無機系水硬性物質と、水とを含有する水硬性組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメント等の水硬性組成物用として十分な分散性能を有する分散剤、更にはフレッシュコンクリート製造時における練上がり速度を向上できる水硬性組成物用分散剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<単量体A>
単量体Aにおいて、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−COOH又はCH2COOHであり、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましい。R3は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、水素原子またはメチル基が好ましい。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、炭素数2のオキシアルキレン基が好ましい。iは0〜5の整数を示し、1〜2が好ましい。jは0又は1を示し、0が好ましい。kは平均値であり5〜200の数を示し、5〜100が好ましい。
【0014】
単量体Aは、共重合性、製造工程うを少なくできる等の製造上の容易さの観点から、一般式(1)中のiが1、jが0、R1、R2及びR3が水素原子の化合物が好ましい。
【0015】
<単量体B>
単量体Bにおいて、一般式(2)中のR4、R5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−COOH又はCH2COOHを示し、水素原子またメチル基が好ましい。R6は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、又はCOOR7のいずれかを示し、COOR7が好ましい。R7は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基である。Yは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、水素原子又はアルカリ金属が好ましい。mは0〜2の整数を示し、2が好ましい。lは0又は1を示し、0が好ましい。
【0016】
単量体Bは、製造時のゲル化防止の観点から、一般式(2)中のlが0、mが2、R4及びR5がそれぞれ水素原子の化合物が好ましい。
【0017】
<共重合体>
本発明の共重合体は、水硬性物質を分散させるために、吸着基としてホスホン酸基、立体反発基としてアルキルポリアルキレングリコール鎖を有する重合体であり、これを分散剤として使用することで、練り上がり速度の改善(フレッシュコンクリート製造する時の骨材、セメント、水の各構成物質が均一状態になる速さ)を達成することが可能である。
【0018】
本発明の共重合体において、単量体Aと単量体Bのモル比は、練り上がり速度の改善の観点から単量体A/単量体Bで50/50〜1/99が好ましく、40/60〜10/90がより好ましく、30/70〜15/85が更に好ましい。
【0019】
本発明の共重合体の製造においては、上記単量体A、単量体Bの他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド
、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。中でもアクリル酸系単量体が好ましい。全単量体中、単量体A及び単量体Bの合計の割合は、水硬性粉体の分散性の観点から、50〜100モル%が好ましく、75〜100モル%がより好ましく、90〜100%が更に好ましい。
【0020】
本発明に係る共重合体は、高分子化合物の製造に用いられる通常の重合方法により製造することができる。例えば、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下、単量体A、単量体Bを所定の反応溶媒中で重合させる方法が挙げられる。その際の反応温度、反応時間、反応圧力、反応系のpH等は適宜設定すればよい。具体的には、次の方法が挙げられる。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体A、単量体B、必要により更に連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.1〜6時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。何れの場合も、単量体A及び/又は単量体Bを含有する溶液はpH7以下が好ましい。また、酸剤等により、好ましくはpHを7以下に維持して共重合反応を行い、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係る重合体を得る。
【0021】
工業的な観点から、反応系の単量体A、単量体B及び共重合可能なその他の単量体の総量は、反応系中の固形分中、10重量%以上、更に20〜80重量%が好ましい。
【0022】
本発明に係る共重合体の製造に使用できる連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質である。連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。連鎖移動剤は、重合体の分子量調整の観点から、全単量体合計に対して0超〜20モル%使用することが好ましく、0.5〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%が更に好ましい。
【0023】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
また、本発明に係る共重合体の製造方法では、重合開始剤を使用することが好ましい。全単量体合計に対して重合開始剤を0.01〜20モル%使用することが好ましく、0.1〜10モル%がより好ましく、0.5〜3モル%使用することが更に好ましい。
【0025】
水系の重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム塩(例えばペルオキソ二硫酸アンモニウム)又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等の水溶性アゾ化合物が使用できる。また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。
【0026】
本発明に係る共重合体の製造は、溶液重合法で実施することができ、その際に使用される溶媒としては、水、あるいは、水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールアセトン、メチルエチルケトン等とを含有する含水溶媒系の溶媒が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水が好ましい。特に水系の溶媒を用いる場合、単量体A及び/又は単量体Bを含む単量体溶液はpH7以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜6、更に好ましくは0.2〜4で反応に用いて共重合反応を行うことが、モノマー混液の均一性(取り扱い性)、モノマー反応率の観点や、リン酸系化合物のピロ体の加水分解により架橋を抑制する点で好ましい。
【0027】
本発明に係る共重合体は、重量平均分子量(Mw)が1000〜500000であることが好ましい。分子量が1000以上では分散性能が発現しやすくなり、また、500000以下では過度の凝集作用が発現しないため、この範囲が好ましい。
【0028】
本発明に係る共重合体のMwは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0029】
<水硬性組成物用分散剤>
本発明の分散剤は、上記本発明に係る共重合体からなるものであり、水硬性粉体100重量部に対し、重合体の固形分濃度で0.01〜20重量部、更に0.5〜10重量部の比率で用いられることが、分散性の観点から、好ましい。
【0030】
本発明の分散剤は、水溶液で用いることができる。また、その他の添加剤を併用することもできる。分散剤と前記添加剤とを混合して一剤化してもよい。前記添加剤として、例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのEO付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。分散剤と前記添加剤とを混合して一剤化する場合、一剤化された剤の全固形分中、本発明の分散剤の濃度は、50〜99重量%、更に70〜99重量%であることが好ましい。
【0031】
<水硬性組成物>
本発明の分散剤の対象となる水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の分散剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野において有用である。
【0032】
該水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕は、好ましくは100重量%以下、より好ましくは80〜10重量%、更に好ましくは60〜10重量%、更に好ましくは50〜10重量%、より更に好ましくは40〜10重量%である。特に30重量%以下のような低い単位水量の配合においても本発明の分散剤の効果は顕著に奏される。
【実施例】
【0033】
<原料モノマー等>
(1)ビニルホスホン酸:Aldrich社製 (有効分97%)
(2)アクロイルオキシプロピルホスホン酸:日本化学工業社製(有効分93.3%)
(3)アリルアルコールエチレンオキサイド付加物:いずれも日本油脂社製
(4)2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬工業社製
(5)ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23):NKエステルM230G、新中村化学社製
(6)ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9):NKエステルM90G、新中村化学社製
(7)メタクリル酸:Aldrich社製
(8)メルカプトプロピオン酸:Aldrich社製
(9)ペルオキソ二硫酸アンモニウム:和光純薬工業社製
【0034】
<反応率>
HPLC:反応終了後の残存モノマー量を高速液体クロマトグラフィーのピーク面積から検量線法により求め、仕込みモノマー量から計算した。
H-NMR:エチレンオキサイドのメチレン基のプロトンを指標として、各モノマーの二重結合のピーク面積から残存モノマー量を求め、仕込みモノマー量から計算した。
【0035】
<重合体の重量平均分子量>
前述のGPC法により測定した。
【0036】
<共重合体aの製造>
メタクリル酸56.9gとω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)220gと3-メルカプトプロピオン酸2.4gを混合したモノマー混合溶液を調製した。また別途ペルオキソ二硫酸アンモニウム2.5gを水45gを混合した開始剤溶液を調製した。反応容器として、1000mlの4つ口フラスコに水363.2gを仕込み、脱気後窒素雰囲気で満たした。75℃に加温後、前記モノマー混合液及び前記開始剤溶液を同時に90分かけて滴下し、さらに、その後90分間75℃に保持して反応させた。反応終了後に常温にして、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5に中和し、共重合体(共重合体a)の水溶液を得た。共重合体aの重量平均分子量は45000、メタクリル酸の反応率は98%(HPLC)、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの反応率は98%(HPLC)であった。
【0037】
<共重合体Aの製造>
ビニルホスホン酸10gとアリルアルコールエチレンオキサイド付加物(Mw 550)50.2gと水60gを混合したモノマー混合溶液を調製した(単量体A/単量体B(モル比)=50/50)。また2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.9gを水70gを混合した開始剤溶液を調製した。反応容器として、1000mlの4つ口フラスコに水185.4gを仕込み、脱気後窒素雰囲気で満たした。70℃に加温後、前記モノマー混合液及び前記開始剤溶液を同時に90分かけて滴下し、さらに、その後90分間70℃に保持して反応させた。反応終了後に常温にして、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5に中和し、共重合体(共重合体A)の水溶液を得た。共重合体Aの重量平均分子量は4800、ビニルホスホン酸の反応率は98%(H-NMR)、アリルアルコールエチレンオキサイド付加物の反応率は75%(H-NMR)であった。
【0038】
<共重合体Bの製造>
ビニルホスホン酸8.8gとアリルアルコールエチレンオキサイド付加物(Mw 1500)51.4gと水60gを混合したモノマー混合溶液を調製した(単量体A/単量体B(モル比)=30/70)。また2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.1gを水50gを混合した開始剤溶液を調製した。反応容器として、1000mlの4つ口フラスコに水205.8gを仕込み、脱気後窒素雰囲気化にした。70℃に加温後、前記モノマー混合液及び前記開始剤溶液を同時に90分かけて滴下し、さらに、その後90分間70℃に保持して反応させた。反応終了後に常温にして、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5に中和し、共重合体(共重合体B)の水溶液を得た。共重合体Bの重量平均分子量は4800、ビニルホスホン酸の反応率は97%(H-NMR)、アリルアルコールエチレンオキサイド付加物の反応率は73%(H-NMR)であった。
【0039】
<共重合体Cの製造>
アクロイルオキシプロピルホスホン酸11.3gとω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)49.5gと水49.5gと3-メルカプトプロピオン酸0.42gを混合したモノマー混合溶液を調製した(単量体A/単量体B(モル比)=45/55)。またペルオキソ二硫酸アンモニウム1.13gを水10gを混合した開始剤溶液を調製した。反応容器として、1000mlの4つ口フラスコに水178gを仕込み、脱気後窒素雰囲気化にした。80℃に加温後、前記モノマー混合液及び前記開始剤溶液を同時に90分かけて滴下し、さらに、その後90分間80℃に保持して反応させた。反応終了後に常温にして、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH5に中和し、共重合体(共重合体C)の水溶液を得た。共重合体Cの重量平均分子量は30000、アクロイルオキシプロピルホスホン酸の反応率は97%(HPLC)、ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの反応率は98%(HPLC)であった。
【0040】
<フロー値の測定>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)200gにあらかじめ計量した水と共重合体水溶液の混合溶液60gを添加しハンドミキサー(松下電器産業社製)を用いて1分間低速で攪拌を行った。表1の添加量は、共重合体水溶液の固形分の重量に基づくものであり、混練後のフロー値が180mmを狙った重量である。その後15秒間の間にセメントペーストを図1のトルク抵抗値計測機器(抵抗値測定装置:Graphic Recorder BR (チノー社製))に移し変え1.5分間、300rpmの速度で攪拌を行った。その後、速やかにセメントペーストをペーストコーン(径50mm、高さ51mm)に充填してフロー値を測定した。また、この条件で混練する際の練り上がり速度を以下の方法で数値化した。
【0041】
<練り上がり速度>
前述のフロー値の測定における混練を行う際に、攪拌時間(秒)に対するトルク抵抗値計測機器のトルク出力電圧値mV(セメントペーストの粘度の指標)を測定した。図1に示すように、トルク抵抗値計測機器はグラフィックレコーダーに接続され、トルク出力電圧値(mV)が記録される。そして、得られたデータを表計算ソフト(Microsoft Excel2000、マイクロソフト社)を用いて攪拌時間に対する電圧値でグラフ化し、その変化を直線近似し、得られた近似式の傾き(比例定数の絶対値)の大きさで練り上がり速度を評価した。即ちこの絶対値が大きい場合にはセメントペーストが均一になる速度が遅く、逆に絶対値が小さい場合には練り上がり速度が速く一定の粘度に到達していると評価できる。近似曲線の算出は、測定誤差を小さくするために攪拌時間3秒から90秒のデータ(サンプリング間隔0.2秒)に対して行った。
【0042】
例として、共重合体aの混練時の攪拌時間(秒)対するセメントペーストの粘度(トルク出力電圧値mV)のグラフを下記に示す。
【0043】


【0044】
表1に、分散剤として共重合体a、A及びBを用いた場合のセメントペーストのペーストフロー及び比例定数の絶対値を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
A:粘度と経過時間の直線近似結果から得られた比例定数の絶対値
添加量(部):(分散剤の重量*)÷(セメントの重量)×100
*分散剤の重量:共重合体水溶液の固形分の重量
【0047】
表1に示されるように、実施例1、2は、参考例(ポリカルボン酸系共重合体)と同様に分散性能があることが確認できた。比例定数の絶対値が参考例よりも小さいことから、練り上がり速度がより速く、一定の粘度に到達するまでの所要時間もより短くなることがわかる。
【0048】
次に、共重合体Cを用いて、分散性能の確認を行った。普通ポルトランドセメント200gにあらかじめ計量した水と共重合体C(共重合体水溶液の固形分で1.06g)の混合溶液60gを添加しハンドミキサーを用いて3分間低速で攪拌を行った。その後、速やかにセメントペーストを所定のペーストコーンに充填してフロー値を測定した。フロー値は174mmであり、分散性能があることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1(a)は、実施例及び比較例で、セメントペーストの混練に用いたトルク抵抗値計測機器とグラフィックレコーダーの概略図である。図1(b)は、スターラーの攪拌翼の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される単量体Aと一般式(2)で表される単量体Bとを重合させて得られる共重合体からなる水硬性組成物用分散剤。
【化1】


(式中R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−COOH又はCH2COOHを示し、R3は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、R6は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、COOR7(R7は炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基)を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、Yは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、iは0〜5の整数を示し、mは0〜2の整数を示し、j及びlはそれぞれ0又は1を示し、kは平均値であり5〜200の数を示す。)
【請求項2】
単量体Aが、一般式(1)中のiが1、jが0、R1、R2及びR3がそれぞれ水素原子の化合物である請求項1記載の水硬性組成物用分散剤。
【請求項3】
単量体Bが、一般式(2)中のlが0、mが2、R4及びR5がそれぞれ水素原子の化合物である請求項1又は2記載の水硬性組成物用分散剤。
【請求項4】
単量体Aと単量体Bのモル比が、単量体A/単量体Bで50/50〜1/99である請求項1〜3何れか1項記載の水硬性組成物用分散剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の水硬性組成物用分散剤と、無機系水硬性物質と、水とを含有する水硬性組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−120452(P2009−120452A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298280(P2007−298280)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】