説明

水系化粧料組成物

【課題】
難水溶性成分を析出ないしは沈殿させることなく、安定に溶解ないしは分散させる方法に関する。また難水溶性成分が可溶化された水系化粧料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
化粧料組成物中に水酸化レシチンを0.005〜2重量%配合することによって、難水溶性成分を析出ないしは沈殿させることなく安定に溶解ないしは分散させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性成分を析出ないしは沈殿させることなく、安定に溶解ないしは分散させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水系化粧料において油性成分や難水溶性成分を配合する場合、配合した成分が溶解せず濁りを生じる、または溶解したとしても経時的に析出や沈殿することで商品価値や外観を損なう。そのため、一般には界面活性剤や物理的乳化方法を用いて、乳化または可溶化組成物として水系化粧料組成物が提供されている。
【0003】
難水溶性成分とは水に溶解し難いもの、経時的に沈殿を生じるもののことを示し、HLB値の低いエステル類や油脂、動植物抽出物などが挙げられる。
【0004】
可溶化組成物とは、油溶性物質を水相中に微細に分散して生成された、透明性が高い液であり、食品、医薬品、化粧品等に幅広く利用されている。
【0005】
可溶化組成物は界面活性剤を使用して、油溶性物質を水相中に平均粒径0.1μmオーダー以下の微細粒子として分散することにより調製される。そして、油溶性物質の粒径が微細であるので液の透明性が高い。この分散は可溶化と言われ、またこの用途の界面活性剤は可溶化剤と言われている。
【0006】
従来、化粧品に用いられる可溶化剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が使用されてきた。しかし、ポリオキシエチレン系界面活性剤は安全性や皮膚刺激性等の問題があり、近年では嫌われるようになってきた。
【0007】
一方、レシチン(リン脂質)による可溶化技術としては、リゾレシチンを用いて油性物質を可溶化し、水性透明化粧料としたもの(特許文献1)非イオン性界面活性剤とリゾレシチンを併用し脂溶性物質を可溶化したものがある(特許文献2)。いずれの事例においてもリゾレシチン単独では可溶化が不十分であり、後者では非イオン性活性剤を併用しなければ十分な結果が得られないなどの問題があった。また親水性を持たせた水酸化リン脂質の例では難水溶性成分(油性成分)の乳化については例示されているが、水系化粧料組成物での難水溶性成分(油性成分)の可溶化については触れられていなかった。(特許文献3)
【特許文献1】特開昭61−291514号公報
【特許文献2】特開平7−17860号公報
【特許文献3】特開平6−116116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
難水溶性成分を析出ないしは沈殿させることなく、安定に溶解ないしは分散させる方法に関する。また難水溶性成分が可溶化された水系化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、化粧料組成物中に水酸化レシチンを配合することによって、難水溶性成分を析出ないしは沈殿させることなく安定に溶解ないしは分散させることができることを見いだした。
【発明の効果】
【0010】
水酸化レシチンを配合することによって、外観が透明な水系化粧料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられる水酸化レシチンは、特に制限はされないが、化粧料組成物の分野で使用されているものであれば使用することができる。これらの成分は、大豆、卵黄を精製したものを使用することも出来る。これらの中で特に好ましいものは、大豆を基源とするレシチンを水酸化した、水酸化レシチンである。この様な市販品としては日光ケミカルズ株式会社より販売されているレシノールSH50が例示できる。
【0012】
本発明における水酸化レシチンの含有量は0.005〜2重量%が好ましい。より好ましくは0.01〜1重量%である。0.005%未満では十分に可溶化できず、透明な外観を得ることができない。また2%を超えて含有する場合、非経済的であるうえ泡立ちや水酸化レシチン自体の臭気や色の影響が生じるなどの問題がある。また、本発明の目的が損なわれない範囲で界面活性剤を併用することができる。
【0013】
界面活性剤としては特に限定されないが例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などが挙げられるが、なかでも皮膚刺激や泡立ちなどを考えると非イオン界面活性剤が好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好適である。
【0014】
本発明が対象とする難水溶性成分としては、特に限定されるものではないが、植物抽出物、精油類、油脂類などが挙げられる。
【0015】
植物抽出物としては、アシタバエキス、イチョウエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、サルビアエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、センブリエキス、チョウジエキス、ドクダミエキス、ハマメリスエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、ボダイジュエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ヨクイニンエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキスなどが挙げられる。
【0016】
精油としては、ラベンダー油、ジャスミン油、ローズ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、タイム油、ショウブ油、ウイキョウ油、スギ油、ヒバ油、ラズベリー油、ヒノキ油、バラ油、ユーカリ油、ペパーミント油、スペアミント油などが挙げられる。
【0017】
油脂類としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、リンゴ酸ジイソステアリルなど、グリセリン脂肪酸エステルではモノステアリン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、などのエステル類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、液状ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス等のロウ、ミンク油、ヤシ油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などが挙げられる。
【0018】
本発明の難水溶性成分のチョウジエキス、カワラヨモギエキスは化粧品原料として用いられるものであれば特に限定されない。
【0019】
本発明のグリセリン脂肪酸エステルは炭素数8〜22の脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリン脂肪酸エステルで、グリセリンカプリレート、グリセリンラウレート、グリセリンパルミテート、グリセリンミリステートなどが挙げられる。
【0020】
水系化粧料組成物としてはローション、美容液、クレンジングローション、ジェル、トニックなど一般に皮膚、頭皮などに使用されるものが挙げられる。
【0021】
本発明の水系化粧料組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で各種の添加剤を含有させることができる。たとえば、多価アルコール、増粘剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤などが挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0023】
(実施例1〜7、比較例1〜6)
実施例のローション及び比較例のローションは、表1の通り常法にて調製した。
【0024】
【表1】

【0025】
(透明性の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜6のローションを作製した。この組成物を50ml容スクリュー管に25g注入し、スクリュー管を封栓した後、40℃で1ヶ月静置した。静置後の外観を下記評価基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
【0026】
(評価基準)
○:分離や沈殿が無く、均一透明
△:僅かに濁りが確認できる
×:濁り、または沈殿が確認できる
【0027】
(臭気の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜6のローションを調製した。この組成物を50ml容スクリュー管に25g注入し、スクリュー管を封栓した後、40℃で1ヶ月静置した。静置後の臭気を下記評価基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
【0028】
(評価基準)
○:原料由来の臭気が確認できない
△:僅かに原料由来の臭気が確認できる
×:原料由来の臭気が確認できる
【0029】
表1より明らかなように、水酸化レシチンを用いることで、外観が透明で原料に由来する臭気を低減された水系化粧料組成物が得られることが分かる。また、(比較例5)から水酸化レシチンを多く添加する事で透明なローションが得られた場合においても、水酸化レシチン自身の臭気の影響があることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化レシチンを0.005〜2重量%含有することを特徴とし、難水溶性成分が可溶化された水系化粧料組成物。
【請求項2】
難水溶性成分がチョウジエキス、カワラヨモギエキス、グリセリン脂肪酸エステルから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1記載の水系化粧料組成物。

【公開番号】特開2010−77093(P2010−77093A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249748(P2008−249748)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】