説明

水系導電性プライマー組成物

【課題】有機溶剤を含まず、導電性能は従来の有機溶剤型と同性能で、作業性も良い水系の導電性プライマーを提供する。
【解決手段】少なくともエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛からなる水系導電性プライマー組成物であり、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛が混合された後に、水が混合されることを特徴とし、この人造黒鉛が固定炭素が90%以上であり、平均粒径が10〜40μmであること特徴とする水系導電性プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系導電性塗り床用導電性プライマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂塗り床は、合成樹脂の性質より、電気不良導体となり、静電気が発生し、消滅に時間を要する。帯電防止のために、金属、酸化亜鉛などの電気良導体の粉末や繊維状物質を配合したものが知られている。このような技術は工業的にかなり広く採用されており、例えば、導電性塗り床の仕様としては下塗り、中塗り、上塗りの3層から形成する方法が提案されている。下塗りには導電性繊維を、中塗りには導電性グラファイトを配合し、上塗りには酸化亜鉛等の導電性無機質材料を配合した導電性上塗り材が用いられている。(特許文献1)
また、前記グラファイトを用いることによる成膜の凝集力の低さ、作業性を硬質多孔性炭素材料で改良している。(特許文献2)
揮発性有機化合物(VOC)は、光化学オキシダント及び浮遊粒子状物質(SPM)の二次生成粒子の原因物質とされ、光化学オキシダントは、大気中のVOCを含む有機化合物と窒素酸化物の混合系が、太陽光照射により生成され、SPMの二次生成粒子は、大気中のVOCが化学反応を起こし反応生成物が凝縮すること等により生成する。前記導電性塗り床材の導電プライマーは有機溶剤を多く使用し、VOCを放散し、環境に少なからず負荷を掛けていた。
【特許文献1】特開平8−143793号公報
【特許文献2】特開2005−97512号公報
【特許文献3】特開平6−179801号公報
【特許文献4】特開平6−212059号公報
【特許文献5】特開平6−228272号公報
【特許文献6】特開平9−176292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする課題は有機溶剤を含まず、導電性能は従来の有機溶剤型と同性能で、作業性も良い水系の導電性プライマー組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は導電床用プライマーであって、少なくともエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛からなる水系導電性プライマー組成物であり、有機溶剤を含まない導電性プライマーが得られる。
【0005】
請求項2の発明はエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛が混合された後に、水が混合されることを特徴とする請求項1の水系導電性プライマー組成物であり、導電性、硬化均一性が得られる。
【0006】
請求項3の発明は人造黒鉛が、固定炭素が90%以上であり、平均粒径が10〜40μmであることを特徴とする請求項1乃至2の水系導電性プライマー組成物であり、プライマーとしての凝集力の強いものになる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、有機溶剤を含まず、導電性、硬化性、作業性、プライマーとして、堅牢なものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
人造黒鉛
黒鉛は一般的に疎水性であり、溶剤タイプであれば、まだしも水系でははじき、空気の巻き込みが生じて良好な凝集力のあるプライマーが得られない。本発明で使う人造黒鉛は天然黒鉛以外を言い、薬品処理、加熱処理等で天然黒鉛を加工したものである。この人造黒鉛中で、さらに固定炭素が90%以上であり、また粒径は平均粒径10〜40μmのものが良い。この条件で初めて凝集力が得られ、しかも導電性が高いプライマー組成物が得られる。この人造黒鉛の添加量はエポキシ樹脂固形分100重量部に対して80〜200重量部が好ましく、80重量部未満であると導電性が得られなくなり、200重量部を超えるとプライマーとしての凝集力が得られない、プライマーは下地に対する密着と、この上に塗られる塗剤との性能で要求される導電性を設定するが、接地効果を担うため導電性は高い(抵抗値としては低い)に超したことはない。また、導電性や密着性等の性能と仕上がりに影響の無い範囲で導電性無機質材料と人造黒鉛の併用も可能である。導電性無機質材料としてはその他のカーボングラファイトや炭素繊維、錫、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、アンチモン、チタン等の金属酸化物、及びこれらの中から選ばれる2種以上の組み合わせが用いられる。
前記粒径はレーザー回折散乱法で、測定でき、具体的装置名としては(株)セイシン企業製SKレーザーマイクロンサイザーで測定することができる。
【0009】
エポキシ樹脂
本発明に用いるエポキシ樹脂は1分子中にエポキシ基を2個以上もつ樹脂であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ならびにこれらを水添処理したエポキシ樹脂、メタキシレンジアミンやヒダントインなどをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂などが挙げられる。液状樹脂では単独で使用が可能であるが、固体樹脂の場合や減粘する場合反応性希釈剤等で希釈して使用する。モノグリシジルエステル系が好ましい。
【0010】
エポキシ樹脂硬化剤
本発明で用いるエポキシ樹脂硬化剤は自己乳化型硬化剤で、特許文献3〜6等で示されるポリエーテル等の親水性主鎖をエポキシ樹脂に導入し、過剰のアミンを反応させた自己乳化型硬化剤で、使用時にエポキシ樹脂と混合し、その後、水に分散することができるもので、エポキシ樹脂100重量部に対して40〜140重量部が配合される。具体的には旭電化工業(株)製アデカハードナーEH4227が最も好ましい。
なお、硬化を促進させるため、3級アミンを追加することがある。2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0011】
配合手順
配合の混合手順は単独乳化可能なものはエポキシ樹脂硬化剤であり、これと混合後水を加えて、分散・乳化することが必須となる。硬化物の耐水性・硬化には水溶性物はさけ、分散・乳化の油相に硬化に関与する成分、或いは、導電性に及ぼす成分とこれらの結合する成分が存在させる成分があることが望ましく、これらを混合撹拌後、水を添加し、塗布作業性に好ましい粘度に乳化する。これにより、導電性に及ぼす成分、本発明では人造黒鉛がままこにならず均一に分散できる。
【0012】
施工方法
本発明は、プライマーに関するものであり、導電性のみならず、下地との密着性が十分ある必要が必須となる。接地として機能を維持するためには下地調整等考慮して行う。プライマーの施工は、例えば、ローラー等で施工し、施工塗布量は、例えば、塗布量0.1〜0.3kg/mである。プライマーに続いて、必要において中塗材、上塗材を施工し、全体としての導電性機能を発現する必要がある。床としての導電性は最終上塗り後としての性能保証或いは測定するものの、プライマーは接地機能として、非常に重要であるし、プライマーの導電性は続く、上層の導電性に大きく影響するものであり、導電性として、簡易測定方法であるが、23φ1.5mm厚の銅板を電極とし、10cmの間隔をあけて、抵抗値を10点測定し、その範囲で管理する。すなわち、通常に施工されたものであれば、大きな抵抗値はないとし、最大抵抗値が20kΩ以下であることが好ましい。なお、測定方法は印加電圧100Vで計測し、測定器の例として三和電子計器(株)製SD−420C、GD9等が挙げられる。
【0013】
以下実施例、比較例を挙げて、詳細を示す。表1に結果を示す。
【実施例1】
【0014】
エポキシ樹脂としてエピコート#828(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型液状樹脂)20重量部、自己乳化可能なエポキシ樹脂硬化剤としてアデカハードナーEH−4227(商品名、旭電化工業(株)、固形分70%、硬化剤)15重量部、エポキシ樹脂硬化剤として アンカミンK54(商品名、エアープロダクツ社製トリスジメチルアミノメチルフェノール)3.5重量部、人造黒鉛としてSNP−99(商品名、(株)小林商事製、固定炭素99.0%、平均粒径12μm)25重量部をリョウビ(株)製パワーミキサPM850で混合・撹拌し、さらに、水36.5重量部を追加し、分散・乳化させて、実施例1の導電性プライマーとした。
【実施例2】
【0015】
実施例1の人造黒鉛をAGP−H(商品名、(株)小林商事製、固定炭素98%、平均粒径30μm)以外、実施例1と同じに行い実施例2の導電性プライマーとした。
【実施例3】
【0016】
実施例1の人造黒鉛をSNP−90(商品名、(株)小林商事製、固定炭素90.0%、平均粒径23μm)以外、実施例1と同じに行い実施例3の導電性プライマーとした。
【実施例4】
【0017】
実施例1の人造黒鉛をCMX(商品名、日本黒鉛工業(株)固定炭素98.0%以上、平均粒径40μm)以外、実施例1と同じに行い実施例4の導電性プライマーとした。
【0018】
比較例1
実施例1の人造黒鉛をAT−No.5S (商品名、オリエンタル産業(株)製、固定炭素99%、平均粒径52μm)以外、実施例1と同じに行い比較例1の導電性プライマーとした。
【0019】
比較例2
実施例1の人造黒鉛をカーボンブラックである#60H(商品名、旭カーボン(株)製、固定炭素98.7%、平均粒径41μm)以外、実施例1と同じに行い比較例2の導電性プライマーとした。
比較例3
実施例1の人造黒鉛をグラファイトン−DS(商品名、大阪化成(株)製、固定炭素85.0% 、平均粒径20μm)以外、実施例1と同じに行い比較例3の導電性プライマーとした。
比較例4
実施例1の人造黒鉛をCB−100(商品名、日本黒鉛工業(株)製、固定炭素98.0% 、平均粒径100μm)以外、実施例1と同じに行い比較例4の導電性プライマーとした。
比較例5
実施例1の人造黒鉛をAGP−特S(商品名、小林商事製、固定炭素97.0%、平均粒径3μm)以外、実施例1と同じに行い比較例5の導電性プライマーとした。
比較例6
エポキシ樹脂としてエピコート#828(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型液状樹脂)20重量部、自己乳化可能なエポキシ樹脂硬化剤としてアデカハードナーEH−4227(商品名、旭電化工業(株)、硬化剤)15重量部、エポキシ樹脂硬化剤として、アンカミンK54(商品名、エアープロダクツ社製トリスジメチルアミノメチルフェノール)3.5重量部、をリョウビ(株)製パワーミキサPM850で混合・撹拌し、さらに、水36.5重量部を追加し、分散・乳化させてその後、人造黒鉛としてSNP−99(商品名、(株)小林商事製、固定炭素99.0%、平均粒径12μm)25重量部を混合・撹拌した、凝集物が存在し、プライマーとしての適格性がないものであった。
比較例7
自己乳化可能なエポキシ樹脂硬化剤として、アデカハードナーEH−4227(商品名、旭電化工業(株)、硬化剤)15重量部、エポキシ樹脂硬化剤として、アンカミンK54(商品名、エアープロダクツ社製トリスジメチルアミノメチルフェノール)3.5重量部、人造黒鉛としてSNP−99(商品名、(株)小林商事製、固定炭素99.0%、平均粒径12μm)25重量部を混合し、水36.5重量部を追加し、リョウビ(株)製パワーミキサPM850で撹拌乳化させ、エポキシ樹脂としてエピコート#828(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型液状樹脂)20重量部をさらに、追加し、分散・乳化させて、塗布したが、未硬化部分があり、プライマーとして適格性がないものであった。
【0020】
【表1】

試験・評価方法
密着性:30×30cm舗道板(モルタル板)にJE−71(アイカ工業(株)製、下地調整プライマー)0.2kg/m、実施例・比較例の導電プライマー0.15kg/m、導電トップコートJE2561(アイカ工業(株)製、薄塗導電上塗剤)0.1kg/mを2回塗りで施工し、20℃、50%RHで1週間養生した後、JIS K 5536 建研式引張試験にて密着性を評価。下地コンクリート破壊の場合は○。上塗りとの界面での破壊もしくは導電プライマーの凝集破壊の場合は×。
作業性:ローラーで塗布したときの作業しやすさ、主剤、硬化剤混合時の混ざりやすさを評価。ローラー塗布した際に均一(平坦)に塗布でき、黒鉛(カーボン成分)が分散し易いものは○。塗布した際に不陸ができる、または黒鉛が樹脂に分散しにくく分離してしまうものは×。
導電性:三和電子計器(株)製SD−420Cで印加電圧100Vで計測し、23φ1.5mm厚の銅板を電極とし、10cmの間隔をあけて、10点測定し、抵抗値が全て20kΩ以下である場合は○、抵抗値が1点でも超した場合を×とした。
評価:上記 試験評価全て○のものを○、1件でも×のあるものを×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電床用プライマーであって、少なくともエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛からなることを特徴とする水系導電性プライマー組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、人造黒鉛が混合された後に、水が混合されることを特徴とする請求項1の水系導電性プライマー組成物。
【請求項3】
上記の人造黒鉛が、固定炭素が90%以上であり、平均粒径が10〜40μmであることを特徴とする請求項1乃至2の水系導電性プライマー組成物。

【公開番号】特開2007−262254(P2007−262254A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89982(P2006−89982)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】