説明

水系防汚塗料組成物

【課題】防汚剤中に地球温暖化の原因物質とされる、揮発性有機化合物(VOC)の含有がより少なく長期間優れた防汚効果と貯蔵安定性を有し、乾燥性など作業性が良好な水系防汚塗料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】水系防汚塗料中のバインダー構成成分中(A)一般式(I)
(式1)
−(S)n−R (I)
(式中、R、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を、nは1〜20の整数を示す)で表されるジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョン、を含むことを特徴とする水系防汚塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系防汚塗料組成物該水系防汚塗料組成物を塗布されてなる漁網等の漁具および該水系防汚塗料組成物を用いる漁網等の漁具の防汚方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来の有機溶剤型防汚塗料と比較して防汚性に優れるうえ、揮発性の高い有機溶剤を多く含まないため環境や作業者に与える影響が極めて少なく、凍結融解安定性など貯蔵安定性に優れ、また低温における造膜性や付着性能にも優れ、長期に安定した防汚性能を発揮する水系防汚塗料組成物、該水系防汚塗料組成物を塗布させてなる漁網および該水系防汚塗料組成物を用いる漁網の防汚方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や海洋構造物、養殖用または定置用の漁網などは海中に長期保存させるために、珪藻類、アオサ、アオノリ、イギスなどの海藻類、ヒドロ虫、フジツボ、セルプラ、コケムシ、軟体動物類などの海棲汚損生物の付着が激しく、その結果、本来の機能が損なわれることがある。さらに海棲動植物の他にそれらの生物の排泄物、死骸などの有機汚物およびいわゆるスライムなどの付着によっても機能が損なわれることがある。例えば船舶などでは、前述海棲生物の付着により海水中での摩擦抵抗が増加し燃費が増加する。また発電所では、冷却水として海水を用いる際、生物が付着することによって熱交換を著しく阻害する。また漁網の場合、養殖網や定置網などに付着生物が付着すると網が重くなり、沈下により魚が逃げ、また、網自体が流失する恐れがある。そのため頻繁に取替えを要することが多く、それらの保守に多大の労力と費用をかけているのが現状である。
【0003】
従来からこれらの海棲生物の付着を防止する目的で有機錫化合物を主成分とする防汚塗料が広く使用されてきた。しかしながら、その毒性の強さから環境に与える影響も大きいため、有機錫化合物含有の防汚塗料はその使用が制限されている。その後、この有機錫化合物に代わるものとして様々な低毒性の海棲生物忌避剤を用いた防汚塗料が開発され、使用されている。
【0004】
しかしながら、これらの防汚塗料は、現在あるもののほとんどが芳香族系溶剤を主とする有機溶剤を溶媒として用いて来た。そのため近隣住民への影響、さらには温暖化など地球規模の環境に与える影響も懸念されている。こういった問題を解決すべく、種々の水系防汚塗料が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1乃至4等には水系防汚塗料が提案されているが、いずれも要求される防汚性能を満たしているとは言いがたい。
【0006】
特許文献5では、アクリル樹脂エマルジョン等の水系ポリマーエマルジョンをバインダーとして含有し、海棲生物忌避剤として効果の高いピリジン−トリフェニルボラン、ピリチオン金属塩、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、チオカーバメート化合物を微粒分散化した水系防汚塗料組成物が提案されているが、微粒分散化に多大な労力をかけねばならず、また微粒子化による粘度上昇などの貯蔵安定性やこれら海棲生物忌避剤の早期溶出による長期防汚性に問題がある。また、これらの水系防汚塗膜を形成するためには、配合されているバインダー構成成分の造膜温度以上で乾燥させるか、造膜助剤として高沸点溶剤を配合させる必要がある。造膜温度の低いバインダーとして上記の特許では、ガラス転移点の低い水系ポリマーエマルションを用いているが、形成塗膜が柔らかく、タックや塗膜流出など実際の使用には問題が残る。造膜温度の高いバインダーを用い、造膜助剤として高沸点溶剤を配合した場合、水系防汚塗料としての安全性が得られないだけでなく、従来の使用方法では、高沸点溶剤が揮発するまでに時間を要するなど、乾燥設備等がない場合には有効な防汚効果が発揮できるための塗膜を得ることが出来ない。また、いずれの場合も従来のエマルジョン型防汚塗料の欠点として、凍結した場合は解凍後に樹脂分が分離または凝集する所謂凍結融解安定性などの貯蔵安定性が極端に悪いことから、寒冷地などでの使用に耐え得るものではない。
【0007】
特許文献6では、バインダーにポリブテンのエマルジョンを含むことで低温造膜性と貯蔵安定性を改善した水性防汚塗料組成物が提案されている。しかしながら、ポリブテンを含むだけでは被塗物に対する付着性が十分でなく、また形成塗膜の柔軟性が得られないため、特に漁網のような被塗物上で防汚塗膜を維持することが出来ず、長期防汚に耐え得る防汚塗膜を得ることは出来ていない。
【特許文献1】特許第2784652号公報
【特許文献2】特開平3−7774号公報
【特許文献3】特開平8−81524号公報
【特許文献4】特開平9−52803号公報
【特許文献5】特開2000−281942号公報
【特許文献6】特開2005−213336号公報
【0008】
以上の水系防汚塗料を実際に塗装する場合、最も大きな問題点は、乾燥性である。水は有機溶剤などと比べて乾燥が遅く、乾きにくい欠点を有している。また、水系防汚剤を完全に乾燥せずに海に展開した場合、塗膜が海水中に溶け出して、効果が失われてしまうばかりか、海洋環境を汚染してしまう。
なぜ、漁網に塗布する防汚塗料の場合、乾燥性が問題になるかを以下に説明する。
【0009】
漁網や、漁網具に防汚塗料を塗装する場合、スプレー塗装やハケ塗ではなく、一般に浸漬塗装が行われる。スプレー塗装やハケヌリでは、網を広げたり、表裏両面を塗装する必要があり大変手間が掛かる。また、塗着効率(塗着した塗料/塗装に要した塗料)が極端に悪く、塗装に要する塗料の多くがミストなどで消えてしまう。
【0010】
そこで、網をコンパクトに折りたたみ、塗料溶液の中に網を浸漬することによって、ムラなく楽に、また塗着効率もよく塗装することが出来る。塗装後、乾燥は網を広げて行うことが好ましいが、定置網や、養殖網など、大型の網の場合、場所的に広げて長期間乾燥することは困難で、折りたたんだまま乾燥させている。従来の溶剤型防汚塗料の場合、折りたたまれた状態でもある程度乾燥し、なかんずく乾燥が不十分であっても塗膜が海水中に溶け出ることはなかった。
【0011】
ところが、上記のような水系漁網防汚剤の場合、溶剤型に比べて乾燥が悪くまた、乾燥が不十分なまま海水中で使用された場合塗膜が海水中に溶け込み効果が失われてしまう。そのため、従来の有機溶剤型防汚塗料に比べてより充分に乾燥する必要があり、乾燥に要する手間が極端に掛かる結果となっている。
【0012】
以上のようにこれまでの水系防汚塗料では、従来の有機溶剤型防汚塗料の代替品として使用に耐え得るものはなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、従来の有機溶剤型防汚塗料と比較して、防汚性に優れるうえ、揮発性の高い有機溶剤を多く含まないため環境や作業者に与える影響が少なく、凍結融解安定性など貯蔵安定性に優れ、また低温における造膜性や付着性能にも優れた、長期に安定した防汚性能を発揮する防汚塗膜を形成する水系防汚塗料組成物、魚網用水系防汚塗料組成物、該魚編みよう水系防汚塗料組成物を施工した漁網及び該魚網用水系防汚塗料組成物を施工する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)一般式(I)
−(S)n−R (I)
(式中、R、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を、nは1〜20の整数を示す)で表されるジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョンを水系防汚塗料中のバインダー構成成分とすることで、低温における造膜性や柔軟性に優れ、被塗物への付着性が良好な防汚塗膜を形成し、凍結融解安定性などの貯蔵安定性にも優れた水系防汚塗料組成物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る発明は、水系防汚塗料中のバインダー構成成分が(A)一般式(I)
−(S)n−R (I)
(式中、R、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を、nは1〜20の整数を示す)で表されるジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョンを水系防汚塗料中のバインダー構成成分とする水系防汚塗料組成物に関し、それにより低温における造膜性や柔軟性に優れ、被塗物への付着性が良好な防汚塗膜を形成し、凍結融解安定性などの貯蔵安定性にも優れた水系防汚塗料組成物を提供するものである。
本発明に係る水系防汚塗料組成物の好ましい態様として、以下(1)〜(14)が挙げられる。(1)〜(14)の任意の組合せも、特に矛盾あるいは不利益が生じない限り本発明の好ましい態様と考えられる。
(1)該水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョンの固形分が0.1重量部〜99重量部であり、好ましくは、1重量部〜99重量部である。この構成によって、上記本発明の効果がより優れたものとなる。
(2)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョン以外のバインダー構成成分として、(B)アクリル樹脂エマルジョン、アクリルスチレン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルベオバ樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン、合成ゴムラテックス、ウレタン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、フェノール樹脂エマルジョン、アルキッド樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、塩化ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂エマルジョン、これらの共重合樹脂エマルジョン、ハイブリッド樹脂エマルジョン並びに変性樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種または2種以上の樹脂エマルジョンを含む。
【0015】
上記バインダー成分と概ジアルキルサルファイド化合物を組み合わせることにより、水系防汚塗料の漁網への付着性を向上させ、また海棲生物忌避剤の溶出を制御できる。
(3)(C)親水性親油性バランス(HLB)が1〜7であるオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンの水分散エマルジョンを水系防汚塗料中のバインダー構成成分に含む。このようにすることにより、上記の造膜性や柔軟性、付着性能を損なうことなく、高い防汚性能を得ることが出来る。
【0016】
親水性親油性バランス(HLB)は、オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンの場合、下記式で表される。
【0017】
HLB=(高分子のポリオキシエチレン重量%)÷5
上記式より、HLB値が大きい程、親水性が高くなる。
(4)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部中、(B)該樹脂エマルジョンの固形分が0.1〜99.9重量部、(C)該オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンエマルジョンの固形分が0〜99重量部の範囲で配合する。このようにすることによって、上記本発明に係る水系防汚塗料組成物の性能が最も効果的に発揮される。
(5)(A)該ジアルキルサルファイド化合物が、前記一般式(I)のnが3〜6にて表されるジアルキルサルファイド化合物の少なくとも1種である。この場合、本発明の水系防汚塗料組成物の優れた効果が良好に発揮される。さらに、(A)該ジアルキルサルファイド化合物が、前記一般式(I)のRとRが共にtert−ノニルであるジーtert−ノニルサルファイド化合物の少なくとも1種、および/または前記一般式(I)のRとRが共にtert−オクチルであるジ−tert−オクチルサルファイド化合物の少なくとも1種であることが好ましい。この場合には、水系防汚塗料の漁網への付着性を向上させ、また海棲生物忌避剤の溶出を制御でき、より好ましい。
(6)水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し海棲生物忌避剤としての有効成分が、固形分換算で0.1〜1000重量部含まれる。このような構成をとることによって、該海棲生物忌避剤の効果を有効に発揮し得る防汚塗膜を得られる。
(7)前記海棲生物忌避剤として、(D)分散剤を用いて平均粒子径が2〜20μmになるよう水に分散したビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し0.1〜300重量部含まれる。この構成をとることによって、特にヒドロ虫等の腔腸動物の付着防止効果が高く、全く沈降のない貯蔵安定性の高い水系防汚塗料が得られる。また、ビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛の水分散液の塗料組成物への分散についても従来の有機溶剤型塗料組成物の場合と何ら異なることのない方法で可能である。
(8)海棲生物忌避剤としての有効成分は、(E)分散剤を用いて平均粒子径が2〜20μmになるよう水に分散した金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種を有効成分とする。特に、塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し0.1〜300重量部含有する。
【0018】
このようにすることによって、特に藻類・珪藻類などの付着防止効果が高く、全く沈降のない貯蔵安定性の高い水系防汚塗料が得られた。また、この分散についても従来の有機溶剤型塗料と何ら異なることのない方法で可能であることを見出した。
(9)海棲生物忌避剤として、水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmである(D)ビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛と(E)金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種とを合計で0.1〜300重量部含む。このようにすることによって、特にヒドロ虫などの腔腸動物と藻類・珪藻類などの双方に対し付着防止効果が高く、全く沈降のない貯蔵安定性の高い水系防汚塗料が得られる。また、この分散についても従来の有機溶剤型塗料と何ら異なることのない方法で可能であることを見出した。
(10) 水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、(F)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmである亜酸化銅を0.1〜1000重量部含有する。亜酸化銅は広く一般的に用いられているが、従来水系防汚塗料としてはその比重の高さから非常に沈降しやすく、反応性の高さからも貯蔵安定性が悪いものしか得られていなかった。しかし、水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重両部に対し、(F)分散材を用いて水に分散した平均粒径が2〜20μmである亜酸化銅を0.1〜1000重量部含有する水系防汚塗料組成物は、海棲生物全般に付着防止効果が高く、全く沈降のない貯蔵安定性の高い水系防汚塗料が得られる。また、本発明で用いられるいずれの海棲生物忌避剤と混合しても安定で防汚効果の高い水系防汚塗料が得られる。
(11)上記いずれかの水系防汚組成物と、水と共沸可能な有機溶剤が漁網防汚剤中の水100重量部に対して1〜200重量部とを含有する。このようにすることによって乾燥性が良好な水系防汚塗料組成物が得られる。
(12)水と共沸可能な前記有機溶剤がイソブチルアルコール、エタノール、エチルベンゼン、エチルメチルケトン、キシレン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、1-ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノールから選ばれる1種または2種以上の混合有機溶媒である。この場合に、特に乾燥性に優れた水系防汚塗料組成物が得られる。
【0019】
本発明は、さらに前記水系防汚塗料組成物が漁網具用途に使用される防汚塗料組成物に関する。
【0020】
本発明は、さらに、前記水系防汚塗料組成物が施工された漁具に関する。
【0021】
本発明は、さらに、前記水系防汚塗料組成物を施工する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の水系防汚塗料組成物は、(A)一般式(I)
−(S)n−R (I)
(式中、R、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を、nは1〜20の整数を示す)で表されるジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョンを必須成分として含有してなるものである。R、Rは同一でも異なっていても良い。
【0023】
一般式(I)において、RおよびRで示される炭素数1〜20の直鎖または分枝状のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどがあげられる。得られる塗膜の低温造膜性、付着性、柔軟性および塗料の貯蔵安定性の点から、とくに炭素数4〜19のアルキル基が好ましい。一般式(I)において、nは1〜20の整数であるが、得られる塗膜の低温造膜性、付着性、柔軟性および塗料の貯蔵安定性の点からnが1〜10、なかんずく3〜6であるのが好ましい。これらジアルキルサルファイド化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
得られる塗膜の低温造膜性、付着性、柔軟性および塗料の貯蔵安定性の点から好ましいジアルキルサルファイド化合物としては、ジ−tert−ブチルデカサルファイド、ジペンチルテトラサルファイド、ジペンチルペンタサルファイド、ジペンチルデカサルファイド、ジオクチルテトラサルファイド、ジオクチルペンタサルファイド、ジ−tert−オクチルペンタサルファイド、ジノニルテトラサルファイド、オクチルドデシルトリサルファイド、ジノニルペンタサルファイド、ジ−tert−ノニルテトラサルファイド、ジ−tert−ノニルペンタサルファイド、ジデシルテトラサルファイド、ジドデシルテトラサルファイド、ジオクタデシルテトラサルファイド、ジ−tert−ノニルヘキササルファイド、ジ−tert−オクチルヘキササルファイド、ジ−tert−ノニルヘプタサルファイド、ジ−tert−オクチルヘプタサルファイド、ジ−tert−ノニルオクタサルファイド、ジ−tert−オクチルオクタサルファイド、ジ−tert−ノニルノナサルファイド、ジ−tert−オクチルノナサルファイドなどがあげられる。
【0025】
例えば、ジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョンは、例えば、前記ジアルキルサルファイド化合物をアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはノニオン系界面活性剤から選ばれる1種または2種以上により水に分散、エマルジョン化したものを用いる。ジアルキルサルファイド化合物のエマルジョン化方法に特に制限はないが、例えば、(a)ジアルキルサルファイド化合物、(b)界面活性剤をディスパー、ホモミキサーなどの分散機で混合、撹拌しながら(c)水を徐々に添加していき、W/Oエマルジョンから相転換によってO/Wエマルジョンにするといった方法をとることにより、ジアルキルサルファイド化合物の安定な水分散エマルジョンを得ることが出来る。このエマルジョンの平均粒子径は0.1〜1μmであることがより望ましい。
【0026】
本発明による水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョン以外のバインダ構成成分として、塗膜形成化合物としてその他の樹脂エマルジョンを含有させることが出来る。このような他の樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、アクリルスチレン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルベオバ樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン、合成ゴムラテックス、ウレタン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、フェノール樹脂エマルジョン、アルキッド樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、塩化ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂エマルジョン、あるいはこれらの共重合樹脂エマルジョン、ハイブリッド樹脂エマルジョン、変性樹脂エマルジョン等があるが、これらに限るものではない。樹脂粒子の平均粒子径が0.1〜1μmの樹脂エマルジョンがより好ましく用いられる。水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョン以外のバインダ構成成分として、これらのエマルジョンから選ばれた1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0027】
これらのうち、特にアクリル樹脂エマルジョンがより好ましい。アクリル樹脂エマルジョンとしては種々のものがあるが、たとえばボンコート40−418(大日本インキ化学工業株式会社製:固形分55%、ガラス転移点(Tg)18℃、造膜温度(MFT)15℃)、ボンコートBC−280(大日本インキ化学工業株式会社製:固形分50%、ガラス転移点(Tg)2℃、造膜温度(MFT)0〜3℃)、ボンコート9422(大日本インキ化学工業株式会社製:固形分40%、ガラス転移点(Tg)40℃、造膜温度(MFT)40℃)などがある。また、通常バインダーの造膜温度(MFT)が設定されているものについては、その温度以上で乾燥させることが必要だが、本発明を用いることにより、その造膜温度以下で乾燥させても、有効な防汚効果を発揮することの出来る塗膜を得られ、また樹脂の性状に拠ることなく付着性の極めて良好な塗膜を得ることが出来る。
【0028】
(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョン以外のバインダー構成成分は、好ましくはバインダー構成成分の固形分100重量部中1〜99.9重量部であり、さらに好ましくは、1重量部〜99重量部である。
【0029】
本発明に用いられる親水性親油性バランス(HLB)が1から7の範囲にある(C)オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンとしては、たとえばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン、ポリエーテル変成ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変成ポリアルキル(メチル)シロキサン、ポリエステル変成ポリジメチルシロキサン、アルキル・ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フロロシリコーンオイル、アミノ変成シリコーンオイル、その他各種官能基による変成シリコーンオイルなどがあげられるが、これらに限られるものではない。
【0030】
これらのオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンのうちで特に好ましいものは、親水性親油性バランス(HLB)が1から7の範囲にある、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル・ポリエーテル変性オルガノポリシロキサンである。これらのオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また本発明に用いるオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンは、得られる塗膜の低温造膜性、付着性、柔軟性および塗料の貯蔵安定性ならび防汚性の点から、粘度が1〜1万ポイズ、なかんずく50〜500ポイズの範囲のものが好ましい。
【0031】
本発明で使用される(C)オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンの水分散エマルジョンは、前記オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンをアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤またはノニオン系界面活性剤から選ばれる1種または2種以上により水に分散、エマルジョン化したものを用いる。オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンのエマルジョン化方法に特に制限はないが、例えば、(a)オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサン、(b)界面活性剤をディスパー、ホモミキサーなどの分散機で混合、撹拌しながら(c)水を徐々に添加していき、W/Oエマルジョンから相転換によってO/Wエマルジョンにするといった方法をとることにより、オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンの安定な水分散エマルジョンを得ることが出来る。このエマルジョンの平均粒子径は0.1〜1μmであることがより望ましい。また、前記(A)ジアルキルサルファイド化合物のエマルジョンとの混合は、それぞれエマルジョン化したものを混合しても、予め混合したジアルキルサルファイド化合物とオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンをエマルジョン化したものでも良い。
【0032】
本発明で使用されるジアルキルサルファイド化合物エマルジョン、およびオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンのエマルジョンを界面活性剤で分散する際、他の液状樹脂としてポリブテン、流動パラフィン、液状ポリオレフィンなどを添加することも可能である。
【0033】
前記バインダーエマルジョン中、(A)ジアルキルサルファイド化合物エマルジョンの固形分100重量部に対するその他のエマルジョンの配合割合は、造膜性、凍結融解安定性、付着性および防汚効果から判断して、(B)オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンエマルジョンの固形分が0〜1000重量部、その他の樹脂エマルジョンの固形分が50〜1000重量部であり、好ましくは(B)オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンエマルジョンの固形分が10〜500重量部、その他の樹脂エマルジョンの固形分が80〜800重量部である。
【0034】
上記水系防汚塗料組成物に配合される海棲生物忌避剤としての有効成分は、水系塗料防汚組成物中のバインダーの固形分100重量部に対して、固形分換算で0.1〜1000重量部含まれる。好ましくは、用いられる海棲生物忌避剤の比重に拠るが、比重が3以下の海棲生物忌避剤では固形分換算で1〜200重量部、比重が3より大きな海棲生物忌避剤では固形分換算で10〜400重量部である。
【0035】
海棲生物忌避剤としては、亜酸化銅、銅粉、ロダン銅、ナフテン酸銅、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、ジンクジメチルカーバメート、ジンクエチレンジチオカーバメート、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2,3−ジクロロ−N−(2’,6’−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2’−エチル−6’−メチルフェニル)マレイミド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン、N−N’−ジメチルジクロロフェニル尿素、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリスルファミド、ピリジン−トリフェニルボラン、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル(プロピルアミン)ボロン、トリフェニル[3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン]ボロン等の海棲生物忌避剤およびそのエマルジョンが挙げられ、このうちの1種もしくは2種以上を対象となる海棲生物により適宜選択して配合することが出来る。
【0036】
この場合、(1)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(D)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmであるビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を0.1〜300重量部含有する場合、
(2)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(E)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径2〜20μmである金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種をとして0.1〜300重量部含有する場合、
(3)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として、分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmである(D)ビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛と(E)金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種とを合計で0.1〜300重量部含有する場合、あるいは
(4)前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(F)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が1〜20μmである亜酸化銅を0.1〜1000重量部含有する場合が特に好ましい。
【0037】
塗料配合中の水に対して共沸可能な有機溶剤を添加することにより、良好な乾燥性が得られる。添加する共沸可能な有機溶剤は、塗料配合中の水100重量部に対して1〜200重量部である。
【0038】
また、用いられる水に対して共沸可能な有機溶剤は、特に限定されないが、イソブチルアルコール、エタノール、エチルベンゼン、エチルメチルケトン、キシレン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、1-ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、から選ばれる1種または2種以上の混合有機溶媒である場合が、特に好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
本発明における塗料の作成は、まず、ジアルキルサルファイド化合物を含むオイルエマルジョン溶液あるいはジアルキルサルファイド化合物とオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンを含むオイルエマルジョン溶液を作成し、その後、バインダー樹脂エマルジョンを加え、その溶液に、海棲生物忌避剤および他の薬剤を加え、水と有機溶剤および界面活性剤を加えて分散し水系防汚塗料組成物を得た。
【0041】
即ち、表1に記載の配合成分を添加攪拌してOE1〜OE10の水分散オイルエマルジョンを得た。さらに、これらの水分散オイルエマルジョンを用い、表2〜5に記載の配合成分を添加攪拌して実施例1〜30と比較例1〜10の塗料を得た。
【0042】
オイルエマルジョンの作成 (OE1溶液〜OE10溶液)
実塗料配合(実施例1〜30、比較例1〜10)
(試験例1)
付着性試験結果
実施例1〜30と比較例1〜10の水系防汚塗料組成物について安定性及び付着性の評価を行った。
【0043】
実施例の試験液を78mm×146mmのポリエチレン板に乾燥後の塗膜が均一になるように塗布した。その後、5℃、20℃および50℃にそれぞれ温度調整された恒温乾燥機中で12時間乾燥した後、得られた塗装板を1.0ノットの流速になるように調整された回転ドラムに取り付け、20℃海水中で1ヵ月間浸漬し、塗膜の状態を観察、残存状態について判定した(ロータリー試験)。さらに浸漬後の塗膜を乾いたカーゼを用いて、軽く指を添えて3回擦り、付着性の確認を行った(ラビング試験)。表6,7参照。
(試験例2)
貯蔵安定性試験結果および凍結融解(―20℃−常温繰返し)安定性試験結果
実施例1〜30および比較例1〜9の塗料組成物を直ちに20℃に調整しイワタカップで粘度測定した。その後塗料組成物を3つの容器に移し変え一つは室温で30日間放置し、一つは40℃で40日間放置した。もう一つは−20℃にて凍結させた後、常温で解凍する操作を10回繰り返した。それぞれの塗料中の沈殿状態および凝集状態を確認し、20℃に調整してイワタカップにて粘度を測定した。その結果を表8,9に示す。
(試験例3)
防汚性試験
実施例1〜30および比較例1〜10で得られた塗料組成物を、テトロン製の漁網(250デニール、84本、目合75mm)に浸漬塗装し、室温にて乾燥した。このように塗料組成物を塗布した漁網を40cm×60cmの鉄棒の枠に固定し、北海道斜里郡斜里町の定置網にて水深約1mに垂下浸漬し、その防汚性能を4ヵ月間にわたって定期的に観測した。結果を表10、11に示す。表中の数字は海棲生物の付着面積(%)を表す。
(試験例4)
乾燥性試験
上述で得られた実施例28〜30および比較例9の塗料組成物をポリエチレン製の漁網(400デニール、48本、目合60mm)に浸漬塗装し20℃室内で乾燥した。乾燥30分後、指触にて乾燥を確認した。その結果を表12に示す。
【0044】
なお、性能試験結果は総合評価がなされ、一部に悪い結果が出たとしても良好に使用できる環境に対して使用すればよい。例えば、表6の実施例7の5℃ラッピング試験は不可となっているが、実施例7の水系防汚塗料組成物は低温地帯で用いなければよい。
【0045】
表6、表7より本願発明による防汚塗料は、優れた付着性を示し、その結果表10、11に示す防汚性結果においても良好な結果に結びついたと思われる。
【0046】
表6、表7より5℃において実施例28、29、30の塗料が優れた付着性を示したのは、乾燥性が良好であったことに起因すると思われる。
【0047】
表8,表9より本願発明による防汚塗料は、優れた貯蔵安定性を示した。特に低温−常温繰り返し試験において良好な結果を示した。
【0048】
以上の結果より本願発明は、環境や作業者に与える影響の少ない良好な貯蔵安定性と防汚性、低温に置ける造膜性や付着性能にも優れ、長期に安定化した防汚性能を発揮する防汚塗膜を形成する水系防汚塗料組成物を得られることが分かる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
【表11】

【0060】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の水系防汚塗料組成物は漁網等の漁具に対して有効に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系防汚塗料中のバインダー構成成分中(A)一般式(I)
−(S)n−R (I)
(式中、R、Rは炭素数1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基を、nは1〜20の整数を示す)で表されるジアルキルサルファイド化合物の水分散エマルジョン、を含むことを特徴とする水系防汚塗料組成物。
【請求項2】
前記水系防汚塗料のバインダー構成成分の固形分100重量部中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョンの固形分が0.1重量部〜99重量部である請求項1の水系防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分中(A)該ジアルキルサルファイド化合物エマルジョン以外のバインダー構成成分として、(B)アクリル樹脂エマルジョン、アクリルスチレン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルアクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルベオバ樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン、合成ゴムラテックス、ウレタン樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、フェノール樹脂エマルジョン、アルキッド樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、塩化ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン樹脂エマルジョン、これらの共重合樹脂エマルジョン、ハイブリッド樹脂エマルジョン並びに変性樹脂エマルジョンの中から選ばれる1種または2種以上の樹脂エマルジョンを含むことを特徴とする請求項1または2の水系防汚塗料組成物。
【請求項4】
前記水系防汚塗料組成物中のバインダー構成成分が(C)親水性親油性バランス(HLB)が1〜7であるオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンの水分散エマルジョンを含む請求項1〜3のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部中、(B)該樹脂エマルジョンの固形分が0.1〜99.9重量部、(C)該オキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサンエマルジョンの固形分が0〜99重量部の範囲である請求項1〜4のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項6】
(A)該ジアルキルサルファイド化合物が、前記一般式(I)のnが3〜6にて表されるジアルキルサルファイド化合物の少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項7】
(A)該ジアルキルサルファイド化合物が、前記一般式(I)のRとRが共にtert−ノニルであるジーtert−ノニルサルファイド化合物の少なくとも1種、および/または前記一般式(I)のRとRが共にtert−オクチルであるジ−tert−オクチルサルファイド化合物の少なくとも1種である請求項6の水系防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し海棲生物忌避剤としての有効成分が固形分換算で0.1〜1000重量部含まれることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(D)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmであるビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛を0.1〜300重量部含有する請求項1〜8のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項10】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(E)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径2〜20μmである金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種を0.1〜300重量部含有する請求項1〜8のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項11】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として、分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が2〜20μmである(D)ビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛と(E)金属が銅あるいは亜鉛であるビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩のうち少なくとも1種とを合計で0.1〜300重量部含有する請求項9または10の水系防汚塗料組成物。
【請求項12】
前記水系防汚塗料組成物のバインダー構成成分の固形分100重量部に対し、前記海棲生物忌避剤として(F)分散剤を用いて水に分散した平均粒子径が1〜20μmである亜酸化銅を0.1〜1000重量部含有する請求項1〜8のいずれかの水系防汚塗料組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの水系防汚塗料組成物と、水と共沸可能な有機溶剤とを含み、該有機溶剤が該水系防汚塗料組成物中の水100重量部に対して1〜200重量部である水系防汚塗料組成物。
【請求項14】
水と共沸可能な前記有機溶剤がイソブチルアルコール、エタノール、エチルベンゼン、エチルメチルケトン、キシレン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、1-ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、から選ばれる1種または2種以上の混合有機溶媒である請求項13の水系防汚塗料組成物。
【請求項15】
防汚塗料組成物が漁網具用途に使用される請求項1〜14のいずれかの防汚塗料組成物。
【請求項16】
請求項1〜14記載のいずれかの水系防汚塗料組成物を施工した漁具。
【請求項17】
請求項1〜14記載のいずれかの水系防汚塗料組成物を施工する方法。

【公開番号】特開2008−1804(P2008−1804A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172812(P2006−172812)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(501481724)NKMコーティングス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】