説明

水素化処理の制御方法

本発明は、水素化処理炉内で出発原料の水素化処理を制御する方法に関する。この方法では、最初に水素化処理で反応した水素の量が決定される。反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が次いで導出される。この比率は、規定値と比較され、もし反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が規定値から規定量だけ逸れている場合には、最終的に少なくとも1つのプロセスパラメータが変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化処理炉内での出発原料の水素化処理の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化処理は、一般に、水素分圧5から400バールで実行される。水素化処理中に消費された水素は、連続的に交換されねばならない。これは制御器を介して貯蔵所からの水素の導入によって達成される。貯蔵所の圧力は、システムの圧力より高い。制御器は一般に制御バルブである。
【0003】
水素化処理工程に供給される水素の量の制御は、現在2つの異なった方法が用いられている。第1の方法では、システムでの圧力が測定され、水素用の供給装置上で、縦続制御によって、直接或いは間接的に作動する制御器によって一定に保たれる。これは、サプライサイド(供給側)圧力制御と呼ばれる。置き換えられる水素の量を制御する第2の方法では、一定量の水素がシステムに供給され、システム圧力は、ガス回路のオフガスバルブに基づいて動作する制御器によって一定に保たれる。これは、オフガスサイド(排出ガス側)圧力制御と呼ばれる。
【0004】
従来技術の制御方法の都合の悪い点は、プロセスへの影響及びプロセスからのノックオン影響が十分に考慮されていないことにある。特に、圧力の水素化処理結果に及ぼす影響が考慮されていない。例えば、実行される水素化処理に依存する圧力の増加は、過水素化処置(overhydrogenation)又は水素化処理不足(underhydrogenation)をもたらす。過水素化処理は、水素化処理により生産される所望の製品が炉内で水素と反応するので望ましくない副産物が形成されることを意味する。水素化処理不足は、出発原料が同じ量でもより少ない製品しか得られないことを意味する。
【0005】
水素化処理において現在使用している方法では、水素化処理反応での温度増加は、結果として過水素化処理の程度を増加させる。そのため、温度増加の影響を補償するために圧力制御器の設定値を手動で変えなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プロセスパラメータを手動で調整する必要のない水素化処理制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、以下の工程を含む水素化処理炉内での出発原料の水素化処理の制御方法により成し遂げられる。
a)水素化処理で反応した水素の量を決定する工程、
b)反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率を決定する工程、
c)工程b)で導かれた比率と規定値とを比較する工程、そして
d)もし、工程b)で導かれた比率が規定値から規定量それている場合に、少なくとも1つのプロセスパラメータを変更する工程。
【0008】
反応した水素の量と投入した出発原料の量との比を決定することで、結果として得られる製品の品質が一定となる。それは、ほぼ等しい量の水素が特別の量の出発原料に常に反応することを保証するからである。このようにして、過水素化処理又は水素化処理不足が避けられる。
【0009】
もし、反応した水素の量と投入した出発原料の量が規定値から規定量それている場合に変えられる工程d)でのプロセスパラメータは、例えば、水素化処理炉内の圧力の温度又は投入する水素の量である。
【0010】
反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が比較される規定値は、水素化処理炉内の圧力及び温度に依存する。また、所望する水素化処理製品に依存する。
【0011】
水素化処理で反応した水素の量は、好ましくはプロセスから放出された水素の量とプロセスに投入された水素の量の差から導かれる。プロセスに投入された水素の量を決定するために、好ましくは水素が導入される水素化処理炉への流入ラインに流量計が設置される。流量を測定するふさわしい方法は、容積法、差圧法、誘導法、超音波法、圧力センサ、熱センサである。流量を測定するために用いられる容積法は、例えば、オーバルホイールメータやタービンメータのようなボリュームメータである。差圧法による流量測定は、オリフィスプレート、ノズル、又はベンチュリ管を用いて実行される。そして、圧力センサは、例えば、ピトー管又はプラントルのピトー管である。ふさわしい熱センサは、例えば、ホットワイヤ風速計である。しかしながら、流量測定は、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が知っている他の方法を用いることでも実行することができる。
【0012】
プロセスから放出される水素の量は、好ましくは未反応のガスが放出されるオフガスラインで測定される。ここでまた、水素の量が好ましくは流量計により決定される。ふさわしい測定方法は、投入した水素の量を決定するための流量測定と同じ方法である。
【0013】
オフガスラインを介して放出されたガスは、好ましくはリサイクルガスとしてプロセスに再循環される。
【0014】
本発明の実施の形態では、水素化処理製品が未反応ガスから分離される製品分離器が、水素化処理炉の流れに沿って設置されている。未反応ガスが放出されるオフガスラインは、製品分離器から延びている。未反応ガスから水素処理化製品を分離するため、水素処理化炉から出てくる混合物は、水素処理化製品が凝縮されて出てくるように少なくとも1台の熱交換器で冷却される。それ故、液/気相分離が製品分離器内で行われる。
【0015】
本発明の実施の形態では、温度制御器の設定値が、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率と規定値との比較により生成される。そして、温度制御器は、水素処理炉内の温度を制御する。水素処理化の程度は温度に依存するため、所望の製品の品質は、出発原料に基づく反応した水素の量の助けにより水素化処理炉内の温度で達成される。過水素化処理又は水素化処理不足は避けられる。
【0016】
水素化処理炉内の圧力は、従来技術で知られている方法の材料側(フィードサイド)又は排出ガス側(オフガスサイド)で制御される。フィードサイド圧力制御の場合、システム内の圧力は測定され、制御器により一定に保たれる。この制御器は、水素の供給装置の縦続制御により直接又は間接に動作する。水素の供給装置は、好ましくは制御バルブである。
【0017】
オフガスサイド制御の場合、システムの圧力は同様に測定され、オフガスラインのオフガスバルブに作用する制御器により一定に保たれる。
【0018】
本発明の実施の形態では、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率は、投入する水素の量を調整することにより一定に保たれる。更に、水素化処理炉で確立された圧力と制御器での規定値を比較することにより、そして規定値からの実際の値の偏差により温度の制御パラメータを生成することにより、水素化処理炉内で確率される圧力は一定に保たれる。
【0019】
投入する水素の量を調整することにより、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率を一定にするために、投入する水素の量を制御する制御器のバルブのフロー断面積が制御器により増加又は減少される。制御器では、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が規定値から逸れたときに、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が得られる。このために、より多くの水素が必要な場合には、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率が得られる制御器から制御器のバルブへ送られる設定パラメータの関数として、制御バルブが更に開かれる。また、より少ない水素が必要な場合には、更に閉じられる。制御バルブのフロー断面積は、より多くの又はより少ない水素が制御バルブを通って流れるように、制御バルブの開放又は閉鎖動作により、増加又は減少する。
【0020】
水素化処理炉内での温度を制御することにより、水素化処理炉内の圧力を一定に保つことは可能である。何故なら、規定された圧力及び規定された温度で変化があると、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率は変化し、これにより水素化処理の程度が変化し、そして水素化処理炉内の温度が変化するからである。温度変化の結果として、水素化処理の意図した程度が回復される。そして、これにより反応した水素の量と投入した出発原料の量との規定された比率が回復し、これにより今度は、規定された圧力が回復するように水素化処理炉内の圧力が変化する。
【0021】
他の実施の形態では、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率、及び水素化処理炉内の温度は一定に保たれている。水素化処理炉内の圧力の制御は行っていない。このことは、水素化処理の活性がシステム圧力に強く依存し、システムが一定温度でただ一つの動作ポイントを有する場合に可能である。この場合、システムは圧力に関して自己制御している。所望の程度の水素化処理が、反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率の関数として確立される。水素化処理炉内の水素の消費量が投入した量より少ない場合は直ちに、水素が蓄積される結果としてシステム圧力が増加する。その結果、触媒の活性が増加し、加えて水素化処理炉内の滞留時間が、ガスの濃度が増加するために増加する。これは、反応比率の増加に繋がることとなる。反応比率は、投入した水素の量が、もう一度、反応した水素の量に一致するまで増加し続ける。逆に、もし反応した水素の量が投入した水素の量よりも多い場合には、システム圧力は、水素化処理炉内の水素の容積が減少する結果として低下する。これは、触媒の活性の減少を導き、同時に反応炉内の滞留時間の減少を導く。触媒の活性の減少は、結果として反応比率の減少となる。反応比率は、反応した水素の量と投入した水素の量とが再び等しくなるまで減少する。
【0022】
本発明の実施の形態では、水素化処理炉内の温度は、熱伝導媒質の温度により調整される。熱伝導媒質は、好ましくは、反応炉内に設置された少なくとも1つの管及び/又は2重壁で形成された反応炉壁を通して流れる。実施の形態では、水素化処理炉は、シェルアンドチューブ(shell-and-tube)型の熱交換器として形成されている。ここで、熱伝導媒質はチューブの回りを流れ、反応混合物はチューブ内を流れる。
【0023】
水素化処理が行われる温度に依存して、適切な熱伝導媒質は、例えば水、伝熱油又は塩溶解物である。
【0024】
水が熱伝導媒質として使用される場合、水の圧力は、好ましくは発熱を伴う水素化処理からの熱の取り込みの結果として水が蒸発するように選択される。
【0025】
発明の実施の形態では、水素化処理は異種混合の触媒の存在下で行われる。活性成分として、触媒は好ましくは、Cu、Pt、Rh、Pd又はこれらの混合物を含む。触媒は、反応炉内に例えば、織り布(woven fabric)、編み布(knitted fabric)、整列したパッキング(ordered packing)、パッキング要素(packing elements)、又は小粒(granules)として設置することができる。そして、それぞれは活性成分を有する。織り布、編み布、整列したパッキング、パッキング要素、又は小粒は、活性成分で構成する、例えば合金の要素として活性成分を含む、又は、活性成分でコートすることができる。反応炉の壁を活性成分でコートすることも可能である。
【0026】
シェルアンドチューブ型の熱交換器の形式で反応炉を用いた場合、触媒は、好ましくはシェルアンドチューブ型の熱交換器の個々のチューブに、織り布、編み布、整列したパッキング又はパッキング用のベッドとして設置される。
【0027】
実施の形態では、水素化処理炉は、少なくとも1つの気相及び/又は少なくとも1つの液相又は超臨界流体を含む。好ましくは、水素化処理炉は水素化処理が起こる少なくとも1つの気相を含む。
【0028】
実施の形態では、供給材料の流れは、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸(モノ)エステル、及び無水マレイン酸誘導体の中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物を含む。水素化処理は、供給材料の流れに含まれるこれらの化合物をコハク酸、無水コハク酸、γブチロラクトン、ブタンジオール、テトラヒドロフラン及びブタノールの中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物の材料の流れに変換する。
【0029】
水素化処理は、好ましくは5〜100バール、特に好ましくは5〜30バールの範囲内の圧力で完全に実行される。水素化処理の温度は、好ましくは170〜300℃、特に好ましくは200〜300℃の範囲である。
【0030】
マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸(モノ)エステル、及び/又は無水マレイン酸誘導体の水素化処理においては、反応した水素の量と投入した出発原料の量の比率は、水素化処理が5〜30バールの圧力範囲内、そして200〜280℃の温度範囲内、気相で行われ、γブチロラクトン0〜80%、テトラヒドロフラン20〜100%を含む産物を形成し、10%以上の副産物を形成しないように好ましく選ばれる。この水素化処理で形成される副産物は、例えば、ブタノール、無水コハク酸、コハク酸又はブタンである。
【発明の効果】
【0031】
プロセスパラメータを手動で調整する必要のない水素化処理制御方法が提供される。水素化処理は、供給材料の流れに含まれるマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸(モノ)エステル、及び無水マレイン酸誘導体の中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物は、コハク酸、無水コハク酸、γブチロラクトン、ブタンジオール、テトラヒドロフラン及びブタノールの中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物の材料の流れに変換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
発明を実施するための最良の形態について、以下図面を参照しながら説明する。以下において、同一の参照番号は同一のコンポーネントを示す。
【0033】
図1は、水素化処理の制御システムの第1の実施の形態を示す。水素化処理のために、出発原料は出発原料入口2でプロセスに投入される。この目的のために、出発原料は好ましく溶剤に溶けている。出発原料と溶剤の混合物は、供給ライン4からカラム6へ流れる。出発原料と溶剤の混合物を予備的に加熱する第1熱交換器8は、供給ライン4に設置されている。
【0034】
カラム6では、出発原料と溶剤の予備的に加熱された混合物が出発原料と溶剤とに分離される。分離は好ましくは蒸留法により行われる。出発原料と溶剤との混合物を分離するために、内部部材がカラム内に好ましく含まれている。最適な内部部材は、例えば、バブルキャップトレイ(bubble-cap trays)、シーブトレイ(sieve trays)、トンネルキャップトレイ(tunnel-cap trays)又は発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が知っている他のトレイのようなトレイ、若しくはパッキング要素、パッキングのベッド、整列したパッキング、又はループ状に形成された(formed-loop)又はループ状に張られた(drawn-loop)編み布のようなパッキングである。
【0035】
予備的に加熱された水素は、カラム6の底部10で投入される。出発原料と溶剤とを分離するために必要な熱は、カラム6に予備的に加熱された水素を介して導入される。気体状の水素は、カラム6の底部10から上部16に流れ、そして同時に、低沸点成分を混合物から蒸発させならが、そしてこのように高沸点成分から分離させながら、熱を出発原料と溶剤の混合物に移す。
【0036】
カラム6の底部10では、溶剤は溶剤排出ライン12を介して溶剤排出口14に搬送される。
【0037】
実施の形態においては、カラム6で分離された溶剤は、出発原料を溶解するのに再利用される。この目的のため、もし不純物が溶剤に未だ含まれている場合には、溶剤は再利用の前にワークアップすることができる。
【0038】
カラム6で分離された出発原料は、カラム6の上部16で水素と共に排出される。出発原料と水素は、接続ライン18を通って、最初に部分コンデンサ20,ここからプリヒータ22、そして最後に水素化処理炉24へと流れる。
【0039】
カラム6の上部16から出てきた出発原料と水素を含む蒸気流は部分コンデンサ20で冷却される。その結果、主に、出発原料の沸点より高い沸点を有し、蒸気流に含まれている成分は凝縮する。部分コンデンサ20で凝縮された物質は、カラム6に戻し流される。出発原料と水を含む蒸気流は、プリヒータ22で水素化処理に必要な温度まで加熱される。水素化処理炉24内で水素化処理が起こる。
【0040】
図1に示す実施の形態では、水素化処理炉はシェルアンドチューブ型の熱交換器である。活性成分としてCu、Pt、Rh、Pd又はこれらの混合物を含む異種混合の触媒は、好ましく水素化処理炉24内のチューブに含まれている。触媒は、好ましく織り布、ループ状に張られた編み布、整列したパッキング、又はパッキン素子として存在する。
【0041】
反応炉がシェルアンドチューブ型の熱交換器で構成されている、ここで示した実施の形態以外に、チューブ型の反応炉(tube reactor)、流動体のベッド型反応炉(fluidized-bed reactor)、発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が知っている他の反応炉で水素化処理に適合するものを用いることができる。
【0042】
製品含有気体流は、排出ライン26を通って水素化処理炉24から排出される。製品を含む気体流は、最初に第2熱交換器を流れる。ここでは、カラム6の底部10で投入された水素含有気体流に熱を移す。その結果、製品含有気体流の冷却が起こる。少なくとも1つの製品コンデンサで、少なくとも製品が製品含有気体流から凝縮される。製品コンデンサとして、例えば、所望の液体又は気体の伝熱媒質が供給される空冷コンデンサ30又はコンデンサ32を使用することができる。特に、最適な伝熱媒質は液体熱媒質であって、コンデンサ32から熱を取り込んだ結果蒸発する。減圧下でちょうど沸点にある水が、特に最適である。
【0043】
製品コンデンサ30、32が設置されている排出ライン26は、製品分離器34に通じている。製品分離器34では、液体製品は気体成分から分離される。液体製品は、製品搬出ライン36を通って製品搬出部38へ行く。
【0044】
水素含有オフガス流は、製品分離器34の上部でオフガスライン40を通して放出される。水素含有オフガス流は好ましくは、水素化処理炉24内の水素化処理で反応した水素に置き換えるために、リサイクルガスとして再利用される。
【0045】
水素含有気体流は、同様に、製品分離器34の上部に同様に位置している第2のライン42を通して排出される。水素入口46から水素が導入される水素ライン44は、ライン42に通じている。水素ライン44を流れる水素の量は、水素化処理炉24内で反応する水素の量に一致する。特に好ましい実施の形態では、オフガスライン40を経由してプロセスから排出される水素は、オプショナルの検査の後、水素ライン44を経由してプロセスに再循環される。
【0046】
ライン42を経由して製品分離器34から排出される水素含有気体流と、水素ライン44を経由して投入される付加的な水素は、第3熱交換器48で加熱され、コンプレッサ50でシステム圧力に圧縮され、続いて水素化処理炉24から排出される気体状の製品流から取り上げられる熱により第2熱交換器28で更に加熱される。このようにして予備的に加熱される水素含有気体流は、カラム6の底部10に運ばれる。
【0047】
水素化処理を制御するために、供給ライン4を流れる出発原料の量は、第1流量計48により測定される。第1流量計48による測定値は、データライン50により制御器52に伝送される。
【0048】
オフガスライン40を経由してプロセスから排出される水素含有気体の量は、第2流量計54で測定される。この測定値は同様に制御器52に伝送される。プロセスに投入された水素の量は、フロー制御器56により測定される。この目的のために、フロー制御器56は、水素ライン44上に設置されている。フロー制御器56からの測定値も同様に制御器52に伝送される。制御器52では、第2流量計からの測定値と第1流量計からの測定値との差が導出され、この差が第1流量計48からの測定値で割り算される。この比率は規定値と比較され、温度制御器58に伝送されるセットポイントを与える。水素化処理炉24の温度は、温度制御器68によりセットされる。温度はここでは、水素化処理炉24を流れる伝熱媒質の温度と体積流量により制御される。
【0049】
水素化処理炉24に導かれる接続ライン18のシステム圧力は、圧力制御器60により測定される。この測定値は、セッティングパラメータとしてフロー制御器56に伝送される。フロー制御器56は、水素ライン44に設置されている制御バルブ60に作用する。プロセスに投入される水素の量は制御バルブ60により調整される。
【0050】
図2は、水素化処理の制御システムの第2の実施の形態を示す。
【0051】
図2に示す実施の形態は、図1に示すものと、水素化処理が制御されている点で異なる。図2に示す実施の形態では、第1流量計48による測定値が制御器62に伝送されている。制御器62はまた、第2流量計54による測定値を受信する。
【0052】
図2に示す制御システムの目的は、反応する水素の量と出発原料の量との比率を一定に保つことである。この目的のため、投入する水素の量は、反応する水素の量と出発原料の量との比率から制御器62で導出される。この値は、セッティングパラメータとしてフロー制御器56に伝送される。フロー制御器56は、投入する水素の量が設定される制御バブル部62にセッティング信号を送る。このように、反応する水素の量と投入する出発原料の量との比率は一定に保たれる。
【0053】
図2に示す実施の形態では、また、圧力制御器60は接続ライン18の圧力を、水素化処理炉24に通じる前に測定する。圧力制御器60は、水素化処理炉24内の温度が設定される温度制御器58のためのセッティグパラメータを供給する。このように、最良の水素化処理結果が得られる動作ポイントが、水素化処理炉24に設定される。動作ポイントは、圧力、温度、反応する水素の量と投入する出発原料の量との比率により定義される。
【0054】
図3は、水素化処理の制御システムの第3の実施の形態を示す。
【0055】
図3に示す実施の形態は、図2に示すものと、水素化処理炉24の温度が一定に保たれシステムの圧力がそれ自身で設定される点で異なる。この目的のために、システムの圧力を測定する圧力計66が接続ライン18にのみ設置されている。
【0056】
水素化処理炉24内の温度を温度制御器58により測定し、温度と温度測定に基づく伝熱媒質の流れを調整することにより、温度が一定に保たれる。
【0057】
図3に示す実施の形態では、また、図2に示す実施の形態と同様に、反応する水素の量と投入した出発原料の量との比率が一定に保たれる。この目的のために、第1流量計49と第2流量計54からの測定値が制御器64に送られる。そして、投入する水素の量が制御器52のセッティングパラメータとしてフロー制御器56に送られる。投入する水素の量は、フロー制御器56からセッティングパラメータを受信する制御バルブ62により設定される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】水素化処理の制御システムの第1の実施の形態を示す。
【図2】水素化処理の制御システムの第2の実施の形態を示す。
【図3】水素化処理の制御システムの第3の実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0059】
2 出発原料入口
4 供給ライン
6 カラム
8 第1熱交換器
10 底部
12 溶剤排出ライン
14 溶剤排出口
16 上部
18 接続ライン
20 部分コンデンサ
22 プリヒータ
24 水素化処理炉
26 排出ライン
28 第2熱交換器
30 空冷コンデンサ
32 コンデンサ
34 製品分離器
36 製品搬出ライン
38 製品搬出部
40 オフガスライン
42 ライン
44 水素ライン
46 水素入口
47 熱交換器
48 コンプレッサ
49 第1流量計
50 データライン
52 制御器
54 第2流量計
56 フロー制御器
58 温度制御器
60 圧力制御器
62 制御バルブ
64 制御器
66 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化処理炉内で出発原料の水素化処理を制御する方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法。
a)前記水素化処理で反応した水素の量を決定する工程、
b)前記反応した水素の量と投入した出発原料の量との比率を決定する工程、
c)前記工程b)で導かれた比率と規定値とを比較する工程、そして
d)もし、前記工程b)で導かれた比率が前記規定値から規定量それている場合に、少なくとも1つのプロセスパラメータを変更する工程。
【請求項2】
前記反応した水素の量を決定するために、プロセスから排出される水素の量と前記プロセスに投入された水素の量との差を導出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化処理炉内の温度を制御する温度制御器の設定ポイントが前記工程c)で実行された前記比較から生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化処理炉内の圧力は、材料側又は排出側の圧力制御により一定に保たれることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記投入される水素の量を調整し、
前記水素化処理炉内で確立される圧力を、当該圧力と制御器での規定値とを比較し温度を制御することにより一定に保ち、
前記規定値からの実際の値の偏差により前記温度のための制御パラメータを生成することにより、
前記反応した水素の量と前記投入した出発原料の量との前記比率は、一定に保たれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記反応した水素の量と前記投入した出発原料の量との前記比率と、前記水素化処理炉内の温度とが、一定に保たれることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化処理炉内の温度は、伝熱媒質の温度により設定されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記伝熱媒質は、前記水素化処理炉内に設置された少なくとも1つの管及び/又は二重壁として構成された反応炉壁を通って流れることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化処理は、異種混合の触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒は、活性成分としてCu、Pt、Rh、Pd又はこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水素化処理炉は、少なくとも1つの気相及び/又は少なくとも1つの液相又は超臨界流体を含むことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
供給材料の流れは、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸(モノ)エステル、及び無水マレイン酸誘導体の中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物を含み、コハク酸、無水コハク酸、γブチロラクトン、ブタンジオール、テトラヒドロフラン及びブタノールの中から選ばれた1つ又はそれ以上の化合物が前記水素化処理により得られることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化処理は170〜300℃の温度範囲内及び5〜100バールの圧力範囲内で行われることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−528555(P2008−528555A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552654(P2007−552654)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050507
【国際公開番号】WO2006/082165
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】