説明

水素含有ガス利用システム

【課題】高いエネルギー効率で水素含有ガス中の水素及びその他のガスを利用することが可能な水素含有ガスの利用システムを提供する。
【解決手段】水素化装置1と、発電装置3とを具え、前記水素化装置1において、水素含有ガスを用いて芳香族炭化水素を水素化し、該水素化反応生成物中のガス分を前記発電装置3に供給することを特徴とする水素含有ガス利用システムである。該水素含有ガス利用システムは、更に、気液分離装置2を具え、該気液分離装置2において、前記水素化反応生成物をガス分と液分とに分離することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有ガスの利用システム、特には、水素を含む混合ガスの利用において、高いエネルギー効率で水素及びその他のガスを利用することが可能なシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製油所や製鉄所を含むコンビナートやバイオマス・廃棄物のガス化装置等からは、水素を含む混合ガスが発生するが、該混合ガスは価値が低いため、従来は燃料ガスとして利用されることが多かった。近年、燃料電池等への水素の利用が盛んに検討されるようになり、このような価値の低い水素含有ガスから水素を取り出す技術が開発されている。最も一般的な方法はPSA(Pressure Swing Adsorption)であるが、水素回収率が80%程度であるため、芳香族炭化水素との反応を利用する方法が注目されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、コークス炉ガス(COG)中の水素を用いてベンゼンからシクロヘキサンを製造し、分離されたCOG中のその他の成分は、メタンリッチガスであるため、SNG(synthetic natural gas)としての利用が可能とある。また、下記特許文献2では、COG中の水素濃度を調整するためにベンゼンとの反応を利用し、水素濃度が調整されたCOGは水蒸気改質してメタノールやDMEの製造に用いられるとある。更に、下記特許文献3では、ナフタレンとテトラリン間の反応を利用してヘテロ化合物を多く含むCOGから水素を取り出す方法が示されており、残存したCOGは、メタン濃度が高まるため高カロリーとなり、燃料ガスとして適するとある。これらの方法では、芳香族炭化水素との反応条件を適宜設定することにより、水素含有ガス中の水素をほぼ全量回収することができるが、水素含有ガスから水素を取り出した残りのガスは、燃料ガスとして燃やされたり、天然ガスの代替に使われたり、化学品製造の原料とされており、直接発電に用いられることはなかった。
【0004】
一方、水素を含むガスを用いる発電装置としては、ガスタービンや燃料電池が知られている。しかしながら、水素含有ガスを燃焼させて用いるガスタービンの場合、ガス中の水素含有量が多いと火炎の検知が難しいため、水素含有量の高い水素含有ガスを用いることができなかった。また、燃料電池では、その種類によって水素以外の成分含有量が厳しく規定されるものもある。そのため、様々な副生ガス、燃料ガス等をそのままガスタービンや燃料電池に用いることは好ましくない。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−215540号公報
【特許文献2】特開2005−146147号公報
【特許文献3】特開2006−143507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高いエネルギー効率で水素含有ガス中の水素及びその他のガスを利用することが可能な水素含有ガスの利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、水素含有ガスと芳香族炭化水素の水素化反応で水素を利用した後、水素濃度が低くなったガス分をガスタービンや燃料電池等の発電装置に利用することにより、水素を取り出した残りのガスを単に燃焼させて熱だけを取り出すのに比べ、発電を行い、同時に発生する熱を利用できるようになるため、エネルギー効率が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の水素含有ガス利用システムは、水素化装置と、発電装置とを具え、
前記水素化装置において、水素含有ガスを用いて芳香族炭化水素を水素化し、該水素化反応生成物中のガス分を前記発電装置に供給することを特徴とする。
【0009】
本発明の水素含有ガス利用システムは、更に、気液分離装置を具え、該気液分離装置において、前記水素化反応生成物をガス分と液分とに分離することが好ましい。
【0010】
本発明の水素含有ガス利用システムにおいて、前記発電装置としては、ガスタービン及び燃料電池が好ましい。ここで、該燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、りん酸形燃料電池及び溶融炭酸塩形燃料電池が好ましい。
【0011】
本発明の水素含有ガス利用システムにおいて、前記水素含有ガスは、水素濃度が20〜80体積%で、飽和炭化水素濃度が10〜80体積%で、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として100モルppm以下で、CO濃度が100体積ppm以下で、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm以下で、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm以下であることが好ましい。この場合、該水素含有ガスは、水素濃度が20体積%未満になるまで前記芳香族炭化水素の水素化に水素が用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水素含有ガス利用システムによれば、芳香族炭化水素の水素化反応に水素含有ガス中の水素を利用し、水素濃度が低下したガスを発電装置に供給して、発電に使用する。ここで、発電装置がガスタービンの場合、水素含有ガスにメタン等の炭化水素が含まれていると、水素含有ガスそのものをガスタービンに導入するよりも、芳香族炭化水素との水素化反応後に利用するほうが、水素濃度が下がり炭化水素濃度が上がるため高カロリーとなり、システムのエネルギー効率を向上させるのに効果的である。
【0013】
また、発電装置が燃料電池の場合は、発電によって発生する熱量が大きいので、改質装置を含む場合に改質反応に必要な熱を発電による熱で補えるため、水素含有ガスを用いるのに適している。しかも、水素が少なく炭化水素濃度が高いガスを用いる方が、発電によって発生する熱を炭化水素の改質反応に有効に利用でき、発電効率が高くなるので、水素含有ガスを芳香族炭化水素の水素化反応後に利用するほうが、水素濃度が下がり、好適である。特に、発電装置が固体酸化物形燃料電池(SOFC)の場合、SOFCは固体高分子形燃料電池(PEFC)に比べ水素以外の成分、例えばCOも発電に用いることができるため、水素含有ガスの利用により適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図1を用いて具体的に説明する。図1に示す水素含有ガス利用システムは、芳香族炭化水素の水素化装置1と、気液分離装置2と、発電装置3とを具える。水素化装置1には、水素含有ガスと芳香族炭化水素が供給され、水素化反応により生成した芳香族炭化水素水素化物と、未反応の芳香族炭化水素と、水素含有ガスから水素が利用された後の残存ガスとの混合物が生成する。次に、該水素化反応生成物は、気液分離装置2においてガス分と液分とに分離される。分離されたガス分は、発電装置3に供給され、電気と熱とに変換されて最終利用される。一方、分離された液分は、芳香族炭化水素水素化物と未反応の芳香族炭化水素とを含み、必要に応じて水素化装置1にリサイクルしたり、溶剤や化学品の原料として使用することができる。なお、図示例の水素含有ガス利用システムは、気液分離装置2を具えるが、上記水素化反応生成物のガス分を、気液分離装置2を経ずに発電装置3に供給して、発電に利用することも可能であるため、本発明の水素含有ガス利用システムは、気液分離装置2を具えていなくてもよい。
【0015】
図1に示すシステムにおいて用いられる水素含有ガスとしては、製鉄所、製油所、石油化学コンビナート等で得られる副生水素や燃料ガス、あるいはバイオマスガス化装置、廃棄物ガス化装置等から生じる副生水素が挙げられる。これらの水素含有ガスには、水素の他、メタン、エタン、エチレン等の炭化水素や、硫黄化合物、一酸化炭素、窒素化合物、塩素化合物、シアン化合物等が含まれる場合があり、芳香族炭化水素の水素化反応において用いられる触媒の被毒物質となるようなもの、あるいは、発電装置の運転に障害となるような物質を多く含んでいる場合には、従来技術を用いてこれらを予め所定の濃度以下に低減することが好ましい。
【0016】
水素含有ガスに硫黄化合物が多く含まれる場合には、製油所、製鉄所等で通常行われる水素化脱硫、吸着脱硫、ソーダ洗浄、アミン洗浄等を行えばよく、水素含有ガス中の硫黄濃度を100モルppm以下、好ましくは50モルppm以下にすることが好ましい。
【0017】
水素含有ガスにCOが多く含まれる場合は、COシフト反応等によりCO2に変換して除去すればよく、水素含有ガス中のCO濃度を100体積ppm以下、好ましくは50体積ppm以下にすることが好ましい。
【0018】
また、HCl、Cl2、HCN等の酸性ガスが水素含有ガスに含まれる場合には、通常水洗浄、アミン洗浄等で除去する。除去した後の水素含有ガス中の塩素化合物濃度は塩素濃度として0.1モルppm以下であることが好ましく、シアン化合物濃度はCN濃度として0.1モルppm以下であることが好ましい。
【0019】
不飽和炭化水素は、芳香族炭化水素の水素化において同時に水素化され、飽和炭化水素に転化するので、反応効率上好ましくはないが、水素含有ガスに含まれていても良い。
【0020】
上記水素含有ガスには、主に水素と炭化水素が多く含まれる。水素含有ガス中の水素濃度は20〜80体積%の範囲が好ましく、飽和炭化水素濃度は10〜80体積%の範囲が好ましい。水素濃度が80体積%を超える高純度ガスの場合は、水素としての利用価値が高いため、石化製品の製造原料として直接用いることができる。一方、水素濃度が20体積%よりも低い場合は、炭化水素としての利用価値が高いため、水素製造用原料として用いることができる。なお、本発明のシステムは、水素としても炭化水素としても利用価値の低い水素含有ガスから有効に水素を取り出すのに特に好適である。
【0021】
水素化装置1に供給される芳香族炭化水素としては、ベンゼン類、ナフタレン類が挙げられるが、安全性、取り扱い易さの観点から、置換基を持つものが好ましく、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン等のアルキルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン等のアルキルナフタレン、及びこれらの混合物を用いることが好ましい。また、ヘキサン、ヘプタン等のパラフィン類や、シクロヘキサン、シクロペンタン等のナフテン類など、芳香族炭化水素の水素化反応に影響を及ぼさないものは、水素化装置1に供給される芳香族炭化水素中に含まれていても良い。
【0022】
芳香族炭化水素の水素化装置1は、固定床でも、流動床でも、懸濁床でもよい。例えば、ベンゼンからシクロヘキサンを製造するプロセスとしては商用プロセスが既に存在し、従来技術に基づき、同様に水素化反応で発生する熱を除去するような装置を使用することが好ましい。反応熱を除去しない場合、コーキングの恐れがあるからである。
【0023】
水素化に用いる触媒は、一般的に用いられるものでよく、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、レニウム、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン及び銅からなる群から選定される少なくとも1種の金属を、活性炭、ゼオライト、チタニア、カーボンナノチューブ、モレキュラーシーブ、ジルコニア、メソ細孔シリカ多孔質材料、アルミナ及びシリカからなる群から選定される少なくとも1種の担体に担持した金属担持触媒が用いられる。金属担持触媒における金属担持率は、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜5質量%である。水素含有ガスに硫黄化合物や一酸化炭素が含まれる場合には、これらに耐性のある触媒を選択することが好ましく、石油精製の脱硫・脱芳香族触媒としてよく用いられるパラジウム、ニッケル−モリブデン、ニッケル−タングステン等が適している。
【0024】
水素化反応の条件は、用いる水素含有ガスの組成および芳香族炭化水素の組成により適宜選択されるが、反応温度が50〜500℃、好ましくは80〜350℃、水素分圧が0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.3〜2MPaの条件下に行えばよい。水素化反応の後に残るガスの組成を制御するためには、水素含有ガスと芳香族炭化水素の流量・流速や反応温度により水素化転化率を制御することが好ましく、例えば反応温度を下げることで転化率を下げることができる。
【0025】
水素化後は、気液分離装置2を介して、ガス分と液分とに分離することが好ましい。ここで、気液分離装置2の運転温度は、使用する芳香族炭化水素及び生成する芳香族炭化水素水素化物の沸点に応じて適宜選択され、5〜50℃の範囲が好ましく、15〜35℃の範囲が更に好ましい。
【0026】
水素化反応生成物中のガス分、特には気液分離装置2で分離されたガス分には、水素含有ガスから芳香族炭化水素の水素化反応及び不飽和炭化水素の水素化に用いられて減少した水素と、不飽和炭化水素の水素化で増加した飽和炭化水素と、およびその他の水素化に用いられなかったガス成分、未反応の芳香族炭化水素のベーパーと、芳香族炭化水素の水素化で生成した芳香族炭化水素水素化物(ナフテン類)のベーパーが含まれる。該ガス分は、燃料電池、ガスタービン等の発電装置3に供給されるため、水素濃度が低く、運転に障害となるような物質の濃度が低いことが好ましい。そのため、水素濃度が20体積%未満、好ましくは10体積%以下で、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として100モルppm以下で、CO濃度が100体積ppm以下で、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm以下で、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm以下となるように、水素化反応の転化率を制御することが好ましい。
【0027】
一方、水素化反応生成物中の液分、特には気液分離装置2で分離された液分には、未反応の芳香族炭化水素と、芳香族炭化水素の水素化で生成した芳香族炭化水素水素化物(ナフテン類)とが含まれる。液分に含まれる芳香族炭化水素の水素化物は、使用する芳香族炭化水素によって異なり、例えば、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン等のアルキルシクロヘキサン、メチルデカリン、エチルデカリン、ジメチルデカリン、ジエチルデカリン等のアルキルデカリン、及びこれらの混合物である。該液分は、必要に応じて水素化装置1にリサイクルしても良いし、溶剤や化学品の原料として用いても良い。
【0028】
水素化反応生成物中のガス分、特には気液分離装置2で分離されたガス分は、発電装置3に供給され、発電に利用される。発電装置3としては、水素、炭化水素、二酸化炭素、一酸化炭素等を含む混合ガスを原料に発電できるものとして、燃料電池、ガスタービン等が挙げられる。
【0029】
発電装置3がガスタービンの場合、ガスタービンに供給されたガス分は燃焼され発電に用いられる。そのため、ガス分が高カロリーなほど、発電効率が良くなる。
【0030】
一方、発電装置3が燃料電池の場合、該燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、りん酸形燃料電池及び溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられ、これらの中でもSOFCが好ましい。なお、SOFCには必要に応じて、脱硫装置、予備改質装置を設けることが好ましい。供給されるガス分中の硫黄濃度が50モルppb以上の場合には、酸化鉄、酸化亜鉛、ゼオライト、活性炭等の吸着剤を用いて脱硫し、SOFCに供給されるガス分中の硫黄濃度が50モルppb以下となるようにすることが好ましい。また、供給されるガス分中にC2以上の炭化水素が含まれる場合には、コーキングの要因となり易いので、予備改質を行い、C2以上の炭化水素がSOFCに供給されないようにすることが好ましい。
【0031】
予備改質器及びSOFC内の改質器に用いる改質用触媒としては、水蒸気改質用触媒として一般に知られる触媒を用いればよく、例えば、Ni、Ru、Rh等の金属をアルミナ、ジルコニア、セリア等の担体に担持したものが用いられる。
【0032】
改質反応は、反応温度が400〜900℃、反応圧力が常圧〜3MPa、GHSVが500〜500000、S/Cが0.5〜3の条件で行うことが好ましい。
【0033】
ガスタービン、燃料電池等の発電装置3により発電した電気は、装置を設置した工場やコミュニティーに提供され、家庭・ビル・事業所等で使用したり、電気自動車に供給することも出来る。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
水素化装置と、気液分離装置と、ガスタービン又はSOFCとを具えるシステムを組み立てた。該システムの水素化装置において、水素50体積%、メタン30体積%、エタン20体積%、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として3モルppm(H2S5体積ppm)、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm未満(HCl濃度0.1体積ppm未満)、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm未満(HCN濃度0.1体積ppm未満)の水素含有ガスAを用いて、トルエンの水素化を行った。Ni−Mo触媒を用い、2MPa、260℃で水素化反応を行ったところ、原料の水素含有ガスAに含まれていた水素のうち90%が使われた。
【0036】
次に、上記システムの気液分離装置において、反応ガスを30℃で気液分離して、水素8.9体積%、メタン53.4体積%、エタン35.7体積%、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として6モルppm(H2S9体積ppm)、メチルシクロヘキサン1.9体積%、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm未満(HCl濃度0.1体積ppm未満)、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm未満(HCN濃度0.1体積ppm未満)のガス分Bを得た。
【0037】
次に、上記ガス分Bをガスタービンに供給して、発電を行った。水素化反応に供給した水素含有ガスAはその組成から発熱量が718kJ/molで、ガスタービンに供給したガス分Bは発熱量が1141kJ/molであり、水素含有ガスAをそのまま供給するよりも高カロリーのガスを用いて発電することができた。発電効率30%、熱効率45%のガスタービンから855.75kJ/molをエネルギーとして取り出すことができた。
【0038】
同様に、水素化反応後に得られたガス分Bを脱硫器つきSOFCに供給して、発電を行ったところ、発電効率45%、熱効率35%のSOFCから912.8kJ/molをエネルギーとして取り出すことができた。なお、原料の水素含有ガスAの流量が500Nm3/hの場合、水素含有ガスAを炉効率60%の小型加熱炉に供給して熱としてとりだせるのは、9616MJ/hであるが、水素化反応装置に使用して水素が減少し流量が275Nm3/hとなったガス分Bをガスタービンに供給すると10505MJ/hとなり、有効にエネルギーを取り出すことができた。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同じシステムの水素化装置において、水素含有ガスとして、重質油水素化分解装置のオフガスCを用いて、トルエンの水素化反応を行った。該オフガスCは、水素62.1体積%、メタン20.6体積%、エタン10体積%、プロパン以上の炭化水素4.8体積%、窒素2.5体積%、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として33モルppm(H2S50体積ppm)、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm未満(HCl濃度0.1体積ppm未満)、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm未満(HCN濃度0.1体積ppm未満)である。Ni−Mo触媒を用い、2.5MPa、280℃でトルエンの水素化反応を行ったところ、オフガスCに含まれる水素の93%が使われた。
【0040】
次に、上記システムの気液分離装置において、反応ガスを30℃で気液分離して、水素9.8体積%、メタン49.0体積%、エタン23.8体積%、プロパン以上の炭化水素4.8体積%、窒素2.5体積%、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として78モルppm(H2S119体積ppm)、メチルシクロヘキサン1.9体積%、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm未満(HCl濃度0.1体積ppm未満)、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm未満(HCN濃度0.1体積ppm未満)のガス分Dを得た。
【0041】
次に、上記ガス分Dをガスタービンに供給して、発電を行った。水素化反応に供給したオフガスCはその組成から発熱量が571kJ/molで、ガスタービンに供給したガス分Dは発熱量が1025kJ/molであり、オフガスCをそのまま供給するよりも高カロリーのガスを用いて発電することができた。発電効率30%、熱効率45%のガスタービンから768.7kJ/molをエネルギーとして取り出すことができた。ガス分Dの流量が100Nm3/hのとき、ガスタービンに供給すると、電気として1373MJ/h、熱として2059MJ/hが取り出せ、重質油水素化分解装置の設置されたコンビナート内で有効に利用された。一方、炉効率60%の小型加熱炉に供給した場合は、熱として2746MJ/hが取り出せたが、電気として取り出せるエネルギーはゼロであった。コンビナート内で必要な電気はすべて系統電力から購入しなければならなかった。また、ガス分Dをガスタービンの代わりに脱硫器つきSOFCに供給して発電を行った。発電効率45%、熱効率35%のSOFCから、電気として461kJ/mol、熱として359kJ/mol、合計820kJ/molのエネルギーを取り出すことができ、重質油水素化分解装置の設置されたコンビナート内で有効に利用された。炉効率60%の小型加熱炉に供給した場合は、熱として615kJ/molが取り出せるが、これに比べ、SOFCに供給した場合のほうが、取り出せるエネルギー量が多く、しかも電気エネルギーを含んでいた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の水素含有ガス利用システムの一例の概略フローを示す。
【符号の説明】
【0043】
1 水素化装置
2 気液分離装置
3 発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化装置と、発電装置とを具え、
前記水素化装置において、水素含有ガスを用いて芳香族炭化水素を水素化し、該水素化反応生成物中のガス分を前記発電装置に供給することを特徴とする水素含有ガス利用システム。
【請求項2】
更に、気液分離装置を具え、
該気液分離装置において、前記水素化反応生成物をガス分と液分とに分離することを特徴とする請求項1に記載の水素含有ガス利用システム。
【請求項3】
前記発電装置がガスタービン又は燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の水素含有ガス利用システム。
【請求項4】
前記燃料電池が、固体酸化物形燃料電池、りん酸形燃料電池又は溶融炭酸塩形燃料電池であることを特徴とする請求項3に記載の水素含有ガス利用システム。
【請求項5】
前記水素含有ガスは、水素濃度が20〜80体積%で、飽和炭化水素濃度が10〜80体積%で、硫黄化合物濃度が硫黄濃度として100モルppm以下で、CO濃度が100体積ppm以下で、塩素化合物濃度が塩素濃度として0.1モルppm以下で、シアン化合物濃度がCN濃度として0.1モルppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素含有ガス利用システム。
【請求項6】
前記水素含有ガスは、水素濃度が20体積%未満になるまで前記芳香族炭化水素の水素化に水素が用いられることを特徴とする請求項5に記載の水素含有ガス利用システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221864(P2009−221864A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64265(P2008−64265)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】