説明

水素圧縮機システム

【課題】燃料電池車に水素を供給する水素ステーションにおいて、水素発生装置で発生した高圧の水素ガスを有効に利用する。
【解決手段】燃料電池車6に供給する水素ガスを発生する水素発生装置21と、この水素ガス発生装置で発生した水素ガスを加圧する多段の往復圧縮機3とを、水素圧縮機システムは備える。多段の往復圧縮機の中間段に、最高使用圧力20MPaの高圧ボンベカードル411〜414を、バルブ201〜204を介してガス供給ライン421〜424で接続する。バルブの開閉により高圧ボンベカードルの水素ガスを多段の圧縮機の中間段に選択的に供給可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素圧縮機システムに係り、特に燃料電池車に水素ガスを供給する水素ステーションに用いて好適な水素圧縮機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車に水素を供給するための水素ステーションの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の水素ステーションは、いわゆるオン−サイト型のステーションであり、水を電気分解して水素を得ている。オン−サイト型のステーションでは、発生する水素ガスの圧力が0.6MPa 程度なので、燃料電池車に水素を供給するために加圧用の水素圧縮機システムを必要とする。この公報では、加圧用に水素圧縮機を用いており、その圧縮機を水潤滑して、圧縮機の構成の簡素化を図っている。
【0003】
燃料電池車に水素を供給する他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の水素供給システムは、いわゆるオフ−サイト型の水素供給システムであり、精製した水素ガスを水素カードルに高圧で充填し燃料電池車に供給している。水素カードルを使用した本公報に記載のシステムでは、水素ガスの充填ロードの高低にかかわらず、必要水素量を燃料電池車に供給できる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−194297号公報
【特許文献2】特開2005−273811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池車に用いる純水素は爆発限界が広く、自然界から多量に得られる可能性が高く、かつ環境負荷も低いので、石油に代わるエネルギー源として期待されている。ただし、広範な使用に対応するためには、低価格な燃料供給システムが求められる。
【0006】
そこで、上記特許文献1に記載の従来の水素供給システムでは、水を電気分解して水素を得る水素発生装置を用いている。この装置では、起動から水素発生の定常状態に至るまでに多くの時間を要するので、燃料電池車への水素充填ロードが低い時には装置を停止させて運用経費を節減することが望まれている。しかしながら、圧縮機等を有しており短時間の起動停止には不向きである。その結果、燃料電池車への充填負荷が低い時などには、発生した水素ガスの一部は余剰になり、水素ガスを無駄に燃焼させるかそのまま大気に放出せざるを得ない。
【0007】
一方、特許文献2に記載のオフ−サイト型の燃料電池車への水素供給方法では、充填負荷にかかわらず水素を所定量だけ供給できるが、加圧用の圧縮機の圧縮段数を考慮すると、圧縮機の吸い込み圧力を6MPa程度までにせざるを得ない。その結果、燃料電池車に供給できずに水素カードル内に残存する水素の量が多くなり、水素カードルの運用効率が低下する。
【0008】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、水素発生装置で発生した水素をできるだけ有効に利用することにある。本発明の他の目的は、水素を燃料とする燃料電池車の運用コストを低減することにある。本発明のさらに他の目的は、燃料電池車に水素を供給する水素ステーションを効率化することにある。余剰水素を捨てることなくできる限り回収し、また水素カードル内の残存水素を減少させる。そして本発明は、これら目的の少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の特徴は、水素発生装置と、この水素発生装置で発生した水素を加圧して燃料電池車に供給可能とする多段の圧縮段を有する多段圧縮機と、を有するオン−サイト型の水素ステーションが備える水素圧縮機システムにおいて、水素ガス貯蔵手段を設け、この水素ガス貯蔵手段は多段圧縮機の中間段から圧縮された水素ガスを供給されるとともに、供給された水素ガスを多段圧縮機の初段または中間段に供給可能であり、オフ−サイト型の水素ステーションにもなり得るものである。
【0010】
そしてこの特徴において、多段圧縮機は各段の吸い込み側にスナッバを備え、水素ガス貯蔵手段は高圧ボンベカードルユニットであり、この高圧ボンベカードルユニットと複数のスナッバの少なくとも1個とを遠隔操作バルブを介して接続するのがよい。また、高圧ボンベカードルユニットに接続されたスナッバを吸い込み側に有する圧縮段の少なくとも1つは、吸い込み側と吐出側とをバイパスするバイパスラインと、このバイパスラインに介在させた弁とを有するのが好ましい。
【0011】
上記特徴において、水素発生装置は改質器であり、多段圧縮機は5段の往復動型の圧縮機で最終段の吐出圧が70MPa以上あり、水素ガス貯蔵手段は高圧ボンベカードルを有し、この高圧ボンベカードルに第3段圧縮機の吐出水素ガスを供給するのが好ましい。多段圧縮機の第1段ないし第3段圧縮段はピストンを有し、第4段および第5段圧縮段はプランジャを有し、第3段圧縮段の吐出圧が15〜20MPaであってもよい。
【0012】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、燃料電池車に供給する水素ガスを発生する水素発生装置とこの水素ガス発生装置で発生した水素ガスを加圧する多段の往復圧縮機とを備えた水素圧縮機システムにおいて、多段の往復圧縮機の中間段に最高使用圧力20MPaの高圧ボンベカードルをバルブを介してガス供給ラインで接続し、このバルブの開閉により高圧ボンベカードルの水素ガスを多段の圧縮機の中間段に選択的に供給可能としたことにある。
【0013】
そしてこの特徴において、多段の往復圧縮機において、ガス供給ラインが接続された中間段を含みこの中間段よりも上流側の圧縮段は、吸い込み側と吐出側を、開閉弁を介在させたバイパスラインで接続されており、高圧ボンベカードルの水素をこの多段の往復圧縮機に供給するときはバイパスラインに介在させた開閉弁を開くのがよい。また、多段の往復圧縮機は、各圧縮段の吸い込み側にスナッバを有し、各圧縮段はスナッバと吸い込み側の間の吸い込みラインに制御弁を有するのがよい。
【0014】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、水素発生装置で発生した水素ガスを多段の往復圧縮機で加圧して燃料電池車に供給する第1のラインと、往復圧縮機の吐出圧よりも低圧の圧力で水素ガスが充填される高圧ボンベカードルから往復圧縮機の初段または中間段に水素ガスを供給して往復圧縮機で加圧した後に燃料電池車に供給する第2のラインとを備え、燃料電池車への水素ガスの充填ロードが低い時には第2のラインを用いて高圧ボンベカードルに水素ガスを貯蔵し、充填ロードが高い時には第2のラインを用いて高圧ボンベカードルに貯蔵した水素ガスを往復圧縮機に供給して往復圧縮機の圧縮比を低下させるものである。
【0015】
上記目的を達成する本発明のさらに他の特徴は、水素ガスを加圧する多段の往復圧縮機と、この多段の往復圧縮機の吐出圧よりも低圧の圧力で水素ガスが充填される高圧ボンベカードルと、この高圧ボンベカードルから往復圧縮機の初段または中間段に水素ガスを供給する複数のガス供給ラインとを有し、高圧ボンベカードルに貯蔵された水素ガスの元圧の低下に応じて水素ガスを供給するガス供給ラインを順次低圧側に変え、この複数のガス供給ラインのいずれかから供給された水素ガスを往復圧縮機で加圧した後に燃料電池車に供給するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、改質器で発生した水素ガスを圧縮機と高圧ボンベカードルの双方に供給可能とし、高圧ボンベカードルのガスを初段圧縮機または中間段圧縮機に供給可能としたので、改質器で発生した水素を有効に利用できる。また、水素を燃料とする燃料電池車の運用コストを低減できる。さらに、燃料電池車に水素を供給する水素ステーションの運用効率が増す。余剰水素を捨てることなくできる限り回収し、水素カードル内の残存水素を減少させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る水素ステーションの一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、燃料電池車6に燃料である水素を供給する水素ステーション100を模式的に示す。燃料電池車6に水素ガスを供給する方法は、上述したようにオン−サイト型とオフ−サイト型の2種類がある。オン−サイト型では、アルコールや石油燃料を改質器1で改質して、燃料用の水素を得ている。または、図示しないが、水を電気分解して純水素を発生させる。改質器1や水の電気分解装置で純水素ガスを発生させる水素発生装置を備える水素ステーション100では、発生する水素ガスの圧力は0.6MPa程度になる。
【0018】
一方、オフ−サイト型の水素ステーション100では、副生水素などから純水素ガスを取り出し、高圧でボンベ2に封入する。この高圧のボンベを、ガスボンベカードル2と呼ぶ。ガスボンベカードル2には、15〜20MPa程度の圧力で水素ガスが充填される。本実施例で示す水素ステーション100は、オン−サイト型およびオフ−サイト型の双方の特徴を有している。
【0019】
改質器1またはガスボンベカードル2のいずれかから供給された水素ガスは、そのままの圧力で燃料電池車6に供給するには供給圧力が低すぎるので、昇圧する必要がある。この昇圧のために、詳細を後述する圧縮機ユニット3が改質器1やガスボンベカードル2の下流側に接続されている。
【0020】
圧縮機ユニット3で所定の圧力まで段階的に昇圧された水素ガスは、一旦、蓄圧器ユニット4に貯蔵される。昇圧された水素ガスを燃料電池車6に供給するために、燃料電池車1の供給口に適合するアダプターを備えたディスペンサー5が、蓄圧器ユニット4に接続されている。
【0021】
図1に示した水素ステーション100に用いる圧縮機ユニット3の詳細を、図2にブロック図で示す。圧縮機ユニット3は、モータ19の出力軸に接続されたクランクシャフト8を有し、このクランクシャフト8には5段の圧縮要素が取り付けられている。すなわち図2において、クランクシャフト8のクランク部には、左端側から順に第1段ピストンシャフト14,第2段ピストンシャフト15,第3段ピストンシャフト16,第4段ピストンシャフトピストン17および第5段ピストンシャフト18が取り付けられている。
【0022】
各ピストンシャフト14〜18の先端部には、第1段シリンダ9〜第5段シリンダ13内を往復動するピストン14a〜18aが取り付けられている。各ピストンシャフト14〜18およびクランクシャフト8は、フレーム7内に収容されている。なお図2ではクランクシャフト8を水平に延びるシャフトとし、このシャフト8の直角方向であって上下方向にピストンシャフト14〜18が往復動するように記載したが、図1に示すようにピストンシャフト14〜18は、クランクシャフト8と直交する、異なる2方向に往復動するようにしてもよい。このように配置すれば、クランクシャフト8の長さを短くできる。
【0023】
第1段シリンダ9と第1段ピストン14aにより形成される第1段圧縮段の吸い込み側1Sには、第1段吸い込み制御バルブ101を介して第1段スナッバ22が接続されている。第1段吐出側1Dと第2段吸い込み側2Sの間には、第1段吐出制御バルブ103および第1段インタークーラ1Cを介して第2段スナッバ23が接続されている。以下同様に、第2段吐出側2Dと第3段吸い込み側3Sには第2段吐出制御バルブ105および第2段インタークーラ2Cを介して第3段スナッバ24が、第3段吐出側3Dと第4段吸い込み側4Sには第3段吐出制御バルブ107および第3段インタークーラ3Cを介して第4段スナッバ25が、第4段吐出側4Dと第5段吸い込み側5Sとの間には第4段吐出制御バルブ108および第4段インタークーラ4Cを介して第5段スナッバ26が接続されている。
【0024】
さらに、第1段圧縮段から第3段圧縮段においては、吸い込み側配管と吐出側配管とをバイパスバルブ102,104,106を介してそれぞれ接続している。最終圧縮段である第5段圧縮段の吐出配管には、アフタークーラ5Cおよび逆止弁,吐出スナッバ27,フィルタ28,第5段吐出制御バルブ109が直列に接続されている。なお、フレーム7内に漏れた水素ガスは、逆止弁32を介在させた戻りライン35を経て第1段スナッバ
22に戻される。
【0025】
このように構成した水素圧縮機に水素を供給する供給源は、上述したようにオン−サイト型の場合には改質器21であり、オフ−サイト型の場合には、高圧ボンベカードルユニット401になる。本実施例では、オン−サイト型として、第1段スナッバ22と改質器6とを、開閉弁31を介して接続している。また、オフ−サイト型として、高圧ボンベカードルユニット401を第1段から第3段スナッバに接続している。
【0026】
高圧ボンベカードルユニット401は、複数の高圧ボンベカードル411〜414を有しており、各高圧ボンベカードル411〜414はバルブ403〜406を介してヘッダ402に接続されている。ヘッダ402と第1段スナッバとをライン421で接続し、ライン421には遠隔操作バルブ201およびコントロールバルブ301とを介在させている。同様に、ヘッダ402と第2段スナッバ23とをライン422で接続し、ライン422には遠隔操作バルブ202およびコントロールバルブ302を設けており、ヘッダ402と第3段スナッバ24とをライン423で接続し、ライン423には遠隔操作バルブ203
およびコントロールバルブ303を設けている。各段のコントロールバルブ301〜309は、それぞれの段のスナッバ22〜24が発信した制御信号で駆動される。さらに、第4段スナッバ25とヘッダ402とを遠隔操作バルブ204を介してライン424で接続する。
【0027】
このように構成した本実施例に示した水素ステーションの動作を以下に説明する。オン−サイト型の水素供給ステーションとして使用するときには、改質器21から発生した水素ガスを、第1段スナッバ22および第1段吸い込み制御バルブ101を介して第1段シリンダ9に導く。第1段シリンダ9に導かれた水素ガスは、第1段シリンダ9で圧縮された後、制御バルブ103を経て第1段インタークーラ1Cで冷却され、第2段スナッバ
23に貯蔵される。
【0028】
第2段スナッバ23に貯蔵された水素ガスは、第2段スナッバ23から第2段シリンダ10の吸込側2Sに導かれ、第2段シリンダ10で圧縮されて吐出側2Dから吐出される。そして、第2段制御バルブ105を経て、第2段インタークーラ2Cで冷却され、第3段スナッバ24に貯蔵される。以下同様の手順を経て、水素ガスは、第3段シリンダ11,第4段シリンダ12,第5段シリンダ13で圧縮され、順次その圧力を高めていく。第5段シリンダ13で所定圧力まで圧縮された水素ガスは、アフタークーラ5Cで冷却された後、吐出スナッバ27,フィルタ28を経て図示しない蓄圧器に貯蔵される。
【0029】
ところで、本実施例で示した水素圧縮機3の第3段シリンダ11における吐出圧力は
15〜20MPa程度になる。そこで、オフ−サイト型の水素ステーションとしても作動できるように、第4段スナッバ25に高圧ボンベカードルユニット401をライン424で接続している。オフ−サイト型の水素ステーションとして使用するときは、バイパスバルブ102,104,106を開いて、第1〜第3段のシリンダ9〜11をアンロードさせ、第4段のライン424に介在させた遠隔操作バルブ204を開く。高圧ボンベカードル411〜414の充填時圧力は、15〜20MPa程度なので、ちょうど第4段スナッバ25の所要圧力程度であるから、オフ−サイト型のステーションとしても運用できる。
【0030】
オフ−サイト型の水素ステーションでは、高圧ボンベカードル411〜414に充填された水素ガスを利用する。この充填される水素ガスは外部から供給されてよいことはもちろんであるが、本実施例では圧縮機3の運用効率を図るために、改質器21で作成された水素ガスを水素ガス使用量の少ないときに高圧ボンベカードル411〜414に充填することも可能にしている。この詳細を、以下に説明する。
【0031】
オン−サイト型の水素ステーションでは、改質器20などの水素発生設備を短時間だけ起動/停止させることが困難である。そこで従来は、改質器20を連続的に運転し、燃料電池車6への水素充填負荷が少ないときには、改質器20で発生したガスを燃焼させるかあるいは大気に捨てていた。水素ステーションを効率的に運営するためには、無駄な水素の使用をできるだけ避ける必要がある。そこで、燃料電池車6への水素充填負荷が少ないときには、第4段スナッバ25から高圧ボンベカードルユニット401の高圧ボンベカードル411〜414に水素ガスを、圧力15〜20MPa程度で充填する。
【0032】
一方、燃料電池車6への水素充填負荷が多いときには、高圧ボンベカードル411〜
414に充填された15〜20MPa程度の圧力の水素ガスを使用する。その際、遠隔操作バルブ204を開いて、第4段スナッバ25から水素ガスを吸い込み、第4段および第5段シリンダ12,13で80MPa程度まで圧縮する。
【0033】
第4段シリンダ12にヘッダ402から供給される水素ガスが加えられるから、圧縮機3全体としては、相対的に圧縮比が低下し、圧縮機3の電力消費量が削減され、経済効率が向上する。水素ガスを燃料電池車6に供給すると、高圧ボンベカードル411〜414の元圧は徐々に低下する。
【0034】
高圧ボンベカードル411〜414の圧力が、第4段圧縮段の許容吸い込み圧力以下になったら、第4段スナッバ25に連通するライン424に介在させた遠隔操作バルブ204を閉じる。そして、第3段スナッバ24に連通するライン423に介在させた遠隔操作バルブ203を開く。
【0035】
これにより、高圧ボンベカードル411〜414に蓄えられた圧力が低下した水素ガスは、第4段スナッバ25から第3段スナッバ24に供給先が変更される。第3段スナッバに供給された水素ガスは、第3〜5段シリンダ11〜13で順次圧力を高められ、最終的に80MPa程度まで圧縮される。高圧ボンベカードル411〜414の圧力がさらに低下したときは、ヘッダ402に接続されたライン422,421を切り換えて、高圧ボンベカードル411〜414内の水素の供給先スナッバを、第2段スナッバおよび第1段スナッバに順次変更する。
【0036】
最終的には、第1段スナッバ22に連通するライン421に介在させた遠隔操作バルブ201を開き、その他の遠隔操作バルブ202〜204を閉じる。この状態では、高圧ボンベカードル411〜414内の圧力がほぼ0.6MPa に低下するまで、水素ガスを無駄に使用することなく、圧縮機3を動作させることができる。したがって、高圧ボンベカードル411〜414に充填された水素ガスをほぼ使い切ることができる。
【0037】
本実施例では、オン−サイト型とオフ−サイト型の双方を備える水素ステーションを取り扱ったが、オフ−サイト型だけを備える水素ステーションでも、同様に運用できる。また本実施例では、各バルブを水素ガス供給ラインの圧力を検出して制御しているので、自動でバルブの開閉を制御できる。その結果、人手による複雑な運転作業を必要としない。以上述べたように、改質器で発生した水素ガスを燃焼させたり大気に捨てる等の無駄な使用を低減でき、圧縮機のランニングコストを低減できる。また、水素ステーションのエネルギー効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る水素ステーションの一実施例の模式図。
【図2】図1に示した水素ステーションの詳細ブロック図。
【符号の説明】
【0039】
1…改質器、2…高圧水素ボンベカードル、3…圧縮機ユニット、4…蓄圧器ユニット、5…ディスペンサー、6…燃料電池車、7…フレーム、8…クランクシャフト、9…第1段シリンダ、10…第2段シリンダ、11…第3段シリンダ、12…第4段シリンダ、13…第5段シリンダ、14…第1段ピストン、15…第2段ピストン、16…第3段ピストン、17…第4段ピストン(プランジャ)、18…第5段ピストン(プランジャ)、19…モータ、21…改質器(水素発生装置)、22…第1段スナッバ、23…第2段スナッバ、24…第3段スナッバ、25…第4段スナッバ、26…第5段スナッバ、27…吐出スナッバ、28…フィルタ、101…第1段吸い込み制御バルブ、102…第1段バイパスバルブ、103…第1段吐出制御バルブ、104…第2段バイパスバルブ、105…第2段吐出制御バルブ、106…第3段バイパスバルブ、107…第3段吐出制御バルブ、108…第4段吐出制御バルブ、109…第5段吐出制御バルブ、201〜204…遠隔操作バルブ、301〜303…コントロールバルブ、401…高圧ボンベカードルユニット、1C…第1段インタークーラ、2C…第2段インタークーラ、3C…第3段インタークーラ、4C…第4段インタークーラ、5C…アフタークーラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発生装置と、この水素発生装置で発生した水素を加圧して燃料電池車に供給可能とする多段の圧縮段を有する多段圧縮機と、を有するオン−サイト型の水素ステーションが備える水素圧縮機システムにおいて、
水素ガス貯蔵手段を設け、この水素ガス貯蔵手段は前記多段圧縮機の中間段から圧縮された水素ガスを供給されるとともに、供給された水素ガスを多段圧縮機の初段または中間段に供給可能であり、オフ−サイト型の水素ステーションにもなり得ることを特徴とする水素圧縮機システム。
【請求項2】
前記多段圧縮機は各段の吸い込み側にスナッバを備え、前記水素ガス貯蔵手段は高圧ボンベカードルユニットであり、この高圧ボンベカードルユニットと複数のスナッバの少なくとも1個とを遠隔操作バルブを介して接続したことを特徴とする請求項1に記載の水素圧縮機システム。
【請求項3】
高圧ボンベカードルユニットに接続された前記スナッバを吸い込み側に有する圧縮段の少なくとも1つは、吸い込み側と吐出側とをバイパスするバイパスラインと、このバイパスラインに介在させた弁とを有することを特徴とする請求項2に記載の水素圧縮機システム。
【請求項4】
前記水素発生装置は改質器であり、前記多段圧縮機は5段の往復動型の圧縮機で最終段の吐出圧が70MPa以上あり、前記水素ガス貯蔵手段は高圧ボンベカードルを有し、この高圧ボンベカードルに第3段圧縮機の吐出水素ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の水素圧縮機システム。
【請求項5】
前記多段圧縮機の第1段ないし第3段圧縮段はピストンを有し、第4段および第5段圧縮段はプランジャを有し、第3段圧縮段の吐出圧が15〜20MPaであることを特徴とする請求項4に記載の水素圧縮機システム。
【請求項6】
燃料電池車に供給する水素ガスを発生する水素発生装置とこの水素ガス発生装置で発生した水素ガスを加圧する多段の往復圧縮機とを備えた水素圧縮機システムにおいて、前記多段の往復圧縮機の中間段に最高使用圧力20MPaの高圧ボンベカードルを、バルブを介してガス供給ラインで接続し、このバルブの開閉により高圧ボンベカードルの水素ガスを多段の圧縮機の中間段に選択的に供給可能としたことを特徴とする水素圧縮機システム。
【請求項7】
前記多段の往復圧縮機において、ガス供給ラインが接続された中間段を含みこの中間段よりも上流側の圧縮段は、吸い込み側と吐出側を開閉弁を介在させたバイパスラインで接続されており、前記高圧ボンベカードルの水素をこの多段の往復圧縮機に供給するときは前記バイパスラインに介在させた開閉弁を開くことを特徴とする請求項6に記載の水素圧縮機システム。
【請求項8】
前記多段の往復圧縮機は、各圧縮段の吸い込み側にスナッバを有し、各圧縮段はスナッバと吸い込み側の間の吸い込みラインに制御弁を有することを特徴とする請求項7に記載の水素圧縮機システム。
【請求項9】
水素発生装置で発生した水素ガスを多段の往復圧縮機で加圧して燃料電池車に供給する第1のラインと、前記往復圧縮機の吐出圧よりも低圧の圧力で水素ガスが充填される高圧ボンベカードルから往復圧縮機の初段または中間段に水素ガスを供給して往復圧縮機で加圧した後に燃料電池車に供給する第2のラインとを備え、燃料電池車への水素ガスの充填ロードが低い時には第2のラインを用いて高圧ボンベカードルに水素ガスを貯蔵し、充填ロードが高い時には第2のラインを用いて高圧ボンベカードルに貯蔵した水素ガスを往復圧縮機に供給して往復圧縮機の圧縮比を低下させることを特徴とする水素圧縮機システム。
【請求項10】
水素ガスを加圧する多段の往復圧縮機と、この多段の往復圧縮機の吐出圧よりも低圧の圧力で水素ガスが充填される高圧ボンベカードルと、この高圧ボンベカードルから往復圧縮機の初段または中間段に水素ガスを供給する複数のガス供給ラインとを有し、前記高圧ボンベカードルに貯蔵された水素ガスの元圧の低下に応じて水素ガスを供給する前記ガス供給ラインを順次低圧側に変え、この複数のガス供給ラインのいずれかから供給された水素ガスを往復圧縮機で加圧した後に燃料電池車に供給することを特徴とする水素圧縮機システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−263245(P2007−263245A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89835(P2006−89835)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 100MPa級水素圧縮機の開発 の研究開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】