説明

水素検出器

【課題】水素検出器10において、停止中の検出素子15への結露を低減することを目的とする。
【解決手段】筐体11に取り付けられ、先端の開口16からその内部に被測定ガスを導入する外筒13と、外筒13内部に取り付けられ、測定ガス中の水素濃度を検出する検出素子15とを含む水素検出器10において、外筒13の開口16を開閉するように蓋17を取り付ける。蓋17は、閉状態において外筒13の開口16から外筒13内部への被測定ガスの進入を防止し、開状態において外筒13の開口16から外筒13内部への被測定ガスの導入を可能にするよう開閉する。水素の検出を行わない場合には蓋17を閉状態とし、水素の検出を行う場合には蓋17を開状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素検出器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の動力源として燃料電池が注目されている。燃料電池では、燃料には水素、酸化剤としては酸素を含む空気が用いられ、水素と酸素の電気化学反応により発電するものが多く用いられている。このような燃料電池は燃料として水素を用いるため、その安全性が重要な問題となる。すなわち、安全対策のためには水素が漏洩したことを示す水素検出器が必要となってくる。
【0003】
このため、図3に示すように、燃料電池車両101には各所に水素漏洩を検知するための水素検出器113が取り付けられている。燃料電池車両101は乗車空間102と、水素タンク収納空間103と、エンジンルーム104とがそれぞれ空間として分離された状態で形成されている。水素タンク収納空間103には水素を貯蔵する水素タンク106が設けられている。水素タンク106は、図3に示すように複数の細長い水素タンクを組み合わせたものが用いられている。エンジンルーム104には燃料電池車両101を駆動するための燃料電池110と駆動用モーター109が設けられている。
【0004】
このような燃料電池車両101において、それぞれの空間には水素検出器113が設けられている。乗車空間102には乗車空間102の中で最も上部にあたる天井115前部に水素検出器が設けられ、水素タンク収納空間103は、複数の水素タンク106の中央で水素タンク収納空間103の最も上部に当たる仕切り壁の天井に水素検出器113が設けられ、エンジンルーム104には、エンジンルーム104の中で最も上部にあたるボンネット後端部に水素検出器113が設けられている。さらに、図示していないが燃料電池110の空気極側出口配管の一部にも水素検出器113が配置されている。そして、これらの水素検出器113のうちいずれかが水素漏洩を検知すると、水素供給源を遮断し警報および換気を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような水素検出器には、白金線コイルに貴金属触媒を担持したアルミナ粒を焼結したものを検出素子に用いた接触燃焼式のものが多く用いられている。この接触燃焼式の水素検出器の白金線コイルは、素子を加熱するヒーターと、その温度を測定する測温抵抗体を兼ねるものである。水素ガスを含む空気を接触させると、触媒燃焼により検出素子温度が上昇し、白金線の抵抗値が増大する。これを温度補償素子と対にしてブリッジ電圧の変化としてガス濃度に対応した電圧を取り出すものである。接触燃焼式水素検出器は熱線型半導体式水素検出器等他の形式の水素検出器に比べて検知ガス濃度と出力(感度)との直線性が良いという特徴を持っている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このような接触燃焼式の水素検出器は触媒燃焼による検出素子の温度上昇を利用して水素ガス濃度の検出を行なっていることから、被測定ガス中に湿分が多く含まれており、結露が生じた場合には、測定誤差が大きくなってしまうという問題がある。このため、検出素子と素子保護筐体の何れかを回転させて結露を取り除く結露除去手段とを備える水素検出器が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、燃料電池の空気極側出口配管のように、常に多くの水分が被測定ガスの中に含まれている場合には、空気極側出口配管に分岐させた分岐流路を設けてその中に水素検出器を配置し、水素ガスの検出を行わない場合には、この分岐流路に大気から湿分の少ない空気を導入して結露を防止し、水素ガスの検出を行なう際には湿分の多く含まれている燃料電池からの排ガスを分岐流路に流して水素ガスの検出を行なうようにして、検出精度の向上と結露による性能劣化を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
更に、被測定ガスに湿分が含まれている場合には、湿分の存在によって水素ガスの検出誤差が発生することある。このような湿分による測定誤差の低減方法として、2組の検出素子を設けて湿分による測定値を補償するとともに、水素ガスの濃度と同時に湿度の測定も行うことのできる水素検出器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、検知部である発熱素子の発熱温度を水の沸点以上にすることによって、水素検出器の使用中の結露の発生を防止することが提案されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−191164号公報
【特許文献2】特開2005−98742号公報
【特許文献3】特開2006−153478号公報
【特許文献4】特開2006−134643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、燃料電池車両が置かれる環境は多様に変化し、場合によっては非常に高湿度雰囲気にて運転あるいは停止される場合がある。特に高湿度雰囲気の状態で、燃料電池車両が停止状態に置かれると、車両の下側に面している水素ガスタンク収容空間には多くの湿分を含んだ外気が入り込んでくる。運転時には水素検出器の中の検出素子、あるいは温度補償素子には通電されて温度が高くなっていることから、このような高湿度雰囲気の中でも水素ガスの測定は可能であるが、燃料電池車両が停止して、水素検出器の各素子の温度が低下すると、各素子の表面に結露が発生する場合がある。このような場合には、停止に続く起動の際に、水素ガス検知器の各素子の温度が上昇してくるまでの間、計測誤差が大きく出てしまうという問題があった。
【0011】
上記の特許文献1に開示された従来技術では、使用中の検出素子の温度を上昇させることによって使用中の結露を防止する手段については開示されているが、停止中に発生する結露に対する解決手段は開示されていない。また、特許文献3に記載の従来技術は、検出素子に付着した結露水を機械的に除去するものであることから、検出素子表面は完全な乾燥状態とはならず、検出開始後、検出素子の温度が上昇して検出素子が乾燥するまでの間は検出誤差が発生してしまう。特許文献4に記載の従来技術は、流れのある流路に設置することができる技術であるが、水素ガスタンク収容空間などのように一定の空間内の水素ガスの検出を行なう水素検出器には適用することができない。
【0012】
このことから、燃料電池車両の停止中に所定の空間への水素ガス漏洩検出のための水素検出器において、停止中の結露による計測誤差の発生という問題はいずれの従来技術においても解決されていない問題である。
【0013】
本発明の目的は、水素検出器停止中の検出素子への結露を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る水素検出器は、基体部と、前記基体部に取り付けられ、先端の開口からその内部に被測定ガスを導入する外筒と、前記外筒内部に取り付けられ、前記被測定ガス中の水素濃度を検出する検出素子と、を含む水素検出器であって、前記外筒の前記開口を開閉するように取り付けられ、閉状態において前記外筒の前記開口から前記外筒内部への前記被測定ガスの進入を防止し、開状態において前記外筒の前記開口から前記外筒内部への前記被測定ガスの導入を可能にする蓋と、水素の検出を行わない場合には前記蓋を閉状態とし、水素の検出を行う場合には前記蓋を開状態とする蓋開閉機構と、を有することを特徴とする。また、前記蓋開閉機構は、前記検出素子に通電されない場合には前記蓋を閉状態とし、前記検出素子へ通電された場合には前記蓋を開状態とすること、としても好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、水素検出器停止中の検出素子への結露を低減することができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態につい図面を参照しながら説明する。水素検出器10はアンプなどが収納されて、車両などに取り付けられる固定部となる金属製の筐体11を備えている。筐体11の外面には金属製の外筒13が固定されている。外筒13は円筒形状であっても良いし、四角、六角等の多角形形状であってもかまわない。外筒13の筐体11への固定は、外筒13と筐体11との間の接続面から外筒13の内側へのガスの進入がないようにガスタイトに接続されていれば、溶接、ビス止め等の各種の方法によって固定することができる。ビス、ボルトなどの締結具によって締結、固定する場合には、筐体11と外筒13との間から外筒13の内面へのガスの侵入がないように、Oリング14等の弾性シール材を用いて固定することが好適である。
【0017】
外筒13の先端は開口16となっており、開口16近傍にはブラケット23が取り付けられている。ブラケット23の先端には孔が備えており、このヒンジに蓋17の孔を合わせてピン25を差し込むことによって蓋17を外筒13に対して回転自在になるように保持する。蓋17は上記のように外筒13の先端の開口16の近傍で回転自在に取り付けられているので、その回転によって開口16の開閉を行なうことができる。蓋17の先端にはアーム18が延びており、アーム18のピン27はリンク21によって筐体11に固定されたアクチュエータ19と接続されている。
【0018】
外筒13先端と蓋17との接触面には、Oリング14が取り付けられており、蓋17が外筒13の開口16を塞いで閉状態とした場合に、外筒13の外部から被測定ガスが外筒13の内部に入り込まないようにガスシールができるように構成されている。ガスシールができればシール部材はOリングに限られず、弾性体の平板のパッキンなどであってもよい。
【0019】
外筒13の内部の筐体11には、筐体11の表面から浮かして検出素子15が固定されている。検出素子15は筐体11の内部に収納されているアンプなどの電気機器と接続線で電気的に接続されている。また、外筒13の内側には検出素子15から開口16に向かって順にフレームアレスタ29、フィルタ31が取り付けられている。フレームアレスタ29は多孔質の焼結金属製で、検出素子15の熱によって火炎が発生した場合でも、その火炎が外部に出ないようにするための安全装置である。また、フィルタ31は被測定ガスに含まれる水滴、固形物等が検出素子15まで入り込むことを防止するものである。このフィルタ31は、空気中に含まれている水滴となった湿分は通さないが、水蒸気の状態となっている水分は空気や水素と共に通過する。
【0020】
次に図2を参照しながら本実施形態の水素検出器の動作について説明する。燃料電池車両が停止中は水素の検出は行われないため、水素検出器10は図1(a)に示すように蓋17が閉じた状態となっている。そして、図2のステップS101に示すように、運転者によって燃料電池車両のイグニッションキーがONの位置とされると、図2のステップS102に示すように水素検出器10の検出素子15に通電されて水素検出が開始される。そして、水素検出が開始されると、図2のステップS103に示すように蓋17の開動作が行なわれる。すると、図1(b)に示すようにアクチュエータ19が動作してリンク21を引き上げ、この動作によって蓋17を開状態とする。蓋17が開状態となると、外筒13の外部の被測定ガスは開口16から外筒13の内部に進入して検出素子15に達して水素の検出がおこなわれる。
【0021】
図2のステップS104に示すように、イグニッションキーがOFF位置とされない場合には、水素検出が継続されることから、水素検出器10は通電状態となり、蓋17は開状態が保持される。蓋17の開状態の保持はアクチュエータ19を短縮状態とすることによって行なう。
【0022】
そして、図2のステップS104に示すように、イグニッションキーがOFFとされると、図2のステップS105に示すように、蓋17を閉状態とする閉動作が行なわれる。この閉動作はアクチュエータ19を伸張させることによってリンク21を伸ばし、蓋17を開口16に押し付けることによって行なう。図1(a)に示すように、この動作の後、蓋17はアクチュエータ19の伸張力によって開口16に取り付けられているOリング14に押し付けられた状態となり、蓋17と外筒13先端との間から外筒13外部の被測定ガスが進入しないようにガスシールができるようになっている。
【0023】
以上述べた本実施形態では、水素検出が行なわれず、検出素子15の温度が低い場合には、蓋17を閉状態として被測定ガスの中に含まれている水分が検出素子15に達しないようにしているので、水素検出器の停止中に検出素子15に結露を低減することができるという効果を奏する。また、これによって、停止に続く起動の際の水素検出において測定誤差の発生を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る水素検出器の実施形態の部分断面図である。
【図2】本発明に係る水素検出器の実施形態において、動作を示すフローチャートである。
【図3】燃料電池車両における水素検出器の配置を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10,113 水素検出器、11 筐体、13 外筒、14 Oリング、15 検出素子、16 開口、17 蓋、19 アクチュエータ、21 リンク、23 ブラケット、25,27 ピン、29 フレームアレスタ、31 フィルタ、101 燃料電池車両、102 乗車空間、103 水素タンク収納空間、104 エンジンルーム、106 水素タンク、109 駆動用モーター、110 燃料電池、115 天井。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と、
前記基体部に取り付けられ、先端の開口からその内部に被測定ガスを導入する外筒と、
前記外筒内部に取り付けられ、前記被測定ガス中の水素濃度を検出する検出素子と、
を含む水素検出器であって、
前記外筒の前記開口を開閉するように取り付けられ、閉状態において前記外筒の前記開口から前記外筒内部への前記被測定ガスの進入を防止し、開状態において前記外筒の前記開口から前記外筒内部への前記被測定ガスの導入を可能にする蓋と、
水素の検出を行わない場合には前記蓋を閉状態とし、水素の検出を行う場合には前記蓋を開状態とする蓋開閉機構と、
を有することを特徴とする水素検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の水素検出器であって、
前記蓋開閉機構は、前記検出素子に通電されない場合には前記蓋を閉状態とし、前記検出素子へ通電された場合には前記蓋を開状態とすること
を特徴とする水素検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−82970(P2008−82970A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265675(P2006−265675)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】