説明

水素生成装置及び燃料電池システム

【課題】従来の水素生成装置及び燃料電池システムに比べ、転化率を向上させる。
【解決手段】改質触媒1と、改質触媒を加熱する燃焼器2と、燃焼器からの燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス経路3と、改質触媒より下方に設けられ、粉化した改質触媒をトラップするトラップ器4とを備え、トラップ器4は、燃焼排ガス経路3を構成する壁を介して、改質触媒1を加熱する前の燃焼排ガス、及び、改質触媒を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガス、の少なくともいずれか一方により加熱されるよう構成されている、水素生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成装置及び燃料電池システムに関する。より詳しくは、改質触媒を備える水素生成装置、及び、かかる水素生成装置を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水素ガスの供給は一般的なインフラとして整備されていない。このため、大量に水素を必要とする機器、例えば分散型発電装置として開発され商品化が進められている燃料電池システムを動かす場合、機器設置場所で個別に、水素生成装置を併設する構成がとられることが多い。
【0003】
水素生成装置は、都市ガスやLPG等の炭化水素原料と水蒸気とを水蒸気改質反応させることによって、水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気を成分とする水素含有ガスを生成する改質部を備える。改質部には、改質触媒が配設されている。
【0004】
特許文献1は、改質触媒が充填された改質部を備え、水素含有ガスの顕熱を有効に回収して原料ガスの温度を上昇させると共に水素含有ガスの出口温度を下げるようにした燃料電池用改質装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−261829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のように改質触媒が充填された改質反応部を設けた水素生成装置では、転化率が十分に高くない場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来の水素生成装置よりも改質反応の転化率が向上する水素生成装置及びかかる水素生成装置を備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、改質触媒を備える水素生成装置において、改質効率を向上させるべく、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0009】
水素生成装置において、高温の原料ガスを改質触媒に通流させると、炭素が析出し、結果として流路が閉塞したり、触媒の活性が低下したりする。また、水素生成装置の起動停止による構造体の熱伸縮により、ペレット状、粒状、ハニカム状等に形成された改質触媒の強度が低下し、割れたり、粒径が小さくなったり、粉状になったりすることもある。以下、改質触媒が割れたり、粒径が小さくなったり、粉状になったりすることを、総称して「粉化」という。
【0010】
粉化した改質触媒が、改質器から脱落すると、改質器よりも低温となる部位に堆積する。低温において、改質触媒は、次式に示す改質逆反応を起こし、転化率低下を引き起こす。
【0011】
CO+3H → CH+H
CO+H → CO+H
例えば、特許文献1に開示された構成では、粉化した改質触媒が、触媒支持板を通じて落下すれば、改質反応部よりも低温となる上流側に堆積し、改質逆反応が発生し、転化率が低下する可能性がある。ここで、転化率は、原料にメタンを用いる場合、(水素含有ガス中のCO+COのモル濃度)/(水素含有ガス中のCO+CO+CHのモル濃度)と定義される。
【0012】
そこで本発明者らは、改質触媒より下方に、粉化した改質触媒をトラップするトラップ器を備え、トラップ器を十分に加熱することにより、改質逆反応を抑制しうることに想到した。
【0013】
すなわち本発明の水素生成装置は、改質触媒と、前記改質触媒を加熱する燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス経路と、前記改質触媒より下方に設けられ、粉化した前記改質触媒をトラップするトラップ器とを備え、前記トラップ器は、前記燃焼排ガス経路を構成する壁を介して、前記改質触媒を加熱する前の燃焼排ガス、及び、前記改質触媒を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガス、の少なくともいずれか一方により加熱されるよう構成されている。
【0014】
また、本発明の燃料電池システムは、前記水素生成装置と、前記水素生成装置より供給される前記水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水素生成装置及び燃料電池システムは、従来の水素生成装置及び燃料電池システムに比べ、改質反応の転化率が向上されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、第1実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図2】図2は、第1実施形態の実施例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態の比較例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態の第1変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図5】図5は、第1実施形態の第2変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図6】図6は、第1実施形態の第3変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図7】図7は、第2実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図8】図8は、第2実施形態の変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図9】図9は、第3実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【図10】図10は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示す側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態の水素生成装置は、改質触媒と、改質触媒を加熱する燃焼器と、燃焼器からの燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス経路と、改質触媒より下方に設けられ、粉化した改質触媒をトラップするトラップ器とを備え、トラップ器は、燃焼排ガス経路を構成する壁を介して、改質触媒を加熱する前の燃焼排ガス、及び、改質触媒を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガス、の少なくともいずれか一方により加熱されるよう構成されている。
【0018】
かかる構成では、従来の水素生成装置に比べ、改質反応の転化率が向上される。
【0019】
下方とは、水素生成装置の使用状態において、鉛直方向における下方である。
【0020】
本実施形態の水素生成装置において、トラップ器の容積が、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることのない大きさに設定されていてもよい。
【0021】
かかる構成では、水素生成装置の寿命が満了するまで運転しても、流路が塞がれにくくなる。
【0022】
本実施形態の水素生成装置において、粉化していない改質触媒の下端とトラップ器との距離が、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることのない長さに設定されていてもよい。
【0023】
かかる構成では、水素生成装置の寿命が満了するまで運転しても、流路が塞がれにくくなる。
【0024】
「粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることのない」とは、水素生成装置の寿命が満了するときまでに粉化して脱落する量の改質触媒がトラップ器に供給されても、粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることがないことをいう。水素生成装置の寿命は、例えば、10年としうるが、それぞれの水素生成装置に応じて適宜に定められるものであって特に限定されない。
【0025】
[装置構成]
図1は、第1実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0026】
図1に示す例において、本実施形態の水素生成装置100は、改質触媒1と、燃焼器2と、燃焼排ガス経路3と、トラップ器4と、壁5とを備える。
【0027】
改質触媒1は、改質反応を進行させ、原料から水素含有ガスを生成するための触媒である。改質反応は、いずれの改質反応でもよく、具体的には、水蒸気改質反応、オートサーマル反応及び部分酸化反応が例示される。本例では、水蒸気改質反応が用いられている。
【0028】
改質触媒1には、一般的に、Pt、Ru、Rh、Pd及びNiからなる群の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0029】
改質触媒1の担持体としては、活性成分を高分散状態で担持できるものであれば、特に限定されない。担持体としては、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア、ゼオライトからなる群の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0030】
改質触媒1の基材としては、触媒と反応室中のガスとの接触面積を充分に確保できるものが用いられる。基材としては、ハニカム形状、連通孔を有する発泡体形状の基材などが好ましく、ペレット形状でもよい。触媒の保持方法としては、基材がペレット形状もしくはコージェライトハニカムであれば、触媒充填位置の下部に網状もしくは開口部を有する触媒保持板14を設置し、保持してもよい。基材がメタルハニカムであれば、水素生成装置1のステンレス構造体に溶接し、保持してもよい。
【0031】
原料は、少なくとも炭素及び水素を構成元素とする有機化合物を含み、具体的には、天然ガス、都市ガス、LPG、LNG等の炭化水素が例示される。都市ガスとは、ガス会社から配管を通じて各家庭等に供給されるガスをいう。原料供給源として、原料のインフラストラクチャ、及び、原料を貯蔵するボンベ等が例示される。
【0032】
水素生成装置100の水素生成運転において、改質触媒1の温度は例えば、摂氏600度以上かつ摂氏700度以下に制御される。
【0033】
図1の例では、改質触媒1が粒状に形成され、触媒保持板8によって保持されている。ただし触媒保持板8は必須ではなく、例えば、改質触媒1がハニカム構造をなすように構成されているような場合には、触媒保持板8が設けられなくてもよい。
【0034】
燃焼器2は、改質触媒を加熱する。燃焼器2としては、例えばバーナが用いられる。燃焼器2が燃焼させる燃料は、原料であってもよいし、水素生成装置100から排出される水素含有ガスであってもよいし、水素生成装置100に接続される水素利用機器から排出される使用済みの水素含有ガスであってもよい。水素利用機器としては、例えば、燃料電池、水素貯蔵装置等が挙げられる。
【0035】
燃焼排ガス経路3は、燃焼器2からの燃焼排ガスが流れる。壁5は、燃焼排ガス経路を構成する。燃焼排ガス経路3は、燃焼器2と対向する底面の縁から立ち上がる筒状の壁5と、壁5よりも内側にあって、壁5よりも径の小さな筒状をなす、燃焼器2の側壁とにより形成されている。燃焼器2から排出された燃焼排ガスは、燃焼器2の下方において燃焼器2と対向する底面に衝突して折り返し、燃焼排ガス経路3を通過して、水素生成装置100の外部へと排出される。
【0036】
トラップ器4は、改質触媒より下方に設けられ、粉化した改質触媒をトラップする。トラップ器4は、燃焼排ガス経路3を構成する壁5を介して、改質触媒1を加熱する前の燃焼排ガス、及び、改質触媒1を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガス、の少なくともいずれか一方により加熱されるよう構成されている。
【0037】
トラップ器4は、摂氏600度以上に加熱される部位に配置されるのが好ましい。トラップ器4は、摂氏600度以上かつ摂氏700度以下に加熱される部位に配置されるのがさらに好ましい。
【0038】
トラップ器と改質器、すなわち改質触媒が充填された流路、との間は、通気孔が設けられてていてもよいし、例えば、所定の間隔で、全周に亘って通気孔が設けられていてもよい。通気孔の形状は、例えば、スリット状であってもよい。
【0039】
なお、本実施の形態の水素生成装置100は、改質器1の下流に反応器を設けない形態であるが、改質器1の下流に水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するCO低減器を設ける形態であっても構わない。なお、CO低減器は、シフト反応により水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する変成器と、メタン化反応及び酸化反応の少なくともいずれか一方により水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するCO除去器との少なくともいずれか一方を備える。
【0040】
変成器には、変成触媒が充填される。変成触媒としては、Cu、Zn、Ptなどの金属が例示できる。
【0041】
CO除去器には、メタン化触媒及び酸化触媒の少なくともいずれか一方が充填される。酸化触媒としては、一般的に、Pt、Ru、Rh、Pd及びNiからなる群の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。メタン化触媒としては、Ru等が好適に用いられる。
【0042】
水素生成装置100の水素生成運転時において、変成器の温度は例えば、摂氏160度以上かつ摂氏320度以下であり、CO除去器の温度は例えば、摂氏120度以上かつ摂氏240度以下である。
【0043】
図1の例では、トラップ器4が、底面と、底面の縁から立ち上がる側壁6とを備え、底面と側壁6とで粉化した改質触媒1を保持するように構成されている。ただし、トラップ部は、本構成に限定されるものではなく、粉化した改質触媒をトラップ可能であれば、いずれの構成であっても構わない。例えば、トラップ器4が壁5から斜め上方に延びる斜面をなすように構成されていてもよい。また図1の例では、トラップ器4が壁5により支持されているが、他の部位によって支持されていてもよい。
【0044】
図1の例では、改質器は、筒状の壁5と、壁5の外側にあって、壁5よりも径の大きな筒状をなす外壁と、の間に形成されている。改質器を通過した水素含有ガスは、水素含有ガス流路7へと供給される。本例においては、改質器を通過した水素含有ガスは、該側壁とトラップ器4の側壁6との間に設けられた隙間を通じて水素含有ガス流路7に流入する。水素含有ガス流路7は、改質器の外壁と、改質器の外壁の外周に設けられた筒状の外壁とにより形成されている。水素含有ガスは、水素含有ガス流路7を通過して、水素生成装置100の外部へと排出される。
【0045】
図1の例では、トラップ器4は、壁5を介して、改質触媒1を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱される。改質触媒1を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4を加熱することで、従来の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、改質反応の転化率が向上する。
【0046】
トラップ器4は、壁5を介して、改質触媒1を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱されてもよい。他の反応器を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4が加熱されるので、従来の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、改質反応の転化率が向上する。
【0047】
トラップ器4の容積は、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることのない大きさに設定されているのが好ましい。また、粉化していない改質触媒1の下端とトラップ器4との距離が、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒1の下方の流路が塞がれることのない長さに設定されているのが好ましい。図1の例において、粉化していない改質触媒1の下方の流路とは、触媒保持板8の鉛直下方にある流路である。図1の例において、該流路は、改質器の外側壁とトラップ器4の側壁6との間に設けられた隙間を含む。
【0048】
[実施例]
図2は、第1実施形態の実施例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0049】
本実施例の水素生成装置110は、水素含有ガス流路7に変成触媒9と酸化触媒10とを備える。本実施例では、変成触媒9が変成器を構成し、酸化触媒10がCO除去器を構成する。変成器とCO除去器との間には、酸化空気供給口11が設けられている。酸化空気供給口11を通じて、酸化触媒10における酸化反応に必要な空気が供給される。
【0050】
水素生成装置110において、その他の構成要素は、図1の水素生成装置100と同様とすることができる。よって、図1と図2とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0051】
水素含有ガス流路7へと供給された水素含有ガスは、変成器とCO除去器とを通過することで、CO濃度が低減され、その後、水素生成装置100の外部へと排出される。
【0052】
本実施例の構成では、改質触媒1を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4が加熱されるので、後述する比較例の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、改質反応の転化率が向上する。
【0053】
[比較例]
図3は、第1実施形態の比較例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0054】
本比較例の水素生成装置120は、水素生成装置110においてトラップ器4を省略したものである。水素生成装置120において、その他の構成要素は、図2の水素生成装置110と同様とすることができる。よって、図2と図3とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0055】
本比較例では、トラップ器4が設けられていない。このため、粉化した改質触媒1は、触媒保持板8を通過して、水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部12へと落下し、堆積する。底部12の温度は、トラップ器4よりも低い。低温の底部12において改質触媒1と水素含有ガスとが接触すると、改質逆反応が進行し、転化率の低下を引き起こす。
【0056】
なお、水素生成装置120が、CO低減器を備える場合、上記底部12は、改質器を通過した水素含有ガスがCO低減器に流入するまでの水素含有ガス流路を形成する外壁の底部として定義される。
【0057】
[第1変形例]
図4は、第1実施形態の第1変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0058】
図4に示すように、第1変形例の水素生成装置130は、改質触媒1と、燃焼器2と、燃焼排ガス経路3と、トラップ器4と、壁5とを備える点では図1の水素生成装置100と同様であるが、ガスの流れる向きが水素生成装置100に対して上下逆になっている。
【0059】
改質触媒1については、水素生成装置100について説明したものと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0060】
燃焼器2は、水素生成装置100では下方に開放されていたが、水素生成装置130では上方に開放されている。その他の点は水素生成装置100について説明したものと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0061】
燃焼排ガス経路3は、燃焼器2と対向する上面の縁から垂下する筒状の壁5と、壁5よりも内側にあって、壁5よりも径の小さな筒状をなす、燃焼器2の側壁とにより形成されている。燃焼器2から排出された燃焼排ガスは、燃焼器2の上方において燃焼器2と対向する上面に衝突して折り返し、燃焼排ガス経路3を通過して、水素生成装置100の外部へと排出される。
【0062】
トラップ器4は、改質触媒1より下方に設けられ、粉化した改質触媒をトラップする。トラップ器4は、燃焼排ガス経路3を構成する壁5を介して、改質触媒1を加熱した後かつ他の反応器である蒸発器15を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱されるよう構成されている。
【0063】
図4の例では、トラップ器4が、底面と、底面の縁から立ち上がる側壁6とを備え、底面と側壁6とで粉化した改質触媒1を保持するように構成されている。ただし底面や側壁6は必須ではなく、例えば、トラップ器4が壁5から斜め上方に延びる斜面をなすように構成されていてもよい。また図4の例では、トラップ器4が壁5により支持されているが、他の部位によって支持されていてもよい。
【0064】
図4の例では、改質器は、筒状の壁5と、壁5の外側にあって、壁5よりも径の大きな筒状をなす側壁と、の間に形成されている。蒸発器15は、トラップ器4の下方において、壁5と、該側壁との間に形成されている。原料と水とは、蒸発器15に供給され、蒸発器15において原料と水蒸気とが混合され、該側壁とトラップ器4の側壁6との間に設けられた隙間を通じて改質器へと供給される。水素含有ガス流路7は、改質器の外側壁と、水素生成装置100の側壁とにより形成されている。改質触媒1の上端から排出された水素含有ガスは、改質触媒1の上端と対向する上面に衝突して折り返し、水素含有ガス流路7を通過して水素生成装置100の外部にある水素利用機器へと供給される。
【0065】
図4の例では、トラップ器4は、壁5を介して、改質触媒1を加熱した後かつ他の反応器である蒸発器15を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱される。蒸発器15を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4が加熱されるので、従来の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、転化率が向上される。
【0066】
トラップ器4の容積は、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒の下方の流路が塞がれることのない大きさに設定されているのが好ましい。また、粉化していない改質触媒1の下端とトラップ器4との距離が、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない改質触媒1の下方の流路が塞がれることのない長さに設定されているのが好ましい。図4の例において、粉化していない改質触媒1の下方の流路とは、触媒保持板8の下方の流路であり、改質器の外側壁とトラップ器4の側壁6との間に設けられた隙間を含む。
【0067】
[第2変形例]
図5は、第1実施形態の第2変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0068】
本変形例の水素生成装置140は、触媒保持板8を備えず、トラップ器4の内部に改質触媒1が充填されている。
【0069】
水素生成装置140において、その他の構成要素は、図1の水素生成装置100と同様とすることができる。よって、図1と図5とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0070】
本変形例の構成でも、トラップ器4により、粉化して落下する改質触媒が保持される。トラップ器4は、壁5を介して、改質触媒1を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱される。改質触媒1を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4を加熱することで、従来の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、転化率が向上される。
【0071】
なおここでいう「改質触媒1を加熱する前」とは、水素生成装置140のように、改質触媒1とトラップ器4とが一部重複しており、改質触媒1の加熱とトラップ器4の加熱とが同時に進行する場合を含む。
【0072】
[第3変形例]
図6は、第1実施形態の第3変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0073】
本変形例の水素生成装置150は、触媒保持板8を備えず、トラップ器4の内部に改質触媒1が充填されている。
【0074】
水素生成装置150において、その他の構成要素は、図4の水素生成装置130と同様とすることができる。よって、図6と図4とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0075】
本変形例の構成でも、トラップ器4により、粉化して落下する改質触媒が保持される。トラップ器4は、壁5を介して、蒸発器15を加熱する前の燃焼排ガスにより加熱される。蒸発器15を加熱する前の高温の燃焼排ガスによってトラップ器4を加熱することで、従来の水素生成装置に比べ、改質逆反応が抑制され、転化率が向上される。
【0076】
[第1実験例]
第1実験例では、実施例(図2)に相当する構成で実験を行った。
【0077】
改質触媒にはペレット状に調整したRu触媒を400cc、変成触媒にはCuZn系触媒を2400cc、CO除去触媒にはRu触媒を200cc使用した。
【0078】
改質触媒とトラップ器の間に、水素含有ガスが水素含有ガス流路へ流れ出すための通気孔を、全周にわたってスリット状に開口させた。トラップ器は水素生成装置1と同心円状の二重円筒形とした。トラップ器の外側の直径は、改質部の外側の直径と同じ200mmとした。トラップ器の内側の直径は、改質部の内側の直径と同じ190mmとした。トラップ器の深さは、35mmとした。
【0079】
トラップ器は、バーナ部および燃焼部と同軸となるように設置し、燃焼排ガス経路の外筒を介して燃焼器から加熱されるようにした。燃焼排ガスは、トラップ器を加熱した後、改質器を加熱し、変成器、CO除去器を順次加熱する構成とした。
【0080】
トラップ器の体積は100ccとした。改質器に、粒径を3mmに調整したペレット状の改質触媒400ccを充填した。改質触媒が粉化し触媒保持板を通過した場合をシミュレーションすべく、トラップ器に、ペレット状の改質触媒を砕いて得られた粉末の改質触媒50ccを配置した。
【0081】
運転条件として、原料は都市ガス(13Aガス)とし、S/C=2.8とし、改質器の出口の温度が620℃となるように水素生成装置を運転した。
【0082】
その結果、トラップ器の温度は625℃となり、運転開始後60分において、水素生成装置の出口の転化率は82.3%を示した。この値は、改質出口温度から算出される平衡状態での転化率である82.4%とほぼ等しい。よって、改質逆反応による転化率低下を抑制することができたと考えられる。
【0083】
[第2実験例]
第2実験例では、第2変形例(図5)に相当する構成で実験を行った。装置構成は、触媒保持板を省略し、改質器からトラップ器まで連続的にペレット状の改質触媒が充填されている点以外は、第1実験例と同様とした。運転条件は第1実験例と同様とした。
【0084】
その結果、トラップ器の温度は627℃となり、運転開始後60分において、水素生成装置の出口の転化率は82.5%を示した。この値は、改質出口温度から算出される平衡状態での転化率である82.4%とほぼ等しい。よって、改質逆反応による転化率低下を抑制することができたと考えられる。
【0085】
[第3実験例:比較例]
第3実験例では、比較例(図3)に相当する構成で実験を行った。装置構成は、トラップ器を省略し、水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部に、ペレット状の改質触媒を砕いて得られた粉末の改質触媒50ccを配置した点以外は、第1実験例と同様とした。運転条件は第1実験例と同様とした。
【0086】
その結果、水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部の温度は560℃となり、運転開始後60分において、水素生成装置の出口の転化率は73.5%示した。この値は、改質出口温度から算出される平衡状態での転化率である82.4%より大幅に低い。これは、改質器を出た水素含有ガスが、相対的に温度の低い底部を流通することで、改質逆反応が起こったためと考えられる。
【0087】
(第2実施形態)
第2実施形態の水素生成装置は、第1実施形態及びその変形例のいずれかの水素生成装置において、トラップ器の側壁が、改質触媒を保持する側壁よりも外側に形成されている。
【0088】
図7は、第2実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0089】
図7に示すように、本実施形態の水素生成装置200では、トラップ器4の側壁6が、改質触媒1を保持する側壁13よりも外側に形成されている。
【0090】
水素生成装置200において、その他の構成要素は、図1の水素生成装置100と同様とすることができる。よって、図1と図7とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0091】
本実施形態の構成では、粉化した改質触媒が水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部に落下するためには、側壁6と側壁13との間を上昇しなければならない。かかる現象は起こりにくく、結果として粉化した改質触媒の、水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部への落下が抑制される。よって、底部において低温の改質触媒と水素含有ガスとが接触することによる改質逆反応が抑制され、転化率が向上される。
【0092】
[変形例]
図8は、第2実施形態の変形例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0093】
図8に示すように、本変形例の水素生成装置210では、トラップ器4の側壁6が、改質触媒1を保持する側壁13よりも外側に形成されている。
【0094】
水素生成装置210において、その他の構成要素は、図4の水素生成装置130と同様とすることができる。よって、図4と図8とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0095】
本変形例の構成でも、粉化した改質触媒が水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部に落下するためには、側壁6と側壁13との間を上昇しなければならない。かかる現象は起こりにくく、結果として粉化した改質触媒の、水素含有ガス流路7を形成する外壁の底部への落下が抑制される。よって、底部において低温の改質触媒と水素含有ガスとが接触することによる改質逆反応が抑制され、転化率が向上される。
【0096】
[第4実験例]
第4実験例では、第2実施形態(図7)に相当する構成で実験を行った。装置構成は、トラップ器の外側の直径を202mmとし、トラップ器の側壁が、改質触媒を保持する側壁よりも外側に設けられるようにした点以外は、第1実験例と同様とした。運転条件は第1実験例と同様とした。
【0097】
その結果、トラップ器の温度は622℃となり、運転開始後60分において、水素生成装置の出口の転化率は82.4%を示した。この値は、改質出口温度から算出される平衡状態での転化率である82.4%と一致した。よって、改質逆反応による転化率低下を抑制することができたと考えられる。
【0098】
(第3実施形態)
第3実施形態の水素生成装置は、第2実施形態の水素生成装置において、改質触媒を保持する側壁とトラップ器の側壁とで形成される流路を通過した後のガスを転回させトラップ器の側壁の外側を通過させるためのガイド部を備える。
【0099】
図9は、第3実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0100】
ガイド部14は、改質触媒1を保持する側壁13とトラップ器4の側壁6とで形成される流路を通過した後のガスを転回させトラップ器4の側壁6の外側を通過させるように構成されている。
【0101】
水素生成装置300において、その他の構成要素は、図7の水素生成装置200と同様とすることができる。よって、図7と図9とで共通する構成については同一の符号および名称を付して、詳細な説明を省略する。
【0102】
本実施形態の構成では、側壁6とガイド部14との間の空間によってトラップ器4が断熱されることから、トラップ器4がより高温に維持される。よって、改質逆反応がさらに抑制され、転化率が向上される。
【0103】
[第5実験例]
第5実験例では、第3実施形態(図9)に相当する構成で実験を行った。装置構成は、トラップ器の側壁のさらに外側に、直径が204mmとなるようにトラップ器と同軸の側壁を形成すると共に、上端においてこれを改質触媒を保持する側壁に溶接した点以外は、第4実験例と同様とした。運転条件は第1実験例と同様とした。
【0104】
その結果、トラップ器の温度は622℃となり、運転開始後60分において、水素生成装置の出口の転化率は82.2%を示した。この値は、改質出口温度から算出される平衡状態での転化率である82.4%とほぼ等しい。よって、改質逆反応による転化率低下を抑制することができたと考えられる。
【0105】
(第4実施形態)
第4実施形態の燃料電池システムは、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態のいずれかの水素生成装置と、該水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える
図10は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示す側方断面図である。
【0106】
本実施形態の燃料電池システム400は、水素生成装置100と、燃料電池20とを備える。
【0107】
燃料電池20は、水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する。燃料電池20は、水素含有ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電する。燃料電池20は、いずれの種類の燃料電池であってもよいが、例えば、高分子電解質形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、リン酸形燃料電池、または溶融炭酸塩形燃料電池等を用いることができる。
【0108】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の水素生成装置及び燃料電池は、従来の水素生成装置及び燃料電池システムに比べ、転化率が向上される水素生成装置及び燃料電池として有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 改質触媒
2 燃焼器
3 燃焼排ガス経路
4 トラップ器
5 壁
6 側壁
7 水素含有ガス流路
8 触媒保持板
9 変成触媒
10 酸化触媒
11 酸化空気供給口
12 底部
13 側壁
14 ガイド部
15 蒸発器
20 燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒と、
前記改質触媒を加熱する燃焼器と、
前記燃焼器からの燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス経路と、
前記改質触媒より下方に設けられ、粉化した前記改質触媒をトラップするトラップ器とを備え、
前記トラップ器は、前記燃焼排ガス経路を構成する壁を介して、前記改質触媒を加熱する前の燃焼排ガス、及び、前記改質触媒を加熱した後かつ他の反応器を加熱する前の燃焼排ガス、の少なくともいずれか一方により加熱されるよう構成されている、水素生成装置。
【請求項2】
前記トラップ器の容積が、粉化して堆積した前記改質触媒により粉化していない前記改質触媒の下方の流路が塞がれることのない大きさに設定されている、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項3】
粉化していない前記改質触媒の下端と前記トラップ器との距離が、粉化して堆積した改質触媒により粉化していない前記改質触媒の下方の流路が塞がれることのない長さに設定されている、請求項1または2記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記トラップ器の側壁が、前記改質触媒を保持する側壁よりも外側に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記改質触媒を保持する側壁と前記トラップ器の側壁とで形成される流路を通過した後のガスを転回させ前記トラップ器の側壁の外側を通過させるためのガイド部を備える、請求項4記載の水素生成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給される前記水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23410(P2013−23410A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159803(P2011−159803)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】