説明

水素貯蔵用の中空多孔質壁ガラス微小球

1から140ミクロンの間の直径範囲と、0.05から0.50gm/ccの間の密度と、10から1000Åの間の平均孔径を画定する壁面開口を有する多孔質壁構造とを有し、内部に水素貯蔵材料を含有する中空ガラス微小球が提供される。多孔質壁構造は、中空ガラス微小球の内部への水素貯蔵材料の導入を促進させる。その後、バリアコーティングを付着させることができ、かつ/または微小球を加工して有効孔径を変化させまたは減少させる。このように、中空ガラス微小球は、微小球の多孔質壁を通した水素の選択的輸送のための膜を提供することができ、この小さい孔径によって、気状または液体汚染物質が中空ガラス微小球の内部に進入するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下でなされた、発明の権利に関する記載
本発明は、米国エネルギー省により与えられた契約番号DE−AC0996−SR18500の下、政府の支援によってなされた。政府は、本発明の確かな権利を有する。
【0002】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2004年9月21日に出願された米国特許出願第10/946464号明細書の一部継続出願である。
【0003】
本発明は、中空ガラス微小球と、この微小球を水素貯蔵システムの一部として使用する方法を対象とする。中空ガラス微小球の壁面は、一連の細孔を画定する。細孔は、水素貯蔵材料を中空ガラス微小球の内部に配置するのを容易にする。中空ガラス微小球の多孔性は、その後、全孔径を変化させまたは減少させることによって、あるいは、密閉された中空ガラス微小球の内部に水素貯蔵材料が維持されるように、個々の中空ガラス微小球を被覆することによって変えることができる。被覆および/または制御された孔径は、中空ガラス微小球の壁面を通した水素ガスの選択的吸収を可能にし、一方、内部にカプセル化された水素貯蔵材料を、他の外部の気体または流体から切り離すことが可能になる。
【0004】
中空ガラス微小球は、その後、水素ガスの放出をもたらすために、温度、圧力、またはその他の放出刺激トリガーの変動にかけることができる。脱水すると、中空ガラス微小球および水素貯蔵材料は、もう一度選択的に水素ガスを吸収するように再使用することができる。
【背景技術】
【0005】
中空ガラス微小球(HGM)の形成は、当技術分野で周知である。中空ガラス微小球の製造については、参照により本明細書に組み込まれている特許文献1(Beck)、2(Garnier)、および3(Garnier)に記載されている。
【0006】
また、吸収剤を含有するために半透性液体分離膜をもたらす中空ガラス壁を有する大きな巨大球を製造することも、当技術分野で知られている。巨大球構造の製造は、参照により本明細書に組み込まれているTorobinの特許文献4および5を参照して理解することができる。Torobinの参考文献は、多重粒子ガラス壁を含む中空ガラス巨大球を開示している。この参考文献は、気/液分離のための巨大球の使用および吸収剤との使用を教示しているが、微小球を水素貯蔵媒体として適切なものにするどのような特徴または特性についても論じていない。
【0007】
特許文献6(PPG Industries)は、気体分離で使用される多孔質壁を有する非結晶質シリカファイバーを対象とする。この出願に記載されているファイバーは、微小球とは異なる物理的特性を有しており、したがってファイバーを、水素の分離および貯蔵能力に関してそれほど望ましくないものにしている。
【0008】
特許文献7(CaP Biotechnology,Inc.)は、細胞クラスター形成および生物医学的な用途のために、多孔質壁中空ガラス微小球を使用する。多孔質壁構造は、生物系内に存在するときに、微小球の内容物が容易に放出されるように設計されている。あるいは微小球は、多孔質壁構造内での細胞成長を支援する基質を提供するのに使用する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3365315号明細書
【特許文献2】米国特許第4661137号明細書
【特許文献3】米国特許第5256180号明細書
【特許文献4】米国特許第5397759号明細書
【特許文献5】米国特許第5225123号明細書
【特許文献6】米国特許第4842620号明細書
【特許文献7】米国特許第6358532号明細書
【特許文献8】米国特許第5965482号明細書
【特許文献9】PCT出願PCT/US03/34980号パンフレット
【特許文献10】代理人整理番号WSR−78−Pを有する米国仮出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記参考文献は、材料分離の際に様々な用途がありまたは薬物送達能力を有する様々なガラス微小球および多孔質壁構造を開示しているが、当技術分野では、まだ改善し変化させる余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の少なくとも1つの実施形態の少なくとも1つの態様は、約1.0ミクロンから約140ミクロンの間の直径範囲、および約0.05gm/ccから約0.50gm/ccの密度を有し、平均孔径が約10Åから約1000Åの間にある壁面開口を備えた多孔質壁構造を有する中空ガラス微小球(HGM)であって、その内部に水素貯蔵材料を含有する中空ガラス微小球を提供することである。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の態様は、有効量の水素貯蔵材料であるパラジウムを内部に含有する中空ガラス微小球であって、この中空ガラス微小球の内部からパラジウム微粒子が失われるのを防ぐ孔径を有する中空ガラス微小球を提供することである。
【0013】
本発明の少なくとも1つの実施形態の少なくとも1つの態様は、約1.0から約140ミクロンの間の直径範囲、および約0.05gm/ccから約0.50gm/ccの密度を有し、平均孔径が約10から約1000Åに及んでよい壁面開口を備えた多孔質壁構造を有する中空ガラス微小球(HGM)であって、その内部には水素貯蔵材料を含有し、その外壁には、気状または液体汚染物質がHGM内部に進入するのを防ぐと同時に水素ガスがこの外壁を通過することが可能になるように十分なバリアコーティングを含有する、中空ガラス微小球(HGM)を提供することである。
【0014】
本発明のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下の記述および添付される特許請求の範囲を参照することによって、より良く理解されよう。
【0015】
当業者にとってその最良の形態も含めた本発明の完全に使用可能な開示は、添付図面の参照も含めて本明細書の残りの部分でより詳細に述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について詳細に参照し、その1つまたは複数の実施例を以下に示す。各実施例は、本発明を説明する目的で提供され、本発明を限定するものではない。実際、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明で様々な修正および変更を行うことができることが、当業者に明らかにされよう。例えば、一実施形態の一部として例示されまたは記述される特徴は、さらに別の実施形態をもたらすために別の実施形態で使用することができる。したがって本発明は、添付される特許請求の範囲およびその均等物に包含されるような修正および変更を含むものとする。本発明のその他の目的、特徴、および態様は、以下の詳細な記述で開示する。当業者なら、本考察が単なる例示的な実施形態の記述にすぎず、例示的な構成に具体化される本発明のより広範な態様を限定するものではないことを理解すべきである。
【0017】
本発明の中空ガラス微小球は、適切な熱処理の後に2つの連続ガラス相に分離する特殊なガラス組成物を使用して調製される。本明細書に示される実施例では、相の一方がシリカに富んでいるのに対し、他方は抽出可能な相である。抽出可能な相は、全ガラス組成物の少なくとも約30重量%の量で存在することが好ましい。しかし、その他の多孔質ガラス組成物を使用することができる。
【0018】
ガラス組成物の抽出可能な相は、ホウケイ酸塩またはアルカリ金属ホウケイ酸塩などのホウ素含有材料を含むことが好ましい。適切なホウケイ酸塩およびアルカリ金属ホウケイ酸塩は、溶出可能なガラスファイバー組成物を対象としかつ参照により本明細書に組み込まれる特許文献6の教示に関連して見出すことができる。
【0019】
抽出可能および非抽出可能なガラス組成物を混合し、融解し、急冷し、破砕して、粒径が約5から50ミクロンである個々のガラス粒子からなる微細なガラス粉末にする。次いで個々のガラス粒子を、気体/酸化剤の炎を使用して再加熱する。様々な水和物、炭酸塩、およびハロゲン化物と一緒のアルカリ硫酸塩など、その選択および使用が当技術分野で周知であるガラス中の潜在的な発泡剤によって、単一の泡が各ガラス粒子内で核形成する温度にまで、このガラスを上昇させる。炎に曝すことによってガラス粒子の温度が高くなるにつれ、ガラス粒子は、表面張力によりこの粒子が球に変化する粘度に到達する。温度が高くなるにつれて、泡の中の圧力は表面張力/粘性力の値を超え、泡が膨脹して中空ガラス微小球が形成される。次いで中空ガラス微小球を、室温まで素早く急冷する。
【0020】
好ましくは、得られる中空ガラス微小球が約0.05gm/ccから約0.5gm/ccの範囲内の密度を有し、直径は、約1から約140ミクロンの間に及んでよい。形成したら、この中空ガラス微小球を、所望の密度に従って中空ガラス微小球が選択され隔離されるように、密度に基づいて分離することができる。さらに、HGMを微小球の直径に従って分離することが可能である。
【0021】
得られる中空ガラス微小球は、ガラスが本質的に均質なガラス壁組成物を有する。中空ガラス微小球は、この中空ガラス微小球と炭素質材料とを混合し、酸素が存在しない状態で所望の温度領域まで加熱することによって、ガラス中ガラス相分離が強化されるように熱処理することができる。中空ガラス微小球の熱処理後、均質なガラスは、2つの連続ガラス相に、即ち一方が抽出可能であり他方がシリカに富むガラス相に分離する。抽出可能な相は、残りのシリカに富む相内に壁面細孔の形成をもたらす強鉱酸を使用して、容易に溶出可能である。ガラスの溶出に適した鉱酸および方法は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献6を参照することによって理解することができる。
【0022】
得られる中空ガラス微小球は、高度のセル壁多孔度を示す。本明細書で使用する「多孔度」という用語は、中空ガラス微小球の内部と外部との間に連通をもたらす一連の通路を直接または間接的に画定する、一連の細孔および同様の開口を意味する。約10Åから約1000Åの平均セル壁多孔度を、この技術を使用して実現することができる。セル壁多孔度は、HGMの形成に使用される特殊なガラス組成物中に配合される抽出可能な成分のパーセンテージと、用いられる熱処理の程度に依存する。抽出プロセスの所要時間および苛酷さも、形成される細孔のサイズおよび密度を含めた得られるセル壁細孔の特性に、いくらか影響を及ぼす可能性がある。
【0023】
図1を参照してわかるように、中空ガラス微小球10を横断する断面図が示されている。微小球10は、外面12および内面14を有するガラス壁を含む。微小球10は、微小球の内部に中空キャビティ16をさらに画定する。この図を参照することにより最も良くわかるように、複数の細孔20が、微小球のガラス壁内に画定されている。図1に示すように、いくつかの細孔20は、中空ガラス微小球の外部と中空ガラス微小球の内部キャビティ16との間に連通をもたらす。中空キャビティ16内には、水素吸収材料30が存在する。水素貯蔵材料をキャビティ16内に配置することに関し、以下にさらに詳細に示す。
【0024】
形成後、多孔質壁中空ガラス微小球に、パラジウムなどの水素吸収剤を充填することができる。HGMの内部にパラジウムを首尾良く導入するために、塩化パラジウムを、圧力を使用して多孔質ガラス壁に強制的に通すことができる。次いで塩化パラジウムの導入後、水素を加圧下で導入して、塩化パラジウムからパラジウム金属に還元する。その後、熱および真空乾燥を使用して、すべての残留する塩酸または水を除去することができる。このプロセスは、最終的には中空ガラス微小球内に包封されるパラジウムの量を増加させるために、数サイクルを通して繰り返すことができる。
【0025】
所望量のパラジウムを中空ガラス微小球内に存在させた後、中空ガラス微小球壁の多孔度を、追加の熱処理によって変化させまたは減少させることができる。あるいは細孔は、テトラエチルオルトシリケート溶液などのコーティング材料40を付着させることによって、図2に示すように、効果的に封止することができる。コーティング材料は、水素を拡散させると同時のその他の気体が排除されるように、配合することができる。
【実施例1】
【0026】
HGMを、以下に示される表1に見られるような、酸化ホウ素およびアルカリを含有するケイ酸塩ガラス組成物から形成した。ガラス組成物の成分を調製し、約600℃の温度で少なくとも10時間熱処理した。10時間の間隔は、スピノーダル分解の既知のプロセスによって、ガラスとHGM壁とを2つの連続ガラス相に分離するのに十分と考えられる。そのように行う場合、2つの相互接続されたガラス相が、HGMの壁内に形成される。第1のガラス相は、高いパーセンテージのシリカからなるのに対し、第2のガラス相は、より高いパーセンテージのアルカリおよびホウ酸塩材料を含有する。アルカリホウ酸塩相は、2〜3N HCL溶液の、加熱した酸溶液(80〜85℃)に対し、より高い溶解度を有する。溶出プロセス中、HGMは、溶液中に沈み始めることが観察されたが、これは、アルカリホウ酸塩相であると考えられる可溶性成分の溶出が、生じたことを示している。
【0027】
【表1】

【0028】
溶出プロセスの後、HGMセル壁は、約10から約1000Åの範囲の小さな相互接続された細孔を多分に含み、それらがHGM壁を完全に貫通すると考えられる。
【0029】
さらに、溶出プロセスの後、HGMは、やはりアルカリホウ酸塩相の選択的除去による細孔の形成を示す、約33%の重量損失を示すことが観察された。さらに、気体比重瓶を使用すると、HGMのHGM密度は約0.35g/cc(非溶出)から溶出HGMの約1.62g/ccの密度に変化する。密度の増加はさらに、アルカリホウ酸塩材料が選択的に除去されて、気体がHGMの内部に進入するための開口が存在することを示している。フューズドシリカの密度は約2.2g/ccであることに留意されたい。抽出後のHGM密度は、フューズドシリカの値に近付くと考えられるが、より低い密度の場合、HGMのわずかなパーセンテージが多孔質ではなく、あるいは乾燥プロセス中にゲル被膜が一部の細孔表面に形成された可能性がありかつ/または加熱酸処理中にアルカリホウ酸塩相のすべてが抽出されたとは限らないことを示している。
【0030】
上記実施例1により作製された多孔質壁HGMを、商用として得られる非多孔質HGMと比較して、全表面積を決定した。気体吸収技法を使用することにより、非多孔質商用サンプルの表面積が約1m2/gであることが実証された。本発明により作製されたHGMの表面積は、29.11m2/gであった。HGMの多孔質壁の広い表面積は、細孔の形成を反映した表面積の著しい増加を示す。HGMが、壁内に存在する孔しか保持しない場合、その表面積には内面および外面しか含まれず、その期待される値は約2m2/gであることに留意されたい。気体の吸収/脱吸収を使用した多孔質HGMの追加の分析は、約553Åの平均孔径を示した。
【0031】
水素吸収に多孔質壁HGMを使用する効力は、真空導入プロセスを使用してパラジウム溶液を多孔質壁HGMに導入することによっても実証された。パラジウムテトラアミン溶液のHGM内部への導入後、パラジウム塩は沈殿し、後に加熱された水素ガスに曝すことによって還元された。
【0032】
ある適用例では、約1000℃の温度に多孔質HGMをさらに加熱することによって、多孔度をなくし、かつ/または温度および処理時間の間隔を制御することによって選択的に低下させることができることに留意されたい。一部の水素貯蔵材料に関しては、水素貯蔵材料がHGM内部に挿入された後に、引き続き多孔度をなくすことが有利と考えられる。水素は、十分な圧力を使用してかつ当技術分野で周知の温度の組合せで、水素貯蔵材料の内部および外部に依然として循環させることができる。しかし、細孔を除去しかつ/または引き続き細孔のサイズを減じることによって、水素貯蔵材料を不活性にする可能性のある気状毒物から水素貯蔵材料を保護する。
【0033】
水素吸収剤を含有して得られた中空ガラス微小球は、水素吸収技術と共に使用する際に数多くの利点をもたらす。例えば、パラジウム金属およびその他の金属水素化物を、水素吸収/脱吸収プロセスで使用する場合、水素貯蔵材料は、より小さい粒子または「微粒子」に破砕する傾向がある。得られる微粒子は、フィルタを詰まらせ、水素分離装置内の濾過床を通過する気体の流れを限定し、かつ/または水素貯蔵装置内の気体の流れを阻止する可能性があり、その結果、水素吸収/脱吸収システムの効力の全体的な損失をもたらす。しかし、中空ガラス微小球内に包封される場合、得られた微粒子は中空ガラス微小球内に含有され、吸収/脱吸収能力で機能し続ける。
【0034】
さらに、水素吸収材料を妨げる可能性のある気状毒物が、HGM内部への進入から物理的に排除されるように、十分小さい孔径を有するHGMを選択することが可能である。その結果、HGMは、水素ガスを中空ガラス微小球に流入および流出させ、その一方でより大きな気状または液体分子の進入を防止する、選択的な膜として機能する。
【0035】
中実な壁面の微小球の内部および外部に水素を強制的に押し遣ることが可能であるが、多孔質壁中空ガラス微小球構造の使用によって、水素ガスは、さらに低い圧力および温度で微小球に進入し、また微小球から出ていくことが可能になる。その結果、ガラス微小球の壁面に水素ガスを通過させるコンジットとして、多孔質壁構造を使用することにより、それほど厳しくない再水素化/脱水素化条件を用いることができる。
【0036】
得られた中空ガラス微小球の孔径が、気状毒物またはその他の材料が進入できるほど十分大きい場合、HGMの外側にバリアコーティングを設けることが可能である。様々なバリアコーティングは、選択的な膜の性質が得られるように、特別な性質に関して選択することができる。そのような1つのコーティング材料は、気状毒物に対するバリアが得られると同時にその内部を水素ガスが通過できるような、十分画定された細孔構造を有するゾルゲル材料である。そのような1つのゾルゲル材料は、同一出願人によるかつ参照により本明細書に組み込まれた特許文献8を参照することにより見出すことができる。
【0037】
内部に水素貯蔵材料を含有する中空ガラス微小球は、水素貯蔵技術分野で追加の利点をもたらす。本発明により使用される中空ガラス微小球は、約1ミクロンから約140ミクロンの間の直径を有することができる。サイズおよび選択可能な粒子密度を考えると、得られた中空ガラス微小球は、流体のような性質を有し、この中空ガラス微小球をより容易な輸送およびバルク貯蔵に適したものにする。例えば、大量の充填済み中空ガラス微小球の輸送は、石油製品および/または天然ガスの補給品の搬送に使用される既存のパイプラインを利用して行うことができる。
【0038】
まとまった体積の水素貯蔵材料は、膨大な量の貯蔵水素ガスを含有することができるが、その輸送は、水素が複数の個別の中空ガラス微小球容器内に貯蔵されているので非常に安全である。その結果、この体積を現在では多数の個別の中空ガラス微小球容器内で流通させるので、同等の体積の水素ガスの貯蔵に伴う危険性は大幅に低下する。個別の中空ガラス微小球では、大量の水素ガスが曝露しないので、爆発および火災に対して高レベルの安全性を提供する。例えば、放出可能な水素を含有するHGMの漏出または放出では、遊離した水素を利用することができないので、爆発または火災の脅威がかなり低下している。炎または高温状態にたとえ放出されたとしても、この中空ガラス微小球の絶縁性は、その最終結果が単一の大量の水素ガス放出とは対照的に、一連の非常に少ない水素ガス放出のようなものである。
【0039】
パラジウムは、中空ガラス微小球の内部に組み込むことができる1種の水素貯蔵材料であるが、様々なその他の水素貯蔵材料も、多孔質壁中空ガラス微小球の内部での使用に適することに留意すべきである。そのような材料には、同一出願人による参照により本明細書に組み込まれる特許文献9に記載されるような、水素化アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムチタン、複合水素化物、および様々な融合またはハイブリッド水素貯蔵材料と、同一出願人が所有する速達郵便EV504784466USにより2004年8月27日に出願された、参照により本明細書に組み込まれている「Catalyzed Borohydrides For Hydrogen Storage」という名称の特許文献10に記載されている様々な触媒ホウ水素化物と、これら水素貯蔵材料の組合せが含まれる。さらに、中空ガラス微小球を利用して、多孔質中空ガラス微小球の中空内部を占有する反応性水素化物またはその他の水素貯蔵材料に「保護環境」を提供することができる。
【0040】
適切なHGMの内部に含めることができる、いくつかの異なる水素貯蔵材料を提供することは、本発明の範囲内である。そのようにすることによって、複数の異なる水素貯蔵媒体を、所与の適用例で利用することが可能になる。例えば、所与の体積の中空ガラス微小球内には、異なる水素放出性を有する微小球の個別集団内に2種以上の異なる水素貯蔵材料が存在してよい。このように、発生した水素ガスの体積は、水素の放出に必要とされる適切な環境条件または刺激によって、制御しまたは調節することができる。
【0041】
さらに、中空ガラス微小球の使用は、使用済み水素貯蔵材料の商業的再充填を大幅に単純化する。例えば、水素貯蔵材料を含有する中空ガラス微小球を、装置への電力供給のために使用する場合、使用済みHGMは、燃料補給操作およびその後の再充填の間に除去することができる。別の再充填または水素吸収プロセスを可能にすることによって、水素貯蔵材料を有するHGMは、水素で電力供給された自動車両などの様々な環境で利用することができる。車両が、水素放出メカニズムの提供しか必要としなくなる程度まで、車両の機構および操作を大幅に単純化することができる。HGM(水素化した水素貯蔵材料を含有する)の新鮮な補給品を用いた燃料補給によって、使用済みHGMは、後続の再水素化に向けて簡単に除去される。
【0042】
中空ガラス微小球の形成は、核形成気体の供給源として役立つ適切な水素貯蔵材料を選択することによって、単純化できることも考えられる。換言すれば、水素貯蔵材料は、加熱されたときに、得られる微小球の発泡剤として使用できる水素またはその他の不活性気体を放出することができる。その結果、加熱したときに核形成剤を発生させる水素貯蔵または前駆体材料の使用が可能になり得る。その結果、水素貯蔵材料を直接取り巻く中空ガラス微小球を形成することが可能になり得る。
【0043】
本発明の好ましい実施形態について、特定の用語、装置、および方法を使用して述べてきたが、そのような記述は単なる例示を目的とする。使用される単語は、限定ではなく説明のための単語である。変更および変形は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、当業者によって行うことができることを理解すべきである。さらに、様々な実施形態の態様は、いずれも全体的にまたは部分的に相互に交換できることを理解すべきである。したがって、添付の請求項の精神または範囲は、内部に含まれる好ましいバージョンの説明に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】微小球の内部に水素貯蔵材料を含有する、中空ガラス多孔質壁微小球の断面図である。
【図2】外部コーティングを有する微小球を示す、図1と同様の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容積を取り囲む多孔質壁を有する中空ガラス微小球と、
パラジウム、アラネート、化学水素化物、およびこれらの組合せからなる群から選択された、前記中空ガラス微小球の前記容積内に位置決めされた水素貯蔵材料と
を含むことを特徴とする水素貯蔵装置。
【請求項2】
前記中空ガラス微小球は、約0.05gm/ccから約0.50gm/ccの間の密度を有することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項3】
前記中空ガラス微小球は、約1.0ミクロンから約140ミクロンに及ぶ直径を有することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項4】
前記多孔質壁は、約10Åから約1000Åの間の平均細孔直径を有する複数の開口を画定することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項5】
前記中空ガラス微小球はさらに、前記微小球の外面にさらに半透性膜を画定する多孔質コーティングを含有することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵装置。
【請求項6】
抽出可能な相を有する中空ガラス微小球を形成するステップと、
前記抽出可能な相を除去し、それによって、中空ガラス微小球の内部と外部との間の連通を可能にする多孔質壁構造を提供するステップと、
前記中空ガラス微小球の内部に、水素貯蔵材料を導入するステップと
を含み、前記水素貯蔵装置が水素を可逆的に放出し貯蔵することができることを特徴とする水素貯蔵装置の作製方法。
【請求項7】
前記微小球の外面に、選択的に透過可能なコーティングを提供する追加のステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
多孔質中空ガラス微小球を形成するステップと、
前記細孔を通して水素貯蔵材料を前記中空ガラス微小球の内部に導入するステップと、
その後、細孔の性質が変化するように前記中空ガラス微小球を処理するステップと
を含むことを特徴とする水素貯蔵装置を提供する方法。
【請求項9】
前記中空ガラス微小球の前記細孔を処理する前記ステップは、半透性コーティングを提供するステップと、ゾルゲルコーティングを提供するステップと、前記中空ガラス微小球を熱処理するステップと、これらの組合せとからなる方法の群から選択された方法を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−513712(P2008−513712A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533586(P2007−533586)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/033677
【国際公開番号】WO2007/011381
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(502072282)ワシントン サバンナ リバー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】