説明

水蒸気の非存在下でのプロパンからアクリル酸の調製方法

本発明は、循環流動床中または流動床中で、構造:Mo1abcSidx (I)[式中、Xはテルルまたはアンチモンであり、Zはニオブまたはタンタルであり、かつここで:aは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;bは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;cは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;dは、0と3.5を含む、0〜3.5であり;そしてxは他の元素に結合した酸素の量であり、その酸化状態に依存する]を有する触媒の存在下でのプロパンの選択的酸化によるアクリル酸の調製方法であって、これは、部分プロパン転化条件下で、かつ反応を供給するのに使用される初期ガス混合物への水蒸気導入無しで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応ガス中に蒸気を導入することなく、プロパンの選択的酸化によりアクリル酸を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第608838号明細書は、混合金属酸化物(その基本成分は、Mo、V、Te、Oであり、少なくとも1つの元素は、Nb、Ta、W、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Sb、Bi、Bo、InおよびCeからなる群から選択され、これらの元素は正確な比率で存在する)を含む触媒の存在下で、同時供給固定床反応槽中で気相触媒性酸化反応によるアルカンからの不飽和カルボン酸の調製を記載する。この特許出願は、反応混合物中の多量の蒸気の存在が、アクリル酸の転化と選択性の観点から有利であることを示す。しかし反応中に生成される副生成物の量についての情報は無く、この形態はアクリル酸の工業的製造において決定的に重要な点である。
【0003】
日本国特開第2000−25627号明細書は、MoVSbNb触媒上で酸化還元モードでのプロパンのアクリル酸への転化を記載する。より高収率のアクリル酸を得るために蒸気の存在が好ましいことを明確に示す。したがって、0.5超の水/プロパンのモル比が望ましい。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0138500号明細書には、複数金属酸化物触媒の存在下で、プロパン、分子酸素、および蒸気を含む少なくとも1種の希釈ガスからなる出発ガス混合物を使用して、プロパンをアクリル酸に部分酸化する方法が記載されている。
【0005】
欧州特許出願公開第1238960号明細書には、プロパンからのアクリル酸の調製方法が記載されており、該調製法は、分子酸素を除いて、プロパン、蒸気、および任意選択的に不活性ガスを含むガス混合物を、構造Mo1aTebNbcSidxを有する固体組成物の上を通過させて、次式の酸化還元反応によってプロパンを酸化する
固体oxidized+プロパン→固体reduced+アクリル酸。
【0006】
国際公開第04/024666号パンフレット中に、アクリル酸の製造方法が記載されており、該方法は、プロパン、分子酸素、蒸気、および適宜不活性ガス、を含むガス混合物を、構造Mo1aTebNbcSidxのテルルベース触媒の上を通過させ、そして出発ガス混合物中のプロパン/分子酸素のモル比が0.5以上である。
【0007】
国際公開第04/024665号パンフレットには、アクリル酸の調製方法が記載されており、該方法は、プロパン、蒸気、および任意選択的に不活性ガスおよび/または分子酸素を含むガス混合物を、構造Mo1aSbbNbcSidxを有するアンチモンベース触媒の上を通過させて、プロパンをアクリル酸に酸化し、そして分子酸素が導入される際に、出発ガス混合物中のプロパン/分子酸素のモル比が、0.5以上である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし先行技術の方法では、触媒の存在するガス混合物中に蒸気を導入することが必須であった。これは、水の存在が触媒の充分な稼動に必要であり、そして良好な選択性を達成するために必要であることを、最新技術が明確に示すためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プロパンの低率転化を含む条件下且つ蒸気の導入を不要にすることを可能にする条件下で、金属酸化物触媒の存在下で、循環流動床または流動床中でプロパンを選択的に酸化してアクリル酸を得ることが、この方法を大きく改良すること見出され、そしてこれが本発明の主題を構成する。
【0010】
これは、水の蒸発のためのエネルギー量、そして次に反応生成物から除去されることになるエネルギーの量が節約される点で、方法の大幅改善であることが見出されたからである。
【0011】
さらに水の存在は、触媒のある成分の昇華を促進し、そして粉状触媒を凝集させ、次に固体を沈殿させて、反応操作を妨害する。従ってこれらの現象が少なくなる。
【0012】
この方法により、アクリル酸とは別に、非転化反応物、反応により生じる蒸気、およびまたすべての反応副生成物、特に水の存在によりその生成が促進される(例えば特に、反応の中間体プロピレンの水和により生成されるプロピオン酸またはアセトン)等の副生成物である排出物ができるだけ濃縮されると、排出物からアクリル酸がより容易に分離されるという事実により改良されることも見出される。従ってこの方法は、ある反応副生成物の生成の減少により改良されることが見出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
従って本発明は、循環流動床中または流動床中で、構造:
Mo1abcSidx (I)
(式中、Xはテルルまたはアンチモンであり、Zはニオブまたはタンタルであり、かつここで
− aは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− bは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− cは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− dは、0と3.5を含む、0〜3.5であり;そして
xは他の元素に結合した酸素の量であり、その酸化状態に依存する)を有する触媒の存在下で、
プロパンの部分転化のための条件下で、かつ反応に供給する初期ガス混合物への蒸気導入無い、プロパンの選択的酸化によってアクリル酸を与える方法からなる。
【0014】
したがって、本発明の目的は、分子酸素の存在下でプロパンからアクリル酸を製造する方法を提供し、これは、プロピオン酸およびアセトン等の好ましくない反応副生成物の生成を制限しながら、アクリル酸の良好な選択性を与えることを可能にする。
【0015】
この目的は、プロパン、酸素、および適宜不活性ガスを含むガス混合物を特定の触媒に通すことにより達成できることが見出された。特に循環流動床中で操作が行われると、ガス混合物の酸素がプロパンに対して化学量論比以下の比率になる条件下で操作が行われ、これは、反応が充分に行われるために、触媒が酸化還元系として作用し、不足している酸素を供給することを可能にする。
【0016】
触媒によるプロパンのアクリル酸への転化は、おそらく同時反応(1)と(2)による酸化により行われる:
従来の触媒反応(1):
CH3-CH2-CH3 + 2O2 → CH2=CH-COOH + 2H2O (1)
酸化還元反応(2):
固体oxidation + CH3-CH2-CH3 → 固体reduced + CH2=CH-COOH (2)
窒素または二酸化炭素であることが可能な導入される不活性ガスの比率は、非常に重要ではなく、広範に変化できる。非転化プロパン、プロピレン、または軽炭化水素等の他のガスが、反応に供給されるガス混合物中に存在してもよい。
【0017】
一般に反応(1)と(2)は、200〜500℃、好ましくは250〜450℃、さらに好ましくは350〜400℃の温度で行われる。
反応副生成物の生成を制限するために、プロパンの部分的転化で操作することが有利である。
反応槽中の圧力は一般に、1.01×104 〜1.01×106 Pa(0.1〜10気圧)、好ましくは5.05×104 〜5.05×105 Pa(0.5〜5気圧)である。
反応槽中の滞留時間は一般に、0.01〜90秒、好ましくは0.1〜30秒である。
【0018】
本発明の特定の態様に従って、使用される反応槽は国際公開99/03809号パンフレットに既に記載されているような循環床反応槽が可能で、ここで反応領域は流動床とライザーの2つの部分、および流動床を含む再生領域からなる。
【0019】
さらに特に、反応領域が流動化セクションI(高速床)とライザーにより形成されるセクション2とからなる循環流動床反応槽[図1]が使用される。供給ガス5は流動床1で導入され、プロパンの酸化は流動床およびライザー2で起きる。
【0020】
特にストリッパーと一連のサイクロンで形成される分離/ストリッピング(ストリッパー)装置3は、還元された固体触媒と反応領域から生じるガス状排出物を分離することを可能にする。ストリッピングガス6は、不活性ガス、好ましくは乾燥窒素もしくは空気、蒸気、または窒素もしくは空気のおよび蒸気の混合物である。製造されるアクリル酸は、ユニット3を離れるガス排出物から回収される。
【0021】
還元された固体は、流動床セクションからなる再生領域4に移送され、ここで、空気、酸素富化空気、または多湿空気からなる混合物7の存在下で再酸化される。好ましくは混合物は、空気からなる。こうして再生された固体は次に、流動セクションIで再循環される。
【0022】
反応槽の圧力は1〜5バールで温度は250〜450℃に維持することが有利である。
反応ガスは、流動床Iとライザー2中のガスのそれぞれの接触時間に相当する合計処理量で、流動床I中に導入される。
【0023】
本発明にしたがって、出発ガス混合物(5)の成分比率は、1/0〜2/0〜10(モル比)、好ましくはプロパン/酸素/不活性ガス(N2)=1/0.05〜2/1〜10で変動してもよい(これらの比率は再循環されるガスを考慮していないことを理解されたい)。
さらに好適な条件下では、これらは1/0.1〜1/1〜5である。
活性固体触媒も、小流動床I中に供給される。
ライザー2を離れると、反応ガスと還元された固体触媒はストリッピング装置3中で分離される。還元された固体触媒は、再生器4に運搬され、ここで好ましくは空気の混合物7下で再酸化される。これは次に、反応領域Iに再循環される。
【0024】
好ましい実施態様に従って、この方法は、循環流動床中および分離/ストリッピング装置および/または再生器中で、蒸気の非存在下で行われる。
【0025】
式(I)の触媒の組成物に加わる種々の金属の酸化物は、この触媒の調製で出発物質として使用可能であるが、出発物質は酸化物に限定されず、国際公開第04/024665号パンフレットおよび第04/024666号パンフレットには他の物質も記載されている。触媒の調製とその再生は、上記出願または下記の例にも記載されている。
触媒は、反応(3):
固体reduced + O2 → 固体oxidized (3)
に従って、空気、酸素、酸素富化空気、もしくは酸素、または酸素を含むガスの存在下で、250〜500℃の温度で、触媒の再酸化に必要な時間加熱することにより再生される。乾燥空気(21%のO2)または多湿空気の使用が有利である。
【0026】
再生ガス混合物の成分の比率は、一般に以下の通りである(モル比):
酸素/不活性ガス(N2)/H2O(蒸気)=1/1〜10/0〜10。
本発明の別の形態では、循環流動床または流動床中で、上記の一般式(I)の触媒および国際公開第03/45886号パンフレットに記載の共触媒の存在下で、反応に供給される初期ガス混合物中に蒸気を導入することなく、上記の方法を使用することもできる。
【実施例】
【0027】
実施例
特に限定されない以下の例は、どのように本発明を実施するかを示す。
以下の例において、転化率、選択性、および収率を次のように規定する:
プロパンの転化率(%)=反応したプロパンのモル数×100/導入されたプロパンのモル数
アクリル酸の選択性(%)=生成したアクリル酸のモル数×100/反応したプロパンのモル数
プロピオン酸の選択性(%)=生成したプロピオン酸のモル数×100/反応したプロパンのモル数
アセトンの選択性(%)=生成したアセトンのモル数×100/反応したプロパンのモル数
【0028】
他の化合物に関する選択性と収率を同様に計算する。
転化率(kg/kg)=1kgのプロパンを転化するのに必要な固体の重量。
【0029】
以下の例では、参照することにより本明細書に組み込まれ、すべての操作の詳細について参照される国際公開第99/09809号パンフレットに記載の技術が使用される。この技術では、反応領域が流体化セクションI(高速床)とライザーにより形成されるセクション2(その直径/高さ比は15.6mm/3mの比である)とからなる循環流動床反応槽[図1]を使用する。供給ガス5を、流動床Iで導入し、プロパンの酸化を流動床とライザー2で起こす。
【0030】
特に、直径100mmのストリッパーと一連のサイクロンから形成することができる分離/ストリッピング(ストリッパー)装置3で、還元された固体触媒と、反応領域から生じるガス排出物とを分離することを可能にする。ストリッピングガス6は不活性ガス、例えば窒素、蒸気、または窒素と蒸気の混合物である。製造されるアクリル酸は、装置3から出るガス排出物から回収する。
【0031】
還元された固体を、直径113mmの流動床セクションからなる再生領域4または再生器に移送し、ここで、空気、酸素富化空気、または多湿空気からなる混合物7の存在下で再酸化する。好ましくは混合物7は乾燥空気からなる。こうして再生された固体を次に、流動セクションIに再循環する。
【0032】
反応槽の圧力を2psig(すなわち、1.09絶対バール)で温度は250〜450℃に維持する。30分〜1時間安定化後、均衡が保たれる。
【0033】
ライザー2から出た反応ガスと還元された固体触媒を、ストリッピング装置3中で分離する。次にガス相をガスクロマトグラフィーで分析し、還元された固体触媒を再生器4に移送し、ここで空気(少なくとも50%)と任意選択的に蒸気の混合物7下で総処理能力700Nl/時間で再酸化する。これを次に反応領域1へ再循環する。
【0034】
装置3中の固体の滞留時間は1〜6分、好ましくは4分であり、装置4ではこれは1〜10分、好ましくは6分である。
【0035】
実施例1および2
以下の実施例1と2はいくつかの系列の試験からなり、その操作条件と結果をそれぞれ表1と2にまとめる。使用された触媒は構造
Mo10.3Sb0.15Nb0.1Si0.93x
を有するアンチモン触媒である。
以下の操作条件は実施例1〜7のすべてに共通である:
Treaction=370℃;(Tregenerator=370℃)
圧力=105 Pa;
装置1の供給能力(5)=600Nl/時間;C38/O2(%体積/%体積)=20/18;
再生(装置4)での総処理能力(7)=700Sl/時間
ストリッパー総処理能力(6)(装置3)=740Nl/時間
固体の循環の処理能力=37kg/時間
【0036】
プロパン1kg当たり700kgのオーダーの転化比の触媒で転化した。このパラメーターは1kgのプロパンを転化するのに必要な触媒の量を反映する。
セクション1の供給ガスはC38/O2/N2/(H2O−比較試験)混合物からなり、その比率は種々の表に示され、窒素は100%にするための残りとして働く。
【0037】
各系列で、触媒が不活性化されなかったことを確認するために、参照試験を行った。
【0038】
実施例1
【表1】

【0039】
この例は、比較試験を用いて、(5)中の水の存在と、反応に供給されるガス流が、水和生成物(アセトンとプロピオン酸)の生成を促進することを示す。
【0040】
実施例2
【表2】

【0041】
この例は、比較試験により、(5)中の水の存在と反応に供給されるガス流が水和生成物(アセトンとプロピオン酸)の生成を促進することを示す。
【0042】
実施例3および4
水を全く供給せずに24時間行った試験後に得られた結果。
【0043】
【表3】

【0044】
性能が経時的に変化しないことがわかる。水なしでの操作後に触媒の活性は低下しない。プロピオン酸の含量は最小である。
【0045】
実施例5
アンチモンを用いる触媒A。流動床(1)の供給物(5)中に酸素がなく、かつ5体積%のプロパン存在下で行った試験:
【0046】
【表4】

【0047】
プロピオン酸とアセトンの含量は最小である。特に高い転化率が観察される。
【0048】
実施例6および7
テルルを有する触媒:Mo10.33Te0.22Nb0.11Si1.11x。この試験は、流動床(1)の供給物(5)中のプロパン/酸素比(体積%)=20/18と装置3中の50%の水供給物を用いて、水の非存在下で、また再生器(装置4)中で行われた試験を含む。
【0049】
【表5】

【0050】
アクリル酸での比較選択性は、試験6と7で水和生成物の生成の減少が見られる。
【0051】
触媒の調製
1.構造Mo10.3Sb0.15Nb0.1Si0.9xを有する触媒Aの調製。
溶液Bの調製
以下をレイネリトリミックス(Rayneri Trimix)ミキサーに導入する:
295gのニオブ酸(HY−340 CBMM、81.5% Nb25
660gのシュウ酸2水和物(プロラボ(Prolabo))
5リットルの水
65℃でニオブ酸(Nb25 水和物)が溶解するのに2時間かかる。シュウ酸とニオブのモル比は3である。溶液を集め、保存し、全体を使用するであろう。
【0052】
溶液Aの調製
3090gの七モリブデン酸アンモニウム(スタルク(Starck))
615gのメタバナジウム酸アンモニウム(ジーエフイー(GfE))
385gの酸化アンチモン(Sb23、カンパイン(Campine))
9750gの脱イオン水
温度の安定後に、溶液を99℃で3時間攪拌しながら加熱する。紺青色の不透明な混合物を得る。
348gの30%過酸化水素溶液を加えて、橙色の清澄な溶液を得る。
【0053】
コロイドシリカの添加
40重量%のSiO2 を含む2455gのルドックス(Ludox)コロイドシリカ(グレース(Grace)、AS−40)を、清澄なまま維持され混合物の外観を変えることないように溶液Aに加える。
【0054】
懸濁液の生成
シュウ酸とニオブ酸の溶液Bを溶液A/コロイドシリカ混合物中に注ぐ。懸濁液中に沈殿が生成して混合物は曇り、色は橙黄色になる。先の粉砕操作により発生する前駆体の細粉(1370g)をこの段階で溶液に加える。さらに1時間攪拌後、加熱を止める。次に懸濁液を回収し、微粉にする。d50(懸濁液中の平均直径、ホリバ(Horiba)LA300のレーザー粒子分粒により測定された)は、微粉化により18μmから0.2μmに変化する。
【0055】
微粉化
微粉化はネッチュ(Netzsch)のラブスター(Labstar)装置で以下の操作条件下で行う:
ミル速度:3500回転/分
供給ポンプ指示器:75回転/分
生成物の出口温度は55℃に達する。
微粉化懸濁液を直ちに粉砕する(赤外線ドライヤーで測定した混合物の乾燥物質含量、33重量%)。
【0056】
粉砕
微粉化後直ちに粉砕操作を行う。ニロマイナーモバイルハイテク(Niro Minor Mobile High−Tech)粉砕器を使用する。乾燥チャンバーは、蒸気が通過する2m高くなったジャケットを有する。乾燥ガスは窒素である。スプレーノズルは、超音波発生器(ソデバ(Sodeva)、超音波周波数:20kHz)から生じる振動により液滴を発生させる原理に基づく。供給タンクの攪拌を続け、懸濁液をサーモスタットで制御した浴を使用して60℃に前加熱する。操作条件は以下の通りである:
T℃入り口:210℃
T℃出口:105℃
供給能力:平均5.5kg/時間
窒素供給能力:80m3 /時間
【0057】
粒子のサイズ分布は、80℃のオーブンで一晩乾燥後レーザー粒子分粒により分析される。次に固体をふるいにかけて、50μm未満および160μm超の直径の粒子をできるだけ除去する。
【0058】
加熱処理
加熱処理は回転オーブン(直径200mm、シリンダー長270mm、作業容量2.5リットル)を使用して行う。一端を閉じる。パイプを使用してガスをできるだけシリンダーの中まで導入する。
3319gの固体をまず、310℃[300〜310]で900リットル/時間[100〜1200]の空気で4時間処理し、次に600℃で窒素(200リットル/時間)で2時間処理する。温度勾配は固体で平均4.5℃/分である。窒素供給システムに連結した酸素濃度計により、ガスの酸素含量を測定する:典型的には1〜2ppmである。オーブンの回転速度は15回転/分である。
2630gを回収する。50〜160μmの画分のみを保持するために最終ふるい分けを行う:2261g。
触媒Aは、類似の調製物から得られる6つのバッチからなる。
【0059】
触媒Aの性質
触媒Aの粒子分粒−ホリバ(Horiba)LA300のレーザー粒子分粒により測定される
D50=68μm(粒子の平均直径)
>160μm=2重量%(160ミクロン超の粒子)
<50μm=10重量%(50ミクロン未満の粒子)
バルク密度(ISO3923/1基準に記載された方法により測定される)=1.45g/cm3
球:フェレ(Feret’s)直径:1.1
2.式Mo10.33Te0.22Nb0.11Si1.11xを有する触媒Bの調製
【0060】
溶液Bの調製
以下をレイネリトリミックス(Rayneri Trimix)ミキサーに導入する:
295gのニオブ酸(HY−340 CBMM、81.5% Nb25
660gのシュウ酸二水和物(プロラボ(Prolabo))
5リットルの水
65℃でニオブ酸(Nb25 水和物)が溶解するのに2時間かかる。シュウ酸とニオブのモル比は3である。溶液を集め、保存し、全体を使用するであろう。
【0061】
溶液Aの調製
2819gの七モリブデン酸アンモニウム(スタルク(Starck))
616gのメタバナジウム酸アンモニウム(ジーエフイー(GfE))
802gのテルル酸(H6TeO6、フルカ(Fluka))
4061gの脱イオン水[調製による水の量の変動は1〜3倍;ここでは4リットルが最少量である]
溶解が完了し清澄な橙色〜赤色の溶液が得られるまで、溶液を90〜95℃で1時間攪拌して加熱する。
【0062】
コロイドシリカの添加
40重量%のSiO2 を含む2655gのルドックス(Ludox)コロイドシリカ(グレース(Grace)、AS−40)を、清澄なまま維持され混合物の外観を変えることないように溶液Aに加える。
【0063】
懸濁液の生成
シュウ酸とニオブ酸の溶液Bを溶液A/コロイドシリカ混合物中に注ぐ。懸濁液中に沈殿が生成して混合物は曇り、色は橙黄色になる。さらに0.5時間攪拌後、加熱を止める。次に懸濁液を回収し、直ちに粉砕する(赤外線ドライヤーを使用して測定される混合物の乾燥物質含量、36重量%)。
【0064】
粉砕
懸濁液の調製後直ちに粉砕操作を行う。好ましくは内部を改造したニロマイナーモバイルハイテク(Niro Minor Mobile High−Tech)粉砕器を使用する。乾燥ガスは窒素である。2m高くなった乾燥チャンバーは、蒸気が通過するジャケットを有する。スプレーノズルは、超音波発生器(ソデバ(Sodeva)、超音波周波数:20kHz)から生じる振動により液滴を発生させる原理に基づく。供給タンクの攪拌を続け、懸濁液をサーモスタット制御した浴を使用して60℃に前加熱する。従来の操作条件は以下の通りである:
T℃入り口:209〜210℃
T℃出口:105〜110℃
供給能力:平均5kg/時間
窒素供給能力:80m3 /時間
粉砕器の蒸発能力は3kg/時間の水である。
回収された固体を次に、80℃の通風オーブン中でさらに一晩乾燥する。次に固体をふるいにかけて、50μm未満および160μm超の直径の粒子をできるだけ除去する。
【0065】
加熱処理
加熱処理は回転オーブン(直径200mm、シリンダー長270mm、作業容量2.5リットル)を使用して行う。一端を閉じる。パイプを使用してガスをできるだけシリンダーの中まで導入する。同様に処理した種々のバッチを一緒にする(空気処理能力150リットル/時間(100および400リットル/時間)、前焼成温度300℃、窒素処理能力150または200リットル/時間、焼成温度600℃、温度勾配約3.5〜4.5℃/分)。
3.805gの固体を処理後2913gの焼成固体を取り出す。50〜160μm画分のみを得るために最後のふるい分けが必要である。
この調製を数回繰り返して10kgの触媒を得て、これを使用前にホモジナイズする。
【0066】
触媒Bの性質
最終粒子分布(充填前にパイロットプラントチームが再ふるい分けを行う):
D50(粒子の平均直径、ホリバ(Horiba)LA300を使用して測定される)=71μm
<50μm(50ミクロンより小さい粒子−細粒)=15重量%
>160μm(160ミクロンより大きい粒子)=1重量%
バルク密度(ISO3923/1基準に記載された方法により測定される)=1.40g/cm3
球:フェレ(Feret’s)直径:1.3
【図面の簡単な説明】
【0067】
(原文記載なし)
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流動床中または流動床中で、構造:
Mo1abcSidx (I)
(式中、Xはテルルまたはアンチモンであり、Zはニオブまたはタンタルであり、かつここで
− aは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− bは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− cは、0.006と1を含む、0.006〜1であり;
− dは、0と3.5を含む、0〜3.5であり;そして
xは他の元素に結合した酸素の量であり、その酸化状態に依存する)を有する触媒の存在下で、
プロパンの部分転化のための条件下で、かつ該反応に供給される初期ガス混合物中への蒸気導入の無い、プロパンの選択的酸化によるアクリル酸の調製方法。
【請求項2】
該初期ガス混合物が、プロパン/酸素/不活性ガス混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該反応に供給される該ガス混合物が、再循環ガスも含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該触媒が、(Xがアンチモンである)請求項1で規定された式(I)に相当することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該触媒が、(Xがテルルである)請求項1で規定された式(I)に相当することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該触媒が、(Zがモリブデンである)請求項1で規定された式(I)に相当することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該触媒が、(Zがタンタルである)請求項1で規定された式(I)に相当することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該プロパンの選択的酸化が、循環流動床中で行われることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該方法が、循環流動床中で且つ分離/ストリッピングユニット中および/または再生器中で、蒸気の非存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該プロパンの選択的酸化が、共触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−526718(P2008−526718A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548861(P2007−548861)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003168
【国際公開番号】WO2006/072682
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】