説明

水質改質システム

【課題】 復水利用の水質改質システムにおける腐食を防止することである。。
【解決手段】 非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する濾過処理部13と、溶存気体を除去する第一脱気部14と、前記濾過処理部13にて改質されるとともに前記第一脱気部14にて脱気処理された改質水を貯留する改質水貯留タンク5とをボイラ2への給水ライン3に設けた水質改質システムであって、ボイラ2の復水を脱気処理する第二脱気部23を備え、前記第二脱気部23で脱気処理された復水を前記改質水貯留部5へ供給し、改質水と復水とが混合された給水を前記ボイラ2へ供給することを特徴とする。また、前記第一脱気部14を膜式脱気装置とし、前記第二脱気部23を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラへ供給するための給水の水質を改質するとともに、前記給水を脱気処理する水質改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人の発明者等は、長年の研究の結果から、給水中の腐食促進成分を捕捉し、かつ給水中の腐食抑制成分を残す濾過部材(液体分離膜(NF膜))を用いて濾過処理を行うとともに、給水中の溶存気体の除去を行える水質改質システムを提案した(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ボイラにて生成した蒸気を間接的に使用する場合、前記負荷機器で使用した蒸気の凝縮水を復水として回収し、新たな給水と混合した給水をボイラへ供給することが一般的に行われる。
【0004】
ボイラのユーザーによっては、復水中に多量の酸素が含まれている場合がある。こうした場合、復水が脱気処理した改質水と混合されるので、給水中に多量の酸素が含まれることになる。その結果、横引き施工された前記蒸気配管や前記復水配管の下部などで、溶存酸素によりこれらの配管と復水との接触面側から厚さ方向の反対側へ向かう孔状の腐食,すなわち配管の肉厚方向に発生する孔食を引き起こす。
【0005】
【特許文献1】特開2005−262114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、復水利用の水質改質システムにおける腐食を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は前記課題を解決するためになされたものであって、請求項1記載の発明は、非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、溶存気体を除去する第一脱気部と、前記改質処理部にて改質されるとともに前記第一脱気部にて脱気処理された改質水を貯留する改質水貯留部とをボイラへの給水ラインに設けた水質改質システムであって、前記ボイラで発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部を備え、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記改質水貯留部へ供給し、改質水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記給水ラインの給水は、前記改質処理部にて改質され、前記第一脱気部にて脱気処理される。一方、復水は、前記第二脱気部にて脱気処理される。こうして、溶存酸素による腐食を防止可能な腹水を利用した水質改質システムを提供できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記第一脱気部を膜式脱気装置とし、前記第二脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置としたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記第一脱気部として、膜式脱気装置を用いるので、脱気能力を維持するために過剰運転を行う必
要がなく、消費電力を小さくできる。また、第二脱気部として、真空式脱気装または窒素置換式脱気装置を用いているので、復水が高温,かつ配管などからの溶出物を含む場合でも、確実に脱気処理を行うことができるという効果を奏する。
【0011】
請求項3記載の発明は、非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、前記改質処理部にて改質処理された改質水を貯留する改質水貯留部とをボイラの給水ラインに設けた水質改質システムであって、前記ボイラで発生させた蒸気の復水を前記改質水貯留部にて貯留するとともに、前記改質水貯留部内の改質水と復水とが混合された給水を脱気する脱気部を備え、この脱気部で脱気処理された給水を前記ボイラへ供給することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記給水ラインの水は、前記改質処理部にて腐食促進成分が捕捉されるとともに、腐食抑制成分が透過して改質される。そして、改質された給水は、前記改質水貯留部に復水とともに貯留される。前記改質水貯留部にて混合された改質水と復水とは、前記脱気部にて脱気処理される。こうして、溶存酸素による腐食を防止可能な腹水を利用した水質改質システムを提供できる。また、請求項3の発明によれば、改質水用の脱気部と復水用の脱気部とを一つにしているので、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項3において、前記脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置としたことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明による効果に加えて、前記第二脱気部として、真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置を用いているので、復水が高温,かつ配管などからの溶出物を含む場合でも、確実に脱気処理を行うことができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、復水利用に起因する腐食を防止可能な水質改質システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施の形態1,2を説明する。この出願において、「脱気」とは、水中の溶存気体を除去する場合だけでなく、水中の溶存気体を他の気体と置換する場合,たとえば水中の溶存酸素や溶存炭酸ガスを窒素ガスなどの不活性ガスと置換する場合も含む用語として用いる。
【0017】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1は、ボイラへ供給するための前記給水の水質を改質するとともに、給水を脱気処理する水質改質システムであって、前記給水を流す給水ラインに接続され、非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、この改質処理部の上流側に接続され、前記給水を前記改質処理部に対して供給するポンプと、前記改質処理部の下流側に接続され、前記改質処理部を通過した透過水に含まれる溶存気体を除去する第一脱気部と、この第一脱気部にて脱気処理された改質水を貯留する改質水貯留部と、前記ボイラで発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部とを備え、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記改質水貯留部へ供給し、改質水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする水質改質システムである。
【0018】
この発明の実施の形態1においては、前記改質処理部へ供給された前記給水ラインの給水は、その中に含まれる腐食促進成分が捕捉されるとともに、含まれる腐食抑制成分が透過して改質される。そして、改質処理部を透過した腐食抑制成分を含む給水は、前記第一脱気部へ供給され、そこで溶存気体が除去される。これにより、腐食促進成分と溶存気体とを除去し、かつ腐食抑制成分を含む給水が生成される。一方、回収された復水は、前記第二脱気部へ供給され、そこで脱気処理が行われる。こうして、復水中に多量の溶存酸素が含まれる場合でも、前記改質処理部による給水の改質作用と前記第一脱気部による脱気処理作用とをそのまま活かしつつ、復水中の溶存酸素による腐食を防止できる。
【0019】
ここで、この実施の形態1の構成要素について説明する。前記ボイラは、特定の型式や構造に限定されるものではないが、蒸気を生成するための伝熱管が、非不動態化金属を用いて形成されている。非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属を言い、通常は、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケル、及びジルコニウム等を除く金属である。具体的には、炭素鋼、鋳鉄、銅、及び銅合金等である。尚、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。従って、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅及び銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難い金属と考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。
【0020】
前記改質処理部は、前記給水ラインの給水中に含まれる腐食促進成分を捕捉するとともに、給水中に含まれる腐食抑制成分を透過する機能を有するものであり、好ましくは、濾過膜を用いた濾過処理部とすることができる。前記濾過膜は、好ましくは、ナノ濾過膜とするが、RO膜とすることもできる。前記改質処理部は、イオン交換膜を用いたものでああって、前記給水ラインの給水中に含まれる腐食促進成分を捕捉するとともに、給水中に含まれる腐食抑制成分を透過する機能を有する電気透析装置とすることができる。
【0021】
前記第一脱気部は、前記改質処理部を透過した改質水中の溶存酸素を脱気するもので、好ましくは、膜式脱気装置とする。この膜式脱気装置は、中空糸状の高分子膜を使用したものとすることができる。この高分子膜の熱劣化や閉塞の問題から、この膜式脱気装置は、処理水が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合、使用することができないが、常温,かつ清浄な補給水の脱気処理として好適である。さらに、前記第一脱気部は、好ましくは、補給水が必要なときのみ作動するように制御される。こうすることにより、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0022】
前記第二脱気部は、復水中の溶存酸素を脱気するもので、好ましくは、真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置とする。前記真空式脱気装置は、処理水中の溶存酸素を低減するために、処理水を処理槽内へノズルを介して散布し、この処理槽内を減圧することによって脱気処理を行うものである。具体的には、特開平8−108005号公報に記載の脱気装置とすることができる。
【0023】
また、前記窒素置換式脱気装置は、処理水を処理槽内へノズルを介して散布し、水滴と窒素ガスとを接触させることによって脱気処理(正確には、脱酸素や脱炭酸処理)を行うものである。具体的には、特開2000−176436号公報に記載の脱気装置とすることができる。さらに、前記第二脱気部は、好ましくは、復水が回収されているときのみ作動するように制御される。こうすることにより、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0024】
前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、処理水が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合でも、熱劣化や閉塞の問題を回避でき、取扱い可能な処理水の性状が幅広い。このため、復水と補給水とを混合した処理水が、高温,かつ前記蒸気配管や前記復水配管などからの溶出物を含む場合の脱気装置として好適である。
【0025】
しかしながら、前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、通常、前記ボイラにおける給水の要求量と関係なく、最大処理量を維持するように運転されている。たとえば、給水の要求量が少ない場合、単純に処理量を低下させると、前記ノズルから散布される給水の水滴が大きくなる。この場合、前記処理槽内における水滴の表面積の合計が少なくなるため、液相部と気相部との接触率が低下し、脱気能力が大幅に低下する。この結果、給水の溶存酸素濃度や溶存炭酸ガス濃度を所望の値まで低減できなくなる。
【0026】
そこで、前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、前記処理槽内へ給水を供給する加圧ポンプおよび前記処理槽内から給水を取り出す送水ポンプを常時一定の回転数で駆動させ、前記処理槽内へ供給する給水の量と、前記処理槽内から取り出す給水の量とが、それぞれ最大処理量と一致するように運転されている。そして、前記ボイラにおける給水の要求量が少ない場合、最大処理量から要求量を差し引いた過剰分の給水を前記処理槽の上流側に設けたタンクへ還流させるようにしている。したがって、前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、脱気能力を維持するための過剰運転により消費電力が大きく、ランニングコストの増大を招きやすい。
【0027】
前記改質水貯留部は、前記改質され、前記第一脱気部にて脱気された給水と前記第二脱気部にて脱気された復水とを混合して貯留し、混合水は、給水として前記ボイラへ供給される。この改質水貯留部は、外気からの酸素の再溶存を防止する手段が施されたタンクが採用される。
【0028】
前記第一脱気部を膜式脱気装置とし、前記第二脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置とした実施の形態1によれば、補給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うことができるとともに、脱気処理に係る省電力を実現することができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなく,あるいは必要最少量の水処理剤の使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。
【0029】
(実施の形態2)
この発明の実施の形態2は、ボイラへ供給するための給水の水質を改質するとともに、前記給水を脱気処理する水質改質システムであって、前記給水を流す給水ラインに接続され、非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、該改質処理部の上流側に接続され、前記給水を前記改質処理部に対して供給するポンプと、前記改質処理部にて改質処理された改質水および前記ボイラで発生させた蒸気の復水を貯留する改質水貯留部と、この改質水貯留部内の改質水と復水とが混合された給水を脱気する脱気部とを備え、この脱気部で脱気処理された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする水質改質システムである。
【0030】
この発明の実施の形態2においては、前記実施の形態1と同様に、前記改質処理部へ供給された前記給水ラインの給水は、その中に含まれる腐食促進成分が捕捉されるとともに、給水中に含まれる腐食抑制成分が透過して改質される。そして、改質処理部を透過した腐食抑制成分を含む給水は、前記改質水貯留部へ供給される。一方、復水は、前記改質水貯留部へ供給される。そして、前記改質水貯留部にて貯留され、混合された改質水と復水とは、共通の前記脱気部にて脱気処理が行われ、前記ボイラへ供給される。こうして、復
水中に多量の溶存酸素が含まれる場合でも、前記改質処理部による給水の改質を活かしつつ、改質水および復水中の溶存酸素による腐食を防止できる。
【0031】
この実施の形態2において、前記実施の形態1と異なるのは、前記実施の形態1のように改質水用の脱気部と復水用の脱気部とを別に設けることなく、改質水と復水とを混合して、一つの脱気部にて脱気処理を行うように構成した点である。この実施の形態2において、前記実施の形態1と共通部分は、同じ名称を用いて説明を省略する。
【0032】
前記脱気部としては、復水により混合水が高温となったり、復水中に懸濁物質を多く含む場合が想定されるので、好ましくは、前記真空式脱気装置または前記窒素置換式脱気装置とする。
【0033】
この実施の形態2によれば、前記脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置としているので、給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うことができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなく,あるいは必要最少量の水処理剤の使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。また、改質水用の脱気部と復水用の脱気部とを共用しているので、システム構成の簡素化を実現できる。
【0034】
この発明は、前記実施の形態1および前記実施の形態2に限定されるものではなく、たとえば前記実施の形態1において、第一脱気部が真空式脱気装置などの機械式脱気装置の場合には、前記改質処理部と前記第一脱気部との上流側、下流側の順序を入れ替えることができる。
【実施例1】
【0035】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1はこの本発明の水質改質システムの実施例1の概略構成図である。
【0036】
図1において、引用符号1で示される実施例1の水質改質システムは、ボイラ2に供給する給水の水質を改質するとともに、回収した復水を利用するためのシステムであって、前記ボイラ2へ給水を供給する給水ライン3と、この給水ライン3に接続される各種給水用装置4と、前記給水ライン3に接続されるとともに前記ボイラ2へ供給する給水を貯留する改質水貯留タンク5と、前記ボイラ2で発生させた蒸気の復水が流通する復水ライン6と、この復水ライン(復水回収路)6に接続される各種復水用装置7とを備えて構成されている。
【0037】
前記各種給水用装置4について説明する。この各種給水用装置4は、特に限定しないが、活性炭濾過装置8と、軟水装置9と、水質改質装置10とを備えて構成されている。前記水質改質装置10の上流側には、プレフィルタ11が設けられている。
【0038】
前記水質改質装置10は、前記給水ライン3の上流側から下流側へとこの順に接続される、第一ポンプ12と、改質処理部としての濾過処理部13と、第一脱気部14とを含んで構成されている。
【0039】
前記濾過処理部13は、濾過部材を備えており、具体的には、前記特許文献1に記載のナノ濾過膜(NF膜、NF:Nanofiltration)を備えて構成されている。
【0040】
前記濾過処理部13の一端には、前記第一ポンプ12から送り出された給水が流入するようになっている。流入した給水は、前記濾過処理部13の内部において、ナノ濾過膜により、腐食促進成分が捕捉されるとともに腐食抑制成分が透過されるようになっている。
前記濾過処理部13の他端からは、透過水と濃縮水とが流出するようになっている。その透過水は、前記給水ライン3を流れて前記改質水貯留タンク5に貯留されるようになっている。一方、濃縮水は、その一部が排水ライン15側へ流れるとともに、残りが循環水ライン16を流れて前記第一ポンプ12の上流側に供給されるようになっている。
【0041】
ここで、前記腐食促進成分と前記腐食抑制成分とについて説明する。先ず、腐食促進成分とは、前記ボイラ2の各伝熱管(図示省略)の腐食が発生し易い部位、特に、内側に水分(ここでは缶水)が付着し、かつ外側から加熱される各伝熱管(図示省略)の内面に作用してその腐食を促進するものを言い、通常、硫酸イオン(SO2−)、塩化物イオン(Cl)、およびその他の成分を含んでいる。ちなみに、腐食促進成分として重要なものは、硫酸イオン、塩化物イオンの両者である。次に、腐食を抑制する成分である腐食抑制成分とは、前記ボイラの前記各伝熱管(図示省略)の腐食が発生し易い部位、特に、各伝熱管(図示省略)の内面に作用し、そこに生じる腐食を抑制可能なものを言い、通常、シリカ(すなわち、二酸化ケイ素(SiO))を含んでいる。
【0042】
前記第一ポンプ12は、前記プレフィル11の下流側の給水ライン3を流れる、ゴミ等が除去された給水を前記濾過処理部13へ供給するためのものであって、その回転数は、前記第一ポンプ12に接続されるインバータ(図示省略)から出力される出力周波数に応じて可変するように構成されている。
【0043】
前記第一脱気部14は、給水に含まれる溶存気体を除去する膜式脱気装置である。この第一脱気部14は、気体濾過膜を複数備えた筒状の部材となる周知の脱気モジュール17と、この脱気モジュール17から真空排気する真空ライン18と、この真空ライン18に設けた水封式真空ポンプ19および前記脱気モジュール17内方向への流れを阻止する第一逆止弁20とを備えて構成されている。
【0044】
前記脱気モジュール17に流入した透過水は、その内部において、水封式真空ポンプ19の作用により脱気処理され、前記脱気モジュール17から脱気処理水として流出する。その脱処理水は、前記改質水貯留タンク5へ供給されて、貯留される。
【0045】
前記活性炭濾過装置8は、給水中に溶存する次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去するための装置として構成されている。この活性炭濾過装置8は、前記軟水装置9のイオン交換能力の早期劣化を防止するとともに前記第一脱気部14の濾過能力の早期劣化を防止し、給水の処理効率の向上、安定化等を図るものである。
【0046】
前記軟水装置9は、前記残留塩素が除去された給水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分をイオン交換樹脂(図示省略)により除去する装置として構成されている。前記プレフィルタ11は、給水中のゴミ等を除去するためのものである。
【0047】
つぎに、前記各種復水用装置7について説明する。この各種復水用装置7は、特に限定しないが、それぞれ前記復水ライン6に接続した復水貯留タンク21と、第二ポンプ22と、真空式脱気装置からなる第二脱気部23と、第三ポンプ24とを備えて構成されている。前記復水ライン6は、一端が蒸気使用機器(負荷装置)と接続され、他端が前記改質水貯留タンク5と接続される。
【0048】
前記第二脱気部23は、処理槽25の上部にノズル26が設けられた真空式脱気装置であり、前記ノズル26は、前記復水ライン6により前記復水貯留タンク21と接続されている。また、前記処理槽25の上部には、この処理槽25内を真空吸引して排気するための排気ライン27が接続されている。この排気ライン27には、第二真空ポンプ28,前記処理槽25内方向の流れを阻止する第二逆止弁29が設けられている。すなわち、前記
復水ライン6を介して回収される復水を前記ノズル26を介して前記処理槽25内へ散布し、この貯留槽25内を減圧することにより脱気処理するように構成されている。
【0049】
前記処理槽25の底部は、前記改質水貯留タンク5の底部と前記第三ポンプ24を設けた前記復水ライン6で接続されている。すなわち、前記処理槽25内で脱気処理された復水を前記復水ライン6を介して前記改質水貯留部5へ供給し、この改質水貯留タンク5内に貯留された改質水と混合して給水を生成するように構成されている。
【0050】
以下、前記実施例1に係る水質改質システム1の作用について説明する。前記給水ライン3を流れる給水は、図示しない被処理水タンクから所定の吐出圧を有する給水ポンプ(図示省略)により所定の圧力で流出する。そして、前記被処理水タンクから流出した給水は、先ず、前記活性炭濾過装置8を通過し、残留塩素が除去された状態の給水となる。つぎに、その給水は、前記軟水装置9を通過して軟水となる。
【0051】
続いて、その軟水である給水は、前記水質改質装置10において濾過処理と脱気処理がなされて、前記ボイラ2へ供給可能な給水となる。具体的には、軟水である給水が前記濾過処理部13において、ナノ濾過膜を通過する際に、硫酸イオン、塩化物イオン等の腐食促進成分がナノ濾過膜により捕捉される。すなわち、腐食促進成分が軟水から除去される。一方、軟水に含まれるシリカ、すなわち腐食抑制成分は、軟水と共に前記ナノ濾過膜を除去されずに透過する。
【0052】
濾過処理後の腐食抑制成分を含む軟水となる給水は、前記第一脱気部14にて脱気処理される。前記第一脱気部14においては、前記第一真空ポンプ19の作動により、改質された給水を脱気処理し、前記ボイラ2へ供給可能な給水として前記改質水貯留タンク5に貯留する。
【0053】
また、前記ボイラ2の燃焼中には、スチームトラップ(図示省略)の作動により、前記復水ライン6を介して復水が回収される。この復水は、蒸気圧力により加圧され、前記ノズル26を介して前記処理槽25内へ散布される。そして、前記第二真空ポンプ28を作動させることによって、前記処理槽25内を減圧し、復水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスを除去する。復水から除去された溶存酸素や溶存炭酸ガスは、前記排気ライン27を介して系外へ排気される。脱気処理された復水は、前記処理槽25内の下部へ貯留される。この復水は、前記第三ポンプ21を作動させることにより、前記処理槽25内から取り出され、前記復水ライン6を介して前記改質水貯留タンク5へ供給される。
【0054】
前記改質水貯留タンク5に貯留された給水は、前記ボイラ2と前記改質水貯留タンク5との間に設けた第五ポンプ(図示省略)を介して前記ボイラ2へ供給され、下部ヘッダ(図示省略)内において缶水として貯留される。貯留された缶水は、加熱装置(図示省略)により加熱されながら各伝熱管(図示省略)内を上昇し、徐々に蒸気になる。そして、各伝熱管内において生成された蒸気は、上部ヘッダ(図示省略)において集められ、蒸気供給路(図示省略)から負荷装置(図示省略)へと供給される。
【0055】
以上説明した実施例1によれば、復水中に多量の溶存酸素が含まれる場合でも、前記濾過処理部13による給水の改質作用と前記第一脱気部14による脱気処理作用とを活かしつつ、復水中の溶存酸素による腐食を防止できる。
【実施例2】
【0056】
つぎに、この発明実施例2を図面を参照しながら説明する。図2は同実施例2の概略構成図である。この実施例2は、前記ボイラ2へ供給するための給水の水質を改質するとともに、給水を脱気処理する水質改質システム1である。
【0057】
この水質改質システム1は、前記給水を流す給水ライン3に接続され、非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する濾過処理部13と、この濾過処理部13の上流側に接続され、前記給水を前記濾過処理部13に対して供給するポンプ12と、前記濾過処理部13にて改質処理された改質水および前記ボイラ2で発生させた蒸気の復水を貯留する改質水貯留タンク5と、この改質水貯留タンク5内の改質水と復水とが混合された給水を脱気する真空式脱気装置からなる第三脱気部31とを備え、この第三脱気部31で脱気処理された給水を前記ボイラ2へ供給するように構成している。
【0058】
この実施例2において、前記実施例1と異なるのは、改質水用の脱気部と復水用の脱気部とを別に設けることなく、改質水と復水とを混合して一つの脱気部23にて脱気処理を行うように構成した点である。この実施例2において、前記実施例1と共通部分は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
図2において、前記水質改質装置10内には脱気部を設けておらず、前記濾過処理部13は、前記給水ライン3を介して直接、前記改質水貯留タンク5と接続されている。前記改質水貯留タンク5の底部は、脱気処理ライン30を介して前記第三脱気部31のノズル26と接続され、前記処理槽25の底部は、前記第四ポンプ32を介して前記改質水貯留タンク25底部と前記ボイラ2とに接続されている。すなわち、前記改質水貯留タンク5と、前記第三脱気部31と前記第四ポンプ32と前記脱気処理ライン30とで、処理水が循環しつつ、脱気する脱気用循環路を構成している。
【0060】
そして、前記ボイラ2が給水を要求するとき,すなわち前記第三脱気部31にて脱気された脱気水が流れ、前記ボイラ2が給水を要求しないとき,すなわち前記第三脱気部31にて脱気された脱気水が前記ボイラ2に流れないときは、その脱気水は前記改質水貯留タンク5へ戻るように構成されている。
【0061】
この実施例2においては、前記実施例1と同様に、前記濾過処理部13へ供給された前記給水ライン3の給水は、その中に含まれる腐食促進成分が捕捉されるとともに、給水中に含まれる腐食抑制成分が透過して改質される。そして、前記濾過処理部13を透過した腐食抑制成分を含む給水は、前記改質水貯留タンク5へ供給される。
【0062】
一方、復水は、前記改質水貯留タンク5へ供給され、前記改質水とともに貯留される。そして、前第三脱気部31の真空ポンプ28と前記第四給水ポンプ32とを作動させると前記改質水貯留タンク5内の給水が前記ノズル26から噴出され、処前記理槽25内にて脱気される。そして、前記ボイラ2からの給水要求がない場合、前記改質水貯留タンク5へ戻る。前記ボイラ2からの給水要求が有る場合は、脱気処理された給水はその全部または一部が前記改質水貯留タンク5に戻ることなく、前記ボイラ2へ供給される。こうして、復水中に多量の溶存酸素が含まれる場合でも、前記濾過処理部13による給水の改質を活かしつつ、改質水および復水中の溶存酸素による腐食を防止できる。
【0063】
前記実施例2によれば、給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うことができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなく,あるいは必要最少量の水処理剤の使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。また、改質水用の脱気部と復水用の脱気部とを前記第三脱気部31により共用しているので、システム構成の簡素化を実現できる。
【0064】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の水質改質システムの実施例1の概略構成図である。
【図2】この発明の水質改質システムの実施例2の概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1 水質改質システム
2 熱機器
3 給水ライン
4 各種給水用装置
5 改質給水貯留タンク
6 復水ライン
10 水質改質装置
13 濾過処理部(改質処理部)
14 第一脱気部
23 第二脱気部
31 第三脱気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、溶存気体を除去する第一脱気部と、前記改質処理部にて改質されるとともに前記第一脱気部にて脱気処理された改質水を貯留する改質水貯留部とをボイラへの給水ラインに設けた水質改質システムであって、
前記ボイラで発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部を備え、
前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記改質水貯留部へ供給し、
改質水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする水質改質システム。
【請求項2】
前記第一脱気部を膜式脱気装置とし、前記第二脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置としたことを特徴とする請求項1に記載の水質改質システム。
【請求項3】
非不動態化金属体の腐食を引き起こす腐食促進成分を捕捉するとともに、前記腐食の抑制に寄与する腐食抑制成分を透過する改質処理部と、前記改質処理部にて改質処理された改質水を貯留する改質水貯留部とをボイラの給水ラインに設けた水質改質システムであって、
前記ボイラで発生させた蒸気の復水を前記改質水貯留部にて貯留するとともに、前記改質水貯留部内の改質水と復水とが混合された給水を脱気する脱気部を備え、
この脱気部で脱気処理された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする水質改質システム。
【請求項4】
前記脱気部を真空式脱気装置または窒素置換式脱気装置としたことを特徴とする請求項3に記載の水質改質システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−62176(P2008−62176A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242465(P2006−242465)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】