説明

水路設置型し渣破砕機

【課題】製作コストの低減が図れる水路設置型し渣破砕機を提供する。
【解決手段】水路Sに縦置きに設置され、水およびし渣を通過させる開口部を有する円筒形状の筒胴体3と、筒胴体3の内部に同軸状に設けられる螺旋形状のスクリュー羽根4と、筒胴体3の外部に設けられ、水およびし渣を通過させる開口部を有するケーシング6と、を備えた水路設置型し渣破砕機1において、筒胴体3の上部に形成した駆動軸13を減速機付きモータ14に連結し、筒胴体3のみを回転させて、筒胴体3の内周とスクリュー羽根4との間、および筒胴体3の外周とケーシング6の内周との間でし渣を破砕する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水路や下水路等の水路に設置され、水路中のし渣を破砕する水路設置型し渣破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に分流式汚水中継ポンプ場などでは、汚水路にし渣破砕機を設置し、汚水内に含まれるし渣を破砕して下流に流す処理が行われており、し渣破砕機の一例として特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
同文献に記載のし渣破砕機は、水路に縦置きに設置され、水およびし渣を通過させる開口部を有する円筒形状の筒胴体と、前記筒胴体の内部に該筒胴体と同軸状に設けられ、螺旋状に巻回されたスクリュー羽根を有する内回転体と、前記筒胴体の外部に設けられ、水およびし渣を通過させる開口部を有する枠体(ケーシング)と、を備えている。
【0004】
この従来のし渣破砕機は、内回転体のみを回転させるか、或いは内回転体と筒胴体とを共に回転させる構造となっており、後者の回転態様の場合、筒胴体の内周とスクリュー羽根とによるし渣の破砕に加えて、筒胴体の外周とケーシングとの間でもし渣を破砕できるので、破砕効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開2001−254433号公報(段落0017〜0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内回転体と筒胴体の両者を共に回転させる場合、その回転駆動源は、経済性の観点と、狭水路の場合には設置スペースの確保が困難になるという点から1つのモータ、具体的には1つの減速機付モータから構成することが好ましい。この場合、ギア機構を介在させて駆動力を伝達する構造が、故障が少ない点やメンテナンス性の点で最も適しているが、両者は同軸に配設されているため、ギア機構をコンパクトでかつ無理な負荷がかからない構造にしようとすると遊星ギア機構とならざるを得ず、製作コストが嵩みやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するために創作されたものであり、製作コストの低減が図れる水路設置型し渣破砕機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、水路に縦置きに設置され、水およびし渣を通過させる開口部を有する円筒形状の筒胴体と、前記筒胴体の内部に同軸状に設けられる螺旋形状のスクリュー羽根と、前記筒胴体の外部に設けられ、水およびし渣を通過させる開口部を有するケーシングと、を備えた水路設置型し渣破砕機であって、前記筒胴体の上部を駆動源に連結し、前記駆動源により前記筒胴体のみを回転させて、前記筒胴体の内周と前記スクリュー羽根との間、および前記筒胴体の外周と前記ケーシングの内周との間でし渣を破砕する構成としたことを特徴とする水路設置型し渣破砕機とした。
【0008】
この水路設置型し渣破砕機によれば、筒胴体の内周とスクリュー羽根とによる破砕および筒胴体の外周とケーシングとによる破砕を行うにあたり、スクリュー羽根を回転させることなく筒胴体のみを回転させる構造とすることで、ギア機構などの駆動伝達機構が不要となり、し渣破砕機の製作コストの低減が図れる。
【0009】
また本発明は、前記筒胴体は、前記スクリュー羽根との間でし渣を破砕する内刃面および前記ケーシングとの間でし渣を破砕する外刃面を形成する刃ブロック体が着脱自在に取り付けられた構成からなることを特徴とする水路設置型し渣破砕機とした。
【0010】
この水路設置型し渣破砕機によれば、磨耗の激しい刃ブロック体のみの局所的な交換が可能となるので、経済的なし渣破砕機を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、し渣破砕機の製作コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1ないし図4はそれぞれ本発明に係る水路設置型し渣破砕機の正面図、平断面図、縦断面図、分解斜視図であり、図5は筒胴体の分解斜視図である。
【0013】
図1に示すように、水路設置型し渣破砕機(以降、し渣破砕機という)1は、例えば矩形断面の水路Sに縦置きに設置される。勿論、ここでいう縦置きとは垂直に立てた状態に限られず、若干の傾斜角度をもって立てた状態も含まれる。水路Sとしては、分流式汚水路(下水路)などである。
【0014】
図4等も参照して、し渣破砕機1は、水路Sに縦置きに設置され、水およびし渣を通過させる開口部2を有する円筒形状の筒胴体3と、筒胴体3の内部に同軸状に設けられる螺旋形状のスクリュー羽根4と、筒胴体3の外部に設けられ、水およびし渣を通過させる開口部5を有するケーシング6と、を備える。
【0015】
スクリュー羽根4はシャフト7の外周面に等ピッチで、或いは水路Sやし渣の性質の状況に合わせて不等ピッチで螺旋状に巻回形成されるものであり、羽根の先端縁は螺旋刃8を構成する。シャフト7の上端にはフランジ7aが形成されるとともに下端周りにはフランジ7bが形成される。シャフト7はその下端がケーシング6の底面にボルト等により締結固定される。
【0016】
筒胴体3は、図3に示すように、シャフト7のフランジ7a、7bに取り付けた軸受9、10を介しシャフト7に対して回転可能に取り付けられる。筒胴体3は例えば有蓋無底に構成され、天板部3aの若干下辺りが軸受9を介してフランジ7aに支持され、下端縁が軸受10を介してフランジ7bに支持される。
【0017】
図5等に示すように、筒胴体3の周壁部は、円周方向に等間隔で配置され縦方向に延出する複数(本形態では6本)の支柱部3bにより構成されており、筒胴体3の周面には6個の縦長の開口部が形成される。この各縦長の開口部には、複数の刃ブロック体11が縦方向に間隔的に取り付けられる。つまり、筒胴体3には、水およびし渣を通過させる開口部2が縦方向に間隔的に、また円周方向においても間隔的に形成される。
【0018】
刃ブロック体11は、平面視略扇状を呈した部材であって、内周面はスクリュー羽根4との間でし渣を破砕する内刃面11aを構成し、外周面はケーシング6との間でし渣を破砕する外刃面11bを構成する。両端部には取り付け部11cが形成される。材質は耐磨耗性や耐腐食性に優れたステンレス材等である。筒胴体3の各支柱部3bの外周側には縦方向に間隔的に凹部3cが形成されていて、この凹部3cに各刃ブロック体11の取り付け部11cが嵌まり込み、ボルト12により支柱部3b間にわたって着脱自在に締結固定される態様となっている。
【0019】
刃ブロック体11の内刃面11aの曲率半径は支柱部3bの内周の曲率半径と略同一であり、外刃面11bの曲率半径は支柱部3bの外周の曲率半径と略同一である。つまり、内刃面11a、外刃面11bは、それぞれ支柱部3bの内周面、外周面と略面一な状態となって取り付けられる。
【0020】
筒胴体3の天板部3aの上面には駆動軸13が鉛直状に形成されており、この駆動軸13は図3に示すように減速機付モータ(駆動源)14に連結している。減速機付モータ14は、例えば図1に示すように、水路Sの上部において左右に掛け渡したブラケット15にボルト16により締結固定される。ブラケット15は角パイプ鋼材等の台座17にボルト18により締結固定される。台座17はケーシング6の上部、例えば嵌合部6aの上端に溶接等により固設されるが、場合によってはコンクリート躯体側に固設される。
【0021】
ケーシング6は、図4に示すように、水及びし渣を通過させる開口部5を一対備え、筒胴体3を収装し得る程度の内径を有する有蓋有底の円筒形状を呈した部材である。ケーシング6の両側部にはC型鋼材からなる嵌合部6aが縦方向に沿って固設されている。図2に示すように、水路Sの両側壁にはC型鋼材からなるガイド部材19が縦方向に沿って固設されており、嵌合部6aがこのガイド部材19に嵌合することで、ケーシング6は開口部5をそれぞれ上流側、下流側に臨ませて水路S内に固定設置される。符号20は、嵌合部6aとガイド部材19との間の隙間を防水するためのゴム材等からなる水密シール板である。上流側に臨む開口部5の左右縁部には、それぞれ水路Sの側壁まで延設されるガイド板21が固着されている。
【0022】
図3に示すように、ケーシング6の天蓋部6bは軸受22を介して筒胴体3の駆動軸13を支持する。また、前記したように、ケーシング6の底面にはシャフト7の下端がボルト等により締結固定される。
【0023】
以上の構造により、減速機付きモータ14を駆動すると筒胴体3のみが回転し、ケーシング6の上流側の開口部5から入ってきたし渣は、筒胴体3の内周(支柱部3bの内周面、内刃面11a)とスクリュー羽根4(螺旋刃8)との間、および筒胴体3の外周(支柱部3bの外周面、外刃面11b)とケーシング6の内周との間で破砕され、ケーシング6の下流側の開口部5から排出される。筒胴体3の内周とスクリュー羽根4との隙間寸法、筒胴体3の外周とケーシング6の内周との隙間寸法は、し渣の性質や筒胴体3の回転速度等により適宜に決定される。
【0024】
このように、筒胴体3の内周とスクリュー羽根4とによる破砕および筒胴体3の外周とケーシング6とによる破砕を行うにあたり、従来のようにスクリュー羽根4を回転させることなく筒胴体3のみを回転させる構造とすることで、ギア機構などの駆動伝達機構が不要となり、し渣破砕機1の製作コストの低減が図れる。
【0025】
また、筒胴体3に、スクリュー羽根4との間でし渣を破砕する内刃面11aおよびケーシング6との間でし渣を破砕する外刃面11bを形成する刃ブロック体11を着脱自在に取り付ける構成とすれば、磨耗の激しい刃ブロック体11のみの局所的な交換が可能となるので、経済的なし渣破砕機1を実現できる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。各構成要素のレイアウト、形状等は、図面に記載したものに限定されず、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る水路設置型し渣破砕機の正面図である。
【図2】本発明に係る水路設置型し渣破砕機の平断面図である。
【図3】本発明に係る水路設置型し渣破砕機の縦断面図である。
【図4】本発明に係る水路設置型し渣破砕機の分解斜視図である。
【図5】筒胴体の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 し渣破砕機
2 (筒胴体の)開口部
3 筒胴体
4 スクリュー羽根
5 (ケーシングの)開口部
6 ケーシング
11 刃ブロック体
11a 内刃面
11b 外刃面
14 減速機付きモータ(駆動源)
S 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路に縦置きに設置され、水およびし渣を通過させる開口部を有する円筒形状の筒胴体と、前記筒胴体の内部に同軸状に設けられる螺旋形状のスクリュー羽根と、前記筒胴体の外部に設けられ、水およびし渣を通過させる開口部を有するケーシングと、を備えた水路設置型し渣破砕機であって、
前記筒胴体の上部を駆動源に連結し、
前記駆動源により前記筒胴体のみを回転させて、前記筒胴体の内周と前記スクリュー羽根との間、および前記筒胴体の外周と前記ケーシングの内周との間でし渣を破砕する構成としたことを特徴とする水路設置型し渣破砕機。
【請求項2】
前記筒胴体は、前記スクリュー羽根との間でし渣を破砕する内刃面および前記ケーシングとの間でし渣を破砕する外刃面を形成する刃ブロック体が着脱自在に取り付けられた構成からなることを特徴とする請求項1に記載の水路設置型し渣破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228303(P2009−228303A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74914(P2008−74914)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】