説明

永久磁石ロータとその製造方法

【課題】代替の永久磁石ロータとこのロータの製造方法とが必要とされている。
【解決手段】電動機のためのロータ100が、スピンドル110と、スピンドル110の周囲に配置されている複数の焼結永久磁石120と、複数の焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末の軟質磁性材料130と、複数の焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末の非磁性材料140の複数の離散的領域とを有する。粉末の非磁性材料140の複数の離散的領域は、少なくとも部分的に軟質磁性材料130の中に埋め込まれており、軟質磁性材料130と非磁性材料140の複数の離散的領域が、複数の焼結永久磁石120をスピンドル110に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して電動機のためのロータに関し、さらに特に、電動機のための永久磁石ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石電動機では、永久磁石によって生じさせられる磁束の利用を増大させることが求められている。磁束の利用の改善が、同一の電圧および電流を使用する電動機のトルクの増大を可能にするだろう。永久磁石ロータの磁束を増大させるための方法の1つが、ロータのブリッジ部分、すなわち、永久磁石とロータの外径との間の区域を通過する磁束漏洩を減少させることである。
【0003】
永久磁石を有するロータを製造するための従来の方法は、軟質磁性材料の薄い積層物を使用することを含んでいた。この積層物がアセンブリされる時に永久磁石がその積層物の切り抜き部分の中を通して挿入されることが可能であるように、この積層物の幾つかの部分が切り抜かれた。積層物の使用が、ロータの支持部分を形成するために単一の材料が使用されることを必要とした。磁束がその積層物のブリッジ材料を通過して漏洩する可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、代替の永久磁石ロータとこのロータの製造方法とが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、電動機のためのロータが、スピンドルと、このスピンドルの周囲に配置されている複数の焼結永久磁石と、複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末軟質磁性材料と、複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末非磁性材料の複数の離散的領域とを有する。この非磁性材料の離散的領域は、少なくとも部分的に軟質磁性材料の中に埋め込まれており、および、軟質磁性材料と非磁性材料とが複数の焼結永久磁石をスピンドルに結合する。
【0006】
別の実施形態では、交流同期電動機が、複数の巻線を含むステータと、このステータの内部で回転するように配置されておりかつスピンドルを含むロータと、このスピンドルの周囲に配置されている複数の焼結永久磁石と、複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末軟質磁性材料と、複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末非磁性材料の複数の離散的領域とを含み、軟質磁性材料と非磁性材料は複数の焼結永久磁石をスピンドルに結合する。複数の焼結永久磁石は、ステータの複数の巻線を通過する交流電流と相互作用する複数の局所的磁界を生じさせる。
【0007】
さらに別の実施形態では、電動機のためのロータを形成する方法が、スピンドルをフレームの中に配置することと、複数の焼結永久磁石をフレームの中に配置することと、粉末軟質磁性材料を含む第1の材料を、その第1の材料が複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲むように、フレームの中に充填することと、粉末非磁性材料を含む第2の材料を、その第2の材料が複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲むように、フレームの中に充填することとを含む。この方法は、さらに、粉末非磁性材料が非磁性材料の複数の離散的領域を形成するように、第1の材料と第2の材料とを圧縮成形することを含み、複数の焼結永久磁石と、粉末軟質磁性材料と、粉末非磁性材料とが、一体状のロータを形成する。
【0008】
本明細書で説明されている実施形態によって実現されるこれらの特徴と追加の特徴とが、添付図面に関連付けて、以下の詳細な説明から、より充分に理解されるだろう。
【0009】
図面で説明されている実施形態は、本質的に例示的であり、特許請求の範囲によって定義されている主題を限定することは意図されていない。例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明は、次の図面に関連付けて読まれる時に理解されることが可能であり、以下の図面では同じ構造が同じ照合番号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による電動機の断面図を概略的に示す。
【図2】図2は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータの断面図を概略的に示す。
【図3】図3は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータの詳細な断面図を概略的に示す。
【図4】図4は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータの詳細な断面図を概略的に示す。
【図5】図5は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータの詳細な断面図を概略的に示す。
【図6】図6は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータの断面図を概略的に示す。
【図7】図7は、本明細書に示され説明されている1つまたは複数の実施形態による永久磁石ロータを製造するためのプロセスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、非磁性ブリッジ部分を有する永久磁石ロータの一実施形態を概略的に示す。このロータは、スピンドルと、このスピンドルの周囲に配置されている焼結永久磁石と、この焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む軟質磁性材料と、焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む非磁性材料の複数の離散的領域とを有してもよい。本明細書で使用される「軟質磁性材料」なる語は、磁界の影響を受けやすい材料を意味するが、その材料の強磁性は、外部磁界が印加された後にだけ出現する。軟質磁性材料は一般的に低い飽和保磁力を有し、これは、その材料が、高い飽和保持力を有しかつ磁性化を保持する「硬質磁性材料」とは対照的に、容易に減磁されるということを意味する。本明細書で使用される「非磁性材料」なる語は、約1.2567×10-6ヘンリー/メートル未満の相対透磁率を有し、かつ、一般的に磁界の影響を受けない材料を意味する。焼結永久磁石は、ロータ自体の中に埋め込まれてもよい。非磁性材料の離散的領域は、ロータのブリッジ部分内に、すなわち、焼結永久磁石位置からロータの外径にまで延びる場所に配置されてもよい。非磁性材料の離散的領域は、さらに、ロータの内部区域内に、例えば互いに隣接する焼結永久磁石上の対向する磁極の間に、配置されてもよい。これらの場所では、非磁性材料は、互いに隣接する焼結永久磁石上の磁極からの磁束漏洩を減少させるように磁界を形作るために使用されてもよい。互いに隣接する焼結永久磁石からの磁束漏洩の減少は、ロータが周囲のステータの中へ方向付ける磁束を増大させ、したがって、こうしたロータを使用する電動機の効率を改善することができる。
【0012】
図1と図2を参照すると、永久磁石ロータ100が、スピンドル110と、このスピンドル110の周囲に配置されている複数の焼結永久磁石120とを有する。軟質磁性材料130が焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲み、および、非磁性材料140の離散的領域が焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲む。一実施形態では、焼結永久磁石120は永久磁石ロータ100の軸方向長さに沿って連続的に延びる。別の実施形態(図示されていない)では、焼結永久磁石120は、永久磁石ロータ100の軸方向長さに沿って不連続的に(例えば、複数のセグメントとして)延びる。軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域とが永久磁石ロータ100の外径102を形成する。焼結永久磁石120は、磁束通路「J」、「K」、「L」で示されている、永久磁石ロータ100の周囲の複数の位置における局所的磁界を発生させる。
【0013】
一実施形態では、永久磁石ロータ100は、図1と図2に示されているようにステータ200の内部に配置されている。ステータ200は、導電性材料で作られている巻線210を有する。一実施形態では、電流がステータ200内に磁界を生じさせるように、電流が巻線210を通過させられる。電流は、回転磁界を生じさせる交流電流であってよく、この場合に、この交流電流の周波数が磁界の回転速度に一致する。ステータ内で発生させられる回転磁界が、永久磁石ロータ100の周囲の複数の場所で局所的磁界と相互作用し、永久磁石ロータ100に対してトルクを印加する。永久磁石ロータ100に対するトルクの印加は、ステータ200の周囲で回転磁界が回転する速度と概ね同じ速度で永久磁石ロータ100が回転することを引き起こす。ステータ200によって永久磁石ロータ100に印加されるトルクの量が、巻線210を通過する電圧と電流との量に概ね比例している。永久磁石ロータ100のスピンドル110は、永久磁石ロータ100とステータ200とが電気自動車の交流同期電動機90として働く時のように、トルク消費装置、例えば、自動車のトランスミッションの入力シャフトに結合されてもよい。
【0014】
別の実施形態では、永久磁石ロータ100のスピンドル110は、例えばエンジンの出力シャフトのようなトルク発生装置に結合されてもよい。この実施形態では、このトルク発生装置は、永久磁石ロータ100がステータ200内で回転することを生じさせる。永久磁石ロータ100の焼結永久磁石120によって発生される局所的磁界がステータの巻線210と相互作用し、巻線210を通過する電流を発生させる。この実施形態では、永久磁石ロータ100とステータ200は発電機として機能して電流を生じさせ、この場合に、電流の大きさは、永久磁石ロータ100に印加されるトルクに概ね比例している。
【0015】
本明細書で説明する実施形態では、焼結永久磁石120は、図3に示されているように、軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域との中に埋め込まれている。永久磁石ロータ100の内側に焼結永久磁石120を埋め込むことによって、焼結永久磁石120は、様々な異なる形状構成の形で位置決めされ配置される。焼結永久磁石120は、永久磁石ロータ100の外径102の周囲の局所的磁界を変化させるように、永久磁石ロータ100の形成中に互いに対して相対的に位置決めされ配置される。例えば、焼結永久磁石120を互いに隣接した形に位置決めし方向付けすることによって、近位の焼結永久磁石120によって生じさせられる磁界が、互いに相互作用し、その結果として、単一の焼結永久磁石が使用される場合よりも強力な磁界を生じさせる。磁束通路「E」、「F」、「G」によって示されているように、これらの相互作用区域の1つにおいて生じさせられる磁束は、1つの焼結永久磁石120のN極から、隣接する焼結永久磁石120のS極へと「進む(travel)」。
【0016】
この磁束の強さと配向は、永久磁石ロータ100内での焼結永久磁石120の方向付けを変更することによって、製造時に「調整」される。例えば、焼結永久磁石120の相互間の距離と、焼結永久磁石120の角度配置が、互いに隣接する焼結永久磁石120の相互間の磁束を調整するために調節される。これに加えて、焼結永久磁石120は、互いに隣接する磁極が一致する(すなわち、N極の隣に配置されたN極、S極の隣に配置されたS極)ように、永久磁石ロータ100の内側に位置決めされ配置されてもよい。これらの磁極位置の相互間において磁束が永久磁石ロータ100の外側に進まないので、これらの焼結永久磁石は、永久磁石ロータ100の磁束をさらに「調整」することができる。
【0017】
様々な箇所における磁界の強度が、例えば磁束通路「E」、「F」、「G」のような一連の磁束通路によって図示される。これらの磁束通路は、焼結永久磁石120の磁極を取り囲む磁界の配向と強さを定性的に表している。特定の磁束進路に沿って位置する地点が一定不変の磁束を有する。磁界の強さが、焼結永久磁石120からより遠く離れた場所でより大きく減少するので、焼結永久磁石120の磁極からより遠く離れた磁束通路(すなわち、磁束通路「E」に対する磁束通路「F」、磁束通路「F」に対する磁束通路「G」)が、より低い磁界強さまたはより低い磁束密度の領域を表す。
【0018】
次に、図4を参照すると、非磁性材料の離散的領域を持たない永久磁石ロータ900の非発明的な実施例が示されている。磁束は、(磁束通路「A」で示されているように)永久磁石920の一方の磁極から他方の磁極に進み、および、(磁束通路「B」で示されているように)ロータ900のブリッジ位置904だけを通って進みながら、1つの永久磁石から隣接した永久磁石920に進む。これらの磁束通路は、ロータ900にトルクを印加することによって補助しない「漏洩」磁束を表すが、これは、この磁束が周囲のステータ(図示されていない)の中に送り込まれないからである。これに加えて、その漏洩磁束が永久磁石920から近い距離に位置しているので、この漏洩磁束は高い磁束密度を有する。したがって、ロータ900の外側に進む磁束(磁束通路「C」で示されている)は、低い磁束密度を有する。
【0019】
図5を参照すると、焼結永久磁石120と永久磁石ロータ100の外径102との間の永久磁石ロータ100の場所が、「ブリッジ」位置104(すなわち、点線105の外側から外径102までの永久磁石ロータ100の領域)と呼ばれる。ブリッジ位置104内の材料は、焼結永久磁石120に対する機械的な支持を実現する。焼結永久磁石120の機械的支持は、永久磁石ロータ100の回転によって生じさせられる機械的力に対して抵抗する上で重要である。焼結永久磁石120に印加される外向きの慣性力の増大に相当する永久磁石ロータ100の最大動作速度の増大に応じて、増大した機械的支持が必要とされる。
【0020】
永久磁石ロータ100のブリッジ位置104を通過して磁束が漏洩することを防止するために、焼結永久磁石120は、ブリッジ位置104内において非磁性材料140の離散的領域によって少なくとも部分的に包囲されている。ブリッジ位置104内の非磁性材料140の離散的領域は、隣接した焼結永久磁石120から磁束がブリッジ位置104を通過して進むことを防止する(すなわち、図3に示されている磁束通路「E」、「F」、「G」)。この漏洩磁束を防止することによって、非磁性材料140の離散的領域は、ブリッジ位置104内に非磁性材料140の離散的領域を持たないロータ(図4に示されているロータのようなロータ)の中へよりも、ステータ200と巻線210との中へより多くの磁束が方向付けられることを引き起こす。さらに、初期磁束通路が永久磁石ロータ100の外径102の外側で生じるので、後続の磁束通路は、さらにステータ200と巻線210との中に方向付けられる。したがって、永久磁石ロータ100の磁束密度全体が増大させられる。
【0021】
永久磁石ロータ100の一実施形態では、図5に示されているように、焼結永久磁石120は、軟質磁性材料130によって少なくとも部分的に取り囲まれており、かつ、永久磁石ロータ100の内側に沿って、または、互いに隣接する焼結永久磁石120の間の内部区域106内において、非磁性材料140の離散的領域によって少なくとも部分的に取り囲まれている。図4に磁束通路「D」で示されているように、内部区域内に非磁性材料の離散的領域を持たない永久磁石ロータ900が、磁束が1つの永久磁石920のN極から同じ永久磁石920のS極に直接的に進むことを可能にする。図1から図3と、図5とに示されているように、内部区域106内に非磁性材料140を有する永久磁石ロータ100を形成することによって、焼結永久磁石120の内部磁極を取り囲む磁界は、永久磁石ロータ100の効率をさらに改善するように調整されることが可能である。
【0022】
図1に関して上述したように、ステータ200の巻線210を電流を通過させることによって生じさせられる磁界は、焼結永久磁石120によって生じさせられる局所的磁界と相互作用して、永久磁石ロータ100に対してトルクを印加する。焼結永久磁石120によって生じさせられる局所的磁界の強さは、モータまたは発電機として動作する時に永久磁石ロータ100の効率に影響を与えることがある。例えば、ブリッジ位置104内と内部区域106内の非磁性材料140の離散的領域は、非磁性材料の離散的領域を使用しない永久磁石ロータ(すなわち、図4に示されている永久磁石ロータ900)に比べて、隣接した巻線210の中により多くの磁束を送り込むように、製造時に永久磁石ロータ100が「調整」されることを可能にする。この調整された磁束によって実現される増大した効率は、より少ない電流が巻線210を通過させられることを可能にし、その結果として、永久磁石ロータ100を駆動する同一量のトルクを維持しながら、ステータ200の内側により弱い回転磁界を発生させる。したがって、非磁性材料140の離散的領域を使用する永久磁石ロータ100を使用するモータ90は、非磁性材料の離散的領域を持たない永久磁石ロータを使用するモータよりも高い増大した効率を有する。
【0023】
図1に示されている永久磁石ロータ100は、永久磁石ロータ100の軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域とをそれぞれに形成するために、粉末軟質磁性材料と粉末非磁性材料とを使用して作られる。粉末軟質磁性材料と粉末非磁性材料は、圧縮成形によって固体の一体状の永久磁石ロータ100の形に加工される。一実施形態では、これらの粉末は、ダイまたはモールドのようなフレーム内でこれらの粉末を圧縮成形する機械式プレス機を使用して、焼結永久磁石120の周囲で機械的に圧縮成形される。ダイは、焼結永久磁石120の位置を乱すことなしにその粉末を圧縮成形することを可能にするために、特定の部分に切り抜き部分を有してもよい。機械的圧縮成形は軸方向でも半径方向であってもよい。別の実施形態では、これらの構成要素が静水圧圧縮成形作業を使用して圧縮成形されることがある。静水圧圧縮成形作業は、粉末を一体的形状の形に圧縮成形して固体化させる、高圧力の気体で粉末を圧縮成形する。静水圧圧縮成形作業は、「熱間」(すなわち、高温度で行われる)であっても「常温」(すなわち、室温で行われる)であってもよい。静水圧圧縮成形作業に使用される気体は、圧縮成形中に粉末と反応しないように不活性であってもよい。さらに別の実施形態では、粉末と焼結永久磁石120とが、電磁的圧縮成形を使用して圧縮成形されることがある。電磁的圧縮成形プロセスを行うことが可能なシステムの一例が、オハイオ州デイトン市のIAPリサーチ社(IAP Research,Inc.)製のマグネプレス(登録商標)システム(Magnepress System)である。
【0024】
図6に示されているように、図7に概略的に示されているプロセス200では、フレーム300がステップ202で提供される。ステップ204では、スピンドル110がフレーム300の中に挿入される。その次に、複数の焼結永久磁石120が、ステップ206において、フレーム300の内側に配置され、および、予め決められた配向でスピンドル110の周囲に配置される。その次に、(ステップ208、210において)粉末軟質磁性材料131と粉末非磁性材料141が、粉末軟質磁性材料131が焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲むように、かつ、粉末非磁性材料141が焼結永久磁石120を少なくとも部分的に取り囲むように、フレーム300の中に充填される。ステップ212では、これらの構成要素は、一体状の永久磁石ロータ100を形成するように圧縮成形される。
【0025】
説明した方法にしたがって製造される永久磁石ロータ100は、弾性でありかつ動作中に印加される機械力に対して抵抗力を示す一体状の永久磁石ロータ100を形成するために、異なる材料が互いに同時に圧縮成形されることを可能にする。軟質磁性材料130は第1の材料を含み、および、非磁性材料140は、この第1の材料とは異なる組成を有する第2の材料を含む。
【0026】
本明細書で説明している永久磁石ロータ100は焼結永久磁石120を使用する。一実施形態では、焼結永久磁石120は焼結ネオジム磁石である。別の実施形態では、焼結永久磁石120は焼結サマリウムコバルト磁石である。焼結永久磁石120に使用するための他の材料が、他の希土類元素から形成される磁石を含むことが想定されている。焼結永久磁石120は、他のタイプの磁石よりも強力な磁界を生じさせ、したがって、焼結永久磁石120を有する永久磁石ロータ100の効率は、焼結永久磁石120を使用しない永久磁石ロータ100の効率よりも高い。
【0027】
一実施形態では、焼結永久磁石120は被覆されている。例えば、一実施形態では、焼結永久磁石120は、少なくとも1つの側部がニッケルでめっきされている。別の実施形態では、焼結永久磁石120は、少なくとも1つの側部が熱可塑性ポリマーで被覆されている。これらの被覆物は、焼結永久磁石120の腐食の防止を促進する。
【0028】
一実施形態では、軟質磁性材料130は電炉鋼である。この電炉鋼は、約0重量%から約6.5重量%のケイ素を含む鉄合金を含む。ケイ素の増加が、一般的に、渦電流の発生の減少、すなわち、当初の磁界の電荷を妨害する誘導磁界の減少に関連している。したがって、渦電流の減少は永久磁石ロータ100の性能を増大させる。しかし、鋼の中のケイ素含量の増大は、一般的に、従来の方法によってロータ用の積層物を生産するために必要とされることがある材料の加工性の低下に相当する。したがって、圧縮成形プロセスを使用することが、電炉鋼の積層物を使用するロータよりも多量のケイ素を含む電炉鋼を使用して永久磁石ロータ100を製造することを可能にする。
【0029】
一実施形態では、粉末非磁性材料141は、例えば300シリーズのステンレス鋼のようなステンレス鋼を含む。別の実施形態では、粉末非磁性材料141はニッケルまたはニッケル合金を含む。別の実施形態では、粉末非磁性材料141はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む。さらに別の実施形態では、粉末非磁性材料141は銅または銅合金を含む。さらに別の実施形態では、粉末非磁性材料141は粉末セラミック材料を含む。別の実施形態では、粉末非磁性材料141は熱可塑性ポリマーを含む。
【0030】
さらに別の実施形態では、粉末非磁性材料141は、上述の粉末金属と熱可塑性ポリマーとの組み合わせ、または、粉末セラミックと熱可塑性ポリマーとの組み合わせを含んでもよい。熱可塑性ポリマーの添加は、軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域とから焼結永久磁石120をさらに磁気的に絶縁する。
【0031】
永久磁石ロータ100の非磁性材料140の離散的領域として他の材料が使用可能であるということを理解されたい。例えば、より低い透磁率を有する材料が、増大した効率を有する永久磁石ロータ100を形成する。所要の強さ特性と、約1.2567×10-6H/mよりも低い絶対透磁率とを有する材料が、非磁性材料140の離散的領域として使用されてもよい。
【0032】
永久磁石ロータ100の一実施形態では、粉末軟質磁性材料131と粉末非磁性材料141は、約0.1ミクロンから約300ミクロンの平均粒径、例えば、約1ミクロンから約100ミクロンの平均粒径を有する粉末材料を含んでもよい。
【0033】
永久磁石ロータ100に使用される材料は、様々な環境条件にモータ90の動作を適合させるように広い温度範囲において十分な強度を有する。広い温度範囲において動作する能力が、大量の電流が巻線210を通過してモータ90に送り込まれることを可能にする。ロータは、約−40℃未満から約200℃を超える温度までの温度範囲で、例えば、約−40℃未満から約800℃を超える温度までの温度範囲で動作する。
【0034】
本明細書に説明されているように、永久磁石ロータ100は、粉末軟質磁性材料131と粉末非磁性材料141とから作られてもよい。未形成のロータの基本構成要素が、一体状の永久磁石ロータ100を形成するように圧縮成形されることが可能な粉末なので、これらの粉末の何らかの移動(shifting)と混合(co−mingling)とが予想される。図6に示されているように、粉末軟質磁性材料131と粉末非磁性材料141は第1の配向でフレームの中に充填されてもよく、そして、圧縮成形の後に、軟質磁性材料130と非磁性材料は第2の配向をとってもよい(すなわち、図1に示されている配向)。これに加えて、圧縮成形された軟質磁性材料130中の粉末軟質磁性材料131の濃度と、圧縮成形された非磁性材料140の離散的領域中の粉末非磁性材料141の濃度は、場所に応じて変化する。したがって、幾つかの実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約20%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約30%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約40%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約50%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約60%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約70%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約80%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約90%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約95%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約98%よりも高い領域として定義されてもよい。他の実施形態では、非磁性材料の離散的領域は、非磁性材料の濃度が約99%よりも高い領域として定義されてもよい。粉末のこの移動と混合は、隣り合う材料の混合が生じないロータに比較して、軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域の間の境界面の強度を増大させる。
【0035】
スピンドル110と焼結永久磁石120との周囲における粉末軟質磁性材料131と粉末非磁性材料141の圧縮成形の後に、永久磁石ロータ100は一体状のユニットの形に形成される。永久磁石ロータ100を製造するために使用される圧縮成形方法のパラメータとタイプとに応じて、この結果として生じる部品は、ネットシェープまたはニアネットシェープの形状に形成される(すなわち、その部品の寸法が、フレーム300からの取り外し時に、所要の仕上げ部品寸法に一致するかまたは概ね一致するように形成され、したがって、圧縮成形後の加工を全くまたは最小限しか必要としない)。
【0036】
これらの粉末材料が単一の部品の形に固体化されるが、軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域の微細構造が、永久磁石ロータ100が粉末材料から形成されたということを示す視覚的および/または機械的な属性を示し続ける。例えば、薄片にされおよび視覚的に拡大されて検査される永久磁石ロータ100は、永久磁石ロータ100の軟質磁性材料130と非磁性材料140の離散的領域とが粉末から作られたという微細構造の証拠を示す。さらに、永久磁石ロータ100の機械的属性、例えば、圧縮成形された軟質磁性材料130と圧縮成形された非磁性材料140の離散的領域との密度が、同一の化学的組成を有する圧延シートの密度よりも小さい。これに加えて、圧縮成形された軟質磁性材料130と圧縮成形された非磁性材料140との降伏強さと最大抗張力が、同一の化学的組成を有する圧延シートの降伏強さと最大抗張力よりも小さい。
【0037】
圧縮成形工程が、粉末材料が永久磁石ロータ100の形に圧縮成形され終わった後の硬化後または焼結後の工程の必要性を取り除く。後続の処理加工が無いことが、導電性フレーム300から取り外した直後の永久磁石ロータ100の寸法精度の向上に寄与する。圧縮成形加工は、あらゆる粉末ポリマー材料を硬化させるフレーム300内の温度および圧力条件の増大を生じさせる。一実施形態では、永久磁石ロータ100は、焼結永久磁石120と未焼結の軟質磁性材料130と非磁性材料140とを含んでもよい。
【0038】
ブリッジ位置104と内部区域106との中に非磁性材料140の離散的領域を有するロータを形成することによって、上述の永久磁石ロータ100は、ブリッジ位置104または内部区域106の中に非磁性材料140の離散的領域を含まない永久磁石ロータ900よりも高い効率で動作する。焼結永久磁石120の周囲で粉末材料を圧縮成形することによって、永久磁石ロータ100は、永久磁石ロータ100の回転に関連している機械力に抵抗するのに十分な強度をブリッジ位置104内に維持すると同時に、互いに隣接する焼結永久磁石120からの磁束漏洩を防止するために配置されている非磁性材料を有してもよい。
【0039】
次に、永久磁石ロータが、焼結永久磁石と、この焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む軟質磁性材料と、焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む非磁性材料とを含んでもよいということが理解されなければならない。永久磁石ロータは、そのロータのブリッジ位置に非磁性材料を有する形に形成される。この非磁性材料は、永久磁石ロータの磁束を増大させ、および、このような永久磁石ロータを使用する電動機の効率を改善する。このような永久磁石ロータは、動的磁気圧縮成形工程(dynamic magnetic compression process)を使用して形成されてもよい。
【0040】
「実質的に」や「約」なる語が、あらゆる量的な比較、値、測定値、または、他の表現に付与されることがある不確実性の固有の度合いを表すために、本明細書で使用されることがあるということに留意されたい。これらの語は、さらに、言及されている主題の基本機能の変化を結果的生じさせることなしに、言及されている事柄から量的表現が変化することがある度合いを表すためにも、本明細書で使用されている。
【0041】
本明細書では特定の実施形態が例示され説明されてきたが、特許請求されている主題の着想と範囲とからの逸脱なしに、様々な他の変化と変更とが加えられてよいということを理解されたい。さらに、特許請求されている主題の様々な側面が本明細書で説明されてきたが、こうした側面は必ずしも組合せの形で使用される必要は無い。したがって、添付されている特許請求の範囲は、特許請求されている主題の範囲内に含まれるそうした変化と変更のすべてをその範囲内に含むということが意図されている。
【符号の説明】
【0042】
100 永久磁石ロータ
102 永久磁石ロータの外径
104 ブリッジ位置
110 スピンドル
120 焼結永久磁石
130 軟質磁性材料
140 非磁性材料
200 ステータ
210 巻線
300 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルと、
該スピンドルの周囲に配置されている複数の焼結永久磁石と、
該複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末の軟質磁性材料と、
前記複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲む圧縮成形された粉末の非磁性材料の複数の離散的領域であって、少なくとも部分的に前記軟質磁性材料の中に埋め込まれている非磁性材料の複数の離散的領域と、を具備し、
前記軟質磁性材料と前記非磁性材料の複数の離散的領域が、前記複数の焼結永久磁石を前記スピンドルに結合する電動機のためのロータ。
【請求項2】
前記軟質磁性材料が第1の材料を含み、前記非磁性材料が前記第1の材料の組成とは異なる組成を有する第2の材料を含む請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記軟質磁性材料が当該ロータの外径の少なくとも一部分を形成し、前記非磁性材料の複数の離散的領域の少なくとも1つが当該ロータの前記外径の少なくとも一部分を形成する請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
前記非磁性材料の複数の離散的領域が、第1の焼結永久磁石から、前記第1の焼結永久磁石に隣接している第2の焼結永久磁石へ磁束が漏洩することを阻止する請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
非磁性材料の第1の離散的領域が、前記第1の焼結永久磁石から前記ロータの外径にまで延びる第1のブリッジ位置に配置されており、かつ、非磁性材料の第2の離散的領域が、前記第2の焼結永久磁石から前記ロータの前記外径にまで延びる第2のブリッジ位置に配置されている請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記非磁性材料の複数の離散的領域の1つが、前記第1の焼結永久磁石から前記第2の焼結永久磁石にまで延びる内部区域内に配置されている請求項4に記載のロータ。
【請求項7】
前記軟質磁性材料がケイ素を含む鉄合金を含む請求項1に記載のロータ。
【請求項8】
前記非磁性材料の複数の離散的領域がニッケルを含む鉄合金を含む請求項1に記載のロータ。
【請求項9】
前記非磁性材料の複数の離散的領域が熱可塑性ポリマーを含む請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
前記非磁性材料の複数の離散的領域がアルミニウム合金を含む請求項1に記載のロータ。
【請求項11】
前記非磁性材料の複数の離散的領域が、1.2567×10-6H/mよりも低い絶対透磁率を有する材料を含む請求項1に記載のロータ。
【請求項12】
前記圧縮成形された粉末の軟質磁性材料と前記圧縮成形された粉末の非磁性材料が焼結されていない請求項1に記載のロータ。
【請求項13】
スピンドルをフレームの中に配置することと、
複数の焼結永久磁石を前記フレームの中に配置することと、
粉末軟質磁性材料を含む第1の材料を、該第1の材料が前記複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲むように、前記フレームの中に充填することと、
粉末非磁性材料を含む第2の材料を、該第2の材料が前記複数の焼結永久磁石を少なくとも部分的に取り囲むように、前記フレームの中に充填することと、
前記粉末非磁性材料が非磁性材料の複数の離散的領域を形成し、かつ、前記複数の焼結永久磁石と、前記第1の材料と、前記第2の材料とが、一体状のロータを形成するように、前記第1の材料と前記第2の材料とを圧縮成形することと、を含む電動機のためのロータを形成する方法。
【請求項14】
前記複数の焼結永久磁石の少なくとも1つの表面をポリマー樹脂で被覆することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の焼結永久磁石の少なくとも1つの表面をニッケル合金でめっきすることをさらに含む請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115138(P2012−115138A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252599(P2011−252599)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】