説明

汚染土壌の浄化方法

【課題】 洗浄効果を高め、浄化土の再生利用を図る。
【解決手段】 汚染土壌を酸性の洗浄水3とともに一方向に回転する回転ドラム16内へ投入し、回転ドラム16の内周面にその軸方向に沿って取付けられた複数の掻き上げ羽根18と回転ドラム16内に偏心して配設され回転ドラム16よりも速くかつ逆方向に回転するロータ17の外周面にその軸方向に沿って取付けられた保持羽根19とで土壌同士が互いに研磨、破砕し合うようにする第1次磨砕工程と、この第1次磨砕工程で得られた土壌を第1次磨砕工程で使用したと同様の装置5にアルカリ性又は中性の洗浄水6とともに投入して土壌を磨砕する第2次磨砕工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属などで汚染された土壌を再生利用できるまでに浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浄化方法のうち、土壌洗浄方法といわれる方法が知られているが、この方法は、汚染物質の濃度が高く、また、油分・重金属が重質油やタールの場合には、土砂の表面に付着した汚染物質を取り除くために、水を大量に使用したり、複数回の洗浄工程を経たり、界面活性剤等の洗浄助剤を使用する必要があった。したがって、このような土壌洗浄方法では、設備費のほか、水処理費、界面活性剤等の洗浄助剤費のコストが大きくなって、処理単価が高くなってしまい、実用性に乏しいという問題があった。
【0003】
そこで、洗浄効率を向上させて汚染土壌の浄化費用を低減することができるようにした汚染土壌の浄化方法が提案されるに至った。これは、油分・重金属等の汚染物質が付着した土砂から予め汚染物質の分離しやすい所定の粒径以上の土砂を選別機により分級し、前記分級した土砂を、分級した土砂毎に加水して、洗浄機に導入し、洗浄機において土砂同士の摩擦等により土砂の表面に付着した汚染物質を離脱させ、土砂及び汚染物質を含む水を、水を張った分離槽並びに加振スクリーン及び空気供給手段を備えた分離装置に導入し、該分離装置の分離槽内において、土砂に振動を付与するとともに気泡を吹き付けて沈降させることにより、土砂と汚染物質とを分離するようにしたものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−254063号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗浄機と同様のものを使用して土壌の表面に付着した汚染物質を離脱させる方法は有効であるが、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、総水銀、全シアン、フッ素などを除去するには、未だ十分ではなく、汚染土壌の再生利用をできるまでには浄化されにくかった。
【0005】
そこで、本発明は、洗浄効果を高め、浄化された土壌の再生利用を可能とした汚染土壌の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、汚染土壌を酸性の洗浄水とともに一方向に回転する回転ドラム内へ投入し、回転ドラムの内周面にその軸方向に沿って取付けられた複数の掻き上げ羽根と回転ドラム内に偏心して配設され回転ドラムよりも速くかつ逆方向に回転するロータの外周面にその軸方向に沿って取付けられた保持羽根とで土壌同士が互いに研磨、破砕し合うようにする第1次磨砕工程と、この第1次磨砕工程で得られた土壌を第1次磨砕工程で使用したと同様の装置にアルカリ性又は中性の洗浄水とともに投入して土壌を磨砕する第2次磨砕工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、汚染土壌を酸性の洗浄水とともに一方向に回転する回転ドラム内へ投入し、回転ドラムの内周面にその軸方向に沿って取付けられた複数の掻き上げ羽根と回転ドラム内に偏心して配設され回転ドラムよりも速くかつ逆方向に回転するロータの外周面にその軸方向に沿って取付けられた保持羽根とで土壌同士が互いに研磨、破砕し合うようにする第1次磨砕工程と、この第1次磨砕工程で得られた土壌を第1次磨砕工程で使用したと同様の装置にアルカリ性又は中性の洗浄水とともに投入して土壌を磨砕する第2次磨砕工程とを有するものであるから、第1次磨砕工程で浄化作用の強い酸性の洗浄水を用いることで土壌浄化を積極的に図り、この工程を経た浄化土壌は、酸性土であって再利用に適さないため、次の第2次磨砕工程において酸性を中性化し、この中性化された土壌を再利用することができる。また、第1次及び第2次磨砕工程において、同じ構成の磨砕装置を使用するため、土壌に付着した汚染物質が2度にわたって離脱させられ、浄化効率がきわめて良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1に示すフローチャートでは、原料である汚染土壌を磁気選別機1に投入して金属類を回収した後の原料、例えば珪砂(粒径200mm以下)を第1次磨砕工程へと送り込む。原料として浄化するための土壌(この例では珪砂)は、カドミウム0.30mg/L以下(以下単位は同じ)、鉛0.30以下、六価クロム1.50以下、ヒ素0.30以下、総水銀0.005以下、全シアン0.30以下、フッ素3.00以下の第2溶出基準値以下、土壌環境基準値以下のものを第1次磨砕工程へ投入する。この第1次磨砕工程では、図2に示すような1次用の磨砕装置2により、酸性の洗浄水3(pH6前後に調整)を注水しつつ、原料に圧縮力・剪断力を作用させ、精米するように原料の塊同士を擦り合わせ、原料の表面に付着している有害物を剥離させると同時に有害物を酸性水に溶出させる。次いで、磨砕された原料を浮遊選別機4に投入し、水に浮く夾雑物を排除する。夾雑物が排除された原料は、第2次磨砕工程で再び磨砕処理されるが、ここで使用される2次用の磨砕装置5では、アルカリ性又は中性の洗浄水6を使用する。次いで、振動スクリーン7に原料を投入し、ここで6〜40mmの粒径の再生された原料(土壌環境基準値以下)を回収する。
【0010】
図2は、図1のフローチャートの詳細を示し、運び込まれた原料をホッパー10に投入し、ベルトフィーダー11から搬送コンベア12を通過させ、途中磁気選別機1により金属類を回収し、1次用の磨砕装置2へ投入する。この磨砕装置2による第1次磨砕工程を終了した原料は、ゴミ取り機13を経て搬送コンベア14から2次用の磨砕装置5へ投入される。ここで処理(第2次磨砕工程)された原料は、振動スクリーン7を経て再生可能な浄化土となる。
【0011】
前記磨砕装置2,5は、ともに図3に示す構造のものであり、ホッパー15から供給されてきた原料は、一方向に回転する回転ドラム16内へ投入され、回転ドラム16内には偏心してロータ17が配設され、回転ドラム16の内周面にその軸方向に沿って取付けられた複数の掻き上げ羽根18とロータ17の外周面にその軸方向に沿って取付けられた保持羽根19とで原料(土壌)同士が互いに研磨、破砕し合うように処理される。前記ロータ17は、回転ドラム16よりも速くかつ逆方向に回転する。回転ドラム16の排出口には網目の異なる3種類の回転スクリーン20〜22を取付けてあり、回転スクリーン20で粒径6mm以下の原料を落下させ、回転スクリーン21で粒径6〜40mmの原料を、回転スクリーン22で粒径40〜200mmの原料をそれぞれ落下させる。これら回転スクリーン20〜22は、第1次磨砕工程で用いられる1次用の磨砕装置2のみに取付けてある。また、回転スクリーン20の個所で、高圧シャワー23を原料に噴射する。このシャワー23は、酸性の洗浄水3であってもいいし、中性の清水(洗浄水)であってもいい。回転ドラム16内の原料は、酸性の洗浄水3と一緒に処理されているので、ここでの酸性水による化学的浄化が十分に行なわれているならば、シャワー23は中性の洗浄水(清水)であることが好ましい。
【0012】
図4は、磨砕装置2,5の内部を示し、符号24で示す領域(滞留範囲)において、原料が十分に研磨、破砕される。このような機械的処理の他に、第1次磨砕工程では、酸性の洗浄水3も加えて化学的処理も行い、効率的に土壌中の重金属を除去することができる。酸性の洗浄水3としては、過マンガン酸塩、オゾン、次亜塩素酸、過酸化水素などを1種又は2種以上を含む溶液を使用することができる。これらの酸化剤溶液(洗浄水3)は、安価であり、土壌中に注入した後は次第に酸化力が低減して消滅するので環境にも悪い影響を及ぼすことがない。この第1次磨砕工程において、洗浄水3のpHを調整することもでき、pH3〜13の範囲、好ましくはpH5.8〜6.3の範囲で処理対象汚泥の性状等に応じて適宜調整する。この磨砕装置2を作動させて、原料に付着した有害物を機械的に剥離させるとともに、酸性の洗浄水3で主として重金属を溶出させた後に、回転スクリーン20〜22により原料を分級する際、中性の清水によるシャワー23で原料に残存する酸性の洗浄水3中の酸化剤を除去することもできる。
【0013】
前記回転スクリーン20〜22により分級された原料のうち粒径40mm以下のものを第2次磨砕工程へと搬送する。粒径40〜200mmの原料は、再び磁気選別機1で処理し、金属、骨材、廃棄物に分別する。この第2次磨砕工程においては、中性の清水を洗浄水6として注水してもいいし、アルカリ性とする場合、NaOH等のアルカリ剤を用いる。このアルカリ剤溶液を用いることにより、第1次磨砕工程で残存する酸化剤を中和することができる。清水(中性)であっても、残存酸化剤を除去することができる。この第2次磨砕工程でも、機械的処理によって原料に付着した有害物を除去し、洗浄水6で洗浄する。
【0014】
前記磨砕装置2としては、回転ドラム16の内径1800mm、長さ2950mm、ロータ17の外径(保持羽根19を除く)830mm、長さ2100mm、図4に示す領域24を0.5mとし、1時間当りの原料搬入量を45トンとした。また、磨砕装置5としては、回転ドラム16の内径を1490mm、長さ2100mm、ロータ17の外径750mm、長さ1380mm、領域24を0.35mとし、磨砕装置2よりも小型のものを使用した。両装置2,5とも、回転ドラム16を20回/分、ロータ17を180回/分の回転数とした。1日8時間稼働させたとき、1日の原料処理量を360トンとした場合、約235トンの浄化土を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のフローチャート。
【図2】詳細なフローチャート。
【図3】磨砕装置の側断面図。
【図4】磨砕装置の研磨、破砕の領域を示す簡略正断面図。
【符号の説明】
【0016】
2,5 磨砕装置
3,6 洗浄水
16 回転ドラム
17 ロータ
18 掻き上げ羽根
19 保持羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌を酸性の洗浄水とともに一方向に回転する回転ドラム内へ投入し、回転ドラムの内周面にその軸方向に沿って取付けられた複数の掻き上げ羽根と回転ドラム内に偏心して配設され回転ドラムよりも速くかつ逆方向に回転するロータの外周面にその軸方向に沿って取付けられた保持羽根とで土壌同士が互いに研磨、破砕し合うようにする第1次磨砕工程と、
この第1次磨砕工程で得られた土壌を第1次磨砕工程で使用したと同様の装置にアルカリ性又は中性の洗浄水とともに投入して土壌を磨砕する第2次磨砕工程とを有する汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記第1次磨砕工程に投入される汚染土壌は、予め磁気選別機により金属類を回収したものであることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記第1次磨砕工程で使用される磨砕装置の回転ドラムの排出口に回転スクリーンを取付けて土壌を分級することを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
前記第1次磨砕工程の回転ドラムの排出口に取付けられた回転スクリーン内に中性の洗浄水を散水することを特徴とする請求項3に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
前記第2次磨砕工程で得られた土壌を振動スクリーンで水を添加しつつ分級することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−326434(P2006−326434A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151130(P2005−151130)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(503411152)株式会社エコテクノ (1)
【出願人】(390004802)新六精機株式会社 (11)
【出願人】(505191814)三井商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】