説明

汚染防止可能の電気触媒複合膜及び膜反応器

本発明は、膜材料の技術分野に属する、汚染防止可能の電気触媒複合膜及び膜反応器が開示される。電気触媒複合膜は、基体と触媒コート層からなり、前述基体は多孔質支持体であり、導電性の基体または導電コート層が塗布される非導電性の基体から選ばれ、支持作用、導電作用及び分離作用を果たし、触媒コート層は、基体の電気触媒の活性を増強するように、導電性の基体又は導電コート層の表面及び孔内に担持又は塗布される。膜反応器は、ポンプによる圧力差によって膜分離の動力を提供し、且つ全量ろ過または交差流ろ過を用いて、液材を膜の一側から他側まで透過させて、液体の分離を達成するとともに、陽極である電気触媒複合膜と陰極である補助電極とを、それぞれ導線を介して電源に接続して電解装置を構成する。本発明は、電気触媒複合膜に自浄化機能を与え、膜の汚染防止能力を向上させ、膜分離過程中の無汚染操作を達成し、エネルギー消費が低く、処理効率が高く、各種の汚水処理及び回用に広く用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材料の技術分野に属し、特に汚染防止可能の電気触媒複合膜及び膜反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離は、高効率、省エネルギー及び環境に優しい新規な分離技術として、中国に直面しているエネルギー、資源と環境等の重大な問題を解決するための肝心な技術になっている。ところが、膜で汚水を処理する過程中では、汚染物が膜表面と孔隙に沈積され、膜汚染が生じて膜間差圧の上昇が起こされ、膜流束(分離効率)が低くなり、膜の処理能力が急速に低下され、膜の寿命が短縮され、膜分離の過程中の信頼性と経済性に大きい影響を与えている。膜汚染は、膜分離技術の広い応用を制約するネックとなった。従って、膜で汚水を処理する過程中では、膜汚染のコントロール、即ち膜汚染防止の能力を向上させることは重要な課題になる。
【0003】
近年、膜汚染の問題を解決するために、膜技術と他の技術とを組合わせて膜反応系を作成し、膜の多機能化と高効率性を達成することが提案されている。中国特許CN101224938A号公報には、ナノ材料で光触媒酸化を行って膜汚染を抑制する方法が記載されている。該方法では、光触媒反応器を膜生物と組合わせて廃水処理に用いるので、通常の膜生物反応器と比較して、膜流束が50%向上した。アメリカ特許US2008237145Aには、チタニア触媒粉末が管式膜部品の反応器中に投入され、光触媒技術と膜分離技術とを組合わせて廃水処理に用いられる、光触媒による水処理方法及び装置が開示される。光触媒技術との組合せによれば、膜の汚染防止性と分離効率が向上されるが、該技術には、太陽エネルギーの利用率が低く、懸濁の触媒を回収し難い問題がある。
【0004】
アメリカ特許US6027649Aには、凝集剤で汚水における有機物に対して予備吸着を行うことにより膜汚染を緩和することを目的とする、凝集剤及び精密ろ過膜からなる膜反応器が開示されている。しかし、凝集剤の添加によっても、二次汚染及び添加剤を回収し難い等の問題を引き起こした。中国特許CN101234817Aには、曝気及び膜に有する微生物により有機物を分解させることで、有機廃水を処理する、膜担体無泡酸素供給生物膜反応器が開示されている。アメリカ特許US2004079701Aには、ろ過部品を微生物と多孔質担体が添加された混合液に浸入させ、有機物に対する添加物の作用により膜部品の汚染を抑制する、廃水処理に用いられる膜生物反応器が開示されている。該膜生物反応器は、小型化の構造と自動制御し易い利点を有するが、微生物を人為的に制御し難いとともに、生物汚染が激しくなるという問題がある。
【0005】
中国特許CN101104537Aには、ナノ高分子材料が印加電圧によって酸化剤を生じて、その生じた酸化剤によって廃水における有機物に対して酸化を行って水を浄化する、電気触媒分離膜による水処理装置が開示されている。該水処理装置は、有機物分解、浄化、消毒を一体化し難い問題を解決する利点がある。しかし、該装置では、ステンレスや銅等の金属材料を陽極として、陽極ストリッピングが発生し易いので、二次汚染と操作安定性不良の問題が発生した。また、高分子導電層と金属基材との間における物理結合においても、安定性不良という問題が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の膜分離材料の汚染防止性不良という問題を解決するように、汚染防止可能の電気触媒複合膜及び膜反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基体と触媒コート層からなる電気触媒複合膜であり、
前述基体は多孔質支持体であり、導電性の基体または導電コート層が塗布される非導電性の基体から選ばれ、支持作用、導電作用及び分離作用を果たし、
前記触媒コート層は、基体の電気触媒の活性を増強するように、導電性の基体又は導電コート層の表面及び孔内に担持又は塗布され、
前述導電性の基体は炭素膜であり、前述導電コート層は炭層であり、前述非導電性の基体はセラミック膜であり、前述触媒コート層は金剛石、黒鉛、シリカ、金属、金属酸化物から選ばれる一種またはこれらの混合物であることを特徴とする汚染防止可能の電気触媒複合膜。前記セラミック膜の材質は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0008】
前述電気触媒複合膜の基体と触媒コート層とは、表面修飾により一体化され、化学結合が形成され、電気触媒複合膜の構造の安定性が確保された。
【0009】
前述電気触媒複合膜の平均孔径は、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0010】
前述金属は、遷移金属または希土類金属から選ばれ、前述遷移金属は、Pt、Au、Pd、Ti、Ta、Ru、Ir、LrおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前述希土類金属は、La、Ceのうちの少なくとも一種であることが好ましい。
【0011】
前述金属酸化物は、遷移金属酸化物、希土類金属酸化物または良い導電率を有する一般的な金属酸化物から選ばれ、前述遷移金属酸化物は、TiO2、RuO2、IrO2およびTa2O5からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
前述希土類金属酸化物は、CeO2、La2O3のうちの少なくとも一種であり、前述良い導電率を有する一般的な金属酸化物は、Sb2O3、SnO2のうちの少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
前述汚染防止可能の電気触媒複合膜からなる膜反応器であって、
電気触媒機能と膜分離機能とを有し、
ポンプによる圧力差によって膜分離の動力を提供し、且つ全量ろ過または交差流ろ過を用いて、原液体を膜の一側から他側まで透過させて、液体の分離を達成するとともに、
電気触媒により膜表面及び孔内に付着される汚染物を酸化分解させて、膜の汚染防止能力を向上させ、膜分離過程中の無汚染操作を達成するように、陽極である電気触媒複合膜と陰極である補助電極とを、それぞれ導線を介して直流定電圧電源に接続して電解装置を構成し、電解装置における電極間距離は10〜100mmである、
ように構成されたことを特徴とする膜反応器である。
【0013】
前述補助電極は、管式または板式のものであり、網状または孔状となり、前述補助電極の材料は、炭素、黒鉛、白金、金、タンタラム、ニッケル、アルミニウム、クロム―銅合金、クロム―ジルコニウム―銅合金および銅―タングステン合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料であることが好ましい。
【0014】
前述直流定電圧電源は、電圧調整範囲が0〜30Vであり、電流が0〜10Aであることが好ましい。
【0015】
従来の技術と比較すると、本発明における電気触媒複合膜は下記のような利点を有する。
【0016】
(1)上記複合膜によれば、電気触媒酸化技術と膜分離技術とを組合せ、電界によって膜表面に電子放出域が形成され、生じた微小電流が膜汚染の沈積を減少することができるとともに、電気触媒の過程中に生じた強い酸化剤(ヒドロキシラジカル等)は、膜表面の汚染物を効率的に分解することができ、膜分離過程の強化が達成され、膜材料に自浄化機能が与えられ、膜汚染の問題が効率的に解決された。上記複合膜は、被処理液体における有機物に対して優れる分解作用を有し、且つエネルギー消費が低くて処理効率が高くて、油含有汚水、染色廃水または製紙廃水等の重度汚染の汚水を処理することができる。
【0017】
(2)本発明における電気触媒複合膜に用いられる基体は、良好で安定な耐食性を有し、陽極ストリッピングを防止することができる。触媒コート層と基体とは、表面修飾技術によって触媒コート層と基体が有効的に一体化され、複合膜材料の構造の安定性が確保された。塗布される触媒コート層は、基体膜の電気触媒性能の向上に用いられ、汚水における有機物に対する複合膜電極の分解効率が向上された。汚水を処理する際に、膜分離は主な役割を果たしているとともに、膜電極は、主に膜表面及び孔内に付着される汚染物を酸化して分解させ、実際に使用する場合に、膜流束を高いレベルに維持させ、膜の使用寿命を延長し、膜汚染の問題を解決するようになっている。従って、本発明における複合膜は、分離効率が高く、汚染防止性が強く、エネルギー消費が低く、二次汚染を引き起こすことなく、工業化に十分に寄与している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】好ましい管式電気触媒複合膜の膜反応器装置の図である。
【図2】好ましい板式電気触媒複合膜の膜反応器装置の図である。
【図3】実施例2により製造された、Pt/SiO2を触媒コート層とする複合膜により、電気触媒無または電気触媒有の場合には、100ppmの油含有汚水を処理する時の膜流束と操作時間との関係を示す図である。
【図4】実施例3により製造された、TiO2を触媒コート層とする複合膜、及び原始膜の各々により、200ppmの油含有汚水を処理する時の膜流束と操作時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における電気触媒複合膜は、ゾル‐ゲル法、電気化学的蒸着法、マグネトロンスパッタリング法または熱分解法により製造される。
【0020】
上記ゾル‐ゲル法の各ステップは下記の通りである。
【0021】
(1)基体の前処理:エタノールまたはアセトンで基体表面を洗浄した後、酸化性を有する酸性溶液またはアルカリ性溶液で、前処理を10〜15時間行って、水洗して、100〜150℃にて乾燥させる。ここで、上記酸性溶液は、硫酸溶液、硝酸溶液またはフッ化水素酸溶液のうちの少なくとも一種であり、上記アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液または過酸化水素溶液のうちの少なくとも一種である。
【0022】
(2)ゾルの調製:従来の技術により、金属、金属酸化物、または金属と金属酸化物の前駆体溶液を製造する。ここで、金属の前駆体溶液は、金属塩溶液を予定量の溶媒に溶解させることにより得られた。金属酸化物の前駆体溶液は、金属化合物(例えば、テトラエトキシシラン、ブチルチタネート、Ce(NO)3、TiO(OH)2、Pb(COOH)2またはSnCl4)、水、溶媒、触媒と添加剤をモル比で調製することにより得られた。上記モル比は、ゾルの種類によって決定される。上記溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールである。上記触媒は、塩酸、硫酸、氷酢酸またはアンモニア水である。上記添加剤は、加水分解制御剤、分散剤または乾燥亀裂制御剤のうちの少なくとも一種である。金属酸化物の前駆体溶液を調製する際に、金属前駆体溶液を添加して、均一的に攪拌して、金属と金属酸化物の前駆体溶液が得られる。上述前駆体溶液を急激に2〜3時間攪拌した後、得られたゾルを室温にて24時間老化させて、予備とする。
【0023】
(3)コーティング:浸漬引き上げ法により、ステップ(1)で処理された膜基体をステップ(2)で得られたゾルに浸漬して、ゾルから基体を穏やかに引き上げて、室温にて空気乾燥させる。ここで、基体のゾルへの浸漬時間は10〜60秒であり、引き上げの速度は1〜5mm/sである。
【0024】
(4)焼結処理:ステップ(3)でコーティングして得られた基体をマッフル炉に置いて焼結を行って、まず0.5〜1℃/minの昇温速度で80〜200℃に加熱し、0.5〜1.0時間保温し、次に5℃/minの昇温速度で300〜500℃に加熱し、0.5〜1.5時間保温した後、マッフル炉において自然冷却させ、電気触媒複合膜が得られた。
【0025】
他の調製方法についても、基体の前処理、コート層の前駆体溶液の調製、および従来技術によるコーティングで電気触媒複合膜を製造することができれば、特に限定されず、用いられる基体とコート層に応じて適合に製造方法を選択可能である。
【0026】
なお、本発明における実施例に記載された電気触媒複合膜及び膜反応器は、本技術の好ましい形態であり、実際に下記のような形態に限定されるべきではない。従って、請求の範囲によって規定される内容は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0027】
以下、本発明について、図を参照しながらさらに説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
本発明における電気触媒複合膜で構成される電気触媒膜反応器は、電気触媒複合膜が管式膜である場合には、図1に示すように、電気触媒複合膜3が液材体槽5における液材体に配置され、電気触媒複合膜3の一端が閉止され、他端が配管を介してチューブポンプ7に連接され、チューブポンプ7によって負圧を継続的に提供し、液材を外側から内側へ電気触媒複合膜3を透過させて、配管に沿って浸透液出口弁8から流出し、浸透液流出配管には分岐流路調節弁9が配置されるように、構成される。また、電解装置は、陽極である電気触媒複合膜3及び陰極である補助電極4が、それぞれ導線2を介して調整可能の直流定電圧電源1に接続されるように、構成される。ここで、補助電極4は管式のものであり、網状または孔状となり、補助電極の材料は、炭素、黒鉛、白金、金、タンタラム、ニッケル、アルミニウム、クロム―銅合金、クロム―ジルコニウム―銅合金および銅―タングステン合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料である。調整可能の直流定電圧電源1は、電圧調整範囲が0〜30Vであり、電流が0〜10Aである。電解装置における電極間距離は10〜100mmである。
【0029】
本発明における電気触媒複合膜で構成される電気触媒膜反応器は、電気触媒複合膜が板式膜である場合には、図2に示すように、電気触媒複合膜3がケース9に配置され、ケースが液材スペースと浸透液スペースに分けられ、液材が液材槽5からチューブポンプ7を介してケース9の液材スペースに供給され、液材スペースが液体出口弁11に連接され、膜間差圧を調整するように、ケース9の液材入口と浸透液出口にはそれぞれ入口圧力計6及び出口圧力計8が配置され、該流量調節弁及びポンプ速度を調節することにより圧力と流量をコントロールし、液材が膜分離作用によって液材スペースから浸透液スペースに入り、浸透液が出口弁10に介して流出されるように、構成される。また、電解装置は、陽極である電気触媒複合膜3及び陰極である補助電極4が、それぞれ導線2を介して調整可能の直流定電圧電源1に接続されるように構成される。ここで、補助電極4は板式のものであり、網状または孔状となり、ケースの料液スペースまたは浸透液スペースに設置され、補助電極の材料は、炭素、黒鉛、白金、金、タンタラム、ニッケル、アルミニウム、クロム―銅合金、クロム―ジルコニウム―銅合金および銅―タングステン合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料である。調整可能の直流定電圧電源1は、電圧調整範囲が0〜30Vであり、電流が0〜10Aである。電解装置における電極間距離は10〜100mmである。
実施例2
【0030】
本実施例における電気触媒複合膜は、管式炭素膜の基体と金属―シリカコート層からなるものである。
【0031】
基体:炭素膜(平均孔径は0.6μmであり、管径サイズはΦ8.8mm(管の外径)×1.4mm(厚さ)であり、以下、実施例において管径サイズを表示する方法は上記と同様である。)
触媒コート層:Pt/SiO2
調製方法:ゾル‐ゲル法
【0032】
上記のような電気触媒複合膜は、下記ステップによって製造される。
【0033】
(1)基体の前処理:炭素膜をエタノール溶液に置いて超音波洗浄を30分間行って、質量分率20%の過酸化水素溶液で前処理を10時間行って、水洗して、120℃の乾燥箱において乾燥させる。
【0034】
(2)Pt/SiO2ゾルの調製:テトラエトキシシラン、無水アルコール、純水及びアセチルアセトン(加水分解抑制剤)は1:20:1.5:0.8のモル比で均一に混合され、さらに塩酸を加えてpHを2程度に調節して、40℃の水浴において急激に2時間攪拌する。ピペットで水1mL、無水アルコール10mL、アセチルアセトン2mLを計量して混合し、さらにH2PtCl6 0.1gを加えて、完全に溶解させるまで攪拌して、溶液が得られる。急激に攪拌する条件で、得られた溶液を上記Si含有溶液にゆっくり滴下させ、30分間攪拌した後、Pt/SiO2ゾルが得られ、室温にて24時間老化させて、予備とする。
【0035】
(3)複合炭素膜の製造:炭素膜基体をPt/SiO2ゾルに浸漬し、1分間静置した後、5mm/sの引き上げ速度でゾルから基体を穏やかに引き上げて、室温にて空気乾燥させる。静置と引き上げの具体パラメータは、ゾルの特性及びコート層の厚さによって決定されてよい。
【0036】
(4)焼結処理:ステップ(3)でコーティングして得られた基体をマッフル炉に置いて、後期熱処理を行って、0.5℃/minの昇温速度で200℃に加熱し、0.5時間保温し、さらに5℃/minの昇温速度で500℃の予定熱処理温度に加熱し、0.5時間保温した後、マッフル炉内で自然冷却させ、Pt/SiO2をコート層とする電気触媒複合膜が得られた。
【0037】
該複合炭素膜は、平均孔径が0.52μmであり、初期水透過流束が220L/m2hbarである。
【0038】
図1に示される膜反応器を用いて、本実施例で製造された複合炭素膜を陽極として、管式のタンタラム電極を陰極として、硫酸ナトリウム溶液を電解質とする。他の操作条件について下記表に示すようにする。
【0039】
【表1】

【0040】
電気触媒カップリング膜で汚水を分離して処理した結果、油含有汚水に対する遮断率は90%である。電気触媒有及び電気触媒無のそれぞれの条件で、膜流束と操作時間との関係を観察して分析を行い、図3に示すグラフが得られる。該グラフに示すように、通電の条件で複合膜が高い膜流束を保持することができ、膜の自浄化機能を達成し、汚水処理において膜分離技術の安定性を保証する。
【0041】
実施例3
本実施例における電気触媒複合膜は、管式炭素膜の基体と金属酸化物コート層からなるものである。
【0042】
基体:炭素膜(平均孔径は0.4μmであり、管径サイズはΦ8.8mm×1.4mmである。)
触媒コート層:TiO2
調製方法:ゾル‐ゲル法
【0043】
上記のような電気触媒複合膜は、下記ステップによって製造される。
【0044】
(1)基体の前処理:本実施例において、実施例2と同様にして基体の前処理を行う。
【0045】
(2)TiO2ゾルの調製:ブチルチタネート、無水アルコール、蒸溜水、氷酢酸及びアセチルアセトンは1:18:2:0.2:0.5のモル比で混合されてゾルを調製し、急激に2時間攪拌し、室温にて24時間老化させて、予備とする。
【0046】
(3)複合炭素膜の製造:炭素膜基体をTiO2ゾルに浸漬し、30秒間静置した後、3mm/sの引き上げ速度でゾルから基体を穏やかに引き上げて、室温にて空気乾燥させる。
【0047】
(4)焼結処理:ステップ(3)でコーティングして得られた基体をマッフル炉に置いて、後期熱処理を行って、1℃/minの昇温速度で100℃に加熱し、0.5時間保温し、さらに5℃/minの昇温速度で400℃の予定熱処理温度に加熱し、1時間保温した後、マッフル炉内で自然冷却させ、TiO2をコート層とする電気触媒複合膜が得られた。
【0048】
該複合炭素膜は、平均孔径が0.33μmであり、初期水透過流束が156L/m2hbarである。
【0049】
図1に示される膜反応器を用いて、本実施例で製造された複合炭素膜を陽極として、管式のタンタラム電極を陰極として、硫酸ナトリウム溶液を電解質とする。他の操作条件について、下記表に示すようにする。
【0050】
【表2】

【0051】
電気触媒カップリング膜で汚水を分離して処理した結果、油含有汚水に対する遮断率は92%である。原始膜と複合膜の各々で処理して比較する結果、図4に示すように、通電の条件で複合膜が高い膜流束を保持することができ、且つ原始膜より高い電気触媒性能を有する。
【0052】
実施例4
本実施例における電気触媒複合膜は、板式炭素膜の基体と金属コート層からなるものである。
【0053】
基体:炭素膜(平均孔径は0.8μmであり、板式膜サイズは50mm×30mmである。)
触媒コート層:Pt
調製方法:電気化学的蒸着法
【0054】
上記のような電気触媒複合膜は、下記ステップによって製造される。
【0055】
(1)基体の前処理:アセトン溶液において炭素膜を30分間超音波洗浄して、体積比1:1であるフッ化水素酸と硝酸の混合液で12時間処理して、水洗して、乾燥させて予備とする。
【0056】
(2)触媒溶液の調製:0.8gのH2PtCl6・6H2O、10gの(NH4)2HPO4、30gのNa2HPO4で200mLの水溶液を調製し、得られた水溶液にNaOHを加えて、pH値を8に調節する。
【0057】
(3)複合膜の製造:電解槽においてチタンで製造された微多孔膜を沈積させ、チタン膜を陰極として、チタン綱を陽極として、ステップ(2)で調製された触媒溶液を電解液とする。電流密度を5mA/cm2にして、沈積時間を25分間にして、電解槽温度を80℃にする。沈積を行う際に、濃度分極を減少して沈積を均一的に保証するように、機械攪拌を利用して、白金コート層複合炭素膜が得られる。
【0058】
該複合炭素膜は、平均孔径が0.68μmであり、初期水透過流束が247L/m2hbarである。
【0059】
図2に示される膜反応器を用いて、本実施例で製造された複合炭素膜を陽極として、板式のアルミニウム電極を陰極とする。他の操作条件について、下記表に示すようにする。
【0060】
【表3】

【0061】
電気触媒カップリング膜で捺染汚水を分離して処理した結果、COD分解が800mg/Lであり、染料の顔料が略全部除去された。複合膜で6時間操作した後、膜流束が依然に元の流束の88%に維持され、高効率、省エネルギー及び汚染防止の操作が達成された。
【0062】
実施例5
本実施例における電気触媒複合膜は、セラミック膜、導電コート層と触媒コート層からなるものである。
【0063】
セラミック膜:酸化チタンセラミック膜(平均孔径は0.5μmであり、管径サイズはΦ15mm×1.5mmである)
導電コート層:炭素層(液体含浸法)
触媒コート層:SnO2/Sb2O3(ゾル―ゲル法)
【0064】
上記のような電気触媒複合膜は、下記ステップによって製造される。
【0065】
(1)前処理:実施例4と同様にして、酸化チタンセラミック膜の前処理を行う。
【0066】
(2)炭素層の製造:ポリアミド酸で濃度12wt%の溶液を調製して塗布液とし、液体含浸法により、前処理された酸化チタンセラミック膜に上記塗布液を塗布する。100℃にて1時間乾燥させた後、炭化温度700℃、保持時間2.5時間の条件で、炭化炉に入れて窒素の雰囲気中で炭化を行う。
【0067】
(3)SnO2/Sb2O3触媒コート層の製造:一定量のSnCl4 5H2O結晶体を取り、脱イオン水で0.15mol/Lの溶液に調製する。5%のSn/Sb原子比でSbCl3固体を計量して、エタノールに溶解させる。SnCl4溶液を攪拌しながら、適合量のクエン酸を加えて、pHを2.0に調節して、さらにSbCl3溶液をゆっくり加えて、加熱して均一的に攪拌して、50℃に加熱した時点で、黄色のSn(OH)4とSb(OH)3の混合物を生成するまで濃度0.3mol/Lのアンモニア水を加えて、十分に攪拌して、遠心して、洗浄する。得られた沈殿物を50℃に再加熱して、攪拌して、蓚酸で再溶解させ、その体積の10%のポリエチレングリコールを加えて、2時間攪拌して、その10%の体積比でエタノールを加えて、濃縮して、加熱を停止して、攪拌して室温に冷却して、24時間老化させる。
【0068】
(4)コーティング及び焼結処理:ステップ(3)で得られた溶液には、ステップ(2)で得られた酸化チタンセラミック膜を浸漬し、2分間静置した後、平穏な速度で基体を引き上げ、室温にて空気乾燥させる。そして、得られたサンプル管をマッフル炉に置いて、後期熱処理を行って、1℃/minの昇温速度で150℃に加熱し、0.5時間保温し、さらに5℃/minの昇温速度で600℃の予定熱処理温度に加熱し、1時間保温した後、マッフル炉内で自然冷却させ、SnO2/Sb2O3複合セラミック電気触媒膜が得られる。
【0069】
該複合炭素膜は、平均孔径が0.35μmであり、初期水透過流束が150L/m2hbarである。
【0070】
図1に示される電気触媒膜反応器を用いて、本実施例で製造された電気触媒複合膜を陽極として、管式の銅―タングステン合金電極を陰極として、硫酸ナトリウム溶液を電解質とする。他の操作条件について、下記表に示すようにする。
【0071】
【表4】

【0072】
電気触媒カップリング膜で汚水を分離して処理する場合、初期未通電及び後期通電のそれぞれの条件で操作を行う結果、該複合膜は、最初の120分間の未通電の条件で、流束が元の50%に低下されたが、後期に通電された場合には、300分間操作した後の流束が元の88%に回復され、且つ汚水に対する遮断率が91%に達した。
【0073】
上記結果により、電気触媒との組合せによって膜汚染の問題が有効的に解決されたことが分かっている。
【符号の説明】
【0074】
図1
1 調整可能の直流定電圧電源、2 導線、3 電気触媒複合膜、4 補助電極,5 液材槽、6 圧力計、7 チューブポンプ、8 浸透液出口弁、9 分岐流路調節弁
図2
1 調整可能の直流定電圧電源、2 導線、3 電気触媒複合膜、4 補助電極,5 液材槽、6 入口圧力計、7 チューブポンプ、8 出口圧力計、9 ケース、10 浸透液出口弁、11 液材出口弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と触媒コート層からなる電気触媒複合膜であり、
前述基体は多孔質支持体であり、導電性の基体または導電コート層が塗布される非導電性の基体から選ばれ、支持作用、導電作用及び分離作用を果たし、前記触媒コート層は、基体の電気触媒の活性を増強するように、導電性の基体又は導電コート層の表面及び孔内に担持又は塗布され、
前述導電性の基体は炭素膜であり、前述導電コート層は炭層であり、前述非導電性の基体はセラミック膜であり、前述触媒コート層は金剛石、黒鉛、シリカ、金属、金属酸化物から選ばれる一種、またはこれらの混合物であることを特徴とする汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項2】
前述電気触媒複合膜の基体と触媒コート層とは、表面修飾により一体化され、化学結合が形成され、電気触媒複合膜の構造の安定性が確保されたことを特徴とする請求項1に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項3】
前述電気触媒複合膜の平均孔径は、0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項4】
前述金属は、遷移金属または希土類金属から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項5】
前述遷移金属は、Pt、Au、Pd、Ti、Ta、Ru、Ir、LrおよびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、前述希土類金属は、La、Ceのうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項6】
前述金属酸化物は、遷移金属酸化物、希土類金属酸化物または良い導電率を有する一般的な金属酸化物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項7】
前述遷移金属酸化物は、TiO2、RuO2、IrO2およびTa2O5からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、前述希土類金属酸化物は、CeO2、La2O3のうちの少なくとも一種であり、前述良い導電率を有する一般的な金属酸化物は、Sb2O3、SnO2のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項6に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜。
【請求項8】
請求項1に記載の汚染防止可能の電気触媒複合膜からなる膜反応器であって、
電気触媒機能と膜分離機能とを有し、
ポンプによる圧力差によって膜分離の動力を提供し、且つ全量ろ過または交差流ろ過を用いて、液材を膜の一側から他側まで透過させて、液体の分離を達成するとともに、
電気触媒により膜表面及び孔内に付着される汚染物を酸化分解させて、膜の汚染防止能力を向上させ、膜分離過程中の無汚染操作を達成するように、陽極である電気触媒複合膜と陰極である補助電極とを、それぞれ導線を介して直流定電圧電源に接続して電解装置を構成し、
電解装置における電極間距離は10〜100mmである、
ように構成されたことを特徴とする膜反応器。
【請求項9】
前述補助電極は管式または板式のものであり、網状または孔状となり、前述補助電極の材料は、炭素、黒鉛、白金、金、タンタラム、ニッケル、アルミニウム、クロム―銅合金、クロム―ジルコニウム―銅合金および銅―タングステン合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料であることを特徴とする請求項8に記載の膜反応器。
【請求項10】
前述直流定電圧電源は、電圧調整範囲が0〜30Vであり、電流が0〜10Aであることを特徴とする請求項8に記載の膜反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−527354(P2012−527354A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512179(P2012−512179)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074542
【国際公開番号】WO2010/135886
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511286908)ダーリェン ファーシンユェン テクノロジー ディベロプメント リミテッド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】