説明

汚水ろ過ボックス

【課題】畜産汚水を各畜舎で処理することを可能であり、しかもろ過効率が良く取り扱いが容易な汚水ろ過ボックスを提供する。
【解決手段】汚水ろ過ボックス100は、フレーム構造を有し、中段面及び底面が防水シート101eで覆われたろ過ボックス本体101と、ろ過ボックス本体101の上下方向の中段に設けられた荷重受けフィルタ102と、ろ過ボックス本体101の底面中央部に設けられた着脱可能な高分子マイクロフィルタ103とを備えている。ろ過ボックス本体101の上部には開口部104が設けられている。また、ろ過ボックス本体101の底部にはフォークエントリー部101fが設けられているので、汚水ろ過ボックス100をフォークリフトで容易に持ち上げることができ、汚水ろ過ボックス100の搬送や設置が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水ろ過ボックスに関し、特に、畜産汚水のろ過等の水処理に用いられる汚水ろ過ボックスの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産汚水などをフィルタでろ過し、処理することが行われている。このろ過処理は、通常、汚水を大規模な処理施設に集めて行われている。しかし、大規模な処理施設の設置や維持が困難な場合には、簡易なろ過装置を用いて各畜舎で個別に汚水処理を行うこともある。このような簡易なろ過装置として、フレキシブルコンテナバッグが注目されている(特許文献1参照)。
【0003】
フレキシブルコンテナバッグは「フレコンバック」とも呼ばれ、工場における製造工程や水処理設備等において、粒状活性炭等のろ過材ないしは吸着剤を使用する場合にも用いられている。フレキシブルコンテナバッグに詰め込まれた粒状活性炭等は、所定の使用場所においてフレキシブルコンテナバッグから払い出され、活性炭吸着塔に充填され、あるいはカートリッジ等の容器に詰め込まれてから使用される。さらにまた、粒状活性炭等が充填されたフレキシブルコンテナバッグはそのままろ過装置として使用することができる。
【特許文献1】特開平9−122633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ろ過装置は、長時間の使用によって目詰まりを起こすが、目詰まりする度にろ過材を取り出してその洗浄や交換を行った場合にはろ過効率が低下するという問題がある。また、目詰まりを防止するためにフィルタの目を粗くすると、汚水を十分に浄化することが困難であった。また、畜産汚水をろ過する場合、処理施設でろ過を行わず、各畜舎でできれば、固形分の堆肥化を各畜舎で実施することが可能となるので、コスト面でも有利である。さらに、上述のフレキシブルコンテナバッグは柔軟性を有するため、搬送や設置が難しいという問題もある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、畜産汚水を各畜舎で処理することを可能であり、しかもろ過効率が良く取り扱いが容易な汚水ろ過ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、フレーム構造を有し、少なくとも底面が防水性材料で覆われたろ過ボックス本体と、ろ過ボックス本体の底部に設けられた高分子マイクロフィルタとを備え、高分子マイクロフィルタは、多孔質空間の核となる独立核空間と、複数の独立核空間の間を連通させる連続微空間とで形成されたスクラム構造を有する多孔質層を備えることを特徴とする汚水ろ過ボックスによって達成される。
【0007】
本発明の汚水ろ過ボックスは、ろ過ボックス本体の中段に設けられた荷重受けフィルタをさらに備えることが好ましい。これによれば、荷重受けフィルタによって汚水の簡易的なろ過が行われるので、高分子マイクロフィルタの性能をより一層発揮させることができる。
【0008】
本発明においては、高分子マイクロフィルタがろ過ボックス本体の底部から着脱可能であることが好ましい。これによれば、ろ過材の洗浄や交換が極めて容易であり、さらに高分子マイクロフィルタ自体が洗浄性に優れることから、ろ過効率の極めて高い汚水ろ過ボックスを実現できる。
【0009】
本発明においては、ろ過ボックス本体の底部に設けられたフォークエントリー部をさらに備えることが好ましい。これによれば、汚水ろ過ボックスをフォークリフトで容易に持ち上げることができ、汚水ろ過ボックスの搬送や設置が容易となる。
することができる。
【0010】
本発明において、ろ過ボックス本体は、組立式フレーム構造を有していることが好ましく、複数の柱材と、各柱材に連結される複数の横梁材と、柱材と横梁材とを連結するための複数の連結部材とを備えることが好ましい。これによれば、分解して持ち運ぶことができることから、搬送や設置が極めて容易である。
【0011】
本発明においては、ろ過ボックス本体の底部が下りの傾斜面を有することが好ましい。また、高分子マイクロフィルタがろ過ボックス本体の底部の略中央に設けられていることが好ましい。これによれば、汚水を高分子マイクロフィルタに集中させることができ、効率的なろ過が可能となる。
【0012】
本発明においては、多孔質層が、1以上の凸部及び/又は凹部で異形化された断面形状を有する繊維で形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明においては、多孔質層が、不織布と、不織布の繊維層に含浸された多孔質性樹脂とで一体化されて形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明においては、高分子マイクロフィルタが、多孔質層の下流側に形成された多孔質層よりも空隙率の高い不織布の中間繊維層と、中間繊維層の下流側に形成された支持層と、支持層の下流側に形成された中間繊維層よりも空隙率の高い不織布の基材繊維層をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、畜産汚水を各畜舎で処理することが可能であり、しかもろ過効率が高く取り扱いが容易な汚水ろ過ボックスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態による汚水ろ過ボックス100の構成を示す略斜視図である。
【0018】
図1に示すように、この汚水ろ過ボックス100は、フレーム構造を有するろ過ボックス本体101と、ろ過ボックス本体101の上下方向の中段に設けられた荷重受けフィルタ102と、ろ過ボックス本体101の下部(底面)に設けられた高分子マイクロフィルタ103とを備えている。ろ過ボックス本体101の中段面及び底面は防水シート101eで構成されており、防水シート101eはフレーム部101aに固定されている。防水シート101eとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル等の合成樹脂シートや、耐水性のゴム引き布などを用いることができる。ろ過ボックス本体101の側面は防水壁で仕切られていてもよく、防水壁のない貫通状態であってもよい。
【0019】
ろ過ボックス本体101の上部には、畜産汚水を注ぎ込むための開口部(注入口)104が設けられている。また、ろ過ボックス本体101の底部にはフォークエントリー部101fが設けられているので、汚水ろ過ボックス100をフォークリフトで容易に持ち上げることができ、汚水ろ過ボックス100の搬送や設置が容易となる。
【0020】
ろ過ボックス本体101の上下方向は防水シート101eで仕切られており、防水シート101eの中央部には目の粗い荷重受けフィルタ102が設けられている。荷重受けフィルタ102を設けることにより、高分子マイクロフィルタ103でろ過する前に比較的大きな固形物を取り除くことができる。したがって、高分子マイクロフィルタ103に直接荷重がかかる事態が防止される。汚水は、この荷重受けフィルタ102で簡易的にろ過された後、高分子マイクロフィルタ103によるきめ細かなろ過が行われることにより、清浄なろ過水が得られる。
【0021】
ろ過ボックス本体101の底面101xは、中央部に向かって下りの傾斜面(テーパー形状)を有し、高分子マイクロフィルタ103はその中央部に設けられている。荷重受けフィルタ102の形成面も同様のテーパー形状を有している。高分子マイクロフィルタ103は交換可能であり、ろ過ボックス本体101に対して着脱可能となっている。
【0022】
図2は、ろ過ボックス本体101の底部の構造を示す略斜視図であり、図3は、ろ過ボックス本体101の底部の構造を示す略断面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、ろ過ボックス本体101の底部には、高分子マイクロフィルタ103を固定するための略リング状の固定部材111が設けられており、高分子マイクロフィルタ103はこのリング内に収容されている。固定部材111の側面には高分子マイクロフィルタ103の挿入口111aが設けられており、固定部材111の側面から高分子マイクロフィルタ103を挿入することが可能である。挿入口111aには蓋111bが設けられており、使用時には蓋111bを閉じて使用する。このような構造とすることで、高分子マイクロフィルタ103を汚水ろ過ボックス100から着脱することが可能となり、高分子マイクロフィルタ103の交換を容易に行うことができる。
【0024】
次に、高分子マイクロフィルタ103について詳細に説明する。
【0025】
図4は、高分子マイクロフィルタ103の構造を示す略断面図である。
【0026】
図4に示すように、高分子マイクロフィルタ103は、不織布の繊維の断面形状を異形化することにより形成されたスクラム構造を有する多孔質層2と、多孔質層2の下流側に不織布で形成された多孔質層2よりも空隙率の高い中間繊維層3、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材で中間繊維層3の下流側に形成された支持層4、支持層4の下流側に不織布で形成された中間繊維層3よりも空隙率の高い下部繊維層5とを備えている。
【0027】
多孔質層2、中間繊維層3、下部繊維層5を形成する不織布の材質としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール(ビニロン)系などの合成繊維を用いることができる。各々の層の平均繊維径は、空隙率等に応じて適宜選択することができる。多孔質層2を形成する合成繊維の平均繊維径は、3μm〜25μmとすることが好ましい。平均繊維径が3μmより細くなるにつれ、取扱いが困難となり、不織布の量産性、耐久性に欠ける傾向があり、25μmより太くなるにつれ、空孔が大きくなって空隙率が増加し、ろ過性能が低下し易くなる傾向にあるからである。尚、耐水性、耐薬品性、耐候性の面からはポリエステルやポリプロピレンが好ましい。
【0028】
高分子マイクロフィルタ103の目付は500g/m〜1000g/mであることが好ましい。目付が500g/mより小さくなるにつれ、長期間使用により繰り返し加わる水圧に耐えることが困難となり、耐久性が低下し易くなる傾向があり、1000g/mよりおおきくなるにつれ、量産性が低下し易くなる傾向があるからである。
【0029】
支持層4は、織布、ネット、その他の多孔膜等の補強材を中間繊維層3と下部繊維層5の間に配設することにより形成されることが好ましい。補強材としては、ものフィラメントやマルチフィラメントの織物基布が好適に用いられるが、スパン織布を用いてもよい。尚、補強材の材質としては、前述の不織布の材質と同様のものが好適に用いられる。また、ネットの場合、ステンレス線とポリエステル等を複合させたものを縦横に網目状に配置してもよい。
【0030】
高分子マイクロフィルタ103の見かけ密度は0.35g/cm〜0.55g/cmであることが好ましい。見かけ密度が0.35g/cmより小さくなるにつれ、汚水と接触するろ過面積が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があり、0.55g/cmより大きくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の汚水をろ過することが困難になる傾向があるからである。
【0031】
高分子マイクロフィルタ103は、98kPaの圧力差を与えたときの空気通過量が1(cm/s)/cm〜10(cm/s)/cmとなるように形成されていることが好ましい。空気通過量が1(cm/s)/cmより小さくなるにつれ、通水量が不十分となり、大量の汚水をろ過することが困難になる傾向があり、10(cm/s)/cmより大きくなるにつれ、汚水と接触する繊維量が不十分となり、ろ過効率が低下し易くなる傾向があるからである。
【0032】
図5は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の構造を示す要部断面図である。
【0033】
図5に示すように、多孔質層2はスクラム構造を有しており、多孔質層2を形成する不織布の繊維層に含浸され不織布と一体化された多孔質性樹脂15と、多孔質層2の多孔質空間の核となる独立核空間15aと、複数の独立核空間15aの間を連通させる連続微空間15bを備えている。
【0034】
多孔質層2の連続微空間(連続気泡)15bの平均空孔径は、0.5μm〜8μmであることが好ましく、1μm〜4μmであることがさらに好ましい。平均空孔径が1μmより小さくなるにつれ、目詰まりが発生し易くなり、大量の汚水をろ過することが困難になる傾向が見られ、4μmより大きくなるにつれ、通水量が多くなり、ろ過性能が低下し易くなる傾向が見られるからである。また、平均空孔径が、0.5μmより小さくなるにつれ、通水性が大幅に低下してろ過効率が低下し易くなる傾向があり、8μmより大きくなるにつれ、微小な懸濁物質を捕捉することが困難となり、懸濁物質が内部の空孔に引っ掛かって閉塞状態となり、逆洗や洗浄で除去できなくなる傾向があるからである。
【0035】
多孔質層2の厚さは、10μm〜1000μmであることが好ましい。多孔質層2の厚さが10μmより薄くなるにつれ、連続微空間15bを十分に確保することができず、ろ過能力が不足すると共に、刷毛等による物理的な洗浄などによって短時間で多孔質層2全体が破損し易く、スクラム構造の効果が不十分となって寿命が低下し易くなる傾向があり、1000μmより厚くなるにつれ、通水性が不足してろ過効率が低下し易くなる傾向があるからである。多孔質層2の厚さを10μm〜1000μmの範囲にすることで、多孔質層2の表層側が破損しても、その内側が新たな表層となって連続微空間15bで継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
【0036】
図6(a)乃至(c)は、多孔質層2を形成する繊維の構造を示す模式斜視図である。
【0037】
図6(a)は、多孔質層2を形成する繊維10の円周上に複数の凸部11が形成された例であり、図6(b)は、多孔質層2を形成する繊維10aの外周に凸部11aが螺旋状の凸条に形成された例であり、図6(c)は、多孔質層2を形成する繊維10bの外周表面に略球状の複数の凸部11bが形成された例である。これらの凸部11,11a,11bは、表面に凸部11,11a,11bに対応する凹凸が形成された圧延ローラの間に繊維10,10a,10bを通すことにより形成することができる。
【0038】
凸部が11,11a,11bの大きさは繊維10,10a,10bの繊維径にもよるが、繊維径が10μm〜25μmの場合、凸部11,11a,11bの直径は2μm〜5μmであることが好ましい。凸部11,11a,11bの直径が2μmより小さくなるにつれ、異形化の効果が不十分となり、通水性が低下し易くなってろ過効率が低下する傾向があり、凸部11,11a,11bの直径が5μmより大きくなるにつれ、断面形状を維持するのが困難となり生産性が低下し易くなると共に、空隙率が高くなってろ過性能が低下し易くなる傾向があるからである。
【0039】
高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の形成工程において、1以上の凸部11,11a,11bで異形化された断面形状を有する繊維10,10a,10bをニードルパンチやウォータージェットニードル等の方法によって、三次元に交絡させて多孔質層2を形成することにより、独立核空間15aを連通する略均一な連続微空間15bを形成することができ、多孔質層2の連続微空間(微細空孔)15bの平均空孔径を前述の0.5μm〜8μm、好ましくは1μm〜4μmに形成することができる。
【0040】
図7(a)乃至(f)は、多孔質層2を形成する繊維の構造の変形例を示す略断面図である。
【0041】
図7(a)は繊維10cの外周に5個の凸部11cが形成された例であり、図7(b)は繊維10dの外周に4個の凸部11dが形成された例であり、図7(c)は繊維10eの外周に3個の凸部11eが形成された例であり、図7(d)は繊維10fの外周に4個の凹部11fが形成された例であり、図7(e)は繊維10gの外周に3個の凹部11gが形成された例であり、図7(f)は繊維10hの外周に2個の凹部11hが形成された例である。
【0042】
図7に示した繊維10c乃至10hの断面形状と同様の断面形状を有する金型から繊維を延伸させることにより、繊維の断面形状を異形化することができ、繊維の長手方向に連続的な凸条や凹条を形成することができる。また、延伸の際に繊維を捻ることにより、図6(b)で示したように凸条や凹条を螺旋状に形成することができる。尚、繊維を液中で延伸させることにより、異形化された断面形状を確実に維持することができ生産性に優れる。
【0043】
図7では、2個〜5個の凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hにより、断面形状を異形化したものを示したが、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数は2個〜8個、形成することができる。凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が2個より少なくなるにつれ、異形化の効果が不十分となり、通水性が低下し易くなってろ過効率が低下する傾向があり、凸部11c乃至11eや凹部11f乃至11hの数が8個より多くなるにつれ、断面形状を維持するのが困難となり生産性が低下し易くなると共に、空隙率が高くなってろ過性能が低下し易くなる傾向があるからである。尚、図6及び図7で示した各々の繊維10a乃至10hは、それぞれ単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
以上のように構成された高分子マイクロフィルタ103によれば、以下の作用を有する。まず、スクラム構造を有する上流側の多孔質層2の目を細かくすることにより、表面部で汚水中の粒子を確実に捕捉して、内部への侵入を阻止でき、ろ過性能に優れる。また、ろ過時に上流側となる多孔質層2側から下流側の下部繊維層5側に向かって空隙率が高くなるように各層の空隙率を調整することにより、微細な懸濁物質であっても確実に多孔質層2の表面で捕捉して、ろ過することができると共に、ろ過された汚水のろ過水を下部繊維層5側から速やかに排出することができ、ろ過効率に優れる。
【0045】
また、上流側の多孔質層2の目を細かくし、下流側の下部繊維層5の目を粗くすることにより、逆洗や物理的な剥離により多孔質層2の表面に付着した懸濁物質を容易に取り除くことができ、目詰まりが発生し難く、長期間連続して使用することが可能でメンテナンス性、実用性に優れる。
【0046】
また、中間繊維層3と下部繊維層5との間に形成された支持層4を有することにより、全体を補強して縦横の変形を防止することができ耐久性に優れる。また、下部繊維層5により高分子マイクロフィルタ103の全体の厚みと強度を調整することができ、スクレーパやブラシ等により洗浄を行う際に、そのクッション性で衝撃を吸収することができ、多孔質層2の破損が発生し難くなると共に、ろ過水を自由に移動、排出させることができ、通水性を向上させることができる。
【0047】
さらにまた、多孔質層2を形成する繊維10乃至10hが、1以上の凸部11乃至11eや凹部11f乃至11hで異形化された断面形状を有することにより、多孔質層2内に略均一な連続微空間を形成することができ、ろ過性能の均一性に優れる。また、多孔質層2が、略均一な連続微空間が多重に形成されたスクラム構造を有するので、多孔質層2の表面で繊維10乃至10hが断裂する等にしても、さらにその内側の繊維10乃至10hで形成された連続微空間によって継続的にろ過を行うことができ、ろ過性能の信頼性、長寿命性に優れる。
【0048】
この高分子マイクロフィルタ103は、重力ろ過を行うことができ、目詰まり画発生し難く、外部からの小さな刺激で懸濁物質を剥離することができるので、逆洗で洗浄する以外に、ブラシ洗浄方式、ウォータージェット洗浄方式、吸引洗浄方式、スクレーパ洗浄方式等により洗浄することができ、濃度の濃い汚水にも対応することができ汎用性に優れる。 また、ブラシ洗浄やスクレーパ洗浄などの剥離洗浄により、多孔質層2の表面に付着した懸濁物質を凝集した状態で剥離させてろ過槽などの底部に沈降させることができるので、汚水の濃度が濃くなることが防止でき、安定したろ過流量を得ることができる。
【0049】
また、高分子マイクロフィルタ103はろ過圧力装置を必要としないので省エネルギー性に優れ、ろ過装置全体を小型化、軽量化することができ、量産性、取り扱い性を向上させることができる。また、凝集剤等を使用することなく、汚水に含まれているミネラル分を残存させたまま、懸濁物質のみを取り除いて浄化処理を行うことができ、清水として河川等に放流することができるので環境保護性に優れる。また、汚水中の懸濁物質が高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の表面に付着しても、ろ過効率が低下することがなく、優れたろ過性能を維持することができ、実用性、信頼性に優れる。
【0050】
図8(a)及び(b)は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の変形例を示す断面図であって、(a)は要部断面図、(b)は(a)におけるAで示す部分の拡大図である。
【0051】
図8(a)及び(b)に示すように、本実施形態においては、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の一部が、連続微空間15bの各空孔の内側へ突き出した構造となっている。そして、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dは、連続微空間15bの平均空孔径dよりも小さく構成されている。
【0052】
多孔質層2を図8のように構成した場合、多孔質層2の連続微空間(連続気泡)15bの平均空孔径dは、0.5μm〜8μmであることが好ましい。また、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dは、8μm以下とすることが好ましく、4μm以下とすることがより好ましい。連続微空間の平均空孔径dが、0.5μmより小さくなると、通水性が大幅に低下してろ過効効率が悪くなる。また、多孔質層2を構成する不織布の繊維10の平均繊維径dが8μmより大きくなると、連続微空間の平均空孔径dを不織布の繊維10の平均繊維径dよりもさらに大きくする必要があることから、微小な固形物質を捕捉することが困難となり、空孔に引っ掛かって閉塞状態となり、逆洗や洗浄で除去できなくなってしまうからである。従って、連続微空間の平均空孔径dを4μm以上とし、不織布の繊維10の平均繊維径dを4μm以下とすることが特に好ましい。
【0053】
このような構成によれば、ろ過により微粒子16が連続微空間内に入った場合でも、連続微空間内に存在する不織布の繊維10に微粒子16引っ掛かるので、多孔質層2の内部深くまで微粒子16が入り込むことを防止できる。これにより、高分子マイクロフィルタの目詰まりを防止することができる。また、逆洗においても、微粒子16が多孔質層2内の深いところまで入り込んでいないため、洗浄効果を高くすることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の汚水ろ過ボックス100によれば、ろ過ボックス本体101の底面に設けられた高分子マイクロフィルタ103を用いて汚水のろ過を行うので、比較的簡単に目詰まりを解消することができ、ろ過効率の向上を図ることができる。また、本実施形態の汚水ろ過ボックス100によれば、ろ過ボックス本体101がフレーム構造を有し、底部にフォークエントリー部101fを備えることから、搬送や設置が極めて容易である。したがって、畜産汚水のろ過に用いる場合には各畜舎に設置することができ、固形分の堆肥化を各畜舎で実施することが可能となるので、コスト面でも有利である。
【0055】
図9は、本発明の第2の実施形態による汚水ろ過ボックス200の構成を示す略斜視図である。
【0056】
図9に示すように、この汚水ろ過ボックス200の特徴は、ろ過ボックス本体101が組み立てフレーム構造を有する点にある。すなわち、汚水ろ過ボックス200は、組み立て式フレーム構造を有するろ過ボックス本体101と、ろ過ボックス本体101の上下方向の中段に設けられた荷重受けフィルタ102と、ろ過ボックス本体101の下部(底面)に設けられた高分子マイクロフィルタ103とを備えている。ろ過ボックス本体101の中段面及び底面は防水シート101eで構成されており、防水シート101eは横梁材101bに固定されている。防水シート101eとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル等の合成樹脂シートや、耐水性のゴム引き布などを用いることができる。ろ過ボックス本体101の側面は防水壁で仕切られていてもよく、防水壁のない貫通状態であってもよい。
【0057】
ろ過ボックス本体101の上部には、畜産汚水を注ぎ込むための開口部(注入口)104が設けられている。開口部104の周縁には横梁材101cからなる外枠が設けられており、横梁材101cには吊り下げ用リング107が設けられている。この吊り下げ用リングに吊り下げ用取っ手(不図示)を取り付けることにより、汚水ろ過ボックス200をフォークリフト等で持ち上げやすくすることができ、汚水ろ過ボックス200の搬送や設置が容易となる。
【0058】
ろ過ボックス本体101の上下方向は防水シート101eで仕切られており、防水シート101eの中央部には目の粗い荷重受けフィルタ102が設けられている。荷重受けフィルタ102を設けることにより、高分子マイクロフィルタ103でろ過する前に比較的大きな固形物を取り除くことができる。したがって、高分子マイクロフィルタ103に直接荷重がかかる事態が防止される。汚水は、この荷重受けフィルタ102で簡易的にろ過された後、高分子マイクロフィルタ103によるきめ細かなろ過が行われることにより、清浄なろ過水が得られる。
【0059】
ろ過ボックス本体101の底面101xは、中央部に向かって下りの傾斜面(テーパー形状)を有し、高分子マイクロフィルタ103はその中央部に設けられている。荷重受けフィルタ102の形成面も同様のテーパー形状を有している。高分子マイクロフィルタ103は交換可能であり、ろ過ボックス本体101に対して着脱可能となっている。
【0060】
図10及び図11は、組み立て式フレーム構造を部分的に示す略斜視図であって、特に図10はフレームの分解状態、図11はフレームの結合状態をそれぞれ示すものである。
【0061】
図10及び図11に示すように、ろ過ボックス本体101は、柱材101bと横梁材101cの組み合わせによって構成されており、柱材101bと横梁材101cとは連結部材101dを介して接続されている。特に限定されるものではないが、柱材101b及び横梁材101cは共に軽量なステンレス材料であることが好ましく、連結部材101dは樹脂材料又はゴム材であることが好ましい。ろ過ボックス本体101の底面及び中段面を構成する防水シート101eの各辺には挿通孔101hが設けられており、この挿通孔101hに横梁材101cが挿入されることにより、防水シート101eの各辺が固定される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の汚水ろ過ボックス200によれば、ろ過ボックス本体101の底面に設けられた高分子マイクロフィルタ103を用いて汚水のろ過を行うので、比較的簡単に目詰まりを解消することができ、ろ過効率の向上を図ることができる。特に、本実施形態の汚水ろ過ボックス200によれば、ろ過ボックス本体101が組み立て式フレーム構造を有することから、分解して持ち運ぶこともでき、搬送や設置が極めて容易である。したがって、畜産汚水のろ過に用いる場合には各畜舎に設置することができ、固形分の堆肥化を各畜舎で実施することが可能となるので、コスト面でも有利である。
【0063】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、畜産汚水の処理に汚水ろ過ボックスが用いられているが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、し尿処理、セメント・コンクリート製品又は骨材、石工品の製造時に発生するノロ排水の処理、選炭廃液の処理、工場排水の処理等にも用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態による汚水ろ過ボックス100の構成を示す略斜視図である。
【図2】図2は、ろ過ボックス本体101の底部の構造を示す略斜視図である。
【図3】図3は、ろ過ボックス本体101の底部の構造を示す略断面図である。
【図4】図4は、高分子マイクロフィルタ103の構造を示す略断面図である。
【図5】図5は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の構造を示す要部断面図である。
【図6】図6(a)乃至(c)は、多孔質層2を形成する繊維の構造を示す模式斜視図である。
【図7】図7(a)乃至(f)は、多孔質層2を形成する繊維の構造の変形例を示す略断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、高分子マイクロフィルタ103の多孔質層2の変形例を示す断面図であって、(a)は要部断面図、(b)は(a)におけるAで示す部分の拡大図である。
【図9】図9は、本発明の他の好ましい実施形態による汚水ろ過ボックス200の構成を示す略斜視図である。
【図10】図10は、組み立て式フレーム構造を部分的に示す略斜視図であって、特にフレームの分解状態を示すものである。
【図11】図11は、組み立て式フレーム構造を部分的に示す略斜視図であって、特にフレームの結合状態を示すものである。
【符号の説明】
【0066】
2 多孔質層
3 中間繊維層
4 支持層
5 下部繊維層
10 繊維
10a-10h 繊維
11 凸部
11a-11e 凸部
11f-11h 凹部
15 多孔質性樹脂
15a 独立核空間
15b 連続微空間
100 汚水ろ過ボックス
101 ろ過ボックス本体
101a フレーム部
101b 柱材
101c 横梁材
101d 連結部材
101e 防水シート
101f フォークエントリー部
101h 防水シートの挿通孔
101x ろ過ボックス本体の底面
102 荷重受けフィルタ
103 高分子マイクロフィルタ
104 ろ過ボックス本体の開口部
105 外枠
107 吊り下げ用リング
108 吊り下げ用取っ手
111 固定部材
111a フィルタ挿入口
111b 蓋
200 汚水ろ過ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム構造を有し、少なくとも底面が防水性材料で覆われたろ過ボックス本体と、
前記ろ過ボックス本体の底部に設けられた高分子マイクロフィルタとを備え、
前記高分子マイクロフィルタは、多孔質空間の核となる独立核空間と、複数の前記独立核空間の間を連通させる連続微空間とで形成されたスクラム構造を有する多孔質層を備えることを特徴とする汚水ろ過ボックス。
【請求項2】
前記ろ過ボックス本体の中段に設けられた荷重受けフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の汚水ろ過ボックス。
【請求項3】
前記高分子マイクロフィルタは、前記ろ過ボックス本体の底部から着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚水ろ過ボックス。
【請求項4】
前記ろ過ボックス本体の底部に設けられたフォークエントリー部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の汚水ろ過ボックス。
【請求項5】
前記ろ過ボックス本体は、組立式フレーム構造を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の汚水ろ過ボックス。
【請求項6】
前記ろ過ボックス本体は、複数の柱材と、各柱材に連結される複数の横梁材と、前記柱材と前記横梁材とを連結するための複数の連結部材とを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の汚水ろ過ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−22910(P2009−22910A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190078(P2007−190078)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】