説明

汚水中継ポンプ設備

【課題】ソリッドセパレーション型汚水中継ポンプ設備において、維持管理の簡易性を確保しつつ、流入槽から汚水貯留槽へのし渣の越流を確実に防止する。
【解決手段】流入槽5の上部開口17には平面視で流入管2が配置されている部分を除いてスクリーン100が設けられている。スクリーン100は流入槽5の側壁に着脱可能に固定された多数の捕捉ロッド106を備える。捕捉ロッド106間の隙間は水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道における汚水の送水に使用されるソリッドセパレーション型の汚水中継ポンプ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道における汚水の送水に使用されるソリッドセパレーション型の汚水中継ポンプ設備が知られている(例えば特許文献1,2参照)。ソリッドセパレーション型の汚水中継ポンプ設備は、汚水貯留槽、流入管、流入槽、し渣分離槽、セパレータ及び水中ポンプ(汚水ポンプ)を備える。汚水中に含まれるし渣をセパレータによって分離し、し渣をし渣分離槽に一時貯留させた後、逆方向からのポンプ吐出水流によりし渣を汚水と共に圧送することで、設備に流入するポンプ異物通過径以上のし渣で汚水ポンプを閉塞させることなく送水できる。
【0003】
特許文献1,2に記載のソリッドセパレーション型汚水中継ポンプ設備の流入槽は、定期清掃を行うことを前提に上面全体を大面積の開口(上部開口)とし、側壁にスリット等の開口を設けた構成としている。流入管から流入した汚水に含まれる大型のし渣は流入槽上に残留し、比較的小型のし渣を含む汚水が流入槽からし渣分離槽に流入する。し渣分離槽の流入口や固液分離機構が一時的に閉塞した場合、流入管から流入する汚水が流入槽から溢れて汚水貯留槽に直接越流(流入)する。この越流する汚水を側壁に設けた開口を通過させることにより、前述の大型のし渣が汚水貯留槽内に越流するのを防止している。
【0004】
【特許文献1】特許第4145861号明細書
【特許文献2】特許第4145862号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2のソリッドセパレーション型汚水中継ポンプ設備では定期清掃を怠り側壁の開口が目詰まりすると、越流時に流入槽の上部開口より大型のし渣が汚水貯留槽に越流する。汚水貯留槽に越流した大型のし渣を水中ポンプが吸い込み、閉塞を起こす可能性がある。また、不明水や一時的な計画汚水流入量以上の流入がある場合、側壁の開口部が目詰まりを起こしていなくても、上部開口より大型のし渣が汚水貯留槽内に越流する可能性もある。
【0006】
大型のし渣の越流を防止するために流入槽の上部開口を網状部材で塞ぐことが考えられる。網状部材の網目を通って汚水が越流可能である一方、網目を通過できない大型のし渣は流入槽内に残留するので、大型のし渣が流入槽から汚水貯留槽に越流するのを防止できる。しかし、流入槽に残留した大型のし渣を除去する度に上部開口から網を外す作業が必要であり維持管理が煩雑となる。また、網状部材に髪の毛、布等のし渣が絡まってしまい、除去が非常に困難となる。この点でも、網状部材を採用すると維持管理が煩雑となる。
【0007】
本発明は、かかる従来のソリッドセパレーション型汚水中継ポンプ設備における問題に鑑みてなされたものであり、維持管理の簡易性を確保しつつ、流入槽から汚水貯留槽へのし渣の越流を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流入管を介して上流側から流入する汚水を、送水管を介して下流側に送水する汚水中継ポンプ設備であって、前記流入管及び前記送水管が内部まで延びている汚水貯留槽と、前記汚水貯留槽内に配置され、底部と側壁部とを備えると共に上部開口を有し、前記上部開口に前記流入管の開口端が配置され、前記流入管から内部に汚水が流入する流入槽と、平面視で上記流入管が配置されている部分を除いて前記流入槽の前記上部開口に配置され、複数の捕捉部材が間隔を開けて配置してなるスクリーンと、前記汚水貯留槽内で前記流入槽の下方に配置され、前記流入槽の前記底部に開口した流入口と、前記流入口からの汚水の流入は許容するが前記流入口からの汚水の流出は阻止する逆流防止機構と、記送水管に接続された流出口と、汚水出入口とを備えるし渣分離槽と、前記汚水貯留槽内に配置され、吐出口が前記し渣分離槽の前記汚水出入口に接続される一方、吸込口が前記汚水貯留槽内に開放し、停止時に吐出口から吸込口への汚水の逆流を許容する水中ポンプと、前記し渣分離槽の前記汚水出入口と前記水中ポンプの前記吐出口との間に介設され、前記汚水出入口から前記吐出口に流入する汚水からし渣を分離し、かつ前記吐出口から前記汚水出入口への汚水の流れを許容する固液分離機構とを備える汚水中継ポンプ設備を提供する。
【0009】
水中ポンプの停止時には、流入管の開口端から流入槽の内部に汚水が流入し、さらに流入槽の底部に開口した流入口からし渣分離槽内に流入する。し渣分離槽に流入した汚水は、し渣分離槽の汚水出入口、固液分離機構、水中ポンプの吐出口、及び水中ポンプの吸込口を経て、汚水貯留槽内に流入する。固液分離機構により水中ポンプの吐出口に流入する汚水からし渣が分離される。従って、し渣分離槽内にはし渣が蓄積され、汚水貯留槽内にはし渣を分離済みの汚水のみが蓄積される。水中ポンプを作動させると、汚水貯留槽に蓄積された汚水が水中ポンプの吸込口、水中ポンプの吐出口、及び固液分離機構を介して汚水出入口からし渣分離槽内に流入し、し渣分離槽内に蓄積されたし渣と共に流出口から送水管へ圧送される。
【0010】
し渣分離槽の流入口や固液分離機構が一時的に閉塞した場合や、不明水や一時的な計画汚水流入量以上の流入がある場合、流入管から流入する汚水が流入槽から溢れて汚水貯留槽に直接越流(流入)する。この越流する汚水に夾雑物ないしは大型のし渣が含まれていると、水中ポンプの作動時、吸込口にこの大型のし渣が吸い込まれ、水中ポンプの閉塞を引き起こす。上部開口には複数の捕捉部材が間隔を開けて設けた構造のスクリーンが配置されているので、上部開口を通って流入槽から汚水貯留槽へ越流する汚水に含まれる大型のし渣は捕捉部材で捕捉されることで流入槽内に残る。その結果、汚水の越流が生じた場合でも汚水貯留槽内への大型のし渣の越流を確実に防止し、それに起因する水中ポンプの閉塞を防止できる。
【0011】
具体的には、前記捕捉部材は、ロッド状部材又は板状部材である。
【0012】
前記捕捉部材は、基端側が前記流入槽の側壁に着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
この場合、捕捉部材を流入槽から取り取り外せば流入槽内に残留している大型のし渣を取り出すことができるので、定期清掃等の維持管理が容易である。
【0014】
代案としては、前記捕捉部材は、基端側が前記流入槽の側壁部に対して回動可能に取り付けられる。
【0015】
この場合、捕捉部材を回動させて流入槽の上部開口から退避させれば流入槽内に残留している大型のし渣を取り出すことができるので、定期清掃等の維持管理が容易である。
【0016】
前記捕捉部材の先端側が前記流入槽の前記上部開口から前記流入槽の内部に向けて斜め下向きに延びることが好ましい。
【0017】
捕捉部材の先端が斜め下向きに延びていれば、越流時に捕捉部材に捕捉されたし渣は自重によって捕捉部材の先端に向けて移動し、最終的には捕捉部材の先端から流入槽内に落下する。また、スクリーン(流入槽の上部開口)に向けて上方から水を掛けるだけで捕捉部材で捕捉されたし渣は先端に向けて移動して流入槽内に落下する。従って、捕捉部材の先端が斜め下向きに延びる構成により、定期清掃等の維持管理がより容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の汚水中継ポンプ設備では、流入槽の上部開口を複数の捕捉部材が間隔を開けて設けた構造のスクリーンを配置したことにより、越流が生じた場合でも汚水貯留槽内への大型のし渣の越流を確実に防止し、それに起因する水中ポンプの閉塞を防止できる。また、スクリーンを構成する捕捉部材を流入槽の側壁に着脱可能又は回動可能とすることで、流入槽内に残留したし渣を簡単に取り出すことができ、定期清掃等の維持管理が容易である。さらに、捕捉部材の先端を斜め下向きに延びる構成とすることで、越流時に捕捉部材に捕捉されたし渣が確実に流入槽内に落下するので、定期清掃等の維持管理がより容易になる。このように、本発明の汚水中継ポンプ設備によれば、維持管理の簡易性を確保しつつ、流入槽から汚水貯留槽へのし渣の越流を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1から図7は、本発明の第1実施形態にかかるマンホール型の汚水中継ポンプ設備1を示す。
【0021】
汚水中継ポンプ設備1は、流入管2を介して上流側から流入する汚水を、送水管3を介して下流側に送水する。汚水中継ポンプ設備1は、地中に埋設され汚水貯留槽4を備え、この汚水貯留槽4内に、流入槽5、し渣分離槽6A,6B,6C、汚水ポンプである水中ポンプ7A,7B,7C、及び固液分離機構であるセパレータ8A,8B,8Cが配置されている。図2にのみ示すコントローラ9は、投込式水位計10やフロート式水位計11からの入力に基づいて、水中ポンプ7A〜7Cの運転を制御する。地表に設けられた建屋12内には汚水貯留槽4の上部の搬入出口4aを介して水中ポンプ7A〜7Cを搬入出するための吊り下げ装置13が配置されている。
【0022】
本実施形態では、上流側から1本の流入管2が汚水貯留槽4の内部に延び、1本の送水管3が汚水貯留槽4の内部から下流側に延びている。しかし、流入管2や送水管3の本数は2本以上であってもよい。
【0023】
図8から図11を併せて参照して流入槽5について説明する。流入槽5は全体として矩形の箱体状であり、平面視で長方形状の底板(底部)15と、この底板15から上向きに延びる4つの側壁部16A,16B,16C,16Dを備える。流入槽5は、し渣分離槽6A〜6Cの頂部に配置されている。本実施形態では、流入槽5の底板15はし渣分離槽6A〜6Cの上蓋として機能する。側壁部16A〜16Dの上方部分には後述する水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下の幅を有する縦長のスリット状である多数の側部開口16aが設けられている。側部開口16aはスリット状に限定されず、矩形等の孔であってもよい。また、流入槽5の上部には平面視で長方形状を呈する上部開口17が設けられている。流入管2の開口端2aは、上部開口17から流入槽5の内部まで延びている。流入管2の開口端2aは流入槽5の底板15の上方に位置しており、各流入管2の開口端2aと底板15の間には間隔があけられている。上部開口17には、平面視で流入管2が配置されている部分を除いてスクリーン100が配置されている。
【0024】
本実施形態におけるスクリーン100は、それぞれ流入槽5の対向する側壁部16A,16Cに着脱可能に装着された一対のスクリーンユニット101A,101Bにより構成されている。これらのスクリーンユニット101A,101Bは同一構造であるので、以下では特に言及しない限り、スクリーンユニット101Aについて説明する。
【0025】
スクリーンユニット101Aは側壁部16Aの上端に載せられた断面形状が逆U字状の細長いベース部材102を備える。ベース部材102は図10にのみ示すボルト103及びナット104を備えるねじ止め機構105によって側壁部16Aの状態に着脱可能に固定されている(ねじ止め機構105はベース部材102の長手方向の2個所以上に設けられている)。ねじ止め機構105のボルト103を緩めることでスクリーンユニット101A(ベース部材102)を側壁部16Aから取り外すことができる。逆に、いったん取り外したベース部材102を側壁部16Aの上端に載せた後にねじ止め機構105のボルト103を締め付けることで、スクリーンユニット101A(ベース部材102)を側壁部16Aに再度固定できる。
【0026】
ベース部材102には多数の捕捉ロッド(捕捉部材)106が間隔をあけて設けられている。図10を参照すると、捕捉ロッド106はベース部材102に固定された基端部106a、この基端部106aから斜め上方に延びる第1中間部106b、第1中間部106bの先端から斜め下向きに延びる第2中間部106c、及び第2中間部106cの先端から斜め下向きに延びる先端部106dを備える。隣接する捕捉ロッド106間の間隔は流入槽5から越流しようとする汚水の通過は許容するが、水中ポンプ7A〜7Cを閉塞させるような比較的大型のし渣の通過は許容しないように設定されている。具体的には、隣接する捕捉ロッド106間の間隔は、後述する水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。
【0027】
図11に示すように、流入管2の開口端2aが流入槽5の上部開口17を通過する部分では、捕捉ロッド106の長さを他の部分より短く設定して流入管2と干渉しないように設定している。この部分での捕捉ロッド106の先端と流入管2の外周との間の隙間も大型のし渣の通過は許容しないように水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。一対のスクリーンユニット101A,101Bの捕捉ロッド106の先端は側壁部16A,16Cの延びる方向に互い違いに配置されている。一対のスクリーンユニット101A,101Bの捕捉ロッド106の先端が互いに対向する配置としてもよい。一対のスクリーンユニット101A,101Bの捕捉ロッド106の先端間に形成される隙間も、大型のし渣の通過は許容しないように、水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。
【0028】
次に、し渣分離槽6A〜6Cを説明する。し渣分離槽6A〜6Cは、汚水貯留槽4の底部に配置された予旋回槽26に固定されている。予旋回槽26を設けない構成も可能である。また、し渣分離槽6A〜6Cは、その上端に流入槽5の内部と連通する流入口27を備える。図6に示すよう、流入槽5の底板15の貫通孔15aには板厚方向に貫通するように流入口27を形成した円板28が固定されている
【0029】
図6を参照すると、し渣分離槽6A〜6Cの内部には、ボール31が収容されている。円板28の下面(し渣分離槽6A〜6Cの内部側の面)の流入口27の周縁は弁座32として機能し、ボール31が弁座32から離脱していれば流入口27が開放され、ボール31が弁座32に着座していれば流入口27が閉鎖される。ボール31及び弁座32は流入管2からし渣分離槽6A〜6Cの内部への汚水の流入は許容するが、し渣分離槽6A〜6Cの内部から流入管2への汚水の逆流を阻止する逆流防止機構として機能する。し渣分離槽6A〜6Cの流入口27の流路径D1は、後述するし渣分離槽6A〜6Cの流出管34の流路径D2(図2参照)以下に設定している。
【0030】
し渣分離槽6A〜6Cの下部には、流出口として機能する1本の流出管34が設けられている。各し渣分離槽6A〜6Cの流出管34は対応する送水支管35A〜35Cの一端に接続されている。送水支管35A〜35Cの他端は送水管3に接続されている。また、送水支管35A〜35Cには、送水管3からし渣分離槽6A〜6Cへの汚水の逆流を防止するために、ボール弁36と逆止弁37が介設されている。また、し渣分離槽6A〜6Cの下部には、汚水出入口として機能する水平方向に延びる汚水出入口管40が設けられている。この汚水出入口管40には、セパレータ8A〜8Cを介して対応する水中ポンプ7A〜7Cの吐出管44が着脱可能に接続されている。
【0031】
次に、水中ポンプ7A〜7Cを説明する。水中ポンプ7A〜7Cは、図示しないインペラを配置したインボリュート室が内部に形成されたポンプ本体41と、インペラを回転駆動するための水中モータ42とを備える。ポンプ本体41は、下向きに延びる吸込管(吸込口)43を備える。吸込管43の端部は予旋回槽26の上方に位置し、汚水貯留槽4の内部に開放されている。また、ポンプ本体41は、し渣分離槽6A〜6Cに向けて水平方向に延びる吐出管(吐出口)44を備える。図7を参照すると、吐出管44の端部には、固液分離スクリーン8A〜8Cがボルト止めされている。水中ポンプ7A〜7Cは、停止時に、し渣分離槽6A〜6C側から吐出管44に流入した汚水が吸込管43へ逆流し、吸込管43から汚水貯留槽4の内部に放流されるものである必要がある。本明細書では、水中ポンプ7A〜7Cの吸込管43から吐出管44に至る流路の最小径を水中ポンプ8A〜8Cの異物通過径という。
【0032】
図7を参照すると、固液分離スクリーン8A〜8Cは、全体として扁平な直方体状のブロック47を備える。このブロック47を貫通する流路47aが形成されている。この流路47aは図において左端の端部がし渣分離槽6A〜6Cの汚水出入口管40内の流路40aと連通し、図において右側の端部が水中ポンプ7A〜7Cの吐出管44内の流路44aと連通している。固液分離スクリーン8A〜8Cの流路47a内には、複数のスクリーンロッド48が配置されている。これらスクリーンロッド48の先端で囲まれた円形領域及び隣接するスクリーンロッド48間の隙間は、水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定している。
【0033】
水中ポンプ7A〜7Cの吸込管43とし渣分離槽6A〜6Cの汚水出入口管40は着脱自在に接続されており、前述の吊り下げ装置13によって案内ロッド58に沿って水中ポンプ7A〜7Cを昇降させることで汚水貯留槽4から出し入れできる。
【0034】
次に、図13Aから図13Dをさらに参照して、第1実施形態の汚水中継ポンプ設備1の動作を説明する。通常、水中ポンプ7A〜7Cのうちいずれかが作動状態であれば、他方は停止状態であり、停止状態の水中ポンプ7A〜7Cに対応するし渣分離槽6A〜6Cに流入管2からの汚水の流入が可能である。以下の説明では、特に言及しない限り、水中ポンプ7A及び対応するし渣分離槽6Aに着目して説明する。
【0035】
図13Aに示すように、し渣を含む汚水が流入管2から流入槽5に流入する。流入槽5に流入した汚水は、流入槽5の底板15に開口した流入口27からし渣分離槽6Aに流入する。
【0036】
前述のように、し渣分離槽6Aの流入口27の流路径D1は、し渣分離槽6Aの流出管34の流路の流路径D2以下に設定している。従って、流出管34を通過できない大型のし渣は流入口27からし渣分離槽6A内に流入せず、流入槽5の底板15上に残り、し渣分離槽6Aの流出管34の閉塞を防止することができる。
【0037】
し渣分離槽6Aの流入口27や固液分離スクリーン8Aが一時的に閉塞した場合、不明水や一時的な計画汚水流入量以上の流入がある場合、流入管2から流入する汚水が流入槽5から汚水貯留槽4に直接越流(流入)する。具体的には、流入槽5の側壁部16A〜16Dの側部開口16aから汚水が溢れ出て汚水貯留槽4に越流する。この越流する汚水に夾雑物ないしは大型のし渣が含まれていると、水中ポンプ7Aの作動時に吸込口にこの大型のし渣が吸い込まれて、閉塞が引き起こるおそれがある。しかし、側壁部16A〜16Dの側部開口16aは水中ポンプ7Aの異物通過径以下に設定しているので、汚水に含まれている異物通過径よりも大きい大型のし渣は、側部開口16aを通過できずに流入槽5内に残る。従って、汚水の越流が生じた場合でもマンホール4内への大型のし渣の流入を防止し、それに起因する水中ポンプ7Aの閉塞を防止できる。
【0038】
流入槽5の側壁部16A〜16Dに詰まりが生じていると、し渣分離槽の流入口や固液分離機構が一時的に閉塞した場合や、不明水や一時的な計画汚水流入量以上の流入がある場合、流入槽5の上部開口17から越流が生じる。しかし、上部開口17には複数の捕捉ロッド106が異物通過径以下の間隔で配置された構造のスクリーン100が配置されているので、上部開口17を通って流入槽から汚水貯留槽へ越流する汚水に含まれる大型のし渣は捕捉ロッド106で捕捉されることで流入槽5内に残る。つまり、流入槽5の側壁部16A〜16Dに詰まりが生じていても、越流時に汚水貯留槽4内への大型のし渣の越流を確実に防止し、それに起因する水中ポンプ7Aの閉塞を防止できる。また、捕捉ロッド106の第2中間部分106cと先端部106dは斜め下向きに延びているので、越流時に捕捉ロッド106に捕捉されたし渣は自重によって捕捉ロッド106の先端に向けて移動し、最終的には捕捉ロッド106の先端から流入槽5内に落下する。従って、スクリーン100のし渣による詰まりが生じにくい。
【0039】
図13B及び図13Cに示すように、し渣分離槽6Aに流入した汚水は、さらに汚水出入口管40から固液分離スクリーン8Aを介して停止中の水中ポンプ7Aの吐出管44に流入し、水中ポンプ7A内を逆流して吸込管43から汚水貯留槽4内に放流される。固液分離スクリーン8Aの流路47aを通過する際に、スクリーンロッド48によってし渣が分離されるので、し渣分離槽6A内にはし渣が蓄積され、し渣を分離済みの汚水が汚水貯留槽4の内部に蓄積される。一方、汚水自体は水中ポンプ7Aの吐出管44へ流れる。
【0040】
汚水貯留槽4内が予め定められた水位に達したことを水位計10,11が検出すると、コントローラ9により水中ポンプ7Aが始動される。図13Dに示すように、水中ポンプ7Aが作動すると、汚水貯留槽4内の汚水が吸込管43から吸い込まれ、吐出管44から吐出される。水中ポンプ7Aによって吐出された汚水は、固液分離スクリーン8Aを通って汚水出入口管40からし渣分離槽6A内に圧送される。し渣分離槽6A内に蓄積されているし渣は、水中ポンプ7Aから圧送される汚水と共に、流出管34を介して送水管3に送られる。し渣分離槽6Aと流入槽5とを接続する流入口27はボール31が弁座32に着座することによって閉鎖されている。従って、し渣分離槽6Aから流入槽5へ汚水は逆流しない。
【0041】
スクリーン100を構成する各スクリーンユニット101A,101Bはねじ止め機構105を緩めるだけで流入槽5の側壁部16A,16Cから取り外すことができる。流入槽5からスクリーン100を構成する各スクリーンユニット101A,101Bを取り外せば、流入槽5の上部開口17は流入管2が配置されている部分を除いて障害物のない状態(完全に開口した状態)となるので、定期清掃等の際には流入槽5内のし渣を簡単に取り出して廃棄できる。この点で維持管理が容易である。また、スクリーン100の捕捉ロッド106の第2中間部106cと先端部106dは斜め下向きに延びているので、クリーン100(流入槽5の上部開口17)に向けて上方から水を掛けるだけで捕捉ロッド106で捕捉されたし渣は先端に向けて移動して流入槽5内に落下する。この点でも、定期清掃等の維持管理が容易である。
【0042】
図12A,12Bは捕捉ロッド106の代案を示す。これらの代案では、第1中間部分106c(図10参照)を省略した形状である。図12Aでは捕捉ロッド106の上部が流入槽5の上端から大きく突出しているのに対して、図12Bで捕捉ロッド106の大部分が流入槽5内に収容されている。
【0043】
(第2実施形態)
図14から図17に示す本発明の第2実施形態は、流入槽5の上部開口17に配置されたスクリーン200の構成のみが第1実施形態と異なる。汚水中継ポンプ設備1のその他の構成は図1から図7を参照して説明した第1実施形態の場合と同様である。本実施形態のスクリーン200は第1実施形態の捕捉ロッド106に代えて捕捉プレート201を備え、この捕捉プレート201は流入槽5の側壁部16A,16Cに対して回動可能に取り付けられている。
【0044】
それぞれ流入槽5の側壁部16A,16Cに対応する一対のスクリーンユニット202A,202Bは、それぞれ流入槽5の側壁部16B,16Dに固定された共通の支持プレート203A,203Bに両端が支持されている。これらのスクリーンユニット202A,202Bは同一構造であるので、以下では特に言及しない限り、スクリーンユニット202Aについて説明する。
【0045】
図17を参照すると、スクリーンユニット202Aは、両端に雄ねじ部204aが形成された軸ロッド204と、この軸ロッド204が挿入されたパイプ205を備える。パイプ205に間隔をあけて捕捉プレート201が固定されている。軸ロッド204の雄ねじ部204aは支持プレート203A,203Bに設けられた支持孔203aに挿入されると共に、隙間調整要のワッシャ206とナット207A,207Bが設けられている。後に詳述するように、捕捉プレート201が固定されたパイプ205は軸ロッド204を中心に回転可能である。
【0046】
図15を参照すると、捕捉プレート201の全体的な形状は二等辺三角形を横倒しにした形状に近い爪状である。具体的には、捕捉プレート201は基端側の上部がパイプ205に固定され、基端側の上部から下向きに延びる係止部201aを備える。また、捕捉プレート201は基端側から斜め下向きに延びる上側円弧状部201bと下側円弧状部201cとを備える。
【0047】
図16に示すように、流入管2の開口端2aが流入槽5の上部開口17を通過する部分では、捕捉プレート201の長さを他の部分より短く設定して流入管2と干渉しないように設定している。この部分での捕捉プレート201の先端と流入管2の外周との間の隙間も大型のし渣の通過は許容しないように水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。一対のスクリーンユニット202A,202Bの捕捉プレート201の先端は側壁部6A,6Cの延びる方向に互い違いに配置されている。一対のスクリーンユニット202A,202Bの捕捉プレート201の先端が互いに対向する配置としてもよい。一対のスクリーンユニット202A,202Bの捕捉プレート201の先端間に形成される隙間も、大型のし渣の通過は許容しないように水中ポンプ7A〜7Cの異物通過径以下に設定されている。
【0048】
流入槽5の側壁部16A〜16Dに詰まりが生じていると、し渣分離槽の流入口や固液分離機構が一時的に閉塞した場合や、不明水や一時的な計画汚水流入量以上の流入がある場合、流入槽5の上部開口17から越流が生じる。しかし、上部開口17には複数の捕捉プレート201が異物通過径以下の間隔で配置された構造のスクリーン200が配置されているので、上部開口17を通って流入槽から汚水貯留槽へ越流する汚水に含まれる大型のし渣は捕捉プレート201で捕捉されることで流入槽5内に残る。つまり、流入槽5の側壁部16A〜16Dに詰まりが生じていても、越流時に汚水貯留槽4内への大型のし渣の越流を確実に防止し、それに起因する水中ポンプ7A〜7Cの閉塞を防止できる。また、上側円弧状部201bと下側側円弧状部201cとを備える捕捉プレート201は、先端を含むほぼ全体が斜め下向きに延びているので、越流時に捕捉プレート201に捕捉されたし渣は自重によって捕捉プレート201の先端に向けて移動し、最終的には捕捉プレート201の先端から流入槽5内に落下する。従って、スクリーン200のし渣による詰まりが生じにくい。
【0049】
係止部201aが側壁部16Aに係止されることで、捕捉プレート201の矢印A1周りの回転が阻止される。しかし、パイプ205及び捕捉プレート201は矢印A2周りには回転させることができる。この矢印A2周りの回転により捕捉プレート201を流入槽5の上部開口17から退避させることができる。捕捉プレート201を上部開口から退避させれば、流入槽5の上部開口17は流入管2が配置されている部分を除いて障害物のない状態(完全に開口した状態)となるので、定期清掃等の際には流入槽5内のし渣を簡単に取り出して廃棄できる。この点で維持管理が容易である。また、捕捉プレート201は上側円弧状部201bと下側円弧状部201cとを備え先端を含むほぼ全体が斜め下向きに延びているので、スクリーン200(流入槽5の上部開口17)に向けて上方から水を掛けるだけで捕捉プレート201で捕捉されたし渣は先端に向けて移動して流入槽5内に落下する。この点でも、定期清掃等の維持管理が容易である。
【0050】
図18A,18Bは捕捉プレート201の代案を示す。これらの代案では、上側円弧状部201bと下側円弧状部201cとの間の幅を大幅に狭めて細長い爪状としている。図18Aでは係止部201aの上端付近を貫通するようにパイプ205に固定されているが、図18Bではパイプ205の上側部分に捕捉プレート201が固定されている。
【0051】
本発明は前記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、第1実施形態のようにスクリーン200(スクリーンユニット202A,202B)を流入槽5に対して着脱可能とする構成の場合に、捕捉ロッド106に代えて第2実施形態の捕捉プレート201を採用してもよい。また、第2実施形態のようにスクリーン200を流入槽5の側壁部に16A,16Cに対して可動可能とする構成の場合に、捕捉プレート201に代えて第1実施形態の捕捉ロッド106を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1実施形態に係る汚水中継ポンプ設備の縦断面図。
【図2】図1のII−II線での断面図。
【図3】図1のIII−III線での断面図。
【図4】図1のIV−IV線での断面図。
【図5】図1のV−V線での断面図。
【図6】図2の部分VIの拡大図。
【図7】図2の部分VIIの拡大断面図。
【図8】第1実施形態における流入槽及びスクリーンの部分斜視図。
【図9】第1実施形態における流入槽及びスクリーンの側面図。
【図10】図9の部分拡大図。
【図11】第1実施形態における流入槽及びスクリーンの部分平面図。
【図12A】第1実施形態のスクリーンの代案を示す部分拡大図。
【図12B】第2実施形態のスクリーンの他の代案を示す部分拡大図。
【図13A】し渣分離槽への汚水の流入開始時の状態を示す概略断面図。
【図13B】し渣分離槽への汚水の流入中の状態を示す概略断面図。
【図13C】し渣分離槽が汚水で満たされた状態を示す概略断面図。
【図13D】水中ポンプにより汚水貯留槽内の汚水をし渣分離槽を介して圧送する状態を示す概略断面図。
【図14】第2実施形態における流入槽及びスクリーンの部分斜視図。
【図15】第2実施形態における流入槽及びスクリーンの側面図。
【図16】第2実施形態における流入槽及びスクリーンの部分平面図。
【図17】図16の部分XVIIの拡大図。
【図18A】第2実施形態のスクリーンの代案を示す部分拡大図。
【図18B】第2実施形態のスクリーンの他の代案を示す部分拡大図。
【符号の説明】
【0053】
1 汚水中継ポンプ設備
2 流入管
2a 開口端
3 送水管
4 汚水貯留槽
4a 搬入出口
5 流入槽
6A,6B,6C し渣分離槽
7A,7B,7C 水中ポンプ
8A,8B,8C セパレータ
9 コントローラ
10 投込式水位計
11 フロート式水位計
12 建屋
13 吊り下げ装置
15 底板
15a 貫通孔
16A,16B,16C,16D 側壁部
16a 側部開口
17 上部開口
26 予旋回槽
27 流入口
28 円板
31 ボール
32 弁座
34 流出管
35A,35B,35C 送水支管
36 ボール弁
37 逆止弁
40 汚水出入口管
40a 流路
41 ポンプ本体
42 水中モータ
43 吸込管
44 吐出管
44a 流路
47 ブロック
47a 流路
48 スクリーンロッド
58 案内ロッド
100 スクリーン
101A,101B スクリーンユニット
102 ベース部材
103 ボルト
104 ナット
105 ねじ止め機構
106 捕捉ロッド
106a 基端部
106b 第1中間部
106c 第2中間部
106d 先端部
200 スクリーン
201 捕捉プレート
201a 係止部
201b 上側円弧状部
201c 下側円弧状部
202A,202B スクリーンユニット
203A,203B 支持プレート
203a 支持孔
204 軸ロッド
204a 雄ねじ部
205 パイプ
206 ワッシャ
207A,207B ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入管を介して上流側から流入する汚水を、送水管を介して下流側に送水する汚水中継ポンプ設備であって、
前記流入管及び前記送水管が内部まで延びている汚水貯留槽と、
前記汚水貯留槽内に配置され、底部と側壁部とを備えると共に上部開口を有し、前記上部開口に前記流入管の開口端が配置され、前記流入管から内部に汚水が流入する流入槽と、
平面視で上記流入管が配置されている部分を除いて前記流入槽の前記上部開口に配置され、複数の捕捉部材が間隔を開けて配置してなるスクリーンと、
前記汚水貯留槽内で前記流入槽の下方に配置され、前記流入槽の前記底部に開口した流入口と、前記流入口からの汚水の流入は許容するが前記流入口からの汚水の流出は阻止する逆流防止機構と、前記送水管に接続された流出口と、汚水出入口とを備えるし渣分離槽と、
前記汚水貯留槽内に配置され、吐出口が前記し渣分離槽の前記汚水出入口に接続される一方、吸込口が前記汚水貯留槽内に開放し、停止時に吐出口から吸込口への汚水の逆流を許容する水中ポンプと、
前記し渣分離槽の前記汚水出入口と前記水中ポンプの前記吐出口との間に介設され、前記汚水出入口から前記吐出口に流入する汚水からし渣を分離し、かつ前記吐出口から前記汚水出入口への汚水の流れを許容する固液分離機構と
を備える汚水中継ポンプ設備。
【請求項2】
前記スクリーンの前記捕捉部材は、ロッド状部材又は板状部材である、請求項1に記載の汚水中継ポンプ設備。
【請求項3】
前記捕捉部材は、基端側が前記流入槽の側壁に着脱可能に取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載の汚水中継ポンプ設備。
【請求項4】
前記捕捉部材は、基端側が前記流入槽の側壁部に対して回動可能に取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載の汚水中継ポンプ設備。
【請求項5】
前記捕捉部材の先端側が前記流入槽の前記上部開口から前記流入槽の内部に向けて斜め下向きに延びている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の汚水中継ポンプ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【公開番号】特開2010−116752(P2010−116752A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292213(P2008−292213)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】